JP4128394B2 - ポリシラザン含有コーティング膜の親水性促進剤及び親水性維持剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリシラザン含有コーティング膜の親水性促進剤及び親水性維持剤並びにそれらの原液、更にはこれら親水性促進剤又は親水性維持剤を用いてポリシラザン含有コーティング膜の親水性を促進又は維持する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、物品の表面の汚染を防止するために各種の対策が講ぜられている。例えば、自動車車体は、塵埃や排気ガスなどの燃焼生成物等により汚れやすく、このため自動車車体にワックスを塗布し、車体への汚れの付着を防止することが広く行われている。これは、車体表面にワックス膜を形成することにより撥水性とし、これにより車体表面に水が接したとき水が水滴となって車体表面を転がり落ち、水滴中の汚れ成分が車体表面に付着、残留しないようにするとともに、車体表面に汚れ成分が付着した場合にも水により洗浄することによって付着した汚れを除去し易くしているものである。
【0003】
また、浴槽、台所のシンク、洗面台などの水まわり製品は、使用時、水の他に油、油性成分を含む石鹸液、洗顔剤、染髪剤等種々のものと接する。水まわり製品の汚れは、前記油性物質や石鹸のカルシウム塩である石鹸カスなどが埃などと共に表面に付着することによると考えられている。これら製品の汚れを防止するため、従来、製品表面に形成されているガラス質をなす釉薬面を例えばワックス、フッ素含有材料などにより撥水処理加工し、汚れが釉薬面に残留しないようにすることもなされている。住宅内外装、トイレの便器、看板、標識、墓石などの石材、金属等においても、撥水処理を施すことにより汚れの付着を防止することが試みられている。
【0004】
一方、界面活性剤を基材表面に塗布することで表面を親水性に改質することは古くから知られており、界面活性剤にポリアクリル酸やポリビニルアルコールなどの水溶性有機高分子を添加・配合することで、親水性の持続性を上げることが特開昭52−101680号公報等に記載されている。さらに、疎水性ポリマーよりなる多孔質膜の表面および内部にポリビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体の被覆を介して、セルロースやグリコール類およびグリセリンなどの親水性物質を被覆固定化する方法が特公平5−67330号公報等で知られている。
【0005】
【発明が解決しようとしている課題】
しかしながら、従来のワックスなどによる撥水処理では、撥水効果が十分であるとまではいえないか、あるいは当初十分な撥水処理がなされたとしても、その効果は短期間でなくなり、長期かつ十分な防汚防止効果が発揮されるとまではいえないものであった。他方、親水性コーティングに関しても、従来の親水性コーティングは一時的もしくは短期間親水性を付与するのみであり、親水効果の十分な持続は期待し難いばかりでなく、水膜が均一となり難く、透視像や反射像が歪み、また前記製品などに対しての適用性には問題があった。さらに、入歯の防汚や臭いの発生の防止に関しても、フッ素処理など種々検討されているが、一度の処理により、長期間に亘り充分な効果が得られるとまでいえるものはないのが現状である。
【0006】
このような問題を解決すべく検討した結果、本発明者は、先に常温によりシリカ質の被膜を形成することができる、無機ポリシラザン、希釈溶剤及び触媒を含有する防汚コーティング液を発明し、出願した(特願2001−131491号)。この防汚コーティング液は、基材に塗布された後常温放置することにより、無機ポリシラザンが触媒の働きによりシリカに転化され、基材表面に基材との密着性に優れ、強固で緻密な被膜が形成されるものである。この無機ポリシラザンの転化により形成されたシリカ被膜は、基材に長期にわたり持続する親水効果並びに防汚効果を付与することができる。このため、本発明者が提案した防汚コーティング液は、自動車、電車、航空機などの車体や自動車のホイール、住宅内外装、トイレ、台所、洗面所、浴槽などの水を使う箇所で用いられる水まわり製品、看板、標識、プラスチック製品、ガラス製品、石材、入歯など種々の製品に対し、優れた防汚機能を有する親水性被膜を形成することができ、これら物品表面に長期的且つ好適な防汚特性を簡便に付与することができるものである。
【0007】
しかし、前記防汚コーティング液が前記の如き親水性で緻密なシリカ質被膜に完全転化するには、通常、塗布後常温放置条件で1ヶ月程度を要する。このため、例えば、自動車の車体に前記防汚コーティング液を適用する場合を考えると、新車の場合であれば、工場で防汚コーティング液が塗布されて最終購入者に納品された後、防汚コーティング液が十分にシリカ質被膜に転化しない間に使用されることが考えられ、これにより汚れが付着してしまうとか、すでに所有している車に防汚被膜を形成すべく防汚コーティング液を塗布した後、それほど時間がたたないうちに当該車を使用し、これにより汚れが付着することが想定される。すなわち、物品の使用形態によっては、前記防汚コーティング液は、使用前に本来の親水性で緻密な被膜を付与することができない場合があり、このため防汚効果を発揮できない場合があった。
【0008】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、前記防汚コーティング液を含めポリシラザンを含有するコーティング液を基体に塗布した後、形成された塗膜中のポリシラザンをシリカに転化させ、これによって基体表面に親水性で防汚性に優れた緻密なシリカ質被膜を形成する際、ポリシラザン含有コーティング液を塗布し、乾燥した後に形成される塗膜に、特定の界面活性剤を含有する水溶液を塗布すれば該被膜の親水性が極めて大きく促進され、塗布後10分もすれば、被膜が十分な親水性を示すようになり、これにより汚れの付着が防止できることを見出した。
【0009】
