JP3851806B2 - 微生物を用いた水素製造方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、再生可能有機性資源を原料とし、微生物を用いる水素製造方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
水素は、環境汚染のないクリーンな燃料として広い用途を期待され、次世代の有力なエネルギー源の一つにあげられている。現在水素は主に化石燃料から製造されているが、製造工程において環境汚染の原因になる物質を排出するという問題があり、これに代わるクリーンで効率のよい水素生産技術の実用化がまたれている。
【0003】
最近注目を浴びている微生物を用いて有機性物質を発酵させ水素を製造する、いわゆる水素発酵法では、バイオマス、有機性廃棄物、有機性排水などの再生可能有機性資源を原料にして水素を製造することができるが、反応速度の遅いことがネックになって実用化が進んでいない。この原因は、発酵を進めるにともなって水素発酵槽内の発酵液(液相)および気相中における水素分圧が上昇し、このために水素生成反応が抑制され、加えて水素自体が水素発酵菌の作用を阻害しているものと理解されている。
【0004】
一方、前記再生可能有機性資源を熱エネルギーとして、また直接に電気エネルギーとしてリサイクルする試みがなされている。このうち電気エネルギーに変換する手段では、有機性資源を微生物の作用を利用してメタン発酵させ、得られたメタンリッチのガスを、例えば水蒸気を加えた触媒反応により水素リッチガスに改質し、燃料電池の燃料として使用する方法が数多く提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記微生物を用いた水素発酵法にかかる問題を解決する手段として、特開平7−31998号公報には、水素分圧を下げるために減圧発酵、あるいはバイオガス中の水素のみを分離排出する方法が記載されている。また、特開平5−254801号公報には、水素発酵槽の前段階に炭酸ガス溶解槽を設けて原料およびバイオガス中の水素を分離した炭酸ガスを主成分とする残ガスを循環し、原料液中に炭酸ガスを溶解させ、次工程の水素発酵槽において気相中の炭酸ガス分圧を上昇させることにより、逆に水素分圧を下げる水素発酵方法が記載されている。しかし、前者では液相中の水素分圧低下効果が小さく、後者では設備投資が必要になる。
【0006】
また、たとえば特開2001−23677号公報や特開2001−229955号公報には、有機性資源を微生物の作用および燃料電池を用い電気エネルギーとしてリサイクルする手段が記載されている。いずれも水素発酵法のメタンリッチなバイオガス、またはメタンを改質した水素リッチガスを燃料電池の燃料に利用するものである。しかし、メタンリッチなバイオガスを燃料とする燃料電池は燃料効率が低く、また、メタンを改質した水素リッチガスを燃料にする方法は設備コストが大きく、ともにメタンの環境に与える問題を考慮しなければならないという問題がある。
【0007】
本発明は、再生可能有機性資源を原料とする微生物を用いたクリーンな水素製造手段及び装置において、水素発生量及び水素収率を増加する手段を提供して工業的実用化をはかる。さらに、得られたバイオガス中の水素と二酸化炭素とを分離する有効な手だてを提供することを課題にするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために本発明は、微生物を利用し有機物を原料2として水素および二酸化炭素を主成分とするバイオガス3を発生させる水素製造方法において、水素発酵槽1において発生させたバイオガス3中から水素4を分離し、残った二酸化炭素を主成分とする残ガス5を水素発酵槽1に循環して(液相)6発酵液中に吹き込んで発酵液を曝気し、かつ発酵槽1内を加圧下とすることを特徴とする微生物を用いた水素製造方法を提供する。
【0009】
また、前記の微生物を用いた水素製造方法において、バイオガス中から水素を分離する手段に燃料電池を用い、水素発酵槽において発生させたバイオガスを燃料電池の陰極に導いて水素を燃料として利用し、残った二酸化炭素を主成分とする陰極排ガスを水素発酵槽に循環して発酵液中に吹き込み発酵液を曝気してもよい。
【0010】
