JP4130318B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、射出成形や押し出し成形に適した新規な夏可塑性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、熱伝導性、寸法性に優れると共に、耐熱性、機械的特性、成形性、耐衝撃性、及び熱放散性に優れた熱可塑性樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器、自動車機器、化学機器などを構成する部品材料には機器の小型化や軽量化を目的として機械的強度、耐熱性、耐薬品性に優れ、更には難燃性に優れた熱可塑性樹脂の要求が高まっている。また、これら機器は自らの発熱により加熱され、熱可塑性樹脂で成形された部品内が高温となり易く、その熱により内部回路や部品を破壊する恐れがある。そこで、成形材料とした時に内部機構部品が発する熱を部品内部に蓄熱せずに、放熱する性質に優れた熱可塑性樹脂の開発が急務となっている。
【0003】
しかしながら、金属に比べて熱可塑性樹脂は熱伝導率が低い為、射出成形性、機械的強度が良好でかつ熱伝導性に優れた材料が見出されていない。一般に熱伝導性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得る為には高い熱伝導率を有する充填剤を添加する方法が一般である。例えば、特開平5−86283号公報、特開平6−188530号公報等にはポリフェニレンエーテル(PPE)に金属、金属酸化物等を添加した熱可塑性樹脂組成物が開示されているが、該組成物の流動性が悪い為、成形加工性が劣るという欠点を有していた。また、特開平1−236270号公報、特開平4−198266号公報にはポリフェニレンスルフィド(PPS)に金属酸化物や質素化合物を添加した熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
PPSは比較的、多くの充填剤を添加しても成形可能な熱可塑性樹脂ではあるが、結晶性樹脂の為に成形時及び成形品を加熱した時の収縮率やそりが大きく、また、成形時にバリを発生するなどの欠点を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上記のごとき課題を解決し、熱伝導性に優れるとともに成形品のそり及びバリが少ない、即ち成形加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ポリアリーレンサルファイド樹脂(A)30〜90質量%、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)70〜10質量%からなる樹脂組成物100質量部に対して、相溶化剤(C)1〜100質量部、及び無機質充填剤(D)5〜300質量部を配合してなる熱可塑性樹脂組成物からなり、熱伝導率が0.5W/mK以上であり、かつ線膨張係数異方性が1.0〜2.5の範囲であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物が、以外にも熱伝導性に優れ、かつ成型加工性が優れることを見出し、本発明に至った。
【0006】
即ち本発明は、
1. ポリアリーレンサルファイド樹脂(A)30〜90質量%、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)70〜10質量%からなる樹脂組成物100質量部に対して、相溶化剤(C)1〜100質量部、及び無機質充填剤(D)5〜300質量部を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、該無機充填剤(D)が、金属単体(D−1)、金属酸化物(D−2)、窒素化合物(D−3)、炭酸金属複塩(D−4)である群(1)から選ばれる少なくとも1種類以上と鱗片状無機質充填剤(D−7)から選ばれる1種以上との混合物であり、熱伝導率が0.5W/mK以上であり、かつ線膨張係数異方性が1.0〜2.5の範囲であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
2. 該無機質充填剤(D)が、請求項1に記載の無機質充填剤の群(1)から選ばれる1種以上、鱗片状無機質充填剤(D−7)から選ばれる1種以上、及び繊維状無機質充填剤(D−8)から選ばれる1種以上、からなることを特徴とする1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
3. ポリアリーレンサルファイド樹脂(A)が50〜90質量%、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)が50〜10質量%である、1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
4. 相溶化剤(C)が、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、ゴム補強スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル−グリシジルメタクリレート共重合体から選ばれるグリシジル基含有スチレン系樹脂である1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0007】