また、前記ポリシラザン含有コーティング膜は、前記のとおり、通常、塗布後約1ヶ月、本発明の親水性促進液を塗布した場合にも約1ヶ月かけてシリカに完全転化するが、その間において同被膜上に汚れが生じたり、またコーティング被膜がシリカに転化した後においても、長期にわたって使用している間に汚れが付着する場合もある。このような汚れは、被膜の親水性の低下につながり、かつ同コーティング液の防汚効果を劣化させてしまう。このような汚れに対し、親水性促進剤を水で更に希釈した液を用いて拭きとってやることによって、防汚コーティング膜の親水性を劣化させることなく汚れを落とすことができることをも見出した。本発明の親水性維持剤はこれらの知見により成されたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下のポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持・促進剤原液、それを水で希釈したポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持又は促進剤及びこれら親水性維持又は促進剤を用いて、ポリシラザン含有コーティング膜の親水性を促進又は維持する方法に関する。
【0011】
〔1〕アニオン性界面活性剤5〜25重量%、両性界面活性剤0.5〜20重量%、非イオン性界面活性剤4〜6重量%、及び必要に応じ防腐剤を含有し、pHが4.5〜7.0の水溶液であるポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持・促進剤原液。
【0012】
〔2〕上記〔1〕の原液において、アニオン性界面活性剤が、sec−アルカンスルホン酸塩、アルキル(アルキル基の炭素数8〜18)硫酸塩、ポリオキシエチレン(平均付加モル数1〜4)アルキル(アルキル基の炭素数8〜18)硫酸塩、α−オレフィン(アルキル基の炭素数10〜18)スルホン酸塩、及びアルキル(アルキル基の炭素数8〜18)ベンゼンスルホン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも一種であり、両面界面活性剤が、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキル(アルキル基の炭素数8〜18)ジメチル酢酸ベタイン、及びアルキル(アルキル基の炭素数8〜18)ジメチルアミンオキシドからなる群より選ばれた少なくとも一種であり、非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン(平均付加モル数3〜12)ウンデシルアルコール、ポリオキシエチレン(平均付加モル数3〜12)アルキル(アルキル基の炭素数8〜18)エーテル、及びポリオキシエチレン(平均付加モル数3〜12)ノニルフェニルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも一種であり、防腐剤が、安息香酸塩、イソチアゾリン系防腐剤、チアゾリン系防腐剤、及びトリアジン系防腐剤から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とするポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持・促進剤原液。
【0013】
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕に記載のポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持・促進剤原液において、液のpHが、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び必要に応じ防腐剤を水に溶解した後、有機酸によりpHが4.5〜7.0とされたものであることを特徴とするポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持・促進剤原液。
【0014】
〔4〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の原液を水で希釈することによって得られるポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持・促進剤。
【0015】
〔5〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の原液を水で3〜15倍に希釈することによって得られるポリシラザン含有コーティング膜用親水性促進剤。
【0016】
〔6〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の原液を水で30〜70倍に希釈することによって得られるポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持剤。
【0017】
〔7〕アニオン性界面活性剤5〜25重量%、両性界面活性剤0.5〜20重量%、非イオン性界面活性剤4〜6重量%、及び必要に応じ防腐剤を含有し、pHが4.5〜7.0であるポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持・促進剤原液を調製し、これを水で希釈した後、ポリシラザン含有コーティング膜上に塗布することにより、該ポリシラザン含有コーティング膜の親水性を維持又は促進させる方法。
【0018】
また、上記〔1〕〜〔7〕に記載のポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持・促進剤原液、ポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持・促進剤、ポリシラザン含有コーティング膜用親水性促進剤、ポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持剤、及びポリシラザン含有コーティング膜の親水性を維持又は促進する方法において、各々好ましい態様として次の態様をも含むものである。
【0019】
▲1▼ 親水性促進剤又は親水性維持剤のpHの調整が有機酸により行われること。
▲2▼ 原液のアニオン性界面活性剤の含有量が8〜10重量%であること。
▲3▼ 原液の両性界面活性剤の含有量が11〜13重量%であること。
▲4▼ 原液の非イオン性界面活性剤の含有量が4〜6重量%であること。
▲5▼ 原液中の防腐剤含有量が0.1〜15重量%であること。
▲6▼ 防腐剤が安息香酸塩であること。
【0020】
また、本発明は、更に好ましい態様として、次の態様をも含む。
▲8▼ pHを調整する有機酸がクエン酸であること。
▲9▼ 防腐剤の安息香酸塩が安息香酸ナトリウムであること。
【0021】
以下、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の親水性促進剤、親水性維持剤及びそれらの原液を説明する前に、親水性促進剤又は親水性維持剤が適用されるポリシラザン含有コーティング膜を形成するために用いられるポリシラザン含有コーティング液、及びこれを用いての防汚コーティング膜の形成方法からまず説明を行う。
