JP4120865B2 - ガスバリアフィルムロールおよびそれを用いた積層体ならびに包装袋 - Google Patents

ガスバリアフィルムロールおよびそれを用いた積層体ならびに包装袋 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性、ガスバリア性、防湿性、印刷性、柔軟性に優れたフィルムロールに関するものである。さらには印刷層、接着層、アンカーコート層などを介してヒートシール性樹脂層を積層した積層体、およびそれを使用した包装袋に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガスバリア性に優れたフィルムとしては、プラスチックフィルム上に金属アルミニウムを蒸着したものや、塩化ビニリデンやエチレンビニールアルコール共重合体をコーティングしたものが知られている。また近年、酸化珪素、酸化アルミニウムなどの無機酸化物薄膜を真空蒸着法やCVD(化学的気相成長)法などにより積層したものが知られるようになった。
【0003】
真空蒸着法等により無機酸化物薄膜を基材フィルムに積層したガスバリアフィルムは、蒸着直後はガスバリア性が期待したほどに発現しない場合がある。また、透明性も蒸着直後には蒸着膜の着色により黒褐色や茶褐色を呈している場合がある。これは蒸着直後の無機酸化物薄膜が不完全な酸化状態であることや、未結合の部位が残っており膜密度が粗な状態にあるためと考えられている。一般的に透明包装材料としては着色しているものは敬遠されるが、とくに黄色みががっているものは内容物が古く見えるため敬遠される。
【0004】
これらの課題を解決する方法として、以下のような提案がなされている。
▲1▼酸化アルミニウムの反応性蒸着ガスバリア膜に対しては、蒸着後オフラインで水分を吸着させ、さらに水分を吸着させた温度以上で熱処理することによって、透明性、ガスバリア性を向上させた透明ガスバリア性フィルムを製造する方法が提案されている。(特許第2638797号公報参照)
また、▲2▼酸化ケイ素を蒸着したプラスチックフィルムの蒸着面に、水性液体をコーティングし加熱乾燥することによって透明性、ガスバリア性を向上させた積層包装材料の製造方法が提案されている。(特開平6−56164号公報参照)
また、▲3▼酸化ケイ素を蒸着したプラスティックフィルムの蒸着面に、過酸化水素水溶液をコーティングし、暗所もしくは所定の明るさの場所に所定温度で所定時間放置することにより透明性、ガスバリア性を向上させた酸化ケイ素蒸着フィルムおよびその製造方法が提案されている。(特開平8−197675号公報参照)
また、▲4▼酸化アルミニウムの反応性蒸着ガスバリアフィルムを25℃、相対湿度50%RHの環境下に1週間以上放置する製造方法が提案されている。(特開2000-355070参照)さらに、▲5▼蒸着時、酸化アルミニウム蒸着膜が内側になるように巻き取った後、蒸着面が外側になるように巻返した蒸着フィルムを35〜45℃、相対湿度80〜100%RHの環境下に48時間以上放置する製造方法が提案されている。(特開平11−262969参照)
いずれも不完全な酸化状態にあり未結合部分を含む薄膜構造を有する無機酸化物からなるガスバリア薄膜を種々の手段により酸化度をあげたり、薄膜構造を緻密化し、透明性とガスバリア性を向上する目的と考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、▲2▼や▲3▼の提案では種々水溶液をコーティングするためにグラビアコーターを通す、あるいは水浴をくぐらす等の工程が必要でありコスト的に不利であるし、またガスバリア性、とくに防湿性(水蒸気バリア性)が十分でないうちに蒸着膜に水溶液を塗布すると水分が蒸着膜を透過し、基材が水分を吸収し、基材フィルムの膨潤によりしわの原因になったり、とくにポリアミド樹脂など吸水性の樹脂を原料とする基材フィルムの場合は吸湿寸法変化が大きく、無機酸化物のガスバリア膜にクラックが入り、ガスバリア性の低下を招く。さらにコートした水溶液を乾燥させるために熱をかけることも、基材フィルムの熱収縮によるガスバリア膜のダメージを与えることになり、ガスバリア性を悪くする懸念がある。
【0006】
