JP4130243B2 - 半導体装置の作製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、透光性を有する同一基板上に半導体薄膜を利用した薄膜トランジスタで画素マトリクス回路、ドライバ─回路、ロジック回路等を作製する半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガラス基板上に半導体薄膜(典型的には珪素を主成分とする薄膜)を利用して形成するTFTの開発が著しい発展を遂げている。そして、ガラス基板上に画素マトリクス回路、ドライバー回路、ロジック回路等をモノシリックに搭載した電気光学装置の需要が高まっている。
【0003】
ガラス基板上にTFTを形成する場合に生じる最も大きな制約はプロセス温度である。即ち、ガラスの耐熱温度以上の加熱処理が行えないという制約がプロセスマージンを狭めてしまうのである。
【0004】
そのため、薄膜を選択的にアニールする手段としてレーザーアニール法が活用されている。レーザーアニール法は試料に対してパルスレーザー光を照射することで瞬間的に試料温度を高め、薄膜のみを選択的に加熱することができる。しかし、レーザー光を取り扱うため光学系が複雑であることと、均一性の確保が困難であることが量産工程上の問題となっている。
【0005】
そこで、最近ではアークランプやハロゲンランプ等から発する強光を用いたランプアニール法が脚光を浴びている。この技術はRTA(Rapid Thermal Annealling)またはRTP(Rapid Thermal Processing)とも呼ばれ、被処理膜に吸収されやすい波長領域の強光を照射することで被処理膜を加熱する。
【0006】
通常、ランプアニール法は強光として可視光から赤外光領域を利用する。この波長領域の光はガラス基板に吸収されにくいため、ガラス基板が加熱されるのを最小限に抑えることができる。また、昇温・降温時間が極めて短いため1000℃以上の高温処理を数秒から数十秒という短時間で行うことができる。
【0007】
さらに、レーザー光の加工に用いられる様な複雑な光学系を必要としないため、比較的大きい面積を均一性良く処理するのに適している。また、基本的に枚葉式処理で行われるので歩留りおよびスループットも高い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、従来のランプアニ─ル法に対して改良を加えた装置を用いた工程と、その後の熱処理によって、さらに均一性の優れた良質の結晶性を有する半導体薄膜を得ることを課題とする。
【0009】
また、従来のランプアニ─ル法は、被処理膜の上面側のみから照射していたので、被処理膜上の一部または全面に光を透過しない層(例えば金属からなる電極)、または光の照射を妨げる層が存在していると、前記層の下の被処理膜がアニ─ルできなかった。
特に、半導体薄膜に、ド─ピングされた不純物を活性化させる工程に、従来のランプアニ─ルを用いた時、半導体薄膜上に積層された金属からなる電極や、絶縁膜が光の照射を妨げ、均一性の優れたソース/ドレイン領域を形成することができなかった。
【0010】
本発明の課題のもう一つは、不純物がド─ピングされた半導体薄膜に、従来のランプアニ─ル法に対して改良を加えた装置を用いた工程と、その後の熱処理によって、不純物を活性化させ均一性の優れたソース/ドレイン領域を有する半導体薄膜を得ることも課題の1つとする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本明細書で開示する発明の第1の構成は、
透光性を有する基板上に成膜された半導体薄膜に、強光を照射し、加熱処理する工程を有する半導体装置の作製方法であって、
前記半導体薄膜に対して、前記半導体薄膜の上面側に設けられた少なくとも1つのランプ光源と前記半導体薄膜の下面側に設けられた少なくとも1つのランプ光源とから発する強光を照射する工程と、
前記工程の後に、前記半導体薄膜に対して熱処理を施す工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0012】
また第2の構成は、
不純物がド─ピングされた半導体薄膜に、強光を照射し、加熱処理することにより前記不純物を活性化させる工程を有する半導体装置の作製方法であって、
前記半導体薄膜に対して、前記半導体薄膜の上面側に設けられた少なくとも1つのランプ光源と前記半導体薄膜の下面側に設けられた少なくとも1つのランプ光源とから発する強光を照射する工程と、
