JP4127415B2 - N−置換(メタ)アクリルアミドの蒸留法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はN−置換(メタ)アクリルアミド蒸留中のポップコ−ン重合を防止する蒸留法に関する。N−置換(メタ)アクリルアミドは、一般的に他のモノマ−やオリゴマ−と共重合する事により、樹脂改質剤、接着剤、高分子凝集剤、増粘剤、紙薬品、コンクリ−ト混和剤として広く産業的に利用されている。
【0002】
【従来の技術】
一般にN−置換(メタ)アクリルアミドは、他のモノマ−やオリゴマ−と共重合を行うため、重合や重合によって得られる製品品質に悪影響を及ぼす様な不純物の少ない高純度のものが要求されている。特に高分子量を必要とする場合などでは、特定の不純物についてN−置換(メタ)アクリルアミド中の許容量が数ppmオ−ダ−と言う事もしばしばある。このような高純度のN−置換(メタ)アクリルアミド製品を工業的に得るためには、一般的に蒸留法が用いられている。
【0003】
しかしながらN−置換(メタ)アクリルアミドは、本来重合性に富む為、蒸留中に極めて重合し易く、時には3次元架橋を有する不溶性ポリマ−(ポップコ−ン重合)塊により蒸留塔や配管が閉塞し、全く蒸留できなくなる事もある。特に、高純度の製品を得る為に還流を強化した場合や、N−置換(メタ)アクリルアミドの中でも、特に、モノ−N−置換アクリルアミドを蒸留する場合には非常にポップコ−ン重合の危険性が高い。
【0004】
ポップコ−ン重合の原因としては、熱励起によるモノマ−ラジカル、酸素(1重項、OHラジカル、ス−パ−オキシド)、過酸化物等が挙げられ、温度、金属錆がこれを助長するものと考えられている。又、N−置換(メタ)アクリルアミドの内、モノ−N−置換(メタ)アクリルアミドの場合はアミドのプロントンが外れ、一方、ジ−N−置換(メタ)アクリルアミドの場合は置換アルキル基のプロントンが外れ、それぞれ3次元架橋が開始される事によりポップコ−ン重合物になっていくものと考えられている。従って、ポップコ−ン重合の根本的防止法としては、原料若しくは配管等の継ぎ目から系内へ持ち込まれる酸素(空気)を完全カットすればよいが、極微量の空気の漏れ込みが原因でポップコ−ン重合が発生する事を勘案すると、工業的な対策は極めて困難である。
【0005】
かかる状況に鑑み、これまでN−置換(メタ)アクリルアミド蒸留中のポップコ−ン重合を防止する方法としては、種々の重合禁止剤を添加する方法が提案されてきている。例えば、蒸留中のポップコ−ン重合を防止する方法として▲1▼釜又は還流部に分解することにより重合禁止効果のある複合成分を発生する重合禁止剤(例えば、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩…商品名クペロン)を添加する方法(特公平7−49414号公報)、▲2▼還流部に強力なラジカル捕捉能を有する重合禁止剤を添加する方法(例えば、フェノチアジン、ニトロソ化合物、N−オキシル化合物等。特開昭49−36607号公報、特開昭49−125315号公報、特開昭64−42463号公報、特公昭54−9167号公報、特公昭58−46496号公報)、▲3▼酸化窒素や二酸化イオウ等の重合禁止効果を有するガスを蒸留中に流す方法(特開平2−145555号公報)等が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、釜又は還流部に分解することにより重合禁止効果のある複合成分を発生する重合禁止剤を添加する方法及び還流部に強力なラジカル捕捉能を有する重合禁止剤を添加する方法では、用いられている重合禁止剤が少なからず製品に混入する事を避けることが困難である。用いられる重合禁止剤は強力なラジカル捕捉能を有する為、ポップコ−ン重合を効果的に抑制する事はできるが、反面、極微量でも混入すると、製品重合性に悪影響を与えたり、重合禁止剤自体着色性が強い為、製品を着色するという欠点があった。
また、酸化窒素や酸化イオウ等の重合禁止効果を有するガスを蒸留中に流す方法は、気相部には効果的であるが、例えば大量に使用しても、重合禁止効果を有するガスと凝縮液が交流で流れている為、液相部例えば還流部での重合防止は効果は不十分であった。又、これらの重合禁止効果を有するガスは高価である為、大量に使用すると製品コストが高くなり、また蒸留中では非凝縮性ガスとなることから所定の真空度の維持を阻害したり、製品への着色を招く心配もあり、一般的に気相部用の重合防止として大量に使用される事はほとんどない。
