JP4129924B2 - 窓組立体の製造方法 - Google Patents
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Description
このような窓組立体として、透明な窓板の外周縁に沿って合成樹脂材料を押出成形することにより製造されるものがある。この種の窓組立体に関する従来技術文献として特許文献1が挙げられる。この特許文献1に記載された実施例では、ガラス板に接合される部分(基部)を構成する樹脂材料として塩化ビニル樹脂を用いている。
(1).被取付体の窓開口縁に取り付けられる窓組立体。その窓組立体は、表裏両面を有する無機ガラス製の窓板と、該窓板の外周縁に沿って一体的に形成された遮蔽材とを備える。本窓組立体が所定位置に取り付けられたとき、この遮蔽材によって窓板の外周縁と前記窓開口部との間が遮蔽される。窓板の周縁には、前記遮蔽材が形成される部分に、酸変性されたポリオレフィン樹脂または酸変性されたオレフィン−スチレン共重合樹脂を主成分とする接着剤層が予め形成されている。この遮蔽材は、オレフィン系熱可塑性エラストマー材料またはスチレン系熱可塑性エラストマー材料を主体とする基部成形材料を加熱溶融状態で前記窓板の外周縁に沿って押出成形して形成された基部を有する。その基部は、該押出成形に伴う熱および/または圧力により前記接着剤層を介して前記窓板に接合されている。また、前記遮蔽材は、熱可塑性エラストマー材料を主体とする突出部成形材料により該基部と一体に形成された突出部を備える。該突出部は、該基部から窓開口縁に向けて突出している。前記窓組立体が所定位置に取り付けられたとき、該突出部が弾性変形して前記窓開口縁に弾接(弾性的に圧接)する。
上記(1)の発明によれば、無機ガラス製の窓板に、オレフィン系熱可塑性エラストマー材料またはスチレン系熱可塑性エラストマー材料を主体に構成された遮蔽材の基部が強固に接合されている窓組立体が提供されるという効果が得られる。
請求項1の製造方法によれば、接着剤中の−H基と加熱により活性化したガラス中の−OH基との水素結合(またはエステル結合)により接着剤とガラスが接着すると共に、接着剤中のオレフィン成分と遮蔽材中のオレフィン成分(例えばPP成分)とが相溶することにより接着剤と遮蔽材が接着する。これによりガラス製の窓板とTPE(特にTPO,TPS)を用いた遮蔽材とが適切に接着することができる。したがって、無機ガラス製の窓板に、オレフィン系熱可塑性エラストマー材料またはスチレン系熱可塑性エラストマー材料を用いてなる遮蔽材が押出時の材料の熱および/または圧力により前記接着剤層を介して前記窓板に強固に接合されている窓組立体を製造することができるという効果が得られる。また、前記窓板の少なくとも外周縁を60〜120℃(すなわち、常温を超える温度域)に加熱した状態で該窓板に前記遮蔽材を接合することにより、材料または遮蔽材の熱が急速に奪われることがないので、遮蔽材がより強固に接合された窓組立体を製造し得るという効果が得られる。
請求項2の製造方法によれば、接着剤中の−H基と加熱により活性化したガラス中の−OH基との水素結合(またはエステル結合)により接着剤とガラスが接着すると共に、接着剤中のオレフィン成分と遮蔽材中のオレフィン成分(例えばPP成分)とが相溶することにより接着剤と遮蔽材が接着する。これによりガラス製の窓板とTPE(特にTPO,TPS)を用いた遮蔽材とが適切に接着することができる。したがって、無機ガラス製の窓板に、オレフィン系熱可塑性エラストマー材料またはスチレン系熱可塑性エラストマー材料を用いてなる遮蔽材が押出時の材料の熱および/または圧力により前記接着剤層を介して前記窓板に強固に接合されている窓組立体を製造することができるという効果が得られる。この製造方法は、接着剤層の機能(接着性能)がよく発揮される期間が限られている場合にも好ましく採用される。換言すれば、この製造方法は接着剤層の形成に用いる材料(接着剤)の選択自由度が高い。また、前記窓板の少なくとも外周縁を60〜120℃(すなわち、常温を超える温度域)に加熱した状態で該窓板に前記遮蔽材を接合することにより、材料または遮蔽材の熱が急速に奪われることがないので、遮蔽材がより強固に接合された窓組立体を製造し得るという効果が得られる。