前記工程の後に、前記半導体薄膜に対して熱処理を施す工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0013】
なお、上記第1又は2の構成において、前記熱処理は、500〜700℃のファーネスアニールにより行われる。ここでいうファーネスアニ─ルとは、電熱炉等の加熱炉内で行う数時間の熱処理のことである。
【0014】
本発明の様にランプ光源からの強光によってランプアニールを行うと半導体膜中に歪エネルギーが発生する。即ち、ファーネスアニールによって歪エネルギーを除去または低減することは非常に有効である。
【0015】
また、従来のランプアニ─ル法は、全面一括処理であったので、処理時間が長いと被処理膜から絶縁基板へと熱が伝播して、歪みエネルギーが生じ、基板が反ったり縮んだりする変形が起きてしまうことが問題となっていた。
また、全面一括処理でのランプアニ─ルでは、被処理膜への光の照射に微妙なむらが生じ、求められている均一性の優れた良質の結晶性を有する特性を有する薄膜を得ることができなかった。
そこで、上記第1又は2の構成において、前記強光が、線状に加工された状態で前記基板の一端から他端に向かって走査されることで前記問題を解決することができる。
【0016】
また、上記第1又は2の構成において、前記強光は、全て前記薄膜の同一部分を照射した状態で走査されることを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0017】
上記第1又は2の構成において、上記強光が、線状に加工された状態で前記基板の一端から他端に向かって走査されることを特徴としている。
【0018】
また、上記第1又は2の構成において、上記強光は、全て前記薄膜の同一部分を照射した状態で走査されることを特徴としている。
【0019】
上記第1又は2の構成において、上面側からの強光は、前記薄膜の原子の結合手を電子励起させうる波長領域(代表的には10〜600nm)を主成分とする光であり、下面側からの強光は、前記薄膜の原子の結合手を振動励起させうる波長領域(代表的には500nm〜20μm)を主成分とする光であることを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0020】
上記第1又は2の構成において、前記薄膜の原子の結合手を電子励起させうる波長領域の強光とは紫外光であり、前記薄膜の原子の結合手を振動励起させうる波長領域の強光とは赤外光であることを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の特徴は、被処理膜に対して両面側から光を照射、特に上面側及び下面側から紫外光(UV光)と赤外光(IR光)とを組み合わせて照射する装置によって得られる半導体薄膜を用いた半導体装置及びその作製方法である。
【0022】
なお、本発明では、フォトンエネルギーを与える代表的な光として紫外光と記載したが、被処理膜を電子励起させうる波長領域の光であれば可視光をも含む。
代表的には 10 〜600 nmの波長領域の光を用いることができる。
【0023】
また、同様に振動エネルギー(熱エネルギーと言っても良い)を与える代表的な光として赤外光と記載したが、被処理膜を振動励起させうる波長領域の光であれば可視光をも含みうる。代表的には500 nm〜20μmの波長領域の光を用いることができる。
【0024】
なお、上記波長領域は 500〜600 nmの可視光領域で重複しているが、これは被処理膜によって電子励起または振動励起させうる波長領域が異なるためである。即ち、同じ波長領域の光で電子励起と振動励起とを同時に起こせることを意味しているのではない。
【0025】
上記紫外光は、低圧金属蒸気ランプ、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンアークランプ、水素アークランプ、メタルハライドランプ、重水素ランプ、希ガス共鳴線ランプ、希ガス分子発光ランプ等の紫外線を発するランプを光源として得ることができる。
【0026】
上記赤外光は、ハロゲンランプ、ハロゲンアークランプ、メタルハライドランプ等の赤外線を発するランプを光源として得ることができる。
【0027】
紫外光を用いた光照射処理は、フォトンの持つエネルギーを被処理膜に光吸収という形で与え、直接的に被処理膜を構成する分子の結合手を励起させる。この様な励起現象は電子励起と呼ばれる。なお、紫外光はガラス基板に吸収されやすいので珪素を主成分とする半導体薄膜の上面側から照射することが望ましい。
【0028】
赤外光は、ハロゲンランプ、ハロゲンアークランプ、メタルハライドランプ等の赤外線を発するランプを光源として得ることができる。
