JPH11302434A - 多孔フィルムおよびその製造方法ならびに電池用セパレータフィルム - Google Patents

多孔フィルムおよびその製造方法ならびに電池用セパレータフィルム

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JPH11302434A
JPH11302434A JP10106767A JP10676798A JPH11302434A JP H11302434 A JPH11302434 A JP H11302434A JP 10106767 A JP10106767 A JP 10106767A JP 10676798 A JP10676798 A JP 10676798A JP H11302434 A JPH11302434 A JP H11302434A
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JP
Japan
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film
porous film
temperature
porous
polyolefin
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Withdrawn
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JP10106767A
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English (en)
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Akinao Hashimoto
暁直 橋本
Kazuo Yagi
和雄 八木
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Mitsui Chemicals Inc
Original Assignee
Mitsui Chemicals Inc
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Publication date
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

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  • Molding Of Porous Articles (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 孔閉塞性と耐熱性および極性有機溶媒の含浸
性に優れたポリオレフィン多孔フィルムおよびその製造
方法ならびに電池用とくに高容量電池用のセパレータフ
ィルムの提供。 【解決手段】 カルボニル比率が0.04以上、かつ、
以下の特徴を有するポリオレフィン多孔フィルム。 (1)膜厚が5〜100μ (2)極大細孔径が0.05〜10.0μ (3)空孔率が30〜80% (4)透気度が50〜1000sec/100ml (5)少なくとも一方向の引張強度が50MPa以上 この多孔フィルムは、ポリオレフィン多孔フィルムを窒
素雰囲気中において、1〜50Mradの照射線量で電
子線照射処理を行った後、酸素存在下において、残留ラ
ジカルを消失させることによって製造される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリオレフィン多
孔フィルムおよびその製造方法ならびにその好適な用途
である電池用セパレータに関するものであり、より詳し
くは、孔閉塞性と耐熱性および極性有機溶媒の含浸性に
優れたポリオレフィン多孔フィルムおよびその製造方法
ならびに電池用セパレータフィルムに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、リチウムイオン電池をはじめとす
る高容量電池には、安全性確保の観点から種々の対策が
とられている。そのうちの一つの対策として、セパレー
タフィルムにも、電池の安全性確保のための機能が要求
されている。例えば、外部短絡等で電池内温度が上昇し
た場合、発火や電解液の分解ガス等により発煙、破裂の
危険がある。これを防止するためには、電池内部温度が
上昇し多孔フィルムの融点付近の温度に達したとき、多
孔フィルムが無孔化閉塞することにより電池内部の抵抗
値を上昇させて内部温度の上昇を防ぐ機能、また電池内
部での反応を抑制することによって上記危険性を回避す
る機能、すなわちシャットダウン機能が求められてい
る。
【0003】このような機能を有するセパレータとし
て、従来からの低融点のポリエチレンやポリプロピレン
よりなる多孔フィルムが使用されている。通常、多孔フ
ィルムの孔が閉塞し無孔化しても、電池内部の温度は急
激に低下することなく、温度上昇が少し続いた後、徐々
に低下していく傾向にあるため、電池は融点以上の温度
に長時間保持される状態になる。この状態で、無孔化し
たセパレータフィルムに欠陥が生じた場合、再度短絡し
て温度上昇がはじまり、電池にとって不都合が起こる可
能性がある。
【0004】よって、低閉塞温度と高耐熱温度を両立
し、電池用セパレータとしての他の物性も向上したセパ
レータを作成するため様々な試みが行われている。高耐
熱温度を達成する一つの方法としては、ポリオレフィン
の架橋構造を利用する方法があり、例えば特開昭63−
205048号公報、特開平3−59947号公報、特
開平3−245457号公報、特開平9−216964
号公報等において既に述べられており、比較的優れた耐
熱温度を得られようになっている。しかしながら、孔閉
