JP4123887B2 - 車両用駆動力伝達装置の制御方法および制御装置 - Google Patents

車両用駆動力伝達装置の制御方法および制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動力伝達手段により一方の駆動軸と他方の駆動軸を結合させ、前記一方の駆動軸から前記他方の駆動軸に駆動力を伝達する車両用駆動力伝達装置の制御方法および制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の車両用駆動力伝達装置の制御方法や制御装置として、例えば、以下の特許文献1に開示されている駆動力伝達制御装置等が知られている。
このような駆動力伝達制御装置では、駆動モードがAUTOモードに設定されていると、まず車両の発進時に設定される従動輪への伝達トルクであるフィードフォワードトルク(以下「プレトルク」という。)T1をROM等に記憶されたマップからスロットルバルブ開度に対応して決定し(特許文献1;段落番号0039、図7「S5」参照)、またフィードバックトルク(以下「ΔNトルク」という。)T2をROM等に記憶されたマップから駆動輪と従動輪と差動回転速度ΔNに対応して決定し(特許文献1;段落番号0040、図7「S7」参照)、これらの伝達トルクT1、T2の和によって伝達トルク指令値を決定している(特許文献1;段落番号0041、図7「S8」参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−206566号公報(第5頁、図7)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の駆動力伝達制御装置等によると、車両の発進時に駆動輪により生じ得るスリップは、駆動輪と従動輪と差動回転速度ΔNにより決定されるΔNトルクT2によって抑制され得るようにΔNトルクT2が設定されている。ところが、このΔNトルクT2は、駆動輪と従動輪と差動回転速度ΔN、つまり発進後にスリップが発生してから、それに基づいて決定されているため、フィードバック制御の遅れから完全にはスリップを抑え難い。
【0005】
一方、発進時に従動輪に伝達されるプレトルクT1を予め大きな値に設定しておけば、発進直後からスリップなく車両は走行できることになるが、発進時の路面状況にかかわらず常にプレトルクT1を大きな値に設定している場合には、燃費性能の向上を妨げるという新たな問題が発生する。つまり、発進性能の向上と燃費性能の向上は、互いに背反する関係にある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、発進性能および燃費性能をともに向上し得る車両用駆動力伝達装置の制御方法および制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の作用・効果】
上記目的を達成するため、請求項1の車両用駆動力伝達装置の制御方法では、駆動力伝達手段により一方の駆動軸と他方の駆動軸を結合させ、前記一方の駆動軸から前記他方の駆動軸に駆動力を伝達する車両用駆動力伝達装置の制御方法において、車両の発進時を検出する発進時検出ステップと、前記一方の駆動軸の駆動力により回転される駆動輪と前記他方の駆動軸の駆動力により回転される従動輪との車輪速差からスリップ量を算出するスリップ量算出ステップと、前記スリップ量算出ステップにより算出されたスリップ量を記憶するスリップ量記憶ステップと、前記スリップ量記憶ステップにより記憶されたスリップ量に基づいて、次回、前記発進時検出ステップにより車両の発進時が検出された時における、前記駆動力伝達手段による前記一方の駆動軸および前記他方の駆動軸の結合度を決定する結合度決定ステップと、を含むことを技術的特徴とする。
【0008】
また、請求項3の車両用駆動力伝達装置の制御装置では、駆動力伝達手段により一方の駆動軸と他方の駆動軸を結合させ、前記一方の駆動軸から前記他方の駆動軸に駆動力を伝達する車両用駆動力伝達装置の制御装置において、車両の発進時を検出する発進時検出手段と、前記一方の駆動軸の駆動力により回転される駆動輪と前記他方の駆動軸の駆動力により回転される従動輪との車輪速差からスリップ量を算出するスリップ量算出手段と、前記スリップ量算出手段により算出されたスリップ量を記憶するスリップ量記憶手段と、前記スリップ量記憶手段により記憶されたスリップ量に基づいて、次回、前記発進時検出手段により車両の発進時が検出された時における、前記駆動力伝達手段による前記一方の駆動軸および前記他方の駆動軸の結合度を決定する結合度決定手段と、を備えることを技術的特徴とする。
【0009】
請求項1の発明および請求項3の発明では、駆動力伝達手段により一方の駆動軸と他方の駆動軸を結合させ、一方の駆動軸から他方の駆動軸に駆動力を伝達する車両用駆動力伝達装置の制御において、車両の発進時を検出し、一方の駆動軸の駆動力により回転される駆動輪と他方の駆動軸の駆動力により回転される従動輪との車輪速差からスリップ量を算出し記憶して、この記憶されたスリップ量に基づいて、次回、車両の発進時が検出された時における、駆動力伝達手段による一方の駆動軸および他方の駆動軸の結合度を決定する。これにより、車両の発進時におけるスリップ量に基づいて駆動力伝達手段による次回の発進時の結合度を決定することができるので、発進時の路面状況に対応してスリップを抑制することができる。つまり、スリップの多い低μの路面やデコボコの悪路では車両の発進性能を向上することができ、スリップの少ない高μの路面を車両が走行する場合には、従動輪へのトルク配分を低くすることで燃費性能を向上できる。したがって、発進性能および燃費性能をともに向上することができる。
【0010】
上記目的を達成するため、請求項2の車両用駆動力伝達装置の制御方法では、請求項1において、前記結合度決定ステップは、前記スリップ量算出ステップにより算出されたスリップ量に基づいてスリップレベルを設定し記憶するスリップレベル設定ステップと、前記スリップレベル設定ステップにより記憶されたスリップレベルを前記スリップ量の変化に応じ変更し記憶する学習を行うスリップレベル学習ステップと、を含み、前記スリップレベル学習ステップにより学習したスリップレベルに基づいて前記結合度を決定することを技術的特徴とする。
