JP4132066B2 - 高分子量ポリオレフィン多孔フィルムおよびその製造 方法 - Google Patents

高分子量ポリオレフィン多孔フィルムおよびその製造 方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ろ過材や水系電池セパレータ用途に適した高分子量ポリオレフィン多孔フィルムおよびその製造方法に関するものであり、より詳しくは、原料の高分子量ポリオレフィンに可塑剤や溶剤を添加することなくポリオレフィンの不透気性シートないしフィルムを調製し、これに熱処理を行って得られた、透気性に優れた多孔フィルムおよびその製造方法、さらには、熱処理後に少なくとも一軸方向に延伸することにより得られた、強度と透気性に優れたポリオレフィンの多孔フィルム、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子量ポリオレフィン微多孔フィルムの製造方法は、例えば、特公平6−53826号公報、特公平6−2841号公報あるいは特公平7−17782号公報に見られるようにすでに数多く提案されている。
これらの方法は、いずれも微多孔フィルムを得るために、高分子量ポリオレフィンにデカン、ドデカン、デカリン、パラフィンオイル、鉱油等の炭化水素系溶剤、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族アルコール等の脂肪酸炭化水素誘導体、パラフィン系ワックスあるいはジオクチルフタレート、ジブチルセバケート等の低分子量化合物から成る可塑剤を添加してフィルムを成形した後、該低分子量化合物をフィルムから除去することにより、微多孔フィルムを得るものである。
そして、特公平6−53826号公報、特公平6−2841号公報で提案されている方法は、高強度の微多孔フィルムを得るために、低分子量化合物をフィルムから除去すると共に得られたフィルムを延伸することを特徴としている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、高分子量ポリオレフィンを原料とするフィルムを多孔化するために、結果として、フィルムから除去する行程が必要となる低分子量化合物を添加せずに、多孔フィルムを得るべく種々検討した結果、特定の高分子量ポリオレフィンフィルムを熱処理して多孔化することにより、透気性に優れる多孔フィルムが得られるという知見を見いだし、さらに、該多孔フィルムを少なくとも一軸に延伸することにより、著しく強度と透気性に優れる多孔フィルムが得られるという知見を見いだし本発明を完成した。
【0004】
本発明の目的は、強度と透気性に優れた多孔フィルムならびに親水化処理して得られる水系電池用セパレータフィルムを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、低分子量化合物を添加せずに、従来低分子量化合物を添加して得られていた高分子量ポリオレフィン多孔フィルムに勝るとも劣らない機械的特性をもち、孔径、空孔率や透気性などの微多孔フィルムの機能の制御範囲が広い高分子量ポリオレフィン微多孔フィルムの製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために提案されたものであって、極限粘度[η]3dl/g以上で、透気度、バブルポイント、空孔率、フィルム厚さおよび突刺強度が特定の高分子量ポリオレフィン多孔フィルムを提供するものである
【0006】
また面配向した高分子量ポリオレフィンフィルムを熱処理するのに、主に非晶性部分を溶融もしくは溶解させた後、それをフィブリル上に結晶(板状晶)化させるとともに、数本の比較的細いフィブリルを部分的な溶融もしくは溶解後、再結晶により凝集させ、より太い1本のフィブリル(らせん状結晶よりなるフィブリルも含む)を形成させて得られる高分子量ポリオレフィン多孔フィルムおよび該フィルムを製造する方法を提供するものである。
【0012】
すなわち、本発明によれば、膨比とドラフト比の積が200以下のインフレーションフィルム成形で得られた実質的にポリオレフィンから成る不透気性フィルムの熱処理で得られる多孔フィルムを、少なくとも一軸に延伸、または少なくとも一軸に延伸後ヒートセットして得られる、以下の特性を有する高分子ポリオレフィン多孔フィルムが提供される。
(1) 少なくとも一方向の引張強度が7MPa以上;
(2) 突刺強度が3.0g/μm以上;
(3) 透気度が200秒/100cc以下;
(4) バブルポイントが0.1ないし5.0kg/cm2
(5) 空孔率が30%以上;
(6) フィルム厚さが1ないし200μm;
【0014】
また、本発明によれば、高分子量ポリオレフィン多孔フィルムが、高分子量ポリエチレン多孔フィルムである上記高分子量ポリオレフィン多孔フィルムが提供される。
【0015】
また、本発明によれば、請求項1記載の多孔フィルムを親水化することによって得られた、以下の特性を有する高分子量ポリオレフィン多孔フィルムからなる水系電池用セパレータフィルムが提供される。
(1) 少なくとも一方向の引張強度が7MPa以上;
(2) 突刺強度が3.0g/μm以上;
(3) 透気度が300秒/100cc以下;
(4) バブルポイントが0.1ないし5.0kg/cm2
(5) 電解液保液率が200%以上;
(6) フィルム厚さが1ないし200μm;
【0017】
また、本発明によれば、膨比とドラフト比の積が200以下のインフレーションフィルム成形で得られた実質的にポリオレフィンから成る極限粘度[η]3dl/g以上のポリオレフィン不透気性フィルムを熱処理を行って多孔化し、少なくとも一軸に延伸、または少なくとも一軸に延伸後ヒートセットすることを特徴とする高分子量ポリオレフィン多孔フィルムの製造方法が提供される。
【0018】
また、本発明によれば、ポリオレフィン不透気性フィルムが面配向されたものである上記高分子量ポリオレフィン多孔フィルムの製造方法が提供される。
