JP4944005B2 - 温度センサ、及び温度測定方法 - Google Patents

温度センサ、及び温度測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、温度センサ、及び温度測定方法に関し、特に詳しくは、蛍光の寿命に応じて温度を測定する温度センサ、温度測定方法に関するものである。
温度センサとして、蛍光体を用いた蛍光式温度センサが広く利用されている。蛍光式温度センサでは、温度により蛍光特性が変化する蛍光体を用いて温度を測定する。具体的には、光源からの励起光を蛍光体に照射して、蛍光体で発生した蛍光を検出する。そして、蛍光寿命などの蛍光特性の変化によって、温度を測定している。
蛍光体を含む蛍光材料は、光ファイバの先端に配設される。そして、光源から出射した励起光は光ファイバを介して蛍光体に入射する。また、蛍光体で発生した蛍光は光ファイバを介して光センサで検出される。蛍光強度は、例えば、I−atにしたがって減衰する。なお、tは時間、eは自然対数の底(2.718・・・・)である。また、I、及びaは任意の正数である。
このような蛍光式温度センサにおいて、蛍光緩和時間を求めて、温度を測定するものが開示されている(特許文献1)。この温度センサでは、LEDが消灯した後、基準光量S1,S2の1/e倍となるまでの時間を蛍光緩和時間としている。そして、予め計測された蛍光緩和時間と温度Tとの関係から、温度を算出している。
さらに、蛍光強度の減衰曲線から傾きを求めて、温度を測定するものが開示されている(特許文献2)。この温度センサでは、予め蛍光が減衰しきった時刻を観測し、その信号をオフセットCとする。そして、蛍光強度からCを引いている。その後、対数変換を行って線形関数を導出し、その傾きを求めている。傾きの導出は、最小自乗法などのフィッティングで行っている。
特開2002−71473号公報 米国特許第5107445号明細書
光センサで検出した蛍光強度の信号には、蛍光体で発生した蛍光成分に比べて、ノイズやオフセット(ゼロレベル)が加わっている。すなわち、光センサで実際に検出された蛍光強度の信号には、時間的に変動するノイズや、測定用の電気回路などによって決まるオフセット(ゼロレベル)が不可避的に加算されてしまう。特許文献1の温度センサでは、ノイズやオフセットが加わったまま、温度を算出している。従って、正確な測定を行うことができない。
また、特許文献2の温度センサでは、減衰しきった時刻の信号をオフセットCとしている。従って、蛍光が減衰しきってしまう時刻まで待たなければならない。そのため、応答性速度を速くすることが困難であるという問題点がある。また、温度によって、蛍光の減衰曲線は変化する。例えば、蛍光体の温度が低くなると蛍光が減衰しきるまでの時間が長くなる。従って、低温時に、蛍光が減衰しきる時刻まで、待たなければならない。従って、一度光源を点灯、消灯すると、次の測定までに時間がかかってしまう。このように、特許文献2の方法では、応答速度を高くすることが困難であるという問題点がある。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、高い応答速度で正確な測定を行うことができる温度センサ及び温度測定方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様にかかる温度センサは、蛍光体で発生した蛍光の寿命に応じて温度を測定する温度センサであって、励起光を出射する光源と、前記励起光によって蛍光を発生する蛍光体と、前記蛍光を検出して、蛍光強度に応じた蛍光信号を出力する光検出器と、前記光検出器からの蛍光信号に基づいて温度を算出する処理部と、を備え、前記処理部が第1及び第2の期間における前記蛍光信号の減衰の傾きを算出し、温度によって変化する変数を前記第1及び第2の期間における傾きの比から算出し、予め記憶された温度と前記傾きの比との関係を参照して、算出された前記変数を温度に換算しているものである。これにより、ゼロレベル(オフセットレベル)の影響を低減することができるため、正確に測定することができる。また、減衰しきるまで待つ必要がなくなるため、応答性を向上することができる。
本発明の第2の態様にかかる温度センサは、上記の温度センサであって、前記第1及び第2の期間における傾きが、前記第1及び前記第2の期間に含まれるデータの線形近似によって算出されていることを特徴とするものである。これにより、ノイズの影響を低減することができるため、より正確に測定することができる。
