JP4124636B2 - 燃料電池・メタン発酵サイクルシステム - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、燃料電池の燃料極の燃料として、メタン発酵槽で生成されるバイオガスを利用する燃料電池・メタン発酵サイクルシステムに関する。
【0002】
特に、食品リサイクル法の適用事業所や大量の生ごみを処理している地方自治体施設、また、二酸化炭素の排出削減対象事業所、さらには、新エネルギーによる発電に対して発行される証書RPS(Renewable Portfolio Standard)の取得を予定している事業所に好適な発明である。
【0003】
【背景技術】
生ごみ等の水分を多く含む有機性廃棄物の嫌気性発酵処理(メタン発酵)は、エネルギーとして資源回収する技術が注目され、数多くの技術が提案また実用化されている。
【0004】
しかし、通常、投入廃棄物量の約25%が汚泥として、焼却や埋立て処分されているのが現状である。
【0005】
また、本発明の発明性に影響を与えるものではないが、メタン発酵に関する公知技術(特許文献)として下記のようなものがある。
【0006】
特許文献1:生成したガスを高分子膜によりメタンガスとCO2ガスに分離し、メタンガス濃度を高めるとともに、CO2ガスはバイオガス混合して再度消化槽内に送りメタンに還元してメタンガス量の増加を図るメタン発酵方法。
【0007】
特許文献2:メタン発酵で得られたバイオガスを用いて浸漬膜表面の洗浄と槽内の攪拌を同時に実施する浸漬型膜利用メタン発酵システム。
【0008】
また、同じく燃料電池に関する公知技術(公知文献)として下記のようなものがある。
【0009】
特許文献3:天然ガスを燃料とした高温型燃料電池を用いた発電プラントで、燃料電池で発生した電気にて水を電気分解し、得られた酸素にて未反応の水素を水に戻す方式の技術。
【0010】
しかし、これらは何れも単発的な技術であり、総合的な技術的及び経済的な課題が解決されていない。
【0011】
【特許文献1】
特開昭61-178016号公報
【特許文献2】
特開2000-94000公報
【特許文献3】
特開平10-144322号公報
【0012】
【発明の開示】
本発明は、上記にかんがみて、メタン発酵で生成したガスを利用して高効率に電気エネルギーに変換するとともに、低コストで炭酸ガスを分離・回収・利用し、しかも有機性廃棄物を可能な限りメタンガスに変換して、無汚泥化する燃料電池・メタン発酵サイクルシステムを提供することを目的とする。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、下記各構成の燃料電池・メタン発酵サイクルシステムとする。
【0014】
メタン発酵槽と、基本的に空気極(酸素極:カソード)と燃料極(水素極:アノード)とを有する燃料電池とを備え、
メタン発酵槽で発生するバイオガスをアノードへ導入するとともに、アノードから発生する排ガス(アノード流出ガス:H2O+CO2+H2)をメタン発酵槽にリサイクルすることを特徴とする。
【0015】
上記構成において、アノード流出ガスをCO2分離塔に導入して、一部のCO2を分離回収し、CO2分離塔から流出する炭酸ガス又は炭酸ガスを主体とした排ガスをメタン発酵槽に導入することが望ましい。
【0016】
上記構成において、燃料電池を低温型とする場合は、バイオガスを水素リッチにする水蒸気改質工程を経てアノードへ導入することが望ましい。
【0017】
また、燃料電池を高温型とする場合は、バイオガスを水蒸気改質工程を経ずに直接的にアノードへ導入することが望ましい。
【0018】
上記燃料電池を高温型とする場合において、アノード流出ガスの未反応水素を触媒燃焼により除去したアノード流出ガスをCO2分離塔に導入することが望ましい。
【0019】
上記各構成において、メタン発酵槽の排水口にメタン菌が流出しない固液分離膜を配することが望ましい。
【0020】
上記各構成により、本発明は、下記のような作用・効果を奏するものである。
【0021】