塞温度が高い、またはセパレータ作成時の操作が煩雑等
の欠点があった。
【0005】一方、電池用セパレータに必要とされる他
の物性の一つに、電解液の含浸性および保液性がある。
含浸性が良好であると、電池作製時の電解液の注入後の
保持時間が短縮できる上に、含浸性の悪い電解液を使用
する場合においては、通常40ないし100℃程度の温
度に保持して低粘度化し、含浸を助ける手間が省ける利
点がある。また電解液の保液性が良好であると、フィル
ム表面につながっていない独立孔を除くセパレータ内の
空隙に電解液が完全に取り込まれるため、電池内でのセ
パレータ体積あたりの電解液量が増加する。また、長期
使用時においてもセパレータの孔内に常に電解液が保持
されるため、電池自体の容量や充放電サイクル性能が向
上する。
【0006】通常、ニッケルカドミウム電池やニッケル
水素電池等では、KOH等の水系電解液が、リチウムイ
オン電池やLi金属電池等では、プロピレンカーボネー
トやエチレンカーボネート等の有機系溶剤が電解液とし
て使用されている。通常、ポリオレフィン多孔フィルム
の場合、無極性の有機溶媒はよく吸液し、優れた含浸性
を示すが、室温ではKOH等の水溶液やプロピレンカー
ボネート等の極性有機溶媒はほとんど吸液しないか、ま
たは長時間の浸漬が必要である。よって、温度を上げた
状態で粘度を低下させたり、低粘度の有機溶媒等をブレ
ンドしたりして含浸性を良好にしている。
【0007】また、多孔フィルムの原料を極性基含有ポ
リマーとすることにより含浸性を改良する試みも行われ
ている。例えば特開平9−306462号公報には、ポ
リフッ化ビニリデンやその共重合体を使用した多孔フィ
ルムが開示されている。この方法によれば優れた含浸性
や保液性,高耐熱性を達成できるが、孔閉塞性は充分な
レベルではなかった。
【0008】
【本発明が解決しようとする課題】そこで本発明者ら
は、上述の問題を解決するため鋭意検討の結果、ポリオ
レフィンのみからなる特定構造を有する多孔フィルムに
架橋構造を導入し、さらに特定な条件下で架橋後処理を
行うことにより、孔閉塞温度と耐熱温度に優れ、かつ極
性有機溶媒の含浸性に優れる多孔フィルムおよび電池用
セパレータを得られるという知見を見い出し、本発明を
完成するに至った。
【0009】すなわち、本発明の目的は、特定のポリオ
レフィン多孔フィルムに架橋構造を導入することによ
り、孔閉塞温度と耐熱温度さらに優れた極性有機溶媒の
含浸性を有する多孔フィルムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記目的を達
成するために提案されたものであって、ポリオレフィン
多孔フィルムを、ゲル分率が50%以上となるように架
橋構造を導入し、架橋処理後に示差走査熱量計(IR)
により測定されるカルボニル比率が0.04以上となる
ように極性基を導入することを特徴とするポリオレフィ
ン多孔フィルムおよびその製造方法ならびにその好適な
用途としての高容量電池用セパレータフィルムを提供す
るものである。
【0011】すなわち、本発明によれば、ポリオレフィ
ンよりなる多孔フィルムであって、示差走査熱量計(I
R)により測定されたカルボニル比率が0.04以上で
あり、かつ、 (1)膜厚が5ないし100μm; (2)極大細孔径が0.05ないし10.0μm; (3)空孔率が30ないし80%; (4)透気度が50ないし1000sec/100m
l; (5)少なくとも一方向の引張強度が50MPa以上; の特性を有する多孔フィルムが提供される。
【0012】また、本発明によれば、さらに、 (1)ゲル分率が50%以上; (2)耐熱温度が170℃以上; の特性を有する上記多孔フィルムが提供される。
【0013】また、本発明によれば、プロピレンカーボ
ネートの含浸時間が300秒以下である上記多孔フィル
ムが提供される。
【0014】また、本発明によれば、熱収縮率が9%以
下である上記多孔フィルムが提供される。
【0015】また、本発明によれば、孔閉塞温度が14
0℃以下である上記多孔フィルムが提供される。
【0016】また、本発明によれば、電解液保液率が1
70%以上である上記多孔フィルムが提供される。
【0017】また、本発明によれば、ポリオレフィン多
孔フィルムを窒素雰囲気中において、1ないし50Mr
adの照射線量で電子線照射処理を行った後、酸素存在
下において、残留ラジカルを消失させることを特徴とす
るポリオレフィン多孔フィルムの製造方法が提供され
る。
【0018】また、本発明によれば、上記多孔フィルム
からなる電池用セパレータフィルムなかんずく高容量電
池用セパレータフィルムが提供される。
【0019】また、本発明によれば、電池が、電解液と
して水または有機化合物を主成分とするものである上記
電池用セパレータフィルムが提供される。
【0020】
【発明の実施の形態】以下に、本発明のポリオレフィン
多孔フィルムおよびその製造方法ならびに高容量電池用
セパレータフィルムについて、原料、多孔化処理前フィ
ルムの成形方法、多孔化処理方法、架橋処理、架橋後後
処理、得られたフィルムの特徴を詳述する。本発明の架
橋処理に使用される多孔フィルムは、好ましくは、以下
に例示した方法により作成されるが、特にこの方法に限
定されるものではない。しかし、架橋処理で高耐熱温度
を得る場合には、特に優れた孔閉塞温度が得られる点で
最も好ましい方法である。
【0021】〈原料〉本発明に用いるポリオレフィンと
は、エチレン、プロピレンおよび炭素数4ないし8のα
−オレフィンを例えばチーグラー系触媒を用いたスラリ
ー重合などの方法により単独もしくは、二つ以上の組み
合わせで重合して得られるものをいう。好ましい共重合
体は、エチレンと少量のプロピレンもしくは炭素数4な
いし8のαーオレフィンの単独ないし、二つ以上の組み
