JP4761647B2 - セラミック組成物およびそれを用いた多層配線基板 - Google Patents

セラミック組成物およびそれを用いた多層配線基板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低誘電率セラミックスと同時焼成可能な、高誘電率のセラミックス組成物と、この高誘電率セラミック焼結体となるセラミック組成物とを用いた高誘電率セラミックス層を具備した多層配線基板に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、多層配線基板は、絶縁層が多層に積層された絶縁基板の表面または内部にメタライズ配線層が配設された構造からなり、代表的な例として、LSI等の半導体素子収納用パッケージが挙げられる。このようなパッケージとしては、絶縁層がアルミナ等のセラミックスからなるものが多用され、さらに最近では、銅メタライズと同時焼成を可能にした低温焼成のセラミックスを絶縁基板とするものも実用化されている。
【0003】
このようなセラミックス多層配線基板においては、半導体素子の集積度が高まるに従い、プリント基板などの外部回路基板と接続するための接続端子数も増大する傾向にあり、より小型化を図る方法として、セラミックス多層配線基板の下面に半田からなる球状の接続端子を取り付けた、ボールグリッドアレイ(BGA)が接続端子を最も高密度化できる構造として知られている。このボールグリッドアレイ(BGA)は、外部回路基板上の配線導体上に前記接続端子を載置当接させ、250〜400℃の温度で加熱処理することにより、前記接続端子を溶融させて接続するものである。
【0004】
この実装方法では、従来のアルミナ、ムライトなどのセラミックスを用いたセラミックス回路基板の熱膨張係数が約4〜7×10-6/℃であるのに対し、該基板を半田実装するガラス−エポキシ絶縁層を用いたプリント基板の熱膨張係数は、約11〜18×10-6/℃であったため、半導体素子の作動時に発する熱により、セラミックス多層配線基板と外部回路基板の熱膨張差に起因する大きな熱応力が発生するという問題があった。そして、この熱応力は接続端子数が増加するほど影響が大きくなり、半導体素子の作動と停止の繰り返しによりこの熱応力が接続端子に印加され、接続端子が配線導体より剥離するという問題があった。
【0005】
このような問題に対して、本出願人は、高熱膨張のガラスと高熱膨張のフィラーを用いた高熱膨張の低温焼成セラミック焼結体によって絶縁基板を形成した配線基板を提案した。
【0006】
一方、携帯電話、ノートパソコン等の携帯用情報端末の急激な普及に伴い、搭載される電子部品の小型化が強く望まれている。一例として、携帯電話のスイッチング回路及びパワーアンプ回路は、複数の抵抗体およびコンデンサにより構成され、従来、これらの素子は個々に外部回路基板上に設置されており、小型化及び製造コスト削減の妨げとなっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
携帯用電子機器などに搭載される電子部品を小型化するためには、半導体素子を収納するセラミックス配線基板のみならず、該配線基板を実装するプリント板などの外部回路基板を小型化する必要がある。しかし、従来はセラミック配線基板、コンデンサ、および抵抗を個々に外部回路基板上に実装していたため、小型化が困難という問題、および実装のための製造コストが高くなるという問題があった。
【0008】
そこで、セラミックス多層配線基板の内部に、高誘電率のセラミックス層を介装させたコンデンサ内蔵基板が提案されている。高誘電率の誘電体材料としては、従来からBaO−TiO2系、PbO−TiO2系などを主とする複合ペロブスカイト系誘電体材料が知られているが、かかる誘電体材料はセラミックスと同時焼成することができない。
【0009】
そこで、本出願人は、先に高熱膨張のガラスとフィラー成分としてBaTiO3、CaTiO3などを添加した高熱膨張、高誘電率系のセラミック焼結体を提案した。
【0010】
しかしながら、かかるセラミック焼結体では、ガラスの種類によっては上記のBaTiO3、CaTiO3の成分によって焼結性が大きく阻害され、低温で緻密質な焼結体が得られないという問題があった。
【0011】