5. 金属単体(D−1)が、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、亜鉛、ケイ素、ゲルマニウム、モリブデンであることを特徴とする1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
6. 金属酸化物(D−2)が、酸化鉄、アルミナ、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウムであることを特徴とする1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
7.窒素化合物(D−3)が、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素であることを特徴とする1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
8. 炭酸金属塩(D−4)が、炭酸カルシウム・マグネシウム複塩であることを特徴とする1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
9. 1〜8のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された光ピックアップを保持する光ピックアップベース、または、光ピックアップ部
以下、本発明につき詳しく説明する。本発明におけるフィラー強化した熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率は0.5W/mK以上である。好ましくは0.6W/mK以上、さらに好ましくは0.7W/mK以上である。熱伝導率が0.5W/mK以上であれば、成形品としたときに優れた放熱性を示す。
【0008】
本発明における熱伝導率はルビーレーザーを光源としたレーザーフラッシュ法により測定できる。本発明における熱伝導率は、ASTM D−638に準じて成形したダンベルから、厚さ0.5mm、直径10mmの試料を切り出し、カーボンスプレーにてカーボンを表面に塗布した試料を用いて測定を行った。
本発明におけるフィラー強化した熱可塑性樹脂組成物の線膨張係数異方性は1.0〜2.5の範囲であることが必要である。好ましくは1.0〜2.2の範囲であり、更に好ましくは1.0〜2.0の範囲である。線膨張係数異方性を1.0〜2.5とすることは光ピックアップベース成形品において優れた寸法安定性を発現させる上で非常に重要となる。
【0009】
ここで、線膨張係数異方性とは垂直方向線膨張係数を流動方向線膨張係数で除して算出したものであり、流動方向とは射出成形時にゲートから金型内に樹脂が射出され、流動する方向を示し、垂直方向とは樹脂が流動する方向に対して垂直な方向を示す。従って線膨張係数異方性の全く無い材料の値は1.0となる。
本発明における線膨張係数の測定方法は、ASTM E−831に準拠され、例えばTMA法によって測定できる。本発明における線膨張係数の測定はASTM D−638に準じて成形したダンベルから図1(1はゲート位置)に示される様に一方の端から108mmの位置より切り出した垂直方向2及び流動方向3のそれぞれ長さ10mm(両端の平行度は±0.025mm)、1片が3〜5mmである角柱の試験片(図2)をTMAの本体に設置し、−35℃から毎分5℃で65℃まで昇温して長さの変位量を測定することにより算出した。
【0010】
また、ASTM D−638に準じたダンベルの成形に用いるペレットには従来公知のブラベンダー、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機等によって得られるものであれば、パウダーからペレット化したもの、一旦ペレット化したものを更に押出機等により再ペレット化したもの、成形された光ピックアップベース自体を粉砕したもの、更には成形された光ピックアップベース自体を粉砕したものを押出機等によりペレット化したもの等を用いることができ、特に限定されるものではない。
【0011】
本発明における、ポリアリーレンサルファイド樹脂(以下「PAS」と略記する)は、下記一般式(1)で示されるアリーレンサルファイドの繰り返し単位を通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上を含む重合体である。
[−Ar−S−] (ここで、Arはアリーレン基)(1)
アリーレン基としては、例えばp−フェニレン基、m−フェニレン基、置換フェニレン基(置換基とは炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基が好ましい。
)、p,p′−ジフェニレンスルホン基、p,p′−ビフェニレン基、p,p′−ジフェニレンカルボニル基、ナフチレン基等を挙げることができる。ここでPASは構成単位であるアリーレン基が1種のホモポリマーを用いても良いが、加工性や耐熱性の観点から、2種以上のアリーレン基を混合したコポリマーを用いても良い。