生ごみなどの有機性廃棄物をメタン発酵(消化)させたバイオガスは、メタン(CH4)と炭酸ガス(CO2)が主成分であり、水蒸気改質することにより、水素(H2)と炭酸ガス(CO2)となる。バイオガスは精製後改質し燃料電池のアノード極へ供給する。水素は、カソード極の酸素と反応し、電気エネルギーへ変換されるととともに、水となって排出される。このため、アノード極の排ガスは、高濃度のCO2ガスと低濃度の未反応水素ガス(H2)及び水蒸気(H2O)であり、熱回収することによりCO2分離が容易にできる。そこで、熱回収したガスを直接メタン発酵槽へ導入することもできるし、アノード流出ガスをCO2分離塔に導入することにより、CO2を一部分離回収するとともに、水蒸気を水として回収することもできる。
【0022】
メタン発酵槽内に膜を設置してメタン菌の流出防止(メタン菌の蓄積)を図ることにより、有機物の分解能力が向上する。CO2と未反応H2を膜表面に散気することにより、膜表面洗浄と発酵槽内の攪拌及び発酵液内のCO2含有濃度を高める効果がある。
【0023】
メタン発酵の前段で生成される脂肪酸やアルコール等、水素発酵物を介してメタン菌がCO2をメタンガスに還元する作用を活用することにより、メタン生成反応が促進され、メタンガスの増量が期待できる。
【0024】
燃料電池による高効率発電と同時にCO2の回収・利用及び消化汚泥の発生を極限まで減少可能であり、資源化サイクルシステムの構築が可能となる。
【0025】
【構成の詳細な説明】
以下、本発明の燃料電池・メタン発酵サイクルシステムの一例について、主として図1に基づいて説明をする。
【0026】
本発明は、基本的に燃料電池システムとメタン発酵(嫌気性処理)システムとを結合させたものである。
【0027】
すなわち、燃料電池システムは、燃料電池12と、燃料電池12の空気極(酸素極:カソード)14に酸素を供給する空気供給配管16と、燃料極(水素極:アノード)18に燃料(水素含有ガス)を供給する燃料供給配管20とを備えている。そして、空気供給配管16は、空気供給口にブロアー22、中間に空冷型熱交換器24を備えている。
【0028】
ここで、燃料電池12は、りん酸形(PAFC)、固体高分子形(PEFC)等の低温型である。
【0029】
また、メタン発酵システムは、メタン発酵槽28と、メタン発酵槽28に投入する生ごみを保管する生ごみ保管庫30と、メタン発酵槽28の処理水を廃棄・浄化する排水槽32と、およびメタン発酵槽28で発生したガスを精製・収納する精製・収納タンク33とを備え、それらの間は、それぞれ、粉砕ポンプ(図示せず)を備えた供給配管34、気体輸送機35を備えたメタンガス配管36及び、メタン発酵槽28内に配設された水中ポンプ29に接続された排水配管38で接続されている。そして、水中ポンプ29の手前には、メタン菌の流出防止を図るための固液分離膜31が配されている。なお、精製・収納タンク33内には、メタンガスに含まれている硫黄酸化物を始めとする不純物の精製手段が内蔵されている。
【0030】
そして、本システムでは、さらに、燃料電池システムとメタン発酵システムとの間に炭酸ガス(CO2)分離回収システムが介在されている。
【0031】
炭酸ガス分離回収システムは、燃料極(アノード)18から排出される混合ガスを冷却して一次分離をする熱交換器40と、該熱交換器40から流出する水蒸気含有炭酸ガス中の炭酸ガスを水蒸気から分離・回収する炭酸ガス分離塔(CO2分離塔)42とを備えている。該CO2分離塔42は、炭酸ガスタンク44及び貯留水タンク46とを備えている。さらに、本システムでは、CO2分離塔42とメタン発酵槽28との間には、CO2分離塔42内から排出された炭酸ガス含有気体(H2+CO2)を、気体輸送機48を介してメタン発酵槽28の攪拌及び槽内のCO2含有濃度を高めることを目的として炭酸ガス送気配管50が配されている。
【0032】
次に、上記構成のシステムの使用態様について説明をする。
【0033】
先ず、生ごみ保管庫30に保管されている生ごみをメタン発酵槽28に投入して、嫌気性処理であるメタン発酵(消化法)を行う。すると、メタンガスが主成分であるバイオガス(CH4:CO2=6:4)が発生する。そして、バイオガスは、改質器54で水蒸気改質(下記反応をさせる。)することにより、水素リッチのガスとなり、熱交換器40を経て燃料極18に供給が可能となる。
【0034】
CH4+2H2O→4H 2 +CO2
なお、天然ガスの場合も、水蒸気改質して水素とCO2にして、燃料極へ供給している。
【0035】
そして、燃料極(アノード)18から流出するアノード流出ガスは、水(H2O)と炭酸ガス(CO2)及び未反応残水素(H2)からなり、熱交換器40で熱回収(冷却)する一次分離工程を経て、CO 2 分離塔42に流入させることにより、簡便にCO2/H2成分と水とを分離・回収できる。
