JP4116197B2 - 信号波形計測方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、検出器からの信号の波形・時間変化から物理量を求めるための信号波形計測方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
所定の物質等の測定対象からの光や放射線などを検出器で検出することによって得られる検出信号の時間波形や時間による強度変化は、測定対象の状態やその変化等についての様々な情報を含んでおり、そのような時間変化を示す波形データから測定対象についての様々な物理量を算出し求めることができる。
【0003】
例えば、測定光としてパルス光を散乱吸収体に入射し、その散乱吸収体中を伝播して出射された光とその時間変化を測定・検出することによって、散乱吸収体の吸収係数や散乱係数などの内部情報を得ることができる(例えば、特開平8−94517号公報、特開平8−136448号公報、特開平10−111238号公報)。このような信号の時間変化による物理量の算出・決定は、励起された物質から発せられる蛍光や放射性物質等から放出される放射線の測定・検出など、様々な測定において同様に行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
信号の時間変化・波形データからの情報の抽出方法としては、例えば時間分解波形の時間についてのモーメントを求め、それらのモーメントから物理量を算出する方法が用いられる。ここで、検出器からの検出信号は、検出しようとする検出対象によって生成された信号であるシグナル信号のみでなく、外来のノイズ光や検出器自体の暗電流などに起因するノイズ信号(バックグラウンド信号)を含んでおり、このようなノイズ信号の存在は、算出される物理量の決定精度を低下させる要因となる。
【0005】
シグナル信号とノイズ信号とを分離する方法としては、あらかじめノイズ信号レベルを計測しておくか、またはシグナル信号の計測と同時にノイズ信号についても計測し、得られたノイズ信号レベルを検出信号の波形データから減算することによってシグナル信号データを得る方法が通常用いられる。しかしながら、このような方法ではノイズ信号レベルの定量精度によってシグナル信号の定量精度が大きく影響・低下されてしまうという問題を生じる。
【0006】
例えば、ノイズ信号レベルをあらかじめ計測しておいた場合には、ノイズ信号の時間的な変動(ドリフト)の影響を直接的に受けてしまい、一方、シグナル信号と同時にノイズ信号を計測する場合には、シグナル信号とノイズ信号との精度の良い区別・分離が困難である。また、いずれの場合においても、定量精度を充分に向上させるためには計測時間を長時間としなくてはならず、計測の容易さの点で実用上問題がある。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、ノイズ信号の影響が低減されるとともに、物理量算出の精度が向上された信号波形計測方法及び装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明による信号波形計測方法は、検出器からの検出信号の波形に基づいて所定の物理量を算出する信号波形計測方法であって、(1)測定によって検出信号を取得する検出ステップと、(2)検出信号に基づいて、その強度の時間変化を示す波形データを取得する信号処理ステップと、(3)波形データに基づいて、物理量の算出に必要とされる各次数の時間原点まわりのモーメントのそれぞれについて、各次数ごとに所定の歪み関数及び所定の歪み量を選択し、それらによって波形データに歪みを加えてそれぞれの次数のモーメントを求めるモーメント演算ステップと、(4)モーメント演算ステップにおいて求められた各次数のモーメントから物理量を算出する物理量演算ステップと、(5)モーメント演算ステップにおいて波形データに加えた歪みの歪み量を記憶しておく歪み量記憶ステップと、(6)物理量演算ステップにおいて算出された物理量に対して、歪み量記憶ステップにおいて記憶された歪み量によって歪み補正を行う歪み補正ステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明による信号波形計測装置は、検出器からの検出信号の波形に基づいて所定の物理量を算出する信号波形計測装置であって、(1)測定によって検出信号を取得する検出手段と、(2)検出信号に基づいて、その強度の時間変化を示す波形データを取得する信号処理手段と、(3)波形データに基づいて、物理量の算出に必要とされる各次数の時間原点まわりのモーメントのそれぞれについて、各次数ごとに所定の歪み関数及び所定の歪み量を選択し、それらによって波形データに歪みを加えてそれぞれの次数のモーメントを求めるモーメント演算手段と、(4)モーメント演算手段において求められた各次数のモーメントから物理量を算出する物理量演算手段と、(5)モーメント演算手段において波形データに加えた歪みの歪み量を記憶しておく歪み量記憶手段と、(6)物理量演算手段において算出された物理量に対して、歪み量記憶手段において記憶された歪み量によって歪み補正を行う歪み補正手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
あるいは、信号波形計測方法(計測装置)は、モーメント演算ステップ(モーメント演算手段)において、検出信号に含まれるノイズ信号の影響が無くなるように所定の歪み関数及び所定の歪み量を選択することを特徴としても良い。
【0011】
