JP4124842B2 - 梅塩の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、梅干しの製造過程で副生してくる梅酢を原料にして製造した濃縮梅酢エキスと食塩とからなる梅塩の製造方法に関するものである。
得られた梅塩は、酸味の残る風味のある自然食品、食用塩調味料として提供することができる。
【0002】
【従来の技術】
梅の果実は、酸味が強いため生食には適さず、そのため様々の加工法が古来より工夫され、現在もその工夫が重ねられている。この古典的な加工品の代表ともいえる梅干しは、疲労回復や食欲増進をもたらす保存食品として現在に至るまで我々日本人の食生活の中に深く浸透しており、最近では梅干しの中に多量に含まれるクエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸の健康酢としての良さ、例えば疲労回復や食欲増進のみならず、カルシウムの腸壁からの吸収の補助、食物のエネルギー代謝に役立つなどの数多くの健康食品としての良さが知られるようになった。
ところが、その製造過程において生梅を、先ず、塩漬けし、数ケ月後に取りだし、再び調味液で漬け直す際、梅酢と呼ばれる副産物が多量に生成するが、この副産物の一部は、調味料として利用されてはいるが、大半が廃棄、放流されて、河川の汚染を招いており、その対策が急がれている。しかし、梅酢の成分は、食塩以外に有機酸、アミノ酸、糖質、ミネラル類等梅肉成分とほとんど同じであり、その有効利用が望まれている。
【0003】
梅酢の主成分は、食塩が約20重量%、有機酸類が約4重量%であり、水分を蒸発乾固すれば、簡単に自然塩としての梅塩が取り出されることはいうまでもない。例えば野菜、果実を原料とする漬物を製造する工程で使用する調味液を、蒸発させることにより製造することを特徴とする調味物質の製造方法(特開平2-92235)、また梅干の製造過程において生ずる白梅酢又は赤ジソを含む梅酢を煮つめて製造したことを特徴とする梅味調味料 (特開平6-62790)などに梅塩の記載がある。
ところが、実際に梅酢の水分を蒸発させると、食塩の結晶物が得られるが、梅酢中に共存している成分、特にペクチン質を主とする糖質により、粘結性の固型物になっており、水分を完全に除去後、機械的に解砕して得られる粒状物も、短時間のうちに水分を吸着して、粒状物が互いに固結し、実際上取扱いは困難となる。 さらに梅塩中の食塩以外の成分割合を相対的にへらすために、梅酢の水分の蒸発途中で食塩を添加し、過剰の水分を加熱蒸発し、除去しても結果は同じで、粘結性の固型物を与え、解砕後の粒状物も吸湿性、吸水性の著しいものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、 1) 梅干し産地における河川汚染対策、 2) 副生する梅酢の再生産有効利用及び 3) 天然の梅酢エキス成分を含む風味のある自然食品、食用塩調味料の提供などの社会的ニーズに対応するため、鋭意検討した結果、梅酢の有効活用の1つとして有機酸を主とする梅酢エキス成分と食塩とからなる自然食品としての梅塩を合理的に生産し、世に提供することができることがわかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
梅の果実を塩漬けする際、副生する通常の梅酢あるいは塩化マグネシウムを含有するにがり塩を使用して漬けこんだときに副生する梅酢をイオン交換膜電気透析法により食塩を脱塩し、得られた梅酢の過剰の水分を蒸発、濃縮する。この濃縮梅酢エキスと食塩を配合調整することにより梅塩を製造する。場合によりさらに適宜、加熱乾燥することにより、水分の少ないさらさらした梅塩を製造することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に本発明につき詳細に説明する。
本発明の対象とする梅酢は、塩分濃度が約15〜22重量%程度になるように生梅を塩漬けし、数ケ月後に梅は梅酢と分離、梅干し加工場に出荷される。残った梅酢の主成分は食塩とクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、酢酸の有機酸類、グルコース、フラクトース、しょ糖ならびにペクチン質の糖質、さらに微量のセリン、アラニン、アスパラギン酸のアミノ酸類などからなっている。
これらの梅酢の成分は、梅肉中に含まれる成分と殆ど同じであり、クエン酸を主とする有機酸の全濃度は3〜6重量%、ペクチン質を主とする糖質は0.3 〜1.5 重量%、アミノ酸類は0.05〜0.10重量%と非常に高濃度の有効成分が含まれており、むしろ、梅エキスと考えてもよい。しかしながら梅酢は、塩分濃度が15〜22重量%と高くこのまま食品として使用するには塩辛く、酸味も強すぎるため漬物などの調味液として一部使用されてはいるが、大半が廃棄を余儀なくされている。
