JP4131807B2 - 走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法 - Google Patents

走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法に関し、特に、光学顕微鏡等の広視野観察装置が複合された走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
走査型プローブ顕微鏡は、従来、原子オーダまたは原子サイズの微細な対象物を観察できる測定分解能を有する測定装置として知られ、半導体デバイスが作られる基板等の表面の凹凸形状の計測など各種の分野に適用されている。測定に利用する検出物理量に応じて各種のタイプの走査型プローブ顕微鏡がある。例えばトンネル電流を利用する走査型トンネル顕微鏡、原子間力を利用する原子間力顕微鏡、磁気力を利用する磁気力顕微鏡等があり、それらの応用範囲も拡大しつつある。
【0003】
上記のうち原子間力顕微鏡は、試料表面の微細な凹凸形状を高分解能で検出するのに適し、半導体基板、ディスクなどの分野で実績を上げている。最近ではインライン自動検査の用途にまで使用されてきている。以下の説明では原子間力顕微鏡の例を説明する。
【0004】
図4に原子間力顕微鏡の基本的な構成の一例を示す。この原子間力顕微鏡は、本来の原子間力顕微鏡の原理に基づく測定機構と共に、広視野顕微鏡として光学顕微鏡を備え、複合的な構成を有している。
【0005】
図4において、例えば水平に設置された定盤(図示せず)の上にXYZステージ11を配置している。XYZステージ11は試料ステージであり、その上に半導体基板等の薄板状の試料12が置かれている。試料12の位置は安定に保持されている。XYZステージ11は、図中水平面(XY平面)における位置決めのためのXY移動機構と、Z軸方向の探針接近機構とから構成される。XYZステージ11は、例えば、パルスモータおよび駆動力伝達機構、あるいは機構学的な構成を利用した積み重ね式構造等により比較的に大きな移動量で位置変化を生じさせる。
【0006】
上記定盤上には、例えば、掛渡し形状のフレーム(図示せず)が設けられている。このフレームの水平部に取り付けられることにより、試料12の上方位置に、駆動機構21を備えた光学顕微鏡22が配置される。駆動機構21は、Z軸方向に光学顕微鏡22を動かすもので、光学顕微鏡の焦点合せ(フォーカス)のための機構である。光学顕微鏡22は、その対物レンズ22aを下方に向けて配置され、試料12の表面を真上から臨む位置に配置されている。光学顕微鏡22の上端部にはカメラ23が付設されている。
【0007】
上記フレームの水平部にはXYZ微動機構24が取り付けられ、図示されるごとく配置されている。XYZ微動機構24は、通常、圧電素子で構成される。XYZ微動機構24にはトライポッド型あるいはチューブ型、平行平板型等のものが存在する。XYZ微動機構24によってX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各々へ微小距離(例えば数〜10μm)の変位を生じさせることができる。
【0008】
XYZ微動機構24の下端には、先端に探針25が形成されたカンチレバー26が取り付けられている。探針25は、試料12の表面に対向している。カンチレバー26の背面には反射面が形成されている。カンチレバー26の上方に配置されたレーザ光源(レーザ発振器)27から出射されたレーザ光28がカンチレバー26の背面における探針25に近い部分に照射される。カンチレバー26の背面で反射されたレーザ光28は光検出器29より検出される。カンチレバー26において捩れや撓みが生じると、光検出器29におけるレーザ光28の入射位置が変化する。従って探針25およびカンチレバー26で変位が生じると、光検出器29から出力される検出信号で当該変位の方向および量を検出することができる。なおその他の検出装置として光干渉を利用した装置もある。
【0009】
