JP4131806B2 - 走査型プローブ顕微鏡の測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は走査型プローブ顕微鏡の測定方法に関し、特に、試料表面の観察領域の基準点に係る情報を活用した走査型プローブ顕微鏡の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
走査型プローブ顕微鏡は、従来、原子サイズの微細な対象物を観察できる測定分解能を有する測定装置として知られ、半導体デバイスが作られる基板等の表面の凹凸形状の計測など各種の分野に適用されている。測定に利用する検出物理量に応じて各種のタイプの走査型プローブ顕微鏡がある。例えばトンネル電流を利用する走査型トンネル顕微鏡、原子間力を利用する原子間力顕微鏡、磁気力を利用する磁気力顕微鏡等があり、それらの応用範囲も拡大しつつある。
【0003】
上記のうち原子間力顕微鏡は、試料表面の微細な凹凸形状を高分解能で検出するのに適し、半導体基板、ディスクなどの分野で実績を上げている。最近ではインライン自動検査の用途でも使用されてきている。以下の説明では原子間力顕微鏡の例を説明する。
【0004】
図6に原子間力顕微鏡の基本的な構成の一例を示す。この原子間力顕微鏡は、本来の原子間力顕微鏡の原理に基づく測定機構と共に、光学顕微鏡を備えた構成を有している。
【0005】
図6において、例えば水平に設置された定盤(図示せず)の上にXYZステージ11を配置している。XYZステージ11は試料ステージであり、その上に半導体基板等の薄板状の試料12が置かれている。試料12の位置は安定に保持されている。XYZステージ11は、図中水平面(XY平面)における位置決めのためのXY移動機構と、Z軸方向の探針接近機構とから構成される。XYZステージ11は、例えば、パルスモータおよび駆動力伝達機構、あるいは機構学的な構成を利用した積み重ね式構造等により比較的に大きな移動量で位置変化を生じさせる。
【0006】
上記定盤上には例えば掛渡し形状のフレーム(図示せず)が設けられている。このフレームの水平部に取り付けられることにより、試料12の上方位置に、駆動機構21を備えた光学顕微鏡22が配置される。駆動機構21は、Z軸方向に光学顕微鏡22を動かすもので、フォーカス機構である。光学顕微鏡22は、その対物レンズ22aを下方に向けて配置され、試料12の表面を真上から臨む位置に配置されている。光学顕微鏡22の上端部にはカメラ23が付設されている。
【0007】
上記フレームの水平部にはXYZ微動機構24が取り付けられ、図示されるごとく配置されている。XYZ微動機構24は、通常、圧電素子で構成される。XYZ微動機構24にはトライポッド型あるいはチューブ型、平行平板型等のものが存在する。XYZ微動機構24によってX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各々へ微小距離(例えば数〜10μm)の変位を生じさせることができる。
【0008】
XYZ微動機構24の下端には、先端に探針25が形成されたカンチレバー26が取り付けられている。探針25は、試料12の表面に対向している。カンチレバー26の背面には反射面が形成されている。カンチレバー26の上方に配置されたレーザ光源(レーザ発振器)27から出射されたレーザ光28がカンチレバー26の背面における探針25に近い部分に照射される。カンチレバー26の背面で反射されたレーザ光28は光検出器29より検出される。カンチレバー26において捩れや撓みが生じると、光検出器29におけるレーザ光28の入射位置が変化する。従って探針25およびカンチレバー26で変位が生じると、光検出器29から出力される検出信号で当該変位の方向および量を検出することができる。
【0009】
上記の原子間力顕微鏡の構成に対して、制御系として、比較器31、制御器32、制御装置33が設けられる。比較器31は、光検出器29から出力される電圧信号と基準電圧(Vref)とを比較し、その偏差信号を出力する。制御器32は、偏差信号が0になるように制御信号を生成し、この制御信号をXYZ微動機構24内のZ微動部に与える。制御装置33は、光学顕微鏡22で得られる画像の管理・処理を行う画像処理部33a、原子間力顕微鏡による測定のデータの管理・処理するデータ処理部33b、XYZ微動機構24のXY走査に関する動作を制御する微動機構制御部33c、XYZステージ11の動作に関するステージ制御部33d、および画像表示処理部33eを備える。制御装置33は記憶部34と表示装置35を備える。入力された各種のデータ、および上記各種の機能を実現するプログラムは記憶部34に保存されている。表示装置35の画面には画像表示処理部33eで作られた試料表面に係る形状等の画像が表示される。
