JP4017307B2 - 多孔質フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔質フィルムの製造方法に関する。さらに詳しくは、電池用セパレータ、各種フィルターや分離膜等の用途に用いられる多孔質フィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、種々のタイプの電池が実用に供されているが、近年、電子機器のコードレス化等に対応するために、軽量で、高起電力及び高エネルギーを得ることができ、しかも自己放電が少ないリチウム電池が注目を集めている。例えば、リチウム二次電池は、携帯電話やノートブックパソコン用として多量に用いられており、更に、今後、電気自動車用バッテリーとして期待されている。
【0003】
これら電池の中で正極負極の短絡防止のため、セパレータが介在せしめられるが、かかるセパレータとしては正極負極間のイオンの透過性を確保するため多数の微細孔が形成された微多孔膜が使用される。該セパレータ用微多孔膜には電池特性に関与する多くの要求特性が必要となるが、高強度でかつ高空孔率であることが要求されている。高強度化は、電池の組立作業性の向上、および内部短絡不良率の低下に貢献し、さらにはセパレータの薄膜化による容量アップが期待できる。高空孔率化は、イオン透過性を向上させ、充放電特性、特に高レート時の充放電特性が有利になる。
【0004】
高強度でかつ高空孔率の微多孔膜を工業的規模で効率よく製造する方法としては、厚みが均一で厚い原反を高倍率で圧延又は延伸する方法が考えられる。
【0005】
従来、微多孔膜の製法としては、超高分子量ポリオレフィン樹脂や超高分子量ポリオレフィン樹脂とその他のポリオレフィン樹脂を溶媒中で加熱溶解した液からゲル状シートを作製し、延伸処理した後、残存溶媒を除去する方法などが種々提案されている。例えば、特開平9−3228号公報に超高分子量ポリオレフィン樹脂を溶媒中、加熱して溶解し、これをゲル状のシートに冷却成形した後、2軸延伸することで、微多孔膜を製造する方法が開示されている。しかしながら、この製法では2軸延伸を従来のテンター方式で行うため、原反厚みを厚くすると、得られるフィルムの厚み精度が悪くなるため、高倍率の延伸が不可能であり、微多孔膜の高強度化には限界があった。
【0006】
一方、特公平6−93130号公報に、ポリオレフィン樹脂と溶媒からなる混練物をシート状に押し出し、冷却固化させた後、圧延処理、さらに延伸処理することで微孔性多孔質膜を製造する方法が開示されている。しかしながら、この製法では、圧延を通常の圧延ロールで行うため、機械軸方向の圧延、つまり1軸圧延しか行うことができず、またサンプルの噛み込み性が悪いため、高倍率の圧延が不可能であり、高強度の多孔質膜を得ることができないといった問題があった。
【0007】
また、高倍率で、かつ同時に機械軸方向と幅方向の2軸方向に圧延することは現在までの技術では不可能であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高強度でかつ高空孔率であり、さらに厚みの安定性に優れる多孔質フィルムの製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、ポリオレフィン組成物と溶媒とからなる混合物を溶融混練し、得られた溶融混練物をシート状に押し出した後冷却し、得られたシート状成形物を圧延する多孔質フィルムの製造方法において、圧延時の繰り出し速度/ライン速度を0.2〜1に調整したダブルベルトプレスを用いて、圧延倍率が5倍以上に、かつ機械軸方向と幅方向に圧延することを特徴とする多孔質フィルムの製造方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の多孔質フィルムの製造方法では、ポリオレフィン組成物と溶媒とからなる混合物を用いる。
【0011】
本発明に用いられるポリオレフィン組成物としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等のオレフィンの単独重合体、共重合体及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中では、得られる多孔質フィルムの高強度化の観点から、超高分子量ポリエチレンが好ましい。
【0012】