また、▲1▼▲4▼▲5▼の提案において特定の温湿度、または高温高湿下に放置して、改質に必要な水分を吸着させる方法があげられているが、工業的にはロール状態のガスバリアフィルムでは、それ自身のガスバリア性のために、改質に不可欠な水分または酸素をロール内部まで均一に吸着させることはむずかしく、結果として透明性、ガスバリア性などの特性がロールの長さ方向、巾方向でばらついたフィルムとなる懸念がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記のような問題点を解決すべく種々の検討を行った結果、巻き取り式真空蒸着法により基材ロールフィルムの少なくとも片面に無機酸化物からなるガスバリア性薄膜を蒸着したガスバリアフィルムロールを真空蒸着装置から取り出し、絶対湿度が0.008〜0.018kg/kgの環境下で、蒸着面が少なくとも一度は該環境下の空気に接触する状態で巻き返したのち、30〜60℃の恒温環境で一定期間以上保管することにより透明性とガスバリア性の向上した優れたガスバリアフィルムロールが得られるという発明にいたった。
【0008】
すなわち本発明は、巻き取り式真空蒸着法により基材フィルムの少なくとも片面に無機酸化物からなるガスバリア性薄膜層を蒸着したガスバリアフィルムロールであり、該ガスバリアフィルムロールを真空蒸着装置から取り出し、絶対湿度が0.008〜0.018kg/kgの環境下で、蒸着面が少なくとも一度は該環境下の空気に接触する状態で巻き返したのち、ロール状態で30〜60℃の恒温環境で一定期間以上保管すること、および、保管後のロールから切り出したフィルムを4枚重ねた状態での色差b値がロールの幅方向、長さ方向にわたって±3.0以内であることを特徴とするガスバリアフイルムロールである。また上記ガスバリアフィルムロールの無機酸化物からなるガスバリア性薄膜層が少なくともアルミ金属酸化物と珪素酸化物とを含む複合酸化物であることを特徴とするガスバリアフィルムロールであり、該基材フィルムが二軸延伸ポリアミドフィルムまたは二軸延伸ポリエステルフィルムであることを特徴とするガスバリアフィルムロールであり、さらには該基材フィルムとガスバリア性薄膜層との間に蒸着アンカー層を有することを特徴とするガスバリアフィルムロールである。また、本発明は上記ガスバリアフィルムロームにおいてガスバリア性薄膜層上に、必要に応じて印刷層を設けたのち、アンカーコート剤層または接着剤層を介してヒートシール性樹脂層を積層したことを特徴とする積層体であり、さらにはこの積層体を用い、ヒートシール性樹脂層を熱融着させて製袋させたことを特徴とする包装袋である。
【0009】
本発明でいう基材フイルムとは、有機高分子を溶融押出し、必要に応じ長手方向および、または幅方向に延伸、冷却、熱固定を施したフイルム、あるいは溶液流延法により製膜したフィルムを巻き取ったものなどである。有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニールアルコール、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリアリレートなどがあげられる。また、これらの(有機重合体)有機高分子は他の有機重合体と共重合をしたりブレンドしたりしてもよい。蒸着基材フィルムとして蒸着適性、ならびにガスバリアフィルムからなる包装袋としての適性とのバランスから、特に二軸延伸ポリアミドフィルムまたは二軸延伸ポリエステルフィルムが好ましく用いられる。
【0010】
さらにこの有機高分子には、公知の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤などが添加されていてもよく、その透明度は特に限定するものではないが、透明ガスバリアフィルムとして使用する場合には、50%以上の透過率をもつものが好ましい。本発明の基材フィルムは、本発明の目的を損なわない限りにおいて、無機酸化物薄膜層を蒸着するのに先行して、該フイルムをコロナ放電処理、グロー放電処理、その他の表面粗面化処理を施してもよい。また、本発明の基材フィルムは、その厚さとして5〜500μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは8〜100μmの範囲である。
【0011】