【0022】
本発明の親水性促進剤及び親水性維持剤が適用されるポリシラザン含有コーティング膜を形成するために用いられるポリシラザン含有コーティング液としては、ポリシラザン及び、必要に応じ該ポリシラザンをシリカに転化することのできる触媒を含有するポリシラザン含有防汚コーティング液であればどのようなものでもよい。このようなポリシラザン含有コーティング液としては、本発明者がすでに提案した前記特願2001−131491号に記載のポリシラザン含有防汚コーティング液が好ましいものとして挙げられる。この特願2001−131491号に記載の防汚コーティング液は、無機ポリシラザン、希釈溶剤及び触媒を含有するものであり、無機ポリシラザンとしては、下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有し、溶媒に可溶なものが用いられる。防汚コーティング液に用いられる無機ポリシラザンは、通常600〜3000の範囲の数平均分子量を有するものが好ましく、また、コーティング液全重量に対して0.5〜10重量%で用いることが好ましい。
【0023】
【化1】
【0024】
上記一般式(I)で示される繰り返し単位を有し、溶媒に可溶な無機ポリシラザンは、従来知られた方法を含め任意の方法によって製造されたものであってよい。上記一般式で示される繰り返し単位を有し、溶媒に可溶な無機ポリシラザンを製造する方法としては、例えば、一般式:SiH2X2(式中Xはハロゲン原子であり、好ましくはClである。)で示されるジハロシランと塩基とを溶媒中で反応させてジハロシランのアダクツを形成させた後、該ジハロシランのアダクツとアンモニアとを反応させることにより合成する方法が挙げられる。
【0025】
この反応においてアダクツを形成するために用いられる塩基は、ハロシランとアダクツを形成する反応以外の反応をしない塩基であればよく、例えば、ルイス塩基、3級アミン類(トリアルキルアミン)、ピリジン、ピコリン及びこれらの誘導体、立体障害性の基を有する2級アミン類、フォスフィン、アルシン及びこれらの誘導体等(例えば、トリメチルフォスフィン、ジメチルエチルフォスフィン、メチルジエチルフォスフィン、トリメチルアルシン、トリメチルスチビン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、チエフェン、フラン、ジオキサン、セレノフェン等)が好ましいものとして挙げられる。塩基の使用量は、特に厳密である必要はなく、シランに対して化学量論的量、即ちアミン:シラン=2:1より過剰に存在すれば足りる。
【0026】
また、アダクツと反応されるアンモニアの量はシランに対して過剰量であればよい。アンモニアとの反応は、非反応性溶液中、−78℃〜100℃、好ましくは−40℃〜80℃で行われる。以下に、この方法による無機ポリシラザンの製造例を参考のため示す。
【0027】
参考例(無機ポリシラザンの製造)
内容積300mlの四つ口フラスコにガス吹き込み管、メカニカルスターラー、ジュワーコンデンサーを装着した。反応器内部を脱酸素した乾燥窒素で置換した後、四つ口フラスコに脱気した乾燥ピリジン150mlを入れ、これを氷冷した。次に、ジクロロシラン16.1gを50分間かけて加えたところ、白色固体状のアダクツ(SiH2Cl2・2Py)が生成した。反応混合物を氷冷し、激しく攪拌しながら、ソーダライム管及び活性炭管を通して精製したアンモニア10.9gを窒素ガスと混合して、1時間かけて吹き込んだ。反応終了後、固体生成物を遠心分離した後、更に濾過して除去した。濾液から溶媒を減圧除去(50℃、5mmHg、2時間)することにより、ガラス状固体ポリシラザン5.52gを得た。蒸気圧降下法による分子量は2000であった。収率は77%であった。
【0028】
他方、防汚コーティング液に用いられる触媒は、無機ポリシラザンを常温でシリカに転化する機能を有するものであればどのようなものであってもよい。具体的には、1−メチルピペラジン、1−メチルピペリジン、4,4’−トリメチレンジピペリジン、4,4’−トリメチレンビス(1−メチルピペリジン)、ジアザビシクロ−[2,2,2]オクタン、シス−2,6−ジメチルピペラジン、4−(4−メチルピペリジン)ピリジン、ピリジン、ジピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ピペリジン、ルチジン、ピリミジン、ピリダジン、4,4’−トリメチレンジピリジン、2−(メチルアミノ)ピリジン、ピラジン、キノリン、キノクサリン、トリアジン、ピロール、3−ピロリン、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、1−メチルピロリジンなどのN−ヘテロ環状化合物;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ジヘプチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミンなどのアミン類;更にDBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]5−ノネン)、1,5,9−トリアザシクロドデカン、1,4,7−トリアザシクロノナンなどが好ましいものであるが、これらの中でも4,4’−トリメチレンビス(1−メチルピペリジン)が更に好ましいものである。これら触媒は、無機ポリシラザン純分に対して0.5〜10重量%配合される。
【0029】
更に、防汚コーティング液の希釈溶剤としては、無機ポリシラザン及び触媒を溶解することができるものであればいずれのものであってもよい。貯蔵安定性を考えた場合には、無機ポリシラザン及び触媒に対して持続的な溶解力を有するものが好ましく、また、長期間の使用においても、シラン、水素、アンモニアなどのガスの発生がなく安定性のある溶媒であることが好ましい。このような希釈溶剤としては、ミネラルスピリットなどの石油溶剤、パラフィン系溶剤、芳香族系溶剤、環式脂肪族系溶剤などが挙げられる。具体的には、パラフィン系溶剤あるいは溶剤成分としては、C8のオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、C9のノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、C10のデカン、C11のn−ウンデカンなどが、芳香族系溶剤あるいは溶剤成分としては、例えば、C8のキシレン、C9のクメン、メシチレン、C10のナフタレン、テトラヒドロナフタレン、ブチルベンゼン、p−シメン、ジエチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、C11のペンチルベンゼンなどが、環式脂肪族系溶剤あるいは溶剤成分としては、例えば、C7のメチルシクロヘキサン、C8のエチルシクロヘキサン、C10のp−メンタン、α−ピネン、ジペンテン、デカリンなどが挙げられる。