超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量は、1×106 以上であり、好ましくは2×106 以上である。
【0013】
ポリオレフィン組成物として、超高分子量ポリエチレンを用いる場合は、組成物中における超高分子量ポリエチレンの含量を1重量%以上とすることが好ましい。
【0014】
以上の構成を有するポリオレフィン組成物の配合量は、該組成物と溶媒とからなる混合物中10〜30重量%が好ましく、15〜25重量%がより好ましい。該配合量は、膜強度が強い観点から、10重量%以上が好ましく、均一な混練が容易で、厚みムラ、特性ムラが生じない観点から30重量%以下が好ましい。
【0015】
本発明に用いられる溶媒としては、前記ポリオレフィン組成物の溶解性に優れたものであれば、特に限定されないが、例えば、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、デカリン、流動パラフィンなどの脂肪族または脂環式炭化水素、沸点がこれらに対応する鉱油留分、あるいはこれらの混合物等が挙げられ、なかでも、流動パラフィン等の不揮発性溶媒が好ましい。かかる溶媒の配合量は、前記混合物中70〜90重量%が好ましく、75〜85重量%がより好ましい。該配合量は、均一な混練が容易で、均一な孔構造の多孔質フィルムが得られる観点から、70重量%以上が好ましく、多孔質フィルムの強度が十分高い観点から、90重量%以下が好ましい。
【0016】
なお、前記混合物には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、造核剤、顔料、帯電防止剤等の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0017】
前記混合物は、例えば、前記ポレオレフィン組成物と前記溶媒とを均一なスラリー状に混合し、溶融混練する。本発明においては、前記混合物の溶融混練は、ポリオレフィン樹脂のポリマー鎖の十分な絡み合いを得るために、前記混合物に十分な剪断力を作用させて行うことが好ましい。混練時に十分な剪断力を作用させることができないときには、絡み合いが不十分になり、強度アップが困難になる。従って、本発明におけるポリオレフィン組成物と溶媒とからなる混合物の溶融混練には、通常、混合物に強い剪断力を与えることができるニーダや二軸混練機が好ましく用いられる。
【0018】
前記混合物を溶融混練する際の温度は、適当な温度条件下であればよく、特に限定されないが、115〜185℃が好ましい。溶融混練の際の温度は、混合物を十分に混練して、ポリオレフィン樹脂のポリマー鎖の十分な絡み合いを得るために、115℃以上が好ましく、適度な粘度で、混合物に十分な剪断力を作用させるために、185℃以下が好ましい。
【0019】
次に、得られた溶融混練物をシート状に押し出し、その後冷却してシート状成形物を作製する。溶融混練物を押し出す方法は、特に限定されず、例えば、Tダイ等を取り付けた押出機などを用いることが好ましい。押し出した溶融混練物の冷却には、従来より用いられている冷却ロール等を特に限定することなく用いることができるが、シート状成形物の厚みが0.5mm以上と厚い場合、ロールによる冷却では冷却ムラが生じ、結晶化度、表面形状等の均一性に欠けることになる。そのため本発明では、シート状成形物の表面層のみならず、中心部までポリオレフィン樹脂を微細に結晶化させるために、冷却されたサイジングダイスを用いることが好ましい。
【0020】
なお、冷却温度は、好ましくは−15℃以下、より好ましくは−20℃以下であることが望ましい。
【0021】
サイジングダイスを−15℃以下の温度に冷却する方法は、特に限定されないが、例えば、ダイス内に配管を設け、その配管内に予め水で希釈された不凍液を一定量循環させればよい。さらに冷却能力アップを図るために、サイジングダイスに冷却槽を設け、その槽内に前記水で希釈された不凍液を循環させてもよい。いずれの方法を採用しても、冷却水の出入口の温度差を可能な限り小さくして温度ムラや温度勾配のない、かつ冷却効率のより高いものが望ましい。
【0022】
また、このサイジングダイスのギャップ厚みと引き取り速度の調整により、容易に所定の厚みを有するシート状成形物に成形することができる。シート状成形物の厚みは、0.5〜20mmの範囲が好ましい。
【0023】