従って、これまでN−置換(メタ)アクリルアミド製品品質に悪影響を及ぼさず、かつ蒸留中のポップコ−ン重合を有効に防止する工業的な方法は確立されていなかった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、N−置換(メタ)アクリルアミド蒸留中のポップコーン重合を防止すると共に、製品中に留出しても製品品質に悪影響を及ぼさない重合禁止剤の組み合わせを鋭意研究した結果、液相用重合禁止剤がハイドロキノン系化合物又はフェノール系化合物であり、気相用重合禁止剤が一酸化窒素である、液相−気相重合禁止剤を併用して蒸留する事、及び該液相用重合禁止剤を還流ラインに添加する事により目的を達成できることを見い出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、N−置換(メタ)アクリルアミドを蒸留するに際し、液相用重合禁止剤がハイドロキノン系化合物又はフェノール系化合物で該液相用重合禁止剤が還流ラインに添加されるものであり、気相用重合禁止剤が一酸化窒素である、液相−気相重合禁止剤を併用して蒸留する、N−置換(メタ)アクリルアミドの蒸留法を提供するものである。
【0008】
以下に詳細な説明を行う。
本発明で使用されるN−置換(メタ)アクリルアミドとしては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチルエチルアミノプロピル(メタ)アリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチルヒドロキシル(メタ)アクリルアミド等を例示することができる。
【0009】
本発明は、液相用重合禁止剤及び気相用重合禁止剤存在下実施される。
本発明で用いられる液相用重合禁止剤としては、p−t−ブチルカテコ−ル、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾ−ル、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、3、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2、6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2、5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、モノ−ブチルヒドロキシアニソール、t−ブチルハイドロキノン等が例示され、特にこの中でもp−t−ブチルカテコ−ル、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾ−ル、あるいは、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)が好ましい。
液相用重合禁止剤は蒸留釜内に添加しても充分な効果は期待できず、還流ラインに添加する事が、塔内閉塞を防止する意味で効果的である。例えば、液相用重合禁止剤をN−置換(メタ)アクリルアミドに溶解し、定量ポンプ等で供給する方法が挙げられ、添加量は、N−置換(メタ)アクリルアミドに対し、数十ppm〜数千ppmの範囲が好ましいが、この限りではない。
添加量が少なすぎると液相でのポップコ−ン重合防止効果が充分発現できず、逆に多すぎても重合禁止剤と言う性質上過剰効果は期待できず、コスト的に不利になる。
一方、本発明で用いられる気相用重合禁止剤としては一酸化窒素が取扱い易く好ましい。
酸化窒素は充填塔より下部にて供給する事がポップコ−ン発生防止の点で好ましく、重合防止効果、経済性、工程操作性を考慮すると、留出製品に対して、数ppm〜数千ppmの範囲が好ましいが、この限りではない。
【0010】
本発明では、これらの液相用重合禁止剤と気相用重合禁止剤を併用することにより、N−置換(メタ)アクリルアミド蒸留中のポップコ−ン重合を効果的に防止できると共に、製品品質も良好なものが得られる。
なお、液相用重合禁止剤は数種を組み合わせても用いても良く、又これとは別に、蒸留釜に、例えばフェノチアジンの様な熱重合禁止剤を添加しても何等差支えはない。
【0011】
本発明者らは、蒸留塔内で主にポップコ−ン重合が発生しやすい場所が凝縮液が滞留している充填塔と還流部であり、この付近に微量でも空気漏れがあれば瞬く間にポップコ−ン重合が発生するという新たな知見を見いだした。この凝縮液が滞留している充填塔と還流部には、例えば重合禁止効果を有する一酸化窒素を通じたり、蒸留釜の中に強力な重合禁止剤を添加しただけではポップコ−ン重合を充分に防止する事は困難であった。
液相用重合禁止剤と気相用重合禁止剤を併用することにより優れた効果が得られたのは、気相部と凝縮液が滞留しやすい液相部に各々ポップコ−ン重合防止に有効な禁止剤が添加されたためと、本発明者らは推察している。
【0012】
【実施例】
以下、実施例によつて本発明を具体的に説明する。
実施例1
