JP4124306B2 - 卵黄脂質の製造方法および該卵黄脂質を配合した加工食品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工食品の卵黄風味付与材及びコク味付与材として優れた効果を有する卵黄脂質の製造方法、および該卵黄脂質を配合した卵黄風味あるいはコク味に優れた加工食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
卵黄あるいは乾燥卵黄から有機溶剤を用いて卵黄脂質を抽出する方法が種々提案されている(特開昭54−61200号、特開昭60−55095号、特開昭62−93294号、特開平7−26287号、特開平11−18688号)。
一方、特開平11−137200号公報には、フラワーペースト類に卵黄脂質を含有させることにより、卵黄を用いたときと同等の風味を有したフラワーペースト類が提案されており、近年、加工食品の卵黄風味付与材として、またコク味付与材として卵黄脂質を利用することが注目されるようになった。
【0003】
ところが、従来の方法で得られた卵黄脂質では、加工食品に配合した場合、満足できる程の卵黄風味及びコク味に優れた加工食品が得られるとは、未だ言い難く、そのため、卵黄脂質の更なる改善が要望されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、加工食品の卵黄風味付与材及びコク味付与材として優れた効果を有する卵黄脂質の製造方法、および該卵黄脂質を配合した卵黄風味あるいはコク味に優れた加工食品を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく卵黄脂質の原料である卵黄の処理方法について鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、(1)乾燥卵黄から有機溶剤で抽出し、抽出液から有機溶剤を除去する卵黄脂質の製造方法において、噴霧乾燥で得られた乾燥卵黄に75〜150℃の熱蒸気で加熱処理を施し、得られた加熱処理物から有機溶剤で抽出することを特徴とする卵黄脂質の製造方法、(2)有機溶剤がエタノールである(1)記載の卵黄脂質の製造方法、(3)(1)及び(2)記載の製造方法で得られた卵黄脂質を配合した加工食品、を提供することである。
【0006】
以下本発明を説明する。なお、本発明において、別段に明示している場合を除き、「%」は、全て「質量%」を意味する。
本発明において「乾燥卵黄」とは、鶏卵等の家禽卵を割卵し、卵黄を卵白から分離して得られる生卵黄、あるいはプロテアーゼ等の蛋白分解酵素やホスホリパーゼ等の脂質分解酵素で処理した酵素処理卵黄、酵母、グルコースオキシダーゼ等で処理した脱糖卵黄等の各種卵黄液を、任意の乾燥方法によって乾燥させたものをいう。乾燥方法としては、例えば、噴霧乾燥(スプレードライ)、凍結乾燥(フリーズドライ)、真空乾燥、マイクロ波乾燥等が挙げられる。特に、上述の乾燥方法のうち、噴霧乾燥による乾燥方法は、安価で大量生産が容易であること、及び本発明では乾燥卵黄に加熱処理を施したものを抽出原料としているが、他の乾燥方法に比べ、風味安定性に優れた卵黄脂質が得られることから好ましい。また、これらの乾燥方法により得られる乾燥卵黄は、水分量を10%以下としたほうが望ましい。水分が10%より多いと、加熱処理に至るまでの保管方法によっては、腐敗を招くおそれがあり望ましくない。
【0007】
本発明において「乾燥卵黄に加熱処理を施す」とは、上述の乾燥卵黄に含まれる脂質成分が分解されない程度に乾燥卵黄を加熱処理することをいい、脂質成分が分解されない程度とは、加熱処理前後のそれぞれの乾燥卵黄からクロロホルムとメタノールの容量比2:1の混合溶剤を抽出溶剤として、全卵黄脂質を抽出し、得られた加熱処理前後の全卵黄脂質の脂質組成を比較したとき、ほぼ同組成を示すことをいう。後述の試験例に示すとおり本発明では、乾燥卵黄を75〜150℃で加熱処理を施すことが好ましく、80〜120℃がさらに好ましい。75℃より低いと本発明の目的である卵黄風味付与材及びコク味付与材として優れた効果を有する卵黄脂質が得られ難く、一方、150℃より高いと得られた卵黄脂質が焦げ臭を伴う場合があるため好ましくない。なお、加熱時間については、特に規定していないが、例えば、後述の実施例に示すように、低温で加熱処理する場合は、長時間行い、高温で加熱処理する場合は、短時間行うとよい。