【0023】
また、本発明によれば、ポリオレフィン不透気性フィルムが、ポリエチレン不透気性フィルムである上記高分子量ポリオレフィン多孔フィルムの製造方法が提供される。
【0024】
また、本発明によれば、上記高分子量ポリオレフィン多孔フィルムを、さらに界面活性剤および/またはスルホン化剤により親水化する水系電池用セパレータフィルムの製造方法が提供される。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の高分子量ポリオレフィン多孔フィルム、およびその製造方法に関して、原料、処理前フィルムの成形方法、処理方法、延伸方法、得られたフィルムの特徴について述べる。
【0026】
〈原料〉
本発明に用いる高分子量ポリオレフィンとは、エチレン、プロピレンおよび炭素数4ないし8のα−オレフィンを、例えばチーグラー系触媒を用いたスラリー重合により、単独もしくは、二つ以上の組み合わせで重合して得られる。好ましい共重合体は、エチレンと少量のプロピレンもしくは炭素数4ないし8のα−オレフィンの単独ないし二つ以上の組み合わせによる共重合体である。
【0027】
エチレン共重合体の場合、共単量体の量は熱処理温度が広く取れる点で5モル%以下が好ましい。
これらの中で特に好ましいものは、エチレンの単独重合体である。
分子量は、インフレーションフィルム成形時において、極限粘度[η]で3dl/g以上であり、汎用のインフレーションフィルム成形装置で成形できる点で極限粘度[η]3ないし4dl/g未満のものが好ましい。特に高強度の微多孔フィルムを得る目的では4dl/g以上、好ましくは4ないし25dl/gであり、5ないし20dl/gがさらに好ましく、8ないし20dl/gが特に好ましい。
極限粘度[η]が25dl/gを越えるものは、次に述べるように、処理前フィルムを成形する際に溶融粘度が高すぎてインフレーションフィルム成形性に劣る傾向がある。
【0028】
〈処理前フィルム〉
インフレーションフィルム成形法で得られたポリオレフィンからなる不透気性フィルムは、実質的にポリオレフィンから成る。
実質的にポリオレフィンから成るということは、インフレーションフィルム成形時に原料ポリオレフィンに多量の可塑剤および/または溶剤が添加されていないことを意味する。したがって、耐熱安定剤、耐候安定剤、滑剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、顔料、染料等の通常ポリオレフィンに添加して使用される各種添加剤は、本発明の目的を損なわない範囲で配合されていても良いが、その上限は総量で好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0029】
ポリオレフィンのなかで、極限粘度[η]で5dl/g未満、とりわけ4dl/g未満のものは、通常のインフレーションフィルム成形法によって成形することができる。
インフレーションフィルム成形法については、詳しくは、「プラスチックの押出成形とその応用」[澤田慶司著:誠文堂新光社発行(1966年)]の第4編2章に述べられたポリエチレンやポリプロピレンで行われるような一般的な方法が挙げられる。
【0030】
インフレーションフィルム成形法と比べると、T−ダイフィルム成形法の場 合、溶融延伸をすると、成形されるフィルムは一軸配向であるため、成形後、フィルムを面配向させる後処理が必要になるが、インフレーションフィルム成形法では、膨比を適当に選択することによって、フィルム成形時にフィルムを面配向させることができる。
【0031】
本発明の前処理フィルムをインフレーションフィルム成形するための好ましい条件は、ドラフト比と膨比をある特定の範囲内とすることである。ドラフト比とはインフレーションフィルムダイのリップ出口でのフィルム樹脂の流出速度(線速度)に対する冷却固化したチューブフィルムの引き取り速度の比であり、また膨比とは、インフレーションフィルムダイ出口における膨張前のチューブ円周長さに対する冷却固化したチューブフィルムの円周長さの比である。
【0032】
通常の場合、ドラフト比は2以上の範囲で適宜調節されるが、好ましくは3以上であり、膨比は1.1ないし20の範囲で適宜調節される。
極限粘度[η]で5dl/g以上、25dl/g以下の高分子量ポリオレフィンの場合、以下のようにして処理前フィルムを得ることができる。
【0033】
高分子量ポリオレフィンをスクリュー押出機で溶融し、次いでマンドレルがスクリュー回転に伴って、または単独で回転する少なくともL/Dが5のチューブダイから押し出した後、溶融状態のチューブ状フィルムの内部に気体を吹き込んで所定の膨比に膨張させて冷却し、フィルムとするインフレーション成形法によって得られる。
【0034】
ここで、Lはマンドレルとアウターダイで構成されるチューブダイの長さ、またDはスクリューダイ出口におけるアウターダイの内径である。インフレーションフィルム成形装置に関する態様は、本出願人により出願された特公平6−55433号公報に詳述されている。
【0035】
本発明における好ましいドラフト比は、3ないし20であり、より好ましくは4ないし15である。また好ましい膨比は、3ないし20であり、より好ましくは4ないし15である。大孔径の多孔フィルムが必要な場合には、ドラフト比は15以下、膨比は15以下とし、ドラフト比と膨比の積が200以下、好ましくは150以下、より好ましくは130以下とする。
【0036】
インフレーションフィルム成形法とT−ダイフィルム成形法のいずれの方法においても、得られる処理前のフィルムは、極限粘度[η]で3ないし25dl/gのもので、面配向しており、結晶化度が好ましくは50%以上、さらに好ましくは60ないし70%、機械方向の引張強度で0.03GPa以上、好ましくは0.04GPa以上、機械方向に垂直な方向の引張強度で0.02GPa以上、好ましくは0.04GPa以上であり、温度40℃及び湿度90%の条件下で透湿係数が0.45g・mm/m2 ・24hr以下の不透気性フィルムである。不透気性フィルムとは、後述する透気性試験において、透気度が10000秒/100cc以上のフィルムである。得られる処理前フィルムの厚さは特に制限しないが、後に続く処理工程での取扱いの都合で好ましくは5ないし500μm、更に好ましくは5ないし200μmである。