請求項4の製造方法によれば、接着剤中の−H基と加熱により活性化したガラス中の−OH基との水素結合(またはエステル結合)により接着剤とガラスが接着すると共に、接着剤中のオレフィン成分と遮蔽材中のオレフィン成分(例えばPP成分)とが相溶することにより接着剤と遮蔽材が接着する。これによりガラス製の窓板とTPE(特にTPO,TPS)を用いた遮蔽材とが適切に接着することができる。したがって、無機ガラス製の窓板に、オレフィン系熱可塑性エラストマー材料またはスチレン系熱可塑性エラストマー材料を用いてなる遮蔽材が強固に接合されている窓組立体を製造し得るという効果が得られる。さらに、遮蔽材が窓板と離れた位置で成形されるので、形状の安定した遮蔽材を接合することができるという利点がある。また、前記窓板の少なくとも外周縁を60〜120℃(すなわち、常温を超える温度域)に加熱した状態で該窓板に前記遮蔽材を接合することにより、材料または遮蔽材の熱が急速に奪われることがないので、遮蔽材がより強固に接合された窓組立体を製造し得るという効果が得られる。
請求項5の製造方法によれば、接着剤中の−H基と加熱により活性化したガラス中の−OH基との水素結合(またはエステル結合)により接着剤とガラスが接着すると共に、接着剤中のオレフィン成分と遮蔽材中のオレフィン成分(例えばPP成分)とが相溶することにより接着剤と遮蔽材が接着する。これによりガラス製の窓板とTPE(特にTPO,TPS)を用いた遮蔽材とが適切に接着することができる。したがって、無機ガラス製の窓板に、オレフィン系熱可塑性エラストマー材料またはスチレン系熱可塑性エラストマー材料を用いてなる遮蔽材が強固に接合されている窓組立体を製造し得るという効果が得られる。この製造方法は、接着剤層の機能(接着性能)がよく発揮される期間が限られている場合にも好ましく採用される。すなわち、この製造方法は接着剤層の形成に用いる材料(接着剤)の選択自由度が高い。さらに、遮蔽材が窓板と離れた位置で成形されるので、形状の安定した遮蔽材を接合することができるという利点がある。また、前記窓板の少なくとも外周縁を60〜120℃(すなわち、常温を超える温度域)に加熱した状態で該窓板に前記遮蔽材を接合することにより、材料または遮蔽材の熱が急速に奪われることがないので、遮蔽材がより強固に接合された窓組立体を製造し得るという効果が得られる。
そのような成形材料を構成するオレフィン系熱可塑性エラストマーのハードセグメント(オレフィン成分)としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ−1−ペンテン等が挙げられる。これらのうちポリエチレン及びポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。また、かかるオレフィン系熱可塑性エラストマーのソフトセグメント(エラストマー成分)としては、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)等が挙げられる。これらのうちEPDMが特に好ましい。ハードセグメントとして二種以上の重合体を含有してもよく、ソフトセグメントについても同様であるが、ハードセグメントがポリプロピレンであり、ソフトセグメントがEPM又はEPDMであるオレフィン系熱可塑性エラストマーが特に好ましく用いられる。例えば、質量比で5〜45部(より好ましくは10〜35部、更に好ましくは20〜30部)のポリプロピレンと、20〜60部(より好ましくは30〜50部)のEPDMと、適当量(例えば20〜50部、好ましくは30〜40部)の軟化剤とを配合してなる成形材料を好ましく用いることができる。遮蔽材(少なくともその基部)を形成する材料として好ましく利用し得るTPOの市販品としては、エーイーエス・ジャパン株式会社から入手可能な「サントプレーン(登録商標)」、三井化学株式会社から入手可能な「ミラストマー(登録商標)」、三菱化学株式会社から入手可能な商標「サーモラン」、三福工業株式会社から入手可能なTPO等が挙げられる。