さらに本発明は、微生物を利用し有機物を原料として水素および二酸化炭素を主成分とするバイオガスを発生させる水素発酵槽と、水素発酵槽内を加圧に保持するための圧力制御装置と、前記バイオガスから水素を分離する水素分離装置と、水素を分離した二酸化炭素を主成分とする残ガスを水素発酵槽に循環して発酵液中に吹き込み発酵液を曝気する残ガス循環ラインとを含んでなることを特徴とする微生物を用いた水素製造装置を提供する。
【0011】
そして、前記水素分離装置に水素を燃料に使用する燃料電池を利用し、バイオガスを燃料電池の陰極に導き、陰極から排出される二酸化炭素主成分とする陰極排ガスを水素発酵槽に循環し発酵液の曝気に利用するとよい。燃料電池24としてはリン酸電解質燃料電池または固体高分子電解質燃料電池が好適である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明を、実施形態例をあげて説明する。図1は、本発明に係る水素製造装置を例示する概略フローシート(実施例1)、図2は上記水素製造装置の水素分離装置として燃料電池を用いた本発明に係る水素製造装置を例示する概略フローシート(実施例2)である。
【0013】
さて、一般的に水素発酵法では、有機性物質を原料として水素発酵槽に供給し、水素生成菌の存在下に、pH5〜7前後、約25〜35℃の温度範囲で8〜24時間の滞留時間を維持し、水素および二酸化炭素を主成分とするバイオガスを発生させるものである。
【0014】
図1に示した実施例1を参照し、本発明水素製造方法および水素製造装置を具体的に説明する。まず、有機性原料2を水素発酵槽1に供給し、微生物を利用して原料2に水素発酵し、水素と二酸化炭素とを主成分とするバイオガス3を発生させる。本発明では、原料にバイオマス、有機性廃棄物、有機性排水などの多様な再生可能有機性廃棄物を用い、水素を製造することができる。発生させたバイオガス3は、送気ブロワ9により水素分離装置7に送入され、水素4を分離する。水素分離装置7は、目的に応じて膜分離法や吸着法などを適宜に選択し使用することができる。分離した水素4は次工程に送り、必要によっては精製して、使用し又は貯蔵する。例えば燃料電池に燃料として供給し、クリーンに電気エネルギーに変換することができる。本実施例においては水素分離装置7を用いたが、バイオガス3を供給することによって水素等を消費する、水素の需要装置を用いるてもよい。
【0015】
ついで、バイオガス3中の水素を分離または消費して、残った水素濃度の低い二酸化炭素を主成分とする残ガス5を水素発酵槽1に循環し、散気装置10を介して発酵液(液相)6中に吹き込む。その結果、水素発酵槽1内の液相6および気相8中の水素濃度を低下させ、水素生成菌の作用を活性化して、水素の発生量および水素収率を増加させる。散気を行き渡らせるために攪拌機を併用してもよい。
水素発酵槽に窒素を吹き込んで曝気しながら水素発酵を行った結果を、気体を吹き込まないで無曝気の結果と比較したので、次に参考例として示す。
【0016】
参考例
有効容積が2.3リットルの水素発酵槽を用いてグルコースおよび栄養塩類を基質として水素発酵を行い、曝気の効果を確認した。実験装置の大きさの関係でバイオガスを連続して水素分離装置に送気し循環させることが不可能であったために、発酵槽の発生ガスは系外に取り出し、曝気には窒素を使用した。実験結果を表1に示す。
【0017】
水素収率についてみると、曝気を行わない場合、0.85mol/molグルコースであったのに対し、水素発生量の15倍の容量の窒素を用いて曝気した場合には1.43mol/molグルコースに増大した。また、菌体当たりの水素生成量は、無曝気時の1.434ml/min/g−バイオマスから曝気時の3.126ml/min/g−バイオマスに上昇した。
【0018】
【表1】
Figure 0003851806
【0019】
さて通常、残ガス5は、発酵液6中に吹き込んでも水素発酵を妨げず、かつ水素濃度が低いので好適である。ときには、成分調整などのためバイオガス3もしくは残ガス5に添加物を加える場合があるが、残ガス5中の水素濃度を低く抑えて水素発酵に阻害のないガス組成であれば、とくに問題はない。残ガス5中の一部成分が濃縮されるなどして水素発酵や水素分離に阻害を生じる場合には、必要により、バイオガスもしくは残ガスの配管ライン(3,5)に当該有害物質の除去装置を設けるとよい。
【0020】
また、本発明においては水素発酵槽1内は原則として正圧となるが、バイオガス3の生成によって徐々に装置内の圧力が上昇するので、所定の圧力以下になるように圧力制御装置11を設けて残ガス5の一部を放出する。圧力制御装置11について特段の制限はない。
【0021】