【0029】
この赤外光による光照射処理は、格子振動という形で振動エネルギーを与え、それを励起エネルギーとして間接的に被処理膜を構成する分子の結合手を励起する。この様な励起現象は振動励起と呼ばれる。なお、赤外光はガラス基板に吸収されにくいのでの珪素を主成分とする半導体薄膜の下面側から照射することができる。
【0030】
本発明の工程は、以下に説明する様な効果を得ることができる。
【0031】
まず、従来の赤外光照射による振動励起(熱エネルギーによる励起)に加えて、紫外光照射による電子励起が生じるため、それらの相乗効果によって結晶性珪素膜103の励起効率が飛躍的に向上する。
【0032】
即ち、結晶性珪素膜103を構成する分子の結合手は、赤外光照射による格子振動によって全体的に緩められ、紫外光照射によって電子的に極めて活性な状態となって連結される。そのため、本発明の加熱処理を施した結晶性珪素膜112は、非常に活性な状態(結合の自由度の高い状態)から形成される。
【0033】
従って、本発明を施すことにより得られる結晶性珪素膜112は、不対結合手の如き結晶欠陥が非常に少ない。また、結晶粒界も整合性の良い結合で形成されるため殆どが傾角粒界の如き不活性な粒界で形成される。
【0034】
なお、珪素(シリコン)の基礎吸収端はほぼ1eVであるので紫外光は厚さ10nm〜1 μm程度の表面のみで吸収されると考えられる。しかし、本実施例の場合には結晶性珪素膜の膜厚が10〜75nm(代表的には15〜45nm)と極めて薄いので、十分な励起効果を期待することができる。
【0035】
また、従来のランプアニールは全面一括処理であったので、処理時間が長いと被処理膜からガラス基板へと熱が伝播してガラス基板が反ったり縮んだりしてしまうことが懸念されていた。
【0036】
しかしながら、本発明では赤外光111の光源として線状の赤外光ランプ108を利用しているため、結晶性珪素膜103から基板101に伝わる伝播熱も局部的なものでしかない。そのため、熱によって基板101が反ったり縮んだりする様なことを防ぐことができる。
【0037】
また、本実施例では結晶性珪素膜の結晶性を改善する工程において本発明の加熱処理方法を適用したが、非晶質珪素膜の結晶化工程に本発明を適用することもできることは言うまでもない。
【0038】
この様に、本発明ではランプアニール法を用いた加熱処理において赤外光の照射と同時に紫外光を照射することで、珪素を主成分とする半導体薄膜の励起効果をさらに高めることができる。即ち、加熱処理の効率が大幅に向上するという効果が得られる。
【0039】
ところで、図4に示すのは熱エネルギーと光エネルギーとの違いを表す概念図であり、横軸はエネルギー、縦軸はエネルギー密度である。図4の様に、熱エネルギーはエネルギー的には平均kTのエネルギーを持つが広い範囲にエネルギー分布を有している。一方、光エネルギーは波長によってある決まった値、即ちhνそのもののエネルギーのみを有する。
【0040】
従って、例えば珪素膜を結晶成長させる場合、熱エネルギーは成長に必要なエネルギー以外に結晶を破壊するエネルギー等をも含んでしまうが、光エネルギーは成長に必要なエネルギーのみを効率的に照射することが可能である。
【0041】
この様に、紫外光の波長を適切に選択することで、特定の薄膜のみを集中的に励起することができるので種類の異なる被処理膜の励起度を制御したり、選択的な励起処理が可能となる。これも赤外光によるランプアニールに紫外光照射を組み合わせた本発明効果の一つである。
【0042】
また、本発明は、赤外光によるランプアニールに紫外光照射を組み合わせたものに限定されるものではなく、例えば、赤外光による上面側からのランプアニールに下面側からの赤外光によるランプアニールを組み合わせてもよい。
【0043】
珪素を主成分とする膜を結晶成長させる工程において、本発明のランプアニ─ル法を用いると、均一性の優れた良質の半導体薄膜を得ることができる。
また、不純物をドーピングした珪素を主成分とする膜を活性化させる工程において、本発明のランプアニ─ル法を用いると、特性の優れたソース領域、ドレイン領域を得ることができる。
【0044】
また、本発明のランプアニ─ル法を用いた工程の後に、ファーネスアニ─ルを行なうと、本発明のランプアニ─ル法を用いた工程により生じた歪みエネルギーを減少または、除去することができる。
そのため、本発明のランプアニ─ル法を用いる場合、併せて熱アニールを後に行うことが望ましい。
【0045】
【実施例】
〔実施例1〕