【0037】
示差走査型熱分析計(DSC)で結晶融解熱から求められる処理前フィルムの結晶化度は、ポリエチレンの場合、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60ないし70%である。またポリエチレン以外のポリオレフィンの場合、処理前フィルムの結晶化度は、好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。
【0038】
上述のインフレーションフィルム成形法で得られたフィルムで、ポリエチレンの場合に50%、その他のポリオレフインの場合に40%の結晶化度を下回るフィルムは、本発明の方法で多孔化した場合に空孔率30%以上を達成できない虞がある。この場合、予め気体(空気または窒素)雰囲気下で行う予備的な熱処理等を行うことによって結晶化度を高め、熱処理工程に供することもできる。
【0039】
本発明の処理フィルムは、面配向していることが好ましい。面配向は大きくなり過ぎても、熱処理時の緩和が起こり難く孔径を大きくすることができないが、面配向していないと、熱処理時にフィルムが伸びてたるみ、熱処理の効果を得ることができないので、上述の膨比およびドラフト比の範囲で面配向させることが好ましい。
【0040】
本発明でいう面配向とは、結晶が二軸に配向していることを指す。フィルムが二軸に配向しているということは、フィルム面内でポリオレフィンの単位結晶のうち、分子鎖方向に対応するc軸以外のa軸及びb軸のいずれかが、主としてフィルム面に垂直に存在している状態で、かつその軸以外の例えばc軸がフィルム面内にほぼ無配向に分布している状態をいう。フィルム面に垂直に存在する軸はポリエチレンの場合通常a軸であり、それ以外のポリオレフィンの場合、通常b軸である。
【0041】
この状態は、X線回折装置による観測で以下のようにして確認することができる。すなわち、フィルムのエンド(END)方向からフィルムを赤道方向に配置して、X線を入射し回折パターンを観察したときに、ポリエチレンの場合、配向係数fa(その他のポリオレフィンの場合ではfb)が少なくとも0.2以上であり、かつフィルムの機械軸方向を子午線方向になるように配置して、スルー(THROUGH)方向からX線を入射し回折パターンを観察したときに、配向係数fcが−0.2以上0.2以下であるような状態である。
【0042】
配向係数fa、fb、fcの求め方、および計算方法は、「高分子のX線回折(上)」(LEROY E.ALEXANDER著、桜田一郎監訳、化学同人)の選択配向の節に記載されている通りである。
特にfcが0.2を上回る場合(c軸配向状態)やfaが0.2を下回るような処理前フィルムでは、結晶化度が前記条件を満たしている場合でも、熱処理で多孔化することができない場合がある。なお、極限粘度[η]で3.0dl/gを下回る処理前フィルムでは条件によっては多孔化するが、引張強度の点で満足できない場合がある。
【0043】
〈熱処理〉
上述の処理前フィルムの熱処理は、雰囲気の状態によっても変わるが、例えば、ポリエチレンの場合、通常100ないし145℃の温度で1分間以上といった条件で行うことが好ましい。この時、処理前フィルムは、収縮を妨げるように、好ましくは少なくとも一方向で、最も好ましくは、直交する二方向で固定されて拘束される。収縮が余儀なくされる場合の好ましい収縮の許容範囲は、長さおよび幅方向で10%以下である。
【0044】
処理前フィルムの二方向を固定した場合、上述の処理で、フィルムは多孔化する。後述する特定の第一の液体を用いている場合には、固定状態のまま乾燥することにより、多孔フィルムを得ることができる。
【0045】
熱処理の雰囲気は、空気中でも良いが、高分子量ポリオレフィンと適度な親和性を持つ第一の液体の中で行うことが好ましい。高分子量ポリオレフィンと適度な親和性を持つということは、高分子量ポリオレフィンの処理前フィルムを成形し、それを処理温度で第一の液体に浸漬したとき、処理前フィルムの結晶部分にはほとんど作用せずに、主として非晶性部分に浸透し、選択的に溶融もしくは溶解させ、冷却した時にその一部を結晶化させ、全体として結晶化度を上げ得るものである。したがって、著しく親和性が優れ、熱処理温度域でポリオレフィン結晶を溶解する溶剤は排除される。
【0046】
なお、高分子量ポリオレフィンと親和性を持つとは、高分子量ポリオレフィンフィルムに液体が充分に馴染むことであり、表面張力が小さいと言い換えることができる。そしてその尺度としては、接触角で100度以下、好ましくは90度以下、更に好ましくは80度以下の液体である(なお、表面張力は、市販の自動接触角計を用い、常法で測定できる)。
【0047】
また、高分子量ポリオレフィンの結晶を熱処理温度域で溶解しない液体とは、例えば、溶液セルを装着した示差走査熱量計(DSC)で、液体の存在下で高分子量ポリオレフィンの融点をセカンドランで観察した時に、高分子量ポリオレフィン単独の融点に比べて、その融点を20℃以上低下させない液体である。液体の高分子量ポリオレフィンに対する親和性は処理温度によっても変わるので、処理温度と液体の種類を選ぶことにより適度な親和性を得て、多孔化の効果を最大限まで上げることができる。
【0048】
