JP4123633B2 - 可変バルブタイミング機構の作動油供給装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カムシャフトの一端に取り付けられ、油圧により作動される可変バルブタイミング機構の作動油供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
運転状態によりバルブタイミングに対する要求が異なるため、運転状態に応じてバルブタイミングを可変制御する可変バルブタイミング機構を備えたエンジンが近年搭載されるようになってきた。このような可変バルブタイミング機構に関する技術が多数出願されている。例えば、実開平4−87308号公報、特開平5−288022号公報、特開平7−166831号公報がある。これらはいずれも可変バルブタイミング機構がカムシャフトの一端に取り付けられ、油圧により作動される機構のものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの従来の技術によれば、可変バルブタイミング機構がカムシャフトの一端に取り付けられるため、可変バルブタイミング機構付のエンジンのシリンダヘッドの長さが従来のようなシリンダヘッドだけの長さに比べ長くなってしまう。可変バルブタイミング機構付きのエンジンでシリンダヘッドの長さを短く設計しようとすると、シリンダブロックとシリンダヘッドを連結するヘッドボルトを挿入するためのスペースの配置が難しくなる。
【0004】
本発明は、上記の問題を解決し、シリンダヘッドの長さを短くするために、カムシャフトのジャーナル部に対応する軸受部の軸方向の一部に凹部を設け、この凹部にシリンダブロックとシリンダヘッドを連結するヘッドボルトを挿入できるようにしたものであり、また、ジャーナル部と軸受部の間に設けられている作動油通路は、凹部を設けることにより作動油が漏出するので、これを防ぐためジャーナル部と軸受部の間にカムベアリングを嵌入するものであり、少なくとも凹部の存する軸方向の側にはフランジを設けるようにしたカムベアリングを備えた可変バルブタイミング機構の作動油供給装置を提供することを目的にしたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段と効果】
前述の目的を達成するために、請求項1の発明は、カムシャフトの一端に取り付けられ作動油によって作動させられる可変バルブタイミング機構用アクチュエータに対し前記カムシャフトに形成された作動油通路を経由して作動油が供給されるようになされた可変バルブタイミング機構の作動油供給装置において、前記作動油通路が前記カムシャフト内に設けられた軸方向通路と、前記軸方向通路に連通し前記カムシャフトのジャーナル部に開口した半径方向通路と、前記半径方向通路に連通し前記カムシャフトの前記ジャーナル部の外周に形成された周溝と、前記周溝を密封するカムベアリングを備え、前記カムシャフトの前記ジャーナル部を軸支するための軸受部は、シリンダブロックとシリンダヘッドとを連結するヘッドボルトが挿入される凹部を一部に有し、前記カムベアリングは、前記軸受部に押圧され嵌入されるとともに少なくとも前記凹部の存する側にフランジを備えたことを特徴とする可変バルブタイミング機構の作動油供給装置である。
【0006】
このような構成の可変バルブタイミング機構の作動油供給装置によれば、カムシャフトのジャーナル部に対応する軸受部の軸方向の一部に凹部を設けてヘッドボルトを挿入するようにしたので、従来のようにヘッドボルトを挿入するためのスペースを軸受部以外のところに設ける必要がなくなり、可変バルブタイミング機構付のエンジンのシリンダヘッドの長さを短くできる。このためシリンダヘッドの設計の自由度が増え、エンジンの軽量化が実現できるという優れた効果を有する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図1に基づき説明する。
【0008】
図1には、カムシャフト3がシリンダヘッド8およびシリンダブロック9の上方に配置されており、カムシャフト3には、可変バルブタイミング機構アクチュエータ1が一端に取り付けられている様子が示されている。カムシャフト3は、ジャーナル部3aなど(図示のない)複数のジャーナル部を有し、複数のジャーナル部でシリンダヘッドの軸受部に軸支されている。カムシャフト3は、ジャーナル部3aにおいて、断面半円形状のキャップベアリング11を介した断面半円形状のカムキャップ10により押圧される。キャップベアリング11を介することなく直接カムキャップ10によりカムシャフト3を押圧してもよい。カムシャフト3は、ジャーナル部3aにおいて、シリンダヘッド8の断面半円形状の軸受部5に断面半円形状のカムベアリング4を介して回転自在に軸支されている。