【0011】
また、請求項4の車両用駆動力伝達装置の制御装置では、請求項3において、前記結合度決定手段は、前記スリップ量算出手段により算出されたスリップ量に基づいてスリップレベルを設定し記憶するスリップレベル設定手段と、前記スリップレベル設定手段により記憶されたスリップレベルを前記スリップ量の変化に応じ変更し記憶する学習を行うスリップレベル学習手段と、を備え、前記スリップレベル学習手段により学習したスリップレベルに基づいて前記結合度を決定することを技術的特徴とする。
【0012】
請求項2の発明および請求項4の発明では、算出されたスリップ量に基づいてスリップレベルを設定し記憶し、これにより記憶されたスリップレベルをスリップ量の変化に応じ変更し記憶する学習を行う。そして、このように学習したスリップレベルに基づいて結合度を決定するので、発進時の路面状況に対応したスリップ量の変化に応じてスリップを抑制することができる。つまり、スリップの多い低μの路面やデコボコの悪路では車両の発進性能を向上することができ、スリップの少ない高μの路面を車両が走行する場合には、従動輪へのトルク配分を低くすることで燃費性能を向上できる。したがって、発進性能および燃費性能をともに向上することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車両用駆動力伝達装置の制御方法および制御装置を、四輪駆動車の駆動力伝達装置を制御する駆動力伝達制御装置に適用した実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。
【0014】
ここで、図1は、本実施形態に係る駆動力伝達制御装置19を搭載した四輪駆動車の概略構成を示す説明図である。また図2は、本実施形態に係る駆動力伝達装置10の構成を示す部分断面図で、駆動力伝達装置10は回転軸線Lに対して略対称の構成を採るため、同図おいては駆動力伝達装置10の略半分の部位を示し、他の略半分の部位は省略してあることに留意されたい。
【0015】
図1に示すように、駆動力伝達制御装置19は、駆動力伝達装置10とECU18とから構成されている。駆動力伝達制御装置19、駆動力伝達装置10の構成を説明する前に、駆動力伝達制御装置19を搭載した四輪駆動車の構成概要から図1を参照して説明する。
【0016】
四輪駆動車において、トランスアクスル21は、トランスミッション、トランスファ、フロントディファレンシャルを一体に備えるもので、エンジン22の駆動力をトランスアクスル21のフロントディファレンシャル23を介して、両アクスルシャフト24a、24bに出力することにより駆動輪である左右の前輪24c、24dを駆動させ、またこの駆動力は第1プロペラシャフト25側にも出力される。
【0017】
第1プロペラシャフト25は、後述する駆動力伝達装置10を介して第2プロペラシャフト26に連結されている。第1プロペラシャフト25と第2プロペラシャフト26がトルク伝達可能に連結された場合、エンジン22の駆動力は、リヤディファレンシャル27にも伝達され、リヤディファレンシャル27から両アクスルシャフト28a、28bに出力されて、従動輪である左右の後輪28c、28dを駆動させる。なお、第2プロペラシャフト26が存在せず、駆動力伝達装置10とリヤディファレンシャル27とが一体に構成されている場合もあるので、そのような構成の場合には、リヤディファレンシャル27の入力にインナシャフト10bが直結されている。
【0018】
なお、各車輪24c、24d、28c、28dには、それぞれに車輪の回転速度を検出する回転センサ5、6、7、8が設けられており、この回転センサ5〜8からはそれぞれ車輪速度信号N1〜N4が出力される。各車輪速度信号N1〜N4は、各車輪の回転数(rpm) に一致または比例したデータである。
【0019】
エンジン22の吸気経路の途中に設けられる図示のスロットル弁には、スロットル弁の開度を検出するスロットル開度センサ2が設けられており、スロットル開度センサ2からはスロットル開度信号mが出力される。
【0020】
これらのセンサ等から出力される、車輪速度信号N1〜N4、スロットル開度信号m、駆動モード切換スイッチ1の出力信号は、ECU18の図略のA/D変換器や入出力インタフェイスにそれぞれ入力され、後述する制御処理等に使用される。
【0021】
このように駆動力伝達装置10は、第1プロペラシャフト25と第2プロペラシャフト26との間に配設されており、第1プロペラシャフト25により入力された駆動力を第2プロペラシャフト26に伝達し出力する役割を担っている。ここで、駆動力伝達装置10の構成を図2に基づいて説明する。
【0022】
図2に示すように、駆動力伝達装置10は、駆動力伝達手段としてのアウタケース10a、インナシャフト10b、メインクラッチ機構10c、パイロットクラッチ機構10d、カム機構10e等を備えている。
【0023】
アウタケース10aは、有底筒状のハウジング11aと、ハウジング11aの後端開口部に嵌合螺着されて同開口部を覆蓋するリヤカバー11bとにより形成されている。なお、アウタケース10aを構成するハウジング11aの前端部には、図1に示す第1プロペラシャフト25の末端部がトルク伝達可能に連結されている。
【0024】
インナシャフト10bは、リヤカバー11bの中央部を液密に貫通してアウタケース10a内に同軸状に挿入されており、軸方向を規制された状態で、ハウジング11aとリヤカバー11bとに回転可能に支持されている。そして、このインナシャフト10bには、図1に示す第2プロペラシャフト26の先端部がトルク伝達可能に連結されている。
【0025】