また、遮蔽材(少なくともその基部)を形成する材料として好ましく利用し得るその他の樹脂としては、アイオノマー樹脂が挙げられる。例えば、市販品は、三井・デュポン株式会社から入手可能である。
上記成形材料を構成するオレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーのうち、オレフィン系熱可塑性エラストマーがより機械的強度及び接着強度に優れるために好ましい。
このようなポリオレフィン樹脂またはオレフィン−スチレン共重合樹脂が「酸変性」されているとは、酸性基(典型的にはカルボキシル基)が導入されていることをいう。このような酸変性樹脂は、例えば、上述したポリオレフィン樹脂またはオレフィン−スチレン共重合樹脂に不飽和カルボン酸をグラフト重合することにより得ることができる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の一種または二種以上を用いることができる。あるいは、適当な後処理(加水分解等)によりカルボキシル基に変換し得る不飽和カルボン酸誘導体(エステル、無水物等)を用いてもよい。例えば、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをグラフト重合させた後、エステルを加水分解してカルボキシル基を生成させることができる。
なお、適切な接着力が得られる理論としては、次のように考えられる。
すなわち、TPOと酸変性されたポリオレフィン樹脂接着剤との接着の場合、接着剤中の−H基と、加熱により活性化したガラス中の−OH基との水素結合またはエステル結合により接着剤とガラスが接着すると共に、接着剤中のオレフィン成分と遮蔽材中のオレフィン成分(例えばPP成分)とが相溶することにより接着剤と遮蔽材が接着する。これによりガラス製の窓板とTPOを用いた遮蔽材とが適切に接着すると考えられる。
また、TPSと酸変性されたオレフィン−スチレン共重合樹脂接着剤との接着の場合、接着剤中の−H基と、加熱により活性化したガラス中の−OH基との水素結合により接着剤とガラスが接着すると共に,接着剤中のオレフィン部と遮蔽材中のオレフィン成分とが相溶することにより接着剤と遮蔽材が接着する。これによりガラス製の窓板とTPSを用いた遮蔽材とが適切に接着すると考えられる。
本発明を自動車のバックウィンドウへの適用例につき説明する。
図1に示すように、本実施例に係るバックウィンドウ用窓組立体1は、表裏両面を有する透明な窓板10と、その外周縁部(外周縁)100に沿って設けられた遮蔽材20とを備える。この窓組立体1は、図1に示す線Cを中心として実質的に左右対称に形成されている。窓板10の外周形状は正面から見て大まかにいって四角形状であり、相対的にほぼ直線的な四つの直線状部102と、隣り合うほぼ直線状部102の間に位置するコーナー部104とを有する。本実施例では、窓板10の全周に亘って遮蔽材20が形成されている。すなわち、遮蔽材20は、直線状部102およびコーナー部104を含む範囲に連続的に形成されている。
図2に示すように、窓板10は全体として、被取付体としての自動車に取り付けられたとき車両の外側となる表面10Aを凸面、車両の内側となる裏面10Bを凹面とする曲面形状に形成されている。この窓板10としては、一般的な自動車後面ガラス用窓材(例えば、板厚約3.0〜3.5mmの強化ガラス)を用いることができる。
窓板10の裏面10Bには、その外周縁に沿ってフリット層12が融着して形成されている。このフリット層12の表面(露出面)は、比較的高融点の無機粉末(典型的にはガラス粉末)が分散していることにより、窓板10の他の部分(表面10Aおよびフリット層12が形成されていない部分の裏面10B)よりも粗化された表面となっている。フリット層12は着色不透明で、典型的には黒く着色されており、窓組立体1の表面から見たときに窓板10の外周部分の裏側を目隠しする機能を有する。また、窓板10の端面10Cは研削処理(グラインダ等による研削加工)により、透明部分の表面よりは粗面化されている。さらに端面の少なくとも表面10A側の縁が同様な加工により面取りされることがあり、この面取りされた部分10Dも同様に粗面化される。
