JP4129384B2 - 誘電体磁器およびそれを用いた多層配線基板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体磁器および多層配線基板に関し、特に、高誘電率を有する誘電体磁器と、かかる誘電体磁器を具備した多層配線基板に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、移動通信端末やパーソナルコンピュータ等に代表される情報処理装置では、情報処理速度の高速化、装置の小型化、多機能化などが進められている。このような情報処理装置の性能向上は、主として、LSI等の半導体素子の高集積化、高速化、高機能化によって実現されている。しかしながら、半導体素子が高速化、高性能化しても、このような半導体素子を搭載する多層配線基板での信号遅延や電源電圧変動等によるノイズによって、機器としての動作が制限されることがあった。
【0003】
一方、半導体素子を搭載するために用いられる多層配線基板としては、従来、タングステンなど高融点金属をメタライズ配線層とし、アルミナ質の絶縁層により構成される多層配線基板が用いられていたが、高融点金属は導電性が低く、また、アルミナ質絶縁層は比誘電率が約10と大きいことから、高い伝送特性が得られ難くなっていた。また、アルミナ質絶縁層の場合、多層配線基板が実装されるプリント基板等の外部回路基板との熱膨張係数差が大きいために、熱サイクルによる信頼性の低下等の問題も生じることがあった。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するため、導電性の高い銅や銀等の低融点金属をメタライズ配線層として用いることができ、アルミナ質の絶縁層に比較して比誘電率の低い低温焼成セラミックにより構成される多層配線基板の研究が活発に行われている。
【0005】
さらに、多層配線基板では、半導体素子のクロック回路の高周波化と消費電力の増加に伴って、電源供給用としてデカップリングコンデンサが必要となってきている。
【0006】
その方法としては、チップ部品である積層型コンデンサを多層配線基板の表面に半導体素子に隣接して設置する方法が採用されているが、近年、上記のチップ部品を多層配線基板の内部に取り込むこと、即ち、コンデンサ層を内層化することによって、多層配線基板自体に機能性を付与し、基板としても小型化しようとする試みがなされている。
【0007】
例えば、特許文献1によれば、他の複数の絶縁セラミック層間に内層されるコンデンサ層として、BaO−TiO2−(Nd1-mMem)O3/2(但し、Meはランタノイド系元素を示し、0≦m≦1.0)で表わされる誘電体セラミック成分に、酸化バリウム、酸化けい素および酸化ホウ素からなるガラス成分を混合、焼成したものが用いられると、記載されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−281436号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に開示された誘電体磁器では、前記した高誘電率フィラーに対して、BaO、SiO2、およびB23等の金属酸化物を、それぞれ単味で添加し混合して焼成しているために高誘電率フィラーと金属酸化物とが反応しやすく、このため高いQ値が得られているものの、半導体素子のさらなる高速、高周波化によって必要とされる静電容量に対して比誘電率が未だ低いという問題があった。
【0010】
従って本発明は、誘電率の更なる向上を図った誘電体磁器とそれを用いた多層配線基板を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の誘電体磁器は、BaOを20〜50質量%、SiOを10〜50質量%、Bを10〜40質量%およびTiOを2〜20質量%の割合で構成されるガラス成分20〜80質量%と、Ba1−XSrTiO(X=0.05〜0.2)からなる高誘電率フィラー20〜80質量%とを混合し、焼成して得られたものであることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、チタン酸塩からなる高誘電率フィラーに対して、BaO、SiO2、B23およびTiO2からなるガラス成分を混合しているために、焼成時において、高誘電率フィラーとガラス成分とが反応しにくいことから、ガラス成分からなるガラスのマトリクス中に高誘電率フィラーを孤立して存在させ、混合された高誘電率フィラーの特性を充分に発現させることができ、高誘電率化を図ることができる。
【0013】