メインクラッチ機構10cは、湿式多板式の摩擦クラッチであり、インナクラッチプレート12aおよびアウタクラッチプレート12bからなる複数のクラッチプレートを備え、ハウジング11a内に配設されている。各インナクラッチプレート12aは、インナシャフト10bの外周にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に組み付けられている。また、各アウタクラッチプレート12bは、ハウジング11aの内周にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に組み付けられている。各インナクラッチプレート12aと各アウタクラッチプレート12bとは交互に配置され、互いに当接して摩擦係合すると共に、互いに離間して自由状態となる。
【0026】
パイロットクラッチ機構10dは、電磁クラッチであり、電磁石13、摩擦クラッチ14、アーマチャ15、ヨーク16から構成されている。
環状の電磁石13は、回転軸線L周りに巻回された電磁コイル13aから構成され、ヨーク16に嵌着された状態でリヤカバー11bの環状凹所11dに所定の隙間を介して嵌合されている。ヨーク16は、リヤカバー11bの後端部の外周に回転可能に支持された状態で車体側に固定されている。
【0027】
リヤカバー11bは、半径方向の断面形状が略L字形の磁性材料からなる内筒部と、その内筒部の外周に設けられた略環状の磁性材料からなる外筒部と、その内筒部と外筒部との間に固定された略環状の非磁性材料からなる遮断部材11cとから形成されている。
【0028】
摩擦クラッチ14は、アウタクラッチプレート14aおよびインナクラッチプレート14bからなる複数のクラッチプレートを備えた湿式多板式の摩擦クラッチである。各アウタクラッチプレート14aは、ハウジング11aの内周にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に組み付けられている。また、各インナクラッチプレート14bは、後述するカム機構10eを構成する第1カム部材17aの外周にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に組み付けられている。
【0029】
環状のアーマチャ15は、ハウジング11aの内周にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に組み付けられており、摩擦クラッチ14の前側に配置されて摩擦クラッチ14と対向している。
【0030】
このように構成されたパイロットクラッチ機構10dでは、電磁石13を励磁する励磁電流を電磁コイル13aに通電することにより、電磁石13を基点としてヨーク16→リヤカバー11b→摩擦クラッチ14→アーマチャ15の経路で循環する磁束が通るループ状の循環磁路が形成される。電磁石13の電磁コイル13aに流れる励磁電流は、後述するように、ECU18におけるデューティ制御により設定された所定の電流値に制御される。
【0031】
電磁石13の電磁コイル13aに流す励磁電流の断続は、図1に示す駆動モード切換スイッチ1の切換操作によりなされ、3つの駆動モードを選択できるようになっている。駆動モード切換スイッチ1は、車室内の運転席の近傍に配設されており、運転者が容易に操作できるようになっている。なお、駆動力伝達制御装置19を後述する第2の駆動モード(AUTOモード)のみの構成とした場合には、駆動モード切換スイッチ1を省略することができる。
【0032】
変換機構であるカム機構10eは、第1カム部材17a、第2カム部材17b、カムフォロアー17cから構成されている。第1カム部材17aは、インナシャフト10bの外周に回転可能に嵌合され、かつ、リヤカバー11bに回転可能に支承されており、その外周に摩擦クラッチ14のインナクラッチプレート14bがスプライン嵌合している。
【0033】
第2カム部材17bは、インナシャフト10bの外周にスプライン嵌合されて一体回転可能に組み付けられており、メインクラッチ機構10cのインナクラッチプレート12aの後側に対向して配置されている。第1カム部材17aと第2カム部材17bとの互いに対向するカム溝には、ボール状のカムフォロアー17cが嵌合されている。
【0034】
このように構成された駆動力伝達装置10においては、パイロットクラッチ機構10dを構成する電磁石13の電磁コイル13aが非通電状態、即ち、励磁電流が供給されていない場合には磁路は形成されず、摩擦クラッチ14は非係合状態になり、パイロットクラッチ機構10dは非作動状態になる。すると、カム機構10eを構成する第1カム部材17aはカムフォロアー17cを介して第2カム部材17bと一体回転可能になり、メインクラッチ機構10cは非作動状態になるため、車両は、二輪駆動である第1の駆動モード(2WDモード)となる。
【0035】
また、電磁石13の電磁コイル13aに励磁電流が通電されると、パイロットクラッチ機構10dには電磁石13を基点とするループ状の循環磁路が形成されて磁力が発生し、電磁石13はアーマチャ15を吸引する。そのため、アーマチャ15は摩擦クラッチ14を押圧し摩擦係合してトルクを発生させ、カム機構10eの第1カム部材17aをアウタケース10a側へ連結させて、第2カム部材17bとの間に相対回転を生じさせる。すると、カム機構10eでは、カムフォロアー17cが両カム部材17a,17bを互いに離間する方向ヘ移動させるスラスト力が発生する。
【0036】
そのため、第2カム部材17bはメインクラッチ機構10c側へ押動され、ハウジング11aの奥璧部と第2カム部材17bとでメインクラッチ機構10cを押圧し、摩擦クラッチ14の摩擦係合力に応じてメインクラッチ機構10cを摩擦係合させる。これにより、アウタケース10aとインナシャフト10bとの間でトルク伝達が生じ、車両は、第1プロペラシャフト25と第2プロペラシャフト26とが非連結状態とロック状態との間で四輪駆動である第2の駆動モード(AUTOモード)となる。この第2の駆動モードでは、車両の走行状態に応じて、前後輪間の駆動力分配比を100:0(二輪駆動状態)からロック状態の範囲で制御することができる。
【0037】