上記の原子間力顕微鏡の構成に対して、制御系として、比較器31、制御器32、制御装置33が設けられる。比較器31は、光検出器29から出力される電圧信号と基準電圧(Vref)とを比較し、その偏差信号を出力する。制御器32は、比較器31から出力される偏差信号が0になるように制御信号を生成し、この制御信号をXYZ微動機構24内のZ微動部に与える。制御装置33は、光学顕微鏡22で得られる画像の管理・処理を行う画像処理部33a、原子間力顕微鏡による測定のデータの管理・処理するデータ処理部33b、XYZ微動機構24のXY走査に関する動作を制御する微動機構制御部33c、XYZステージ11の動作に関するステージ制御部33d、および画像表示処理部33eを備える。制御装置33は記憶部34と表示装置35を備える。入力された各種のデータ、および上記各種の機能を実現するプログラムは記憶部34に保存されている。表示装置35の画面には画像表示処理部33eで作られた試料表面に係る形状等の画像が表示される。
【0010】
制御装置33には、カメラ23からの画像信号s1、制御器32から出力される制御信号s2が入力される。また制御装置33からは、XYZ微動機構24のX軸方向とY軸方向の微動部(XY微動機構部分)を駆動させるXY走査信号s3、XYZステージ11のX,Y,Zの各ステージ部分を駆動させる各駆動信号s4〜s6が出力される。
【0011】
制御装置33は、通常、PC(パーソナル・コンピュータ)であり、表示装置35はPCのディスプレイである。表示装置35の画面に表示される内容は、光学顕微鏡22による映像(光学顕微鏡像)と、原子間力顕微鏡に基づいて得られた凹凸情報と位置情報により作成される試料12の表面画像である。
【0012】
上記の構成で、XYZステージ11によって探針25を試料12の表面に接近させると、両者の間に原子間力が作用してカンチレバー26に撓みが起きる。カンチレバー26の撓み量はレーザ光28と光検出器29を用いて検出される。この検出には、一般的に、図示された光てこ法が利用される。この状態において、当該カンチレバー26の撓み量を一定に保つように、制御器32によってXYZ微動機構24によるZ軸方向の伸縮動作を制御する。制御器32はフィードバック制御を行う。探針・試料間の距離を一定に保つことにより、カンチレバー26の撓み量が一定に保たれる。XYZ微動機構24のXとYの微動機構部分の動作に基づいて、試料12の表面を探針25によってXおよびYの方向に走査しながら、かつXYZ微動機構24のZ微動部によるカンチレバー26の撓み量を一定に保持する制御を行うことにより、試料12の表面の凹凸形状を測定する。
【0013】
上記構成を有する原子間力顕微鏡において、より広い観察視野を有する光学顕微鏡22の役割は次の通りである。
【0014】
第1に光軸を合せることである。上記構成によれば、カンチレバー26にレーザ光28を照射し、光てこ式光学検出系を形成している。その光軸合せに光学顕微鏡22を用いる。カンチレバー26は、長さが数十〜200μm、幅が10〜50μm程度である。従って肉眼で光軸合せを行うことは操作性が悪く、光学顕微鏡を見ながら行うことが必須となる。この場合、光学顕微鏡22の焦点はカンチレバー26の背面に合せられる。そのときの焦点距離はdcである。
【0015】
第2に観察場所の特定である。原子間力顕微鏡は極めて高い測定分解能を有しているが、その測定範囲が狭く、リアルタイムの測定を行うことは現状困難である。そこで、光学顕微鏡22によって測定試料の表面を大きな視野で全体的に観察し、さらに細かく観察したい場所を原子間力顕微鏡の測定部に対応する位置にセットする。この場合、光学顕微鏡22の焦点は試料12の表面に合せられる。そのときの焦点距離はdsである。
【0016】
光学顕微鏡22の焦点合せは、通常の装置によれば、人間が手動で操作することが多い。しかし、半導体製造装置のインライン自動検査として原子間力顕微鏡が用いられるようになったことから、焦点合せ動作も自動化される必要がある。一般的には、自動焦点合せ機構を搭載することが考えられるが、原子間力顕微鏡が本来的に有する制約(例えば光学顕微鏡の観察視野内にカンチレバーが映る等)があり、一般的に用いられるコントラスト法などを適用するだけでは容易に自動化することができない。なおカンチレバー26と光学顕微鏡22を別の位置に配置することもできるが、観察場所の合せ込み、実時間での測定箇所のモニタリングなどの操作性を考えると、カンチレバーと光学顕微鏡は同軸的な位置関係で構成することが望ましい。
【0017】