なお、図2には基部22の外周端が窓板裏面10Bの外周端(裏面10Bと端面10Cとの境界)にほぼ揃うように遮蔽材20を形成した例を示しているが、基部22の外周端が窓板裏面10Bの外周端面10Cからやや内側に入り込んだ位置となるように(すなわち、裏面10Bの外周端にアンダーカットが設けられるように)遮蔽材20を形成してもよい。
ステップ1:窓板の外周縁部を脱脂するステップである。すなわち、窓板10の外周縁部の少なくとも接着剤層30を設ける範囲を清浄化(脱脂)する。例えば低級アルコール等で拭く。これにより油分、塵埃、汚れ等を除去する。
ステップ2:接着剤層を形成するステップである。すなわち、上記清浄化された外周縁部に接着剤層30を形成する。例えば、酸変性ポリプロピレン樹脂を適当な溶剤(トルエンを主成分とするもの等)に溶解または分散させた接着剤を、窓板10の所定の範囲(後に遮蔽材20が設けられる部分)にブラシ等を用いて塗布する。
ステップ3:接着剤層を乾燥させるステップである。すなわち、接着剤層(塗布された接着剤)30を乾燥(好ましくは自然乾燥)させて、接着剤に含まれる溶剤の少なくとも一部(好ましくは大部分)を揮発させる。
上述のように窓板10の裏面10Bの外周縁部100を押出ダイ52のオリフィス54(基部成形用オリフィス542)に係合または近接させた状態で、窓板外周縁100を押出ダイ52に対して図3および図5の矢印方向に移動させる。このとき、窓板外周縁100と押出ダイ52との位置および姿勢がほぼ一定の関係に維持されるように窓板保持装置60の動きを制御する。上述のように、窓板保持装置60は、窓板10(窓板外周縁100)のX方向の移動、Y方向の移動、Z方向の移動、θ方向の回転およびα方向の旋回を可能とするように構成されている。したがって、この窓板保持装置60の作動を適切に制御することにより、窓板外周縁100と押出ダイ52との位置および姿勢をほぼ一定の関係に維持しながら、ハンド64に保持した窓板10の外周縁部100を押出ダイ52のオリフィス54の下を連続して通過させることができる。窓板10の外周縁部100をこのように移動させつつ、加熱溶融状態の基部成形材料および突出部成形材料をオリフィス54から押し出す。これにより窓板10の裏面10Bの外周縁部100に沿って遮蔽材20を押出形成する。このとき、図5に示すように、遮蔽材20の基部22は、加熱溶融状態(例えば180〜230℃)の基部成形材料が接着剤層30の上に斜めに交差する方向から押し出されることにより形成されるとともに、両者の接触部分において所定の押出圧力Pによって接着剤層30に押し付けられることにより接着される。この際の熱および作用する押出圧力によって、基部22が接着剤層30を介して窓板10の裏面10Bの外周縁部100に一体的に接合される。なお、このとき図示しない突出部成形材料も同時にオリフィス544から押し出され、溶着によって基部22と一体化した突出部24が形成される。また、フリット層12の表面は窓板10の裏面10Bよりも粗化された面となっているので、接着剤層30が機械的にも接合して(アンカー作用)接着力が向上する。
ここで例示した製造方法には、必要に応じてステップ1〜7以外の製造ステップを追加することができる。また、ステップ1〜7のうち一以上のステップを省略または他のステップと併合してもよい。省略または併合するのに適したステップとしては、ステップ1、ステップ3、ステップ4が例示される。
また、前記した「窓板の外周縁を押出ダイのオリフィスに係合させた状態」とは、実質的なオリフィスが押出ダイ52のオリフィス54と窓板の面(本実施例では窓板10の裏面10B)とで形成される場合を指し、一方「窓板の外周縁を押出ダイのオリフィスに近接させた状態」とは、実質的なオリフィスが押出ダイ52のオリフィス54で形成され、オリフィス54が窓板の近くに配置される場合を指す。