本発明でいう蒸着アンカー層とは、基材フィルムとガスバリア性薄膜層との密着力が向上し、各種後加工後のガスバリア性が維持されるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂、油変性アルキド樹脂、ウレタンアルキド樹脂、メラミンアルキド樹脂、エポキシ硬化アクリル樹脂、エポキシ系樹脂(アミン、カルボキシル基末端ポリエステル、フェノール、イソシアネートによる硬化)、イソシアネート系樹脂(アミン、尿素、カルボン酸による硬化)、ウレタン−ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、反応性アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等を用いることができる。更に、これらを水可溶化、水分散化させた樹脂を用いることもできる。上記材料のなかでも基材フィルムとガスバリア性薄膜層との密着力およびガスバリア性が、各種後加工後も維持される点で、ポリエステル樹脂、または不飽和ポリエステル樹脂とアクリル系モノマーとのグラフト共重合体が好ましい。
【0012】
本発明でいう基材フィルムとガスバリア性薄膜層との間に蒸着アンカー層を設ける方法としては、基材フィルム製造時に塗布するインライン方式、フィルムの製造とは別工程で塗布するオフライン方式のいずれも用いることができる。また、塗布には公知の塗工方法を用いることができ、たとえば、ロールコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、グラビアコート法、含浸法、カーテンコート法等を用いることができる。生産性の観点から、基材フィルム製造時にインライン方式で蒸着アンカー層を設けることが好ましいが、具体的には未延伸あるいは一軸延伸後の基材フィルム上にグラフト共重合体含有溶液などを塗布・乾燥した後、必要に応じてさらに一軸延伸あるいは二軸延伸を行い、さらに熱固定してもよい。基材フィルム上にグラフト共重合体含有溶液などを塗布・乾燥する場合、乾燥温度は150℃以上、特に200℃以上が好ましく、これにより接着性樹脂層とポリアミド系フィルムとの密着性が向上する。蒸着アンカー層の厚みは、好ましくは0.01〜1μm、より好ましくは0.02〜0.5μmである。厚みが薄すぎると蒸着アンカー層と基材フィルムとの密着性が十分とならないことがあり、逆に厚すぎるとブロッキングが発生することがあり好ましくない。
【0013】
本発明でいう巻き取り式真空蒸着法とは、真空排気設備を備えた真空チャンバー内に冷却機能をもつコーティングドラムならびにフィルムロールの巻出しおよび巻取り機構などの走行系と、坩堝に入った蒸着材料を加熱蒸発させる蒸発源を有する真空蒸着機によって基材フィルムロールの少なくとも片面の長手方向に連続的に無機酸化物からなるガスバリア性薄膜層を積層する方法であり、必要に応じて開閉シャッター、プラズマ前処理機、除電設備、シワ取りロール、真空ゲージ、ガス導入ポート、膜厚モニターなどを備えてもよい。
【0014】
無機酸化物からなるガスバリア性薄膜の原料となる金属あるいは金属酸化物などの蒸着材料はカーボンや高融点金属製の坩堝に入れられ、抵抗加熱、誘導加熱あるいは電子銃により間接的あるいは直接的に加熱蒸発され、その蒸気中を冷却されたコーティングドラムに密着した基材フィルムが通過することによりフィルム上にガスバリア性の薄膜が蒸着される。抵抗加熱や誘導加熱では坩堝を加熱するため、坩堝を構成する材料の蒸着膜への混入が懸念されるが、電子銃加熱では、蒸着材料が直接加熱されるため薄膜の不純物が少ないという利点がある。また、一般的に金属酸化物の融点は、金属よりもかなり高温であるが電子銃加熱では坩堝の耐熱性という制約が無いため金属酸化物を蒸着材料とする場合このましく用いられる。また蒸着速度の観点からも電子銃による材料加熱がこのましい。
【0015】
本発明でいう無機酸化物からなるガスバリア性薄膜の原料となる金属あるいは金属酸化物などの蒸着材料としては、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、チタン、ケイ素、ゲルマニウム、ジルコニウム、亜鉛、チタン、クロム、インジウム、錫などの金属およびその金属酸化物、またはこれらの複合物を言う。ここでいう金属酸化物とは、酸化が完全でなく酸素を若干欠損したもの、例えばSiOx(x=1.0〜1.9)といった表現をする無機酸化物も含む。ガスバリア性の観点から酸化ケイ素または酸化アルミニウムが好ましく、さらに耐屈曲性の観点から酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物が特に好ましい。