1L3ッ口フラスコにマクマホン充填物を充填した蒸留塔と、その上にガラス製のコンデンサ−付き分配器(電磁弁式)を取り付け、更に充填塔の上部から液相用重合禁止剤を連続添加できるノズルと、一酸化窒素を供給できる流量計付きノズルを釜に取り付けた装置を用い蒸留を行った。釜に未精製のN−メチルアクリルアミド700重量部とフェノチアジン0.7重量部を添加し、液相重合禁止剤として製品N−メチルアクリルアミドに10重量%で溶解したp−t−ブチルカテコ−ルを充填塔の上部より、釜より一酸化窒素を連続供給し4torrで釜温90℃遮光下蒸留を行った。
6時間蒸留を行ったが、ポップコ−ン重合は認められなかった。
留出したN−メチルアクリルアミドに対し、添加したp−t−ブチルカテコ−ルは50ppmで、一酸化窒素は約200ppmであった。留出したN−メチルアクリルアミドの色相はAPHAで5であった。
又、ここで得られたN−メチルアクリルアミドをn−ヘキサンにより抽出精製したサンプルを精製品とした。
【0013】
実施例2〜3
液相重合禁止剤のみを変更した以外は実施例1と同じようにして蒸留を行い結果をまとめて表1に示した。
【0014】
比較例1
液相重合禁止剤を用いなかった以外は実施例1と同じようにして蒸留を行った結果、蒸留開始30分で充填塔がポップコ−ン重合により一部閉塞し、蒸留を中断した。
【0015】
比較例2
液相重合禁止剤を用いず、気相重合禁止剤として一酸化イオウを用いた以外は実施例1と同じようにして蒸留を行った結果、蒸留開始10分で充填塔がポップコ−ン重合により完全に閉塞し、蒸留を中断した。
【0016】
比較例3
p−t−ブチルカテコ−ル500ppmを充填塔の上部にかえて蒸留釜内に添加した以外は実施例1と同じようにして蒸留を行った結果、蒸留開始40分で充填塔がポップコ−ン重合により完全に閉塞し、蒸留を中断した。
【0017】
比較例4〜15
液相重合禁止剤のみを変更した以外は実施例1と同じようにして蒸留を行い結果をまとめて表1に示した。
比較例16
気相重合禁止剤を用いなかった以外は実施例1と同じようにして蒸留を行った。しかし、蒸留開始2時間で充填塔上部がポップコーン重合により一部閉塞したため、蒸留を中断した。
【0018】
【表1】
Figure 0004127415
【0019】
実施例4(重合試験)
実施例1〜3及び、比較例4〜5の蒸留により得られたN−メチルアクリルアミドの重合性評価を行った。
重合は高純度窒素導入管、温度センサ−の付いた1Lガラス製セパラブルフラスコに得られたN−メチルアクリルアミド250重量部と純水250重量部を入れ、0℃冷却槽にて冷却しながら高純度窒素で1時間バブリングを行った後、冷却槽から取りだし、直ちに重合開始剤として亜硫酸水素ナトリュウム及び過硫酸アンモニュウムをそれぞれN−メチルアクリルアミド純分に対して250ppm、更に、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩(V−50 和光純薬社製)500ppmを添加し、重合を行った。
温度センサ−モニタ−により、重合の誘導時間(重合熱により内温が上昇し始めた時間)、最高温度、最高温度迄の時間(重合時間)を求めた。
又、得られた重合物を1N塩化ナトリュウム水溶液に溶解し、25℃で固有粘度を測定した。これらの結果を纏めて表2に示した。
【0020】
【表2】
Figure 0004127415
【0021】
【発明の効果】
N−置換(メタ)アクリルアミドの蒸留に於いて、本発明の液相用重合禁止剤と気相用重合禁止剤を組み合わせて用いる事により、工業的に蒸留中のポップコ−ン重合を防止する事ができ、かつ良好な品質の製品を得る事ができるようになった。

Claims (3)

  1. N−置換(メタ)アクリルアミドを蒸留するに際し、液相用重合禁止剤がハイドロキノン系化合物又はフェノール系化合物で該液相用重合禁止剤が還流ラインに添加されるものであり、気相用重合禁止剤が一酸化窒素である、液相−気相重合禁止剤を併用して蒸留する事を特徴とする、N−置換(メタ)アクリルアミドの蒸留法。
  2. N−置換(メタ)アクリルアミドが、N−メチルアクリルアミドである、請求項記載のN−置換(メタ)アクリルアミドの蒸留法。
  3. 液相用重合禁止剤がp−t−ブチルカテコール、又は2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、又は4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)より成る群から選ばれたものである請求項1乃至2記載のN−置換(メタ)アクリルアミドの蒸留法。
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