このような第一の液体としては、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール、アミルアルコール等のような低級脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のような低級脂肪族ケトン;ギ酸エチル、酢酸ブチル等のような低級脂肪酸エステル;四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、クロロベンゼン等のようなハロゲン化炭化水素;ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン等のような炭化水素;ピリジン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等のような窒素含有有機化合物;メチルエーテル、エチルエーテル、ジオキサン、ブチルセロソルブ等のようなエーテルである。また、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のようなグリコール類、界面活性剤類や一般的に加熱媒体として用いられるシリコンオイル等も好ましい液体である。
【0049】
これらの液体は、2種または2種以上の混合物として使用することもできる。また界面活性剤を添加した温水、熱水も有効であるが、ベンゼン、キシレン、テトラリンは、高分子量ポリオレフィンを熱処理温度で溶解するため、好ましくない。
ポリエチレンおよびポリプロピレンに対する好適な第一の液体は、オクタン、デカン、ドデカン、パラフィンオイル、溶融パラフィンワックスやそれらを主成分とする液体、これらの少なくとも一種類以上の組成物の液体である。
【0050】
熱処理温度は、ポリオレフィンの種類や液体の種類にもよるが、例えば前述したように、ポリエチレンの場合では、通常100℃ないし145℃、好ましくは115℃ないし140℃である。ポリエチレン以外の場合のポリオレフィンの処理温度は通常50℃ないし170℃好ましくは80℃ないし160℃である。一般的に処理時間は、処理前フィルムが処理温度に到達後、10秒ないし10分間、好ましくは30秒ないし5分間であり、処理温度が高くなれば、処理時間を短くすることができる。なお必要以上の処理時間は、多孔フィルムの引張強度を低下させる虞があるので避けたほうが好ましい。
【0051】
インフレーションフィルム成形機で成形された処理前フィルムは、ピンチロールで押さえて巻き取られるチューブ状フィルムであるから、熱処理に際しては、一方の端を切り離して単一のフィルムとして取り扱う。インフレーションフィルムの場合、T−ダイフィルム成形と比較すると、T−ダイフィルムのように両端部(耳部)を切り捨てる必要がないため収率面でも優位である。
【0052】
〈低沸点液体への浸漬および乾燥〉
前記第一の液体中で熱処理を行ったフィルムは、乾燥処理が行われる。処理に用いた液体の種類にもよるが、フィルムの収縮を妨げるように二方向固定した状態であれば、処理液体を温風や熱風で直接乾燥してもよいが、比較的乾燥速度の遅い液体の場合、第一の液体と相溶性があり、その液体より沸点が低くかつその液体よりもポリオレフィンとの親和性に劣る第二の液体に浸漬して、乾燥することが好ましい。さらに、乾燥する際にも、処理フィルムは収縮を抑えるように、好ましくは少なくとも一方向で、最も好ましくは直交する二方向で固定される。収縮が余儀なくされる場合の好ましい収縮の許容範囲は長さおよび幅方向で10%以下である。
【0053】
用いることのできる第二の液体の例としては、ヘキサン、ヘプタンのような低沸点炭化水素、塩化メチレンのような塩素置換低沸点炭化水素、1,2−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン、1、1ージクロロー1ーフルオロエタン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノールのような塩素フッ素置換低沸点炭化水素などが挙げられる。浸漬温度や浸漬時間は、熱処理温度以下で液体の置換が完全に行われる条件のうち、最低の温度と最短の時間が選ばれる。
【0054】
〈延伸〉
本発明は、可塑剤および/または溶剤を実質的に含まない極限粘度[η]が3dl/g以上のポリオレフィン不透気性フィルムを拘束下で熱処理を行って微多孔化する高分子量ポリオレフィン多孔フィルムおよびその製造方法を提供するものであるが、引張強度のさらに大きな多孔フィルムを得るためやフィルムの空孔率、孔径の調節のために熱処理後に延伸を行ってもよい。
【0055】
延伸は、熱処理後のフィルムの融点以下で行われる。延伸温度の下限は高分子量ポリオレフィンの種類による。高分子量ポリオレフィンがポリエチレンであれば、80℃ないし熱処理後フィルムの融点以下、好ましくは100ないし130℃である。延伸倍率は、一軸延伸の場合1.1倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは1.5ないし5倍である。一軸延伸の場合には一定幅一軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合には、面倍率で1.5倍以上、好ましくは1.5ないし25倍である。
【0056】
延伸は空気雰囲気下で行っても良いし、また上述の熱処理の部分で述べたように高分子量ポリオレフィンと適度な親和性を持ち、かつ延伸温度で熱処理後フィルムを溶解しない第一の液体との接触下で行っても良い。
延伸の方法は、横方向の幅の収縮(幅落ち)を最小限に抑えた一軸延伸、もしくは、テンタークリップで横方向の収縮を妨げた一軸延伸や、通常の二軸延伸試験機で行われる全テンタークリップ方式による逐次もしくは同時二軸延伸、さらには、一段目を一対のロールで延伸し、次いでテンタークリップで横方向に延伸する連続逐次二軸延伸、または連続テンタークリップ方式の連続同時二軸延伸が適用できる。
【0057】
〈ヒートセット〉
乾燥後または延伸後の多孔フィルムは、フィルムの皺の除去、空孔率やフィルム厚みの調整、フィルムの表面摩擦抵抗の低減化、熱収縮の低減化のためにヒートセットを行ってもよい。ヒートセットとは、上記多孔フィルムの直交する二方向を固定した状態で加熱することをいい、その際の条件は、気体(空気)雰囲気下で所望の物性値を得るために必要な温度や処理時間などが適宜選ばれるが、通常、処理後のフィルムの融点以下で最適な温度と時間が決められる。温度が高ければ、処理時間は短く、温度が低ければ処理時間を長くすることが必要である。