また、第2の駆動モードでは、各回転センサ5〜8、スロットル開度センサ2、アクセル踏込み量センサ9等の各種のセンサからの信号に基づいて、車両の走行状態や路面状態に応じて電磁石13の電磁コイル13aへの励磁電流の供給をデューティ制御することにより、摩擦クラッチ14の摩擦係合力(即ち後輪側への伝達トルク)を制御する。
【0038】
そして、電磁石13の電磁コイル13aへの励磁電流を一定値である所定のロック電流まで高めると、電磁石13のアーマチャ15に対する吸引力が増大し、アーマチャ15は強く吸引されて摩擦クラッチ14の摩擦係合力を増大させ、両カム部材17a,17b間の相対回転を増大させる。その結果、カムフォロアー17cは第2カム部材17bに対する押圧力を高めて、メインクラッチ機構10cを結合状態とする。そのため、車両は、第1プロペラシャフト25と第2プロペラシャフト26がロック状態の四輪駆動である第3の駆動モード(LOCKモード)となる。
【0039】
次にECU18の構成とECU18による駆動力伝達制御について図3を参照して説明する。
ECU18は、図略のCPU、メモリ、入出力インタフェイス、A/D変換器、出力駆動回路18f、電流検出回路18h等、から構成されており、メモリに格納された所定の制御プログラムに従って、図3に示すフィードバック制御ループ処理演算等を実行可能にしている。
【0040】
即ち、図略のA/D変換器や入出力インタフェイスを介してスロットル開度信号mや車輪速度信号N1〜N4がCPUに入力されると、まず指令トルク生成部18aより、これらの信号データに基づいて伝達トルク指令値の生成が後述するように行われる。次にこの指令トルク生成部18aにより生成された伝達トルク指令値を電流に変換する処理がトルク電流変換部18bにより行われる。これにより、目標とするトルクを発生させる電流指令値が生成されるので、この電流指令値と電流検出回路18hにより検出した電流検出信号Icpとを加算部18cにより差分演算し、この求めた差分をPI制御部18dに入力し比例積分制御を行うことにより実際に必要な励磁電流を算出する。
【0041】
そして、PWM出力変換部18eによりパルス幅変調をかけて出力駆動回路18fを介してスイッチング素子Qをスイッチング制御することにより、当該スイッチング素子QとバッテリBとの間に直列接続された電磁石13の電磁コイル13aに励磁電流が流れる。すると、前述したようにパイロットクラッチ機構10dには電磁石13を基点とするループ状の循環磁路が形成されて磁力が発生し、電磁石13はアーマチャ15を吸引する。これにより、パイロットクラッチ機構10dの電磁クラッチが作動し、第1プロペラシャフト25により入力された駆動力が第2プロペラシャフト26に伝達される。
【0042】
ここで、指令トルク生成部18aによる伝達トルク指令値の生成について、図3〜図7に基づいて詳細に説明する。
図3に示すように、指令トルク生成部18aは、プレトルク演算部18a1、ΔNトルク演算部18a2およびプレトルク変更部18a3により構成されている。
【0043】
プレトルク演算部18a1は、スロットルバルブ開度センサ2から入力されるスロットル開度信号mおよびプレトルク変更部18a3から入力される車速Vに基づいて、後述するマップ処理等によってプレトルクT1を算出する機能を有するものである。なお、「プレトルクT1」とは、車両の発進時に設定される後輪28c、28dへの伝達トルクのことである。
【0044】
ΔNトルク演算部18a2は、プレトルク変更部18a3により算出される車速Vおよびスリップ量ΔNに基づいて、マップ処理等によってΔNトルクT2を算出する機能を有するものである。なお、「ΔNトルクT2」とは、前述したフィードバック制御ループ処理により設定される後輪28c、28dへの伝達トルクのことである。
【0045】
プレトルク変更部18a3は、スロットルバルブ開度センサ2から入力されるスロットル開度信号mおよび回転センサ5〜8からそれぞれ入力される車輪速度信号N1〜N4に基づいて、車速Vやスリップ量ΔNを算出するとともにプレトルクマップを変更する演算処理を行う機能を有するもので、図4に示すプレトルク設定処理によって当該機能が実現されている。なお、このプレトルク設定処理は、所定のタイマ割り込み処理等により周期的にECU18により繰り返し実行されるものである。
【0046】
即ち、図4に示すように、プレトルク変更部18a3では、所定の初期化処理の後、まずステップS101により車速Vおよびスリップ量ΔNを算出する処理が行われる。この処理では、例えば、従動輪である後輪28c、28dの車輪速度信号N3、N4に基づく両輪の速度平均値を車速Vとして算出している。またこの車速Vを、駆動輪である前輪24c、24dの車輪速度信号N1、N2に基づく両輪の速度平均値から減算した値(前輪車輪速平均−後輪車輪速平均)を今回のスリップ量ΔNとして算出している。
【0047】
次のステップS103により、車速Vが0km/hであるか否かを判断する処理が行われる。即ち、この処理では、当該車両が停車中であるか否かを判断することにより、現在停車中であれば(S103でYes)、停車フラグをオンに設定するため、次ステップS105に処理を進め、現在走行中であればステップS105をスキップしてステップS107に処理を進める。
【0048】
ステップS105では、停車フラグをオンに設定する処理が行われる。この停車フラグは、後述するステップS119によりプレトルクマップを変更した後、当該車両に停車した事実があることを明示するためのもので、続くステップS107では、当該停車フラグの状態によって分岐先を決定している。
【0049】
ステップS107では、停車フラグの状態がオンである否かを判断する処理が行われる。即ち、ステップS119によりプレトルクマップを変更した後に、当該車両に停車した事実があれば(ステップS107でYes)、再度、プレトルクマップを変更する必要が生じるので、このような判断処理を行っている。したがって、停車フラグがオフであり、ステップS119によりプレトルクマップを変更した後に当該車両に停車した事実がなければ(ステップS107でNo)、今回は一連の本プレトルク設定処理を終了し、次回のタイマ割り込み等による処理機会を待つ。