【0036】
また、CO2分離塔42で、分離された未反応残水素はCO2とともに、メタン発酵槽28の底部に投入すれば、処理は容易となる。CO2とH2とは比重差が大きいため、CO 2 分離塔42内にある整流板等の簡単な機構で分離できる。また、このメタン発酵槽に導入(リサイクル)するCO2含有ガスを、メタン発酵槽28の曝気/攪拌に利用すると共に、燃料電池12の燃料として使用する場合は、含有するH2濃度が高い方が燃料電池12の発電効率が高くなるため、未反応残水素は除去する必要はない。
【0037】
CO2を利用する場合、液化あるいはドライアイスを製造する過程においては水素の存在は大きな問題とならない。
【0038】
このとき、水素は空気極(酸素極:カソード)14の酸素と反応して水となるため、燃料極18からはCO2と水とが排出される(流出する。)。このCO2と水とは冷却することにより、簡単に分離することができる。この特性を利用して、高効率発電と同時に、CO2を簡単に効率よく分離回収が可能となる。そして、回収したCO2は、メタン発酵槽28内の攪拌と、メタンガス生成反応の促進ガスとして利用できる。
【0039】
なお、図1のCO2分離塔42において微量の水素含有が支障となる場合は、図2に示すごとく燃焼器52を用いる(すなわち、酸素にて触媒燃焼させる)ことにより、簡単に水素を除去して高濃度のCO2が得られる(図2参照)。
【0040】
また、高温型の固体酸化物形燃料電池(SOFC)を使用する場合は、図2に示すシステムとする。
【0041】
すなわちSOFCでは、電池内部にてメタンが改質される。このため、改質器なしでメタンガスを主成分とするバイオガスを直接、燃料極18に供給でき、燃料極から排出される排ガスを、熱回収(冷却)することにより容易にCO2/H2成分と水とを分離・回収できる。
【0042】
図2の機器構成は基本的に図1と同様であるため、対応図符号を付して、その違いのみについて説明をする。
【0043】
SOFCにおいては、排熱温度が高いので排熱回収器56をカソード14出口に設置して、排熱の利用を図る(温水を作り利用する等。)とともにカソード14への供給空気を加熱することにより熱効率を高める。アノード18出口からのガスは燃焼器52を通過させてH2を除去した後、二次空冷型熱交換器40によりアノード18への供給ガスを加熱して熱回収を図る。さらに、一次空冷型熱交換器40Aによりカソード14への供給空気をさらに加熱することにより再度熱回収を行う。炭酸ガス送気配管50によりメタン発酵槽28に送られるガスは、燃焼器52を介しているためCO2のみとなる。
【0044】
天然ガスは、メタンが略100%であるが、嫌気性発酵で得られるバイオガスの場合、CH4:CO2=6:4である。メタンを水蒸気改質すると、水素とCO2とのモル比は、前述の如く4:1となる。したがって、CO2の回収量からみると、バイオガスの場合、天然ガスに比して、1.5倍以上のCO2の回収が可能となる。
【0045】
固形の難溶性有機物は、先ず、加水分解菌(hydrolytic bacteria)にて、高分子有機物が溶解性有機物となり、発酵菌(fermentative bacteria)にて低分子の中間生成物であるアルコールや有機酸に変わり、溶解性となる。その後、酢酸菌(Acetogenic bacteria)やメタン菌(Methanogenic bacteria)によりCO2とメタンガスに分解される。
【0046】
また、嫌気性発酵するメタン菌には、脂肪酸(有機酸)やアルコールが存在する環境下においてCO2を分解しメタンガスに還元する作用があると言われている。
【0047】
メタン発酵槽18内には固液分離機構がある膜(微生物を含む有機物などの固形物を通さないろ過膜)31を設置した場合、回収したCO2を膜表面に散気・バブリングして、上昇流にて膜表面の洗浄と滞留による槽内の攪拌および消化液中に混入させるに際して、有用なメタン菌の流出を膜にて防止することによりメタン菌の濃縮ができる。このため、有機物を徹底的に分解するとともに、CO2を分解してメタンガスに積極的に還元させることにより、メタンガスの生成反応が促進されて、メタンガス量の大幅な増加が期待できる。
【0048】