本発明の第3の態様にかかる温度センサは、上記の温度センサであって、前記第1の期間、及び前記第2の期間が、前記蛍光が減衰して一定になる前の時間帯に設定されているものである。これにより、応答速度を向上することができる。
本発明の第4の態様にかかる温度センサは、上記の温度センサであって、前記第1及び第2の期間の少なくとも一方の設定を可変にしたことを特徴とするものである。これにより、測定に好適な期間を設定することができる。よって、測定精度をより向上することができる。
本発明の第5の態様にかかる温度センサは、上記の温度センサであって、測定する温度のレンジに応じて、前記第1及び第2の期間の設定を変化させることを特徴とするものである。
本発明の第6の態様にかかる温度測定方法は、励起光によって発生した蛍光の蛍光寿命に応じて温度を測定する温度測定方法であって、蛍光体に励起光を照射するステップと、前記励起光によって前記蛍光体で発生した蛍光を検出するステップと、第1及び第2の期間における前記蛍光信号の減衰の傾きを算出するステップと、温度によって変化する変数を前記第1及び第2の期間における傾きの比から算出するステップと、予め記憶された温度と前記傾きの比との関係を参照して、算出した前記変数を温度に換算するステップと、を備えたものである。これにより、ゼロレベル(オフセットレベル)の影響を低減することができるため、正確に測定することができる。また、減衰しきるまで待つ必要がなくなるため、応答性を向上することができる。
本発明の第7の態様にかかる温度測定方法は、上記の温度測定方法であって、前記第1及び第2の期間における傾きが、前記第1及び前記第2の期間に含まれるデータの線形近似によって算出されていることを特徴とするものである。これにより、ノイズの影響を低減することができるため、より正確に測定することができる。
本発明の第8の態様にかかる温度測定方法は、上記の温度測定方法であって、前記第1の期間、及び前記第2の期間が、前記蛍光が減衰して一定になる前の時間帯に設定されているものである。
本発明の第9の態様にかかる温度測定方法は、上記の温度測定方法であって、前記第1及び第2の期間の少なくとも一方の設定を可変にしたことを特徴とするものである。
本発明の第10の態様にかかる温度測定方法は、上記の温度測定方法であって、測定する温度のレンジに応じて、前記第1及び第2の期間の設定を変化させることを特徴とするものである。
本発明によれば、高い応答速度で正確な測定を行うことができる温度センサ及び温度測定方法を提供することができる。
以下に、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、温度センサの構成を模式的に示す図である。
温度センサは、駆動回路11と光源12と受光素子13と信号処理回路14と、蛍光材料21と、導波路ロッド23とを有している。本実施の形態にかかる温度センサは、温度により蛍光特性が変化する蛍光材料21を用いて温度を測定する蛍光式温度センサである。従って、蛍光材料21が設けられている部分が感熱部となる。そして感熱部を測定試料に当接させると、蛍光材料21の温度が変化する。すなわち、測定試料から蛍光材料21への熱伝導、又はその反対の熱伝導によって、蛍光材料21の温度が測定試料と等しくなる。蛍光材料21はその温度によって、蛍光寿命が変化する。従って、蛍光寿命に応じて温度を測定することができる。すなわち、蛍光の減衰曲線に基づいて、温度を測定することができる。
蛍光材料21、及び導波路ロッド23は、温度センサプローブを構成する。駆動回路11と、光源12と、受光素子13と信号処理回路14とが本体部を構成する。そして、温度センサプローブを本体部に取り付けた状態で測定を行う。
光源12は、蛍光材料21を励起するための励起光を照射する。そして、この励起光が導波路ロッド23を通って、蛍光材料21に入射する。蛍光材料21は、励起光によって、励起され、蛍光を発生する。この蛍光が導波路ロッド23を通って、受光素子13で検出される。
駆動回路11は、光源12を駆動するための駆動信号を出力する。光源12は、例えばLEDなどであり、所定のパルス幅、パルス波形の光を出射する。すなわち、光源12は、駆動回路11からの駆動信号に応じたパルス光を出射する。ここでは、受光素子13で検出された信号がAe−atにしたがって、減衰するようなパルス波形にする。tは時間、eは自然対数の底(2.718・・・・)である。また、A、及びaは任意の正数である。なお、光源12から出射するパルス光の波形は、特に限定されるものではない。