【0008】
また、加熱処理を施す手段としては、熱蒸気等間接的に加熱する手段、あるいはニーダー等の加熱装置、マイクロ波又は高周波発生装置等直接的に加熱する手段等、本発明では任意の加熱手段を用いることができる。特に、熱蒸気による加熱処理は、風味安定性に優れた卵黄脂質が得られることから好ましく、また、熱蒸気による処理は、熱伝導性がよく、乾燥卵黄全体に均一に加熱処理を施すことができ生産効率に優れていることから好ましい。ここで、熱蒸気とは、熱を有した蒸気であり、乾燥卵黄を75〜150℃の熱蒸気に20分〜10秒間程度さらすとよい。蒸気のさらし方は任意であるが、例えば、▲1▼布を敷いた蒸し器の上に乾燥卵黄を1〜5センチの厚さに広げた状態でその上から蒸気を送風してさらすとか、▲2▼底に乾燥卵黄が落ちにくくするために細孔を多数設けた蒸し器の上に乾燥卵黄を▲1▼と同様に広げた状態で、細孔を通して下から上へと蒸気を通す、あるいはさらに乾燥卵黄の上側からも蒸気を送風してさらすとか、▲3▼小容量の密閉した室内に乾燥卵黄と蒸気とを同時に送入して少時間保持し、次いで加熱処理を施した乾燥卵黄をその室から取り出す操作を連続的に行う等の方法が挙げられる。
【0009】
本発明において「有機溶剤」とは、通常脂質の抽出に使用されている有機溶剤であればいずれの溶剤でもよく、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ヘキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等の一種又は二種以上の混合溶剤を使用するとよい。本発明の卵黄脂質には、その一部に熱で劣化しやすいリン脂質やリゾリン脂質を含んでいるので、通常の食用油脂の製造方法と異なり高温(100℃以上)で有機溶剤を除去することが出来ず、使用した有機溶剤によっては卵黄脂質中に微量残留すること、また、本発明の卵黄脂質は主にその用途が食品用として使用することから、安全性の点で上記有機溶剤のうち、エタノールが好ましい。ここで、「エタノール」とは、一般的に発酵法あるいは合成法等の工業的に製造されているエチルアルコールをいうが、本発明では、各種変性剤が添加された変性エタノール、精製水等の水を加配された含水エタノールも含まれる。なお、含水エタノールとしては、含水率が10容量%以下のものを使用するとよい。10容量%より多いと得られた卵黄脂質中に水分が多く残存しやすく、また、卵黄中の水溶性成分の混入を回避できず、微生物の増殖や風味の劣化等が懸念され好ましくない。
【0010】
本発明により得られる卵黄脂質は、抽出する有機溶剤により脂質組成が異なるものの、上述の乾燥卵黄に含まれる脂質成分の混合物である。具体的には、例えば、▲1▼生卵黄の乾燥物を原料として、含水エタノールあるいは無水エタノールを使用し抽出すると、得られた卵黄脂質の主成分は、トリグリセリド、リン脂質及びコレステロールの混合物であり、▲2▼生卵黄にホスフォリパーゼAを作用させリン脂質を完全に加水分解したものの乾燥物を原料として、▲1▼と同様な有機溶剤を使用し抽出すると、得られた卵黄脂質の主成分は、トリグリセリド、リゾリン脂質、脂肪酸及びコレステロールの混合物である。
【0011】
次に本発明の卵黄脂質の代表的な製造方法について説明するが、本発明は、特に、この製造方法に限定するものではない。
▲1▼乾燥卵黄の調製
鶏卵等の家禽卵を割卵し、卵白液から分離して得られた卵黄液を、噴霧乾燥(スプレードライ)、あるいは凍結乾燥(フリーズドライ)により水分量10%以下となるように乾燥する。
【0012】
▲2▼乾燥卵黄の加熱処理
布を敷いた蒸し器の上に上記乾燥卵黄を1〜5センチの厚さに広げた状態でその上から75〜150℃の蒸気を20分〜10秒間送風してさらし、乾燥卵黄に加熱処理を施す。