本計測方法及び計測装置においてはノイズ信号の減算を行うことなく、得られる物理量におけるノイズ信号の影響を除去・低減し、それによってノイズ信号の減算に起因する物理量の定量精度低下の抑制を実現している。具体的には、物理量算出に用いられるノイズ信号を含む波形データに対して、ノイズ信号レベルへの依存性が所定の範囲以内となるなど、与えられた条件を満たすように歪みを加えてモーメントを求め、その歪み波形データ・歪みモーメントから歪みの影響を含むがノイズ信号の影響が低減された物理量を算出する。
【0012】
さらに、歪みを含む物理量に対して歪み補正を行って最終的な物理量を求める。ここで、ノイズ信号の影響についてはノイズ信号レベルの定量精度によってその不確定さが大きいのに対して、加えた歪みの影響についてはほぼ正確に定量可能である。したがって、ノイズ信号について直接に補正を行うのではなく、歪みによってノイズ信号の影響を低減した後に、加えた歪みについての補正を行うことによって、ノイズ信号の影響が除去された物理量の定量精度を大幅に向上させることができる。また、ノイズ信号の計測等が不要になるため、計測時間を大幅に短縮することが可能となる。このような方法は、微弱光の測定など検出されるシグナル信号が弱くノイズ信号レベルが相対的に強くなる場合などに、特に有効である。
【0013】
なお、ノイズ信号の影響の除去については、上記したようにある一定のレベル以下とするように設定しても良いし、その影響が無くなる条件を用いるようにしても良い。
【0014】
また、検出信号の波形に基づいて算出される所定の物理量は、測定の測定対象の状態またはその変化過程に関する物理量であり、検出ステップ(検出手段)は、測定対象を検出器による検出対象として直接的に測定を行って、検出信号を取得することを特徴とする。
【0015】
あるいは、検出信号の波形に基づいて算出される所定の物理量は、測定の測定対象の状態またはその変化過程に関する物理量であり、検出ステップ(検出手段)は、測定対象と相互作用するか、または測定対象において生じた物質を検出器による検出対象として間接的に測定を行って、検出信号を取得することを特徴とする。
【0016】
測定対象について直接的または間接的に測定・検出を行って、その測定対象の属性、性質、構造などの様々な状態量やその変化などについての情報・物理量を精度良く算出し決定することが可能である。
【0017】
測定対象と相互作用した物質を検出対象とする計測としては、例えば、所定波長を有するパルス光を測定対象である散乱吸収体中に入射する光入射ステップ(光入射手段)をさらに有し、検出ステップ(検出手段)は、光入射ステップ(光入射手段)によって入射され散乱吸収体内部を伝播して相互作用した検出対象である所定波長の光を検出して検出信号を取得するとともに、物理量演算ステップ(物理量演算手段)及び歪み補正ステップ(歪み補正手段)は、散乱吸収体の内部情報に関する物理量を算出及び歪み補正する構成がある。これは、測定光による散乱吸収体の内部状態の計測方法(計測装置)に相当する。
【0018】
また、測定対象において生じた物質を検出対象とする計測としては、検出ステップ(検出手段)は、測定対象である被測定物質において生じた検出対象である蛍光を検出して検出信号を取得するとともに、物理量演算ステップ(物理量演算手段)及び歪み補正ステップ(歪み補正手段)は、被測定物質の蛍光発光に関する物理量を算出及び歪み補正する構成がある。これは、蛍光現象についての蛍光寿命計測方法(計測装置)に相当する。
【0019】
また、検出信号の強度の時間変化は、指数関数的に変化する減衰過程であることを特徴としても良い。ここで、指数関数的な減衰変化とは言い換えれば変化量ΔCが元の量Cに対して、ΔC=−kCの形で比例する変化過程をいう。自然界における減衰過程の多くはこのような条件を満たす。この場合、歪み関数としては例えば適当に選択された指数関数形の関数を用いることが好ましい。
【0020】
この他にも、放射性物質から放出される放射線の計測など、様々な計測・測定への信号波形計測方法(計測装置)の適用が可能である。
【0021】
また、それぞれの演算操作については、モーメント演算ステップ(モーメント演算手段)で波形データに加える歪みにおいて、計算機を用いたシミュレーションによって求められた歪み量を用いることが好ましい。
【0022】
また、物理量演算ステップ(物理量演算手段)は、物理量とモーメントとの対応関係を示す解析的または近似的に求められた関係式を用いて、物理量を算出することが好ましい。
【0023】
さらに、歪み補正ステップ(歪み補正手段)で物理量に対して行われる歪み補正において、物理量が複数の異なる次数のモーメントを用いて算出される場合に、それぞれの次数のモーメントに対する歪み量の重み平均を歪み補正に用いる歪み量とすることが好ましい。
【0024】
また、このような計測においては、計測に用いる装置自体の応答特性について、その波形データ及び求められる物理量への影響が問題となることがある。このような場合には、あらかじめ装置の応答関数である装置関数を求めておき、デコンボリューション法などによりその効果を分離することが行われる。このとき、モーメント演算ステップ(モーメント演算手段)において、波形データと同様の歪みを加えた装置の応答についての装置関数を用いて、波形データに重畳されている装置関数の影響を除去することが好ましい。これによって、歪みを加えたことに対応した装置関数の除去を行うことができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面と共に本発明による信号波形計測方法及び装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