また、加熱溶融状態にある基部成形材料および突出部成形材料を押出ダイ52のオリフィス54から一緒に押し出すので、基部22と突出部24とがその境界部分で溶着により一体化している遮蔽材20が形成される。これにより、基部22では窓板10にしっかりと接合されるとともに、窓開口縁9に弾性的に圧接(弾接)してより柔軟に撓み得る突出部24を備える窓組立体1を製造することができる。
また、上記実施例では遮蔽材20が形成される範囲(基部22が接合される範囲)のみに接着剤層30を設けているが、接着剤層30を設ける範囲はこれに限定されるものではない。例えば、製造誤差を考慮して上記範囲を含みこれよりやや広い範囲(例えば端面10Cに及ぶ範囲)に接着剤層30を設けてもよい。あるいは上記範囲のうちの一部に接着剤層30を設けてもよい。また、上記実施例のように接着剤層30を長手方向に連続的に設けてもよく、断続的に(例えばストライプ状に)設けてもよい。
また、上記実施例では押出ダイ52の位置および姿勢を固定とし、その押出ダイ52に対して窓板外周縁100を移動させる例について説明したが、窓板10の位置および姿勢を固定とし、その窓板10の外周縁100に沿って押出ダイ52を移動させてもよい。この場合、例えば、押出ダイ52を前述した保持装置60で保持して移動させ、押出ダイ52に耐圧性フレキシブルチューブの連結部51,53を連結することで対応できる。あるいは、窓板外周縁100と押出ダイ52との双方を移動させてもよい。
この第二実施例は、窓板の表裏両面および端面に遮蔽材の基部が接着固定された構成の窓組立体への適用例である。以下、第一実施例に係る部材と同様の機能を果たす部材については同じ符号を付し、その説明を省略する。
図6(第一実施例の図4に相当する。)に示すように、本実施例に係る遮蔽材20は、窓板10の外周縁部100を表面10Aから端面10Cを越えて裏面10Bのフリット層12に至るまで連続して略U字状に覆う基部22を備える。この基部22は、窓板10の外周縁部100に該窓板10の表面10Aから端面10Cを越えて裏面10Bに至る範囲に連続して形成された接着剤層30を介して、窓板10の表裏両面10A,10Bおよび端面10Cに接合されている。また、突出部24は、基部22のうち窓板端面10Cを覆う部分から外周側に突出するように形成されている。基部22はオレフィン系熱可塑性エラストマー材料またはスチレン系熱可塑性エラストマー材料を主体とする成形材料により形成され、突出部24も基部22と同じ成形材料により形成されている。基部22のうち窓板表面10Aに設けられた部分(すなわち、窓組立体2における基部22の外表面)には装飾条片28が設けられている。この装飾条片28は長尺なテープ状であって、窓板10の周方向(すなわち、基部22の長手方向)に沿って連続的に配置されている。
この第三実施例は、窓板の外周縁からやや離れた位置に押出ダイを設置して該押出ダイから遮蔽材を連続して押し出し、これを窓板の外周縁に固着させて窓組立体を製造する例である。本実施例では、図7に示すように、この窓板10の裏面10Bの外周縁部100からやや離れた位置に押出ダイ52が設置されている。押出ダイ52は、成形材料流路526およびオリフィス54を有するダイ本体520と、ダイ本体520に連結されたサイジング装置530とを備える。サイジング装置530の内部には、オリフィス54の押出方向下流に接続するサイジング流路532が形成されている。また、サイジング装置530は、サイジング流路532の内壁面を冷却可能な図示しない冷却手段を備える。さらに窓板10は第1実施例で説明したのと同様な窓板保持装置60で保持されるが、ここではその構成、作動についての説明は重複を避けるために省略する。
なお、この第三実施例は、第二実施例のように基部22の外表面に装飾条片を被着した形態の窓組立体にも適用することができる。
下記に示すような種々の接着剤及び熱可塑性エラストマーを主体とする成形材料を用意した。
(A)接着剤として、次の2種類を用いた。