【0012】
これらのPASの中でも、p−フェニレンサルファイドの繰り返し単位を主構成要素とするポリフェニレンサルファイド樹脂が、加工性、耐熱性、寸法安定性に優れ、しかも工業的に入手が容易であることから、特に好ましい。
また、本発明で用いるPASは、320℃における溶融粘度(せん断速度1000/秒)が100〜10000ポイズの中から任意に選ぶ事ができ、更にPASの構造は、直鎖状のもの、分岐状のもの何れでも良く、またこれら構造の混合物であっても構わないが、好ましくは直鎖状の構造を持つPASである。更にこのPASは酸変性されたPASでも構わない。ここで酸変性したPASとは、上記PASを酸化合物で変性する事によって得られるものであり、該酸化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸またはその無水物や、飽和型の脂肪族カルボン酸や芳香族置換カルボン酸等も挙げることができる。
【0013】
更に酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、ケイ酸、炭酸等の無機化合物系の酸化合物も該酸化合物として挙げることができる。
本発明におけるポリフェニレンエーテル樹脂(以下「PPE」と略記する)とは、下記一般式(2)、(3)で表される構造を有し、構成単位が一般式(2)及び(3)から選ばれる少なくとも1種からなる単独重合体、あるいは共重合体が使用できる。
【0014】
【化1】
【0015】
(式中、R1,R2,R3,R4,R5,R6は、炭素1〜4のアルキル基、アリール基、ハロゲン、水素等の一価の残基であり、R5,R6は同時に水素ではない)
PPEの単独重合体の代表例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、およびポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、等のホモポリマーが挙げられる。
【0016】
PPEの共重合体は、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体、あるいは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体等、ポリフェニレンエーテル構造を主体としてなるポリフェニレンエーテル共重合体を包含する。
また、このPPEは、還元粘度(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)が、0.15〜2.0の範囲である事が好ましく、上記したものの他に、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等のα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体にて変性された変性ポリフェニレンエーテル樹脂でも良い。
【0017】
本発明において用いられる相溶化剤(C)は、エポキシ樹脂、グリシジル基含化合物、α,β−不飽和カルボン酸の誘導体で変性した水添ブロック共重合体、オキサゾニル基含有化合物等の、PASとPPEの相溶化剤として公知である物質を使用する事が出来る。スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、ゴム補強スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル−グリシジルメタクリレート共重合体等のグリシジル基含有スチレン系樹脂を用いる事が特に好ましい。
【0018】
本発明における熱可塑性樹脂組成物において、各構成樹脂及び充填剤の配合量はPAS(A)30〜90質量%、PPE(B)70〜10質量%からなる樹脂組成物100質量部に対して、相溶化剤(C)1〜100質量部、及び無機質充填剤(D)5〜300質量部である。好ましくはPAS(A)40〜80質量%、PPE(B)60〜20質量%からなる樹脂組成物100質量部に対して、相溶化剤(C)1〜20質量部、及び無機質充填剤(D)10〜250質量部であり、更に好ましくはPAS(A)50〜70質量%、PPE(B)50〜30質量%からなる樹脂組成物100質量部に対して、相溶化剤(C)1〜10質量部、及び無機質充填剤(D)20〜200質量部である。
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるPPE(B)の導入量は、本発明の効果、即ち、優れた流動性を有する事により成型加工性が優れ、かつ、成形時及び成形品を加熱した時にバリやそりを発生しないといった特性を達成する上で非常に重要である。即ち、射出成形等により成形品を成形する時にバリを発生させず、かつ成形品のそりを小さくし、更には軽量化も達成させるため10重量%以上であり、成形時の流動性、即ち成型加工性、及び耐薬品性、更には耐熱性の観点から、70質量%以下である。
相溶化剤(C)は、PAS(A)及びPPE(B)の相溶性、機械的強度の点から、樹脂組成物100質量部に対し、1質量部以上であり、成形品とした時の剥離の点から100質量部以下である。