また、ガラス成分中にTiOを含有せしめたことにより、ガラス成分自体の比誘電率を高めることでき、このため誘電体磁器の比誘電率をさらに高めることができる。また、高誘電率フィラーが、BaTiOのBa成分の一部をSrで置換したものであるので、熱膨張係数も高くでき、このためプリント基板などへの実装信頼性を向上させることができる。さらに、高誘電率フィラーが、Ba1−XSrTiO(X=0.05〜0.2)であることにより、ガラス成分と混合して焼成したとしても、チタン酸塩の中でも特に高い比誘電率を有するBaTiO系の材料を用いたのと同等の、高い比誘電率の誘電体磁器を形成できる。こうして、近年、高速、高周波化する半導体素子に対しても必要なデカップリングコンデンサに必要な高い静電容量のコンデンサ層を形成することができる。
【0014】
上記誘電体磁器では、ガラス成分の屈伏点が400〜700℃であることが望ましい。ガラス成分の屈伏点がこのような温度範囲であれば、高誘電率フィラーとの反応を抑制でき、高誘電率フィラーの誘電特性を高く維持したままで焼結体を形成できる。
【0017】
また、本発明の多層配線基板は、複数の絶縁層が積層された絶縁基板の表面および/または内部にメタライズ配線層が配設されてなる多層配線基板であって、前記絶縁層の少なくとも1層が、上記の誘電体磁器であることを特徴とする。このような構成によれば、多層配線基板に内層される絶縁層の少なくとも1層を高誘電率層とすることができ、静電容量の高いコンデンサ層を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の誘電体磁器は、BaOを20〜50質量%、SiOを10〜50質量%、Bを10〜40質量%およびTiOを2〜20質量%の割合で構成されるガラス成分を20〜80質量%と、Ba1−XSrTiO(X=0.05〜0.2)からなる高誘電率フィラーを20〜80質量%とを含有してなることが重要である。
【0019】
一方、ガラス成分量が20質量%より少ない場合には、磁器の焼結密度を高めることが困難となり、他方、80質量%より多い場合には、磁器が溶融しやすく、また、高誘電率フィラー量が少なくなるために、磁器の比誘電率を高くできない。
【0020】
ガラス成分量については、焼結密度を高めるという理由から、30〜60質量%、高誘電率フィラー量が40〜70質量%であることがより望ましい。
【0021】
ガラス成分を構成するBaOは、ガラス成分中で、20質量%より少ない場合には、高誘電率フィラーと混合して焼成される誘電体磁器の熱膨張係数を高くすることが困難となり、一方、50質量%より多い場合には、磁器の耐薬品性が劣化しやすい。そして、ガラス成分中のBaOは26〜46質量%の範囲であることがより望ましい。
【0022】
また、SiO2は、ガラス成分中で、10質量%より少ない場合には、ガラスの形成が困難となり、一方、50質量%より多い場合には、屈伏点が高くなり誘電体磁器の焼結性が劣化するとともに、チタン酸塩との反応により、シリケート化合物を形成しやすく、比誘電率の低下を招く恐れがある。そして、SiO2は19〜39質量%の範囲であることが望ましい。
【0023】
また、B23は、10質量%より少ない場合には、ガラス成分の屈伏点が高くなり、40質量%より多い場合には、屈伏点が所望の温度範囲よりも低下してしまう。そして、B23は15〜35質量%の範囲であることが望ましい。
【0024】
さらに、ガラス成分を構成するTiO2は、2質量%より少ない場合は、ガラスの比誘電率が低くなる恐れがある。20質量%より多い場合は、他の金属酸化物との関係で屈伏点の変化をきたす恐れがある。
【0025】
そして、上記の組成で構成されるガラス成分の屈伏点は、ガラス成分と混合される高誘電率フィラーとの濡れ性を高めるという理由から、400〜700℃であることが望ましく、特には、500〜580℃であることがより望ましい。
【0026】
本発明の誘電体磁器を構成する高誘電率フィラーとしては、チタン酸塩の中でも、特に、比誘電率の高い強誘電性を示すBa1−XSrTiO(X=0.05〜0.2)を用いる。Baの一部をSrで置換することにより、チタン酸塩単体での比誘電率が高いことから誘電体磁器の比誘電率を高く維持することができるとともに熱膨張係数を高めることができる。
【0027】
つまり、Ba1−XSrTiO化合物の特性は、Xの値によることが知られ、所望の熱膨張係数および比誘電率を達成するためには、高誘電率フィラーとしての組成も適宜調整することが必要であり、X=0.05〜0.15が望ましく、このような高誘電率フィラー単体の比誘電率は2000以上、特には3000以上であることが望ましい。
【0028】
また、上記したように、Baの一部をSrで置換した化合物では、誘電体磁器の熱膨張係数を高めることができることため、プリント基板への2次実装信頼性を向上させることができる。
【0029】
本発明の誘電体磁器は、前述した組成からなるガラス粉末20〜80質量%と、チタン酸塩として、例えば、Ba1−XSrTiO粉末(ただしX=0.05〜0.2)20〜80質量%とを混合し、成形し、焼成して作製される。