従って本発明は、低温焼結性に優れ、アルミナより高い熱膨張係数および高誘電率を有するセラミック組成物と、低誘電率のセラミックス層と高誘電率セラミックス層とを積層してなり、有機樹脂を絶縁材料とする外部回路基板への実装信頼性に優れた多層配線基板を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に対して種々検討を重ねた結果、誘電体セラミックス成分としてCaO−TiO2−(La1-mMem)O3/2(但し、Meは、YおよびLa以外の希土類元素の群から選ばれる少なくとも1種、0≦m≦1.0)−ZrO2で表される誘電体セラミックス成分に、酸化カルシウム、酸化ケイ素、酸化バリウム、酸化ホウ素および酸化アルミニウムを含むガラス成分とからなるセラミック組成物によって、上記の目的を達成できることを見いだした。
【0013】
即ち、本発明のセラミック組成物は、誘電体セラミックス成分30〜60重量%と、ガラス成分40〜70重量%とから構成され、前記誘電体セラミックス成分が、モル比による組成式をαCaO−βTiO2−γ(La1-mMem)O3/2−δZrO2(Me:YおよびLa以外の希土類元素の群から選ばれる少なくとも1種)と表したとき、10.5≦α≦36.5、36.5≦β≦58.0、6.5≦γ≦29.5、8.5≦δ≦29.5、0≦m≦1、α+β+γ+δ=100であって、かつ、前記ガラス成分が、各酸化物換算で、Caを5〜30モル%、Siを40〜60モル%、Baを5〜20モル%、Bを10〜20モル%、Alを3〜15モル%の割合で含むことを特徴とするものである。
【0014】
そしてこの組成物を焼成することによって得られる焼結体は、40〜400℃における熱膨張係数が8×10-6/℃以上であり、かつ1MHz〜3GHzにおける比誘電率が14以上、誘電正接が50×10-4以下、−40〜85℃における比誘電率の温度変化率の絶対値が100×10-6/℃以下であることを特徴とする。なお、ガラス成分は、40〜400℃における熱膨張係数が6〜18×10-6/℃であることが上記焼結体特性を得る上で望ましい。
【0015】
また、本発明の多層配線基板は、低誘電率セラミックス層と高誘電率セラミックス層を積層してなるものであって、高誘電率セラミックス層が、前記のセラミック組成物を焼成してなることを特徴とする。なお、前記低誘電率セラミックス層は、40〜400℃における熱膨張係数が8×10-6/℃以上であり、かつ1MHz〜3GHzにおける比誘電率が10未満、誘電正接が50×10-4以下であることを特徴とするものである。
【0016】
そして、前記高誘電率セラミックス層は、一対の電極層間に配設されており、該一対の電極によって所定の静電容量を引き出すように構成されてなることを特徴とするものであり、前記低誘電率セラミック層と、前記高誘電率セラミックス層とは同時焼成してなるものであり、前記多層配線基板における配線回路層は、銅を含有することを特徴とするものである。
【0017】
本発明のセラミック焼結体によれば、CaO−TiO2−(La1-mMem)O3/2(但し、Meは希土類元素を示し、0≦m≦1.0)−ZrO2で表される誘電体セラミックス成分に、酸化カルシウム、酸化ケイ素、酸化バリウム、酸化ホウ素および酸化アルミニウムを含むガラス成分を特定の比率で含有することにより、アルミナより熱膨張係数が高く、高い比誘電率、低い誘電正接、優れた温度特性を有する低温焼成のセラミック焼結体を得ることができる。
【0018】
また、これを多層配線基板の基板材料として用いると、セラミック焼結体が、アルミナより高い熱膨張特性を具備することから、プリント基板などの有機樹脂を含む絶縁基体からなる外部回路基板に実装した状態で、熱サイクルが印加されても、熱膨張差に起因する熱応力の発生を抑制することができる結果、長期にわたり安定した実装が可能となる。しかも、多層配線基板の内部に高誘電率のセラミックス層を具備することから、コンデンサとしての静電容量を引き出すことができるために、コンデンサ素子などの部品の実装が不要となり、配線基板を含めた電子機器の小型化に寄与することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のセラミック組成物は、誘電体セラミックス成分と、ガラス成分とによって構成される。
【0020】
誘電体セラミックス成分としては、これをαCaO−βTiO2−γ(La1-mMem)O3/2−δZrO2(Me:YおよびLa以外の希土類元素)と表したとき、10.5≦α≦36.5、36.5≦β≦58.0、6.5≦γ≦29.5、8.5≦δ≦29.5、0≦m≦1、α+β+γ+δ=100を満足するものである。
【0021】
また、この誘電体セラミックス成分は、ガラス成分との焼結性が良好であり、40〜400℃における熱膨張係数が8×10-6/℃以上、且つ、1MHzにおける比誘電率が20以上、さらには30以上であることが望ましい。
【0022】