本実施例では、半導体装置の作製方法において、珪素を主成分とする結晶性膜の結晶性を改善する工程を、図1を用いて説明する。なお、数値、材料等は本実施例に限定されることはない。
【0046】
まず、透光性を有する基板としてガラス(または石英)基板101上に厚さ2000Åの酸化珪素膜でなる下地膜102を形成する。
その後、下地膜上に、厚さ300Å〜500Å、本実施例では厚さ500Åの非晶質珪素膜を堆積する。
【0047】
そして、非晶質珪素膜を加熱処理またはレーザー光照射によって結晶化する手段をとれば良い。また、結晶化を助長する触媒元素を用いた手段(特開平7-130652号公報に開示)を用いることも有効である。
このようにして、結晶性珪素膜103を得る。(図1(a))
なお、本実施例では結晶性膜103としては結晶性珪素膜を例にとるが、Six Ge1-x (0<X<1)などの珪素を含む化合物半導体を用いることもできる。
【0048】
また、結晶性珪素膜にも単結晶シリコン膜、微結晶シリコン膜、多結晶シリコン膜等が含まれるが、ここでは多結晶シリコン膜(いわゆるポリシリコン膜)を例にとって説明する。
【0049】
その後、図1(b)のように、本実施例では、この結晶性珪素膜103の上面側から紫外光107が照射される。上面側とは図1(b)において紫外光ランプ104と向かい合う主表面側、即ちガラス基板101に対して逆側の面を指している。
【0050】
そして、104は紫外光(紫外線)を発するランプ光源(以下、単に紫外光ランプと呼ぶ)であり、105は反射鏡、106は紫外光ランプ104から発した紫外光107を集光するためのシリンドリカルレンズである。紫外光ランプ104、反射鏡105およびシリンドリカルレンズ106は、紙面と垂直な方向に対して細長い形状であるため、結晶性珪素膜103に対して線状に照射される。
【0051】
次に、108は赤外光(赤外線)を発するランプ光源(以下、単に赤外光ランプと呼ぶ)であり、109は反射鏡、110は赤外光ランプ107から発した赤外光111を集光するためのシリンドリカルレンズである。赤外光111も紫外光107と同様に線状光となる様に構成されている。
【0052】
また、赤外光は、結晶性珪素膜103に対して下面側から照射される構成となっている。ここで下面側とは図1において赤外光ランプ108と向かい合う裏面側、即ちガラス基板101側に向いた面を指している。
【0053】
この時、赤外光111はガラス基板に吸収されずに透過する。即ち、下面側からの照射であっても、結晶性珪素膜103を効率的に加熱することができる。従って、赤外光111の照射によって結晶性珪素膜103は 600〜1200℃(代表的には 700〜850 ℃)に加熱される。この時の結晶性珪素膜103の膜面温度は、熱電対を利用したパイロメーター(放射温度計)を用いて測定(モニタリング)することができる。
【0054】
また、ガラス基板101はサセプター(図示せず)によって支持され、ガラス基板101の上面側から線状の紫外光107が矢印の方向に向かって走査され、下面側から線状の赤外光111が矢印の方向に向かって走査される。この様に、ガラス基板101の一端から他端に向かって線状光を走査することで基板全面を照射することが可能となる。
上記処理を行うことで、結晶性に優れた結晶性珪素膜112が得られた。
【0055】
次に、上記処理が終了したら、500〜700℃(本実施例では600℃)のファーネスアニールを2〜8時間(本実施例では4時間)行う。この熱処理工程により、前述のランプアニール工程によって半導体膜中に発生した歪エネルギーが除去または低減される。
【0056】
歪エネルギーが残存したままにしておくと製造プロセス中の膜剥がれ(ピーリング)の原因となる。また、歪エネルギーによって応力や格子歪が発生するため、半導体装置の電気特性が変化してしまう。従って、上述の様なファーネスアニール工程は、ランプアニール、レーザーアニール等の急激な相変化を伴う熱処理の後工程として非常に有効な工程である。
【0057】
また、本実施例では紫外光107と赤外光111とが結晶性珪素膜103の同一部分を照射する。同一部分とは図1(b)に示す様に、照射範囲が同じ場所であることを意味している。勿論、場合によっては走査するタイミングを意図的にずらしたり、走査方向を異ならせたりすることもできる。
【0058】
その後、得られた結晶性シリコン膜をフォトリソグラフィー法によって、パターニングして、島状に分離し、Pチャネル型TFTの島状領域、または、Nチャネル型TFTの島状領域を形成する。
【0059】
さらにプラズマCVD法によって厚さ1500Å〜2000Å、本実施例では厚さ1500Åの酸化珪素膜を全面に堆積し、絶縁膜を形成する。