【0030】
本発明のBa1-XSrXTiO3粉末は、BaO、SrO、TiO2を所定の組成になるように混合したものを一旦、温度1200〜1400℃で1〜3時間仮焼を行いBa1-XSrXTiO3粉末を合成する。この後、アルミナ製磁器のボールミルを用い、溶媒にアセトンを使用して平均粒径1〜3μmになるまで粉砕することにより調製する。
【0031】
本発明のガラス成分は、BaO、SiO2、B23およびTiO2それぞれの混合粉末を坩堝内で溶融したものを水冷ロール板で急令したものをボールミルにより平均粒径1〜10μmに粉砕したものをガラス粉末とする。
【0032】
上記のガラス粉末と、フィラー粉末との混合物は、適当な有機樹脂バインダーを添加した後、所望の成形手段、例えば、金型プレス、冷間静水圧プレス、射出成形、押し出し成形、ドクターブレード法、カレンダーロール法、圧延法等により任意の形状に成形する。
【0033】
その後、上記の成形体を、還元雰囲気中1000℃以下で焼成する。この時、成形体の収縮開始温度は700℃以上程度であることが望ましく、かかる収縮開始温度がこれより低いとバインダーの除去が困難となるため、成形体中の結晶化ガラスの特性、特に屈伏点を前述したように制御するとともに、適正なガラス量を選択することが必要となる。しかも1000℃以下での焼成温度で焼成可能であるため、銅等の低抵抗金属との同時焼成が可能である。
【0034】
このようにして作製された本発明の誘電体磁器は、40〜400℃における熱膨張係数が13×10−6〜18×10−6/℃以上であり、かつ1MHz〜3GHzにおける比誘電率が100以上であることがより望ましい。
【0035】
また、本発明によれば、上記誘電体磁器は、高絶縁性、高誘電率、高熱膨張性を有することから多層配線基板の絶縁基板材料として好適に用いることができ、特に、本発明では、ガラス成分中にBaOおよびTiO2を含有しており、高誘電率フィラーとして混合されるBaTiO3と同じ成分であることから、高誘電率フィラーとガラス成分とが反応したとしても誘電体磁器の比誘電率を高く維持できる。
【0036】
図1に本発明の誘電体磁器を具備する多層配線基板の一例を概略断面図に示す。
【0037】
図1の多層配線基板によれば、絶縁層1a、1b、1cが多層に積層された絶縁基板1の表面および/また内部にメタライズ配線層2が配設されている。そして、絶縁層1a〜1cのうち絶縁層1bを上記高誘電率の誘電体磁器によって形成する。また、この高誘電率層1bの上下にCuなどの導体から成る電極3を形成してコンデンサ層を形成し、スルーホール導体4などを経由して絶縁基板1表面のメタライズ配線層2と接続することにより静電容量を取り出すことができる。
【0038】
即ち、本発明の多層配線基板は、絶縁基板1の内部に設けられた一対の電極3が高誘電率層1bを挟持し、高誘電率層1bと一対の電極3でコンデンサ層を具備していることを特徴とするものであり、特に、絶縁層1a、1b、1cうちの少なくとも1層が、本発明の誘電体磁器であることが重要である。
【0039】
この場合、絶縁層1a、1cは、40〜400℃における熱膨張係数が6〜18×10-6/℃の範囲であり、かつ1MHz〜3GHzにおける比誘電率が10未満、誘電正接が50×10-4以下であることが、前記高誘電率層1bとの同時焼結性、積層安定性などの点から望ましい。
【0040】
この絶縁層1a、1cを形成する誘電体磁器は、前記高誘電率層1bを構成する前記誘電体磁器におけるチタン酸塩に換えて、前記他のフィラー成分を配合したもの、特に、クオーツ、クリストバライト、フォルステライト、エンスタタイト、リチウムシリケート、セルジアンによって置換した組成物からなることが高熱膨張化の点で望ましい。これによって、同一のガラス成分から形成されることから、絶縁層1a、1cと高誘電率層1bとを同時焼成によって形成することが可能となる。
【0041】
このような絶縁層1a、1cを具備する多層配線基板は、前述したガラス粉末、およびフィラー粉末からなる低誘電率のセラミックス組成物に、適当な有機バインダー、溶剤、可塑材を添加混合することによりスラリーを作製し、かかるスラリーを周知のドクターブレード等の塗工方式によるグリーンシート成形法により、絶縁層1a、1c用の絶縁層用グリーンシート(低誘電率グリーンシート)を作製する。
【0042】
そして、メタライズ配線層2として、適当な金属粉末に有機バインダー、溶剤、可塑材を添加混合して得た金属ペーストを前記低誘電率グリーンシートに周知のスクリーン印刷法により、所定のパターンに印刷塗布する。また、場合によっては、前記グリーンシートに適当な打ち抜き加工によって貫通孔を形成し、この貫通孔内に導体ペーストを充填する。