導波路ロッド23は、細長いロッド形状を有している。導波路ロッド23は、例えば、光を伝播する石英ロッドや光ファイバなどの導波路部材である。さらには、複数の光ファイバを束ねたバンドルファイバを用いてもよい。従って、導波路ロッド23は、石英やガラスなどの屈折率の高い透明材質により構成されている。光源12からの励起光、及び蛍光材料21で発生した蛍光は、導波路ロッド23内で全反射を繰り返し伝播していく。すなわち、導波路ロッド23は、励起光を蛍光材料21に照射するための投光路となる。なお、図1中、導波路ロッド23が分岐して図示されているが、1本のロッドやファイバであってもよい。そして、本体部中に設けられたハーフミラーなどによって、励起光と蛍光が分離される。
温度センサプローブには、導波路ロッド23、及び蛍光材料21を保護する保護管を設けてもよい。蛍光材料21としては、例えば、ルビーやアレクサンドライトなどを用いることができる。ここでは、ルビーを蛍光体として用いている。また、接着剤などを用いて蛍光体を含む蛍光材料21を導波路ロッド23の先端に固着してもよい。
受光素子13は、例えば、フォトダイオードなどの光検出器である。従って、受光素子13は、受光量に応じた強度の信号を、信号処理回路14に出力する。ここで、受光素子13から出力される信号を、蛍光信号とする。蛍光信号は、蛍光材料21で発生した蛍光の強度に応じた値になる。また、蛍光信号には、蛍光材料21で発生した蛍光成分のみならず、ノイズやゼロレベル(オフセットレベル)が加わっている。
信号処理回路14は、蛍光信号測定モジュール31とデータ記憶装置32とを有している。信号処理回路14は、蛍光信号から温度を測定するための演算処理を行う。信号処理回路14は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信用のインターフェースなどを有し、測定のための各種信号処理を行う。例えば、信号処理回路14としてマイコンなどを用いることができる。信号処理回路14は、例えばROMに格納された演算処理プログラムに従って各種の演算を実行する。もちろん、デジタル回路であってよく、アナログ回路であってもよい。さらには、これらを組み合わせてもよい。信号処理回路14は、物理的に単一な装置に限られるものではない。
例えば、蛍光信号測定モジュール31が、蛍光信号から温度を算出するための演算処理を行う。そして、蛍光信号測定モジュール31での演算結果が、適宜、データ記憶装置32に記憶される。データ記憶装置32は例えば、メモリなどの記憶デバイスである。すなわち、蛍光信号強度モジュール31は、データ記憶装置32に記憶されているデータを読み出して、所定の演算処理を行う。そして、演算処理結果をデータ記憶装置32に記憶させる。
データ記憶装置32は、蛍光強度記憶モジュール33と、傾き記憶モジュール34と、傾き比率記憶モジュール35と、関係記憶モジュール36と、温度記憶モジュール37とを有している。なお、これらのモジュールは物理的に同一のメモリであってもよい。
蛍光強度記憶モジュール33は、蛍光信号に基づいて蛍光強度を記憶する。すなわち、蛍光強度記憶モジュール33は、蛍光信号の強度を順番に蓄積していく。蛍光強度記憶モジュール33は蛍光信号のデータを時系列にしたがって蓄積していく。従って、蛍光強度記憶モジュール33には、蛍光を検出した時間に応じた数の蛍光信号のデータが蓄積される。この蛍光強度は、図2に示すようになっている。なお、図2は、受光素子13で検出された蛍光信号の時間変化を示す図である。図2の横軸は時間を示し、縦軸は蛍光信号の強度を示している。
図2に示すように、光源12の消灯時刻から蛍光強度は、時間とともに減衰していく。すなわち、時間が経過すると蛍光強度が弱くなっていく。蛍光強度が減衰する速度は、蛍光材料21の温度に依存している。蛍光信号には、オフセット電圧であるベースライン電圧(以下、ゼロレベルC)が重畳されている。すなわち、蛍光が減衰しきった後でも、蛍光強度は0にならず、ゼロレベルCで一定になる。さらに、蛍光信号には、白色雑音のように振舞うノイズが存在する。このノイズをn(t)とする。このノイズは時間によって変動するため、時間tの関数になっている。ノイズn(t)はランダムに発生する。このように、蛍光信号は、実際に蛍光材料21で発生した蛍光成分にノイズn(t)とゼロレベルCが重畳された強度となる。そして、光源12を消灯後、蛍光信号は、指数関数的に減衰していく。従って、光源12を消灯後、十分な時間が経過すると、ノイズn(t)を除いた蛍光強度は、ゼロレベルCで略一定になる。