【0060】
引続いて、スパッタリング法によって、厚さ4000Å〜6000Å、本実施例では、5000Åのアルミニウム膜を形成し、エッチングすることで、ゲイト配線パタ─ンを形成する。
【0061】
ゲイト電極119をマスクとして、絶縁膜をエッチングし、ゲイト絶縁膜118を形成する。
【0062】
次に、ソース領域115およびドレイン領域117を真性または実質的に真性な結晶性珪素膜で構成される活性層に対して一導電性を付与する不純物イオンを添加して形成する。この際、Nチャネル型TFTを作製する場合にはP(リン)イオンまたはAs(砒素)イオンを、Pチャネル型TFTを作製する場合にはB(ボロン)イオンを利用すれば良い。
【0063】
次に層間絶縁膜120として酸化珪素膜、または、窒化珪素膜、またはその積層膜を形成する。層間絶縁膜としては、酸化珪素膜または窒化珪素膜上に樹脂材料でなる層を形成してもよい。
【0064】
そして、コンタクトホ─ルの形成を行い、ソ─ス電極121とドレイン電極122の形成を行う。こうして、薄膜トランジスタが完成する。(図1(c))
【0065】
尚、本発明の薄膜トランジスタの形状は、プレーナ型であるが、逆スタガー型にも本発明を適用できることは言うまでもない。
【0066】
〔実施例2〕
本実施例ではTFTの活性層に添加されたN型またはP型を付与する不純物イオンを活性化する工程に本発明を適用した場合の例について説明する。
【0067】
図2(a)に示す状態は、ガラス基板101上にTFTを作製している途中の段階である。図2(a)において、201〜203で示される領域は島状にパターニングされた半導体層からなる活性層であり、201はソース領域、202はドレイン領域、203はチャネル形成領域である。
【0068】
また、上記活性層の上にはゲイト絶縁膜204が形成されている。このゲイト絶縁膜204は特開平7-135318号公報記載の技術等を用いて、上に配置されるゲイト電極205と同一の形状に加工されている。
【0069】
ソース領域201およびドレイン領域202は真性または実質的に真性な結晶性珪素膜で構成される活性層に対して一導電性を付与する不純物イオンを添加して形成される。この際、Nチャネル型TFTを作製する場合にはP(リン)イオンまたはAs(砒素)イオンを、Pチャネル型TFTを作製する場合にはB(ボロン)イオンを利用すれば良い。
【0070】
次に、不純物イオンの添加工程が終了したら、薄膜トランジスタ(TFT)が形成される基板上面側から紫外光207を照射し、基板下面側から赤外光211を照射する。この時、ゲイト電極205の直下には紫外光207が届かないが、下面側から赤外光211を照射しているので活性化は問題なく行われる。(図2(a))
【0071】
本実施例におけるランプアニール処理は添加された不純物イオンを励起させて活性化する工程である。従って、本発明を適用することで活性化率が大幅に向上するためソース/ドレイン領域の抵抗が低くなり、TFTと配線電極とのオーミック接触を良好なものとすることができる。
【0072】
さらに、上記ランプアニールにより、歪エネルギーが発生するため、500〜700℃、本実施例では600℃のファーネスアニールを4時間行い、歪エネルギーを除去または、減少させた。
この時、ゲイト電極の材質によって、適宜アニール温度を前記温度範囲内で調整することは言うまでもない。
【0073】
以後、実施例1と同様に薄膜トランジスタを完成させる。(図2(b))
勿論、実施例1で得られた結晶性の優れた結晶性珪素膜を用いれば、さらに優れた特性を有する薄膜トランジスタが得られる。
【0074】
〔実施例3〕
本実施例ではTFTのソース/ドレイン領域表面(ゲイト電極がシリコンであればゲイト電極表面も含む)に対して選択的に金属シリサイドを形成する工程に本発明を適用した場合の例について説明する。なお、説明には図3を用いるが、必要に応じて前述の符号を用いて説明する。
【0075】
本実施例では基板上面側から赤外光と紫外光とを同時に照射する装置を用いる点に特徴がある。即ち、基板上面側には赤外光ランプ301、反射鏡302、シリンドリカルレンズ303からなる光学系と、紫外光ランプ304、反射鏡305、シリンドリカルレンズ306からなる光学系とが配置される。そして、赤外光ランプ301からは赤外光307が照射され、紫外光ランプ304からは紫外光308が照射される構成となっている。
【0076】
この構成ではゲイト電極204の陰となる領域であっても上面からの赤外光307または下面側からの赤外光311のいずれかによって加熱される。従って、シリサイド形成反応を基板全体で均一に行うことができる。