【0043】
一方、上記と同様の方法により高誘電率層1b形成用のグリーンシートを作製し、打ち抜き加工による貫通孔の形成や、導体ペーストの印刷によって電極3を形成する。
【0044】
そして、上記絶縁層用セラミックグリーンシートと誘電体層用グリーンシートとを積層し、グリーンシート積層体とメタライズを同時焼成することにより、コンデンサとして機能する高誘電率層1bを内蔵する多層配線基板を得ることができる。
【0045】
本発明によって、コンデンサとして機能する高誘電率層1bを内蔵した多層配線基板は、40〜400℃における熱膨張係数が13×10−6〜18×10−6/℃、特に、13×10−6〜16×10−6/℃の範囲であることから、有機樹脂を含有するプリント基板(40〜400℃における熱膨張係数が約12〜15×10−6/℃)に、BGAやLCCなどのボール状半田端子や半田を介して実装した場合においても、温度サイクルに対する長期信頼性の実装が可能である。しかも、コンデンサとして機能する高誘電率層1bを内蔵することにより、配線基板やプリント基板の表面にコンデンサ素子などを別途実装する必要がないために、配線基板やプリント基板などの外部回路基板の小型化を同時に図ることができる。
【0046】
また、本発明の多層配線基板は、半導体素子を搭載するための半導体素子収納用パッケージ等として利用するだけでなく、弾性表面波、水晶振動子などを搭載可能な配線基板としても利用でき、さらに誘電体磁器は、LCフィルタなどの積層電子部品における絶縁体としても活用することもできる。
【0047】
以上のように構成した本発明の誘電体磁器およびこれを用いた多層配線基板は、コンデンサ機能を基板内部に内蔵でき、外付けの積層型コンデンサの点数削減によるコスト低下が達成できると共に基板自体の低背化および小型化に貢献できるため、各種のBGA(ボールグリッドアレイ)やCSP(チップスケールパッケージ)、LCC(リードレスチップキャリア)等の用途として好適に利用することができる。さらには、前記メタライズ配線層2は、金、銀、銅のうち少なくとも1種類以上を主成分とすることが好ましく、これにより、配線抵抗を小さくする事ができ、このことにより多層配線基板の伝送特性を高めることができる。
【0048】
【実施例】
ガラス粉末の原料粉末として、SiO2粉末、B23粉末、BaO粉末、TiO2粉末を準備して表1の組成に混合し、それぞれの混合粉末を坩堝内で溶融したものを水冷ロール板で急令したものをボールミルにより平均粒径3.5μmに粉砕したものをガラス粉末とした。
【0049】
【表1】
Figure 0004129384
【0050】
高誘電率フィラーとしてはBaTiO3、Ba1-XSrXTiO3(X=0〜0.2)、SrTiO3およびCaTiO3を用意した。これらは、BaO、CaO、SrOおよびTiO2を所定量混合して、温度1300℃で2時間仮焼を行って合成した。
【0051】
これら原料を表2に示す割合に混合し、更に溶剤を加えてボールミルを用いて粉砕混合した後、有機バインダー、可塑材を加えて混合してスラリーを作製した。次いで、得られたスラリーを用いてドクターブレード法により誘電体層用グリーンシートをそれぞれ作製した。この誘電体層用グリーンシートの厚みは70μmに調整した。
【0052】
電極用ペーストとして、金、銀、銅粉末をそれぞれ主成分とし、これにガラス粉末、フィラーを混合したものに、アクリル樹脂、α―テルピネオール、フタル酸ジブチル等を適宜混合し、ペースト化したものを用いた。
【0053】
得られた絶縁層と誘電体層を用いてコンデンサ容量測定サンプルとして直径30mmの内層パターン(ベタ)を印刷し焼成し作製した。コンデンサ容量測定サンプルは、ブリッジ回路法にて、1MHzでの比誘電率を測定した。判定基準としては比誘電率20以上を合格とした。また、熱膨張率測定サンプルとして、3×4×10mmの直方体を作製した。熱膨張率測定サンプルは、TMA法により、10℃/分で加熱し、40〜400℃の線熱膨張係数を測定した。
【0054】
次に、上記のガラス成分50質量%に対して、フィラーとしてクオーツを50質量%添加してなる組成物(焼成後の40〜400℃における線熱膨張係数:9.0×10-6/℃、1MHzにおける比誘電率:5.7)を用意し、上記誘電体磁器と全く同様な方法で厚さ180μmの絶縁層用グリーンシートを作製した。
【0055】
また、前記した誘電体磁器の作製で用いた厚み70μmの高誘電率層用のグリーンシートの両面および、前記絶縁層用グリーンシートに電極用ペーストをスクリーン印刷法で塗布した。また、各グリーンシートの所定箇所にビアホールを形成しその中にも銅メタライズペーストを充填した。
【0056】