【0016】
本発明でいう無機酸化物からなるガスバリア性薄膜の膜厚は5〜50nmが好ましく、透明性とガスバリア性と耐屈曲性のバランスから、より好ましくは10〜30nmである。膜厚が5nmより薄いと実用的なガスバリア性が得られにくく、逆に膜厚が50nm以上では、ガスバリア性薄膜の内部応力による薄膜内部のクラックや基材からの剥がれなどが発生しやすいため、膜厚相当のガスバリア性の向上効果が得られず、かえって耐屈曲性や製造コストの点で不利となる。
上記の膜厚は、蛍光X線分析により薄膜を構成する無機酸化物の金属元素の定量分析により測定される。真空蒸着機内のコーティングドラムから巻き取り部のパスライン中のロール上で蛍光X線モニターを取り付け蒸着中にオンラインでモニタリングし、その結果にもとづき電子銃の出力を微調整しながら無機酸化物薄膜の膜厚を制御することができる。
【0017】
本発明でいうフィルムロールの巻き返しとは、真空蒸着機中の減圧下で巻き取られたフィルムロールをフィルムスリッターなどの設備を使い、無機酸化物からなるガスバリア薄膜表面を、少なくとも酸素と水蒸気の存在する空気中にさらし、さらに巻き取ることで、蒸着フィルムロールのフィルムとフィルムの層間に酸素と水蒸気を含む空気層を存在せしめる操作のことを指す。フィルムロール全体に対する空気の体積比は1〜5%程度とすることが好ましい。
【0018】
このとき、無機酸化物からなるガスバリア薄膜表面が少なくとも0.1秒間以上空気に触れることが好ましい。仮に巻き返しのライン走行速度600m/minとすると、0.1秒間にフィルムが1m走行するので、巻き出しから巻き取りまでのパスラインは少なくとも1m以上必要である。このときフィルムロールの巻き巾を変更したり、ロール端面を揃えるためのスリット操作は必要に応じてされるもので必ずしも必要というわけではない。
【0019】
本発明でいう絶対湿度とは、ある温度の空気1kg中に含まれる水蒸気の絶対量であり、単位はkg(水蒸気)/kg(空気)で表される。相対湿度とは、いわゆる「空気線図」で表わされる、ある温度において含むことのできる水蒸気限界量に対して何%の水蒸気量が含まれるかを示している。例えば1気圧(1013hPa)、23℃の空気では、限界(飽和)水蒸気量が0.0177kg/kgであり、相対湿度100%RHでは絶対湿度が0.0178Kg/kgであり、相対湿度50%RHでは絶対湿度0.0087kg/kgとなる。
【0020】
以下に実用的な温度域における相対湿度と絶対湿度の関係例をあげる。
18℃ 相対湿度65%RH=絶対湿度0.0083kg/kg
20℃ 相対湿度55%RH=絶対湿度0.0080kg/kg
25℃ 相対湿度45%RH=絶対湿度0.0089kg/kg
25℃ 相対湿度85%RH=絶対湿度0.0170kg/kg
28℃ 相対湿度35%RH=絶対湿度0.0082kg/kg
28℃ 相対湿度70%RH=絶対湿度0.0169kg/kg
30℃ 相対湿度65%RH=絶対湿度0.0174kg/kg
32℃ 相対湿度60%RH=絶対湿度0.0180kg/kg
【0021】
蒸着されたフィルムロールを巻き返す湿度環境として、絶対湿度が0.008Kg/kg以上があることが好ましく、作業環境の観点から0.008〜0.015kg/kgがより好ましい。絶対湿度が0.008kg/Kg以下では巻き返し時にフィルムロールのフィルムとフィルムの層間に取り込まれる水蒸気量が不足する。つまり、その後の30℃以上の恒温環境下での保管工程で、無機酸化物からなるガスバリア薄膜が緻密化しガスバリア性が向上するのに必要な水分量が不足する。また、巻返し時の剥離帯電による静電気による放電も絶対湿度が大きいほど起こりにくい。しかしながら、基材フィルムがポリアミド樹脂など吸湿性の樹脂からなる場合は、絶対湿度が高いと、具体的には絶対湿度が0.02kg/kg程度以上になると、吸湿膨張によるシワ、滑りにくくなることによるロール巻シワなどが発生しやすくなり、ガスバリア薄膜層へのダメージが懸念される。
【0022】
本発明の蒸着フィルムロールは、それ自身ガスバリア性のフィルムのため、真空蒸着機中の減圧下で巻き取られたフィルムロールの状態、あるいは巻き返し操作後の巻き取られたフィルムロールの状態では、外部からその内部に侵入しうる酸素や水蒸気の量は極めて少なく、本発明のように絶対湿度0.008kg/kg以上の空気中での巻き返し操作無くしてはガスバリア性の向上はあまり期待できない。