【0007】
こうした梅酢は、水分さえ蒸発除去すれば、食塩が結晶として先に晶析し、糖質を含む有機酸も粘調性のある液体として、同時にとり出される。しかし単に濃縮、固化することにより得られた梅塩は粘調性があり、取扱いが難しく完全に蒸発、乾固した後、機械的に解砕し、分級して取り出した粒状の梅塩は短時間に吸湿、吸水し、固結してくるので通常の取扱いは非常に難しいのである。
梅塩は、先ず、浮遊物を除去するため濾過器で処理された後、イオン交換膜電気透析法により食塩を脱塩、除去する。クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等の有機酸ならびにグルコース、フラクトース、しょ糖、ペクチン質などの糖質はイオン交換膜を透過せず、濃度的には脱塩の際に食塩と共に水分がイオン交換膜を透過するので、都合のよいことに残った梅酢は2倍程度に濃縮される。
このイオン交換膜電気透析法による梅酢の脱塩については「天然梅酸味料の製造法」として特公昭57-24103号公報に記載されている。脱塩した梅酢の主成分の濃度は、食塩0.1 〜1.0 重量%、クエン酸5〜10重量%、リンゴ酸0.3 〜2.0 重量%、酒石酸0.2 〜1.0 重量%、乳酸0.1 〜0.5 重量%、グルコース0.1 〜1.0 重量%、フラクトース0.1 〜1.0 重量%、pH1.8 〜2.4 であった。
【0008】
脱塩された梅酢は、さらに濃縮するために40〜90℃に加熱、減圧あるいは真空蒸発し、できるだけ水分量を減らし、クエン酸、リンゴ酸を主とする有機酸濃度をクエン酸に換算して、20〜70重量%に高める。有機酸濃度が20重量%以下の場合、この後、食塩と配合調整するとき同時に混入してくる過剰の水分のため梅塩の湿潤状態が著しく、静置すると、梅酢液が下部にしずくだり、分離するのでよくない。これを加熱乾燥すると、梅塩は粘結性が出てきて、固結するので、非常に加工し難いものとなる。従って、有機酸濃度は20重量%以上、望ましくは出来るだけ高濃度の方がよい。しかし、有機酸濃度が70重量%以上になると溶液の粘性が大きくなり、水あめ状態となり、この後の食塩との調整が困難となる。このとき、原料の梅酢の種類、特に含有しているペクチン質、グルコース、フラクトース等の糖質の割合で最適な濃縮梅酢エキスの有機酸濃度の範囲は若干異なる。また、脱塩された梅酢の水分を蒸発させる方法は加熱による蒸発乾燥、真空蒸発乾燥、噴霧乾燥又は凍結乾燥等いづれの方法でもよい。
こうして、得られた脱塩、濃縮梅酢エキスは各種の有機酸、糖質以外にセリン、アラニン、アスパラギン酸等のアミノ酸類、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、銅、亜鉛等の無機成分を含んでおり、梅のエキスそのものであり、梅本来の香り、酸味を十分残したミネラルを豊富に含んだ天然酸味料といえる。
【0009】
次いで、この濃縮した梅酢エキスは、別途用意した食塩に、有機酸としてクエン酸に換算して、2〜10重量%を配合調整し、必要に応じて適宜、加熱、乾燥し梅塩を得る。
濃縮梅酢中の有機酸は、クエン酸、リンゴ酸を主成分とし、その他酒石酸、コハク酸、乳酸、酢酸が含まれるが、全有機酸としての分析は、個々の有機酸を分析、測定したのではなく、すべての有機酸がクエン酸であると仮定して、アルカリ溶液で中和滴定し、クエン酸換算値として算出したものである。
ここで用いる食塩は、通常の市販の食塩、輸入の原塩等、種類を問うものでないが、比較的小さい粒度の食塩の方が加工性はよい。
濃縮梅酢の食塩への配合量は、有機酸として2 〜10重量%が適量である。2重量%以下では、梅の香り、酸味に乏しく、10重量%以上では酸味が著しく強すぎる。また、食塩が適量のにがり成分、すなわち塩化マグネシウムを含有している場合、酸味が抑えられ、風味のある美味な梅塩が得られる。
食塩中の塩化マグネシウム量は、濃縮梅酢の有機酸の量にもよるが、有機酸の約半分、1.0 〜5.0 重量%が望ましい。塩化マグネシウムの配合順序は場合により、濃縮梅酢に塩化マグネシウムを配合し、これを食塩に配合調整してもよい。
【0010】
ややパサついた手ざわりの湿潤した梅塩の場合には、濃縮梅酢と食塩を配合調整するだけでよいが、さらさらした乾燥した梅塩を作るには、さらに加熱乾燥する必要がある。しかしこの場合の乾燥は蒸発させる水分量も数重量%でよく、低い乾燥温度で、短時間で乾燥した梅塩が得られる。40〜50℃の乾燥温度、流動乾燥であれば30分程度で十分である。