合わせによる共重合体である。エチレン共重合体の場
合、共単量体の量は5モル%以下が好ましい。これらの
中で特に好ましいものは、エチレンの単独重合体であ
る。
【0022】原料のポリオレフィンの分子量は、フィル
ム成形に支障がない限り特に限定されないが、極限粘度
[η]で4dl/g以上が好ましく、さらに好ましくは
4ないし25dl/gである。特に高強度の多孔フィル
ムを得る目的では、極限粘度[η]で5ないし20dl
/g以上が好ましく、さらに好ましくは7ないし20d
l/gが好ましい。
【0023】〈多孔化処理前フィルムの作成〉インフレ
ーションフィルム成形法やT−ダイフィルム成形法など
のフィルム成形法で得られたポリオレフィンからなる多
孔化処理前フィルムは、実質的にポリオレフィンからな
る。実質的にポリオレフィンからなるということは、フ
ィルム成形時に原料ポリオレフィンが多量の溶剤や可塑
剤を含まないことを意味する。したがって、耐熱安定
剤、耐候安定剤、滑剤、アンチブロッキング剤、スリッ
プ剤、顔料、染料等の通常ポリオレフィンに添加して使
用される各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で
配合されていてもよいが、その上限は総量で好ましくは
10%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0024】多孔化処理前フィルムは面配向されている
ことが好ましい。T−ダイフィルム成形法の場合、溶融
延伸して成形されるフィルムは一軸配向であるため、成
形後の後処理でフィルムを面配向させなければならない
が、インフレーションフィルム成形法では、膨比を適当
に選択することによってフィルム成形時にフィルムを面
配向させることができる。
【0025】ポリオレフィンのなかで、極限粘度[η]
で5dl/g未満のものは、通常のインフレーションフ
ィルム成形法によって成形することができる。インフレ
ーションフィルムの成形法について、詳しくは、「プラ
スチックの押出成形とその応用」[ 澤田慶司著:誠文堂
新光社発行(1966年)] の第4編2章に述べられた
ポリエチレンやポリプロピレンで行われるような一般的
な方法が挙げられる。
【0026】本発明の多孔化処理前フィルムをインフレ
ーションフィルム成形するための好ましい条件は、ドラ
フト比と膨比を大きく取ることである。ドラフト比と
は、インフレーションフィルムダイのリップ出口でのフ
ィルム樹脂の流出速度(線速度)に対する冷却固化した
チューブフィルムの引き取り速度の比であり、また膨比
とは、インフレーションフィルムダイの平均直径に対す
る冷却固化したチューブフィルムの直径の比である。通
常のインフレーションフィルム成形法の場合、ドラフト
比は、2以上の範囲で適宜調整されるが、好ましい範囲
は3以上であり、膨比は1.1ないし10の範囲で適宜
調整される。
【0027】極限粘度[η]で5dl/g以上、25d
l/g以下の高分子量ポリオレフィンの場合、以下のよ
うにして多孔化処理前フィルムを得ることができる。ポ
リオレフィンをスクリュー押出機で溶融し、次いでマン
ドレルがスクリューの回転に伴って、または単独で回転
する少なくともL/Dが5のチューブダイから押し出し
た後、所定のドラフト比で引取りながら溶融状態のチュ
ーブ状フィルムの内部に気体を吹き込み、膨比1.1な
いし20の範囲で膨張させ、冷却し、フィルムとするイ
ンフレーション成形法によって得られる。
【0028】好ましいドラフト比は5以上であり、とく
に好ましくは8以上である。また好ましい膨比は5以上
であり、とくに好ましくは8以上である。ここで、Lは
マンドレルとアウターダイで構成されるチューブダイの
長さ、またDはスクリューダイ出口におけるアウターダ
イの内径である。インフレーションフィルム成形装置に
関する態様は、本出願人により出願された特公平6−5
5433号公報に詳述されている。
【0029】いずれの方法においても、得られる多孔化
処理前フィルムは、極限粘度[η]で4ないし25dl
/gのもので、面配向しており、結晶化度が好ましくは
40%以上、機械方向の引張強度で0.04GPa以
上、機械方向に垂直な方向の引張強度で0.04GPa
以上であり、温度40℃および湿度90%の条件下で透
湿係数が0.45g・mm/m2 ・24hr以下の不透
気性フィルムである。不透気性フィルムとは、後述する
透気性試験において、透気度が10000秒/100m
l以上のフィルムである。得られる処理前フィルムの厚
さには特に制限はないが、後に続く処理工程での取扱い
の都合で好ましくは、5ないし500μm、更に好まし
くは、5ないし100μmである。なお、機械方向とは
MD方向のことであり、機械方向に垂直な方向とはTD
方向のことである。MD方向とはフィルム引き取り方向
であり、TD方向とはMD方向に直交する方向である。
【0030】示差走査型熱分析計(DSC)で結晶融解
熱から求められる処理前フィルムの結晶化度は、ポリエ
チレンの場合、好ましくは60%以上、さらに好ましく
は60ないし70%である。またポリエチレン以外のポ
リオレフィンの場合、処理前フィルムの結晶化度は、好
ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上であ
る。
【0031】本発明の処理前フィルムは、面配向してい
ることが好ましい。本発明でいう面配向とは、結晶が二
軸に配向していることを指す。フィルムが二軸に配向し
ているということは、フィルム面内でポリオレフィンの
単位結晶のうち、分子鎖方向に対応するc軸以外のa軸
およびb軸のいずれかが、主としてフィルム面に垂直に
存在している状態で、かつその軸以外の例えばc軸がフ
ィルム面内にほぼ無配向に分布している状態をいう。フ