図1は、本発明に係る信号波形計測装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。本信号波形計測装置及びそれによる信号波形計測方法は、測定対象Aの属性、性質、構造などの諸状態またはその変化などに関する物理量を、所定の検出器などを有して構成された検出部1から出力される検出信号の信号波形データを計測・演算処理することによって算出・測定するものである。
【0027】
検出部1は、測定対象自体を検出対象として検出・測定を行っても良く、測定対象と相互作用するか、または測定対象において生じた物質などの測定対象からの物質を検出対象として検出・測定を行っても良い。ただし、ここでは検出対象とする上記の物質については、例えば質量を有しない光などをも含む広義の物質をいう。また、検出部1に用いられる検出器としては検出対象に応じて好適なものを選択すれば良く、例えば光検出器や放射線検出器などが挙げられる。
【0028】
検出部1からの検出信号は、信号処理部2においてその強度の時間変化を示す波形データとされた後、波形データから物理量を求めるための演算処理部3に入力される。演算処理部3は、モーメント演算部4、物理量演算部5、歪み量記憶部6、及び歪み補正部7を有して構成されている。信号処理部2からの波形データはモーメント演算部4に入力され、所定の歪み関数及び歪み量を用いて歪みを加えた上で、その歪み波形データに基づいて物理量の算出に必要な次数のモーメントが求められる。
【0029】
次に、物理量演算部5において、モーメント演算部4からのモーメント値によって得ようとする物理量が計算される。また、モーメント演算部4で波形データに加えられた歪み量などの必要な情報は、歪み量記憶部6において記憶される。
【0030】
物理量演算部5で求められた物理量は、波形データに加えられた歪みの効果を含んだ数値である。この歪みを含む物理量は、歪み補正部7に入力される。同時に、この歪み補正部7には歪み量記憶部6から波形データに加えられた歪みについての情報が与えられる。この歪みについての情報に基づいて物理量に対して歪み補正が行われ、最終的に得たい物理量の数値が算出されて、演算処理部3から出力される。
【0031】
図2は、図1に示した信号波形計測装置を用いて実行される、本発明に係る信号波形計測方法の一実施形態を示すフローチャートである。ここで、ステップS101は検出ステップ、ステップS102は信号処理ステップ、ステップS104〜S107を含むステップS103はモーメント演算ステップ、ステップS108は物理量演算ステップ、ステップS109は歪み量記憶ステップ、ステップS110は歪み補正ステップであり、それぞれ、図1の信号波形計測装置における検出部1、信号処理部2、モーメント演算部4、物理量演算部5、歪み量記憶部6、及び歪み補正部7の各部の機能・動作とほぼ対応している。
【0032】
検出対象が所定の検出器によって検出されると(ステップS100)、検出部1において検出信号が生成・取得され(ステップS101)、この検出信号に基づいて信号処理部2において検出信号の強度の時間変化を示す波形データが取得される(ステップS102)。
【0033】
このとき、得られる波形データは検出対象となる物質を検出したことによるシグナル信号と、検出器自体の暗電流などの内的要因や外来光の入射などの外的要因に起因するノイズ信号(バックグラウンド信号)と、をともにその信号成分として含んでいる。ここで、シグナル信号の波形データを時間の関数としてf(t)とし、ノイズ信号成分をλとすると、実際に検出器から得られる検出信号の波形データはf(t)+λとなる。
【0034】
この波形データに基づいて、モーメント演算部4においてモーメントが求められる(ステップS103)。ここで、モーメントとは時刻原点(時刻0時)まわりのn次モーメントνn(ただし、nは1以上の整数)をいい、波形データf(t)+λについてのn次モーメントνnは、
【数1】
によって定義される。このステップS103においては、本計測方法(計測装置)によって得ようとする測定対象についての物理量の算出に必要とされる1つまたは複数の次数のモーメントを、波形データからそれぞれ求める。
【0035】
モーメントの演算について、さらに説明する。本実施形態においては、最初に波形データに対して、歪み量xを含む所定の歪み関数δ(x,t)を用いて、波形データf(t)+λから歪みが加えられた波形データである歪み波形データ(f(t)+λ)δ(x,t)が求められ(ステップS104)、この歪み波形データに基づいて、次の式
【数2】
によって歪みを含むn次モーメントである歪みn次モーメントνn’が演算・算出される(ステップS105)。
【0036】
このように求められた歪みn次モーメントνn’に対して、ノイズ信号の影響があるかどうかを調べ(ステップS106)、影響があれば歪み量xの値を変えるなど条件を変えて、さらに歪み波形データの演算(ステップS104)と歪みモーメントの算出(ステップS105)を繰り返す。ここでの歪み量の決定については、例えば計算機を用いたシミュレーションによって求めるなど、様々な方法を用いることができる。
【0037】
なお、ノイズ信号の影響の有無についての判断は、ノイズ信号の影響が完全に無くなるようにするか、または、必要とされる物理量の決定精度等によって許容されるノイズ信号の影響に対応する数値範囲をあらかじめ定めておき、その範囲内にあるかどうかによって影響の有無を判断しても良い。このノイズ信号の影響を無くする演算操作などについては、具体例によってさらに後述する。
【0038】
また、モーメントの算出において必要があれば、あらかじめ計測装置自体の応答特性に関する装置関数を取得しておき(ステップS107)、得られた装置関数から、所定のデコンボリューション法などによって装置関数の影響を取り除いても良い。ただし、このとき装置の応答特性の分離・除去に用いる装置関数についても、波形データと同様に歪みを加えたものを用いることが好ましい。