そして、蛍光信号測定モジュール31は、蛍光強度記憶モジュール33に記憶されている蛍光強度のデータに基づいて、期間A、及び期間Bの傾きを求める。なお、期間A、Bは、光源消灯時刻後の微小な区間である。期間A、Bは蛍光強度が減衰しきってゼロレベルCで一定になるまでの時間よりも早い時間に設定されている。これにより、蛍光信号の減衰の傾きが算出される。そして、傾き記憶モジュール34は、期間Aにおける傾きと、期間Bにおける傾きを記憶する。ここで、期間A、及び期間Bの範囲は予め定められている。例えば、期間Aの開始時間tと時間幅Δtは予めメモリ等にセットされている。もちろん、期間Bの開始時間tと時間幅Δtも同様に予めメモリ等にセットされている。
例えば、期間Aにおける減衰曲線の傾きをαとし、期間Bにおける減衰曲線の傾きをαとすると、傾きα、αは式1で算出することができる。
Figure 0004944005
なお、f(t)は、蛍光の減衰曲線を示す関数、Iは初期蛍光強度である。初期蛍光強度Iは、t=0、すなわち、光源消灯時刻での蛍光強度になる。さらに、蛍光の減衰曲線が指数関数で近似できるため、蛍光強度I(t)は以下に示す式(2)となる。
I(t)=Iexp(−t/τ)+n(t)+C ・・・式(2)
τは、蛍光寿命であり、周囲の温度Tの関数となるため、τ=τ(T)となる。
ここでは、期間Aの開始時間と終了時間における蛍光強度の差ΔIを求め、その差ΔIを期間Aの時間幅Δtで割ることにより、傾きαを求めている。同様に期間Bにおける傾きαを算出する。ここでは、期間A,Bにおける蛍光強度の減少量を期間A,Bの時間幅で割っている。このように、2点間の蛍光強度差を時間で割ることによって、ゼロレベルCが補正される。蛍光強度の減衰中において、ゼロレベルCは時間によらず一定である。このため、期間の開始時間及び終了時間のゼロレベルCは等しい。従って、2点間の蛍光強度の差を求めることでゼロレベルCの項が相殺される。このように、算出された傾きα、αでは、ゼロレベルCの影響が排除されている。このため、正確に温度を測定することができる。
次に、蛍光信号測定モジュールは、傾き比率gを算出する。そして、算出された傾き比率gを傾き比率記憶モジュール35に記憶する。ここでは、傾き比率g=α/αとしている。なお、分子と分母を反対にして、傾き比率g=α/αとしてもよい。すなわち、傾き比率gは、2つの期間A,Bの傾きα、αの比に応じた値であればよい。
蛍光信号測定モジュール31は、上記の傾き比率gに基づいて温度を測定する。すなわち、傾き比率gが測定温度によって変化する変数となる。そして、変数である傾きの比gが温度に換算される。具体的には、減衰曲線は、周囲の温度Tによって変化する。例えば、図3に示すように、減衰曲線は、温度に応じて変化する。なお、図3では、横軸が光源12を消灯後の時間を示し、縦軸が受光素子13からのセンサ出力、即ち、蛍光信号の強度を示している。図3では、測定試料が27℃、121℃、193℃、337℃のときの減衰曲線が示されている。図3に示すように、温度が低いほど、蛍光寿命が長くなる。温度が高いほど、蛍光強度が速く減衰する。
このように、式(2)、及び図3に示すように減衰曲線関数が温度に応じて変化する。このため、傾きα、αの値も、温度によって変化する。傾き比率gの値を温度Tに変換することができる。すなわち、傾き比率gが決まると温度が決まる。このように、傾き比率gと測定温度は1対1の関係にあるため、傾き比率gを温度Tに換算することができる。蛍光信号測定モジュール31は、予め設定されている傾き比率gと温度Tとの関係を参照して、傾き比率gを温度Tに変換する。このようにして、蛍光信号測定モジュール31は、傾き比率gから温度Tを算出している。傾き比率gと温度Tとの関係は、関係記憶モジュール36に記憶されている。
例えば、傾き比率gと温度Tの関係は、図4に示すようになる。図4は、傾き比率gと温度Tとの関係を示すグラフであり、横軸が傾き比率g、縦軸が基準温度を示している。例えば、校正用の基準温度を何点か測定して、関係式を算出する。すなわち、温度が既知の測定試料に対して測定を行い、傾き比率gを求める。そして、異なる温度で測定を複数回行い、関係式(校正関数)を導出する。ここでは、傾き比率gと温度の関数を多項式で近似することによって、傾き比率gと温度Tの関係式を求めている。なお、近似式は、任意の次数の多項式を用いることができる。もちろん、多項式以外の式で近似してもよい。このような近似式に傾き比率gを代入することで、温度Tが算出される。もちろん、近似式ではなく、傾き比率gと温度Tの関係を示す換算テーブルを参照して、傾き比率gを温度Tに換算してもよい。蛍光信号測定モジュール31は、測定した温度を温度記憶モジュール37に記憶させる。温度記憶モジュール37は、測定した温度を順次蓄積していく。