また、固液分離膜31から排出された排水は、固形物が含まれていないため、環境負荷が小さく、簡易な排水槽(水処理装置)32で処理が可能となる。
【0049】
【発明の効果】
本発明の効果を再度まとめると下記の如くになる。
【0050】
▲1▼燃料電池の排ガスをメタン発酵槽に設置した浸漬膜の下部から散気することにより、上昇流による膜表面の洗浄と発酵槽内の攪拌ができる。
【0051】
▲2▼燃料電池の排ガスは、高濃度のCO2と未反応の水素であり、消化液へのCO2溶け込みによる酸発酵生成物(アルコールや脂肪酸とメタン菌によるCO2分解)が還元されて、メタンガスへの転換が促進され、メタンガスの増量が期待できる。
【0052】
未反応の水素は、そのまま燃料電池に供給されるため、100%CO2ガスに比して、可燃成分が多く、燃料電池の高性能を維持できる。
【0053】
浸漬膜の固液分離機能によりメタン菌の流出防止が図れ、有機物の効果的に分解できるため、排出される汚泥を大幅に低減できる。
【0054】
高温型燃料電池では、電池内部にてメタンの改質が行われるため、消化ガスはそのまま燃料電池のアノード極へ供給でき、水素とCO2となる。そして、水素は、カソード極の酸素と反応して、電気エネルギーに変換されるとともに水となって排出される。このため、排ガスは高濃度のCO2ガスと低濃度の未反応残水素ガスおよび水蒸気で構成されたものとなる。
【0055】
燃料電池の排ガスの反応残水素に補助燃料を加えO2にて燃焼させ、ガスタービンにて発電後、熱エネルギーとして回収すると共に、CO2と水の分離回収も可能である。
【0056】
生ごみ等の有機性廃棄物をメタン発酵槽内にてメタン菌が流出しないような浸透膜によりメタン菌を蓄積すると共に、水素発酵物とメタン菌によるCO2をメタンガスに還元する作用を複合的に活用することにより、有機物を徹底的に分解し、メタン生成反応を促進させて、メタンガスの増量を行う。したがって、きわめて環境負荷の少ない高温形の燃料電池による高効率発電とCO2の回収/利用及び消化汚泥の発生を極限まで減少可能なサイクルシステムの構築が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の低温型燃料電池を用いる場合のサイクルシステムの一例を示す概略流れ図。
【図2】同じく高温型燃料電池を用いる場合の変形例を示す概略流れ図
【符号の説明】
12、12A・・・燃料電池
14・・・空気極(酸素極:カソード)
18・・・燃料極(水素極:アノード)
20・・・燃料供給配管
28・・・メタン発酵槽(消化槽)
40・・・熱交換器
42・・・CO2分離塔
50・・・炭酸ガス送気配管
Claims (6)
- メタン発酵槽と、基本的に空気極(酸素極:カソード)と燃料極(水素極:アノード)とを有する燃料電池とを備え、
前記メタン発酵槽で発生するバイオガス(生成ガス)を前記アノードへ導入するとともに、前記アノードからの流出するガス(以下「アノード流出ガス」)を前記メタン発酵槽にリサイクルすることを特徴とする燃料電池・メタン発酵サイクルシステム。 - アノード流出ガスを炭酸ガス分離塔(CO2分離塔)に導入して、一部のCO2を分離回収し、前記CO2分離塔から流出するCO 2 又はCO 2 を主体とした排ガスをメタン発酵槽に導入することを特徴とする請求項1記載の燃料電池・メタン発酵サイクルシステム。
- 前記燃料電池が低温型であるとともに、前記バイオガスを水蒸気改質工程を経て前記アノードへ導入することを特徴とする請求項1又は2記載の燃料電池・メタン発酵サイクルシステム。
- 前記燃料電池が高温型であるとともに、前記バイオガスを水蒸気改質工程を経ずに直接的に前記アノードへ導入することを特徴とする請求項1又は2記載の燃料電池・メタン発酵サイクルシステム。
- 前記アノード流出ガスの未反応水素を触媒燃焼により除去したアノード流出ガスを炭酸ガス分離塔に導入することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の燃料電池・メタン発酵サイクルシステム。
- 前記メタン発酵槽の排水口にメタン菌が流出しない固液分離膜を配することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池・メタン発酵サイクルシステム。
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