【0010】
制御装置33には、カメラ23からの画像信号s1、制御器32から出力される制御信号s2が入力される。また制御装置33からは、XYZ微動機構24のX軸方向とY軸方向の微動部(XY微動機構部分)を駆動させるXY走査信号s3、XYZステージ11のX,Y,Zの各ステージ部分を駆動させる各駆動信号s4〜s6が出力される。
【0011】
制御装置33は、通常、PC(パーソナル・コンピュータ)であり、表示装置35はPCのディスプレイである。表示装置35の画面に表示される内容は、光学顕微鏡22による映像(光学顕微鏡像)と、原子間力顕微鏡に基づいて得られた凹凸情報と位置情報により作成される試料12の表面画像である。
【0012】
上記の構成で、XYZステージ11によって探針25を試料12の表面に接近させると、両者の間に原子間力が作用してカンチレバー26に撓みが起きる。カンチレバー26の撓み量はレーザ光28と光検出器29を用いて検出される。この検出には、一般的に、図示された光てこ法が利用される。この状態において、当該カンチレバー26の撓み量を一定に保つように、制御器32によってXYZ微動機構19によるZ軸方向の伸縮動作を制御する。制御器32はフィードバック制御を行う。探針・試料間の距離を一定に保つことにより、カンチレバー26の撓み量が一定に保たれる。XYZ微動機構24のXとYの微動機構部分の動作に基づいて、試料12の表面を探針25によってXおよびYの方向に走査しながら、かつXYZ微動機構24のZ微動部によるカンチレバー26の撓み量を一定に保持する制御を行うことにより、試料12の表面の凹凸形状を測定する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来の原子間力顕微鏡では、通常、測定対象である試料12の測定すべき表面(XY平面)を探針25の先端で2次元的に走査するとき、試料側を静止状態に保ちながら探針25を微動させるXYZ微動機構24のXY微動機構の部分によって行う。XY微動機構による走査では分解能は高くなるが、測定範囲が狭くなる。測定範囲は、例えば、一辺が最大で100μm程度の矩形範囲である。試料が半導体素子であり、その表面を原子間力顕微鏡で測定する場合、測定範囲の外にある測定基準点または測定基準面に対する高さに係る情報が必要となる場合が多い。このような場合には、XY微動機構を走査に使用する限り、測定範囲外の個所は測定できないから、当該高さ情報を得ることは困難である。
【0014】
他方、試料12の側をXY平面内で移動できるように粗動用のXYZステージ11のXとYのステージ部分を動作させて走査を行う方式も考えることができる。しかし、通常の積み重ね構造の粗動用XYステージの場合、測定基準面の精度を高いものに確保することが困難である。
【0015】
さらに、測定基準面の測定そのものに関しても、測定しようとする試料に依存して各種のパターンがある。従って、XY微動機構によるXY走査を原則的な構成とする従来の原子間力顕微鏡によれば、測定基準面の測定を容易に行えるということは難しいことである。
【0016】
以上の課題は、原子間力顕微鏡以外の各種の走査型プローブ顕微鏡においても一般的なことである。
【0017】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、試料表面の或る測定範囲を測定するとき、当該測定範囲外にある基準点または基準面に対する高さ情報を容易に取得し、基準点等に対する測定データの高さの比較を容易に実現できる走査型プローブ顕微鏡の測定方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る走査型プローブ顕微鏡の測定方法は、上記目的を達成するために、次のように構成される。
【0019】
第1の走査型プローブ顕微鏡の測定方法(請求項1に対応)は、探針で試料を走査して試料表面に関する物理的量を測定する測定部を有し、かつ探針を微動させるXY微動機構と試料を粗動させる粗動機構を備えるように構成された走査型プローブ顕微鏡に適用され、試料表面における測定範囲を測定するとき、粗動機構による走査で測定範囲外に存する基準位置の測定データを取得し、XY微動機構による走査で測定範囲の測定データを取得し、これにより測定範囲の測定データと基準位置の測定データを共に取得し、測定範囲外に存する基準位置に対する高さ測定を行って測定範囲の測定データを取得するようにしたことで特徴づけられる。