【0023】
本発明でいう30〜60℃の恒温環境とは、たとえば恒温槽内や温調設備を有した保管庫内のことを指し、設定した温度に対して少なくとも±5℃以内では管理できる能力を有していればよい。保管期間中の平均温度が30℃未満であると、無機酸化物からなるガスバリア薄膜の緻密化がほとんど進行せず、逆に60℃以上では基材フィルムの添加剤のブリードや、基材フィルム自身の軟化のため、各種物性が劣化したり、フィルム同士がブロッキングしたりするという問題がある。湿度に関しては恒温槽内や温調設備を有した保管庫内の調湿能力が備わっているほうが好ましいが、必ずしも必要ではないが結露が発生しないような構造であり、およそ30〜70%RH程度に保たれるのであればより好ましい。
【0024】
上記のような恒温環境下で保管する一定期間としては、7日間以上が好ましく、より好ましくは14日以上である。7日未満であると、無機酸化物からなるガスバリア薄膜の緻密化がそれほど進行せず、逆にあまり長期間保管しても、徐々にガスバリア性や透明性の向上のペースは低下していくため、実用上は、必要とされる特性と在庫管理コスト等のバランスで保管温度と保管期間は決められる。また、保管温度と保管期間はある程度トレードオフの関係があること見出されており、その他の物性を損ねない範囲において、必要に応じ保管温度を上げて、目標とするガスバリア性と透明性が得られるまで期間を短縮することは可能である。逆に温度をあげると他の物性面に影響がでる懸念のある場合は、保管温度を30℃程度にして目標とするガスバリア性と透明性が得られるまで期間を延長してもよい。
【0025】
本発明でいうヒートシール性樹脂層とは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱融着可能な樹脂層であり、その積層方法としては、あらかじめフィルム状に成型されたものをドライラミネーション法等により積層したり、あるいは溶融させた状態で押し出しラミネーション法等により積層させても良い。またこのヒートシール性樹脂層とのラミネートに先立ち、蒸着面に各種印刷を施してもよい。印刷方法は、本発明の目的を逸脱しない範囲において、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷など各種公知の印刷法を用いることができる。この際、インキ濡れ性向上や蒸着面の保護目的のため印刷層の第一色目として、メジウムコートやプライマーコートなどを行ってもよい。
【0026】
本発明でいう包装袋とは、上記熱融着可能なヒートシール樹脂層をラミネートした積層体を、公知の製袋機により、ヒートシール面同士を熱融着して袋状に加工したものであり、製袋と同時または製袋後に内容物が充填され使用される。飲食品、医薬品、化粧品、電子機器などの包装においては、内容物の腐敗や機能劣化などの観点から安定したガスバリア性が求められている。
【0027】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明は特に以下の実施例に限定されるものではない。
(測定方法)
【0028】
本発明でいう色差b値とは、JIS K8722法に準じ測色色差計(日本電色株式会社製ZE2000)を用いハンターLab表色系で測定した場合のb値を表す。一般的にb値の値が大きいほど黄色みがきつくなる。測定時の標準合わせには、付属の標準白板(三刺激値 Y=94.09、X=92.19、Z=110.78)を用いた。本発明では、フィルムロールから4枚重なった状態でロール内の所定位置よりサンプリングを行い、そのまま4枚重ねにした状態で光源側に基材フィルム面(反蒸着面)を向け透過法で測定したときのb値を用いた。
【0029】
本発明でいう酸素透過度は、JIS K7126B法に準じ酸素透過度測定装置(米MOCON社製 OXTRAN-2/20)を用い、温度23℃、湿度65%RHの測定条件で測定した。また水蒸気透過度はJIS K7129B法に準じ水蒸気透過度測定装置(米MOCON社製 PERMATRAN-W3/31)を用い温度40℃、湿度90%RHの測定条件で測定した。ただし、基材フィルムに二軸延伸ポリアミドフィルムを使用し、かつヒートシール性樹脂層を積層していないものだけについては、温度23℃、湿度65%RHで測定した。