【0020】
また、無機質充填剤(D)は、樹脂組成物100質量部に対し、剛性、強度のみならず、耐熱性の点から5質量部以上であり、無機質充填剤の均一分散及び外観と共に成形流動性の点から、150質量部以下である。
また、本発明における光ピックアップベースが光ピックアップ装置内で発生する熱の影響で変形しない指標としては荷重1.82MPaにおけるASTM D−648に準拠した荷重たわみ温度が有効であるが、本発明において、荷重たわみ温度は、ピックアップベースが装置内で変形をさける点から150℃以上、特に好ましくは170℃以上である。
【0021】
本発明における無機質充填剤(D)は、金属単体(D−1)、金属酸化物(D−2)、窒素化合物(D−3)、炭酸金属複塩(D−4)である群(1)から選ばれる少なくとも1種類以上である。
本発明における無機質充填剤(D)は、上記の群(1)から選ばれる1種類以上と鱗片状無機質充填剤(D−7)から選ばれる1種類以上との混合物である。
さらに、本発明における無機質充填剤(D)は、上記の群(1)から選ばれる1種類以上、鱗片状無機質充填剤(D−7)から選ばれる1種類以上、及び繊維状無機質充填剤(D−8)から選ばれる1種類以上との混合物である。
金属単体(D−1)としては金、銀、銅、アルミニウム、鉄、亜鉛、珪素、ゲルマニウム、モリブデンが好ましい。金属酸化物(D−2)としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ベリリウムが好ましい。窒素化合物(D−3)としては、窒化アルミニウムが好ましい。炭酸金属複塩(D−4)としては炭酸カルシウム・マグネシウム複塩が好ましい。
【0022】
該鱗片状無機質充填剤(D−7)としては、コスト、成形性、機械的強度、寸法精度のバランスからガラスフレーク、マイカを使用する事が好ましい。ガラスフレークの形状としては、鱗片状のもので樹脂配合後、及び成形品中における長径は、配合時に分級による均一混合の困難さ及びこれに伴う成形品物性のバラツキを避けるため1000μm以下、好ましくは1〜500μmの範囲であり、且つアスペクト比(長径と厚みとの比)は、光ピックアップベースの耐熱性、剛性、耐衝撃性の点から5以上、好ましくは10以上、更に好ましくは30以上のものが好適である。該ガラスフレークは、市販されているものをそのまま用いる事が出来るが、樹脂に配合する際に適宜粉砕して用いても良い。
【0023】
該ガラスフレークは、樹脂との親和性を改良する目的で、例えばシラン系やチタネート系等の種々のカップリング剤で処理したガラスフレークを使用できる。
マイカについては、鱗片状のもので、スゾライト・マイカ(商標登録)が好適に使用できる。樹脂配合後、及び成形品中における長径が1000μm以下、好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下のものが好適で、重量平均アスペクト比(マイカの平均直径/平均厚み)が10以上、好ましくは30以上、更に好ましくは100以上のもが剛性賦与の点で良い。該マイカは、樹脂との親和性を改良する為、カップリング剤で表面処理したマイカが特に良好に使用できる。
【0024】
繊維状強化充填剤(D−8)として好適に用いられるのは、コスト、成形性、機械的性質のバランスからガラスファイバー、カーボンファイバーであり、通常の熱可塑性樹脂に配合されるガラスファイバー、カーボンファイバーである。例えばEガラスファイバーが挙げられ、繊維径が8〜25μm、樹脂配合後、及び成形品中における平均繊維長が20〜1000μmである事が好ましく、従来公知のカップリング剤、収束剤で処理されている事が特に好ましい。
無機質充填剤(D)を構成する各充填剤はそれぞれ単独でも良いし、2種類以上を併用しても良い。また、熱伝導性と寸法精度、耐熱性、強度、剛性のバランスの点から該無機質充填剤(D)中に含まれる充填剤混合物の含有率は、90質量%以下であり、好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、前記成分の他に、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)等のポリスチレン系樹脂やポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水添スチレン−イソプレンブロック共重合体等の熱可塑性エラストマーを配合させる事も可能である。
この中で流動性向上や耐衝撃性向上の目的としてポリスチレン、ゴム変性ポリスチレンや水添スチレン−ブタジエン共重合体、水添スチレン−イソプレンが特に好適に配合される。配合量としては、PAS(A)、PPE(B)からなる樹脂組成物100質量部に対して30質量部以下とする事が好ましく、3〜20質量部配合する事が特に好ましい。
【0026】
更に必要に応じて通常の熱可塑性樹脂に添加される添加剤、例えば熱安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、離型剤、滑剤、染料、顔料などを配合する事も特に制限されるものではない。