図5〜図7に基づいて光学顕微鏡22による観察状態を説明する。図5は光学顕微鏡22の焦点を試料表面から離れた位置にあるカンチレバー26(探針25)の背面に合せた状態を示し、図6は探針25を試料表面から離した状態で光学顕微鏡22の焦点を試料表面に合せた状態を示し、図7は探針25を試料表面に接近させた状態で光学顕微鏡22の焦点を試料表面に合せた状態を示している。図5〜図7の各々で(A)は装置要部の側面図、(B)は光学顕微鏡による観察視野の図を示している。
【0018】
図5の(A)において、カンチレバー26はXYZ微動機構24に設けられているので、カンチレバー26の高さ位置(Z軸方向の位置)を決めるXYZ微動機構24のZ微動部の位置(Zp=Zp1)に基づいて光学顕微鏡22の駆動機構21の動作位置を調整する。図に示されるごとく、XYZステージ11によるZ軸方向の高さ(Z)はZ1、駆動機構21によって設定された高さ位置(Zf)はZf1、焦点距離dcはFである。41は焦点が合された状態をイメージ的に示している。XYZ微動機構24のZ微動部の動作範囲は、通常、10μm以下のレベルであるが、光学顕微鏡22の倍率が高い場合には被写界深度が狭くなり、光学顕微鏡22による焦点ずれが生じやすい。図5の(B)において、光学顕微鏡22の観察視野22Aではカンチレバー26の先端部の像26Aが観察されている。
【0019】
図6の(A)において、光学顕微鏡22の焦点位置は駆動機構21の動作に基づいて試料12の表面に合せられている。カンチレバー26は光学顕微鏡22に対して同軸的な位置関係にあるが、焦点が合されていないので、図6の(B)に示すごとく光学顕微鏡22の観察視野22Aでは試料表面の像のみが観察される。光学顕微鏡22による観察像において、原子間力顕微鏡によって測定したい箇所(例えばP1のパターン)を見つけて、通常、光学顕微鏡22の観察範囲の中心位置にセットする。自動測定の場合には、予め測定したい箇所の試料表面パターンを記憶しておき、パターン認識技術を複合させて自動的に測定箇所のセットを行うように構成される。
【0020】
最後の段階では、図7の(A)に示されるごとく、XYZステージ11の探針接近機構(Z粗動機構)を動作させ、探針25と試料12を接近させる。この場合、カンチレバー26はその撓み量が目標値になるまで接近させるが、通常では、XYZ微動機構24のZ微動部によるストロークの中心点(Zp=Zp3)になるように制御することが多い。図7の(B)によれば、試料12の表面に焦点が合っている状態である。カンチレバー26は、探針の長さの分だけ焦点合せ位置が異なるので、ピンぼけ状態となって映し出される。この状態において原子間力顕微鏡による測定を行うことになるが、観察位置の微小なずれがある場合には、光学顕微鏡22で試料表面を観察して補正を行う必要がある。カンチレバー26の映像は、場所の特定で妨害となる。これを防止するため、例えば他のパターンP2を新たに光学顕微鏡の観察視野の中心にセットして、測定し直すこともある。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
光学顕微鏡22が装備された原子間力顕微鏡において、光学顕微鏡22は各場合でその対象に対して焦点を合せることが必要である。測定操作者が手動によって光学顕微鏡22の焦点合せを行うときには問題は起きない。他方、焦点合せを自動的に行う場合には、光学顕微鏡22の光軸に対してカンチレバー26の位置が同軸的な位置関係となるという制約から、単純な自動フォーカス技術を使用することは困難である。また複雑なアルゴリズムを有する自動フォーカス技術を用いると、焦点合せに要する時間が長くなり、測定システムのスループットを阻害するという問題も起きる。
【0022】
また図5〜図7の(B)で示された光学顕微鏡22の観察視野による映像パターンにおける幾何学的な位置関係を予め記憶しておき、状態に応じて各点の焦点合せを行うようにすることも考えられる。しかしながら、カンチレバー製造プロセスにおける探針の長さのバラツキ、探針摩耗に伴う探針長さの変化、カンチレバー取り付け時の位置誤差、またはアルゴリズムの不確定である点などの理由によって、単純に上記の自動焦点合せを行うことには限界がある。特に、光学顕微鏡22を高倍率で使用する場合には、被写界深度が浅くなり、位置誤差により適正な焦点合せを行うことができないことが多い。