【0030】
防汚コーティング液としては、適用される製品用途により、コーティング液を塗布した際の外観性、乾燥性、臭い、安全性、基体への影響防止性、コーティング液の保存安定性など要求される特性が異なったものが必要とされる。このため、使用に際しては、無機ポリシラザン及び触媒の種類及び量はもちろんであるが、溶剤の種類、配合割合を適宜変更し、各用途に最も適切なコーティング液とすることが好ましい。
【0031】
例えば、濃色で塗装された自動車、研磨した御影石、鏡面仕上げの金属やメッキ基板、透明な樹脂、ガラスなど汚れが目立ちやすく外観が重視される基体に対しては、溶剤としてミネラルスピリットなど重い溶剤が適する。ミネラルターペンである、モービル石油のペガソールAN45、ペガソール3040も好ましく使用することができる溶剤である。ミネラルスピリットを溶剤として用いることにより、斑、干渉色、白ぼけ、ざらつきなどが目立ちやすい基体に対しても美しく施工することができる。しかし、ミネラルスピリットは上記のような利点があるものの、溶解力の点では比較的弱いので、溶解力を付加するためには、ミネラルスピリットの他に例えばエッソ石油のソルベッソ100、ソルベッソ150、モービル石油のペガソールR−100、ペガソールR−150などの芳香族系混合溶媒を配合するとよい。さらに、芳香族を含まないパラフィン系溶媒も溶剤として使用できる。具体的には、例えば東燃化学の低臭溶剤であるエクソールDSP100/140、エクソールD30、エクソールD40、などを挙げることができる。
【0032】
また、トイレ、台所、洗面所、浴室などの水まわり製品、入歯などでは、臭いがしないことも重要である。このような無臭性が要求される製品においては、溶剤の一部に臭いが少ないメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどを加えることによって、臭いが少ないコーティング液を提供することができる。防汚コーティング液は、新しく製品を製造する際に適用してもよいし、使用中の製品に塗布、適用してもよい。
【0033】
無機ポリシラザンを含有する防汚コーティング液は、自動車車体を始めとし、電車車体、航空機機体、自動車ホイール、住宅内外装、トイレ、台所、洗面所、浴槽などの水を使う箇所で用いる水まわり製品、便器、看板、標識、プラスチック製品、ガラス製品、入歯、墓石などの石材、金属などの表面に塗布され、常温で乾燥される。塗布法としては、布拭き法、スポンジ拭き法、スプレーコート、フローコート、ローラーコート、ディップコート等、任意の方法でよい。塗布量は、乾燥後の膜厚で0.1〜2ミクロン程度の被膜が形成されるような量とされれば十分である。塗布後、無機ポリシラザンが触媒の作用により緻密なシリカ質被膜に転化されるが、本発明の親水性促進剤による処理が行われない場合、製品表面に親水性の被膜が形成されるには1〜2週間程度かかり、さらに無機ポリシラザンがシリカへと完全転化するには、通常1ヶ月程度の期間が必要とされる。
【0034】
自動車車体用及び住宅内外装、浴槽・台所の水まわり製品用の防汚コーティング液を例に挙げて、防汚コーティング液の組成例を示す。
(自動車車体用組成例)
無機ポリシラザン : 0.3〜2重量%
DMPP : 0.01〜0.1重量%
キシレン : 0.5〜10重量%
ぺガソールAN45: 残量
なお、DMPPは4,4’−トリメチレンビス(1−メチルピペリジン)である。
【0035】
(住宅内外装、浴槽・台所の水まわり製品用組成例)
無機ポリシラザン : 0.3〜2重量%
DMPP : 0.01〜0.2重量%
キシレン : 1〜10重量%
ぺガソールAN45 : 5〜88重量%
エチルシクロヘキサン: 5〜88重量%
メチルシクロヘキサン: 5〜88重量%
【0036】
なお、無機ポリシラザンと触媒を含む防汚コーティング液の詳細については、特願2001−131491号及びこの特願2001−131491号を優先権主張の基礎出願として平成14年4月24日に出願されたPCT/JP02/04069を参照されたい。
【0037】
上記するように、ポリシラザン、例えば無機ポリシラザン及びシリカへの転化触媒を含む防汚コーティング液を塗布した後、常温放置により該塗膜が親水性とされるには長期間が要される。本発明においては、上記〔4〕又は〔5〕の親水性維持・促進剤又は親水性促進剤あるいは必要であれば上記〔1〕〜〔3〕の原液を用いて処理することにより、短時間の内に塗膜の親水化を行うことができる。
【0038】
次に本発明の親水性促進剤及び親水性維持剤について詳細に説明する。本発明の親水性促進剤あるいは親水性維持剤には、界面活性剤として、前記したとおりアニオン性界面活性剤(A)、両性界面活性剤(B)、及び非イオン性界面活性剤(C)が用いられるとともに、必要に応じ防腐剤(D)が含有される。これら界面活性剤の(A)、(B)、(C)成分は重量比で5〜25:0.5〜20:4〜6とされることが好ましく、また防腐剤を用いる場合は、(A)、(B)、(C)、(D)成分は重量比で5〜25:0.5〜20:4〜6:0.1〜15とされることが好ましい。界面活性剤成分が前記の割合の範囲内であり、かつ適宜の濃度を有すれば良好な親水性促進効果、親水性促進効果を呈する。さらに、液のpHは4.5〜7.0が好ましく、pH6前後がより好ましい。
【0039】
これら成分(A)〜(D)の親水性促進剤又は親水性維持剤中の含有量は、適宜の量、すなわち、ポリシラザン含有コーティング塗膜の親水性促進効果、親水性維持効果が発揮できる範囲の量とすればよいが、通常、アニオン性界面活性剤を5〜25重量%、両性界面活性剤を0.5〜20重量%、非イオン性界面活性剤を4〜6重量%、及び必要に応じ防腐剤を含有し、pHが4.5〜7.0の水溶液であるポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持・促進剤原液を作成し、これを水で希釈することにより適宜の濃度の親水性促進剤又は維持剤を調製するのが便利である。原液の界面活性剤の合計界面活性剤濃度は、合計量で最小9.5重量%となるが、これより濃度が低い場合には原液として作成する意味があまりない。また界面活性剤の濃度があまりに高くなると、粘度が高くなりすぎ、使用する界面活性剤の種類によってはゲル状になることがある。したがって、原液の各界面活性剤の合計濃度は前記各界面活性剤の最大濃度範囲内でこのようなゲル状が起こらない範囲の濃度とされることが好ましい。ゲル状のものは希釈時の取扱いが不便であり好ましくないからである。また界面活性剤の使用量は界面活性剤の析出、分離などが起こらない範囲とされることが好ましい。