【0039】
さらに、物理量の算出において複数の次数のモーメント値が必要な場合には、ステップS103によるモーメントの演算をそれぞれの次数のモーメントについて繰り返し行っても良い。
【0040】
ノイズ信号の影響が無くなるか、またはあらかじめ設定された範囲以下になると、モーメント演算(ステップS103)を終了し、得られた歪みモーメントを用いて物理量の算出が行われる(ステップS108)。物理量の算出は、物理量と各モーメントとについての所定の関係式によって行われるが、この関係式としては解析的に求められたものを用いても良いし、近似的に求められたものであっても良い。
【0041】
一方、波形データに加えられた歪みについては、その歪み量xなどの必要な情報を記憶しておく(ステップS109)。これにより、歪みの効果を含んだ状態の物理量に対して、記憶されている歪み量に基づいて歪み補正を行って(ステップS110)、最終的に歪みの効果を含まない物理量が算出され出力される(ステップS111)。なお、物理量が複数の異なる次数のモーメントを用いて算出される場合には、例えば、それぞれの次数のモーメントに対する歪み量の重み平均を歪み補正に用いる歪み量とする補正方法などを用いることができる。
【0042】
上記した実施形態による信号波形計測装置及び計測方法による作用について説明する。
【0043】
述べたように、検出器によって得られる検出信号にはシグナル信号に加えて余分なノイズ信号が付加されており、物理量を充分な定量精度で正確に求めるためには、ノイズ信号の影響を計算値から除く必要がある。シグナル信号成分f(x)をノイズ信号成分λから分離する方法としては、一般にはノイズ信号レベルλを波形データf(x)+λから減算する方法が用いられる。このとき、減算されるノイズ信号レベルは、実際の測定開始前にあらかじめノイズ信号のみを計測しておくか、または測定時にシグナル信号とノイズ信号とを区別しつつ計測してノイズ信号レベルを決定する方法によって得ることができる。
【0044】
しかしながら、このような方法においては、ノイズ信号レベルの定量精度はノイズ信号の時間的変動や計測時のシグナル信号との区別の困難性などから充分には得られず、それによってシグナル信号及び算出される物理量の定量精度が低下されてしまうという問題を生じる。また、その定量精度を充分に向上させるためには計測時間を長時間としなくてはならず、計測の容易さの点において実用的ではない。
【0045】
このような問題に対して、図1及び図2に示した信号波形計測装置・計測方法においては、図2のフローチャートにステップS104によって示したように、波形データに歪みδ(x,t)を加えることによって、上記したノイズ信号の減算を行うことなくノイズ信号の影響の除去を実現している。
【0046】
すなわち、ノイズ信号成分を含む検出信号の波形データに対し、ノイズ信号レベル値への依存性が無くなるか、または所定の値以下となるなどの条件を満たすように所定の歪み関数δ及び歪み量xを用いて波形データf(x)+λに歪みを加えることによって、歪みを含むがノイズ信号の影響・依存性が低減または除去された歪みモーメントを算出する。
【0047】
一方で、このとき用いた歪み量などの情報を記憶しておき、歪みモーメントからノイズ信号の影響は無いが歪みの影響を含んでいる状態で目的とする物理量を演算した後、その物理量に対して記憶されている歪み量に基づいて歪み補正を加えて、最終的な物理量を算出する。
【0048】
ここで、ノイズ信号を減算する場合の誤差の大きさに対して、歪みの影響の除去については、歪み量がわかっていることから正確に定量することが可能である。したがって、ノイズ信号について直接に補正を行うのではなく、歪みによってノイズ信号の影響を低減した後に、加えた歪みについての補正を行う上記の演算処理構成とすることによって、ノイズ信号の影響が除去されるとともに、ノイズ信号の定量精度などによる物理量の定量精度の低下が抑制され、物理量決定の精度が向上された信号波形計測方法及び計測装置が実現される。また、これによってノイズ信号を精度良く計測・決定する必要が無くなるので、計測時間が大幅に短縮される。
【0049】
以下、本発明による信号波形計測方法及び計測装置について、散乱吸収体の内部情報の計測に関して具体的な実施例を示しつつ、さらに説明する。
【0050】
図3は、測定対象である散乱吸収体Bの散乱係数、吸収係数、各成分濃度などの内部情報に関する物理量を定量するための、信号波形計測装置の一実施例である散乱吸収体の内部情報の計測装置の構成を示すブロック図である。
【0051】
この計測装置は、図1に示した計測装置の構成に対して、さらに測定光となるパルス光を生成・入射するための光入射部8を備えて構成されている。本実施例における光入射部8は、光源81及び波長選択器82を有して形成されている。散乱吸収体Bへのパルス光入射用の光ガイド91は、その出力端が散乱吸収体Bの表面における所定の位置に配置されている。一方、光ガイド91の入射端には波長選択器82を介して光源81が光学的に接続されている。これにより、光源81から発せられたパルス光は、波長選択器82において1つまたは複数の所定波長成分に波長選択され、光ガイド91を介して測定対象である散乱吸収体Bに入射される。
【0052】
また、検出対象である光を出射・導光させるための光検出用の光ガイド92は、その入力端が散乱吸収体Bの表面における所定の位置に配置されている。一方、光ガイド92の出力端には図1に示した検出部1に対応している光検出器10が光学的に接続されている。これにより、散乱吸収体Bの内部を散乱等されつつ伝播した光は、光ガイド92を介して光検出器10に導光され、光検出器10で受光信号から電気信号である光検出信号が生成・取得される。
