JP4132414B2 - ケーソンマット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート製ケーソンの底面に接続されるケーソンマットに関する。重力式護岸のために構築されるケーソンは、コンクリートでできた矩形体であり、この底面には主にゴム板状のケーソンマットが取り付けられる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、港湾構造物を安定させ、波力、地震などの災害防止を図るために、重力式護岸のために構築されるケーソンの底面へケーソンマットが取付けられている。かかるケーソンマットは、波力や地震などの災害に対して、捨て石マウンドとの間の滑動抵抗を増大させ、構造物を安定させるマット状のゴム板である。ゴム板状ケーソンマット21が取り付けられたコンクリート製ケーソン23は、図8に示すように捨て石マウンド22上に設置される。岸壁の築造に際しては、コンクリート製ケーソン23が、例えば図9に示すように一列に捨て石マウンド22上に設置される。
【0003】
近年では、ケーソンマットがゴム板で弾力性と強靭性とを有することから、ケーソンと捨て石マウンドとの摩擦係数を0.75以上に設定することが可能となり、構造物が安定し安全性が高められている。また、ケーソンの小型化も可能となり、経費節減にもつながっている。
【0004】
かかるゴム板状ケーソンマットには、図10に示すように多数本のアンカー部材24が取付けられ、このアンカー部材24によってケーソンマット21が、その上に注入されたコンクリートのケーソンへ固定される。ケーソンマット21へのアンカー部材24の取付け方法はこれまで種々提案されており、その全てが図11に示すようにケーソンマットに貫通孔を設けボルトとナット等を用いて取り付けるものであった。
【0005】
例えば、実開昭3−2044号に開示されたケーソンラバーにおいては、図11に示すように、偏平かつ大径のボルト頭部30とそれを包み込んだヘッドカバー31がゴム板状マット32の座ぐり33に密着してナット34を介して固定され、ケーソンマットの表面に突出した当該ボルトの螺刻部35にアンカー部材が螺子込まれる方式であった。同様に、ケーソンマットに貫通孔を設けボルトとナット等を用いてアンカー部材を取り付ける方式のものとして、例えば、実開昭62−200741号、実開昭5−22635号、特開昭7−71041号等に開示されたものが知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来、ケーソンマットが取り付けられたケーソンは、海中の所定の場所に設置され、岸壁や防波堤として使用されることになるが、アンカー部材とケーソンマットとケーソンコンクリートの界面が同一線上に存在し、長期の耐久性を考慮した場合、海水の浸入による影響によって腐食が進行し、ケーソンマットとケーソンコンクリートの界面で強度不足によるボルトの切断が考えられた。
【0007】
また、従来提案され採用されているゴム板状ケーソンマットへのアンカー部材の取付方法は、上述のように、いずれもゴム板状ケーソンマットに設けられた貫通孔を介してボルトとナット等を用いてアンカー部材を取付る方式のものであるため、取付部材を組み込んだ陸上での施設作業においては取付金具が剣山状となり、安全性に問題があった。即ち、ケーソンマット敷設作業中並びに鉄筋配置作業中は、アンカー部材の設置場所を通行することになり、つまずきによる転倒や、アンカーボルト踏み抜きによるケガ等の人身事故の可能性もあり、これらの問題はケーソン設置の作業性を低下させる原因となっていた。
【0008】
更には、このような作業は現場で行うこととなる場合が多く、この場合一人で行うことが容易ではなかった。また、ボルトとナットを用いてアンカー部材を取り付ける方式では、取り付け後ナットが緩むという問題が生ずることもあった。
【0009】
そこで本発明の目的は、アンカーボルトの腐食等による強度低下を防止するとともに、作業時の安全性を大幅に改善し、同時に一人でも容易にアンカー部材の設置作業を行うことができることとし、更にはアンカー部材の直立設置を可能ならしめるケーソンマットを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ケーソンマットを以下の構成とすることにより前記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は下記に示す通りである。
【0011】
(1)コンクリート製ケーソンの底面に接続されるゴム板状のケーソンマットにおいて、
捨て石マウンドに接する片面が平滑となっており、他方に、開口側が逆円錐台形状を有するアンカー部材の挿入孔を有することを特徴とするケーソンマットである。
【0012】
(2)前記(1)のケーソンマットにおいて、前記アンカー部材の挿入孔が、その内部に、アンカー部材を固定するための固定部材と、該固定部材の上方に配置され、該アンカー部材および固定部材の脱落を防止するための補強部材とを備えるケーソンマットである。
【0013】