【0040】
上記原液を用いて親水性促進剤を調製する場合、前記原液を3〜15倍に希釈することが好ましい。また、親水性促進剤中の界面活性剤の合計濃度は、約0.6〜17重量%が好ましい。この範囲より界面活性剤の濃度が低いと親水性促進効果が通常期待できず、また、これより濃度が高い場合、不経済であると共に粘度が高くなりすぎ、場合によってはゲル状となることがある。このような液は取扱いが不便なばかりでなく、ゲル状のものは親水性促進効果が不均一になり好ましくない。また、冬季など低温時に界面活性剤の析出、分離が起こる可能性がある。なお、経済的な問題を考えず、ゲル状でなく、成分の析出などが起こっていないような場合であれば、これ以上の濃度の親水性促進剤を用いてもよいことは勿論である。
【0041】
また親水性維持剤として用いる場合には、界面活性剤濃度は、ポリシラザン含有コーティング被膜あるいはシリカ質被膜上に付着した汚れを除去でき、これら膜の親水性を維持できる濃度であればよく、例えば前記原液を水で30〜70倍に希釈することにより適宜の濃度とされたものが好ましいものとして挙げられる。
【0042】
なお、親水性促進剤及び親水性維持剤の製造方法を本発明の原液を水で希釈する方法を例に挙げて具体的に説明したが、本発明においては、各界面活性剤成分を始めとする親水性促進剤及び親水性維持剤を構成する各成分を直接必要な濃度で水に溶解し、液のpHを4.5〜7.0に調整したものであってもよく、また他の手段で製造されたものであってもよい。いずれの方法で作製されたものであっても請求項4〜6の各成分の含有量及び液のpHを満たすものは請求項4〜6の親水性維持・促進剤に包含されるものである。
【0043】
上記の成分(A)〜(C)のアニオン性界面活性剤、両面界面活性剤、非イオン性界面活性剤は、各々従来知られた任意のものであってよいが、成分(A)のアニオン性界面活性剤としては、sec−アルカンスルホン酸塩、アルキル(アルキル基の炭素数8〜18)硫酸塩、ポリオキシエチレン(平均付加モル数1〜4)アルキル(アルキル基の炭素数8〜18)硫酸塩、α−オレフィン(アルキル基の炭素数10〜18)スルホン酸塩、及び、アルキル(アルキル基の炭素数8〜18)ベンゼンスルホン酸塩が好ましい。これらの塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩又は有機アミン塩、例えば炭素数1〜5のアルカノールアミン塩であり、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0044】
また、成分(B)の両性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキル(アルキル基の炭素数8〜18)ジメチル酢酸ベタイン、及び、アルキル(アルキル基の炭素数8〜18)ジメチルアミンオキシドが好ましいものである。
【0045】
さらに、成分(C)の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(平均付加モル数3〜12)ウンデシルアルコール、ポリオキシエチレン(平均付加モル数3〜12)アルキル(アルキル基の炭素数8〜18)エーテル、及び、ポリオキシエチレン(平均付加モル数3〜12)ノニルフェニルエーテルが好ましいものであるが、ポリオキシエチレン(平均付加モル数3〜12)ウンデシルアルコールについては、ポリオキシエチレンの平均付加モル数が8のものがより好ましい。
【0046】
また、成分(A)〜(C)の界面活性剤は、上記したとおり(A):(B):(C)が重量比で5〜25:0.5〜20:4〜6であるのが好ましいが、8〜10:11〜13:4〜6であるのがより好ましく、約9:12:5であるのが更に好ましい。界面活性剤の成分(A)のアニオン性界面活性剤と成分(B)の両性界面活性剤の割合が前記範囲から外れると、タンパク質変性作用が大きくなり手荒れが起こり易くなる。両面活性剤が少ないと手荒ればかりでなく、界面活性剤の塗膜への付着が悪くなる。非イオン性界面活性剤が少ないと油分洗浄力が低下し、多いとゆすぎ性が悪くなり、表面に界面活性剤がいつまでも残り易くなる。
【0047】
成分(D)の防腐剤は、必要に応じ用いればよい。すなわち、例えば、原液などを調製し、直ちに使用するなど、液の腐敗が起こる心配がない場合には、原液などに防腐剤を添加する必要がないからである。防腐剤を使用する場合の防腐剤の添加量を原液について述べると、0.1〜15重量%が好ましい。本発明で用いられる防腐剤としては、例えば安息香酸塩、イソチアゾリン系防腐剤、チアゾリン系防腐剤、トリアジン系防腐剤等を挙げることができる。これらの中では安息香酸塩が好ましい。安息香酸塩は水溶性であればいずれの塩であってもよいが、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。安息香酸塩の量が少ないと液の腐敗が進行し易く、多いと経済的理由から好ましくない。
【0048】
本発明の親水性促進剤、親水性維持剤、親水性維持・促進剤及びそれらの原液は水溶液であり、したがって溶媒として水が用いられる。また、原液を希釈するためにも水が用いられる。これらの水は、水であればいずれのものでもよいが、脱イオン水が好ましいものである。
【0049】
本発明の親水性促進剤、親水性維持・促進剤及びその原液には、さらに、氷結防止のため、プロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を添加してもよい。
【0050】
本発明の親水性促進剤、親水性維持剤、親水性維持・促進剤及びそれらの原液は、成分(A)〜(D)の所定量を水に溶解し、その後必要に応じpHを4.5〜7.0、好ましくは約6に調整することにより製造される。液のpHの調整には、有機酸を用いるのが好ましい。有機酸としてはクエン酸が好ましいものとして挙げられる。また、親水性促進剤及び親水性維持剤のpHが4.5未満であると手荒れ、基材及び周辺機器の腐蝕といいう問題が生じ、またpHの値が7.0を超える場合には、ポリシラザン被膜の溶解という問題が生じるのでいずれも好ましくない。