本発明によれば、押し出された溶融混練物を冷却してシート状成形物を得る際に、得られるシートの表面層のみならず、シートの中心部まで樹脂を微細に結晶化させるために、押し出された溶融混練物を急冷することが望ましい。溶液状態、即ち、押し出された溶融混練物から、シート状成形物への成形時の冷却速度が遅いときは、溶融混練によって引き延ばされ、絡み合っている繊維が糸毬状に戻って、太い繊維を形成するため、細く、かつ均一な繊維からなる微多孔構造が形成されがたく、大きな貫通孔を有する多孔質構造が形成される。
【0024】
特に本発明に係わるゲル状のシート状成形物の厚みは、上述のように0.5〜20mmの範囲が好ましいが、通常、ゲル状のシート状成形物は、熱伝導性が大きくないため、表面層に比べて中心に近い部分ほど冷却されにくい。特に、厚みが5mm以上の厚いシートでは、この傾向は著しく、表面層は数十秒で冷却媒体に近い温度まで冷却されるが、中心部では温度の低下が遅く、冷却媒体の温度をかなり低くしないと、中心部まで急冷して樹脂を微細に結晶化させることはできない。
【0025】
このように、冷却されたサイジングダイスを用いた場合には、金属による熱伝導の効果で、溶融混練物の冷却ムラを抑えることができ、かつ精度の高い空間を所定の圧力がかかった状態で通過することとあいまって、得られるシート状成形物の形状安定性を飛躍的に向上させることができる。本発明においては、このような厚手のシートにおいても効率よく冷却が行えるため、緻密で均一な孔構造を有する多孔質構造を有するとともに、総延伸倍率アップによる高強度の多孔質フィルムの作製が可能となる。
【0026】
なお、得られたシート状成形物は、溶融混練により引き延ばされ、絡み合っている繊維が糸毬状に戻って、太い繊維を形成し、シート状成形物に大きな貫通孔が形成されるのを防止するために、直ちに後述のダブルベルトプレスによる圧延処理に供するか、又は用いた溶媒の凝固点以下の温度で保存して、ポリオレフィン樹脂の結晶構造を維持することが好ましい。
【0027】
次に、シート状成形物をダブルベルトプレスを用いて圧延する。このダブルベルトプレスを用いる圧延とは、2つのベルト間にシート状成形物を挟み込んで圧延することをいう。本発明において、該ベルトプレスを用いる圧延を行うことに一つの大きな特徴があり、これにより、機械軸方向だけでなく幅方向への圧延もできる。また、ベルトを駆動ドラムにより一定のスピードで移動させることができるため、連続した圧延処理が可能である。
【0028】
ダブルベルトプレス機としては、前記構造を有するものであれば特に限定されないが、例えば、加圧にプレスを用いた液圧式ダブルベルトプレス機、加圧ロールを用いた加圧ロール式ダブルベルトプレス機、ベルト把持型ダブルベルトプレス機等が挙げられるが、これらの中ではギャップ調整の融通性の観点から、加圧ロール式ダブルベルトプレス機が好ましい。
【0029】
前記ダブルベルトプレス機へのシート状成形物の供給(繰り出し)には、ダブルベルトプレス機前に設けた、任意に速度調整が可能な繰り出し機を用いることができる。本発明において、この繰り出し速度とライン速度の比を調整することによって、圧延時の機械軸方向の倍率(MD倍率)と幅方向の倍率(TD倍率)との比(MD倍率/TD倍率)の調整が可能となり、結果として圧延倍率が5倍以上の高倍率の圧延が達成できる。また、これにより、得られる多孔質フィルムの厚み精度の飛躍的な向上も期待できる。繰り出し速度は、繰り出し速度とライン速度との比(繰り出し速度/ライン速度)が0.2〜1、好ましくは0.3〜1になるように調整することが望ましい。該繰り出し速度/ライン速度の下限は、繰り出し時のテンションが適度で、噛み込む前にサンプルがネッキングせず、均一な圧延が容易になる観点から、0.2以上であることが好ましく、その上限は、プレス時のシート状成形物表面の蛇行がなく、均一な圧延ができる観点から、1以下であることが好ましい。
【0030】
また、ダブルベルトプレス機からの圧延物の巻き取りには、公知の巻取り機を用いることができる。
【0031】
このようにして得られる圧延物の圧延倍率は、5倍以上である。本発明において、該圧延倍率が5倍以上であることにも一つの大きな特徴があり、これにより、厚み精度の飛躍的な向上とポリオレフィン樹脂のポリマー鎖の配向による高強度化という効果が発現される。該圧延倍率は、5倍以上が好ましく、7倍以上がより好ましい。なお、圧延倍率の上限は種々の条件により変わるが、通常、30倍である。
【0032】