【0030】
(実施例1)
巻き取り式真空蒸着機内のロールフィルム巻き出し側に厚さ12μm全巾2000mmの2軸延伸ポリエステルフィルムロール(東洋紡績株式会社製 商品名E5100)を取り付け、冷却ドラムに巻きつけ、巻き取り側まで通紙したのちチャンバー蓋を閉じ、10-4Pa台まで減圧した。冷却ドラム直下のカーボン製坩堝に入った酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素を電子銃により電子ビームを走査し加熱蒸発させた。坩堝付近の圧力が安定したら、フィルムの走行速度を150m/minに加速しシャッターを開いた。酸化アルミニウムと酸化ケイ素からなる2元系無機酸化物膜をポリエステルフィルム上でインラインの蛍光X線モニターで膜厚を測定し、平均膜厚が20nm、Al元素:Si元素の重量比率が1:1になるよう電子銃出力を微調整しながら蒸着をおこなった。走行速度150m/minで5000m巻き取ったのちシャッターを閉じ、電子銃の出力を止め、フィルムの走行を停止した。真空蒸着機内を大気圧にもどし、蒸着されたフィルムロールをとりだし、スリッター設備の巻き出し側に取り付け、巻き取り側に通紙した。フィルム巻き出し点からフィルム巻取り点までのフィルムパスラインは約2mであり、フィルムはいくつかのロールと接触する箇所以外は空気と接触している。室温25度、相対湿度60%RH(絶対湿度 約0.012kg/kg)の恒温恒温環境下でフィルムをスリットしながらスリッター巻取り側に到達ライン走行速度200m/min巻き取った。このスリットされた蒸着フィルムロールを30℃の恒温槽に7日間保管しガスバリアフィルムロールを調製した。
【0031】
(実施例2)
スリットされた蒸着フィルムロールを40℃の恒温槽に7日間保管したこと以外は、実施例1と同様にガスバリアフィルムロールを調製した。
【0032】
(実施例3)
スリットされた蒸着フィルムロールを30℃の恒温槽に14日間保管したこと以外は、実施例1と同様にガスバリアフィルムロールを調製した。
【0033】
(実施例4)
基材フィルムロールとして、含アクリル酸ポリエステル樹脂の水分散体を蒸着アンカー層として製膜時にインラインコートした厚さ15μmの全巾2000mm2軸延伸ポリアミドフィルムロールを使用した以外は実施例1と同様にガスバリアフィルムロールを調製した。
【0034】
(実施例5)
実施例1の30℃の恒温槽に7日間保管した後のガスバリアフィルムロールに、ドライラミネーション法により蒸着面側にポリエチレンフィルム(東洋紡績株式会社製 L6102 40μm)をラミネートし積層体を得た。接着剤と硬化剤は東洋モートン株式会社製 TM590およびCAT56を使用し、接着剤の硬化促進のため40℃で2日間保管した。
【0035】
(実施例6)
実施例1の30℃の恒温槽に7日間保管した後のガスバリアフィルムロールに、グラビア印刷法により蒸着面に印刷部と無地部を含む図柄で印刷を行った。使用インキは東洋インキ株式会社製ニューLPスーパー白を用いた。その後実施例5と同様の方法により印刷面にポリエチレンフィルムをドライラミネートした積層体を調整した。
【0036】
(実施例7)
実施例1の30℃の恒温槽に7日間保管した後のガスバリアフィルムロールに、アンカーコート剤として東洋モートン製EL530AおよびEL530Bを使用し、押出しラミネーション法により蒸着面側にポリエチレン樹脂層(住友化学株式会社製 スミカセンL705を)20μmの厚さでラミネートした積層体を調整した。
【0037】
(比較例1)
蒸着機から取り出した蒸着されたフィルムロールをスリットすることなしに、蒸着機から取り出したロール状態のまま、30℃の恒温槽に7日間保管したこと以外は実施例1と同様にガスバリアフィルムロールを調製した。
【0038】
(比較例2)
室温20度、相対湿度40%RH(絶対湿度 約0.006kg/kg)の恒温恒温環境下でフィルムをスリットしながらスリッター巻取り側に巻き取ったこと以外は、実施例1と同様にガスバリアフィルムロールを調製した。
【0039】
(比較例3)
スリットされた蒸着フィルムロールを恒温槽などに保管することなくすぐにフィルムロールを巻きだしガスバリア性、色差などの物性評価を実施した。
【0040】