【0051】
本発明の親水性促進剤による処理は、ポリシラザン含有コーティング液を塗布し、常温で乾燥後、形成された塗膜に塗布することによってなされる。塗膜の乾燥時間は、ポリシラザン含有コーティング液に用いられるポリシラザンの種類、希釈溶剤、周囲温度などにより異なるが、通常塗布後30分程度以上であればよい。塗布方法は、防汚コーティング液の塗布と同様、布拭き法、スポンジ拭き法、スプレーコート、フローコート、ローラーコート、ディップコートなど任意の方法により行うことができる。塗布量は、塗膜が促進剤の液で少なくとも覆われる量であれば良く、通常10〜50ml/m2程度の量とされる。塗布後、5〜15分程度放置した後、親水性促進剤を水で洗い流すことにより、親水性促進処理は終了する。防汚コーティング液を塗布して形成された塗膜の純水に対する接触角は、ポリシラザンの種類によって異なるものの、通常80°前後である。本発明の親水性促進剤を用いて10分程度処理することにより、80°前後であった塗膜の純水に対する接触角が、塗膜のシリカ質への転化促進などもあって30〜40°程度に一気に低下する。塗膜を大気中に放置するのみでこの接触角を得るには通常1〜2週間程度の時間がかかる。
【0052】
さらに、本発明のポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持剤は、ポリシラザン含有コーティング膜が完全にシリカに転化される前、又はシリカに転化した後に付着した汚れを除去するために用いられる。したがって、本発明における「ポリシラザン含有コーティング膜」は、ポリシラザンがシリカに転化する前の膜、ポリシラザンがシリカに完全に転化する間の膜、及びポリシラザンがシリカに完全転化した後の膜のいずれをも含むものである。本発明のポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持剤は、親水性促進剤と同じ成分からなるもので、成分(A)〜(C)並びに必要に応じ用いられる成分(D)の使用比率も同じであり、液のpHも同じ範囲である。ただ、成分(A)〜(D)の濃度は親水性促進剤に比べ低く、例えば成分(A)〜(C)の合計含有量でいうと通常0.13〜1.7重量%の範囲とされる。成分(A)〜(C)の総量濃度が薄くなりすぎると、汚れを落とす効果が低下する。一方、成分(A)〜(C)の総量濃度が1.7重量%を超えても汚れを落とす能力にそれほどの変化はなく、このため経済的な理由から1.7重量%以下であることが好ましい。本発明の親水性維持剤を用いて汚れを洗い流す、あるいは拭き取るなどの方法により、シリカ質膜の親水性を損ねることなく汚れを落とすことができ、またシリカ被膜が本来有する親水性を回復、維持することができる。なお、アニオン性界面活性剤と両面界面活性剤の割合が前記範囲から外れると、タンパク質変性作用が大きくなり手荒れが起こり易くなる。両性界面活性剤が少ないと手荒ればかりでなく、泡安定性も悪くなり、傾斜面の洗浄に不都合である。多いと洗浄力が悪くなる。非イオン性界面活性剤が少ないと油分洗浄力が低下し、多いとゆすぎ性が悪くなり、表面に界面活性剤がいつまでも残り易くなる。
【0053】
本発明の親水性維持剤の製法としては、前記したように、まず親水性維持・促進剤の原液として挙げた前記高濃度の原液を作成し、これを水で30〜70倍程度希釈することにより製造することが簡便な方法としてあげられるが、この他、本発明の親水性促進剤を水により例えば2〜25倍程度に希釈することにより製造してもよいし、勿論各成分を所定の濃度で水に添加溶解させて直接製造してもよい。
【0054】
本発明の親水性維持剤を用いて汚れを洗い流す、あるいは拭き取る方法は任意の方法で良い。汚れを除去した後、必要であれば親水性維持剤を水で洗い流す。汚れを除去する簡便な方法を例示すると、本発明の親水性維持剤をスポンジあるいは柔らかい布に染み込ませ、これにより塗膜あるいはシリカに転化されたポリシラザン含有コーティング膜の汚れの付着した部分を拭いて、汚れを洗浄、除去し、その後水で親水性維持剤を洗い流す方法が挙げられる。なお、本発明の親水性促進剤及び親水性維持剤は中性乃至弱酸性であるため、従来のアルカリ性洗浄剤に比べ使用に当り手荒れなどがなく、作業性が良好である。
【0055】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これら実施例により本発明は何等限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例中に記載される接触角は、何れも純水に対する接触角である。
【0056】
実施例1
sec−アルカンスルホン酸ナトリウム9重量部、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン12重量部、ポリオキシエチレン(平均付加モル数8)ウンデシルアルコール5重量部、プロピレングリコール3重量部、安息香酸ナトリウム0.3重量部、水70.7重量部を混合し、クエン酸によりpHを6.0に調整した。得られた溶液を水で3倍に希釈し、親水性促進剤とした。
【0057】
3重量%の無機ポリシラザンと0.12重量%の4.4’−トリメチレンビス(1−メチルピペリジン)を含有するポリシラザン含有溶液を4インチシリコンウエハーにスピン塗布(500rpm、20秒間)した後、22℃、相対湿度30%の雰囲気中で、30分間の乾燥を行った。この時の塗膜の接触角は83°、膜厚は730Å、屈折率は1.537であった。この塗膜に上記親水性促進剤を塗布し、22℃で10分間放置した。放置後、親水性促進剤を水で洗い流した。乾燥後の塗膜の接触角は33°、膜厚は730Å、屈折率は1.528であった。
【0058】
比較例1
実施例1に記載のポリシラザン含有溶液を4インチシリコンウエハーにスピン塗布(500rpm、20秒間)後、22℃、相対湿度30%の雰囲気中で、親水性促進剤を塗布することなく放置することにより、塗膜の親水化を行った。塗膜の接触角が33°となったのは10日後であった。
【0059】
実施例2
sec−アルカンスルホン酸ナトリウム8.4重量部、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン3.6重量部、ポリオキシエチレン(平均付加モル数8)ウンデシルアルコール5重量部、プロピレングリコール3重量部、安息香酸ナトリウム0.3重量部、水79.7重量部を混合し、クエン酸によりpHを6.0に調整した。得られた溶液を水で50倍に希釈し、親水性維持剤とした。
【0060】
