JP4130561B2 - 自動車のペダル装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のペダル装置、特に車両の衝突時に運転者の下肢を保護する自動車のペダル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の装置としては、例えば特開2002−87229号公報に示されているように、ペダルを固定したアームの後方にストッパ部材を配設して、車両の衝突時に車体のペダルを取り付けた部材が後退した場合にもストッパ部材によりペダルの後退を阻止して運転者の下肢を保護するようにしたものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来装置においては、車両の衝突時、車体が大きく変形して車体のペダルを取り付けた部材自体が後退し始めてストッパ部材に当接するまでペダルの後退を阻止する機構が働かないという問題があった。また、ストッパ部材として変形しにくい強固な部材が必要であったため、コストが高いという問題もあった。
【0004】
本発明の目的は、低コストで製造できて車両の衝突時に確実に運転者の下肢を保護する自動車のペダル装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の構成上の特徴は、自動車のペダル装置において、車体に固定したブラケットに左右方向の軸線回りに回動可能に支持した支持部材と、前記ブラケットに対する前記支持部材の回動の軸線と平行な軸線回りに回動可能に前記支持部材に支持されたペダルと、前記ブラケットに支持されて同ブラケットに対する前記支持部材の回動を係止する係止部材と、車両の衝突時に後退する部材の近傍まで延設されて同部材の後退時に同部材に押されて後退する作動部材と、前記作動部材に固定されて前記部材の後退に連動して前記支持部材に対する前記係止部材の係合を解除する解除部材と、前記支持部材に対する前記係止部材の係合を解除した状態において前記ペダルを前方に変位させる向きに前記支持部材を弾性的に付勢する付勢部材とを設けたことにある。
【0006】
本発明の第2の構成上の特徴は、上記第1の構成上の特徴を有する自動車のペダル装置において、前記係止部材を、前記支持部材を前記ブラケットに対して複数の角度位置にて係止可能に構成したことにある。
【0008】
本発明の第3の構成上の特徴は、上記第2の構成上の特徴を有する自動車のペダル装置において、前記ブラケットに前後方向に変位可能に支持されて、前記ペダルの開放位置調整時には所定位置に保たれるとともに前記作動部材の後退時には同作動部材に押されて前記所定位置から後退する掛け止め部材と、前記掛け止め部材と前記支持部材とに両端部が連結されて、前記掛け止め部材が前記所定位置にあるときは前記支持部材に対する前記係止部材の係合が解除されれば前記ペダルを後方に変位させる向きに前記支持部材を弾性的に付勢し、前記作動部材の後退により前記掛け止め部材が後退したときは前記支持部材に対する前記係止部材の係合が解除されれば前記ペダルを前方に変位させる向きに前記支持部材を弾性的に付勢する付勢部材とを設けたことにある。
【0009】
【発明の作用・効果】
上記本発明の第1の構成上の特徴を有する自動車のペダル装置においては、車両の衝突時、車体が変形して作動部材が後退すると、解除部材が支持部材に対する係止部材の係合を解除するため、支持部材及びこれに支持されたペダルは自由状態となり、ペダルは支持部材とともに付勢部材により左右方向の軸線回りに回動されて自動的に前方に変位される。したがって、作動部材を車両の衝突時に後退し易い部材の近傍まで延設しておけば、車両の衝突時、車体が大きく変形して車体のペダルを取り付けた部材自体が後退し始める前に未然にペダルを前方に変位させることができるため、確実に運転者の下肢を保護することができる。その上、従来装置に必要であったストッパ部材のような変形しにくい強固な部材を必要としないため、低コストで製造することができる。
【0010】
上記本発明の第2の構成上の特徴を有する自動車のペダル装置においては、係止部材によって支持部材をブラケットに対して複数の角度位置にて係止することができるため、ペダルの開放位置の調整も可能となる。
【0012】