【0023】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、光学顕微鏡等の広視野顕微鏡が複合されて成る走査型プローブ顕微鏡において、試料の表面やカンチレバー等の背面への光学顕微鏡等の焦点合せ操作を容易に行うことができ、簡易な方法で自動的な焦点合せを可能とし、測定の自動化に適した走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段および作用】
本発明に係る走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法は、上記目的を達成するために、次のように構成される。
【0025】
第1の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法(請求項1に対応)は、探針で試料を走査して試料表面に関する物理的量(原子間力等)を測定する測定部と、探針を微動させる微動機構と、探針と試料の間隔を小さくする探針接近機構と、広視野顕微鏡(光学顕微鏡等)と、この広視野顕微鏡の焦点合せ用駆動機構とを備える走査型プローブ顕微鏡に適用され、探針接近機構により探針と試料を接近させた状態で試料表面に広視野顕微鏡の焦点を合せ、このときの駆動機構部の位置情報を記憶し、位置情報を基準として自動測定時の広視野顕微鏡の焦点合せを行う方法である。
【0026】
第2の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法(請求項2に対応)は、第1の方法において、好ましくは、駆動機構部は、探針接近機構、広視野顕微鏡の焦点合せ用駆動機構、微動機構の高さ方向微動部であることで特徴づけられる。
【0027】
第3の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法(請求項3に対応)は、第1の方法において、好ましくは、広視野顕微鏡は探針の支持部(カンチレバー等)と同軸的に配置される。
【0028】
第4の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法(請求項4に対応)は、第3の方法において、好ましくは、広視野顕微鏡は試料表面に対して焦点を合せることを特徴とする。
【0029】
第5の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法(請求項5に対応)は、第1の方法において、好ましくは、同じ探針で複数の試料を測定するとき、記憶動作は、第1回目の測定または任意の状態の1つの試料についての測定のときにのみ行われることで特徴づけられる。
【0030】
第6の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法(請求項6に対応)は、第1の方法において、好ましくは、探針交換のときまたは長期使用に伴うドリフトが生じたとき、再度、焦点合せを行い、駆動機構部の位置情報を記憶することを特徴とする。
【0031】
第7の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法(請求項7に対応)は、探針で試料を走査して試料表面に関する物理的量を測定する測定部と、探針を微動させる微動機構と、探針と試料の間隔を小さくする探針接近機構と、広視野顕微鏡と、この広視野顕微鏡の焦点合せ用駆動機構とを備える走査型プローブ顕微鏡に適用され、探針接近機構により探針と試料を接近させた状態で探針の支持部の表面に広視野顕微鏡の焦点を合せ、このときの広視野顕微鏡の焦点合せ用駆動機構、微動機構の高さ方向微動部の位置情報を記憶し、その後に自動測定を行う時、位置情報を基準とし広視野顕微鏡の焦点合せを行う方法である。
【0033】
の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法(請求項に対応)は、第の方法において、好ましくは、広視野顕微鏡は探針の支持部と同軸的に配置されることを特徴とする。
【0034】