ィルム面に垂直に存在する軸は、ポリエチレンの場合、
通常a軸であり、それ以外のポリオレフィンの場合、通
常b軸である。
【0032】この状態は、X線回折装置による観測で以
下のようにして確認することができる。すなわち、フィ
ルムのエンド(END)方向からフィルムを赤道方向に
配置して、X線を入射し回折パターンを観察したとき
に、ポリエチレンの場合、配向係数fa(その他のポリ
オレフィンの場合ではfb)が少なくとも0.2以上で
あり、かつフィルムの機械軸方向を子午線方向になるよ
うに配置して、スルー(THROUGTH)方向からX
線を入射し回折パターンを観察したときに、配向係数f
cが−0.2以上0.2以下であるような状態である。
【0033】配向係数fa、fb、fcの求め方、およ
び計算方法は、「高分子のX線回折(上)」(LERO
Y E.ALEXANDER著、桜田一郎監訳、化学同
人)の選択配向の節に記載されている通りである。特に
fcが0.2を上回る場合(c軸配向状態)やfaが
0.2を下回るような処理前フィルムでは、結晶化度が
前記条件を満たしている場合でも、熱処理で多孔化する
ことが出来ない場合がある。なお、極限粘度[ η] で
4.0dl/gを下回る処理前フィルムでは、条件によ
っては多孔化するが、引張強度、突刺強度の点で満足で
きない場合がある。
【0034】〈多孔化処理〉上述の多孔化処理前フィル
ムの多孔化処理は、雰囲気の状態によっても変わるが、
例えば、ポリエチレンの場合、通常、100ないし14
5℃の温度で1分間以上といった条件で、処理後の結晶
化度が処理前に比較して10ないし20%程度増大する
ような条件で熱処理を行うことが好ましい。この時、処
理前フィルムは、収縮を妨げるように、好ましくは、少
なくとも一方向で、最も好ましくは、直交する二方向で
固定される。収縮が余儀なくされる場合の好ましい収縮
の許容範囲は、長さおよび幅方向で10%以下である。
【0035】熱処理の雰囲気は、高分子量ポリオレフィ
ンと適度な親和性を持つ第一の液体の中で行うことが好
ましい。高分子量ポリオレフィンと適度な親和性を持つ
ということは、高分子量ポリオレフィンの処理前フィル
ムを成形し、それを処理温度で第一の液体に浸漬したと
き、処理前フィルムの結晶部分にはほとんど作用せず
に、主として非晶性部分に浸透し、選択的に溶融もしく
は溶解させ、冷却した時にその一部を結晶化させ、全体
として結晶化度を上げ得るものである。したがって、著
しく親和性が優れ、熱処理温度域でポリオレフィンの結
晶を溶解する溶剤は排除される。
【0036】なお、高分子量ポリオレフィンと親和性を
持つとは、高分子量ポリオレフィンフィルムに液体が充
分に馴染むことであり、表面張力が小さいと言い換える
ことができる。そしてその尺度としては、接触角で10
0度以下、好ましくは90度以下、更に好ましくは80
度以下の液体である(なお、表面張力は、市販の自動接
触角計を用い、常法で測定できる)。
【0037】また、高分子量ポリオレフィンの結晶を熱
処理温度域で溶解しない液体とは、例えば、溶液セルを
装着した示差走査熱量計(DSC)で、液体の存在下で
高分子量ポリオレフィンの融点をセカンドランで観察し
た時に、高分子量ポリオレフィン単独の融点に比べて、
その融点を20℃以上低下させない液体である。液体の
高分子量ポリオレフィンに対する親和性は処理温度によ
っても変わるので、処理温度と液体の種類を選ぶことに
より適度な親和性を得て、多孔化の効果を最大限まで上
げることができる。
【0038】このような第一の液体としては、エタノー
ル、プロパノール、ブチルアルコール、アミルアルコー
ル等のような低級脂肪族アルコール類;アセトン、メチ
ルエチルケトン、シクロヘキサノン等のような低級脂肪
族ケトン;ギ酸エチル、酢酸ブチル等のような低級脂肪
族エステル;四塩化炭素、トリクロロエチレン、パーク
ロロエチレン、クロロベンゼン等のようなハロゲン化炭
化水素;ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、デカ
ン、ドデカン等のような炭化水素;ピリジン、ホルムア
ミド、ジメチルホルムアミド等のような窒素含有有機化
合物;メチルエーテル、エチルエーテル、ジオキサン、
ブチルセロソロブ等のようなエーテルである。また、モ
ノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエ
チレングリコール等のようなグリコール類、一般的に加
温熱媒として用いられるシリコンオイル等も好ましい液
体である。これらの液体は、2種または2種以上の混合
物として使用することもできる。また界面活性剤を添加
した温水、熱水も有効であるが、ベンゼン、キシレン、
テトラリンは、高分子量ポリオレフィンを熱処理温度で
溶解するため、好ましくない。
【0039】ポリエチレンおよびポリプロピレンに対す
る好適な第一の液体は、オクタン、デカン、ドデカン、
パラフィンオイル、溶融パラフィンワックスやそれらを
主成分とする液体、これらの少なくとも一種類以上の組
成物の液体である。熱処理温度は、ポリオレフィンの種
類や液体の種類にもよるが、例えば前述したように、ポ
リエチレンの場合では、通常100℃ないし145℃、
好ましくは115℃ないし140℃である。ポリエチレ
ン以外の場合のポリオレフィンの場合の処理温度は、通
常50℃ないし170℃、好ましくは80℃ないし16
0℃である。
【0040】一般的に処理時間は、処理前フィルムが処
理温度に到達後、10秒ないし10分間、好ましくは3
0秒ないし5分間であり、処理温度が高くなれば、処理
時間を短くすることができる。なお、必要以上の処理時
間は、多孔フィルムの強度を低下させる虞があるので避
けたほうが好ましい。
【0041】前記第一の液体中で熱処理を行ったフィル