上記本発明の第3の構成上の特徴を有する自動車のペダル装置においては、ペダルの開放位置調整時、掛け止め部材が所定位置に保たれていて付勢部材がペダルを後方に変位させる向きに支持部材を付勢しているため、支持部材に対する係止部材の係合を解除すれば、踏み込み操作のみによってペダルの開放位置調整を行うことができる。したがって、同ペダルの開放位置調整が簡単になる。一方、車両の衝突時には、掛け止め部材が作動部材に押されて後退して付勢部材がペダルを前方に変位させる向きに支持部材を付勢するため、支持部材に対する係止部材の係合が解除されたときペダルは自動的に前方に変位する。このように、ペダルの開放位置調整機構を有しないペダル装置にも容易に装着できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
a.第1の実施形態
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。この自動車のペダル装置は、図1,2にて示すように、調整レバー10(支持部材)、ロック部材20(係止部材)、及びブレーキペダル30を備えている。
【0014】
調整レバー10は、左右一対の側板11,12及び天板13からなり、両側板11,12の下部にて、車体に固定したブラケット90の側板91及び仕切り板92に左右方向の軸線回りに回動可能に組み付けられている。調整レバー10の天板13は、前記回動の軸線を中心とする断面円弧状に形成されており、同天板13には前記円弧に沿った方向に5個の位置決め孔13aが並設されている。
【0015】
ロック部材20は、ブラケット90の天板93の上面上に前後一対の支持部材21,21によって軸線方向(前後方向)に変位可能に支持されたロッド22(作動部材)の外周に回動可能に取り付けられている。ロック部材20は、3個の爪部20aを備えており、各爪部20aにて調整レバー10の位置決め孔13aのうちの隣接したいずれか3個に係合して、調整レバー10を3つの角度位置に係止できるようになっている。ロック部材20は、ロッド22の外周に巻装したトーションスプリング23によって、調整レバー10に係合する向きに弾性的に付勢されている。ロック部材20に上方に向けて設けた突出部20bには引きケーブル24の先端が連結されており、同引きケーブル24がトーションスプリング23の付勢力に抗して手動操作により矢印方向に引かれたとき、ロック部材20の爪部20aが位置決め孔13aから離脱し、ロック部材20の調整レバー10に対する係合が解除されるようになっている。
【0016】
ロッド22の前端は、車両の衝突時に後退し易い図示しない部材の近傍まで延設されており(図3(a)参照)、ロッド22は車両の衝突時に前記部材に押されて後退するようになっている(図3(b)にて示した状態)。ロッド22の外周にはくさび形部材25(解除部材)が固定されており、前記部材に押されてロッド22が後退したとき、くさび形部材25が調整アーム10とロック部材20の間に割り込んで、トーションスプリング23の付勢力に抗して調整アーム10に対するロック部材20の係合を解除するようになっている。
【0017】
ロッド22の後端の後方には、掛け止め部材26が配設されている。掛け止め部材26は、ボルト部26aとナット部26bにより前後方向の長孔93aを通してブラケット90の天板93に前後方向移動可能に締結されており、ブレーキペダル30の開放位置調整時であってロッド22が初期位置に保たれているときは長孔93aの前端の所定位置に保たれるとともに、車両の衝突時であってロッド22が後退したときはロッド22に押されて長孔93aに沿って後退する。掛け止め部材26には、コイルスプリング27(付勢部材)の一端が連結されている。コイルスプリング27の他端は調整レバー10に連結されており、コイルスプリング27は、掛け止め部材26が前記所定位置にあるときは調整レバー10を前方に向けて回動する方向(図2における反時計回り方向)に弾性的に付勢し、ロッド22が後退して掛け止め部材26が後退したときは調整レバー10を後方に向けて回動する方向(図2における時計回り方向)に弾性的に付勢する。
【0018】