【0009】
可変バルブタイミング機構用アクチュエータ1は、カムシャフト3に形成された作動油通路2を経由して供給される作動油によって作動させられるようになっている。作動油通路2は、カムシャフト3の軸方向に伸びて可変バルブタイミング機構用アクチュエータ1に作動油を供給する軸方向通路2aと、この軸方向通路2aと連通し半径方向に伸びカムシャフト3のジャーナル部3aに開口した半径方向通路2bと、この半径方向通路2bをジャーナル部3aの外周上で連通した周溝2cと、この周溝2cの作動油が外部に対し密封されるようジャーナル部3aの外周とシリンダヘッド8の軸受部5との間に押圧され嵌入されるカムベアリング4を備えている。
【0010】
シリンダヘッド8の軸受部5は、その一部に、シリンダヘッド8とシリンダブロック9を連結するヘッドボルト7を挿入するための凹部6を有している。シリンダヘッド8とシリンダブロック9を連結するヘッドボルト7を挿入するための凹部6をシリンダヘッド8の軸受部5に設けたので、ヘッドボルト7のボルト頭の直径またはボルト頭の下のワッシャの直径相当分の長さだけ、可変バルブタイミング機構付のエンジンのシリンダヘッドの長さを短くできる。このためシリンダヘッドの設計の自由度が増え、エンジンの軽量化が実現できるという優れた効果を有する。
【0011】
断面半円形状のカムキャップ10とキャップベアリング11は、(図示のない)ボルトの締結により、これらに対向して配置されている断面半円形状のカムベアリング4および断面半円形状の軸受部5とそれぞれ端部で当接し押圧する。これによってカムベアリング4は、軸受部に対し回転することがないよう軸受部5に押圧され嵌入される。ところが、軸受部5のうち凹部6が設けられている個所のカムベアリング4は、押圧されることにより凹部6の方向である半径方向外方へ変形する。カムベアリング4が半径方向外方へ変形すると、周溝2cの作動油がカムベアリング4の変形個所から外部に漏洩するという問題が発生してしまう。そのために、作動油がカムベアリング4の変形個所から外部に漏洩するのを防止することが必要である。
【0012】
図2にカムシャフト3側から見た(A視)カムベアリング4および軸受部5の様子を示す。図2に示すように、軸受部5の一部にヘッドボルト7を挿入するための凹部6が設けられている。カムベアリング4が半径方向外方に変形するのを防止するためには、カムベアリング4の剛性を高めることが必要である。
【0013】
図3に示すカムベアリング4は、剛性を高めるために凹部6の存する側13にフランジ4aを設け、その軸方向の反対側にフランジ4bを設けたものである。
【0014】
図4に示すように、凹部6の存する側13のみにフランジ4aを設けてもよい。
【0015】
図5に示すように、板状のフランジ4cをカムベアリング4aに設けてもよい。
【0016】
これらのフランジ4a、4b、4cは、別体のものをカムベアリング4に結合してもよいし、プレス成形などによりカムベアリング4に一体的に形成してもよい。また、フランジ4a、4b、4cは、カムベアリング4の端部に設けてもよいし、端部近傍に設けてもよい。
【0017】
図6に、図2に示すフランジ4a、4bを両端に持つカムベアリング4のB−B線に沿った断面のイメージ図を示す。lは、押圧されることにより凹部6が存する側13のカムベアリング4が半径方向外方へ変形する変形量を表す。試験の結果、フランジ4aおよび4b付きのカムベアリング4について、厚さ1.5mmの場合、変形量は58μmであり、厚さ2mmの場合、変形量は35μmであった。いずれの場合も、この程度の変形量だと作動油の漏洩がほとんどなく、そのため可変バルブタイミング機構の応答速度の悪化とかロックピンのひっかかりなどの作動不良を防止することができるという優れた結果を得ることができた。
【0018】
図7に、図6同様に、フランジなしのカムベアリング12(プレーンベアリング)のイメージ図を示す。Lは、図6同様に、フランジなしのカムベアリング12の変形量を表す。試験の結果、カムベアリング12について、厚さ1.5mmの場合、変形量は123μmであり、厚さ2mmの場合、変形量は105μmであった。いずれの場合も、この程度の変形量だと作動油の漏洩が起こり、そのため可変バルブタイミング機構の応答速度の悪化とかロックピンのひっかかりなどの作動不良が発生する可能性があるという結果であった。
【0019】
(図示はないが)図4のような凹部6が存する側13のみにフランジ4aを持つカムベアリング4も、図5のような板状のフランジ4cを持ったカムベアリング4も、図7で示すフランジなしのカムベアリング4に比べ、変形量を小さくすることができ、作動油の漏洩がほとんどなく、可変バルブタイミング機構の応答速度の悪化とかロックピンのひっかかりなどの作動不良を減らすことができるという優れた結果を得ることができる。