(1)サーフレン(登録商標)AP‐343(三菱化学株式会社製)。
(2)サーフレン(登録商標)P‐1000(三菱化学株式会社製)。
(B)成形材料として、次の7種類を用いた。
(1)ミラストマー(登録商標)9020B(三井化学株式会社製のオレフィン系熱可塑性エラストマー)単独で成る成形材料。
(2)ミラストマー(登録商標)9020B(三井化学株式会社製のオレフィン系熱可塑性エラストマー)にタルクを10質量%添加して成る成形材料。
(3)ME‐8822B(三福工業株式会社製の、タルクが20質量%添加されたオレフィン系熱可塑性エラストマー)単独で成る成形材料。
(4)LVR0092(リケンテクノス株式会社製のスチレンが添加されたオレフィン系熱可塑性エラストマー)単独で成る成形材料。
(5)LVR0092(リケンテクノス株式会社製のスチレンが添加されたオレフィン系熱可塑性エラストマー)にタルクを10質量%添加して成る成形材料。
(6)LVR0037A(リケンテクノス株式会社製の、タルクが33質量%添加された、スチレンが添加されたオレフィン系熱可塑性エラストマー)単独で成る成形材料。
(7)TP‐1000改(三井・デュポン株式会社製のアイオノマー樹脂)単独からなる成形材料。
これらを表1に示すように組み合わせて、前記第一実施例と同様にして図8及び図9に示すような窓組立体試験用サンプル701を作製し、その接着強度について評価した。
窓板702の一側面713全体(但し、表層ガラス板703の角部709を含まない幅約4.5mm)から内層ガラス板707のフリット層711の一部にかけて、第一実施例と同様にして表1のいずれかの接着剤を用いて接着層715を形成した。但し、このときの窓板702の加熱温度は、70℃とした。
次いで、第一実施例と同様に、表1に示すいずれかの成形材料を用いた押出成形によって、遮蔽材717を窓板702の一方の側面713(縁部)に形成した。但し、成形材料の加熱温度は約180℃(165〜195℃)、押出ダイの加熱温度は約200℃(195〜205℃)とした。そして、遮蔽材717が形成された一側面713の長さが約100mmになるように窓板702をカットした。これにより、100mm×150mmの試験用窓板が得られた。さらに、引張試験機に適用可能なように、図9に示すY線及びZ線に沿って本試験にとって不要な部分719,721(図9中点線で示す)を遮蔽材717から切り落し、残部となる長さ約100mm×幅約3mm×厚さ約4.5mmの遮蔽材(図中のハッチ部分)723を引張試験に供した。
表1から明らかなように、本試験例に用いたいずれの成形材料及び接着剤によっても高い接着強度を得ることができる。サンプルNo.1、2、4、5、6、8、及び9では、剥離よりも先に遮蔽材723自体が引張力によって破壊されており、優れた接着強度が認められた。特に、成形材料が実質的にTPOから構成されるサンプルNo.1、2及び8は、遮蔽材自体の機械的強度が高いために8kg以上の極めて高い接着強度が得られた。また、サンプルNo.3及び4を比較すると、成形材料にタルクを添加しない場合には、接着剤としてAP‐343の方がP‐1000よりも接着強度に優れていた。さらに、サンプルNo.6及び7を比較すると、タルクの添加量は30質量%以下(即ち、5〜30質量%)の場合に接着強度が優れることが判った。
尚、本試験例では、具体的な測定結果を示していないが、不透明着色フリット層711まで接着固定した遮蔽材717では、単位面積あたりの接着強度がより向上していた。
例えば、上記第一実施例では車両のバックウィンドウの製法を例示したが、本発明は車両のフロントウィンドウにも適用できる。この場合、窓板が透明中間膜を有するラミネートガラスのときは、窓板を加熱するときの最高温度を110℃程度にとどめ中間膜の熱劣化を防ぐのが好ましい。