ムは、乾燥処理が行われる。処理に用いた液体の種類に
もよるが、フィルムの収縮を妨げるように二方向を固定
した状態であれば、処理液体を温風や熱風で直接乾燥し
てもよいが、比較的乾燥速度の遅い液体の場合、第一の
液体と相溶性があり、その液体よりも沸点が低くかつそ
の液体よりもポリオレフィンとの親和性に劣る第二の液
体に浸漬して、乾燥することが好ましい。さらに、乾燥
する際にも、処理フィルムは、収縮を抑えるように、好
ましくは少なくとも一方向で、最も好ましくは直交する
二方向で固定される。収縮が余儀なくされる場合の好ま
しい収縮の許容範囲は、長さおよび幅方向で10%以下
である。
【0042】用いることのできる第二の液体の例として
は、ヘキサン、ヘプタンのような低沸点炭化水素、塩化
メチレンのような塩素置換低沸点炭化水素、1,2−ジ
クロロ−2,2,2−トリフルオロエタン、1,1−ジ
クロロ−1−フルオロエタン、1,3−ジクロロ−1,
1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、2,2,
3,3,3−ペンタフルオロプロパノールのような塩素
フッ素置換低沸点炭化水素などが挙げられる。浸漬温度
や浸漬時間は、熱処理温度以下で液体の置換が完全に行
われる条件のうち、最低の温度と最短の時間が選ばれ
る。
【0043】乾燥された多孔フィルムは、フィルムの皺
の除去、空孔率やフィルム厚みの調整、フィルムの表面
摩擦係数の低減化のためにヒートセットを行ってもよ
い。ヒートセット時の条件は、気体(空気)雰囲気下で
温度や処理時間などが適宜選ばれる。
【0044】空孔率や孔径等の調整のために、熱処理と
同時に延伸、あるいは熱処理前後に延伸を行ってもよ
い。延伸は、処理前フィルムの融点以下で行われる。延
伸温度の下限は高分子量ポリオレフィンの種類にもよる
が、処理前フィルムの融点−40℃前後である。延伸倍
率は、一軸延伸の場合、150%以上、好ましくは15
0ないし500%である。
【0045】一軸延伸の場合には、一定幅一軸延伸が好
ましい。二軸延伸の場合は、面倍率で150%以上、好
ましくは、150ないし2500%である。延伸は、空
気雰囲気下で行っても良いし、また上述の熱処理の部分
で述べたように高分子量ポリオレフィンと適度な親和性
を持ち、かつ延伸処理温度でポリオレフィン処理前フィ
ルムを溶解しない第一の液体との接触下で行っても良
い。
【0046】この方法により得られるポリオレフィン多
孔フィルムは、葉脈状および/または網目状をなすフィ
ブリルを主な構成要素としている。葉脈状および/また
は網目状をなすフィブリルとは、フィルムを構成するフ
ィブリルが、太い幹の繊維とその外方に連なる細い繊維
とを持ち、細い繊維が複雑な網状構造を形成している状
態をいう。該フィルムを形成するフィブリルとしては、
延伸鎖結晶と板状晶よりなるフィブリル(A)とらせん
状結晶よりなるフィブリル(B)がある。
【0047】高分子材料におけるフィブリルの構造や形
態の一例としては、応力下の溶液結晶化物において検討
がなされており、例えば、A.J.Pennings,A.A.Kiel,Koll
oidZ.,205,p160(1965);A.Keller,J.Machin,J.Macromol.
Sci.,B1,p41(1967)等に、あるいは、K.Kobayashi,T.Nag
asawa,J.Macromol.Sci.Phys.,B3,p153(1970);T.Nagasaw
a,Y.Shimomura,J.Polymer Sci.Polymer Phys.Ed.,12,p2
291(1974)等において述べられている。
【0048】これらの文献においては、フィブリルの構
造として二つの構造モデルが提案されている。前者は、
フィブリルの中心に形成された伸びきり鎖結晶と、それ
にぶら下がった分子鎖が形成する板状晶よりなる構造で
あり、後者は、折りたたみ鎖よりなる結晶核に内在して
いるらせん転移が流動方向に配向するためにフィブリル
状になるもので、必ずしも前者に存在する伸びきり鎖結
晶を必要としないというモデルである。
【0049】本明細書中で述べる延伸鎖結晶と板状晶よ
りなるフィブリル(A)とは、上記構造モデルの前者に
相当するものであり、一般にシシカバブ構造と呼ばれる
結晶である。これは、中心部に繊維状の延伸鎖結晶が存
在しているもので、その延伸鎖結晶を核として折り畳み
鎖結晶(板状晶)が周期的に構成されたものである。な
お、この形状は後述の架橋処理を行っても変化しない。
【0050】一方、本明細書中で述べるらせん状結晶よ
りなるフィブリル(B)とは、上記構造モデルの後者に
相当するものであり、中心部の繊維状の結晶がほとん
ど、あるいは全く観察されないものであり、折り畳み鎖
よりなる板状結晶がらせん状に形成されたものである。
【0051】上記二種のフィブリルが生成する条件とし
ては、同一の不透気性フィルムを使用した場合、熱処理
温度が低い方が、(A)のフィブリルが生成しやすく、
熱処理温度が高くなるにつれて、(B)のフィブリルが
生成しやすくなる。また、原料の[η]が低い場合(例
えば約5dl/g)には(B)のフィブリルが生成する
熱処理温度範囲が比較的広くなる。得られるフィルムの
引張強度は0.07GPa以上、好ましくは0.1GP
a以上である。
【0052】〈架橋処理〉本発明において、架橋処理は
得られるポリオレフィン多孔フィルムのゲル分率を50
%以上にするために行うものであり、また同時に架橋後
処理時に使用するラジカルを発生させるために行うもの
である。ゲル分率は、耐熱温度がより高くなる点で、好
ましくは70%を超えるものである。ゲル分率の上限
は、引張強度が保たれる限り特に限定されない。
【0053】架橋処理は、前記未架橋の多孔フィルムに