【0050】
停車フラグがオンであれば(ステップS107でYes)、続くステップS109に処理を移行し、車速Vが0km/h以上所定速度αkm/h以下であるか否かの判断処理を行う。即ち、ステップS109では、車両の発進時を車速Vという車両の挙動から把握することによって、当該車両が発進途中であるか否かを判断し、発進途中であれば(S109でYes)、ステップS111に、また発進途中でなければ(S109でNo)、ステップS117に、それぞれ処理を移行させている。なおここで所定速度αkm/hとは、例えば数km/hである。
【0051】
続く、ステップS111およびステップS113では、車両の発進時を運転者の操作から把握することによって、当該車両が発進途中であるか否かを判断している。即ち、ステップS111では、図略のブレーキペダル信号によりブレーキはオフであるか否か、つまり運転者がブレーキペダルを踏み込んでいないか否かを判断することによって、ブレーキペダルが踏み込まれていなければ(S111でYes)、車両はブレーキ機構による制動減速中ではないものと判断する。一方、ブレーキペダルが踏み込まれていれば(S111でNo)、車両はブレーキ機構による制動減速中であるから、今回は一連の本プレトルク設定処理を終了し、次回のタイマ割り込み等による処理機会に備える。
【0052】
また、ステップS113では、スロットル開度信号mによりスロットル開度が所定のβ%以上であるか否か、つまり運転者がアクセルペダルを踏み込んでいるか否かを判断することによって、アクセルペダルが踏み込まれていれば(S113でYes)、車両は加速中であるものと判断する。一方、アクセルペダルが踏み込まれていなければ(S113でNo)、発進によるスリップは発生しないことから、この場合も一連の本プレトルク設定処理を終了し、次回のタイマ割り込み等による処理機会に備える。なお所定のβ%とは、例えばエンジン22のアイドリング時におけるスロットル開度を示す値である。
【0053】
なお、ステップS109、S111、S113の各処理は、車両の発進時を検出し判定するもので、特許請求の範囲に記載の「発進時検出ステップ」や「発進時検出手段」に相当するものである。
【0054】
ステップS109、S111、S113により、車両の発進時が検出されると(S109でYes、S111でYes、S113でYes)、ステップS115による最大スリップ量更新処理(図5参照)に移行する。
【0055】
図5に示すように、最大スリップ量更新処理では、まずステップS201により今回のスリップ量ΔNが最大スリップ量ΔNmax を超えているか否かの判断が行われる。そして、今回のスリップ量ΔNが最大スリップ量ΔNmax を超えていれば(S201でYes)、今回のスリップ量ΔNを最大スリップ量ΔNmax に置き換えるため、ステップS203により今回のスリップ量ΔNを最大スリップ量ΔNmax として記憶し更新する。一方、今回のスリップ量ΔNが最大スリップ量ΔNmax を超えていなければ(S201でNo)、最大スリップ量ΔNmax を更新する必要がないので、ステップS203をスキップして本最大スリップ量更新処理を終了し、図4に示すプレトルク設定処理に処理を戻す。最大スリップ量更新処理からステップS115の後に処理が戻ると、一連の本プレトルク設定処理を終了し、次回のタイマ割り込み等による処理機会を待つ。
【0056】
ところで、ステップS109により、車速Vが0km/h以上所定速度αkm/h以下でないと判断された場合には(ステップS109でNo)、ステップS117によるスリップレベル設定処理(図6参照)を移行する。図6に示すように、スリップレベル設定処理では、まずステップS301によりスリップレベルLVがゼロであるか否かの判断が行われる。
【0057】
即ち、最大スリップ量更新処理により設定または更新された最大スリップ量ΔNmax の度合いを示す指標値としてスリップレベルLVを用い、このスリップレベルLVを設定するか更新するかの判断が行われ、スリップレベルLVがゼロであると判断された場合には(ステップS301でYes)、ステップS311〜S329の処理により当該最大スリップ量ΔNmax に適合したスリップレベルLVが設定される。一方、スリップレベルLVがゼロであると判断されない場合には(ステップS301でNo)、スリップレベルLVとしてレベル1〜5が既に設定されていることになるので、ステップS303〜S307の処理により現在の最大スリップ量ΔNmax に基づいてスリップレベルLVの更新が行われる。
【0058】
ステップS303〜S307は、既に設定されているスリップレベルLVを調整して更新するもので、まずステップS303により最大スリップ量△Nmax が所定の閾値A以上か否かの判断が行われる。ここで「所定の閾値A」とは、スリップレベルLVを1レベル分、加算調整するために用いられるパラメータで、例えばレベル1閾値≦閾値Aとなる値が用いられる。この処理により、最大スリップ量△Nmax が所定の閾値A以上と判断された場合には(S303でYes)、ステップS307に移行してスリップレベルLVをインクリメント(LV=LV+1)する処理が行われ、最大スリップ量△Nmax が所定の閾値A以上でないと判断された場合には(S303でNo)、ステップ304に移行する。
【0059】
ステップS304に移行すると、最大スリップ量△Nmax が所定の閥値B以下か否かの判断が行われる。ここで「所定の閾値B」とは、スリップレベルLVを1レベル分、減算調整するために用いられるパラメータで、例えばレベル1閾値≧閾値Bとなる値が用いられる。この処理により、最大スリップ量△Nmax が所定の閾値B以下と判断された場合には(S304でYes)、ステップS305に移行しスリップレベルLVをディクリメント(LV=LV−1)する処理が行われる。これにより更新された各スリップレベルLVはECU18のメモリに記憶される。また、ステップS304で最大スリップ量△Nmax が所定の閾値B以下でないと判断された場合には(S304でNo)、スリップレベルLVを変化させることなく、現存のスリップレベルLVを維持する。