【0013】
▲3▼加熱処理乾燥卵黄からの抽出
加熱処理乾燥卵黄から加熱処理乾燥卵黄1容量に対し2〜20容量倍、好ましくは3〜10容量倍の含水エタノール(含水率10容量%以下)を使用し、1〜5回、好ましくは2〜3回抽出し、抽出液を分離する。なお、含水エタノールが2容量倍より少ないと、十分に卵黄脂質の抽出が行われなかったり、一方、20容量倍より多い、あるいは抽出回数が5回より多いと、その後の抽出液からの有機溶剤の除去に無駄な時間とエネルギーを費やし経済的でないので好ましくない。続いて、減圧濃縮等により抽出液から有機溶剤を除去する。除去する際は、品温が60℃を超えないように、好ましくは40℃を超えないようにする。60℃を超えると、得られた卵黄脂質が劣化しやすく好ましくないからである。
以上の代表的な製造方法により卵黄風味付与材及びコク味付与材として優れた効果を有する卵黄脂質が得られる。
【0014】
本発明の加工食品は、従来、卵黄液、全卵液又はこれらの乾燥物、あるいは卵黄脂質を原料の一部として配合していた加工食品、また喫食の際、好みによりこれらを添加するような加工食品、また卵黄脂質を配合させることにより、コク味の付与が期待されるような加工食品であればいずれでもよく、例えば、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、バタークリーム、カスタードクリーム等のペースト類、プリン、クッキー、ビスケット、クラッカー、パイ、カステラ、ドーナッツ、スポンジケーキ、ワッフル、チョコレート、チョコレート菓子、キャラメル、キャンディー、チューイングガム、ゼリー、ホットケーキ、パン、菓子パン等の各種洋菓子、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓等のアイスクリーム類、厚焼きたまご、オムレツ、スクランブルエッグ、茶碗蒸等の卵加工品、カレー、シチュー、パスタソース等の各種ソース類、ポテトチップ等のスナック菓子、乳酸飲料、乳酸菌飲料、濃厚乳清飲料、果汁飲料、果肉飲料、機能性飲料、炭酸飲料等の清涼飲料水、コーヒー、ココア、紅茶、緑茶等の嗜好品又はこれらの飲料、醗酵乳、加工乳、チーズ等の乳製品、豆乳、豆腐等の大豆加工品、ジャム、果実のシロップ漬け、ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセージ、ビーフジャーキー等の畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、はんぺん等の魚介類製品、ウニ、イカ等の塩辛、のり、小魚、貝、山菜、椎茸、昆布等の佃煮、マヨネーズ、ドレッシング、ソース、ケチャップ、ブイヨン、焼肉のたれ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素、みそ、醤油等の各種調味料、あるいはこれらの電子レンジ用食品、レトルト食品又は冷凍・冷蔵食品等が挙げられる。
【0015】
本発明の加工食品は、加工食品全量に対し卵黄脂質を好ましくは0.01〜3.0%、さらに好ましくは0.05〜3.0%配合させるとよい。0.01%より少ないと卵黄風味あるいはコク味に優れた加工食品が得られ難く、一方、3%より多くしたとしてもそれ以上の効果が得られず経済的でないので好ましくない。また、本発明の加工食品は、本発明により得られた卵黄脂質を原料の一部として使用する以外は、常法に則り製造するとよい。
【0016】
【作用】
本発明により得られた卵黄脂質が如何なる理由により卵黄風味付与材及びコク味付与材として優れた効果を有するかは不明であるが、乾燥卵黄に加熱処理を施すことにより、卵黄脂質とそれ以外の卵黄蛋白あるいは糖類とで脂溶性の反応物が極微量生成され、この反応物が上述の効果に寄与しているのではないかと推察される。
【0017】
次に、本発明を実施例及び試験例に基づき、さらに詳細に説明する。
【実施例】
実施例1