【0058】
〈高分子量ポリオレフィン多孔フィルム〉
本発明において、熱処理によって得られる高分子量ポリオレフィン多孔フィルムは、葉脈状および/または網目状をなすフィブリルを主な構成要素としていることが重要な特徴である。
葉脈状および/または網目状をなすフィブリルとは、フィルムを構成するフィブリルが、太い幹の繊維とその外方に連なる細い繊維とを持ち、細い繊維が複雑な網状構造を形成している状態をいう。
【0059】
該フィルムを形成するフィブリルとしては、延伸鎖結晶と板状晶よりなるフィブリル(A)とらせん状結晶よりなるフィブリル(B)がある。
高分子材料におけるフィブリルの構造や形態の一例としては、応力下の溶液結晶化物において検討がなされており、例えば、A.J.Pennings,A.A.Kiel,Kolloid Z.,205,p160(1965);A.Keller,J.Machin,J.Macromol.Sci.,B1,p41(1967)等に、あるいは、K.Kobayashi,T.Nagasawa,J.Macromol.Sci.Phys.,B3,p153(1970);T.Nagasawa,Y.Shimomura,J.Polymer Sci.Polymer Phys.Ed.,12,p2291(1974)等において述べられている。
【0060】
これらの文献においては、フィブリルの構造として二つの構造モデルが提案されている。前者は、フィブリルの中心に形成された伸びきり鎖結晶と、それにぶら下がった分子鎖が形成する板状晶よりなる構造であり、後者は、折りたたみ鎖よりなる結晶核に内在しているらせん転移が流動方向に配向するためにフィブリル状になるもので、必ずしも前者に存在する伸びきり鎖結晶を必要としないというモデルである。
【0061】
本明細書中で述べる延伸鎖結晶と板状晶よりなるフィブリル(A)とは、上記構造モデルの前者に相当するものであり、一般にシシカバブ構造と呼ばれる結晶である。これは、中心部に繊維状の延伸鎖結晶が存在しているもので、その延伸鎖結晶を核として折り畳み鎖結晶(板状晶)が周期的に構成されたものであり、具体的には、図3に示すような形態である。
【0062】
一方、本明細書中で述べるらせん状結晶よりなるフィブリル(B)とは、上記構造モデルの後者に相当するものであり、中心部の繊維状の結晶がほとんど、あるいは全く観察されないものであり、折り畳み鎖よりなる板状結晶がらせん状に形成されたもので、具体的には図4に示すような状態である。
【0063】
延伸鎖結晶と板状晶よりなるフィブリル(A)は、板状晶の幅として測定される太さが0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1ないし10μmであり、通常1μmを越えるものを含んでいる。このフィブリルの太さは、熱処理前の不透気性フィルムが同一であれば、第一液体の熱処理温度が高いほど太くなる傾向にあり、また、熱処理温度が同一の場合には、不透気性フィルム成形における膨比とドラフト比の積が小さいほど太くなる傾向にある。さらに、不透気性フィルム原料として[η]が小さいものを使用するほど太いフィブリルが形成される傾向にある。
【0064】
らせん状結晶よりなるフィブリル(B)は、らせん状結晶の幅として測定される太さが0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1ないし10μmであり、通常1μmを越えるものを含んでいる。このフィブリルの太さの変化は、延伸鎖結晶と板状晶よりなるフィブリルと同様な傾向にある。
【0065】
上記二種のフィブリルが生成する条件としては、同一の不透気性フィルムを使用した場合、熱処理温度が低い方が、(A)のフィブリルが生成しやすく、熱処理温度が高くなるにつれて、(B)のフィブリルが生成しやすくなる。また原料の[η]が高い場合(例えば、約15dl/g程度)にはほとんどの熱処理温度範囲で(A)のフィブリルが生成する。反対に原料の[η]が低い場合(例えば約5dl/g)には(B)のフィブリルが生成する熱処理温度範囲が比較的広くなる。
これらフィブリルの状態は、添付した電子顕微鏡写真である図3および図4に示される。
【0066】
図3の(a)は、後述する実験例27で得られた高分子量ポリオレフィン多孔フィルムの倍率3000倍の電子顕微鏡写真であり、(b)は、同じく倍率10000倍の電子顕微鏡写真である。また、図4の(a)は、後述する実験例28で得られた高分子量ポリオレフィン多孔フィルムの倍率3000倍の電子顕微鏡写真であり、(b)は、同じく倍率10000倍の電子顕微鏡写真である。
図3および図4からもわかるように、本発明の高分子量ポリオレフィン多孔フィルムは、葉脈状および/または網目状をなす各フィブリルの太さを太くし、単位面積あたりのフィブリルの本数を減少させることによって、孔径を大きくすることで高透気性を達成している。
【0067】
透気度は、熱処理温度を高めに設定することにより大きく(ガーレー秒は小さく)することができ、ガーレー秒で1000秒/100cc以下、好ましくは500秒/100cc以下、さらに好ましくは200秒/100cc以下である。熱処理温度が高すぎたり、熱処理時間が長すぎると、フィルム表面が溶解し、透気性が失われるため好ましくない。
【0068】
バブルポイントは、孔径が大きくなるにつれて低い値をとり、通常0.1ないし7.0kg/cm2 である。好ましくは0.1ないし5.0kg/cm2 である。
【0069】
空孔率は、30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。空孔率は、多孔フィルム作成後ヒートセットにより適宜調節できる。