【0022】
第2の走査型プローブ顕微鏡の測定方法(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、粗動機構による走査で基準位置の測定データと測定範囲の測定データを取得するようにしたことを特徴とする。
【0023】
第3の走査型プローブ顕微鏡の測定方法(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、基準位置の測定データと測定範囲の測定データは共通の1つのファイルまたは関連付けられた複数のファイルに保存されるようにしたことを特徴とする。
【0024】
第4の走査型プローブ顕微鏡の測定方法(請求項4に対応)は、上記の各構成において、好ましくは、粗動機構はXYステージであることを特徴とする。
【0025】
第5の走査型プローブ顕微鏡の測定方法(請求項5に対応)は、上記の各構成において、好ましくは、探針と試料を接近させる接近機構と、探針と試料の間の距離を調整するZ微動機構を備え、一連の基準位置および測定点の測定では、接近機構を同一位置に保持してZ微動機構の動作で測定を行うようにしたことを特徴とする。
【0026】
上記の走査型プローブ顕微鏡の測定方法において、上記粗動機構の代表としてはXYステージである。XYステージの構成としては、例えば1つの平滑基準面の上を滑りガイドまたは静圧ガイドを利用して構成することが好ましい。また粗動機構の他の構成として、回転機構等を用いて構成することもできる。さらにXY微動機構は、通常、探針を先端に有するカンチレバーを取り付けた探針側のXYZ微動機構に内蔵されている。当該XY微動機構は好ましくは圧電素子を駆動部として形成されている。
【0027】
【作用】
上記の走査型プローブ顕微鏡の測定方法では、XY平面における走査の仕方をXY微動機構または粗動機構(代表的にはXYステージ)を選択して行うようにしており、XY微動機構の走査範囲外にある基準点の高さ位置測定に対しても容易に対応することができる。広域の測定に対してはXYステージ等の粗動機構を利用して走査を可能にし、試料表面における測定走査範囲外の任意の点、線(ライン)、領域の測定を行うことが可能である。これによって、基準点、基準線、基準面が複雑な位置関係や形状を有していても容易に対応をとることが可能である。
【0028】
また基準位置の測定データと測定範囲の測定データを共通のファイルまたは関連付けられた複数のファイルに保存することで、測定情報の解析の取扱い性を高めている。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0030】
実施形態で説明される構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)については例示にすぎない。従って本発明は、以下に説明される実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0031】
図1に従って本発明に係る測定方法が適用される走査型プローブ顕微鏡の構成を説明する。従来技術で説明された走査型プローブ顕微鏡と同一の要素には同一の符号を付している。
【0032】
走査型プローブ顕微鏡の基本的構成を説明する。試料ステージ51の上には試料12が置かれている。試料12の上方位置には、駆動機構21を備えた光学顕微鏡22が配置されている。駆動機構21はZ軸方向に光学顕微鏡22を動かすフォーカス機構である。光学顕微鏡22は、その対物レンズ22aを下方に向けて配置され、試料12の表面を真上から臨む位置に配置されている。光学顕微鏡22の上端部にはカメラ23が付設されている。
【0033】
試料12の上側にはXYZ微動機構24が配置されている。XYZ微動機構24は、通常、圧電素子で構成される。XYZ微動機構24は、Z方向に微動を生じるZ微動機構の部分とXY方向に微動を生じるXY微動機構の部分を有している。XYZ微動機構24によってX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各々へ微小距離(例えば数〜10μm、最大100μm)の変位を生じさせる。
【0034】
XYZ微動機構24の下端には、探針25を備えるカンチレバー26が取り付けられている。カンチレバー26の背面には反射面が形成されている。カンチレバー26の上方に配置されたレーザ光源(レーザ発振器)27から出射されたレーザ光28がカンチレバー26の背面における探針25に近い部分に照射され、そこで反射されたレーザ光28は光検出器29より検出される。
【0035】