【0060】
これらステップS303〜S307の処理により、スリップレベルLVの調整、更新、記憶が行われると、本スリップレベル設定処理を終了し、図4に示すプレトルク設定処理に処理を戻す。
なお、上記閾値A、閾値Bは、一度設定されたスリップレベルLVを加減する場合にヒステリシスを持たせるために設定される値であって、これら閾値A、閾値Bの値の差(閾値A−閾値B)によって一度設定したスリップレベルLVが必要以上に頻繁に変化しないようにすることができる。また、上記閾値Aおよび閾値Bは、好適に閾値B≦レベル1閾値≦閾値Aと設定したが、これに限られることなく、閾値B≦閾値Aの関係にあれば、閾値Aおよび閾値Bの値を必要に応じて自由に設定しても良い。
【0061】
一方、ステップS311〜S329は、スリップレベルLVがゼロである場合に、最大スリップ量ΔNmax に適合したスリップレベルLVを設定するもので、まずステップS311により最大スリップ量ΔNmax がレベル5閾値を下回っているか否かの判断が行われる。このレベル5閾値は、以下のステップS313等により比較される各レベル4以下の閾値よりも大きな値に設定されている。なおレベル数と閾値の大小は、レベル5閾値>レベル4閾値>レベル3閾値>レベル2閾値>レベル1閾値>レベル0の関係にある。
【0062】
このステップS311により最大スリップ量ΔNmax がレベル5閾値を下回っている判断された場合には(S311でYes)、当該最大スリップ量ΔNmax に適合したスリップレベルLVはレベル4以下であることから、次の判断処理であるステップS313に処理が移される。一方、最大スリップ量ΔNmax がレベル5閾値を下回っている判断されない場合には(S311でNo)、当該最大スリップ量ΔNmax に適合したスリップレベルLVはレベル5であることから、ステップS321に移行してスリップレベルLVをインクリメント(LV=LV+1)する処理が行われる。そして、ステップS323、S325、S327、S329と順次移行して各処理ごとにスリップレベルLVをインクリメント(LV=LV+1)する処理が行われ、その結果スリップレベルLVはレベル5に設定される。これにより設定されたスリップレベルLV(レベル5)はECU18のメモリに記憶される。
【0063】
ステップS313では、最大スリップ量ΔNmax がレベル4閾値を下回っているか否かの判断が行われる。このステップS313により最大スリップ量ΔNmax がレベル4閾値を下回っている判断された場合には(S313でYes)、当該最大スリップ量ΔNmax に適合したスリップレベルLVはレベル3以下であることから、次の判断処理であるステップS315に処理が移される。一方、最大スリップ量ΔNmax がレベル4閾値を下回っている判断されない場合には(S313でNo)、当該最大スリップ量ΔNmax に適合したスリップレベルLVはレベル4であることから、ステップS323に移行してスリップレベルLVをインクリメント(LV=LV+1)する処理が行われる。そして、続くステップS325、S327、S329と順次移行して各処理ごとにスリップレベルLVをインクリメント(LV=LV+1)する処理が行われ、その結果スリップレベルLVはレベル4に設定される。これにより設定されたスリップレベルLV(レベル4)はECU18のメモリに記憶される。
【0064】
ステップS315では、最大スリップ量ΔNmax がレベル3閾値を下回っているか否かの判断が行われる。このステップS315により最大スリップ量ΔNmax がレベル3閾値を下回っている判断された場合には(S315でYes)、当該最大スリップ量ΔNmax に適合したスリップレベルLVはレベル2以下であることから、次の判断処理であるステップS317に処理が移される。一方、最大スリップ量ΔNmax がレベル3閾値を下回っている判断されない場合には(S315でNo)、当該最大スリップ量ΔNmax に適合したスリップレベルLVはレベル3であることから、ステップS325に移行してスリップレベルLVをインクリメント(LV=LV+1)する処理が行われる。そして、続くステップS327、S329と順次移行して各処理ごとにスリップレベルLVをインクリメント(LV=LV+1)する処理が行われ、その結果スリップレベルLVはレベル3に設定される。これにより設定されたスリップレベルLV(レベル3)はECU18のメモリに記憶される。
【0065】
ステップS317では、最大スリップ量ΔNmax がレベル2閾値を下回っているか否かの判断が行われる。このステップS317により最大スリップ量ΔNmax がレベル2閾値を下回っている判断された場合には(S317でYes)、当該最大スリップ量ΔNmax に適合したスリップレベルLVはレベル1以下であることから、次の判断処理であるステップS319に処理が移される。一方、最大スリップ量ΔNmax がレベル2閾値を下回っている判断されない場合には(S317でNo)、当該最大スリップ量ΔNmax に適合したスリップレベルLVはレベル2であることから、ステップS327に移行してスリップレベルLVをインクリメント(LV=LV+1)する処理が行われる。そして、続くステップS329によりスリップレベルLVをインクリメント(LV=LV+1)する処理が行われて、スリップレベルLVはレベル2に設定される。これにより設定されたスリップレベルLV(レベル2)はECU18のメモリに記憶される。
【0066】
最後のステップS317では、最大スリップ量ΔNmax がレベル1閾値を下回っているか否かの判断が行われる。このステップS319により最大スリップ量ΔNmax がレベル1閾値を下回っている判断された場合には(S319でYes)、当該最大スリップ量ΔNmax に適合したスリップレベルLVはレベル0であることから、スリップレベルLVは何も設定されることなくレベル0を維持する。一方、最大スリップ量ΔNmax がレベル1閾値を下回っている判断されない場合には(S319でNo)、当該最大スリップ量ΔNmax に適合したスリップレベルLVはレベル1であることから、ステップS329に移行してスリップレベルLVをインクリメント(LV=LV+1)する処理が行われ、レベル1に設定される。これにより設定されたスリップレベルLV(レベル1)はECU18のメモリに記憶される。これらステップS311〜S329の処理により、スリップレベルLVの設定、記憶が行われると、本最大スリップ量更新処理を終了し、図4に示すプレトルク設定処理に処理を戻す。