乾燥した梅塩は、わずかに固結性がみられるが、原料の食塩の粒度まで、簡単に解砕され、非常に加工性に優れており、吸湿性、粘結性が小さく、長期間にわたって放置しても殆んど固結性はみられない。
こうして得られた梅塩は、酸味を残した風味のある味覚を有しており、自然食品、食用塩調味料として大いに期待できるものである。
以下、本発明の梅塩の製造方法の実施例について記載するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0011】
【実施例1】
生梅を塩漬けし、1ケ月後に塩漬けの梅と分離した梅酢をフィルターで濾過したのち、イオン交換膜電気透析法により、脱塩処理し、溶存塩分を除去した梅酢を得た。脱塩梅酢の主成分組成は表1に示す通りであった。
【0012】
【表1】
【0013】
ナトリウム、カリウムは、炎光分析法、マグネシウム、カルシウムは原子吸光法、クエン酸、リンゴ酸は高速液体クロマトグラフィーにより分析した。
次いで、脱塩梅酢の過剰の水分を80℃で減圧濃縮し、クエン酸に換算しこの全有機酸濃度が、アルカリ中和滴定法による測定で45重量%の濃縮梅酢エキスを得た。この濃縮梅酢エキスをクエン酸に換算して5重量%食塩と配合調整して梅塩を製造した。
本梅塩は、やや湿潤した粒状物であるが、穏やかな酸味を呈し、塩辛さは少なく風味のある食用塩として、期待できるものであった。
【0014】
【実施例2】
実施例1で調整した脱塩梅酢を80℃で、減圧濃縮、過剰の水分を除去、有機酸濃度60重量%の濃縮梅酢エキスを得た。
他方、輸入原塩を食塩の飽和水溶液で洗浄後、乾燥破砕した後、分級し、直径0.2 〜0.4mm の粒状の食塩を用意した。この食塩に濃縮梅酢エキスを配合調整して有機酸濃度がクエン酸に換算して8重量%の梅塩を得た後、50℃1時間静置乾燥した。この乾燥梅塩は、ゆるく固結し、ブロック状のものがみられたので、軽く解砕後分級し、さらさらした手ざわりの梅塩を製造した。
本梅塩は、吸湿性、粘結性が小さく、長時間放置しても殆んど固結性はみられず、酸味を残した、風味のある味覚を有しており、自然食品、食用塩調味料として好んで使えるものであった。
【0015】
【実施例3】
塩化マグネシウムを1.0 重量%、3.0 重量%、5.0 重量%含有する食塩に対して、実施例1で調整した有機酸濃度45重量%の濃縮梅酸エキスを用いて有機酸濃度が塩化マグネシウムの2倍濃度になるよう2.0 重量%、6.0 重量%、10重量%各々に配合調整して梅塩を製造した。
本梅塩は、いづれも塩化マグネシウムの固有の苦味、梅の固有の酸味が著しく緩和され、塩辛さの少ない、甘味のある味覚を呈しており、自然食品、食用塩調味料として好んで、使えるものであった。
【0016】
【発明の効果】
以上の通り、本発明に係わる梅塩は、日本古来の伝統的食品である梅干しの漬汁で、従来は利用価値が少なく、破棄して河川の公害源となっていた梅酢を完全利用するものである。即ち、梅酢をイオン交換膜電気透析法により、溶存する塩化ナトリウムを脱塩し、次いで過剰の水分を蒸発、除去して得られる濃縮梅酢エキスを食塩と配合調整して自然食品、食用塩調味料を製造する方法であり、従来、十分に活用されず、廃棄を余儀なくされていた梅酢という天然資源の再生産による有効利用で、社会的意義の高い有効なリサイクル利用でもある。
この梅塩の普及は、梅干しの産地における梅酢廃液による河川汚染の対策に大きく寄与し、社会的貢献度はきわめて大きい。
Claims (6)
- 梅の果実を塩漬けしたときに生成する梅酢中に溶存している塩化ナトリウムをイオン交換膜電気透析法により脱塩した後、過剰の水分を蒸発して得られる濃縮梅酢エキスと食塩より配合調整したことを特徴とする梅塩の製造方法。
- 梅酢中に溶存している塩化ナトリウムを、イオン交換膜電気透析法により脱塩することを特徴とする請求項1の梅塩の製造方法。
- 食塩に配合する濃縮梅酢エキスの有機酸濃度が、クエン酸に換算して20〜70重量%であることを特徴とする請求項1又は2の梅塩の製造方法。
- 濃縮梅酢エキス有機酸の食塩に対する配合量が、クエン酸に換算して2〜10重量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの梅塩の製造方法。
- 食塩が、塩化マグネシウムを 1.0〜5.0 重量%含有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの梅塩の製造方法。
- 梅の果実を塩漬けしたときに生成する梅酢は、破棄、放流されて河川の汚染源となっているものを使用することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの梅塩の製造方法。
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