さらに、本発明の窓組立体は、ショベルカー等の建設機械の窓やトラクター等の農機具の窓にも適用することができる。建設機械や農機具に適用される窓組立体には、遮蔽材が前記各実施例と同様に窓板の外周縁とほぼ一致する位置に接合されるものの他に、全体の配置としては窓板の外周縁に沿うが周方向の全部または一部において遮蔽材が窓板の外周縁からやや離れて配置されるものがある。このような形態も、本願の「窓板の外周縁に沿って一体的に形成され窓板の外周縁と窓開口部との間を遮蔽する遮蔽材」の概念に包含される。さらに上記の用途において、遮蔽材の突出部の横断面形状を略鉤形に形成して窓開口縁に係合させ、窓組立体を被取付体に固定する役目をさせる場合があり、このように遮蔽の機能の他に付加的機能を有する形状も本願の「突出部」の概念に包含される。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
9 窓開口縁
10 窓板
10A 表面
10B 裏面
10C 端面
100 外周縁(外周縁部)
12 フリット層
20 遮蔽材
22 基部
24 突出部
28 装飾条片
30 接着剤層
52 押出ダイ
54 オリフィス
58 圧着ローラ
60 窓板保持装置
62 アーム
64 ハンド
642 窓板面保持部
Claims (10)
- 無機ガラス製窓板の外周縁に沿って遮蔽材が形成された窓組立体を製造する方法であって、
前記遮蔽材が形成される部分にカルボキシル基が導入されたカルボキシル基変性ポリプロピレン樹脂、カルボキシル基が導入されたアクリル変性ポリプロピレン樹脂、カルボキシル基が導入されたカルボキシル基変性プロピレン−スチレン共重合樹脂およびカルボキシル基が導入されたアクリル変性プロピレン−スチレン共重合樹脂のうちの一つの酸変性ポリプロピレン樹脂を溶剤に溶解させた接着剤であって前記酸変性ポリプロピレン樹脂および前記溶剤のみからなる接着剤を塗布してなる接着剤層が形成されている窓板を用意する工程と、
その窓板の外周縁を押出ダイのオリフィスに係合または近接させた状態で、該窓板外周縁と該押出ダイとの位置および/または姿勢がほぼ一定の関係に維持されるように前記窓板外周縁および前記押出ダイの少なくとも一方を他方に対して移動させつつ、前記窓板の少なくとも外周縁を60〜120℃の温度域に加熱した状態で、オレフィン系熱可塑性エラストマー材料またはスチレン系熱可塑性エラストマー材料を主体とする成形材料を加熱溶融状態で前記オリフィスから押し出して前記遮蔽材を形成するとともに前記接着剤層を介して該遮蔽材を前記窓板外周縁に接合する工程と、
を含む窓組立体の製造方法。 - 無機ガラス製窓板の外周縁に沿って遮蔽材が形成された窓組立体を製造する方法であって、
前記窓板における前記遮蔽材が形成される部分に、カルボキシル基が導入されたカルボキシル基変性ポリプロピレン樹脂、カルボキシル基が導入されたアクリル変性ポリプロピレン樹脂、カルボキシル基が導入されたカルボキシル基変性プロピレン−スチレン共重合樹脂およびカルボキシル基が導入されたアクリル変性プロピレン−スチレン共重合樹脂のうちの一つの酸変性ポリプロピレン樹脂を溶剤に溶解させた接着剤であって前記酸変性ポリプロピレン樹脂および前記溶剤のみからなる接着剤を塗布して接着剤層を形成する工程と、
その窓板の外周縁を押出ダイのオリフィスに係合または近接させた状態で、該窓板外周縁と該押出ダイとの位置および/または姿勢がほぼ一定の関係に維持されるように前記窓板外周縁および前記押出ダイの少なくとも一方を他方に対して移動させつつ、前記窓板の少なくとも外周縁を60〜120℃の温度域に加熱した状態で、オレフィン系熱可塑性エラストマー材料またはスチレン系熱可塑性エラストマー材料を主体とする成形材料を加熱溶融状態で前記オリフィスから押し出して前記遮蔽材を形成するとともに前記接着剤層を介して該遮蔽材を前記窓板に接合する工程と、
を含む窓組立体の製造方法。 - 前記窓板の外周縁の表裏両面および端面に前記接着剤層を形成し、該窓板外周縁を前記押出ダイのオリフィスに挿入させ、該オリフィスから押し出される前記成形材料が前記表裏両面および端面を覆うように前記遮蔽材を形成する、請求項1または2に記載の製造方法。
- 無機ガラス製窓板の外周縁に沿って遮蔽材が形成された窓組立体を製造する方法であって、