鶏卵を割卵し、卵白液から分離して得られる卵黄液10kgを送風温度175℃で噴霧乾燥(スプレードライ)し乾燥卵黄を得た。得られた乾燥卵黄の水分を赤外線水分計で測定したところ約6%であった。次に、この乾燥卵黄を布を敷いた蒸し器の上に1cmの厚さに広げ、100℃の熱蒸気に4分間さらして乾燥卵黄に加熱処理を施した。得られた加熱処理乾燥卵黄1kgを5L(リットル)容量のステンレス製カップに採取し、含水率2容量%の含水エタノール3Lを注加し、ホモジナイザー(特殊機化工業(株)製、T.K.オートホモミクサー)を用いて3,000rpmで30分間撹拌抽出した。窒素ガスにより加圧濾過し、濾過液を採取し、濾過残渣を含水率2容量%の含水エタノール2Lで2回洗浄した。濾過液と洗浄液を合わせて抽出液とし、減圧下ロータリーエバポレーターで溶剤を除去し、卵黄脂質を得た。
得られた卵黄脂質の脂質組成をTLC−FID法で分析したところ、トリグリセリドが約74%、リン脂質が約24%、コレステロールが約2%であった。また、加熱処理前後のそれぞれの乾燥卵黄からクロロホルムとメタノールの容量比2:1の混合溶剤を抽出溶剤として、全卵黄脂質を抽出し、得られた加熱処理前後の全卵黄脂質の脂質組成を比較したところ、ほぼ同組成を示した。
【0018】
実施例2
実施例1において、乾燥卵黄の加熱処理条件を70℃の熱蒸気で20分間行うことに変え、それ以外は実施例1と同様な方法で卵黄脂質を調製した。得られた卵黄脂質の脂質組成は、ほぼ実施例1で得られたものと同程度であった。また、乾燥卵黄の加熱処理前後の全卵黄脂質の脂質組成を比較したところ、ほぼ同組成を示した。
【0019】
実施例3
実施例1において、乾燥卵黄の加熱処理条件を75℃の熱蒸気で20分間行うことに変え、それ以外は実施例1と同様な方法で卵黄脂質を調製した。得られた卵黄脂質の脂質組成は、ほぼ実施例1で得られたものと同程度であった。また、乾燥卵黄の加熱処理前後の全卵黄脂質の脂質組成を比較したところ、ほぼ同組成を示した。
【0020】
実施例4
実施例1において、乾燥卵黄の加熱処理条件を80℃の熱蒸気で10分間行うことに変え、それ以外は実施例1と同様な方法で卵黄脂質を調製した。得られた卵黄脂質の脂質組成は、ほぼ実施例1で得られたものと同程度であった。また、乾燥卵黄の加熱処理前後の全卵黄脂質の脂質組成を比較したところ、ほぼ同組成を示した。
【0021】
実施例5
実施例1において、乾燥卵黄の加熱処理条件を120℃の熱蒸気で30秒間行うことに変え、それ以外は実施例1と同様な方法で卵黄脂質を調製した。得られた卵黄脂質の脂質組成は、ほぼ実施例1で得られたものと同程度であった。また、乾燥卵黄の加熱処理前後の全卵黄脂質の脂質組成を比較したところ、ほぼ同組成を示した。
【0022】
実施例6
実施例1において、乾燥卵黄の加熱処理条件を150℃の熱蒸気で10秒間行うことに変え、それ以外は実施例1と同様な方法で卵黄脂質を調製した。得られた卵黄脂質の脂質組成は、ほぼ実施例1で得られたものと同程度であった。また、乾燥卵黄の加熱処理前後の全卵黄脂質の脂質組成を比較したところ、ほぼ同組成を示した。
【0023】
実施例7
実施例1において、乾燥卵黄の加熱処理条件を170℃の熱蒸気で10秒間行うことに変え、それ以外は実施例1と同様な方法で卵黄脂質を調製した。得られた卵黄脂質の脂質組成は、ほぼ実施例1で得られたものと同程度であった。また、乾燥卵黄の加熱処理前後の全卵黄脂質の脂質組成を比較したところ、ほぼ同組成を示した。
【0024】
比較例1
実施例1において、乾燥卵黄に加熱処理を施さないで、乾燥卵黄をそのまま実施例1と同様な抽出方法で卵黄脂質を調製した。
【0025】
実施例8
実施例1で得られた乾燥卵黄3kgを、加熱表面温度を100℃に調整したニーダーに投入し、ゆっくり撹拌させながら同温度で4分間処理し、乾燥卵黄に加熱処理を施した。次に、実施例1と同様な方法で抽出し、卵黄脂質を得た。
得られた卵黄脂質の脂質組成は、ほぼ実施例1で得られたものと同程度であった。また、乾燥卵黄の加熱処理前後の全卵黄脂質の脂質組成を比較したところ、ほぼ同組成を示した。
【0026】
実施例9
実施例1において、卵黄液の乾燥方法を凍結乾燥(フリーズドライ)に変え、それ以外は実施例1と同様な方法で卵黄脂質を調製した。得られた乾燥卵黄の水分及び卵黄脂質の脂質組成は、ほぼ実施例1で得られたものと同程度であった。また、乾燥卵黄の加熱処理前後の全卵黄脂質の脂質組成を比較したところ、ほぼ同組成を示した。