【0053】
光入射部8の光源81及び検出部の光検出器10には信号処理部2が電気的に接続されている。この信号処理部2において光検出器10によって取得された検出信号に基づいて、検出された光の強度の時間変化に対応している検出信号の強度の時間変化を示す波形データが生成・取得される。信号処理部2はさらに演算処理部3に接続されており、この演算処理部3において信号処理部2からの波形データに基づいて、散乱吸収体Bの内部情報に関する所定の物理量が演算・算出される。なお、演算処理部3の具体的な構成については、図1に示した信号波形計測装置の演算処理部3と同様である。
【0054】
図4は、光検出器10、信号処理部2及び演算処理部3の好適な構成の一例を示す。図4に示す構成は、いわゆる時間相関光電子計数法と呼ばれる方法を用いて高速時間波形計測法を実施するための構成である。本構成例においては、光検出器10として光電子増倍管(PMT)を用いており、また、信号処理部2がコンスタント・フラクション・ディスクリミネータ(CFD)21、時間−振幅変換器(TAC)22及びADコンバータ(A/D)23で構成されている。そして、PMT10の出力信号は、CFD21を介してTAC22に導かれて時間に対応したアナログ電圧に変換され、さらにADコンバータ23でデジタル信号に変換される。このデジタル信号は、検出光強度の時間変化を示す波形データに対応するものである。
【0055】
図4に示す演算処理部3においては、光入射部8の光源81及び信号処理部2にCPU30が電気的に接続されており、光入射に同期した光検出のタイミング等がCPU30によって制御されると共に、信号処理部2から出力された波形データはCPU30に導かれて所定の演算処理が行われる。また、入射光の波長など測定光の入射条件についても、このCPU30によって制御あるいは選択される。
【0056】
図4に示す演算処理部3は、さらに、オペレーティングシステム(OS)31a及び所定の演算処理を行うための内部情報計測プログラム31bが記憶されたプログラムメモリ31と、各種データファイルが記憶されるデータファイルメモリ32と、得られた散乱吸収体の内部情報を示すデータを記憶するデータメモリ33と、作業用データを一時的に記憶する作業用メモリ34と、データの入力を受け付けるキーボード35a及びマウス35bを備える入力装置35と、得られたデータを出力するディスプレイ36a及びプリンタ36bを備える出力装置36とを備えており、これらも電気的に接続されているCPU30によって制御される。なお、上記のメモリは、コンピュータの内部メモリ(ハードディスク)であっても、フレキシブルディスクであってもよい。
【0057】
データファイルメモリ32には、内部情報計測プログラム31bの実行によって得られる波形データ、物理量や装置関数(計測系のインパルスレスポンス)などの諸データが記憶され、また、入力装置35を用いて予め入力された計測条件や既知値等のデータも記憶される。なお、計測装置の具体的なハードウェア構成については図4に示すものに限られるものではなく、必要に応じて変形または拡張を行っても良い。
【0058】
図5は、図3及び図4に示した散乱吸収体の内部情報の計測装置による散乱吸収体の内部情報の計測方法を示すフローチャートである。光検出器10によって散乱吸収体Bからの光が検出されると(ステップS200)、検出信号が取得され(ステップS201)、それに基づいて信号処理部2において時間変化を示す波形データが生成・取得される(ステップS202)。
【0059】
測定光を用いた散乱吸収体についての計測においては、散乱吸収体の内部を散乱しつつジグザグに伝播する光子の生存率は、ジグザグ光路長lと吸収係数μaとの積の指数関数exp(−μal)となり、したがって、散乱吸収体内部から発せられる光は時間に伴って減衰して外部へと出射される。このとき、散乱吸収体のインパルス応答は、時間因果関数となり、その時間依存性は次の式
【数3】
によって表される。ここで、μs及びμaは非等方散乱係数及び吸収係数、cは媒体中での光速度、tは飛行時間である。この飛行時間tについては、時間分解計測によって容易に計測することができる。
【0060】
このとき、図2に示した信号波形計測方法に関して述べたように、光検出器10に生じる暗電流や外来のノイズ光などによるノイズ信号λによって、実際に検出信号から得られる波形データは、
【数4】
のようになる。この波形データから1次モーメントの算出(ステップS203)、及び0次積分値の算出(ステップS212)が行われ、これらの数値から散乱吸収体Bの内部情報についての物理量、例えば吸収係数差が算出される(ステップS209)。なお、ステップS203における1次モーメントの算出の演算処理の具体的構成については、図2に示した信号波形計測方法でのモーメント演算についてのステップS103と同様である。
【0061】
モーメント及び積分値の算出、及び物理量の算出については、より具体的には式(3)及び(4)に示した波形データに対する好適なものとして歪み関数δ(x,t)を
【数5】
によって定義する。ここで、指数関数形の波形データh(t)に対応して、歪み関数δ(x,t)についても指数関数形として選択・定義している。また、その指数関数形に含まれている関数g(x)は歪み量xによる任意の関数であり、具体的条件に応じて好適なものを用いることができるが、ここでは簡単のためにg(x)=xとしている。
【0062】
波形データに加えられる歪みについては、対応して得られる歪みn次モーメントνn’においてノイズ信号の影響が無くなるか、もしくは設定された許容範囲内となるように、その歪み量xが決定される。具体的にはモーメントの各次数nに対して、
【数6】