この誘電体セラミックス成分における組成を上記の範囲に限定したのは、αが10.5よりも少ないと、セラミック組成物の比誘電率が14より低くなり、36.5よりも多いと、セラミック組成物における比誘電率の温度変化率の絶対値が100×10-6/℃より大きくなるためである。βが36.5よりも少ないと、熱膨張係数が8×10-6/℃より低くなり、58.0よりも多いと、セラミック組成物における比誘電率の温度変化率の絶対値が100×10-6/℃より大きくなる。γが6.5よりも少ないと、セラミック組成物における比誘電率の温度変化率の絶対値が100×10-6/℃より大きくなり、29.5よりも多いと、比誘電率が14より低くなる。δが8.5よりも少ないと、セラミック組成物における比誘電率の温度変化率の絶対値が100×10-6/℃より大きくなり、29.5よりも多いと、熱膨張係数が8×10-6/℃より低くなる。
【0023】
なお、Laは、その一部を希土類元素の群から選ばれる少なくとも1種で置換することによって、焼結性をを向上することもできる。
【0024】
一方、ガラス成分としては、少なくともCa、Si、Ba、B、Alを含有し、これらの酸化物換算比率で、CaOとして5〜30モル%、SiO2として40〜60モル%、BaOとして5〜20モル%、B23として10〜20モル%、Al23として3〜15モル%含むものである。
【0025】
ガラス成分の含有量を上記の範囲に限定したのは、Caが5モル%よりも少ないと、緻密体が得られず、30モル%よりも多いと、誘電正接が50×10-4より高くなるためである。また、Siが40モル%よりも少ないと、誘電正接が50×10-4より高くなり、60モル%よりも多いと、緻密体が得られない。Baが5モル%よりも少ないと、緻密体が得られず、20モル%よりも多いと、同様に緻密体が得られない。Bが10モル%よりも少ないと、緻密体が得られず、20モル%よりも多いと、誘電正接が50×10-4より高くなりかつ耐薬品性が劣化するためである。Alが3モル%よりも少ないと、誘電正接が50×10-4より高くなりかつ耐薬品性が劣化し、15モル%よりも多いと、緻密体が得られない。
【0026】
また、このガラス成分は、それ自体で、40〜400℃における熱膨張係数が6〜18×10-6/℃であることが望ましく、かつめっき工程等における耐薬品性を有することが望ましい。
【0027】
さらに、上記ガラス成分の屈伏点は、400〜800℃、特に500〜750℃であることが望ましく、成形時に添加した有機樹脂などの成形用バインダーを効率的に除去するとともに、絶縁基体と同時に焼成されるメタライズと焼成条件のマッチングを図ることができる。
【0028】
この屈伏点が400℃より低いと、ガラスが低い温度で焼結を開始するため、例えば、Ag、Cuなどの焼結温度が600〜800℃のメタライズとの同時焼成が難しく、また成形体の緻密化が低温で開始するためにバインダーは分解揮発できなくなり、バインダー成分が残留し、誘電損失などの特性に影響を及ぼすおそれがある。また、屈伏点が800℃より高いと、ガラス量を多くしないと焼結しにくくなり、相対的に高価なガラスの使用量が増加するため、コスト削減の妨げとなる。
【0029】
本発明におけるセラミック組成物においては、上記のガラス成分および誘電体セラミックス成分は、ガラス成分:40〜70重量%と、誘電体セラミックス成分:30〜60重量%の割合で調合する。これは、ガラス成分が40重量%よりも少なく、誘電体セラミックス成分が60重量%よりも多いと、銅と同時焼成可能な温度域において良好な緻密体が得られず、ガラス成分が70重量%よりも多く、誘電体セラミックス成分が30重量%よりも少ない場合、焼結体としての比誘電率を高めることが難しくなるためである。
【0030】
また、上記のセラミック組成物には、前記高誘電率セラミックス成分量が上記の範囲から逸脱しない範囲で、比誘電率、誘電正接、比誘電率の温度変化率、熱膨張係数などの制御のために、高誘電率のセラミックス成分の一部を他のセラミックス成分で置換することもできる。
【0031】
用いられる他のセラミックス成分としては、クリストバライト、クォーツ(石英)、トリジマイト、MgO、ペタライト、フォルステライト(2MgO・SiO2)、スピネル(MgO・Al23)、ウォラストナイト(CaO・SiO2)、モンティセライト(CaO・MgO・SiO2)、ネフェリン(Na2O・Al23、SiO2)、リチウムシリケート(Li2O・SiO2)、ジオプサイト(CaO・MgO・2SiO2)、メルビナイト(2CaO・MgO・2SiO2)、アケルマイト(2CaO・MgO・2SiO2)、カーネギアイト(Na2O・Al23・2SiO2)、エンスタタイト(MgO・SiO2)、ホウ酸マグネシウム(2MgO・B23)、セルシアン(BaO・Al23・2SiO2)、B23・2MgO・2SiO2、ガーナイト(ZnO・Al23)、ペタライト(LiAlSi410)などが挙げられる。