また、MD倍率/TD倍率は1/3〜3/1が好ましく、1/2〜2/1がより好ましい。
【0033】
なお、前記圧延処理は、加熱圧延と冷却圧延を連続して行うことが好ましい。加熱圧延と冷却圧延は、加熱ベルトプレス機と冷却ベルトプレス機を分離させて2台のベルトプレス機を用いて行ってもよく、1台のベルトプレス機内でシート状成形物と接触する加圧手段の接触部の温度を適宜調整して行ってもよいが、加熱ベルトプレス機と冷却ベルトプレス機を分離させて用いた方が、各々のベルトプレス機の温度の影響を受けなくなるので任意に圧延速度を変えることが可能になりライン速度のアップが望めるため、好ましい。例えば、加圧ロール式ダブルベルトプレス機を用いる場合、所定の温度に加熱された加圧ロール(加熱ロール)で加熱圧延し、次いで所定の温度に冷却された加圧ロール(冷却ロール)で冷却圧延を行う。
【0034】
さらに、2台のベルトプレス機を用いる場合は、加熱ベルトプレス機と冷却ベルトプレス機のライン速度に差をつけることも可能である。これにより、MD方向の圧延倍率を制御することもできる。ライン速度に差を設ける場合、加熱ベルトプレス機の方を高くしてもよく、あるいは冷却ベルトプレス機の方を高くしてもよい。また、両ベルトプレス機間でのシート状成形物のネッキングを抑制させるために、加熱ベルトプレス機と冷却ベルトプレス機間の距離はできるだけ小さくとることが好ましい。
【0035】
加熱圧延の際の温度は、特に限定されるものではないが、ポリオレフィン組成物の結晶分散温度〜融点(DSC測定におけるオンセット温度)+5℃以下の温度で行うことが好ましい。例えば、ポリオレフィン組成物に重量平均分子量1×106 以上の超高分子量ポリエチレンを用いた場合は、好ましくは100〜125℃、より好ましくは110〜120℃の温度範囲で行う。
【0036】
冷却圧延の際の温度は、好ましくは40℃以下、より好ましくは10〜20℃である。即ち、圧延状態を保持して、加熱圧延後のシート状成形物の弾性回復を防止して、シートの厚みを均一にするために、40℃以下が好ましい。
【0037】
加圧ロール組み数は、特に限定されないが、通常、10〜30個程度であることが好ましい。また、加圧ロールの噛み込み角度は、特に限定されないが、0〜1°が好ましく、0〜0.5°がより好ましい。なお、ここで言う噛み込み角度とは、シート状成形物の進行水平方向に対するベルト面の角度を意味し、該ベルト面とは、シート状成形物が噛み込み圧延される領域を示す。
【0038】
加熱圧延の際は、シート状成形物の潤滑な噛み込みを考慮して、噛み込み角度を持ったベルト間で加熱圧延し、冷却圧延では目標とされる圧延倍率となるように噛み込み角度を0°にしてギャップを一定にすることが好ましい。
【0039】
また、ベルト面とシート状成形物の摩擦係数を高くして噛み込みを良好にするために、ベルト面の表面粗度を制御したり、紙などの吸油性のあるシートでシート状成形物を挟んでサンドイッチ状にして圧延する方法をとることも可能である。
【0040】
なお、プレスによる圧延は一種の固相加工であり、シート状成形物を構成する樹脂組成物を高粘度状態で加工するため、樹脂内部に分子摩擦が生ずる剪断流動は脆性破壊の原因になり、均一な圧延が困難になる。理想的な二軸伸長を達成するために、流動抵抗を極力小さくし、均一な栓流(プラグフロー)で流動させることが必要である。そのために、樹脂組成物とベルト界面に潤滑剤を介在させてもよいが、本発明のようにポリオレフィン組成物と溶媒からなる樹脂組成物であれば、圧延処理時に溶媒が組成物とベルト面間に染みだしてきて潤滑剤の役目をする。その挙動を期待する意味でも、ポリオレフィン組成物と溶媒との樹脂組成物における溶媒の含有量は、70重量%以上であるのが好ましい。
【0041】
次に、延伸処理を行うことが好ましい。延伸温度についても圧延と同じく、ポリオレフィン組成物の結晶分散温度〜融点(DSC測定におけるオンセット温度)+5℃以下の温度で行うことが好ましい。
【0042】
延伸処理の方式は特に限定されるものではなく、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法またはこれらの方法の組み合わせであってもよい。また、一軸延伸、二軸延伸等いずれの方式をも適用することができ、二軸延伸の場合は、縦横同時延伸又は逐次延伸のいずれでもよいが、縦横同時延伸が好ましい。
【0043】