対し、化学架橋や放射線架橋により行うことができる。
化学架橋は、フィルムを架橋剤の存在下に化学反応によ
り処理する方法であるが、フィルム物性の変化が少ない
点や架橋の均一性の点で次の放射線処理が好ましい。放
射線架橋は、フィルム表面に直接電子線やγ線を照射し
て架橋するものであり、フィルム内部へも透過して架橋
反応を起こすことができる。これらの中では汎用の設備
で行える電子線照射が好ましい。
【0054】電子線照射の場合、通常0.1Mradか
ら100Mrad程度の照射を行うが、照射線量が少な
い場合、逆に耐熱温度が悪化する場合があるため、1M
rad以上が好ましく、とくに2Mrad以上がさらに
好ましく、とくに10Mradを超える照射線量で行う
ことが好ましい。照射時の雰囲気は、窒素中が好まし
い。これは空気中等の酸素存在下では架橋反応も起こる
が、分子鎖切断が多く起こるため、引張強度が低下する
虞れがあるためである。
【0055】上記窒素中の酸素濃度は、実質的に酸素を
含まない方が好ましいが、0.1vol%以下、好まし
くは0.01vol%以下、さらに好ましくは30pp
m以下であれば良い。窒素中の酸素濃度を上記のように
コントロールすることで分子鎖切断が起こりにくいとい
う長所がある。
【0056】電子線照射後の後処理は、多孔フィルムに
カルボニル基を所望の比率で導入するために行う。後処
理の方法としては、照射処理により生じたラジカルが残
存している状態のまま、フィルムを空気中や酸素中にラ
ジカルが消失するまで放置する。放置する時間は、放置
する雰囲気温度により左右され、低温では長時間、高温
では短時間でよい。放置する雰囲気温度の上限は、多孔
フィルムの孔構造が変化しない温度や熱収縮がほとんど
ない温度であり、通常100℃以下、好ましくは70℃
以下が好ましい。また、ラジカルの残存および消失は電
子スピン共鳴装置(ESR)を利用することにより確認
できる。さらに、酸素存在下での後処理時間を調節する
ことによりカルボニル比率を調節することも可能であ
る。
【0057】〈得られたフィルムの特徴〉上記処理によ
って得られたポリオレフィン多孔フィルム(以下「処理
フィルムという)の特徴を次に示す。処理フィルムの示
差走査熱量計(IR)により測定されるカルボニル比率
は、0.04以上である。0.04未満では、プロピレ
ンカーボネートの含浸時間が未処理フィルに対し短縮さ
れない。上限は特に限定しないが、高引張強度を保つた
め、通常0.60以下が好ましい。
【0058】処理フィルムの膜厚は、5ないし100μ
mであり、好ましくは10ないし60μmである。
【0059】極大細孔径は、0.05ないし10.0μ
mであり、好ましくは0.08ないし5.0μmであ
り、より好ましくは0.1μmを超え、5.0μm以
下、さらに好ましくは0.15μm以上3.0μm以下
である。孔径が0.05μm以下になると、カルボニル
比率が高くても、プロピレンカーボネートの含浸時間が
長くなる虞があるため好ましくない。また、電池用セパ
レータフィルムとして使用した場合、電池の低温性能の
悪化や充放電のサイクル寿命が短くなるなどの欠点があ
り、好ましくない。さらに、孔径が10.0μmを超え
ると、孔閉塞温度が高くなる虞があるだけでなく、電解
液の保持率が低くなる虞があるために好ましくない。
【0060】空孔率は、30ないし80%であり、好ま
しくは30ないし60%である。
【0061】透気度は、50ないし1000sec/1
00mlであり、好ましくは100ないし800sec
/100mlである。
【0062】引張強度は、少なくともその一方向が50
MPa以上、好ましくはMDおよびTD方向が50MP
a以上、より好ましくは少なくともその一方向が70M
Pa以上である。ここで、少なくとも一方向とは、少な
くともMD方向あるいはTD方向のいずれか一方向のこ
とである。
【0063】ゲル分率は、架橋の程度を示す指標であ
り、50%以上であることが必要である。より好ましく
は60%以上であり、さらにゲル分率が70%を超える
ものであると高い耐熱温度が得られるので好ましい。
【0064】耐熱温度は、170℃以上であり、上限は
とくにないが、好ましくは175℃以上、さらに好まし
くは180℃以上240℃程度である。
【0065】プロピレンカーボネート含浸時間は、30
0sec以下、好ましくは250sec以下、より好ま
しくは100sec以下、さらに好ましくは50sec
以下である。
【0066】熱収縮率は、9%以下であり、好ましくは
7%以下、より好ましくは5%以下である。
【0067】孔閉塞温度は、セパレータとして用いられ
る電池の安全性との関連等において定められるものであ
り140℃以下であることが好ましく、より好ましくは
138℃以下、さらに好ましくは135℃以下である。
【0068】また、処理フィルムは葉脈状および/また
は網目状をなすフィブリルを主な構成要素としており、
その構造は、多孔化処理のところで述べたものと同様で
ある。処理フィルムを体積エネルギー密度が200Wh
/l以上の高容量電池用セパレータフィルムとして使用
するためには、上記物性以外に電解液保液率が170%
以上、好ましくは200%以上、さらに好ましくは23
0%以上であることが好ましい。
【0069】本発明における前記特性は、下記の方法に
よって測定されたものである。
【0070】〈極限粘度〉本明細書中における極限粘度
は、デカリン溶媒にて135℃で測定する値である。測
定法は、ASTM D4020に基づいて行う。
【0071】〈カルボニル比率〉示差走査熱量計(I
R)により、ポリエチレンに基づく4335cm-1の吸
光度(D1)と劣化カルボニルに基づく1715cm-1
の吸光度(D2)を測定し下式より求めた。カルボニル
比率=D2/D1
【0072】〈膜厚〉東京精密株式会社製ミニアックス