の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法(請求項に対応)は、第7の方法において、好ましくは、同じ探針で複数の試料を測定するとき、記憶動作は、第1回目の測定または任意の状態の1つの試料についての測定のときにのみ行われることを特徴とする。
【0035】
10の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法(請求項10に対応)は、第7の方法において、好ましくは、探針交換のときまたは長期使用に伴う温度ドリフトが生じたとき、再度、焦点合せを行い、駆動機構部の位置情報を記憶することを特徴とする。
【0036】
【作用】
本発明に係る走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法においては、光学顕微鏡等の焦点合せの基準座標系を、原子間力顕微鏡等の構成の特徴と制約の中で一意的に定めることが基本的な考え方となっている。
【0037】
探針を試料に接近させたときに少なくとも一度だけ光学顕微鏡等の焦点を試料表面に合せ、そのときの探針接近機構の動作位置、光学顕微鏡等で設定された焦点位置、およびZ微動機構部分の動作位置を記憶させておく。これらの位置の情報は、製造プロセス上の探針の長さのバラツキ、カンチレバーの種類に伴う形状、寸法差、あるいは取付け誤差がある場合にも、そのカンチレバーを用いて測定する以上一義的に定まる。
【0038】
そこで、上記の一義的に定まる位置関係を記憶することにより、焦点合せを自動的に行うとき、その情報を用いて焦点合せの位置を確定できるようにする。特に光学顕微鏡を備えて複合的に構成された原子間力顕微鏡を、例えば自動検査装置として適用する場合には、同じ探針を用いて繰返し測定する場合が多いため、本発明による焦点方法を含む測定方法では、簡単に焦点合せを自動的に行うことが可能となる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0040】
実施形態で説明される構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、従って本発明は、以下に説明される実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0041】
本発明に係る焦点合せ方法が適用される走査型プローブ顕微鏡の構成は、基本的に図4で説明されたものと同じである。従って、実施形態の説明において、装置の部分に関しては図4を参考にして説明を行う。本実施形態では、光学顕微鏡を装備した原子間力顕微鏡での焦点合せを自動的に行う方法を説明する。焦点合せの基本的手順は図5〜図7で説明した手順と同じである。本発明に係る焦点合せ方法および自動測定方法を実施するための制御用プログラムは、記憶部34に記憶して用意される。
【0042】
原子間力顕微鏡の自動測定に関して図1および図4〜図7を参照して説明を補足する。原子間力顕微鏡の自動測定の全体工程の手順は次の通りである。
【0043】
(1)探針交換(ステップS11):
自動測定に先立って探針25(カンチレバー26)を装置に装着し、光てこ式光学検出系の光軸合せを行う。この動作状態は、図5に示された状態に対応している。
【0044】
(2)試料搭載(ステップS12):
試料12としてシリコン半導体基板が一般的である。当該試料は図示しない搬送ロボットによって検査チャンバに搬入され、XYZステージ11の上に載置され、固定される。検査が完了した試料12は搬送ロボットで搬出される。
【0045】
(3)観察場所の特定と位置出し(ステップS13):
光学顕微鏡22によって試料12の表面を観察し、原子間力顕微鏡で測定したい場所を特定し、当該測定予定場所を原子間力顕微鏡の測定可能位置にセットする。通常、この動作は、光学顕微鏡22を用いたパターン認識技術によって行われる。この動作状態は、図6に示された状態に対応している。
【0046】
(4)探針接近(ステップS14):
XYZステージ11内の探針接近機構に基づいて探針25と試料12を接近させる。次にカンチレバー26の撓み量を光てこ式光学検出系によって検出し、所定の撓み量になるまで接近動作を行う。
【0047】
(5)原子間力顕微鏡による測定(ステップS15):