次に、上記高誘電率層用のグリーンシートの上下に、上記絶縁層用グリーンシートを1枚ずつ、計3枚を積層圧着した後、外形47.5mm×47.5mmの大きさに切断し焼成して多層配線基板を作製した。なお、この多層配線基板には、2次実装信頼性試験用評価サンプルとして、パッド数は1369ピンを有する評価パターン(デージーチェーン)を形成した。このようにして作製した多層配線基板にはクラックは見られなかった。そこで、この多層配線基板をプリント配線板との2次実装信頼性評価サンプルとして使用した。2次実装信頼性測定サンプルは共晶半田ボールによりプリント配線板に実装し、−40〜125℃の温度サイクル試験に投入した。判断基準としては1000サイクル以上を合格とした。
【0057】
一方、比較例として、高誘電率フィラーとしてBaTiO3を用い、ガラス成分として、BaO40質量%、SiO240質量%、B2320質量%からなるガラス粉末を用いた試料を作製して本発明品と同様の評価を行った。その結果を表2に示した。
【0058】
【表2】
Figure 0004129384
【0059】
表2の結果から明らかなように、試料No.2〜6、8〜14では、何れも比誘電率が20以上と高く、かつ熱膨張率も8×10−6/℃以上と大きく、2次実装信頼性も優れる結果となった。特に、本発明の範囲内の試料番号10では、比誘電率が170と高いとともに、熱膨張係数が13×10−6と特に大きいため、2次実装信頼性でも特によい結果となった。
【0060】
また、ガラス成分がBaO、SiO2、B23およびTiO2を含み屈伏点が560〜680℃のガラス成分A、C、DおよびEを用いた試料No.2〜6、8〜10、12〜14では、誘電体磁器の比誘電率が25以上、ガラス成分の屈伏点が560〜650℃のガラス成分A、D、Eに対し、高誘電率フィラーとしてBaTiO3あるいはBa0.95Sr0.5TiO3を用いた試料No.2〜6、8〜10、13、14では比誘電率が50以上、特に、屈伏点が560℃のガラス成分Aを用い、かつ高誘電率フィラーとして、BaTiO3もしくはBa0.95Sr0.05TiO3を用いた試料No.2〜6、10では比誘電率が75以上、170以上となり、最高で265と極めて高い比誘電率が得られた。
【0061】
一方、本発明外の試料No.1では、ガラス成分量が少ないために試料が未焼結となり、試料No.7では、高誘電率フィラー量が少ないために比誘電率が低かった。また、試料No.15では、TiO2を含有しないガラス成分を用いて作製したために、高誘電率フィラーとしてBaTiO3を含有させても比誘電率が13と低かった。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の誘電体磁器は、Ba1−XSrTiO(X=0.05〜0.2)からなる高誘電率フィラーに対して、BaO、SiO、BおよびTiOからなるガラス成分を混合しているために、焼成時において、高誘電率フィラーとガラス成分とが反応しにくいことから、ガラス成分からなるガラスのマトリクス中に高誘電率フィラーを孤立して存在させ、混合された高誘電率フィラーの特性を充分に発現させることができ、高誘電率化を図ることができる。
【0063】
特に、用いているガラス成分中にTiO2を含有せしめたことにより、ガラス成分自体の比誘電率をも高めることでき、このため誘電体磁器の比誘電率をさらに高めることができる。こうして、近年、高速、高周波化する半導体素子に対しても必要なデカップリングコンデンサに必要な高い静電容量のコンデンサ層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層配線基板を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 絶縁基板
1a、1c 絶縁層(低誘電率層)
1b 絶縁層(高誘電率層)
2 メタライズ配線層
3 電極
4 スルーホール導体
5・・・半導体
6・・・接続バンプ

Claims (3)

  1. BaOを20〜50質量%、SiOを10〜50質量%、Bを10〜40質量%およびTiOを2〜20質量%の割合で構成されるガラス成分20〜80質量%と、Ba 1−X Sr TiO (X=0.05〜0.2)からなる高誘電率フィラー20〜80質量%とを混合、焼成して得られたものであることを特徴とする誘電体磁器。
  2. 前記ガラス成分の屈伏点が400〜700℃であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器。
  3. 複数の絶縁層が積層された絶縁基板の表面および/または内部にメタライズ配線層が配設されてなる多層配線基板であって、前記絶縁層の少なくとも1層が、請求項1または2に記載の誘電体磁器であることを特徴とする多層配線基板。
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