(型式DH−150型)にて測定した。
【0073】〈極大細孔径〉水銀ポロシメータ(湯浅ア
イオニクス株式会社製オートスキャン33)を使用し、
孔径分布のピーク値を極大細孔径とした。
【0074】〈空孔率〉試料重量を測定し、フィルムの
密度を0.95g/cm3 として緻密フィルムとしての
厚みを計算で求め、上述の膜厚測定機による値との関係
で求めた。 ここでToは膜厚測定機で求めた実際のフィルムの厚
み、そして、Twは重量から計算で求めた空孔率0%と
してのフィルムの厚みである。
【0075】〈透気度〉ASTMD726に準じ、フィ
ルムをB型ガーレーデンソメーター(東洋精機製作所
製)により測定した。
【0076】〈引張強度〉オリエンテック社製引張試験
機テンシロン(型式RTM100型)で室温(23℃)
にで行った。ASTMD882のA(試料幅15mm)
により測定し、算出した。
【0077】〈ゲル分率〉ゲル分率は、処理フィルム
(W)を秤量後、フィルム重量0.2gに対しp−キシ
レン約200mlを加え、沸点で還流下2時間加熱した
後、未溶分を濾過し乾燥後重量(W1)を測定し、下式
から算出した。 ゲル分率(%)=W1/W×100
【0078】〈耐熱温度〉処理フィルムが、所定温度内
のエアオーブン中で3分間放置した時に、破膜、または
ピンホールが発生しない最高の温度を示す。表中の記号
は、 ○:破膜せず; △:ピンホール発生; ×:破膜; を示す。処理フィルムを内径5cmφの一対の円形固定
枠間に挟み、フィルムを固定状態で耐熱温度を測定し
た。
【0079】〈プロピレンカーボネート含浸時間〉日本
電色工業製ヘイズメーター(NDH−20D)を使用
し、プロピレンカーボネート(和光純薬工業製:特級)
でみたされた液体セル中に3×3cmの処理フィルムを
挿入し、5秒間隔で光線透過率変化を測定した。光線透
過率の増加が1%/min未満となった時間を含浸時間
とした。
【0080】〈熱収縮率〉10×10cmのサンプルを
105℃のエアオーブン(タバイ製)に1時間放置し、
収縮率を算出した。熱収縮率はMD方向とTD方向の平
均値とした。ただし、二軸延伸の場合には延伸する二方
向の平均値を、一軸延伸の場合には延伸方向とそれに直
交する方向の平均値を、方向性のない場合は任意の直交
する二方向の平均値を採用した。
【0081】〈孔閉塞温度〉予め、乾燥窒素雰囲気下
(水分50ppm以下)で過塩素酸リチウムの1mol
/lの溶液を、モレキュラーシーブ(和光純薬製:4
A)で脱水処理したプロピレンカーボネートを溶媒とし
て調整し、この溶液を減圧操作を利用してフィルムに完
全に含浸した。このフィルムをニッケル電極に挟み、3
0℃/minの速度昇温下において、インピーダンスメ
ーター(三田無線研究所製:モデルD−52S)でフィ
ルムの体積抵抗率を測定した。装置、測定法は、ラマン
らの報告(F.C.Laman et al.,J.Eloctrochme. Soc., Vo
l.140, 51-53(1993))に基づいた。常温(23℃)での
体積当たりの抵抗率をフィルムの体積抵抗率(通常、こ
の多孔フィルムでは常温で200Ωcm2 以下)とし昇
温を行ってその電気抵抗率が1000Ωcm2 に達した
温度を孔閉塞温度とした。
【0082】〈電解液保液率〉10cm×10cmの正
方形の処理フィルムを、電解液(過塩素酸リチウムの1
mol/l含有するプロピレンカーボネート)に100
0秒間浸漬した。次に空気中に取り出して、かどをつま
んで1分間つるし、表面に付着した電解液を流下させた
後、重量(W1)を測定した。浸漬前の重量Wから下式
を用いて計算した。 電解液保液率(%)=(W1−W)/ W×100
【0083】
【発明の効果】本発明によって提供されるポリオレフィ
ン多孔フィルムは、示差走査熱量計(R)により測定さ
れるカルボニル比率が0.04以上で、ゲル分率が50
%以上となるように架橋および架橋後処理することによ
って、低閉塞温度と高耐熱温度を得るだけでなくプロピ
レンカーボネート等の有機溶媒やKOH水溶液等の含浸
性を良好にでき、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水
素電池、リチウムイオン電池、リチウム金属電池等のセ
パレータ用途に好適に用いられる。また、優れた含浸透
過性も有するため各種フィルターにも使用できる。
【0084】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて説明する。 〈実験例1ないし4〉 〈処理前フィルムの調製〉図1に示すインフレーション
フィルムの製造装置において、下記の仕様による装置を
用いて高分子量ポリエチレン製インフレーションフィル
ムを製造した。装置の仕様 押出機の第1スクリュー外径50mmφ; スクリュー有効長さ1100mm; フライトピッチ30mm一定; スクリュー圧縮比1.8; 押出機に対して立設してなるスクリューダイ有効長さ1
490mm(L/D=28); ダイ出口アウターダイ内径53mmφ、ダイ出口マンド
レル外径45mmφ; S1/S2=1.17; S2/S3=3.14; スクリューダイの第2スクリュー外径70mmφ; 第2スクリュー有効長さ238mm; フライトピッチ25mm一定; 第2スクリュー圧縮比1.0; 安定棒の外径39mmφ; 安定棒長さ600mm;
【0085】第2スクリュー内部、マンドレル内部及び
安定棒シャフト内部に延在してなる8mmφの気体流
路、安定板、ピンチロール及び製品巻取機を具備してな
る。ここで、S1は、第2スクリュー先端部20Aの樹
脂流路の断面積、S2は、スクリューダイ中間部20B
5の樹脂流路の断面積、S3は、スクリューダイ出口部
20Cでの樹脂流路の断面積である。
【0086】<インフレーションフィルムの製造>高分