【0020】
以上説明したように、フランジ4a、4bまたは4cを持つカムベアリング4は、変形量を小さくすることができ、そのため作動油の漏洩がほとんどなく、可変バルブタイミング機構の応答速度の悪化とかロックピンのひっかかりなどの作動不良を減らすことができるという優れた効果を得ることができる。
【0021】
以上説明したように、本発明の実施形態は、カムシャフト3の一端に取り付けられ作動油によって作動させられる可変バルブタイミング機構用アクチュエータ1に対しカムシャフト3に形成された作動油通路2を経由して作動油が供給されるようになされた可変バルブタイミング機構の作動油供給装置において、作動油通路がカムシャフト3内に設けられた軸方向通路2aと、軸方向通路2aに連通しカムシャフト3のジャーナル部3aに開口した半径方向通路2bと、半径方向通路2bに連通しカムシャフト3のジャーナル部3aの外周に形成された周溝2cと、周溝2cを密封するカムベアリング4を備え、カムシャフト3のジャーナル部3aを軸支するための軸受部5は、シリンダブロック9とシリンダヘッド8とを連結するヘッドボルト7が挿入される凹部6を一部に有し、カムベアリング4は軸受部5に押圧され嵌入されるとともに少なくとも凹部6の存する側13にフランジ4a、4b、4cを備えた可変バルブタイミング機構の作動油供給装置である。
【0022】
このような本発明の実施形態によれば、シリンダヘッド8とシリンダブロック9を連結するヘッドボルト7を挿入するための凹部6をシリンダヘッド8の軸受部5に設けたので、ヘッドボルト7のボルト頭の直径またはボルト頭の下のワッシャの直径相当分の長さだけ、可変バルブタイミング機構付のエンジンのシリンダヘッドの長さを短くできる。このためシリンダヘッドの設計の自由度が増え、エンジンの軽量化が実現できるという優れた効果を有する。
【0023】
また、カムベアリング4にフランジ4a、4b、4cを設けたので、剛性が高くなり、カムベアリング4の半径方向外方への変形量を小さくすることができ、そのため作動油の漏洩がほとんどなくなり、可変バルブタイミング機構の応答速度の悪化とかロックピンのひっかかりなどの作動不良を防止することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の要部断面図を示す。
【図2】図1において、カムシャフト3側から見た(A視)カムベアリング4および軸受部5の様子を示す。
【図3】本発明の実施形態のカムベアリングの一例の斜視図を示す。
【図4】本発明の実施形態のカムベアリングの他の例の斜視図を示す。
【図5】本発明の実施形態のカムベアリングのさらに他の例の斜視図を示す。
【図6】図2のフランジ4a、4bを両端に持つカムベアリング4のB−B線に沿った組付け時の断面のイメージ図を示す。
【図7】フランジなしのカムベアリング(プレーンベアリング)の図6と同様のイメージ図を示す。
【符号の説明】
1……可変バルブタイミング機構用アクチュエータ、
2……作動油通路、
2a……軸方向通路、
2b……半径方向通路、
2c……周溝、
3……カムシャフト、
3a……ジャーナル部、
4……カムベアリング、
4a……フランジ、
4b……フランジ、
4c……フランジ、
5……軸受部、
6……凹部、
7……ヘッドボルト、
8……シリンダヘッド、
9……シリンダブロック、
10……カムキャップ、
11……キャップベアリング、
12……フランジなしカムベアリング(プレーンベアリング)、
13……凹部の存する側
Claims (1)
- カムシャフトの一端に取り付けられ作動油によって作動させられる可変バルブタイミング機構用アクチュエータに対し前記カムシャフトに形成された作動油通路を経由して作動油が供給されるようになされた可変バルブタイミング機構の作動油供給装置において、前記作動油通路が前記カムシャフト内に設けられた軸方向通路と、前記軸方向通路に連通し前記カムシャフトのジャーナル部に開口した半径方向通路と、前記半径方向通路に連通し前記カムシャフトの前記ジャーナル部の外周に形成された周溝と、前記周溝を密封するカムベアリングを備え、前記カムシャフトの前記ジャーナル部を軸支するための軸受部は、シリンダブロックとシリンダヘッドとを連結するヘッドボルトが挿入される凹部を一部に有し、前記カムベアリングは、前記軸受部に押圧され嵌入されるとともに少なくとも前記凹部の存する側にフランジを備えたことを特徴とする可変バルブタイミング機構の作動油供給装置。
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