【0032】
上記のガラス成分と誘電体セラミックス成分の混合物は、適当な有機樹脂バインダーを添加した後、所望の成形手段、例えば、金型プレス、冷間静水圧プレス、射出成形、押し出し成形、ドクターブレード法、カレンダーロール法、圧延法等により任意の形状に成形する。
【0033】
次に、上記の成形体の焼成にあたっては、まず、成形のために配合したバインダー成分を除去する。バインダーの除去は、配線導体として銅系の金属成分を用いる場合などには、100〜750℃の水蒸気を含有する窒素雰囲気中で行われる。この時、成形体の収縮開始温度は700〜850℃程度であることが望ましく、かかる収縮開始温度がこれより低いとバインダーの除去が困難となるため、成形体中の結晶化ガラスの特性、特に屈伏点を前述したように制御することが必要となる。
【0034】
焼成は、850〜1050℃の非酸化性雰囲気中で行われ、これにより相対密度90%以上まで緻密化される。この時の焼成温度が850℃より低いと緻密化することができず、1050℃を超えるとメタライズ配線層との同時焼成でメタライズ層が溶融してしまう。
【0035】
こうして上記のセラミック組成物を焼成して得られるセラミック焼結体は、上記ガラス成分からなるマトリックス中に、高誘電率のセラミックス成分が分散した組織を有し、マトリックスの組成は、ほとんどガラス成分組成と一致する。また、このガラス成分によるマトリックス中には、ガラス成分から、析出した結晶相が存在してもよい。
【0036】
このようにして作製された本発明のセラミック焼結体は、40〜400℃における熱膨張係数が8×10-6/℃以上であり、かつ1MHz〜3GHzにおける比誘電率が14以上、誘電正接が50×10-4以下、−40〜85℃における比誘電率の温度変化率の絶対値が100×10-6/℃以下であり、しかも、850〜1050℃の焼成温度で焼成可能であるため、Cu等の低抵抗金属との同時焼成が可能である。
【0037】
また、本発明によれば、上記セラミック組成物を多層配線基板の絶縁基板材料として用いる。図1に示すように、セラミック絶縁層1a、1b、1cが多層に積層された絶縁基板1の表面および/また内部に配線回路層2が配設されている多層配線基板において、セラミック絶縁層のうち少なくとも1層1bを上記高誘電率のセラミック組成物を焼成したセラミックスによって形成し、その上下にCuなどの導体から成る電極層3−3を形成し、スルーホール導体4−4などを経由して基板表面のメタライズ配線層2と接続することにより、配線層2−2間で所定の静電容量を取り出すことができる。
【0038】
この時、高誘電率セラミック焼結体からなる絶縁層は、比誘電率が10未満の低誘電率セラミック焼結体から成る絶縁層間に積層されていることが望ましい。
【0039】
この低誘電率セラミック焼結体は前記のセラミック焼結体から誘電体セラミックス成分を、前記した他のセラミックス成分に置換することにより容易に形成できる。
【0040】
このような高誘電率セラミック層を具備する多層配線基板は、前述したガラス粉末、およびフィラー粉末からなる低誘電率のセラミックス組成物に、適当な有機バインダー、溶剤、可塑剤を添加混合することによりスラリーを作製し、かかるスラリーを周知のドクターブレード等の塗工方式によるグリーンシート成形法により、グリーンシート状に成形する。そして、メタライズ配線層として、適当な金属粉末に有機バインダー、溶剤、可塑剤を添加混合して得た金属ペーストを前記グリーンシートに周知のスクリーン印刷法により、所定のパターンに印刷塗布する。また、場合によっては、前記グリーンシートに適当な打ち抜き加工を行いスルーホールを形成し、このホール内にもメタライズペーストを充填する。
【0041】
一方、上記と同様の方法により成形、打ち抜き、電極層の印刷を行った高誘電率セラミックスグリーンシートを作製する。
【0042】
そして、上記の低誘電率セラミックグリーンシートと高誘電率セラミックグリーンシートとを積層し、グリーンシート積層体とメタライズを同時焼成することにより、コンデンサを内蔵する多層配線基板を得ることができる。
【0043】
本発明によって、高誘電率セラミック層により構成されるコンデンサを内蔵した多層配線基板は、有機樹脂を含有するプリント基板などにボール状半田端子や半田を介して実装した場合においても、温度サイクルに対する長期信頼性の実装が可能である。しかも、コンデンサを内蔵することにより、該基板を実装するプリント基板などの外部回路基板の小型化を図ることができる。
【0044】