子量ポリエチレン[η]:8.2dl/g、融点:13
6℃、嵩密度:0.45g/cm3 の粉末樹脂を用い、
押出機、図1に示すジョイント部(J)、ダイ基部(D
1)及びダイ先端部(D2)の設定温度を各々200
℃、180℃、160℃、160℃にし、第1スクリュ
ー回転数を21rpm、第2スクリュー回転数を4.5
rpmに設定し、ピンチロールで7.7m/minの速
度で引取りながら、第2スクリュー内部、マンドレル及
び安定棒シャフトの内部に延在してなる8mmφの気体
流路から圧搾空気を吹込んで、パリソンをアウターダイ
内径53mmφの8.5倍に膨らませて、折り幅710
mm、厚み15μmからなる高分子量ポリエチレン製イ
ンフレーションフィルムを安定して製造した。エアリン
グは、膨比の大きさに応じて適宜適当な内径のものに変
更した。成形条件と得られたフィルムの特性を表1に示
す。
【0087】
【表1】
【0088】〈多孔化〉得られたインフレーションフィ
ルムを用いて、以下のようにして熱処理を行った。図2
に示した一対のステンレス製金枠33にインフレーショ
ンフィルム31を挟み、ネジ32で上下の金枠に固定す
ることにより、フィルムの四方を固定した。この状態
で、加熱した熱処理用液体(第1液体)を満たした槽中
に投入し、所定時間浸漬した。
【0089】〈第二の液体浸漬と乾燥〉熱処理槽から取
り出した金枠に固定したフィルムをその状態で第二の液
体で満たした槽中に投入し、浸漬した。これを取り出し
て室温(23℃)で風乾した後、フィルムを金枠からは
ずし、測定用試料とした。処理条件は、すべての試料に
ついて下記表2の通りであった。
【0090】
【表2】
【0091】〈架橋および架橋後処理〉上記実験例で得
られた多孔フィルムを使用して、表3に示す条件で電子
線を照射し、多孔フィルムの架橋を行った。電子線照射
は、日新ハイボルテージ(株)製の「EBC300−6
0」を用い窒素雰囲気下(酸素濃度0.1vol%)
で、加速電圧200kVの条件で行った。架橋処理後、
空気中に40℃で100hr放置し、得られた多孔フィ
ルムの各種物性を測定した。なお、比較実験例1とし
て、架橋処理を行っていない試料、比較実験例2,3と
して架橋処理後、60℃の真空下でラジカルを消失させ
た試料についても同様に各種物性を測定した。ラジカル
の消失は、ESR(日本電子製:型式JES−FE−E
XG)で確認した。結果を表3および表4に示す。
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多孔フィルムを製造するための成形装
置の一例を示す正面断面図である。
【図2】本発明において、延伸前フィルムを熱処理する
際に該フィルムを固定するための金枠の一例を示す図で
ある。
【符号の説明】
1 押出機 2 溝付シリンダー 3 第1スクリュー 10 トーピド 11 圧力計 20 スクリューダイ 20A 第2スクリュー先端部 20B スクリューダイ中間部 20C スクリューダイ出口 21 第2スクリュー 22 アウターダイ 23 マンドレル 24 気体流路 25 エアリング 26 安定棒 27 防風筒 30 パリソン 31 インフレーションフィルム 32 ネジ 33 金枠
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B29K 23:00 105:04 B29L 7:00 C08L 23:04

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリオレフィンよりなる多孔フィルムで
    あって、示差走査熱量計(IR)により測定されたカル
    ボニル比率が0.04以上であり、かつ、以下の特徴を
    有する多孔フィルム。 (1)膜厚が5ないし100μm; (2)極大細孔径が0.05ないし10.0μm; (3)空孔率が30ないし80%; (4)透気度が50ないし1000sec/100m
    l; (5)少なくとも一方向の引張強度が50MPa以上;
  2. 【請求項2】 さらに、以下の特性を有する請求項1記
    載の多孔フィルム。 (1)ゲル分率が50%以上; (2)耐熱温度が170℃以上;
  3. 【請求項3】 プロピレンカーボネートの含浸時間が3
    00秒以下である請求項1または2記載の多孔フィル
    ム。
  4. 【請求項4】 熱収縮率が9%以下である請求項1ない
    し3のいずれか1記載の多孔フィルム。
  5. 【請求項5】 孔閉塞温度が140℃以下である請求項
    1ないし4のいずれか1記載の多孔フィルム。
  6. 【請求項6】 電解液保液率が170%以上である請求
    項1ないし5のいずれか1記載の多孔フィルム。
  7. 【請求項7】 ポリオレフィン多孔フィルムを窒素雰囲
    気中において、1ないし50Mradの照射線量で電子
    線照射処理を行った後、酸素存在下において、残留ラジ
    カルを消失させることを特徴とするポリオレフィン多孔
    フィルムの製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし6のいずれか1記載の多
    孔フィルムからなる電池用セパレータフィルム。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし6のいずれか1記載の多
    孔フィルムからなる高容量電池用セパレータフィルム。
  10. 【請求項10】 電池が、電解液として水または有機化合
    物を主成分とするものである請求項8または9に記載の
    電池用セパレータフィルム。
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