或る微小の測定範囲(例えば10μm四方の領域)に対して原子間力顕微鏡の測定部の構成に基づいて測定を行う。通常、1つの試料ではその表面上で複数箇所(たとえば5〜9箇所)の測定が行われる。
【0048】
(6)試料搬出(ステップS16):
探針25を後退させ、図示しない搬送ロボットによって試料12を搬出する。
【0049】
(7)繰返しの判断(ステップS17):
原則的に上記のステップS12に戻るようにして上記のステップS12〜S16を繰り返す。
【0050】
(8)探針摩耗の判断(ステップS18):
探針25が摩耗したと判断された場合には、ステップS11に戻るようにする。ステップS11では、カンチレバー26を交換し、別の探針25を用いて測定を行えるようにする。その後、上記のステップS12〜S17を繰り返す。
【0051】
以上のステップS11〜S18から成る手順によって、原子間力顕微鏡に基づく自動測定が行われる。この原子間力顕微鏡に基づく自動測定では、光学顕微鏡22による焦点合せが自動的に行われることが必須となる。この自動焦点合せは、光学顕微鏡22の焦点をカンチレバー26の背面に合せる時、および光学顕微鏡22の焦点を試料12の表面に合せる時に行われる。
【0052】
次に、図2を参照して、光学顕微鏡22による自動焦点合せの方法の第1の実施形態を説明する。
【0053】
半導体基板の自動検査工程において、最初の測定試料、あるいは任意の1つの試料を用いて初期設定を行う。初期設定では、まず、XYZステージ11の上に配置された最初の測定試料12について、この試料12と探針25を接近させ、カンチレバー26の撓み量が所定の状態になるまで接近動作を行う(ステップS21,S22)。この接近動作はXYZステージ11内の探針接近機構に基づいて行われる。カンチレバー26の撓み量が所定量になり、ステップS22で接近終了と判断されると、その状態で接近動作は停止され、次の焦点合せ(ステップS23)に移行する。
【0054】
接近が終了した時点で、試料12の表面に対して光学顕微鏡22の焦点合せが行われる(光学顕微鏡焦点合せ:ステップS23)。このときの光学顕微鏡22の状態は、図7に示された状態である。光学顕微鏡22の焦点合せはカンチレバーの部分を避けて試料表面に対して行われている。この焦点合せは、初期設定であることから、測定操作者によってマニュアル式でやってもよいし、自動的に行うようにしてもよい。このステップS23で、光学顕微鏡22の焦点が試料表面に合せられたときに、この状態で、XYZステージ11内の探針接近機構、光学顕微鏡22の焦点合せ用駆動機構21、およびXYZ微動機構24のZ微動部のそれぞれの位置Z,Zf,Zpを位置データとして記憶する。そのときの位置データは、Z=Z3,Zf=Zf3,Zp=Zp3となる。
【0055】
以上によって、最初の測定試料12等に関して初期設定が完了する。次のステップS24では、次およびそれ以降に搬入される複数の試料12のそれぞれに関して自動測定が行われる。当該自動測定は、前述したステップS11〜S18に従って測定が行われる。自動測定は、試料12が搬入されるごとに繰り返される。自動測定のその時々において、光学顕微鏡22の焦点合せを行うことが必要である。光学顕微鏡22の焦点合せは、図2のステップS24に示されるごとく、「場合1」、「場合2」、「場合3」の3通りがある。「場合1」は試料表面から離れているカンチレバー26の背面への焦点合せであり(ステップS11、図5に対応)、「場合2」は試料表面からカンチレバー26が離れて焦点ずれ(デフォーカス)状態での試料12の表面への焦点合せであり(ステップS13、図6に対応)、「場合3」は探針接近時の試料12の表面への焦点合せである(ステップS14、図7に対応)。なお図2のステップS24では、「場合4」として、上記の3通り以外の場合の焦点合せがあることを想定して示している。
【0056】
本実施形態による光学顕微鏡の自動焦点合せでは、探針25が試料12の表面に接近した状態で上記各部の位置情報Z,Zf,Zpを予め記憶しておき、これらを基準としてその他の状態での焦点合せを行うようにしている。この方式による光学顕微鏡22の自動焦点合せによれば、探針の長さのバラツキ、カンチレバーの種類に伴う寸法形状、あるいはカンチレバー取付け時の位置誤差等によらず、現在の測定状況において一義的に定まる焦点合せ位置情報を使用する。従って、複雑な自動焦点合せのための処理を行うことなく、簡単な焦点合せを自動的に正確に行うことができる。