実施例1で得られた塗膜にグリースを塗布し、接触角を測定したところ、95°であった。親水性維持剤をスポンジに染み込ませ、塗膜を洗浄した。親水性維持剤を水で洗い流し、乾燥を行った。乾燥後の塗膜の接触角は32°、膜厚は732Å、屈折率は1.527であった。
【0061】
実施例3
sec−アルカンスルホン酸ナトリウム15重量部、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン10重量部、ポリオキシエチレン(平均付加モル数8)ウンデシルアルコール3重量部、プロピレングリコール3重量部、安息香酸ナトリウム0.3重量部、水68.7重量部を混合し、クエン酸によりpHを6.0に調整した。得られた溶液を水で10倍に希釈し、親水性促進剤とした。
【0062】
3重量%無機ポリシラザン溶液〔クラリアントジャパン(株)製 NP−140〕を4インチシリコンウエハーにスピン塗布(500rpm、20秒間)後、22℃、相対湿度30%の雰囲気中で、30分間の乾燥を行った。この時の塗膜の接触角は80°、膜厚は725Å、屈折率は1.538であった。この塗膜に親水性促進剤を塗布し、22℃で10分間放置した。放置後、親水性促進剤を水で洗い流した。乾燥後の塗膜の接触角は、42°、膜厚は727Å、屈折率は1.527であった。
【0063】
実施例4
sec−アルカンスルホン酸ナトリウム10重量部、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン10重量部、ポリオキシエチレン(平均付加モル数8)ウンデシルアルコール12重量部、プロピレングリコール3重量部、安息香酸ナトリウム0.3重量部、水64.7重量部を混合し、クエン酸によりpHを6.0に調整した。得られた溶液を水で70倍に希釈し、親水性維持剤とした。
【0064】
実施例3で得られた塗膜にグリースを塗布し、接触角を測定したところ、100°であった。親水性維持剤をスポンジに染み込ませ、塗膜を洗浄した。親水性維持剤を水で洗い流し、乾燥を行った。乾燥後の塗膜の接触角は40°、膜厚は725Å、屈折率は1.527であった。
【0065】
比較例6
実施例3で得られた塗膜にグリースを塗布し、塗膜の接触角を測定したところ、100°であった。市販車体洗浄剤(花王製:カーマイペットべガ)をスポンジに染み込ませ、塗膜を洗浄した。乾燥後、白色の粉末を清浄なウエスで拭き取った。グリースは除かれ、光沢面が得られた。処理後の塗膜の接触角は90°、膜厚は720Å、屈折率は1.522であった。
【0066】
実施例5
α−オレフィンスルホン酸ナトリウム10重量部、アルキルジメチル酢酸ベタイン12重量部、ポリオキシエチレン(平均付加モル数8)ウンデシルアルコール3重量部、プロピレングリコール3重量部、安息香酸ナトリウム0.3重量部、水71.7重量部を混合し、クエン酸によりpHを6.0に調整した。得られた溶液を水で5倍に希釈し、親水性促進剤とした。
【0067】
3重量%無機ポリシラザン溶液〔クラリアントジャパン(株)製 NP−140〕を4インチシリコンウエハーにスピン塗布(500rpm、20秒間)後、22℃、相対湿度30%の雰囲気中で、30分間の乾燥を行った。この時の塗膜の接触角は82°、膜厚は730Å、屈折率は1.538であった。この塗膜に上記親水性促進剤を塗布し、22℃で10分間放置した。放置後、親水性促進剤を水で洗い流した。乾燥後の塗膜の接触角は40°、膜厚は728Å、屈折率は1.527であった。
【0068】
実施例6
α−オレフィンスルホン酸ナトリウム10重量部、アルキルジメチル酢酸ベタイン10重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル4重量部、プロピレングリコール3重量部、安息香酸ナトリウム0.3重量部、水72.7重量部を混合し、クエン酸によりpHを6.0に調整した。得られた溶液を水で50倍に希釈し、親水性維持剤とした。
【0069】
実施例5で得られた塗膜にグリースを塗布し、接触角を測定したところ、100°であった。上記親水性維持剤をスポンジに染み込ませ、塗膜を洗浄した。親水性維持剤を水で洗い流し、乾燥を行った。乾燥後の塗膜の接触角は42°、膜厚732Å、屈折率1.527であった。
【0070】
実施例7
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム9重量部、アルキルジメチルアミンオキシド12重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル3重量部、プロピレングリコール3重量部、安息香酸ナトリウム0.3重量部、水72.7重量部を混合し、クエン酸によりpHを6.0に調整した。得られた溶液を水で3倍に希釈し、親水性促進剤とした。
【0071】
3重量%無機ポリシラザン溶液〔クラリアントジャパン(株)製 NP−140〕を4インチシリコンウエハーにスピン塗布(500rpm、20秒間)後、22℃、相対湿度30%の雰囲気中で、30分間の乾燥を行った。この時の塗膜の接触角は79°、膜厚は732Å、屈折率は1.538であった。この塗膜に上記親水性促進剤を塗布し、22℃で10分間放置した。放置後、親水性促進剤を水で洗い流した。乾燥後の塗膜の接触角は48°、膜厚は730Å、屈折率は1.527であった。
【0072】
実施例8
ポリオキシエチレンアルキルスルホン酸ナトリウム10重量部、アルキロイルアミドプロピルベタイン12重量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル3重量部、プロピレングリコール3重量部、安息香酸ナトリウム0.3重量部、水71.7重量部を混合し、クエン酸によりpHを6.0に調整した。得られた溶液を水で50倍に希釈し、親水性維持剤とした。
【0073】
実施例7で得られた塗膜にグリースを塗布し、接触角を測定したところ、98°であった。上記親水性維持剤をスポンジに染み込ませ、塗膜を洗浄した。親水性維持剤を水で洗い流し、乾燥を行った。乾燥後の塗膜の接触角は45°、膜厚は732Å、屈折率は1.527であった。
【0074】
実施例9
sec−アルカンスルホン酸ナトリウム5重量部、アルカンスルホン酸アンモニウム5重量部、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン6重量部、アルキルジメチル酢酸ベタイン6重量部、ポリオキシエチレン(8)ウンデシルアルコール3重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル3重量部、プロピレングリコール3重量部、安息香酸ナトリウム0.3重量部、水68.7重量部を混合し、クエン酸によりpHを6.0に調整した。得られた溶液を水で3倍に希釈し、親水性促進剤とした。