また、本発明の多層配線基板は、ICやチップコンデンサなどの実装部品を搭載するための基板、半導体パッケージとして利用するだけでなく、LCフィルタなどの積層電子部品に用いることも可能である。
【0045】
【実施例】
実施例1
まず、CaO−TiO2−(La1-mMem)O3/2(但し、Meは希土類元素を示し、0≦m≦1.0)−ZrO2で、表1の組成からなる誘電体セラミックス成分と、CaO16.1モル%、SiO253.5モル%、BaO11.1モル%、B2314.3モル%、Al235.0モル%の組成からなるガラス成分を添加し、有機バインダー、溶剤、可塑剤を加えて十分混合させてスラリーを作製し、ドクターブレード法により厚み250μmのグリーンシートを作製した。得られたグリーンシートより、60mm×60mmのサンプルを作製し、水蒸気を含有する窒素雰囲気中750℃にて脱バインダー後、窒素雰囲気中930℃にて焼成を行った。
【0046】
得られた焼結体に対して、密度、気孔率をアルキメデス法によって測定し、最も密度の高かった条件の焼結体について、40〜400℃における熱膨張係数(α)、3GHzにおける比誘電率(εr)および誘電正接(tanδ)、1MHzにおける比誘電率の温度変化率(τε)をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0047】
実施例2
まず、CaO23.3モル%、TiO244.3モル%、(La0.6Nd0.4)O3/218.6モル%、ZrO213.8モル%からなる高誘電率セラミックス成分に対して、表2に示すようなガラス組成からなるガラス成分を添加し、有機バインダー、溶剤、可塑材を加えて十分混合させてスラリーを作製し、ドクターブレード法により厚み250μmのグリーンシートを作製した。得られたグリーンシートより、60mm×60mmのサンプルを作製し、水蒸気を含有する窒素雰囲気中750℃にて脱バインダー後、窒素雰囲気中920℃にて焼成を行った。
【0048】
そして、得られた焼結体に対して、実施例1と全く同様にして評価を行った。
【0049】
【表1】
Figure 0004761647
【0050】
【表2】
Figure 0004761647
【0051】
試料No.1〜12および23〜27は本発明の請求範囲内であり、設定した焼成温度にて緻密体が得られ、比誘電率、誘電正接、比誘電率の温度変化率の絶対値、熱膨張係数が所望する範囲の値であることがわかる。
【0052】
試料No.13は添加する誘電体セラミックス成分量が30重量%より少ないため、表1に示すように比誘電率が14より低くなっている。試料No.14は添加する誘電体セラミックス成分量が60重量%より多いため、設定した焼成温度にて緻密体が得られなかった。
【0053】
試料No.15はCaO量が少ない誘電体セラミックス成分となっており、比誘電率が14より低くなっている。試料No.16はCaOが多い誘電体セラミックス成分となっており、比誘電率の温度変化率の絶対値が100×10-6/℃より大きく、熱膨張係数が8×10-6/℃より低くなっている。
【0054】
試料No.17はTiO2成分が少ない誘電体セラミックス成分となっており、誘電正接が50×10-4より高く、比誘電率の温度変化率の絶対値が100×10-6/℃より大きく、熱膨張係数が8×10-6/℃より低くなっている。試料No.18はTiO2が多い誘電体セラミックス成分となっており、比誘電率の温度変化率の絶対値が100×10-6/℃より大きくなっている。
【0055】
試料No.19は希土類系酸化物が少ない誘電体セラミックス成分となっており、比誘電率の温度変化率の絶対値が100×10-6/℃より大きく、熱膨張係数が8×10-6/℃より低くなっている。試料No.20は希土類系酸化物が多い誘電体セラミックス成分となっており、比誘電率が14より低くなっている。
【0056】
試料No.21はZrO2が少ない誘電体セラミックス成分となっており、比誘電率が14より低く、誘電正接が50×10-4より高く、比誘電率の温度変化率の絶対値が100×10-6/℃より大きくなっている。試料No.22はZrO2が多い誘電体セラミックス成分となっており、誘電正接が50×10-4より高く、比誘電率の温度変化率の絶対値が100×10-6/℃より大きく、熱膨張係数が8×10-6/℃より低くなっている。
【0057】
次に、試料No.28はガラス成分におけるCaO成分が5モル%より少なくなっており、設定した焼成温度にて緻密体が得られなかった。試料No.29はガラス成分におけるSiO2成分が40モル%より少なくなっており、誘電正接が50×10-4より高く、比誘電率の温度変化率の絶対値が100×10-6/℃より大きくなっている。試料No.30はガラス成分におけるBaO成分が5モル%より少なくなっており、設定した焼成温度にて緻密体が得られなかった。試料No.31はガラス成分におけるB23が20モル%より多くなっており、誘電正接が50×10-4より高くなっている。試料No.32はガラス成分におけるAl23が15モル%より多くなっており、設定した焼成温度にて緻密体が得られなかった。