を満たすxの解であるxnを決定する。すなわち、xを変数としたときにxの関数となる歪みn次モーメントνn’について、ノイズ信号λで偏微分したときに0となる解xnを求める。この(6)式の条件は、得られる歪みn次モーメントνn’の値をノイズ信号λの数値に依存せず一定とする条件である。
【0063】
このようなxnの決定条件について、グラフによって模式的に示したのが図6である。異なる2つのノイズ信号レベル値λ1及びλ2について、歪み量xに対する歪みn次モーメントνn’を求めるとそれぞれ異なる曲線が得られるが、その交点Pnにおいては、ノイズ信号λ1及びλ2に対して得られる歪みn次モーメントνn’の値はノイズ信号値に依存せずに同じものとなる。この交点に対応する歪み量が上記した解xnである。なお、λ1及びλ2以外のノイズ信号値についても、得られる曲線は同一の交点を通り、したがってこの歪み量xnは一般にノイズ信号λに依存しない歪みn次モーメントνn’を与えるものとなる。
【0064】
本実施例においては、n次モーメントに対する歪み関数exp(−xnct)は波形データの指数関数部分exp(−μact)に対して加えられ、したがってμaは見かけ上μa+xnとなる。このことから、式(3)に示されたインパルス応答波形のパラメータをこれらのモーメントから精度よく定量できる。
【0065】
例えば、散乱吸収体における2波長間の吸収係数差はインパルス応答波形データの1次モーメント及び0次積分値から求めることができる。本計測方法においては、歪み1次モーメントν1’については図2に示したモーメント演算ステップS103に含まれるステップS104〜S107と同様の演算操作からなる図5のステップS203から次の式
【数7】
によって算出される。また、歪み0次積分値i0’はステップS212において
【数8】
として算出される。ただし、式(8)に示されているように、0次積分値i0’についてはあらかじめ得られたノイズ信号値λを減算しておく必要がある。また、歪み量としては、歪み1次モーメントν1’に関してステップS203において得られた値x1を用いている。
【0066】
以上のように求められた歪み1次モーメントν1’及び0次積分値i0’から、2波長間の吸収係数差Δμaが算出される(ステップS209)。この吸収係数差Δμaは、0次積分値i0から求められる積分出力信号I、及び1次モーメントν1から求められる平均光路長Lから、
【数9】
によって求められる(例えば、特開平10−111238号公報参照)。但し、積分出力信号I及び平均光路長Lの添字1、2は、2波長のそれぞれの波長成分の光に対するレスポンスを示している。
【0067】
さらに、波形データに加えられた歪みを含んで求められたステップS209からの吸収係数差と、ステップS208によって記憶されていた歪み量とから歪み補正が行われ(ステップS210)、最終的に歪みの影響が除かれた物理量である吸収係数差が算出されて、出力される(ステップS211)。
【0068】
図3〜図5に示した散乱吸収体の内部情報の計測方法及び装置に関して、スラブ状の散乱吸収体に対してモンテカルロシミュレーションを行った結果を以下に示す。
【0069】
シミュレーション実験は、光源−光検出器の間隔を30mm、入射光子数を2×108、媒体の屈折率をn=1.33、吸収係数をμa=0.005、0.01、0.02、及び0.03、散乱係数をμs’=1.0、散乱角の余弦の平均値をg=0.9とし、平均光路長L、光強度I、及び2波長間の吸収係数差Δμaの演算にはそれぞれ上記した式(7)、(8)、及び(9)を用いて行った。
【0070】
以上の条件によって得られた2波長間の吸収係数差Δμaの値を、本発明の計測方法による数値と、従来の減算を用いた方法による数値とを比較して表1に示す。
【0071】
【表1】
この表に示されているように、いずれの吸収係数差に対しても、本発明の計測方法によって求められた数値において、従来の方法による数値よりも設定された値により近い値が得られており、したがって、本発明による減算を行わずにノイズ信号の影響を除去する計測方法及び計測装置を用いることによって、従来の方法に比べて物理量算出の精度が向上されていることがわかる。
【0072】
本発明による信号波形計測方法及び装置は、上記した実施形態及び散乱吸収体についての実施例に限られるものではなく、様々な変形・応用が可能である。例えばこのような計測方法及び装置は、測定対象とする被測定物質から発せられる蛍光を検出対象とし、その被測定物質での蛍光現象についての蛍光寿命などの算出・決定に適用することができる。このとき、蛍光寿命の時定数をτとすれば、その時間変化・波形データは、
【数10】
によって表される。ここでN(t)は検出される蛍光強度の時間変化である。このとき、時定数τは、1次モーメントの次の式
【数11】
によって求められる。したがって、N(t)にノイズ信号成分λが付加されて測定される場合においても同様に、上記した歪みによる方法を用いてノイズ信号の影響を除去することが可能である。
【0073】
なお、この方法は1成分以上の蛍光に対して一般に適用可能であり、1成分の蛍光に限らず、蛍光寿命が異なる遅延蛍光成分等が存在する場合や、複数の蛍光物質がある場合など、2以上の蛍光成分を含む蛍光現象に対しても同様に適用することができる。
【0074】
上記の散乱吸収体及び蛍光現象についての例においては、いずれもその波形データが指数関数による減衰関数形である。指数関数的な減衰変化とは言い換えれば変化量ΔCが元の量Cに対して、ΔC=−kCの形で比例する変化過程をいい、自然界における減衰過程の多くはこのような条件を満たす。この場合、歪みに用いる歪み関数形としては、例えば適当に選択された指数関数形の関数を用いることが好ましい。