【0075】
3重量%無機ポリシラザン溶液〔クラリアントジャパン(株)製 NP−140〕を4インチシリコンウエハーにスピン塗布(500rpm、20秒間)後、22℃、相対湿度30%の雰囲気中で、30分間の乾燥を行った。この時の塗膜の接触角は83°、膜厚は735Å、屈折率は1.537であった。この塗膜に親水性促進剤を塗布し、22℃で10分間放置した。放置後、親水性促進剤を水で洗い流した。乾燥後の塗膜の接触角は38°、膜厚は730Å、屈折率は1.528であった。
【0076】
実施例10
sec−アルカンスルホン酸ナトリウム5重量部、アルキルベンゼンスルホン酸カリウム5重量部、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン6重量部、アルキロイルアミドプロピルベタイン6重量部、ポリオキシエチレン(平均付加モル数8)ウンデシルアルコール3重量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル3重量部、プロピレングリコール3重量部、安息香酸ナトリウム0.3重量部、水71.7重量部を混合し、クエン酸によりpHを6.0に調整した。得られた溶液を水で70倍に希釈し、親水性維持剤とした。
【0077】
実施例9で得られた塗膜にグリースを塗布し、接触角を測定したところ、105°であった。親水性維持剤をスポンジに染み込ませ、塗膜を洗浄した。親水性維持剤を水で洗い流し、乾燥を行った。乾燥後の塗膜の接触角は40°、膜厚は728Å、屈折率は1.527であった。
【0078】
【発明の効果】
本発明により、以下のような効果が得られる。
(1)本発明の親水性促進剤を、ポリシラザン、例えば無機ポリシラザンと必要に応じ用いられるシリカ転化触媒とを含有するポリシラザン含有コーティング膜上に塗布することにより、極めて短時間で該コーティング膜に親水性が発現し、これによってコーティング膜に汚れの付着が防止できる。
(2)ポリシラザン含有コーティング膜がシリカに転化する間に付着した汚れ、又は該膜がシリカに転化した後に付着した汚れを、本発明の親水性維持剤を用いて拭き取ることにより、コーティング膜の親水性を損ねることなく汚れを落とすことができ、またシリカ質被膜が本来有する親水性を回復、維持することができる。
(3)本発明の親水性促進剤及び親水性維持剤は中性乃至弱酸性のため、通常のアルカリ洗浄剤などに比較して、手荒れなどがなく、作業性がよい。
Claims (7)
- アニオン性界面活性剤5〜25重量%、両性界面活性剤0.5〜20重量%、非イオン性界面活性剤4〜6重量%、及び必要に応じ防腐剤を含有し、pHが4.5〜7.0の水溶液であるポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持・促進剤原液。
- アニオン性界面活性剤が、sec−アルカンスルホン酸塩、アルキル(アルキル基の炭素数8〜18)硫酸塩、ポリオキシエチレン(平均付加モル数1〜4)アルキル(アルキル基の炭素数8〜18)硫酸塩、α−オレフィン(アルキル基の炭素数10〜18)スルホン酸塩、及びアルキル(アルキル基の炭素数8〜18)ベンゼンスルホン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも一種であり、両面界面活性剤が、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキル(アルキル基の炭素数8〜18)ジメチル酢酸ベタイン、及びアルキル(アルキル基の炭素数8〜18)ジメチルアミンオキシドからなる群より選ばれた少なくとも一種であり、非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン(平均付加モル数3〜12)ウンデシルアルコール、ポリオキシエチレン(平均付加モル数3〜12)アルキル(アルキル基の炭素数8〜18)エーテル、及びポリオキシエチレン(平均付加モル数3〜12)ノニルフェニルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも一種であり、防腐剤が、安息香酸塩、イソチアゾリン系防腐剤、チアゾリン系防腐剤、及びトリアジン系防腐剤からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持・促進剤原液。
- 請求項1又は2に記載のポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持・促進剤原液において、液のpHが、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び必要に応じ防腐剤を水に溶解した後、有機酸によりpHが4.5〜7.0とされたものであることを特徴とするポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持・促進剤原液。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の原液を水で希釈することによって得られるポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持・促進剤。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の原液を水で3〜15倍に希釈することによって得られるポリシラザン含有コーティング膜用親水性促進剤。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の原液を水で30〜70倍に希釈することによって得られるポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持剤。
- アニオン性界面活性剤5〜25重量%、両性界面活性剤0.5〜20重量%、非イオン性界面活性剤4〜6重量%、及び必要に応じ防腐剤を含有し、pHが4.5〜7.0であるポリシラザン含有コーティング膜用親水性維持・促進剤原液を調製し、これを水で希釈した後、ポリシラザン含有コーティング膜上に塗布することにより、該ポリシラザン含有コーティング膜の親水性を維持又は促進させる方法。
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