このような処理で温度を求めることで、より正確に測定することができる。すなわち、傾きを求めることで、ゼロレベルCの影響を排除することができる。さらに、傾きの比を求めることで、初期蛍光強度Iの変動の影響を排除することができる。よって、正確な温度測定が可能になる。
さらに、上記の測定では、期間A,Bを蛍光強度が減衰しきる前の時間帯に設定することができる。このため、応答速度を向上することができる。すなわち、蛍光強度が減衰しきるまで待たなくてよくなるため、測定時間を短縮することができる。よって、温度センサの応答性を向上することができる。なお、期間A,Bの時間幅は同じであってもよく、異なっていてもよい。さらに、期間A、Bは一部が重なっていてもよい。
なお、上記の説明では、期間A、期間Bの傾きを2点間の蛍光強度の差に基づいて求めたが、この方法に限られるものではない。例えば、期間A、期間Bの傾きを線形近似によって求めることができる。すなわち、期間Aに3以上のデータが含まれる場合、回帰分析によって傾きを求める。具体的には、最小自乗法を用いて、線形近似を行う。これにより、期間Aに含まれるデータ群に最も近似する1次関数が算出され、期間Aの傾きαを求めることができる。さらに、期間Bについても同様に線形近似によって、傾きαを算出する。このように、線形近似を用いることで、ノイズn(t)を補正することができる。すなわち、期間の時間幅が長くなると、期間に含まれるデータ数が十分多くなる。すると、各データのノイズ成分が打ち消しあって、ノイズの項が0に近づいていく。これにより、ノイズによる影響を排除することができ、より精度の高い測定を行なうことができる。
また、上記の説明では、期間A,Bの2つの期間における傾きを算出したが、3つ以上の期間における傾きを算出してもよい。そして、測定温度のレンジに応じて、傾き比率gの算出に使用する期間を変更してもよい。例えば、図3に示すように、予め3つの期間A、期間B、期間Cを設定しておく。そして、期間A〜Cの傾きをそれぞれ算出する。なお期間A〜期間Cの時間幅は、同じであってもよく、異なっていてもよい。さらには、期間A〜期間Cの一部が重複していてもよい。
期間Cでは、337℃の減衰曲線は減衰しきっている。そのため、337℃近傍で温度が変化しても期間Cにおける傾きをほとんど変化しない。従って、高温時は期間A、Bにおける傾きを求める。そして、期間A,Bの傾き比率gから温度を算出する。また、低温時は期間A、Cにおける傾きを求める。そして、期間A、Cの傾き比率gから温度を算出する。このように、温度のレンジに応じて、使用する期間を変更することで、より精度の高い測定が可能になる。期間A,Bを用いた場合、傾き比率gと基準温度の関係は図5に示すようになる。また、期間A,Cを用いた場合、傾き比率gと基準温度の関係は図6に示すようになる。そして、温度レンジに応じて、使用する期間を変化する。例えば、傾き比率gから温度の関係が線形に近くなるように、使用する期間を選択する。このようにすることで、広い測定レンジに対して正確な測定が可能になる。すなわち、精度よく測定することができる測定範囲を広くすることができる。また、高温時では、光源12を消灯後の早い時間帯に期間が設定されるため、応答性をより向上することができる。
なお、測定レンジの判別については、例えば、最も早い期間である期間Aの傾きを用いることができる。すなわち、期間Aの傾きに応じて、高温レンジか低温レンジかを判別する。そして、実際に使用する期間を使い分ける。期間Aにおける傾きがしきい値以上の場合は、高温レンジとして、期間A、Bによって測定を行なう。また、期間Aにおける傾きがしきい値よりも小さい場合、期間A,Cによって測定を行なう。もちろん、測定レンジの判別は特に限定されるものではない。また、測定レンジを3以上に分けて測定を行ってもよい。例えば、期間B,Cを用いて傾き比率を求めてもよい。さらに、4以上の期間を使い分けてもよい。このように、各期間の開始時間、及び時間幅の設定を可変にすることで、より精度の高い温度測定を行うことができる。また、期間を使い分ける場合は、それぞれの傾き比率gに対する関係式、又は換算テーブルを記憶させておく。