フィルム厚さは、10ないし200μmであり、突刺強度は、3.0g/μm以上、好ましくは5.0g/μm以上、より好ましくは6.0g/μm以上である。
【0070】
したがって、熱処理後の本発明の高分子量ポリオレフィン微多孔フィルムは、また以下のような特徴を有するものである。
(1)透気度が1000秒/100cc以下
(2)バブルポイントが0.1ないし7.0kg/cm2
(3)空孔率が30%以上
(4)フィルム厚さが10μmないし200μm
(5)突刺強度が3.0g/μm以上
【0071】
本発明において、熱処理後に少なくとも一方向に延伸して得られる高分子量ポリオレフィン多孔フィルムもまた、葉脈状および/または網目状をなすフィブリルを主な構成要素としている。
延伸後のフィルムにおいては、熱処理後のフィルムと比べ、フィルムを形成するフィブリルの状態は明確ではなく、形態上は、延伸鎖結晶と板状晶よりなるフィブリルやらせん状結晶よりなるフィブリル、およびそれらの過渡的な状態等、様々なフィブリルより形成されている。
【0072】
引張強度は、少なくとも一方向で7MPa以上、好ましくは少なくとも一方向で9MPa以上、より好ましくは少なくとも一方向で10MPa以上、さらに好ましくは少なくとも一方向で15MPa以上、特に好ましくは少なくも一方向で20MPa以上である。
【0073】
突刺強度は、3.0g/μm以上、好ましくは6g/μm以上、より好ましくは9.0g/μm以上、さらに好ましくは10.0g/μm以上である。透気度は、延伸倍率を高くすると大きく(ガーレー秒では小さく)することができ、ガーレー秒で200秒/100cc以下、好ましくは100秒/100cc以下、より好ましくは80秒/100cc以下である。延伸後のフィルムの透気度は、延伸前の熱処理フィルムの孔の大きさが影響しており、延伸前のフィブリルの太さが太いほど(したがって、孔径が大きいほど)透気性が良くなる傾向にある。
【0074】
バブルポイントは、孔径が大きくなるにつれて低い値をとり、通常0.1ないし5.0kg/cm2 である。好ましくは0.1ないし4.0kg/cm2 である。透気度と同様に延伸前のフィルムの孔径が大きいほど、延伸後のバブルポイントも低くなる傾向にある。
また、過度な熱処理によって作成された透気性のないフィルム(フィルム表面に溶解した膜が存在する)も、延伸後には透気性があるフィルムとすることが可能である。
【0075】
空孔率は、30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。空孔率は、多孔フィルム作成後ヒートセットにより適宜調節できる。
フィルム厚さは、1ないし200μmである。
【0076】
本発明において、熱処理後のフィルムを少なくとも一軸に延伸した高分子量ポリオレフィン多孔フィルムは、以下のような特徴を有する。
(1)少なくとも一方向の引張強度が7MPa以上
(2)突刺強度が3.0g/μm以上
(3)透気度が200秒/100cc以下
(4)バブルポイントが0.1ないし5.0kg/cm2
(5)空孔率が30%以上
(6)フィルム厚さが1ないし200μm
【0077】
また、本発明においては、熱処理後少なくとも一軸に延伸されたフィルムをヒートセットした高分子量ポリオレフィン多孔フィルムも同様に以下のような特徴を有する。
(1)少なくとも一方向の引張強度が7MPa以上;
(2)突刺強度が3.0g/μm以上;
(3)透気度が200秒/100cc以下;
(4)バブルポイントが0.1ないし5.0kg/cm2
(5)空孔率が30%以上;
(6)フィルム厚さが1ないし200μm;
【0078】
また、本発明の高分子量ポリオレフィン多孔フィルムを、水系電池用セパレータに適用するためには、フィルムを親水化することが必要になる。親水化方法としては、界面活性剤で処理する方法、スルホン化剤により表面改質する方法、フッ素ガス等のガス処理を行って官能基を付加する方法、またはコロナ放電処理、プラズマ処理および電子線処理からなる群より選ばれる1種の方法で表面処理するか、あるいはフィルムの表面に、親水性基を有するビニル単量体を重合させる方法ならびにこれらの方法の組み合わせによる方法等が挙げられる。
【0079】
これらの方法の中でも、電池セパレータに用いる場合には、電池特性の点で、界面活性剤および/またはスルホン化剤による方法が好ましい。
フィルムの表面に、親水性基を有するビニル単量体を結合(重合)して、表面に親水性基を付与する方法としては、例えば、親水性基を有するビニル単量体をフィルムの表面に塗布し、次いで電子線照射する方法が挙げられる。
親水性基を有するビニル単量体として具体的には、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸;酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル;およびこれらの混合物が挙げられる。
【0080】
本発明の高分子量ポリオレフィン多孔フィルムからなる水系電池用セパレータフィルムは、下記の特性を有していることが重要である。
(1) 少なくとも一方向の引張強度が7MPa以上;
(2) 突刺強度が3.0g/μm以上;
(3) 透気度が300秒/100cc以下;
(4) バブルポイントが0.1ないし5.0kg/cm2
(5) 電解液保液率が200%以上;
(6) フィルム厚さが1ないし200μm;
【0081】
本発明における前記特性は、下記の方法によって測定されたものである。
【0082】
〈極限粘度〉
本明細書中での極限粘度は、デカリン溶媒にて135℃で測定する値である。
測定法はASTM D4020に基づいて行う。
【0083】
〈膜厚の測定〉
東京精密株式会社製膜厚測定機ミニアックス(型式DH−150型)にて測定した。
【0084】
〈空孔率〉
試料フィルム重量を測定し、密度を0.95g/cm3 として、緻密フィルムとしての厚みを計算で求め、上述の膜厚測定機による値との関係で求めた。