【0077】
なお、本実施例の様な構成とする場合、まず赤外光307で加熱して、その直後に紫外光308で励起する様な構成とすることが好ましい。即ち、最初に赤外光による振動励起によって結合手を緩め、その状態で紫外光による電子励起を付加した方が励起効率が高いと思われる。
【0078】
上記構成で行われるシリサイド形成工程は以下の様な順序で進められる。まず不純物イオンの活性化工程が終了したら、作製過程にあるTFT全面を覆う様にして金属膜309を形成する。金属膜309としては、Ti(チタン)、Co(コバルト)、W(タングステン)、Ta(タンタル)等が一般的に用いられている。
【0079】
この状態で加熱処理を行うとソース領域201およびドレイン領域202を構成する珪素(シリコン)成分と金属膜309とが反応して金属シリサイド310が形成される。この様な反応はソース/ドレイン領域201、202と金属膜309との界面において進行するが、本実施例では紫外光照射による励起効果で反応速度が増加し、速やかなシリサイド化が実現できる。
【0080】
また、ランプアニールの特徴として金属膜309を構成する成分原子がチャネル形成領域203に拡散することを防ぐことができる。この効果は本実施例の様に線状に赤外光を照射する場合に顕著な効果となる。
【0081】
なお、本実施例の様な赤外光と紫外光とを同時に基板上面側から照射する構成は実施例1および実施例2にも適用できることは言うまでもない。特に、実施例2に適用した場合、ソース/ドレイン領域とチャネル形成領域との接合部やゲイト電極で陰になる領域も完全に活性化されるため有効である。
以後、実施例1と同様に薄膜トランジスタを完成させる。
【0082】
〔実施例4〕
本実施例では、実施例1の構成において紫外光107の照射範囲と赤外光111の照射範囲とを異なるものとする例を示す。具体的には、赤外光111の照射範囲を紫外光107の照射範囲よりも広くする。その様子を図5に示す。
【0083】
図5において、501は表面に下地膜を設けたガラス基板、502は結晶性珪素膜である。基板501の上面側には紫外光ランプ503、反射鏡504、シリンドリカルレンズ505が配置され、紫外光506が照射される。また、下面側には赤外光ランプ507、反射鏡508、シンドリカルレンズ509が配置され、赤外光510が照射される。
【0084】
この時、赤外光510の照射範囲は511〜513で示される領域(第1の領域とする)に渡り、紫外光506の照射範囲は512で示される領域(第2の領域とする)のみである。
【0085】
即ち、赤外光510の照射範囲の方が紫外光506の照射範囲よりも広くなる様に設計されている。そのためには、線状に加工された赤外光510の短辺方向の長さを、線状に加工された紫外光506の短辺方向の長さよりも長くすれば良い。こうすることで前述の第1の領域は第2の領域を含み、かつ、第2の領域よりも広い構成となる。
【0086】
従って、結晶性珪素膜502は紫外光506を照射される直前に赤外光510によって加熱され、紫外光506が照射された直後も僅かな時間だけ赤外光510によって加熱される。即ち、領域511で弱い励起状態を作り、領域512で完全な励起状態として、領域513で弱い励起状態を保つ。
【0087】
以上の様な構成とすると結晶性珪素膜502の励起状態が急激に変化しないと考えられるため、結合に要する時間を稼ぐことができる。即ち、非平衡状態で原子間の結合が終了するのを防ぐことができる。これにより結晶欠陥の少ない結晶性珪素膜を得ることができる。
以後、この結晶性珪素膜を用いて、実施例1と同様に薄膜トランジスタを完成させる。
【0088】
〔実施例5〕
本実施例では、本発明の実施例1の構成において、紫外光ランプと並列して赤外光補助ランプを形成する場合の例について図6を用いて説明する。
【0089】
図6(A)において、601はガラス基板、602は非晶質珪素膜である。なお、被処理膜として非晶質珪素膜を例にしているが、ガラス基板上の薄膜であれば限定はない。また、603は基板下面側の赤外光ランプ、604は基板上面側の紫外光ランプである。
【0090】
ここで本実施例の特徴は、紫外光ランプ604に並列して第1の赤外光補助ランプ605、第2の赤外光補助ランプ606を配置する点である。なお、本実施例では紫外光ランプ604の(基板の移動方向に対して)前方および後方に赤外光補助ランプ605、606を配置する構成としているが、片方のみに配置した構成とすることもできる。
【0091】