(3)前記(2)のケーソンマットにおいて、前記アンカー部材の挿入孔が、前記固定部材との嵌合部と該嵌合部より縮径の非嵌合部とを備えた挿入部と、該挿入部より拡径した他端に大径の円柱状部を一体的に備えた本体部とより形成されているアンカー部材用の挿入孔であるケーソンマットである。
【0014】
(4)前記(2)のケーソンマットにおいて、前記アンカー部材の挿入孔が、先端がテーパー形状に形成されている前記アンカー部材用の挿入孔であるケーソンマットである。
【0015】
(5)前記(4)のケーソンマットにおいて、前記挿入孔に前記固定部材としてばね板ナットが設置されているケーソンマットである。
【0016】
(6)前記(5)のケーソンマットにおいて、前記ばね板ナットのケーソン側上面に、該ばね板ナットよりも幅広の座金が前記補強部材として配置されているケーソンマットである。
【0017】
前記(1)により、ケーソンマットに使用アンカー部材の径よりも十分に大きな、開口側が逆円錐台形状を有する挿入孔がある結果、ケーソン作製時にコンクリートが当該挿入孔に充填され、海水浸入の際の腐食面がケーソンマットとケーソンコンクリートとの界面よりずれることになり、アンカー部材表面への海水の浸入を遅らせることができる。また、たとえアンカー部材に腐食が発生しても、前記挿入孔に充填されたコンクリートにより設置初期において強度を確保することができる。
【0018】
前記(2)により、アンカー部材がケーソンマットに固定され、かつ容易に抜けないようになる。
【0019】
前記(3)により、アンカーボルト踏み抜きによるケガ等の人身事故の可能性がなくなり、作業上の安全性が大幅に向上する。また、ケーソンマット製造の過程において、補強部材が偏心する可能性があり、アンカー部材が斜めに挿入されても、固定部材との嵌合部より縮径の非嵌合部が存在することにより、補強部材との接触がなくなって、アンカー部材を垂直に取り付けることが可能となる。
【0020】
前記(4)により、ケーソンマットへのアンカー部材の打ち込みが容易になる。
【0021】
前記(5)により、ケーソンマットへのアンカー部材の固定が確かなものとなる。
【0022】
前記(6)により、ケーソンマットへのアンカー部材の固定が確かなものとなるとともに、容易に抜けないようになる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
本発明の好適例におけるケーソンマットを図面に基づき説明する。
【0024】
図1に示すケーソンマット1においては、捨て石マウンドに接する片面が平滑となっており、他方に略逆円錐台形状のアンカー部材用挿入孔2を有する。この挿入孔2の内部は、アンカー部材を固定するための固定部材3と補強部材4とを備えている。
【0025】
固定部材3は、図3に示すように複数の切れ込み9が入ったリング形状をしており、アンカー部材5が挿入され、押し拡げられると、鋼材等の弾性材のもつばね作用により、弾性的にアンカー部材5が保持される。補強部材4は、アンカー部材5が固定部材3とともに抜けて脱落しないようにするための補強部材である。かかるアンカー部材用挿入孔2に挿入するに適したアンカー部材5は、図2に示すように、固定部材3との嵌合部6と該嵌合部6より縮径の非嵌合部7とを備えた挿入部と、該挿入部より拡径した他端に大径の円柱状部8を一体的に備えた本体部とにより形成されている。これにより、ケーソンマット製造の過程において補強部材4が偏心し、アンカー部材5が斜めに挿入されても、固定部材3との嵌合部より縮径の非嵌合部7が存在することで、補強部材4との接触がなくなり、アンカー部材5を垂直に取り付けることが可能となる。
【0026】
図4は、上述の好適例に従いケーソンマット1にアンカー部材5を取り付けた後、常法に従い、その上に型枠を組み上げ、該型枠の中にコンクリートを流し込み、固結させることによりコンクリートケーソンを形成させたときのアンカー部材5近傍の様子を示す。図示するように、コンクリート10は略逆円錐台形状のアンカー部材用挿入孔2に充填される。その結果、海水浸入の際の腐食面がケーソンマット1とケーソンコンクリート10との界面よりずれて、アンカー部材5の腐食が遅くなり、また挿入孔2に充填されたコンクリート10によりケーソン設置初期における強度が十分に確保される。
【0027】
次に、本発明の他の好適例を示す。この好適例も、捨て石マウンドに接する片面が平滑となっており、他方に略逆円錐台形状のアンカー部材の挿入孔を有するゴム板状のケーソンマットであるが、図5に示すように、挿入するアンカー部材5の先端11がテーパー形状に形成されている。また、挿入孔2に固定部材3としてばね板ナットが設置されている。
【0028】