【0075】
また、それ以外の関数形の波形データに対しても、同様にその関数形に対応した歪み関数を選択することによって、同様の計測方法・計測装置を適用することが可能である。さらに、歪み関数については波形データの関数形等に対応して、数式ではなく数値表によって指定されるものなど様々な形態のものを適宜選択して使用しても良い。このとき、歪み補正が可能または容易なものを歪み関数として選択・使用することが好ましい。また、歪み量自体が歪み関数であっても良い。
【0076】
【発明の効果】
本発明による信号波形計測方法及び装置は、以上詳細に説明したように、次のような効果を得る。すなわち、検出器からの検出信号に含まれるノイズ信号の影響を除いて算出される物理量の定量精度を向上させる手段として、ノイズ信号レベルを計測によって求め、それを検出信号の波形データから減算するのではなく、ノイズ信号の影響が低減または除去されるように波形データに歪みを加えてノイズ信号に依存しない物理量を求めた後、歪み補正を行って最終的に物理量を算出する。
【0077】
これによって、ノイズ信号の影響を低減・除去すると同時にそれによる定量精度の低下が抑制されて、物理量算出の精度が大幅に向上された信号波形計測方法及び装置とすることができる。また、ノイズ信号計測を行う必要がないため、計測時間が大幅に短縮され、計測効率が向上される。このような方法は、微弱光の測定など検出されるシグナル信号が弱くノイズ信号レベルが相対的に強くなる場合などに、特に有効である。また、特に、ノイズ信号レベルの時間的変化についてもその影響が低減・除去されるので、測定対象の時間による状態の変化過程などに関する物理量の定量において、特にその精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る信号波形計測装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る信号波形計測方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図3】信号波形計測装置の一例である散乱吸収体の内部情報の計測装置の一実施例の構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示した散乱吸収体の内部情報の計測装置の具体的構成の一例を示す構成図である。
【図5】信号波形計測方法の一例である散乱吸収体の内部情報の計測方法の一実施例を示すフローチャートである。
【図6】異なるノイズ信号に対する歪み量と歪みモーメントとの関係を模式的に示すグラフである。
【符号の説明】
1…検出部、10…光検出器、2…信号処理部、3…演算処理部、4…モーメント演算部、5…物理量演算部、6…歪み量記憶部、7…歪み補正部、8…光入射部、81…光源、82…波長選択器、91、92…光ガイド。
Claims (22)
- 検出器からの検出信号の波形に基づいて所定の物理量を算出する信号波形計測方法であって、
測定によって検出信号を取得する検出ステップと、
前記検出信号に基づいて、その強度の時間変化を示す波形データを取得する信号処理ステップと、
前記波形データに基づいて、前記物理量の算出に必要とされる各次数の時間原点まわりのモーメントのそれぞれについて、各次数ごとに所定の歪み関数及び所定の歪み量を選択し、それらによって前記波形データに歪みを加えてそれぞれの次数の前記モーメントを求めるモーメント演算ステップと、
前記モーメント演算ステップにおいて求められた各次数の前記モーメントから前記物理量を算出する物理量演算ステップと、
前記モーメント演算ステップにおいて前記波形データに加えた前記歪みの歪み量を記憶しておく歪み量記憶ステップと、
前記物理量演算ステップにおいて算出された前記物理量に対して、前記歪み量記憶ステップにおいて記憶された前記歪み量によって歪み補正を行う歪み補正ステップと、
を有することを特徴とする信号波形計測方法。 - 前記モーメント演算ステップにおいて、前記検出信号に含まれるノイズ信号の影響が無くなるように前記所定の歪み関数及び前記所定の歪み量を選択することを特徴とする請求項1記載の信号波形計測方法。
- 前記検出信号の波形に基づいて算出される前記所定の物理量は、前記測定の測定対象の状態またはその変化過程に関する物理量であり、
前記検出ステップは、前記測定対象を前記検出器による検出対象として直接的に前記測定を行って、前記検出信号を取得することを特徴とする請求項1または2記載の信号波形計測方法。 - 前記検出信号の波形に基づいて算出される前記所定の物理量は、前記測定の測定対象の状態またはその変化過程に関する物理量であり、
前記検出ステップは、前記測定対象と相互作用するか、または前記測定対象において生じた物質を前記検出器による検出対象として間接的に前記測定を行って、前記検出信号を取得することを特徴とする請求項1または2記載の信号波形計測方法。 - 所定波長を有するパルス光を前記測定対象である散乱吸収体中に入射する光入射ステップをさらに有し、
前記検出ステップは、前記光入射ステップによって入射され前記散乱吸収体内部を伝播して相互作用した前記検出対象である前記所定波長の光を検出して検出信号を取得するとともに、
前記物理量演算ステップ及び前記歪み補正ステップは、前記散乱吸収体の内部情報に関する物理量を算出及び歪み補正することを特徴とする請求項4記載の信号波形計測方法。 - 前記検出ステップは、前記測定対象である被測定物質において生じた前記検出対象である蛍光を検出して検出信号を取得するとともに、
前記物理量演算ステップ及び前記歪み補正ステップは、前記被測定物質の蛍光発光に関する物理量を算出及び歪み補正することを特徴とする請求項4記載の信号波形計測方法。 - 前記検出信号の強度の時間変化は、指数関数的に変化する減衰過程であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の信号波形計測方法。