以上の様な構成において、各ランプ603〜606は図中の矢印の方向に向かって移動し、線状光を走査する。本実施例の構成では、まず非晶質珪素膜602は第1の赤外光補助ランプ605により赤外光が照射されて加熱される。この領域はプレヒート領域607となり、基板の移動に伴い前方へと移動していく。
【0092】
プレヒート領域607の後方では、基板上面側から紫外光ランプ604からの紫外光が照射され、かつ、基板下面側から赤外光ランプ603からの赤外光が照射されてメインヒート領域608が形成される。本実施例の場合、非晶質珪素膜602の結晶化はこのメインヒート領域608で行われる。
【0093】
メインヒート領域608の後方には第2の赤外光補助ランプ606からの赤外光により加熱されたポストヒート領域609が形成される。この領域はメインヒート領域608で得られた結晶性珪素膜を加熱する領域である。
【0094】
以上の様に、非晶質珪素膜(途中から結晶性珪素膜となる)602はプレヒート領域607、メインヒート領域608、ポストヒート領域609の順に並んだ領域が、見かけ上基板の移動に伴って前方へ移動する。
【0095】
ここで図6(B)に示すのは、非晶質珪素膜602のある1点について、時間(Time)と温度(Temp. )の関係を示した図である。図6(B)に示す様に、時間の経過に伴ってまずプレヒート領域となり、次いでメインヒート領域、ポストヒート領域と続く。
【0096】
図6(B)から明らかな様に、プレヒート領域607ではある程度にまで温度が上げられ、次のメインヒート領域608との温度勾配を緩和する役割を果たしている。これは、メインヒート領域608で急激に熱せられて珪素膜に歪みエネルギー等が蓄積するのを防ぐための工夫である。
【0097】
そのため、第1の赤外光補助ランプ605の出力エネルギーは赤外光ランプ603の出力エネルギーよりも小さめに設定しておくことが望ましい。この時、どの様な温度勾配を形成する様に調節するかは実施者が適宜決定すれば良い。
【0098】
次に、プレヒート領域607を通過すると、基板下面側から赤外光を照射され、膜面温度が 600〜1200℃でまで上昇したメインヒート領域608となる。この領域で非晶質珪素膜602は結晶性珪素膜へと変成する。なお、同時に照射される紫外光は電子励起に寄与するので熱的な変化はもたらさない。
【0099】
メインヒート領域608で得られた結晶性珪素膜は紫外光ランプ604の後方に配置された第2の赤外光補助ランプ606によって加熱される。このポストヒート領域609は、メインヒート領域608の急冷により熱的平衡の崩れた状態で結晶化が終了するのを防ぐ役割を果たす。これは結晶化に要する時間に余裕を持たせ最も安定な結合状態を得るための工夫である。
【0100】
従って、第2の赤外光補助ランプ606も基板下面に配置される赤外光ランプ603よりも出力エネルギーを小さく設定し、徐々に温度が下がる様な温度勾配を形成する様に調節することが望ましい。
【0101】
以上の様な構成とすることで、非晶質珪素膜の急加熱および結晶性珪素膜の急冷により生じうる応力歪み、不対結合手等の結晶欠陥の発生を抑制し、結晶性に優れた結晶性珪素膜を得ることができる。
以後、この結晶性珪素膜を用いて、実施例1と同様に薄膜トランジスタを完成させる。
【0102】
【発明の効果】
以上の様に、本発明では被処理膜の上下方向にランプ光源を設置することでランプアニールを効率的に行うことができる。特に、赤外光と紫外光とを同時に照射することで、被処理膜の励起効率をさらに高め、結晶性の優れた結晶性珪素膜を得ることができる。
【0103】
また、上記ランプアニールの後、ファーネスアニールを行うことも本発明の1つであり、この処理により、歪エネルギーの小さい結晶性珪素膜を得ることができる。
【0104】
そして、この様にして形成された結晶性珪素膜を用いることで優れた電気特性を有する半導体装置を作製することが可能である。
【0105】
また、活性層にN型またはP型を付与する不純物が添加されたソース領域、ドレイン領域を活性化させる際に本発明を適用すると、不純物の効果的且つ効率的な活性化を行うことができる。
【0106】
さらに、本発明のランプアニールを線状に加工された強光で行うことによりガラス基板を反らせたり縮ませたりすることなく、600 〜1200℃の高い温度での加熱処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による加熱処理の構成を示す図。
【図2】 本発明による加熱処理の構成を示す図。
【図3】 本発明による加熱処理の構成を示す図。
【図4】 熱エネルギーと光エネルギーの違いを示す図。
【図5】 本発明による加熱処理の構成を示す図。
【図6】 本発明による加熱処理の構成を示す図。