制御系として、比較器31、制御器32、制御装置52が設けられる。比較器31は、光検出器29から出力される電圧信号と基準電圧(Vref)とを比較し、その偏差信号を出力する。制御器32は、偏差信号が0になるように制御信号を生成し、この制御信号をXYZ微動機構24内のZ微動機構の部分に与える。制御装置52は、光学顕微鏡22で得られる画像の管理・処理を行う画像処理部33a、原子間力顕微鏡による測定のデータの管理・処理するデータ処理部33b、XYZ微動機構24のXY走査に関する動作を制御する微動機構制御部33c、XYZステージ11の動作に関するステージ制御部33d、および画像表示処理部33eを備える。制御装置52はさらに記憶部34と表示装置35を備える。入力された各種のデータ、および上記各種の機能を実現するプログラムは記憶部34に保存されている。表示装置35の画面には画像表示処理部33eで作られた試料表面に係る形状等の画像が表示される。
【0036】
制御装置52には、カメラ23からの画像信号s1、制御器32から出力される制御信号s2が入力される。また制御装置33からは、XYZ微動機構24のXY微動機構の部分を駆動させるXY走査信号s3が出力される。
【0037】
次に特徴的構成を説明する。コンピュータで構成される制御装置52の中に機能部として走査信号選択部53を備えている。走査信号選択部53は、制御装置52に備えられた記憶部34内に用意された走査信号選択プログラム54の実行によって実現される。
【0038】
試料ステージ51上に置かれた試料(半導体基板等)12の表面に対して探針25の先端を臨ませた状態において、試料表面に対して探針25を移動させることにより試料表面の走査(XY走査)が行われる。探針25による試料12の表面のXY走査は、探針25の側を移動(微動)させること、または試料12の側を移動(粗動)させることに基づき、試料と探針の間で相対的なXY平面内での移動関係を作り出すことにより行われる。
【0039】
探針25側の移動は、カンチレバー26を取り付けたXYZ微動機構24に対してXY微動に係るXY走査信号(走査指令信号)s3を与えることによって行われる。XY微動に係る走査信号は制御装置52内の微動機構制御部33c内のXY微動走査部から与えられる。
【0040】
試料12側の移動は試料ステージ51によって行われる。試料ステージ51は平滑基準面55の上に滑らかに移動するように置かれている。試料ステージ51は、Z軸方向移動機構(接近機構)56が内蔵され、その外側に配置されたX軸方向移動機構57およびY軸方向移動機構58に連結部59で連結されている。連結部59はXY方向には高い剛性を有し、Z方向には低い剛性を有している。試料ステージ51はZ軸方向移動機構56によってZ軸方向への移動し、X軸方向移動機構57とY軸方向移動機構58によってX軸方向およびY軸方向に移動する。試料ステージ51とZ軸方向移動機構56によってZステージが形成される。Zステージは接近機構として構成される。試料ステージ51とX軸方向移動機構57とY軸方向移動機構58によってXYステージが形成される。このXYステージによってXY走査が行われる。XYステージは粗動機構の一例であるが、粗動機構はこれに限定されない。
【0041】
上記においてZ軸方向移動機構56は粗動機構として構成されているが、微動機構として構成することもできる。なお探針25側の上記XYZ微動機構24にはZ軸方向に微動を生じるZ微動機構部が設けられている。
【0042】
上記XYZ微動機構24に含まれるXY微動機構の部分は、通常、駆動部として圧電素子を利用して構成される。このXY微動機構によれば、高精度および高分解能な走査移動を行うことができる。またXY微動機構によるXY走査で測定される測定範囲については、圧電素子のストロークによって制約されるので、最大でも約100μm程度の距離で決まる範囲となる。XY微動機構によるXY走査によれば、微小範囲の測定となる。
【0043】
他方、上記XYステージは、通常、駆動部として電磁気モータを利用して構成するので、そのストロークは数百mmまで大きくすることができる。XYステージによるXY走査によれば、ワイド範囲の測定となる。
【0044】
上記制御装置52には、さらに、Zステージ制御部60とXYステージ制御部61が設けられる。Zステージ制御部60はZステージの昇降動作を制御する制御信号s7を出力し、XYステージ制御部61はXYステージのXY走査動作を制御する制御信号s8を出力する。
【0045】