また、前記圧延及び延伸工程の倍率は、それぞれ工程前後の厚みの比から算出される面積倍率で定義する。つまり、圧延倍率は、圧延前厚みと圧延後厚みとの比(圧延前厚み/圧延後厚み)、延伸倍率は、延伸前厚みと延伸後厚みとの比(延伸前厚み/延伸後厚み)と定義される。また、総延伸倍率についても、圧延倍率と延伸倍率の積と定義する。圧延および延伸は、総延伸倍率が50〜400倍、より好ましくは100〜300倍となるように行うことが好ましい。総延伸倍率は、ポリオレフィン組成物が高度にミクロフィブリル構造をとり、高強度化できる観点から、50倍以上が好ましく、製造装置が対応でき、製品化できる観点から、400倍以下が好ましい。
【0044】
次に、得られた延伸物の脱溶媒処理を行う。脱溶媒処理は、延伸物から溶媒を除去して多孔質構造を形成させる工程であり、例えば、延伸物を溶剤で洗浄して残留する溶媒を除去することにより行うことができる。溶剤は、前記混合物の調製に用いた溶媒に応じて適宜選択することができるが、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、アルコール類等の易揮発性溶剤が挙げられ、これらは単独で又は二種以上を混合して用いることができる。かかる溶剤を用いた脱溶媒処理の方法は、特に限定されず、例えば、延伸物を溶剤中に浸漬して溶媒を抽出する方法、溶剤を延伸物にシャワーする方法等が挙げられる。脱溶媒処理は延伸前に行ってもよい。例えば、圧延物を脱溶媒処理してから延伸処理に供してもよく、あるいは延伸処理前に脱溶媒処理を行い、延伸処理後に再度脱溶媒処理を行ってもよい。
【0045】
本発明では、このようにして得られた多孔質フィルムの熱収縮性を低下させるために、さらにヒートセット処理を行うことが好ましい。ヒートセット処理は、ポリオレフィン組成物の結晶分散温度−10℃〜融点以下の温度で行う。収縮防止のため、ヒートセット時には、サンプルを全周囲固定して行う方が好ましい。ヒートセット方法については、加熱ロールに接触させる方法や、乾燥機内に放置する方法など公知の方法で行うことができる。
【0046】
このような本発明の製造方法に従えば、厚みが10〜60μm、好ましくは15〜50μmであり、通気度が200〜700sec/100cc、好ましくは300〜500sec/100cc、空孔率が30〜60%、好ましくは35〜55%、突き刺し強度が500gf/25μm以上、好ましくは550gf/25μm以上である多孔質フィルムが得られる。
【0047】
本発明により得られる多孔質フィルムは、高強度、高空孔率を有し、更に、イオン透過性に優れ、高速充放電特性にも優れる。
【0048】
また、グローブボックス中でガラスの中に正極にコバルト酸リチウム電極、負極にカーボン電極を用い、その間に電解液を含浸させた前記多孔質フィルムをクッション材となる不織布(電解液含浸品)と共に挟み込み、充放電特性を調べたところ、高電流密度で高放電効率を示し、短時間での大出力が可能である。
【0049】
更に、本発明により得られた多孔質フィルムは、種々の電池、特に電気自動車用バッテリーにおいて、安定性と耐久性に優れる高性能セパレーターとして好適に用いることができる。
【0050】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、各種特性については下記要領にて測定を行う。
【0051】
(重量平均分子量)
ウォーターズ社製のゲル浸透クロマトグラフ「GPC−150C」を用い、溶媒にo−ジクロロベンゼンを、また、カラムとして昭和電工(株)製の「Shodex−80M」を用いて135℃で測定する。データ処理は、TRC社製データ処理システムを用いて行う。分子量はポリスチレンを基準として算出する。
【0052】
(融点)
(株)セイコー電子工業製の示差走査熱量測定装置「DSC−200」を使用し、室温から200℃まで10℃/minの割合で昇温させ、この昇温過程でのオンセット温度を融点とする。
【0053】
(フィルムの厚み)
1/10000シックネスゲージ及び多孔質フィルムの断面の1万倍走査電子顕微鏡写真から測定する。
【0054】
(通気度)
JIS P8117に準拠して測定する。
【0055】
(空孔率)
フィルムの単位面積S(cm2 )あたりの重さW(g)、平均厚みt(μm)、密度dから下式により算出した値を使用する。
空孔率(%)=(1−(104 ×W/S/t/d))×100
【0056】