【0067】
このように、最大スリップ量更新処理では、ステップS311〜S329により最大スリップ量ΔNmax に基づいてスリップレベルLVを設定して記憶し、またステップS303〜S307により最大スリップ量ΔNmax の変化に応じてスリップレベルLVを変更(調整、更新)して記憶する学習処理を行うので、次に説明するように、このように学習したスリップレベルLVに基づいてプレトルク設定処理によるステップS119によりプレトルクマップを変更することができる。
【0068】
図4に示すプレトルク設定処理に戻って、ステップS117によるスリップ量設定処理が終了すると、次はステップS119によりプレトルクマップを変更する処理が行われる。即ち、図7に示すように、車速Vが0km/hにおけるプレトルクT1を決定するトルクマップをスリップレベルLVのレベル値に基づいて変更する処理が行われる。なお、図7に示すこのトルクマップは、Y軸(m)はスロットル開度(0%〜100%)、Z軸はトルク、X軸(V)は車速を示すが、車速Vが0km/hにおけるトルクT1がプレトルクマップとして設定されている。
【0069】
例えば、スリップ量更新処理(図5)のステップS203により最大スリップ量ΔNmax が閾値Aより増加した場合には、前回、レベル2に設定されていたスリップレベルLVがスリップレベル設定処理(図6)のステップS307によりレベル3に更新されるので、本ステップS119によりプレトルクマップをレベル2の特性からレベル3の特性に変更する処理が行われる。また、スリップ量更新処理のステップS203により最大スリップ量ΔNmax が閾値Bより減少した場合には、例えばレベル4に設定されていたスリップレベルLVはスリップレベル設定処理のステップS305によりレベル3に更新されるので、本ステップS119によりプレトルクマップをレベル4の特性からレベル3の特性に変更する処理が行われる。
【0070】
ステップS119によるプレトルクマップを変更する処理が行われると、続くステップS121により停車フラグをオンからオフに設定する処理が行われ、さらにステップS123により最大スリップ量ΔNmax をゼロクリアする処理が行われる。これにより、一連の本プレトルク設定処理を終了する。そして、次回のタイマ割り込み等による処理機会を待つ。
【0071】
このように、本実施形態に係る駆動力伝達制御装置19では、ECU18のプレトルク変更部18a3による処理によって、ステップS109により車両の発進時を検出し、ステップS101により第1プロペラシャフト25の駆動力により回転される前輪24c、24dと第2プロペラシャフト26の駆動力により回転される後輪28c、28dとの車輪速差からスリップ量ΔNを算出し、ステップS117、S119により算出されたスリップ量ΔNに基づいて、プレトルク演算部18a1により車両の発進時における駆動力伝達装置10による第1プロペラシャフト25および第2プロペラシャフト26の結合度を決定する。これにより、車両の発進時におけるスリップ量ΔNに基づいて駆動力伝達装置10による当該発進時の結合度を決定することができるので、発進時の路面状況に対応してスリップを抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る駆動力伝達制御装置19では、ECU18のプレトルク変更部18a3による処理によって、ステップS311からステップS329までの各処理により算出された最大スリップ量ΔNmax に基づいてスリップレベルLVを設定し記憶し、これにより記憶されたスリップレベルLVを最大スリップ量ΔNmax の変化に応じ変更し記憶する学習をステップS303、S307により行う。そして、このように学習したスリップレベルLVに基づいてプレトルク演算部18a1により結合度を決定するので、発進時の路面状況に対応したスリップ量ΔNの変化に応じてスリップを抑制することができる。
【0073】
つまり、本駆動力伝達制御装置19によると、スリップの多い低μの路面やデコボコの悪路では車両の発進性能を向上することができ、スリップの少ない高μの路面を車両が走行する場合には、後輪28c、28dへのトルク配分を低くすることで燃費性能を向上できる。したがって、発進性能および燃費性能をともに向上することができる。また、発進時に発生するメインクラッチ機構10cでのクラッチのすべりを必要最小限に抑えるので、クラッチのすべりによる発熱を抑制することもできる。
【0074】
なお、本実施形態の他の例として、図8に示すように、指令トルク生成部18aを構成するプレトルク変更部18a3に代えて加算トルク演算部18a4を用いても良い。即ち、上述した実施形態では、プレトルク変更部18a3により図7に示すプレトルクマップを変更するようにプレトルク設定処理のプレトルクマップ変更処理(S119)を実行したが、本発明の実施形態として、例えば、図7に示すレベル0を基本マップとしてこの基本マップの特性に対してスリップレベルLVのレベル値に応じた必要なトルクを加算する加算トルク演算処理を、当該プレトルク変更処理(S119)に代えて同ステップにおいて処理するように構成しても良い(図8)。これにより、プレトルクマップやΔNトルクマップを直接変更する必要がないので、当該加算トルクの演算精度を反映したより細かなトルク設定を行うことができる。
【0075】
また、上述した実施形態では、スリップレベルLVを0〜5に設定したが、本発明ではこれに限られることはなく、例えば、スリップレベルLVを「0〜15」や「0〜31」、等のように必要な数だけ任意に設定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る駆動力伝達制御装置を搭載した四輪駆動車の概略構成を示す説明図である。