【0057】
なお長時間の測定において、温度変動などで焦点合せの位置にドリフトが生じる可能性が想定される。このような場合には、例えば光学顕微鏡22のパターン認識を行う際に、焦点合せがうまくできないときにはパターン認識ができないということを利用してエラー信号を発生させ、このときには再度探針接近位置での初期設定の焦点合せをやり直すように構成することも可能である。
【0058】
また探針を新たなものに交換する場合にも、同様に、探針接近位置での初期設定の焦点合せをやり直すことを前提としている。
【0059】
上記の第1の実施形態によれば、複雑かつ高価な自動焦点合せの技術を搭載することなく、極めて簡易な焦点合せ手順にて原子間力顕微鏡による自動計測を行うことができる。
【0060】
次に、図3を参照して、光学顕微鏡22による自動焦点合せの方法の第2の実施形態を説明する。
【0061】
この焦点合せの場合には、カンチレバー26の種類を選択して標準の探針長さ(r)情報を入力しておく(ステップS31)。次に光学顕微鏡22の焦点をカンチレバー26の背面に合せる。これは図5に示された状態である。この状態で、駆動機構21の位置(焦点位置)およびXYZ微動機構24のZ微動部の位置を記憶する(ステップS32)。次に原子間力顕微鏡による自動測定を行う(ステップS33)。原子間力顕微鏡の自動測定での光学顕微鏡22の自動焦点合せは、ステップS32で記憶された位置データを用いて行われる。
【0062】
図4に示された構成によれば、探針と試料の接近は試料側に設けられたXYZステージ11内の探針接近機構によって行うので、カンチレバー26の位置はXYZ微動機構24のZ微動部のストローク内(例えば5μm)しか動かず、簡易な基準となる。さらに、カンチレバー26に対して焦点合せを行った時のZ微動部のZ微動位置の情報も記憶して補正できるので、正しい基準位置とすることができる。
【0063】
本実施形態によれば、光学顕微鏡が低い倍率を有するものであり、比較的に被写界深度が大きい場合に有効に作用する。第1の実施形態に比較すると、探針長さのバラツキなどの誤差が大きくなるが、数μmのバラツキの場合、実用的に十分に使用することが可能である。
【0064】
以上の実施形態の説明で明らかなごとく、本実施形態による光学顕微鏡の自動焦点合せ(自動フォーカス)の方法によれば、探針接近位置における試料表面の位置、探針の位置を基準にして、記憶したその座標情報を用いて、その他の場合の焦点合せを行うものである。従って、例えばコントラスト法、その他の自動フォーカスアルゴリズムを用いる場合に比較して極めて短時間で焦点合せを行うことができ、検査装置としてのシステムスループットを向上させることができる。さらに、新たな構成やアルゴリズムが不要なため、安価な自動焦点合せシステムを構築することができる。
【0065】
上記の実施形態では、光学顕微鏡を備えた原子間力顕微鏡での自動焦点合せの例を説明したが、他の類似の広視野顕微鏡を備える他の走査型プローブ顕微鏡においても同様に本発明に係る自動焦点合せの方法を適用することができるのは勿論である。
【0066】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように本発明によれば、光学顕微鏡等の広視野顕微鏡を備えた原子間力顕微鏡等の走査型プローブ顕微鏡において、自動測定を行うときに必要となる各場合の自動焦点合せで、初期設定の段階で必要な位置情報を得て記憶しておき、その後の自動測定での焦点合せで利用するようにしたため、試料の表面やカンチレバーの背面への焦点合せの自動操作を容易に行うことができる。特に、測定の自動化が必要とされる原子間力顕微鏡等の走査型プローブ顕微鏡において実用的な自動測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】原子間力顕微鏡での自動測定の手順を示すフローチャートである。
【図2】本発明に係る焦点合せ方法の第1の実施形態を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る焦点合せ方法の第2の実施形態を示すフローチャートである。