ブレーキペダル30は、ブレーキアーム31の下端に固定されている。ブレーキアーム31の上端部には細長いボス部材32が直交して溶接固定されており、このボス部材32が調整レバー10の両側板11,12間に配設されて両側板11,12の上部にボルト33により左右方向の軸線回りに回動可能に組み付けられている。ブレーキアーム31の中間部には、ブラケット90の前側に固定された図示しないマスタシリンダのプッシュロッド34の後端部に軸線方向位置調整可能に固定したクレビス35が回動可能に連結されている。ブレーキペダル31におけるクレビス35の連結点は、ブレーキペダル30が開放位置にあるとき、ブラケット90に対する調整レバー10の回動軸線上に位置している。また、調整レバー10の側板12には支持部材15を介してストップランプスイッチ16が組み付けられており、ストップランプスイッチ16の前端のプッシュロッド部にはブレーキアーム31に固定した押圧片36が当接離間するようになっている。押圧片36は、ブレーキペダル30が開放位置にあるとき、ストップランプスイッチ16に当接して同スイッチ16をオフ状態に保ち、ブレーキペダル30の踏み込み時に同スイッチ16から離間して同スイッチ16をオン状態とする。
【0019】
また、この車両における足踏みペダルの開放位置調整装置は、別の調整レバー40、及びアクセルペダル50も備えている。この別の調整レバー40は、一体的に形成された左右一対の側板41,42及び前板43からなり、両側板41,42の上部にてブラケット90の仕切り板92及び側板94に左右方向の軸線回りに回動可能に組み付けられ、リンク部材44を介して調整レバー10に連結されている。
【0020】
アクセルペダル50は、アクセルアーム51の下端に固定されている。アクセルアーム51の中間部には支軸52が直交して溶接固定されており、この支軸52が調整レバー40の両側板41,42間に配設されて前板43の背面上に固定した支持部材53により左右方向の軸線回りに回動可能に支持されている。アクセルアーム51は、支軸52に巻装したトーションスプリング54によりアクセルペダル30が後側移動する向きに付勢され、自由状態ではストッパ(図示省略)に当接して停止されている。アクセルアーム51の上端部には、アクセルワイヤー55が接続された係止部材56が設けられている。係止部材56は、アクセルペダル50が前記自由状態にあるとき、ブラケット90に対する調整レバー40の回動の軸線上に位置している。
【0021】
上記のように構成した車両における自動車のペダル装置においては、車両の衝突時、車体が変形して後退した部材に押されてロッド22が後退すると、くさび形部材25が調整レバー10とロック部材20の間に割り込んで、トーションスプリング23の付勢力に抗して調整レバー10に対するロック部材20の係合を解除するため、調整レバー10に支持されたブレーキペダル10、及び調整レバー10に連結された別の調整レバー40に支持されたアクセルペダル50は自由状態となる。したがって、車体が大きく変形して車体のブラケット90を取り付けた部材自体が後退し始める前に未然に各ペダル30,50は調整レバー10,40とともに左右方向の軸線回りに回動自在となるため、確実に運転者の下肢を保護することができる。その上、従来装置に必要であったストッパ部材のような変形しにくい強固な部材を必要としないため、製造コストを低く抑えることができる。
【0022】
また、ロック部材20により調整レバー10をブラケット90に対して複数の角度位置にて係止できるようになっているため、各ペダル30,50の開放位置の調整も可能となっている。具体的には、ロック部材20の引きケーブル24をトーションスプリング23の付勢力に抗して手動操作により矢印方向に引いてロック部材20を調整レバー10から離脱させた状態にてブレーキペダル30をコイルスプリング14の付勢力に抗して踏み込み操作すれば、調整レバーがクレビス35の軸線回りに回動して、ブレーキペダル30の開放位置が調整される。また、この調整レバー10の回動の際には、リンク部材44を介して別の調整レバー40も回動して、アクセルペダル50の開放位置もブレーキペダル30と連動して調整される。そして、同調整後、引きケーブル24の引き操作を解除すれば、トーションスプリング23の付勢力によりロック部材20が調整レバー10に係合して、調整レバー10の角度位置が上記調整した位置に係止される。これにより、各ペダル30,50の開放位置が調整されることとなる。
【0023】