ばね板ナットとは、相手軸に溝を切らずに押し込むだけで固定するセルフロッキングタイプで、鋼材等の弾性材のもつばね作用により部品を保持することができるナットのことであり、種々のタイプのものが知られている。本発明においては、かかるばね板ナットを固定部材3としてケーソンマット1の略逆円錐台形状のアンカー部材用挿入孔2に適用するものであり、保持すべき部品をアンカー部材5とするものである。図5に示すばね板ナットには、内円縁部に複数のひだ部12が下方に傾斜して設けられており、ねじ溝のないアンカー部材5がばね板ナットに挿入されると、該ひだ部12が押し拡げられて弾性的にアンカー部材5を保持する。一旦、挿入されたアンカー部材5は、下方に向いたひだ部12により弾性的に保持されるため、上方に引き抜くことは困難であり、ケーソンマットとコンクリートケーソンとの接合を良好に維持することができる。また、固定部材3としてのばね板ナットの上面に、該ばね板ナットよりも幅広の補強部材4としての座金を設け、挿入された埋込アンカー部材5の、より一層の安定化を図ることができる。アンカー部材5は、押し込むか、またはハンマーで打ち込むだけでゴム板状ケーソンマット1に固定させることができる。
【0029】
アンカー部材5は、図6に示すように、コンクリートに埋設される部分をL字型としてもよい。また、材質は鋼製、樹脂製等、特に制限されるものではない。
【0030】
図7に示すように、アンカー部材5の立設後は、かかるケーソンマットを指定場所に敷き、常法に従い、その上に型枠を組み上げ、該型枠の中にコンクリートを流し込み、固結させることによりコンクリートケーソンを形成する。
【0031】
本発明におけるケーソンマットの貫通孔の数、埋込アンカー部材の形状、材質および大きさは、接合すべきケーソンの寸法や形状に従い適宜選定すればよい。
【0032】
また、本発明に係るゴム板状ケーソンマットの大きさおよび厚さも、構築されるケーソンの大きさや形に応じて適宜選定され、特に限定されるべきものではないが、例えば、長さ1000mm、幅2000mm、厚さ30mm程度が一般的である。
【0033】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明のケーソンマットにおいては、海水浸入の際の腐食面がケーソンマットとケーソンコンクリートとの界面よりずれる結果、アンカー部材表面への海水の浸入を遅らせることができ、また、たとえアンカー部材に腐食が発生しても、略逆円錐台形状の挿入孔に充填されたコンクリートにより設置初期において強度を確保することができる。また、アンカーボルト踏み抜きによるケガ等の人身事故の可能性がなくなり、作業上の安全性が大幅に向上する。さらに、アンカー部材を確実に垂直に取り付けることが可能となる。さらにまた、ケーソンマットが配置または積み上げられた状態で、一方からのアンカー部材の取付を一人でも容易に行うことができ、施工工数の低減と工事期間の短縮化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のケーソンマットの好適例を示す断面図である。
【図2】本発明に係るアンカー部材の側面図である。
【図3】本発明に係る固定部材の斜視図である。
【図4】図1に示すケーソンマットにコンクリートが流し込まれた状態を示す断面図である。
【図5】本発明の他の好適例に係る固定部材にアンカー部材を挿入する様子を示す部分斜視図である。
【図6】本発明に係るケーソンマットの他の好適例を示す断面図である。
【図7】アンカー部材取り付け最中のケーソンマットの斜視図である。
【図8】ゴム板状ケーソンマットが取り付けられたコンクリートケーソンが捨て石マウンド上に設置された状態を示す斜視図である。
【図9】コンクリートケーソンが一列に捨て石マウンド上に設置された状態を示す斜視図である。
【図10】従来のアンカー部材取り付け後のケーソンマットの斜視図である。
【図11】従来例のケーソンマットへのアンカー部材の取り付け方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ケーソンマット
2 挿入孔
3 固定部材
4 補強部材
5 アンカー部材
6 嵌合部
7 非嵌合部
8 円柱状部
9 切れ込み
10 ケーソンコンクリート
11 先端
12 ひだ部

Claims (6)

  1. コンクリート製ケーソンの底面に接続されるゴム板状のケーソンマットにおいて、
    捨て石マウンドに接する片面が平滑となっており、他方に、開口側が逆円錐台形状を有するアンカー部材の挿入孔を有することを特徴とするケーソンマット。
  2. 前記アンカー部材の挿入孔が、その内部に、アンカー部材を固定するための固定部材と、該固定部材の上方に配置され、該アンカー部材および固定部材の脱落を防止するための補強部材とを備える請求項1記載のケーソンマット。
  3. 前記アンカー部材の挿入孔が、前記固定部材との嵌合部と該嵌合部より縮径の非嵌合部とを備えた挿入部と、該挿入部より拡径した他端に大径の円柱状部を一体的に備えた本体部とより形成されているアンカー部材用の挿入孔である請求項2記載のケーソンマット。
  4. 前記アンカー部材の挿入孔が、先端がテーパー形状に形成されている前記アンカー部材用の挿入孔である請求項2記載のケーソンマット。
  5. 前記挿入孔に前記固定部材としてばね板ナットが設置されている請求項4記載のケーソンマット。
  6. 前記ばね板ナットのケーソン側上面に、該ばね板ナットよりも幅広の座金が前記補強部材として配置されている請求項5記載のケーソンマット。
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