つぎに、図2に示した実施例2を参照し、前記の本発明に係る微生物を用いた
発電方法を具体的に説明する。前記した本発明水素製造方法は効率的に水素を製造することができる。水素分離装置に燃料電池を利用することにって、再生可能有機性資源を電気エネルギーに変換する手段として有望である。
【0022】
前記再生可能有機性資源を原料22として水素発酵槽21に供給し、水素および二酸化炭素を主成分とするバイオガス23発生させる。発生させたバイオガス23を直接、あるいは必要により除去装置を設けて有害不純物を除去して燃料電池24の陰極に導きバイオガス中の水素を燃料として発電させ、電気エネルギーとして需用者に供給する。燃料電池24としては、燃料や酸化剤に二酸化炭素が含まれていても電極反応には殆ど影響を受けない濃厚リン酸水溶液を電解質として用いる燃料電池を含むリン酸電解質燃料電池や、陽イオン交換膜を電解質として用いる燃料電池を含む固体高分子電解質燃料電池が好ましい。燃料電池の陽極には酸化剤27を供給する。28は陽極側の反応残余物を示す。
【0023】
陰極において水素を消費して残った二酸化炭素を主成分とする陰極排ガス25は、水素発酵槽21に循環し、発酵液26中に吹き込んで液相26および気相29の水素濃度を低下させ、水素生成菌の作用を活性化して水素収率及び発生量を増大させ、電気エネルギーへの変換率を高める。水素製造関係の装置内圧力制御等については、前記本発明水素製造装置等に準ずる。
【0024】
【発明の効果】
バイオマス、有機性廃棄物、有機性排水などの多様な再生可能有機性廃棄物を原料に用いる水素発酵法においては、本発明の利用により、水素収率及び水素発生量を増加させることができる。したがって、本発明を燃料電池と組み合わせることにより、再生可能有機性資源を有利に電気エネルギーに変換する手段として有望である。
【0025】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る水素製造装置例の概略フローシート
【図2】水素製造装置を燃料電池と組み合わせた本発明発電装置例の概略フローシート
【符号の説明】
1:水素発酵槽 2:原料
3:バイオガス(循環ライン) 4:分離した水素
5:残ガス(循環ライン) 6:発酵液(液相)
7:水素分離装置 8:水素発酵槽の気相
9:送気ブロワー 10:散気装置
11:圧力制御装置
21:水素発酵槽 22:原料
23:バイオガス(循環ライン) 24:燃料電池
25:陰極排ガス(循環ライン) 26:発酵液(液相)
27:酸化剤 28:陽極側の反応残余物
29:水素発酵槽の気相 30:圧力制御装置

Claims (6)

  1. 微生物を利用し有機物を原料として水素および二酸化炭素を主成分とするバイオガスを発生させる水素製造方法において、水素発酵槽において発生させたバイオガス中から水素を分離し、残った二酸化炭素を主成分とする残ガスを水素発酵槽に循環し発酵液中に吹き込んで前記発酵液を曝気し、かつ発酵槽内を加圧下とすることを特徴とする微生物を用いた水素製造方法。
  2. バイオガス中から水素を分離する手段として燃料電池を用い、水素発酵槽において発生させたバイオガスを燃料電池の陰極に導いて水素を燃料として利用し、残った二酸化炭素を主成分とする陰極排ガスを水素発酵槽に循環して発酵液中に吹き込んで発酵液を曝気することを特徴とする請求項1に記載の微生物を用いた水素製造方法。
  3. 微生物を利用し有機物を原料として水素および二酸化炭素を主成分とするバイオガスを発生させる水素発酵槽と、水素発酵槽内を加圧に保持するための圧力制御装置と、前記バイオガスから水素を分離する水素分離装置と、水素を分離した二酸化炭素を主成分とする残ガスを水素発酵槽に循環して発酵液中に吹き込み曝気する残ガス循環ラインとを含んでなることを特徴とする微生物を用いた水素製造装置
  4. 前記水素分離装置が水素を燃料に使用する燃料電池であって、バイオガスが燃料電池の陰極に導かれ、陰極から排出される二酸化炭素主成分とする陰極排ガスが水素発酵槽に循環されていることを特徴とする請求項3に記載の微生物を用いた水素製造装置
  5. 燃料電池が、リン酸電解質燃料電池であることを特徴とする請求項4に記載の微生物を用いた水素製造装置
  6. 燃料電池が、固体高分子電解質燃料電池であることを特徴とする請求項4に記載の微生物を用いた水素製造装置
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