【符号の説明】
101 ガラス基板
102 下地膜
103 結晶性珪素膜
104 紫外光ランプ
105 反射鏡
106 シリンドリカルレンズ
107 紫外光
108 赤外光ランプ
109 反射鏡
110 シリンドリカルレンズ
111 赤外光
112 結晶性が改善された結晶性珪素膜
115 ソ─ス領域
116 チャネル領域
117 ドレイン領域
118 ゲイト絶縁膜
119 ゲイト電極
120 層間絶縁膜
121 ソース電極
122 ドレイン電極
201 ソース領域
202 ドレイン領域
203 チャネル領域
204 ゲイト絶縁膜
205 ゲイト電極
207 紫外光
211 赤外光
217 活性化されたソース領域
218 活性化されたドレイン領域
219 活性化されたチャネル領域
220 層間絶縁膜
221 ソース電極
222 ドレイン電極
301 赤外光ランプ
302 反射鏡
303 シリンドリカルレンズ
304 紫外光ランプ
305 反射鏡
306 シリンドリカルレンズ
307 赤外光
308 紫外光
311 赤外光
309 金属膜
310 金属シリサイド
311 紫外光
501 基板
502 結晶性珪素膜
503 紫外光ランプ
504 反射光
505 シリンドリカルレンズ
506 紫外光
507 赤外光ランプ
508 反射光
509 シリンドリカルレンズ
510 赤外光
511 弱い励起状態が作られた領域
512 完全な励起状態の領域
513 弱い励起状態が保たれた領域
601 基板
602 非晶質珪素膜
603 赤外光ランプ
604 紫外光ランプ
605、606 赤外光補助ランプ
607 プレヒ─ト領域
608 メインヒ─ト領域
609 ポストヒ─ト領域

Claims (3)

  1. ガラス基板上にシリコン膜、前記シリコン膜上のゲイト絶縁膜、及び前記ゲイト絶縁膜上のゲイト電極を形成し、
    前記シリコン膜に不純物イオンを添加して前記シリコン膜にソース領域及びドレイン領域を形成し、
    前記シリコン膜のソース領域及びドレイン領域の上面に接する金属膜を形成し、
    前記ガラス基板の上面側からランプ光源を用いた線状の紫外光及びランプ光源を用いた第1の線状の赤外光の照射を行うと同時に前記ガラス基板の下面側からランプ光源を用いた第2の線状の赤外光を前記ガラス基板を透過させて前記シリコン膜に照射することによって、前記シリコン膜のソース領域及びドレイン領域の上面に金属シリサイドを形成した後、
    前記シリコン膜に対して熱処理を行う半導体装置の作製方法であって、
    前記線状の紫外光及び前記第2の線状の赤外光は、前記シリコン膜の同一部分を照射しながら前記ガラス基板の一端から他端に向かって走査し、
    前記第1の線状の赤外光は、前記線状の紫外光の走査方向に対して前記線状の紫外光の前方部分を照射しながら前記ガラス基板の一端から他端に向かって走査することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  2. ガラス基板上にシリコン膜、前記シリコン膜上のゲイト絶縁膜、及び前記ゲイト絶縁膜上のシリコンからなるゲイト電極を形成し、
    前記シリコン膜に不純物イオンを添加して前記シリコン膜にソース領域及びドレイン領域を形成し、
    前記シリコン膜のソース領域及びドレイン領域の上面と前記ゲイト電極に接する金属膜を形成し、
    前記シリコン膜の上面側からランプ光源を用いた線状の紫外光及びランプ光源を用いた第1の線状の赤外光の照射を行うと同時に前記シリコン膜の下面側からランプ光源を用いた第2の線状の赤外光を前記ガラス基板を透過させて前記シリコン膜に照射することによって、前記シリコン膜のソース領域及びドレイン領域の上面と前記ゲイト電極の上面に金属シリサイドを形成した後、
    前記シリコン膜に対して熱処理を行う半導体装置の作製方法であって、
    前記線状の紫外光及び前記第2の線状の赤外光は、前記シリコン膜の同一部分を照射しながら前記ガラス基板の一端から他端に向かって走査し、
    前記第1の線状の赤外光は、前記線状の紫外光の走査方向に対して前記線状の紫外光の前方部分を照射しながら前記ガラス基板の一端から他端に向かって走査することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  3. 請求項1又は請求項2において、前記熱処理は、500〜700℃のファーネスアニールにより行われることを特徴とする半導体装置の作製方法。
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