Figure 0004132066
ここで、T0 は膜厚測定機で求めた実際のフィルム厚み、そして、Tw は重量から計算で求めた空孔率0%としてのフィルム厚みである。
【0085】
〈引張強度〉
オリエンテック社製引張試験機テンシロン(型式RTM100型)で室温(23℃)で行った。ASTM D882の方法A(試料幅15mm)により測定し、算出した。
【0086】
〈透気度〉
ASTM D726に準じ、フィルムを標準ガーレーデンソメーター(GurleyDensometer:東洋精機製作所製B型ガーレーデンソメーター)によりガーレー秒を測定した。
【0087】
〈融点の測定〉
本発明にいうところの融点は、ASTM D3417により、示差走査型熱量計(DSC)により測定した値である。
【0088】
〈結晶化度〉
本発明による結晶化度は、示差走査型熱量計(DSC)により、ASTM D3417に示された条件で融点を測定した際に、同時に測定される融解熱量を用い、理論結晶融解熱量の値に対する割合として計算で求めた。
【0089】
〈配向係数〉
理学電機(株)製X線回折装置(型番RU300)にて測定した。
【0090】
〈バブルポイント〉
バブルポイントはASTM F316−70に準じて測定した。測定は、界面活性剤の1wt%水溶液に30分浸漬後その水溶液をそのまま用いて行った。界面活性剤としては、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル(花王製;エマルゲン709)を使用した。
【0091】
〈突刺強度〉
オリエンテック社製テンシロン引張試験機(型式RTM100型)を用い、23℃にて、クロスヘッドスピード100mm/minで測定した。突き刺し用の針は、針先端が0.5mmRである。直径1mmの針を用いて行った。突刺強度は針がフィルムを突き破る時の力を前出のTw(重量から計算で求めた厚み)で割った値を採用した。
【0092】
〈電解液保液率〉
10×10cmの大きさの試験片を3枚採取し、水分平衡に至らせた状態の重量Wを測定した。次に、比重1.3のKOH水溶液中に試験片を1時間浸漬した後、液中から引き上げてフィルム角部の一点からつるし、10分後の試験片の重量W2 を測定し、下式により算出した。
Figure 0004132066
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、強度と透気性に優れた高分子量のポリオレフィン多孔フィルムが提供され、この多孔フィルムは、原料の高分子量ポリオレフィンに可塑剤や溶剤を添加することなくポリオレフィンの不透気性シートないしフィルムを調製し、これに熱処理を行うことにより得ることができる。
この多孔フィルムは、その強度と透気性に優れた物性を利用して、ろ過材や水系電池セパレータ、電池用セパレータフィルム、電解コンデンサ用セパレータフィルム、通気性フィルムの用途、紙おむつやハウスラップ等の透湿防水用途、その他衣料・包装・印刷分野の用途に好適に供される。
【0094】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお下記実施例中の「%」は特に断りのない限り、「重量%」である。
【0095】
実験例1
〈処理前フィルムの調製〉
表1の仕様により図1に示すインフレーションフィルム成形装置を用いて高分子量ポリエチレンインフレーションフィルムを成形した。
Figure 0004132066
【0096】
ここで、S1は、チューブダイ入口部4の樹脂流路の断面積、S2は、チューブダイ中間部5の樹脂流路の断面積、S3は、チューブダイ出口部6での樹脂流路の断面積である。
ポリエチレン(極限粘度[η]=16.5dl/g、嵩密度=0.45g/cm3 )の粉末を用い、押出機1、ダイ中央部2及びダイ出口部3の設定温度をそれぞれ280℃、180℃、150℃として、押出量を約3kg/hrに設定し、スクリューに内在する気体流路を通して、圧縮空気を吹き込み、膨らんだチューブフィルムの直径に適合する口径の冷却リング7の内径に接触させて冷却固化し、同時に安定板8に沿って折り畳み、ピンチロール9で所望の速度で引き取ることにより、ポリエチレンインフレーションフィルムを成形した。冷却リングは、膨比の大きさに応じて適宜適当な内径のものに変更した。成形条件と得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0097】
Figure 0004132066
【0098】
実験例2
〈多孔化〉
実験例1で成形した処理前フィルムを用いて、以下のようにして熱処理を行った。
図2に示した一対のステンレス製金枠13に処理前フィルム12を挟み、ネジ11で上下の金枠に固定することにより、フィルムの四方を固定した。この状態で、加熱した熱処理用液体(第1液体)を満たした槽中に投入し、所定時間浸漬した。
【0099】
〈第二の液体浸漬と乾燥〉
熱処理槽から取り出した金枠に固定したフィルムをその状態で第二の液体で満たした槽中に投入し、浸漬した。これを取り出して室温(23℃)で風乾した。その後、フィルムを金枠からはずし、測定用試料とした。
処理条件と結果を表3,表4に示す。
【0100】
Figure 0004132066
【0101】
Figure 0004132066
【0102】
実験例3
〈延伸〉
実験例2で得られた多孔フィルムを用いて延伸を行った。延伸はテンタークリップ方式の東洋精機製二軸延伸機を使用し、1.5m/minの延伸速度で空気中で行った。また延伸方法は、固定幅一軸延伸および逐次二軸延伸で行った。
延伸条件と結果を表5,表6に示す。
【0103】
Figure 0004132066
【0104】
Figure 0004132066
【0105】
実験例4
〈ヒートセット〉
実験例3で得られた多孔フィルムを用いてヒートセットを行った。ヒートセットは、エアオーブン(タバイ製)を使用し、二方向を固定した状態で行った。ヒートセット条件と結果を表7,表8に示す。