【図2】図1に示す駆動力伝達装置の構成を示す部分断面図である。
【図3】本実施形態に係る駆動力伝達制御装置のECUによる駆動力伝達制御の概要を示す機能ブロック図である。
【図4】本実施形態に係る駆動力伝達制御装置のECUによるプレトルク設定処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図4に示す最大スリップ量更新処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図4に示すスリップレベル設定処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図4に示すプレトルクマップ変更ステップにより変更されるトルクマップの一例を示す当該マップの説明図である。
【図8】本実施形態に係る駆動力伝達制御装置のECUによる他の駆動力伝達制御の概要を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
10 駆動力伝達装置 (車両用駆動力伝達装置)
10a アウターケース (駆動力伝達手段)
10b インナシャフト (駆動力伝達手段、他方の駆動軸)
10c メインクラッチ機構 (駆動力伝達手段)
11a ハウジング (駆動力伝達手段)
12a インナクラッチプレート(駆動力伝達手段)
12b アウタクラッチプレート(駆動力伝達手段)
17a 第1カム部材 (駆動力伝達手段)
17b 第2カム部材 (駆動力伝達手段)
17c カムフォロアー (駆動力伝達手段)
18 ECU (発進時検出手段、スリップ量算出手段、結合度決定手段、スリップレベル手段、スリップレベル設定手段)
18a1 プレトルク演算部 (結合度決定手段)
18a2 ΔNトルク演算部
18a3 プレトルク変更部 (発進時検出手段、スリップ量算出手段、結合度決定手段、スリップレベル手段、スリップレベル設定手段)
18a4 加算トルク演算部 (発進時検出手段、スリップ量算出手段、結合度決定手段、スリップレベル手段、スリップレベル設定手段)
19 駆動力伝達制御装置 (制御装置)
24c、24d 前輪 (駆動輪)
25 第1プロペラシャフト (一方の駆動軸)
26 第2プロペラシャフト (他方の駆動軸)
28c、28d 後輪 (従動輪)
ΔN スリップ量
LV スリップレベル
S101(スリップ量算出ステップ、スリップ量算出手段)
S109、S111、S113(発進時検出ステップ、発進時検出手段)
S117、S119(結合度決定ステップ、結合度決定手段)
S303、S304、S305、S307(スリップレベル学習ステップ、スリップレベル手段)
S311、S313、S315、S317、S319、S321、S323、S325、S327、S329(スリップレベル設定ステップ、スリップレベル設定手段)

Claims (4)

  1. 駆動力伝達手段により一方の駆動軸と他方の駆動軸を結合させ、前記一方の駆動軸から前記他方の駆動軸に駆動力を伝達する車両用駆動力伝達装置の制御方法において、
    車両の発進時を検出する発進時検出ステップと、
    前記一方の駆動軸の駆動力により回転される駆動輪と前記他方の駆動軸の駆動力により回転される従動輪との車輪速差からスリップ量を算出するスリップ量算出ステップと、
    前記スリップ量算出ステップにより算出されたスリップ量を記憶するスリップ量記憶ステップと、
    前記スリップ量記憶ステップにより記憶されたスリップ量に基づいて、次回、前記発進時検出ステップにより車両の発進時が検出された時における、前記駆動力伝達手段による前記一方の駆動軸および前記他方の駆動軸の結合度を決定する結合度決定ステップと、
    を含むことを特徴とする車両用駆動力伝達装置の制御方法。
  2. 前記結合度決定ステップは、
    前記スリップ量算出ステップにより算出されたスリップ量に基づいてスリップレベルを設定し記憶するスリップレベル設定ステップと、
    前記スリップレベル設定ステップにより記憶されたスリップレベルを前記スリップ量の変化に応じ変更し記憶する学習を行うスリップレベル学習ステップと、
    を含み、前記スリップレベル学習ステップにより学習したスリップレベルに基づいて前記結合度を決定することを特徴とする請求項1記載の車両用駆動力伝達装置の制御方法。
  3. 駆動力伝達手段により一方の駆動軸と他方の駆動軸を結合させ、前記一方の駆動軸から前記他方の駆動軸に駆動力を伝達する車両用駆動力伝達装置の制御装置において、
    車両の発進時を検出する発進時検出手段と、
    前記一方の駆動軸の駆動力により回転される駆動輪と前記他方の駆動軸の駆動力により回転される従動輪との車輪速差からスリップ量を算出するスリップ量算出手段と、
    前記スリップ量算出手段により算出されたスリップ量を記憶するスリップ量記憶手段と、
    前記スリップ量記憶手段により記憶されたスリップ量に基づいて、次回、前記発進時検出手段により車両の発進時が検出された時における、前記駆動力伝達手段による前記一方の駆動軸および前記他方の駆動軸の結合度を決定する結合度決定手段と、
    を備えることを特徴とする車両用駆動力伝達装置の制御装置。
  4. 前記結合度決定手段は、
    前記スリップ量算出手段により算出されたスリップ量に基づいてスリップレベルを設定し記憶するスリップレベル設定手段と、
    前記スリップレベル設定手段により記憶されたスリップレベルを前記スリップ量の変化に応じ変更し記憶する学習を行うスリップレベル学習手段と、
    を備え、前記スリップレベル学習手段により学習したスリップレベルに基づいて前記結合度を決定することを特徴とする請求項3記載の車両用駆動力伝達装置の制御装置。
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