【図4】走査型プローブ顕微鏡の一例である光学顕微鏡付き原子間力顕微鏡の基本的構成を示す構成図である。
【図5】光学顕微鏡の焦点合せの第1の場合の例を説明する図である。
【図6】光学顕微鏡の焦点合せの第2の場合の例を説明する図である。
【図7】光学顕微鏡の焦点合せの第3 場合の例を説明する図である。
【符号の説明】
11 XYZステージ
12 試料
21 駆動機構
22 光学顕微鏡
23 カメラ
24 XYZ微動機構
25 探針
26 カンチレバー
27 レーザ光源
28 レーザ光
29 光検出器
31 比較器
32 制御器
33 制御装置

Claims (10)

  1. 探針で試料を走査して試料表面に関する物理的量を測定する測定部と、前記探針を微動させる微動機構と、前記探針と前記試料の間隔を小さくする探針接近機構と、広視野顕微鏡と、この広視野顕微鏡の焦点合せ用駆動機構とを備える走査型プローブ顕微鏡に適用され、
    前記探針接近機構により前記探針と前記試料を接近させた状態で試料表面に広視野顕微鏡の焦点を合せ、このときの駆動機構部の位置情報を記憶し、前記位置情報を基準として自動測定時の前記広視野顕微鏡の焦点合せを行うことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法。
  2. 前記駆動機構部は、前記探針接近機構、前記広視野顕微鏡の焦点合せ用駆動機構、前記微動機構の高さ方向微動部であることを特徴とする請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法。
  3. 前記広視野顕微鏡は前記探針の支持部と同軸的に配置されることを特徴とする請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法。
  4. 前記広視野顕微鏡は試料表面に対して焦点を合せることを特徴とする請求項3記載の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法。
  5. 同じ探針で複数の試料を測定するとき、前記記憶動作は、第1回目の測定または任意の状態の1つの試料についての測定のときにのみ行われることを特徴とする請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法。
  6. 探針交換のときまたは長期使用に伴うドリフトが生じたとき、再度、焦点合せを行い、前記駆動機構部の位置情報を記憶することを特徴とする請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法。
  7. 探針で試料を走査して試料表面に関する物理的量を測定する測定部と、前記探針を微動させる微動機構と、前記探針と前記試料の間隔を小さくする探針接近機構と、広視野顕微鏡と、この広視野顕微鏡の焦点合せ用駆動機構とを備える走査型プローブ顕微鏡に適用され、
    前記探針接近機構により前記探針と前記試料を接近させた状態で前記探針の支持部の表面に広視野顕微鏡の焦点を合せ、このときの前記広視野顕微鏡の焦点合せ用駆動機構、前記微動機構の高さ方向微動部の位置情報を記憶し、その後に自動測定を行う時、前記位置情報を基準として前記広視野顕微鏡の焦点合せを行うことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法。
  8. 前記広視野顕微鏡は前記探針の支持部と同軸的に配置されることを特徴とする請求項記載の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法。
  9. 同じ探針で複数の試料を測定するとき、前記記憶動作は、第1回目の測定または任意の状態の1つの試料についての測定のときにのみ行われることを特徴とする請求項7記載の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法。
  10. 探針交換のときまたは長期使用に伴うドリフトが生じたとき、再度、焦点合せを行い、前記駆動機構部の位置情報を記憶することを特徴とする請求項7記載の走査型プローブ顕微鏡の焦点合せ方法。
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