前記遮蔽材が形成される部分にカルボキシル基が導入されたカルボキシル基変性ポリプロピレン樹脂、カルボキシル基が導入されたアクリル変性ポリプロピレン樹脂、カルボキシル基が導入されたカルボキシル基変性プロピレン−スチレン共重合樹脂およびカルボキシル基が導入されたアクリル変性プロピレン−スチレン共重合樹脂のうちの一つの酸変性ポリプロピレン樹脂を溶剤に溶解させた接着剤であって前記酸変性ポリプロピレン樹脂および前記溶剤のみからなる接着剤を塗布してなる接着剤層が形成されている窓板を用意する工程と、
前記窓板の外周縁と、該窓板から離れて配置された押出ダイとの少なくとも一方を他方に対して移動させつつ、前記窓板の少なくとも外周縁を60〜120℃の温度域に加熱した状態で、該押出ダイのオリフィスからオレフィン系熱可塑性エラストマー材料またはスチレン系熱可塑性エラストマー材料を主体とする成形材料を加熱溶融状態で押し出して前記遮蔽材を形成するとともに該遮蔽材を前記窓板外周縁に向けて連続的に供給し、その窓板外周縁に供給された遮蔽材に前記窓板側への圧力を加えて該遮蔽材を前記接着剤層を介して前記窓板に接合する工程と、
を含む窓組立体の製造方法。 - 無機ガラス製窓板の外周縁に沿って遮蔽材が形成された窓組立体を製造する方法であって、
前記窓板における前記遮蔽材が形成される部分に、カルボキシル基が導入されたカルボキシル基変性ポリプロピレン樹脂、カルボキシル基が導入されたアクリル変性ポリプロピレン樹脂、カルボキシル基が導入されたカルボキシル基変性プロピレン−スチレン共重合樹脂およびカルボキシル基が導入されたアクリル変性プロピレン−スチレン共重合樹脂のうちの一つの酸変性ポリプロピレン樹脂を溶剤に溶解させた接着剤であって前記酸変性ポリプロピレン樹脂および前記溶剤のみからなる接着剤を塗布してなる接着剤層を形成する工程と、
前記窓板の外周縁と、該窓板から離れて配置された押出ダイとの少なくとも一方を他方に対して移動させつつ、前記窓板の少なくとも外周縁を60〜120℃の温度域に加熱した状態で、該押出ダイのオリフィスからオレフィン系熱可塑性エラストマー材料またはスチレン系熱可塑性エラストマー材料を主体とする成形材料を加熱溶融状態で押し出して前記遮蔽材を形成するとともに該遮蔽材を前記窓板外周縁に向けて連続的に供給し、その窓板外周縁に供給された遮蔽材に前記窓板側への圧力を加えて該遮蔽材を前記接着剤層を介して前記窓板に接合する工程と、
を含む窓組立体の製造方法。 - 前記オリフィスから押し出されて前記窓板外周縁に向けて連続的に供給される遮蔽材を、その溶融温度を下回りかつ常温を上回る温度域に維持して前記窓板外周縁に到達させる請求項4または5に記載の製造方法。
- 前記窓板の外周縁の一方の幅広面に前記接着剤層を形成し、前記オリフィスから押し出される前記成形材料が、実質的に遮蔽材の基部が前記一方の幅広面のみを覆うように前記遮蔽材を形成する、請求項1,2,4,5,6のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記遮蔽材は、前記成形材料により形成されて前記窓板に接合される基部と、前記成形材料よりも柔軟な突出部成形材料により該基部と一体に形成された突出部とを備え、該基部および該突出部は、前記基部を形成する成形材料と前記突出部を形成する突出部成形材料とを前記押出ダイに別々の流路から供給して形成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記窓板の全体を60〜120℃の温度域に加熱した状態で該窓板に前記遮蔽材を接合する、請求項1から8のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記オリフィスから前記成形材料を押し出す際に、該オリフィスに長尺状の装飾条片を連続的に供給し、前記成形材料とともに該装飾条片を押し出して外表面に前記装飾条片が配置された前記遮蔽材を形成する、請求項1から9のいずれか一項に記載の製造方法。
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