(比較例4)
スリットされた蒸着フィルムロールを70℃の恒温槽に保管したこと以外は実施例1と同様に作成したガスバリアフィルムロームを巻きだそうとしたが、フィルム同士がブロッキングした状態が部分的にあり実用性を損ねていた。
【0041】
(比較例5)
基材フィルムロールとして厚さ15μm全巾2000mmの蒸着アンカー層として含アクリル酸ポリエステル系樹脂の水分散コート剤を製膜時にインラインコートした2軸延伸ポリアミドフィルムロールを使用した以外は実施例1と同様に作成したフィルムロールを室温30度、相対湿度80%RH(絶対湿度 約0.022kg/kg)の恒温恒温環境下でフィルムをスリットしながらスリッター巻取り側に巻き取ろうとしたが、吸湿による巻シワが発生し実用品位を損ねてしまった。
【0042】
実施例1〜4、比較例1〜3のフィルムロールの長さ方向に対して表層部および中間部から切り出したフィルム片、および幅方向にたいして端部の酸素透過度、水蒸気透過度、色差b値の測定結果を表1に示す。また、実施例5〜7の積層体から切り出したフィルム片の酸素透過度、水蒸気透過度を表2に示す。
【0043】
【表1】
Figure 0004120865
【0044】
【表2】
Figure 0004120865
【0045】
上記の実施例、比較例より明らかなように、巻き取り式真空蒸着法により基材ロールフィルムの少なくとも片面に無機酸化物からなるガスバリア性薄膜を蒸着したガスバリアフィルムロールを、絶対湿度が0.008〜0.018kg/kgの環境下で巻き返したのち、30〜60℃以上の恒温環境で一定期間以上保管することにより、ガスバリア性、透明性を長さ方向、幅方向全体にわたって均一に向上させることができる。またこのガスバリアフィルムロールとヒートシール性樹脂層をラミネートした積層体においても優れたガスバリア性、透明性が得られる。
【0046】
【発明の効果】
以上のように本発明によるガスバリアフィルムロールは、巻き取り式真空蒸着法により基材ロールフィルムの少なくとも片面に無機酸化物からなるガスバリア性薄膜を蒸着され、絶対湿度が0.008〜0.018kg/kgの環境下で蒸着面が該環境下の空気に接触する状態で巻き返したのち、30〜60℃の恒温環境で一定期間以上保管することにより、ガスバリア性、透明性が長さ方向、幅方向わたって均一に向上され、各種包装材料として優れた特性のフィルムを提供するものである。また本発明のガスバリアフィルムロールを用いヒートシール性樹脂層とラミネートされた積層体においても同様の効果があり、その積層体を用いた包装袋においても包装材料として特性にばらつきの少ないものが得られる。

Claims (6)

  1. 巻き取り式真空蒸着法により基材フィルムの少なくとも片面にアルミ金属酸化物と珪素酸化物とを含む複合酸化物からなるガスバリア性薄膜層を蒸着したガスバリアフィルムロールであり、該ガスバリアフィルムロールを真空蒸着装置から取り出し、絶対湿度が0.008〜0.018kg/kgに調湿された空気に、前記複合酸化物からなるガスバリア性薄膜表面0.1秒間以上接触する状態で巻き返したのち、ロール状態で30〜60℃の恒温環境で7日間以上保管すること、および、保管後のロールから切り出したフィルムを4枚重ねた状態での色差b値がロールの幅方向、長さ方向にわたって±3.0以内であることを特徴とするガスバリアフイルムロール。
  2. 請求項1記載の基材フィルムが二軸延伸ポリアミドフィルムまたは二軸延伸ポリエステルフィルムのいずれかであることを特徴とするガスバリアフィルムロール。
  3. 請求項1記載の基材フィルムとガスバリア性薄膜層との間に蒸着アンカー層を有することを特徴とするガスバリアフィルムロール。
  4. 請求項1記載のガスバリアフィルムロールにおいてガスバリア性薄膜層上にアンカーコート剤層または接着剤層を介してヒートシール性樹脂層を積層したことを特徴とする積層体。
  5. 請求項記載の積層体においてガスバリア性薄膜層上に、まず印刷層を設けたのち、アンカーコート剤層または接着剤層を介してヒートシール性樹脂層を積層したことを特徴とする積層体。
  6. 請求項または請求項のいずれかに記載の積層体を用い、ヒートシール性樹脂層を熱融着させて製袋したことを特徴とする包装袋。
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