【0058】
その他にCaO成分が30モル%より多い組成、SiO2成分が60モル%より多い組成、BaO成分が20モル%より多い組成、B23成分が10モル%より少ない組成、Al23成分が3モル%より少ない組成のガラスも検討したが、それらの組成では均一で良質なガラスを得ることが出来なかったので評価できていない。
【0059】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のセラミック組成物は、低温で焼成することができるとともに、焼成後において、40〜400℃における熱膨張係数が8×10-6/℃以上であり、かつ1MHz〜3GHzにおける比誘電率が14以上、誘電正接が50×10-4以下、−40〜85℃における比誘電率の温度変化率の絶対値が100×10-6/℃以下の特性を発揮することができ、アルミナより高い熱膨張係数を有するセラミック絶縁層よりなる多層配線基板の内層として用いることにより、コンデンサを内蔵した多層配線基板を提供できるようになる。このコンデンサ内蔵セラミック多層配線基板は、小型化に有効なボールグリッドアレイ実装方法の長期信頼性が高く、従来、外部電気回路基板に実装されていたコンデンサが不要となるため、外部回路基板の小型化、および実装コストの削減に有効であり、急速に普及しつつある携帯用電子機器の小型化に大いに貢献できるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板における一実施例を説明するための概略断面図である。
【符号の説明】
1 絶縁基板
1a、1b、1c 絶縁層
2 配線回路層
3 電極層
4 スルーホール導体

Claims (8)

  1. 誘電体セラミックス成分30〜60重量%と、ガラス成分40〜70重量%とから構成され、前記誘電体セラミックス成分のモル比による組成が
    αCaO−βTiO2−γ(La1-mMem)O3/2−δZrO2
    式中、10.5≦α≦36.5、
    36.5≦β≦58.0、
    6.5≦γ≦29.5、
    8.5≦δ≦29.5
    0≦m≦1
    α+β+γ+δ=100
    Me:YおよびLa以外の希土類元素の群から選ばれる少なくとも1種
    であって、かつ、前記ガラス成分が、各酸化物換算で、Caを5〜30モル%、Siを40〜60モル%、Baを5〜20モル%、Bを10〜20モル%、Alを3〜15モル%の割合で含むことを特徴とするセラミック組成物。
  2. 前記ガラス成分の40〜400℃における熱膨張係数が6〜18×10-6/℃であることを特徴とする請求項1記載のセラミック組成物。
  3. 焼成後の40〜400℃における熱膨張係数が8×10-6/℃以上であり、かつ1MHz〜3GHzにおける比誘電率が14以上、誘電正接が50×10-4以下、−40〜85℃における比誘電率の温度変化率の絶対値が100×10-6/℃以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のセラミック組成物。
  4. 低誘電率セラミックス層と高誘電率セラミックス層を積層してなる多層配線基板において、前記高誘電率セラミックス層が、請求項1乃至請求項3のいずれか記載のセラミック組成物を焼成してなることを特徴とする多層配線基板。
  5. 前記低誘電率セラミックス層は、40〜400℃における熱膨張係数が8×10-6/℃以上であり、かつ1MHz〜3GHzにおける比誘電率が10未満、誘電正接が50×10-4以下であることを特徴とする請求項4記載の多層配線基板。
  6. 前記高誘電率セラミックス層が、一対の電極層間に配設されており、該一対の電極によって所定の静電容量が引き出されることを特徴とする請求項4または請求項5記載の多層配線基板。
  7. 前記低誘電率セラミック層と、前記高誘電率セラミックス層とが同時焼成してなることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか記載の多層配線基板。
  8. 前記多層配線基板の配線回路層が、銅を含有することを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか記載の多層配線基板。
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