次に、図7を用いて、本実施の形態に係る温度センサを用いた温度測定方法について説明する。まず、温度センサプローブの感熱部を測定試料に接触させた状態で、光源12を点灯する(ステップS101)。そして、一定の時間経過度、光源12を消灯する(ステップS102)。すなわち、所定のパルス幅だけ、光源12を点灯させる。そして、そして、励起光によって発生した蛍光を受光素子13で検出して、蛍光強度のデータをメモリに取り込む(ステップS103)。これにより、蛍光強度記憶モジュール33に、蛍光強度のデータが記憶される。
そして、期間Aの傾きαを算出して(ステップS104)、メモリに取り込む(ステップS105)。また、期間Bの傾きαを算出して(ステップS106)、メモリに取り込む(ステップS107)。これにより、傾き記憶モジュールに各期間の傾きが記憶される。なお、期間を3以上設定した場合は、それぞれの期間で傾きを算出する。期間の開始時間、及び時間幅は予め設定されている。もちろん、2点間の差に基づいて、傾きを算出してもよく、線形近似により傾きを算出してもよい。なお、これらの処理は、並列して行ってもよい。
2つ期間の傾きに基づいて、温度の変数である傾き比率gを計算する(ステップS108)。そして、傾き比率gの計算結果をメモリに取り込む(ステップS109)。これにより、傾き比率記憶モジュール35に傾き比率gが記憶される。また、予め記憶されている換算テーブルを読み出し(ステップS110)、温度を照合する(ステップS111)。これにより、傾き比率gが温度Tに変換される。もちろん、換算テーブルではなく、校正用の関係式(近似式)を用いてもよい。
照合した温度をメモリに取り込む(ステップS112)ととも、表示画面上に表示させる(ステップS113)。これにより、温度測定が終了する。このようにして温度を測定することで、測定精度を高くすることができる。また、短時間で測定することができるため、応答性を速くすることができる。本実施の形態にかかる温度センサによれば、高い応答速度で正確な温度測定を行うことができる。
次に、図8を用いて、温度の校正方法について説明する。校正は、例えば、温度センサの信号処理回路14が外部処理装置に接続された状態で行われる。外部処理装置としては、例えば、関係式を求めるためのプログラムが格納されたパソコンを用いることができる。まず、基準温度を測定するための試料を用意して、試料に温度センサプローブの感熱部を接触させる。そして、光源を点灯し(ステップS201)、所定の期間経過後、光源を消灯する(ステップS202)。蛍光を消灯した後の蛍光データを内部メモリに取り込む(ステップS203)。すなわち、蛍光強度記憶モジュール33に蛍光強度のデータを記憶させる。そして、蛍光データを外部メモリに転送する(ステップS204)。すなわち、信号処理回路14を外部処理装置であるパソコンに接続して、蛍光データを外部処理装置の外部メモリに転送する。このパソコンには、関係式を求めるためのプログラムが格納されている。
さらに、ステップS202〜ステップS204と並行して、周囲温度を測定する(ステップS205)。ここでの温度測定は、別の温度センサによって行われる。例えば、既に校正が終了している蛍光式の温度センサを用いて温度を測定する。もちろん、蛍光式温度センサ以外の温度センサを用いて測定してもよい。そして、この周囲温度が校正を行なうための基準温度となる。周囲温度を別の温度センサの内部メモリに取り込む(ステップS206)。そして、その周囲温度を外部メモリに転送する(ステップS207)。この外部メモリは、上記の蛍光データが転送された外部処理装置に設けられているメモリである。
そして、蛍光データの減衰曲線に対して、期間を設定する(ステップS208)。ここでは、2以上の期間に対して、開始時間、時間幅、終了時間などが設定される。期間の設定は、操作者が行ってもよく、予め定められていてもよい。これらの期間は蛍光強度が減衰しきるまでの時間帯で設定される。そして、2つの期間に対する傾き比率を算出する(ステップS209)。そして、異なる温度で複数回測定を行い、基準温度との関係式を導出する(ステップS210)。ここでは、最小自乗法などを用いて、傾き比率と温度との関係式を多項式で近似する。従って、多項式の各項の係数が算出される。これにより、図4〜図6のようなグラフを得ることができる。