- 前記モーメント演算ステップで前記波形データに加える前記歪みにおいて、計算機を用いたシミュレーションによって求められた前記歪み量を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の信号波形計測方法。
- 前記物理量演算ステップは、前記物理量と前記モーメントとの対応関係を示す解析的または近似的に求められた関係式を用いて、前記物理量を算出することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の信号波形計測方法。
- 前記歪み補正ステップで前記物理量に対して行われる前記歪み補正において、前記物理量が複数の異なる次数の前記モーメントを用いて算出される場合に、それぞれの次数の前記モーメントに対する前記歪み量の重み平均を前記歪み補正に用いる前記歪み量とすることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項記載の信号波形計測方法。
- 前記モーメント演算ステップにおいて、前記波形データと同様の前記歪みを加えた装置の応答についての装置関数を用いて、前記波形データに重畳されている前記装置関数の影響を除去することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項記載の信号波形計測方法。
- 検出器からの検出信号の波形に基づいて所定の物理量を算出する信号波形計測装置であって、
測定によって検出信号を取得する検出手段と、
前記検出信号に基づいて、その強度の時間変化を示す波形データを取得する信号処理手段と、
前記波形データに基づいて、前記物理量の算出に必要とされる各次数の時間原点まわりのモーメントのそれぞれについて、各次数ごとに所定の歪み関数及び所定の歪み量を選択し、それらによって前記波形データに歪みを加えてそれぞれの次数の前記モーメントを求めるモーメント演算手段と、
前記モーメント演算手段において求められた各次数の前記モーメントから前記物理量を算出する物理量演算手段と、
前記モーメント演算手段において前記波形データに加えた前記歪みの歪み量を記憶しておく歪み量記憶手段と、
前記物理量演算手段において算出された前記物理量に対して、前記歪み量記憶手段において記憶された前記歪み量によって歪み補正を行う歪み補正手段と、
を有することを特徴とする信号波形計測装置。 - 前記モーメント演算手段において、前記検出信号に含まれるノイズ信号の影響が無くなるように前記所定の歪み関数及び前記所定の歪み量を選択することを特徴とする請求項12記載の信号波形計測装置。
- 前記検出信号の波形に基づいて算出される前記所定の物理量は、前記測定の測定対象の状態またはその変化過程に関する物理量であり、
前記検出手段は、前記測定対象を前記検出器による検出対象として直接的に前記測定を行って、前記検出信号を取得することを特徴とする請求項12または13記載の信号波形計測装置。 - 前記検出信号の波形に基づいて算出される前記所定の物理量は、前記測定の測定対象の状態またはその変化過程に関する物理量であり、
前記検出手段は、前記測定対象と相互作用するか、または前記測定対象において生じた物質を前記検出器による検出対象として間接的に前記測定を行って、前記検出信号を取得することを特徴とする請求項12または13記載の信号波形計測装置。 - 所定波長を有するパルス光を前記測定対象である散乱吸収体中に入射する光入射手段をさらに有し、
前記検出手段は、前記光入射手段によって入射され前記散乱吸収体内部を伝播して相互作用した前記検出対象である前記所定波長の光を検出して検出信号を取得するとともに、
前記物理量演算手段及び前記歪み補正手段は、前記散乱吸収体の内部情報に関する物理量を算出及び歪み補正することを特徴とする請求項15記載の信号波形計測装置。 - 前記検出手段は、前記測定対象である被測定物質において生じた前記検出対象である蛍光を検出して検出信号を取得するとともに、
前記物理量演算手段及び前記歪み補正手段は、前記被測定物質の蛍光発光に関する物理量を算出及び歪み補正することを特徴とする請求項15記載の信号波形計測装置。 - 前記検出信号の強度の時間変化は、指数関数的に変化する減衰過程であることを特徴とする請求項12〜17のいずれか一項記載の信号波形計測装置。
- 前記モーメント演算手段で前記波形データに加える前記歪みにおいて、計算機を用いたシミュレーションによって求められた前記歪み量を用いることを特徴とする請求項12〜18のいずれか一項記載の信号波形計測装置。
- 前記物理量演算手段は、前記物理量と前記モーメントとの対応関係を示す解析的または近似的に求められた関係式を用いて、前記物理量を算出することを特徴とする請求項12〜19のいずれか一項記載の信号波形計測装置。
- 前記歪み補正手段で前記物理量に対して行われる前記歪み補正において、前記物理量が複数の異なる次数の前記モーメントを用いて算出される場合に、それぞれの次数の前記モーメントに対する前記歪み量の重み平均を前記歪み補正に用いる前記歪み量とすることを特徴とする請求項12〜20のいずれか一項記載の信号波形計測装置。
- 前記モーメント演算手段において、前記波形データと同様の前記歪みを加えた装置の応答についての装置関数を用いて、前記波形データに重畳されている前記装置関数の影響を除去することを特徴とする請求項12〜21のいずれか一項記載の信号波形計測装置。
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