【0027】
実施例10(フラワーペースト)
まず、下記の原料を用意した。
・ ホイップ用クリーム1) 100g
・ 水飴2) 80g
・ 砂糖 60g
・ 全脂粉乳 30g
・ 澱粉 15g
・ 薄力粉 10g
・ 実施例1で得られた卵黄脂質 4.5g
・ 清水で 450g
1)不二製油(株)製、商品名「トッピングV」
2)日本食品化工(株)製、商品名「ハイマルトースシラップMC-55」
家庭用ミキサーにホイップ用クリーム、水飴及び清水を投入し均一にした後、砂糖、全脂粉乳、澱粉及び薄力粉を投入し溶解させた。そして卵黄脂質を投入し十分に分散させた。この分散液を鍋に移し、全体の重量を測定した後、木べらで全体を撹拌させながら中火で加熱した。加熱は、澱粉が糊化し、鍋底から気泡が出るようになるまで行った。加熱終了後、450gとなるように加水し均一にした。そして、約30分間室温に放置して粗熱を取った後、冷蔵庫に保管し、卵黄脂質を約1%含有したフラワーペーストを得た。
【0028】
実施例11(ミルクプリン)
まず、下記の原料を用意した。
・ 牛乳 831g
・ グラニュー糖 125g
・ 殺菌加工凍結卵3) 40g
・ 実施例1で得られた卵黄脂質 5g
・ カラギーナン 4g
3)キユーピー(株)製、商品名「ゴールドヨークP-24」
容器に牛乳及びカラギーナンを投入し75〜85℃で10分間加温してカラギーナンを溶解させた。次に、グラニュー糖、殺菌加工凍結卵及び卵黄脂質を投入し均一となるまで十分に分散させた。得られた分散液を熱交換器を用い120℃で2秒間殺菌した後、100mL容量のプリン容器に充填した。これを冷蔵庫で冷却し固め、卵黄脂質を約0.5%含有したミルクプリンを得た。
【0029】
実施例12(アイスクリーム)
まず、下記の原料を用意した。
・ グラニュー糖 625g
・ 脱脂粉乳 525g
・ バター 475g
・ コーンシラップ 350g
・ 殺菌凍結卵(卵黄)4) 125g
・ 実施例1で得られた卵黄脂質 25g
・ 清水で 5000g
4)キユーピー(株)製、商品名「加糖凍結卵黄NS20」
全原料を容器に投入し加熱しながら撹拌混合した。液温が65℃になったら撹拌を停止し、ホモゲナイザー(特殊機化工業(株)製、T.K.オートホモミクサー)を用いて10,000rpmで6分間予備乳化を行った。その後、さらに高圧ホモゲナイザーを用いて15MPa(メガパスカル)の圧力で均質化し精乳化を行った。この精乳化した溶液を85℃達温まで加熱し殺菌した後、冷蔵庫に一晩保管した。次に、アイスクリーマーを用い、−3〜−4℃でフリージングを行い、100mL容量のアイスクリーム用容器に充填後、−15〜−25℃で硬化させ、卵黄脂質を約0.5%含有したアイスクリームを得た。
【0030】
試験例1
乾燥卵黄の加熱処理の有無によるコク味への影響を調べるため次のような試験を行った。まず、本発明品として、実施例10のフラワーペースト、実施例11のミルクプリン及び実施例12のアイスクリームを用意した。また、各実施例において、陰性対照品として、卵黄脂質を配合していないもの、陽性対照品として、本発明品で用いた卵黄脂質に代えて比較例1の加熱処理を施していない乾燥卵黄から抽出した卵黄脂質を配合したものを同様な方法でそれぞれ調製し用意した。各調製品を10人のパネラーに試食させ、風味について本発明品と陰性対照品又は陽性対照品とを比較し評価させた。
その結果、全てのパネラーが陰性対照品又は陽性対照品に比べ本発明品のほうがコク味に優れていると回答した。さらに、実施例12のアイスクリームについては、コク味に加え卵風味も本発明品のほうが優れていると回答した。
【0031】
試験例2
乾燥卵黄の加熱処理条件(温度)によるコク味への影響を調べるため次のような試験を行った。まず、加熱処理条件の異なる実施例1〜7の卵黄脂質及び加熱処理を施していない乾燥卵黄から抽出した比較例1の卵黄脂質を用意した。各卵黄脂質を用い実施例10に準じフラワーペーストを調製した。各フラワーペーストを試食し、コク味について、加熱処理乾燥卵黄から抽出した卵黄脂質(実施例1〜7)を用いたフラワーペーストと加熱処理を施していない乾燥卵黄から抽出した卵黄脂質(比較例1)を用いたフラワーペースト(対照品)とを比較し評価した。