そして、測定器メモリの関係式を保存する(ステップS211)。これにより、関係記憶モジュール36に関係式が記憶される。もちろん、関係式を求めたときの期間の設定も記憶させる。このようにして、温度センサの校正が終了する。さらに、3以上の期間を設定しておいてもよい。この場合、使い分ける期間に応じて、それぞれ傾き比率と温度の関係式を算出しておく。すなわち、期間のペア毎に関係式を予め求めて、校正を行う。もちろん、関係式に限らず、換算テーブルを関係記憶モジュール36に記憶させてもよい。
なお、上記の説明では蛍光強度が指数関数にしたがって減衰するとして説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、様々な蛍光減衰曲線に適用可能である。
本発明の実施の形態1にかかる温度センサの構成を模式的に示す図である。 蛍光の減衰曲線を示すグラフである。 温度による減衰曲線の変化を示すグラフである。 傾き比率と温度の関係を示すグラフである。 傾き比率と温度の関係の一例を示すグラフである。 傾き比率と温度の関係の一例を示すグラフである。 本実施の形態にかかる温度センサを用いた温度測定方法を示すフローチャートである。 本実施の形態にかかる温度センサにおいて、校正方法を示すフローチャートである。
符号の説明
11 駆動回路、12 光源、13 受光素子、14 信号処理回路
21 蛍光材料、23 導波路ロッド
31 蛍光信号測定モジュール、32 データ記憶装置、33 蛍光強度記憶モジュール、
34 傾き記憶モジュール、35 傾き比率記憶モジュール、36 関係記憶モジュール、
37 温度記憶モジュール

Claims (10)

  1. 蛍光体で発生した蛍光の寿命に応じて温度を測定する温度センサであって、
    励起光を出射する光源と、
    前記励起光によって蛍光を発生する蛍光体と、
    前記蛍光を検出して、蛍光強度に応じた蛍光信号を出力する光検出器と、
    前記光検出器からの蛍光信号に基づいて温度を算出する処理部と、を備え、
    前記処理部が
    第1及び第2の期間における前記蛍光信号の減衰の傾きを算出し、
    測定温度によって変化する変数を前記第1及び第2の期間における傾きの比から算出し、
    予め記憶された温度と前記傾きの比との関係を参照して、算出された前記変数を温度に換算している温度センサ。
  2. 前記第1及び第2の期間における傾きが、前記第1及び前記第2の期間に含まれるデータの線形近似によって算出されていることを特徴とする請求項1に記載の温度センサ。
  3. 前記第1の期間、及び前記第2の期間が、前記蛍光が減衰して一定になる前の時間帯に設定されている請求項1、又は2に記載の温度センサ。
  4. 前記第1及び第2の期間の少なくとも一方の設定を可変にしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の温度センサ。
  5. 測定する温度のレンジに応じて、前記第1及び第2の期間の設定を変化させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の温度センサ。
  6. 励起光によって発生した蛍光の蛍光寿命に応じて温度を測定する温度測定方法であって、
    蛍光体に励起光を照射するステップと、
    前記励起光によって前記蛍光体で発生した蛍光を検出するステップと、
    第1及び第2の期間における前記蛍光信号の減衰の傾きを算出するステップと、
    測定温度によって変化する変数を前記第1及び第2の期間における傾きの比から算出するステップと、
    予め記憶された温度と前記傾きの比との関係を参照して、算出した前記変数を温度に換算するステップと、を備えた温度測定方法。
  7. 前記第1及び第2の期間における傾きが、前記第1及び前記第2の期間に含まれるデータの線形近似によって算出されていることを特徴とする請求項6に記載の温度測定方法。
  8. 前記第1の期間、及び前記第2の期間が、前記蛍光が減衰して一定になる前の時間帯に設定されている請求項6、又は7に記載の温度測定方法。
  9. 前記第1及び第2の期間の少なくとも一方の設定を可変にしたことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の温度測定方法。
  10. 測定する温度のレンジに応じて、前記第1及び第2の期間の設定を変化させることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の温度測定方法。

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