(突き刺し強度)
カトーテック(株)製の圧縮試験機「KES−G5」を用いて突き刺し試験を行う。針は直径0.75mm、先端形状0.5mmのものを使用し、押し込み速度2mm/秒にて測定し、測定により得られた荷重変位曲線より最大荷重を突き刺し強度とする。値は全て25μmに換算する。
【0057】
実施例1
重量平均分子量2×106 の超高分子量ポリエチレン(結晶分散温度:80℃、融点:134℃)15重量%と流動パラフィン(凝固点:−15℃、40℃における動粘度:59cst)85重量%とからなる溶液を、スラリー状に均一に混合し、得られた混合物を2軸押し出し機(シリンダー径:40mm、L/D=42)に20kg/hrの処理量で供給し、160℃に加熱し、溶融混練して、超高分子量ポリエチレン樹脂と溶媒との溶融混練物を得た。次いで、2軸押し出し機の先端に取り付けられたTダイ(幅100mm、リップ厚み15mm)を用い、160℃で溶融混練物をシート状に押し出した後、−15℃に冷却されたサイジングダイス(幅100mm、リップ厚み10mm、長さ300mm)を通し、急冷結晶化させ、ゲル状のシート状成形物を得た。
【0058】
次いで、このシート状成形物(厚み:10mm)を噛み込み角度が0.84°に設定された加圧ロール式ダブルベルトプレス機を用い、120℃で加熱圧延し、その後連続的に30℃で冷却圧延を行い、厚みが0.9mmの圧延物を得た(圧延倍率11倍、MD倍率/TD倍率=0.91)。この時の繰り出し速度/ライン速度は0.4であった。
【0059】
その後、120℃で縦横3.5×3.5倍に同時2軸延伸し(延伸倍率12.25倍、総延伸倍率135倍)、ヘプタンに浸漬して脱溶媒処理を行い、得られた多孔質フィルムを更に134℃で20分間ヒートセットして、多孔質フィルムを得た。
【0060】
実施例2
実施例1において、繰り出し速度/ライン速度を0.3にした以外は、同様にして多孔質フィルムを得た。
【0061】
実施例3
実施例1において、繰り出し速度/ライン速度を0.8にした以外は、同様にして多孔質フィルムを得た。
【0062】
比較例1
実施例1において、繰り出し速度/ライン速度を1.2にした以外は、同様にして多孔質フィルムを得ようとしたが、圧延時にシート状成形物の蛇行が激しく、均一な圧延が困難で、多孔質フィルムを得ることができなかった。
【0063】
比較例2
実施例1において、圧延を加圧ロール式ダブルベルトプレス機のかわりに、圧延ロールを用いたところ、噛み込みが困難で高倍率の圧延が不可能であった(圧延倍率2倍)。さらに、同時2軸延伸を試みたが、原反厚みが厚く、均一な延伸が不可能であったため、多孔質フィルムを得ることができなかった。
【0064】
比較例3
実施例1において、繰り出し速度/ライン速度を0.15にした以外は、同様にして多孔質フィルムを得ようとしたが、圧延時の繰り出し部でのサンプルのネッキングが著しく、頻繁にその部分で破断してしまうため、多孔質フィルムを得ることができなかった。
【0065】
実施例1〜3において得られた圧延物の圧延倍率、MD倍率/TD倍率、多孔質フィルムの厚み、通気度、空孔率および突き刺し強度を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
以上の結果より、繰り出し速度とライン速度の比を所定の範囲に調整したダブルベルトプレスを用いて製造した実施例1〜3の多孔質フィルムは、いずれの特性にも優れた値が得られていることが分かる。
【0068】
【発明の効果】
本発明の多孔質フィルムは、高強度で空孔率が高く、リチウムイオン2次電池等のセパレータとして特に有用である。
Claims (2)
- ポリオレフィン組成物と溶媒とからなる混合物を溶融混練し、得られた溶融混練物をシート状に押し出した後冷却し、得られたシート状成形物を圧延する多孔質フィルムの製造方法において、圧延時の繰り出し速度/ライン速度を0.2〜1に調整したダブルベルトプレスを用いて、圧延倍率が5倍以上に、かつ機械軸方向と幅方向に圧延することを特徴とする多孔質フィルムの製造方法。
- 溶融混練物が重量平均分子量1×106 以上の超高分子量ポリオレフィン樹脂を1重量%以上含有したポリオレフィン組成物10〜30重量%と、溶媒70〜90重量%からなる請求項1記載の多孔質フィルムの製造方法。
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