探針25を試料12の表面に走査移動させて測定を行うとき、そのXY走査を、XY微動機構を動作させることによって行うか、あるいは、XYステージを動作させることによって行うかについては、走査信号選択部53が選択する。走査信号選択部53は、微動機構制御部33cを介してXY微動機構を動作させるXY微動走査信号s3、または、XYステージを構成するX軸方向移動機構57とY軸方向移動機構58の動作を制御するXYステージ走査信号s8を出力させる。
【0046】
次に、図2〜図4を参照して上記走査型プローブ顕微鏡による測定方法を説明する。
【0047】
最初に基準面(基準点)の測定について説明する。図2で、正方形で示した領域71は上記試料12の表面を示し、例えば、半導体基板(ウェハ)から切り出された1つのチップ、またはウェハ上に形成されたチップの部分拡大図である。このチップは数mmから数十mmの四角形状のチップである。試料12における表面領域71において、走査型プローブ顕微鏡のXY走査に基づいて測定されるべき2つの測定範囲m1,m2が示されている。測定範囲m1は矩形領域の形状を有し、測定範囲m2は直線状領域の形状を有する。図2に示された点P1,P2,P3は試料12の表面領域71の外周部に適宜に決められた基準点である。これらの3つの基準点によって構成される面が、本測定方法が適用される試料12の測定表面における基準面となる。基準点P1〜P3は測定範囲m1,m2の範囲外の位置に存する。
【0048】
上記において、走査型プローブ顕微鏡の構成に基づいて点P1〜P3の測定と測定範囲m1,m2の測定とが行われる。点P1〜P3の測定のためのXY走査は前述したXYステージを動作させることに基づいて行われる。他方、測定範囲m1,m2の測定のためのXY走査はXYZ微動機構24のXY微動機構部分を動作させることに基づいて行われる。点P1〜P3の測定で基準面の高さ情報が得られる。測定範囲m1,m2の測定では測定範囲の表面の凹凸形状に係る情報が得られる。本実施形態では、点P1〜P3の測定が行われた後、測定範囲m1,m2の測定が行われる。しかしながら、測定の順序はこれに限定されない。
【0049】
点P1,P2,P3の間の移動ではXYステージによる走査動作が用いられる。このときXYZ微動機構24のZ微動部の高さ方向は、Z微動機構部分が後退して退避状態の位置にある。点P1,P2,P3の測定では、試料ステージ51内のZ軸方向移動機構56が探針と試料を接近させて測定状態として、または、好ましくはZ微動機構部分のみにより探針と試料を接近させて測定状態として、当該測定が行われる。測定範囲m1,m2の測定は原子間力顕微鏡の通常の測定の構成に基づいて行われる。
【0050】
上記の走査型プローブ顕微鏡による測定方法によれば、基準面の測定によって試料12の表面の基準面の高さ情報を得ることができるので、測定範囲m1,m2の測定で得られた測定データに対して高さ情報を付加することができる。これによって試料表面の高さに関する比較を行うことができる。
【0051】
図3は、測定結果の一例をイメージ的に示したものである。Aは点P1〜P3の測定で得られた基準面を示している。線72は直線状の測定範囲m2を測定した結果得られた測定高さを示している。基準面Aの高さ位置データと測定範囲m2の測定データ72との対比に基づいて高さに係る情報Haが得られる。この高さ情報Haは測定範囲m2の測定のみからは得ることができない。この高さ情報は試料12の表面形状に関する高さおよび深さの管理に使用される。
【0052】
上記の測定方法では、測定範囲m1,m2のXY走査はXY微動機構を行ったが、測定範囲m1,m2が広い場合、例えば200μmの距離の移動を要求される場合にはXYステージを利用してワイドモードでの測定が行われる。
【0053】
図4は他の測定方法を示している。XYZ微動機構24のXY微動機構部分によるXY走査に基づく測定範囲m1,m2の測定は同じである。この測定方法によればXYステージを利用した基準面の測定が異なる。この測定方法では、点P1,P2の間の直線L1を測定し、次に点P2,P3の間の直線L2を測定する。2つの直線L1,L2に関するラインデータは平均化され、平均化されたデータ(基準線のデータ)を確定する。2つの直線によって決まる面を基準面として確定する。
【0054】
基準面を確定するための測定に関しては、次のように変形することもできる。前述の第1の測定方法では3つの点P1〜P3に関して点測定を行ったが、各点付近で微小エリアの面測定を行い、その平均高さを各点の高さデータとして基準面を確定することもできる。
【0055】