【0106】
Figure 0004132066
【0107】
Figure 0004132066
【0108】
実験例5
〈処理前フィルムの調製〉
実験例1と同様な成形装置を用いて高分子量ポリエチレンインフレーションフィルムを成形した。成形条件と得られたフィルムの特性を表9に示す。
【0109】
Figure 0004132066
【0110】
実験例6
〈多孔化〉
実験例5で成形した処理前フィルムを用いて、実験例2と同様の方法で熱処理を行った。
処理条件と結果を表10,表11に示す。
【0111】
Figure 0004132066
【0112】
Figure 0004132066
【0113】
実験例7
〈処理前フィルムの調製〉
汎用インフレーションフィルム成形機(サーモプラスチック社製押出成形機、30mmφ、L/D=25)を用いて表12の条件でフィルムを成形した。
【0114】
Figure 0004132066
【0115】
実験例8
〈多孔化〉
実験例7で成形した処理前フィルムを用いて、実験例2と同様の方法で熱処理を行った。処理条件と結果を表13,表14に示す。
【0116】
Figure 0004132066
【0117】
Figure 0004132066
【0118】
実験例9
〈延伸〉
実験例8で得られた多孔フィルムを用いて実験例3と同様な方法で延伸を行った。延伸条件と結果を表15,表16に示す。
【0119】
Figure 0004132066
【0120】
Figure 0004132066
【0121】
実験例10
〈親水化処理〉
実験例3で得られた多孔フィルムを使用して、親水化処理を行った。親水化は以下の方法で行った。まず、界面活性剤の1wt%水溶液中に10分間浸漬し、自然乾燥後、発煙硫酸中に10分間浸漬し、低温で水洗後、自然乾燥した。
界面活性剤としては、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテルを使用した。また発煙硫酸としては、25%発煙硫酸を使用した。
得られたフィルムの各種物性を表17に示す。
【0122】
Figure 0004132066
【0123】
この結果から明らかなように、本発明の多孔フィルムは親水化処理を行うことによって、透気度、引張強度、突刺強度、バブルポイントおよび電解液保液率に優れた親水性多孔フィルムを得ることができる。
このような物性は、前述した水系電池用セパレータ等の用途に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多孔フィルムを製造するための成形装置の一例を示す正面断面図である。
【図2】本発明において、延伸前フィルムを熱処理する際に該フィルムを固定するための金枠の一例を示す図である。
【図3】(a)は、本発明の実験例27で得られた、高分子量ポリオレフィン多孔フィルムの倍率3000倍の電子顕微鏡写真であり、(b)は同じく倍率10000倍の電子顕微鏡写真である。
【図4】(a)は、本発明の実験例28で得られた、高分子量ポリオレフィン多孔フィルムの倍率3000倍の電子顕微鏡写真であり、(b)は同じく倍率10000倍の電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 押出機
2 ダイ中央部
3 ダイ出口部
4 チューブ台入口部
5 チューブ台中間部
6 チューブ台出口部
7 冷却リング
8 安定板
9 ピンチロール

Claims (7)

  1. 膨比とドラフト比の積が200以下のインフレーションフィルム成形で得られた実質的にポリオレフィンから成る不透気性フィルムの熱処理で得られる多孔フィルムを、少なくとも一軸に延伸、または少なくとも一軸に延伸後ヒートセットして得られる、以下の特性を有する高分子ポリオレフィン多孔フィルム。
    (1) 少なくとも一方向の引張強度が7MPa以上;
    (2) 突刺強度が3.0g/μm以上;
    (3) 透気度が200秒/100cc以下;
    (4) バブルポイントが0.1ないし5.0kg/cm2
    (5) 空孔率が30%以上;
    (6) フィルム厚さが1ないし200μm;
  2. 高分子量ポリオレフィン多孔フィルムが、高分子量ポリエチレン多孔フィルムである請求項1記載の高分子量ポリオレフィン多孔フィルム。
  3. 請求項1記載の多孔フィルムを親水化することによって得られた、以下の特性を有する高分子量ポリオレフィン多孔フィルムからなる水系電池用セパレータフィルム。
    (1) 少なくとも一方向の引張強度が7MPa以上;
    (2) 突刺強度が3.0g/μm以上;
    (3) 透気度が300秒/100cc以下;
    (4) バブルポイントが0.1ないし5.0kg/cm2
    (5) 電解液保液率が200%以上;
    (6) フィルム厚さが1ないし200μm;
  4. 膨比とドラフト比の積が200以下のインフレーションフィルム成形で得られた実質的にポリオレフィンから成る極限粘度[η]3dl/g以上のポリオレフィン不透気性フィルムを熱処理を行って多孔化し、少なくとも一軸に延伸、または少なくとも一軸に延伸後ヒートセットすることを特徴とする高分子量ポリオレフィン多孔フィルムの製造方法。
  5. ポリオレフィン不透気性フィルムが面配向されたものである請求項4記載の高分子量ポリオレフィン多孔フィルムの製造方法。
  6. ポリオレフィン不透気性フィルムが、ポリエチレン不透気性フィルムである請求項4または5記載の高分子量ポリオレフィン多孔フィルムの製造方法。
  7. 請求項1または2記載の高分子量ポリオレフィン多孔フィルムを、さらに界面活性剤および/またはスルホン化剤により親水化する水系電池用セパレータフィルムの製造方法。
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