【0032】
【表1】
【0033】
表中の記号
◎ :対照品に比べ非常にコク味に優れている。
○−1:対照品に比べコク味に優れている。
○−2:若干焦げ臭を伴うものの問題とならない範囲であり、対照品に比べコク味に優れいている。
△−1:対照品に比べややコク味に優れている。
△−2:対照品に比べコク味に優れているものの、焦げ臭を伴う。
× :対照品と同程度のコク味を有する。
【0034】
表1より、75〜150℃となるように加熱処理を施した乾燥卵黄から抽出した卵黄脂質を用いたほうがコク味に優れ好ましいことが理解される。特に、80〜120℃となるように加熱処理を施した乾燥卵黄から抽出した卵黄脂質は非常にコク味に優れさらに好ましいことが理解される。
【0035】
試験例3
乾燥卵黄の加熱処理手段の違いによる卵黄脂質の風味安定性への影響を調べるため次のような試験を行った。まず、加熱処理手段が異なる実施例1(熱蒸気)及び実施例8(ニーダー加熱)それぞれの卵黄脂質を用意した。これらの卵黄脂質をアルミ袋に充填し窒素置換後、密封し、35℃で1ヶ月間保存し風味の劣化を官能試験により行った。
その結果、熱蒸気により加熱処理を施した実施例1の卵黄脂質は殆ど風味の劣化が感じられなかったが、ニーダー加熱した実施例8の卵黄脂質は劣化していた。これより、熱蒸気により加熱処理を施した実施例1の卵黄脂質のほうが風味安定性に優れていることが理解される。
【0036】
試験例4
乾燥卵黄の乾燥方法の違いによる卵黄脂質の風味安定性への影響を調べるため、まず、噴霧乾燥(スプレードライ)させた乾燥卵黄から抽出した実施例1の卵黄脂質及び凍結乾燥(フリーズドライ)させた乾燥卵黄から抽出した実施例9の卵黄脂質をそれぞれ用意し、試験例3と同様な方法で官能試験を行った。
その結果、噴霧乾燥品を用いた実施例1の卵黄脂質は殆ど風味の劣化が感じられなかったが、凍結乾燥品を用いた実施例9の卵黄脂質はやや劣化していた。
これより、噴霧乾燥品を用いた実施例1の卵黄脂質のほうが風味安定性に優れていることが理解される。
【0037】
試験例5
加工食品に対する卵黄脂質の配合量の違いによる卵黄風味及びコク味への影響を調べるため次のような試験を行った。まず、実施例1の卵黄脂質を用意し、
この卵黄脂質を用いて表2に示す配合量となるように実施例12に準じアイスクリームを調製した。各配合量の異なるアイスクリームを10人のパネラーに試食させ、卵黄風味及びコク味について、無配合のもの(対照品)と比較評価した。
【0038】
【表2】
【0039】
表中の記号
◎:対照品に比べ非常に卵黄風味及びコク味に優れている。
○:対照品に比べ卵黄風味及びコク味に優れている。
△:対照品に比べやや卵黄風味及びコク味に優れている。
×:卵黄風味及びコク味において、対照品と殆ど差が無い。
【0040】
表2より、加工食品への卵黄脂質の配合量としては、0.01%以上が好ましく、0.05%以上がさらに好ましいことが理解される。
【0041】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により得られた卵黄脂質は、加工食品の卵黄風味付与材及びコク味付与材として優れた効果を有し、該卵黄脂質を配合した加工食品は卵黄風味及びコク味に優れている。
Claims (3)
- 乾燥卵黄から有機溶剤で抽出し、抽出液から有機溶剤を除去する卵黄脂質の製造方法において、噴霧乾燥で得られた乾燥卵黄に75〜150℃の熱蒸気で加熱処理を施し、得られた加熱処理物から有機溶剤で抽出することを特徴とする卵黄脂質の製造方法。
- 有機溶剤がエタノールである請求項1記載の卵黄脂質の製造方法。
- 請求項1及び2記載の製造方法で得られた卵黄脂質を配合した加工食品。
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