さらに、上記各場合においては、掛け止め部材26が長孔93aに沿って前後方向に変位して、この変位の前後においてコイルスプリング27が調整レバー10をそれぞれ反対の向きに付勢するようになっている。各ペダル30,50の開放位置調整時であってロッド22が初期位置に保たれているときは、掛け止め部材26が長孔93aの前端の所定位置に保たれていてコイルスプリング27が各ペダル30,50を後方に変位させる向きに調整レバー10を付勢しているため、調整レバー10に対するロック部材20の係合を解除すれば、踏み込み操作のみによって各ペダル30,50の開放位置調整を行うことができる。したがって、各ペダル30,50の開放位置調整を簡単に行うことができる。一方、車両の衝突時には、掛け止め部材26がロッド22に押されて後退してコイルスプリング27が各ペダル30,50を前方に変位させる向きに調整レバー10を付勢するため、調整レバー10に対するロック部材20の係合が解除されたとき、調整レバー10,40とともに左右方向の軸線回りに回動自在となっている各ペダル30,50は前方に変位する。したがって、より確実に運転者の下肢を保護することができる。
【0024】
b.第2の実施形態
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。この実施形態は、上記第1の実施形態において、コイルスプリング27を車両衝突時の運転者の下肢保護のためのみに用いるようにしたものである。
【0025】
この実施形態においては、図4に示すように、掛け止め部材26はブラケット90の天板93の後端部に変位不能に固定されており、コイルスプリング27はロッド22の状態にかかわらず常に調整レバー10を後方に向けて回動する方向に弾性的に付勢し続けている。これによっても、車両の衝突時、調整レバー10に対するロック部材20の係合が解除されたとき(図4(b)に示した状態)、各ペダル30.50は前方に変位する。このように、ペダルの開放位置調整機構を有しないペダル装置にも容易に装着できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る自動車のペダル装置の斜視図である。
【図2】前記自動車のペダル装置の部分破断側面図である。
【図3】(a),(b)はそれぞれ前記自動車のペダル装置の通常時及び車両衝突時の状態を示す斜視図である。
【図4】(a),(b)はそれぞれ本発明の第2の実施形態に係る自動車のペダル装置の通常時及び車両衝突時の状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
10…調整レバー、20…ロック部材、22…ロッド、25…くさび形部材、26…掛け止め部材、27…コイルスプリング、30…ブレーキペダル、40…調整レバー、44…リンク部材、50…アクセルペダル、90…ブラケット。
Claims (3)
- 車体に固定したブラケットに左右方向の軸線回りに回動可能に支持した支持部材と、
前記ブラケットに対する前記支持部材の回動の軸線と平行な軸線回りに回動可能に前記支持部材に支持されたペダルと、
前記ブラケットに支持されて同ブラケットに対する前記支持部材の回動を係止する係止部材と、
車両の衝突時に後退する部材の近傍まで延設されて同部材の後退時に同部材に押されて後退する作動部材と、
前記作動部材に固定されて前記部材の後退に連動して前記支持部材に対する前記係止部材の係合を解除する解除部材と、
前記支持部材に対する前記係止部材の係合を解除した状態において前記ペダルを前方に変位させる向きに前記支持部材を弾性的に付勢する付勢部材とを設けたことを特徴とする自動車のペダル装置。 - 請求項1に記載の自動車のペダル装置において、
前記係止部材は前記支持部材を前記ブラケットに対して複数の角度位置にて係止可能であることを特徴とする自動車のペダル装置。 - 請求項2に記載の自動車のペダル装置において、
前記ブラケットに前後方向に変位可能に支持されて、前記ペダルの開放位置調整時には所定位置に保たれるとともに前記作動部材の後退時には同作動部材に押されて前記所定位置から後退する掛け止め部材と、
前記掛け止め部材と前記支持部材とに両端部が連結されて、前記掛け止め部材が前記所定位置にあるときは前記支持部材に対する前記係止部材の係合が解除されれば前記ペダルを後方に変位させる向きに前記支持部材を弾性的に付勢し、前記作動部材の後退により前記掛け止め部材が後退したときは前記支持部材に対する前記係止部材の係合が解除されれば前記ペダルを前方に変位させる向きに前記支持部材を弾性的に付勢する付勢部材とを設けたことを特徴とする自動車のペダル装置。
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