【0027】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の調整は、ブラベンダー、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機などの従来公知の技術によって達成されるが、特に好ましくは押出機である。また、各構成成分の配合の順番は特に限定されるものではなく、例えば、PAS(A)にPPE(B)を相溶化剤(C)と共に押し出し混合したペレットに無機質充填剤(D)を配合して押し出し混合する方法、PAS(A)、PPE(B)、相溶化剤(C)、無機質充填剤(D)を同時に押し出し混合する方法、PAS(A)又はPPE(B)と相溶化剤(C)及び無機質充填剤(D)を予め押し出し混合したマスターバッチにPPE(B)又はPAS(A)を混合して押し出し混合する方法、PAS(A)と無機質充填剤(D)を予め押し出し混合したマスターバッチとPPE(B)と無機質充填剤(D)を予め押し出し混合したマスターバッチを相溶化剤(C)と共に混合する方法、PAS(A)及びPPE(B)と無機質充填剤(D)を相溶化剤(C)と共に予め押し出し混合したマスターバッチとPAS(A)及び/又はPPE(B)を混合する方法等である。
【0028】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、一般的な射出成形、インジェクションプレス成形、またはガスインジェクション成形等の公知の成形方法にて成形を行う事が可能である。特に本発明で得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて光ピックアップを保持する光ピックアップベース、又は光ピックアップ部品とした時に大きな効果が得られる。
【0029】
なお本発明で述べる光ピックアップベースとは、例えばコンピュータ、ゲーム機、音楽プレーヤー、ビデオプレーヤー、AV機器等におけるCD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RAM、DVD−RW、PC−RW、DVD−ビデオ、MD、MO、LD等のディスクを記録媒体として用い、光または磁気で書き込み、読み取りを行う機器に用いられる機構部品である。特に温度等使用環境の厳しい車載用のCDプレーヤー、DVDビデオ、DVDナビゲーション、MDプレーヤー等向けシャーシ類やトレー類等の光ディスドライブ用機構部品や薄型の光ディスドライブ用機構部品用として、本発明の光ピックアップベースを使用する効果が大きい。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。 実施例及び比較例における測定法及び用語は以下の通りである。
<熱伝導率>
ASTM D−638に準じて成形したダンベルから、厚さ0.5mm、直径10mmの試料を切り出し、カーボンスプレーにてカーボンを表面に塗布した試料を用いて、レーザーフラッシュ法熱伝導率測定装置(LF/TCM−FA8510B:理学電気工業(株)製)により測定した。
【0031】
<線膨張係数及びその異方性>
ASTM D−696に準拠したTMA法による。ASTM D−638に準じて成形したダンベルから切り出した各試験片3mm×3mm×10mmを、TMAを用いて140℃で1時間アニールを行った後、−35℃から毎分5℃で65℃まで昇温して長さの変移量から線膨張係数を測定した。また、線膨張係数異方性は射出成形時にゲートから金型内に樹脂が射出されて流動する方向となる流動方向のサンプルを用いて測定した線膨張係数で樹脂が流動する方向に対して垂直な方向となる垂直方向のサンプルを用いて測定した線膨張係数を除して算出した。
【0032】
<耐熱性>
荷重1.82MPaにおいて、ASTM D−648に準拠して荷重たわみ温度を測定した。
<成形品そり>
3次元測定機(AE122:(株)ミツトヨ製)を用いて光ピックアップベースの任意の規定点におけるX、Y、Z軸方向の位置を測定し、単位長さ当たりの最低位置と最高位置の差を算出した。値の大きさはそりの大きさを示す。
<バリ量>
成形した光ピックアップベースにおける任意位置のバリ量を実態顕微鏡により観察し、最大長を測定した。
【0033】
<無機質充填剤>
アルミニウム:アトマイズアルミ紛(山石金属(株)製VA350、平均粒径25〜30μm)、銅:電解銅紛(山石金属(株)製MC−2、平均粒径30〜40μm)、アルミナ:αアルミナ(日本研磨剤工業(株)製WA#700、平均粒径17μm)酸化マグネシウム:酸化マグネシウム紛(協和化学工業(株)製パイキスマ3320、平均粒径20μm)、窒化ホウ素:平均粒径約3μm、炭酸カルシウムマグネシウム複塩:平均粒径20〜50μm、ガラスフレーク:日本板硝子(株)製マイクログラスフレカREFG−302、ガラスファイバー:日本板硝子(株)製RES03−TPO15
【0034】
【実施例1〜14、及び比較例1〜4、参考例1、2】
溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、荷重20kgf/cm2、L/D=10/1で6分間保持した後測定した値。)が500ポイズである直鎖状構造を有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、極限粘度[η]が0.52(30℃、クロロホルム中)であるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル樹脂(PMPE)、相溶化剤としてグリシジルメタクリレートを5質量%含有するスチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(重量平均分子量110,000)、結合スチレン量が35質量%で数平均分子量178,000の水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体及び無機質充填剤の各成分を表1、2に示すような配合組成にて、温度290〜320℃、スクリュー回転数500rpmに設定した二軸押出機(ZSK−40:WERNER&PFLEIDERE社製)にて溶融混練りし、組成物ペレットを得た。
【0035】
このペレットを用いて射出成形を行い、材料物性測定用のダンベル及び光ピックアップベースを作成し、前記した方法により各種試験を行った。評価結果を表3に示した。
実施例1〜14は優れた熱伝導性を有し、成形品のそりが小さく、かつバリが少ないという優れた成型加工性を有していた。比較例3は成形品のそりが大きく、かつバリが多く発生し、耐熱性も低くなった。また、比較例1、2、4は成形する事が出来なかった。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、熱伝導性及び寸法精度、強度、剛性、耐薬品性、耐熱性に優れるとともに成形品のそり及びバリが少ない、即ち成形加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 線膨張係数測定のためのダンベルとその切り出し個所を示す概略図である。
【図2】 線膨張係数測定用の試験片の概略図である。
【符号の説明】
1:射出成形のゲート位置
2:試験片の垂直方向の切り出し位置
3:試験片の流動方向の切り出し位置
Claims (9)
- ポリアリーレンサルファイド樹脂(A)30〜90質量%、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)70〜10質量%からなる樹脂組成物100質量部に対して、相溶化剤(C)1〜100質量部、及び無機質充填剤(D)5〜300質量部を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、該無機充填剤(D)が、金属単体(D−1)、金属酸化物(D−2)、窒素化合物(D−3)、炭酸金属複塩(D−4)である群(1)から選ばれる少なくとも1種類以上と鱗片状無機質充填剤(D−7)から選ばれる1種以上との混合物であり、熱伝導率が0.5W/mK以上であり、かつ線膨張係数異方性が1.0〜2.5の範囲であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- 該無機質充填剤(D)が、請求項1に記載の無機質充填剤の群(1)から選ばれる1種以上、鱗片状無機質充填剤(D−7)から選ばれる1種以上、及び繊維状無機質充填剤(D−8)から選ばれる1種以上、からなることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ポリアリーレンサルファイド樹脂(A)が50〜90質量%、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)が50〜10質量%である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 相溶化剤(C)が、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、ゴム補強スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル−グリシジルメタクリレート共重合体から選ばれるグリシジル基含有スチレン系樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 金属単体(D−1)が、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、亜鉛、ケイ素、ゲルマニウム、モリブデンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 金属酸化物(D−2)が、酸化鉄、アルミナ、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 窒素化合物(D−3)が、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 炭酸金属塩(D−4)が、炭酸カルシウム・マグネシウム複塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された光ピックアップを保持する光ピックアップベース、または、光ピックアップ部品。
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