さらに他の測定方法として、点P1、測定範囲m1、点P3が同一線上にあると仮定して、図4の破線で示した直線73に示すごとく直線状にXYステージでXY走査を行って測定を行い、点P1,P3で確定する基準線分に対して測定範囲m1の高さを比較し、解析するようにすることもできる。
【0056】
走査型プローブ顕微鏡による上記の測定方法は、半導体分野の試料の測定に限定されず、一般的にナノテクノロジーの分野に属する試料のすべてに適用できる測定方法である。
【0057】
図5は制御装置52に設けられた記憶部54のデータ保存部74を示す。このデータ保存部74におけるデータの保存形式は1つのファイルを構成している。この1つの共通のファイルに、基準点、基準線、基準面のデータと、本来測定したい測定範囲m1,m2の面データおよび線データとを保存する。このようにデータを保存することにより、基準面に対する測定データの情報を必要なときにいつでも取り出し、解析することができる。
【0058】
なお上記の実施形態の説明では、測定試料として半導体基板上に形成される四角形のチップを想定し、基準点がその周辺にあることを想定したが、チップ内の或る決められた位置に基準点等を設けるなど、試料と測定目的に応じて種々な場合を想定することができる。
【0059】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように本発明によれば、測定対象である試料の表面における本来の測定範囲外の箇所の基準点や基準面等を広域走査が可能な機構部を利用してその高さを測定することができるため、試料表面の測定範囲に係る測定データの高さ等の比較を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る走査型プローブ顕微鏡の構成を示す構成図である。
【図2】第1の測定方法について説明するための試料表面を示す平面図である。
【図3】本発明に係る測定方法で得られる測定データのイメージを示した図である。
【図4】第2および第3の測定方法について説明するための試料表面を示す平面図である。
【図5】データの保存部の構成を示す図である。
【図6】従来の走査型プローブ顕微鏡の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
12 試料
21 駆動機構
22 光学顕微鏡
23 カメラ
24 XYZ微動機構
25 探針
26 カンチレバー
27 レーザ光源
28 レーザ光
29 光検出器
31 比較器
51 試料ステージ
52 制御装置
53 走査信号選択部
54 走査信号選択プログラム
55 平滑基準面
56 Z軸方向移動機構
Claims (5)
- 探針で試料を走査して試料表面に関する物理的量を測定する測定部を有し、かつ前記探針を微動させるXY微動機構と前記試料を粗動させる粗動機構を備える走査型プローブ顕微鏡に適用され、
前記試料表面における測定範囲を測定するとき、前記粗動機構による走査で前記測定範囲外に存する基準位置の測定データを取得し、前記XY微動機構による走査で前記測定範囲の測定データを取得し、これにより前記測定範囲の測定データと前記基準位置の測定データを共に取得し、前記測定範囲外に存する前記基準位置に対する高さ測定を行って前記測定範囲の測定データを取得するようにしたことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡の測定方法。 - 前記粗動機構による走査で前記基準位置の測定データと前記測定範囲の測定データを取得するようにしたことを特徴とする請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡の測定方法。
- 前記基準位置の測定データと前記測定範囲の測定データは共通の1つのファイルまたは関連付けられた複数のファイルに保存されるようにしたことを特徴とする請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡の測定方法。
- 前記粗動機構はXYステージであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の走査型プローブ顕微鏡の測定方法。
- 前記探針と前記試料を接近させる接近機構と、前記探針と前記試料の間の距離を調整するZ微動機構を備え、一連の前記基準位置および測定点の測定では、前記接近機構を同一位置に保持して前記Z微動機構の動作で測定を行うようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の走査型プローブ顕微鏡の測定方法。
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