JP4113271B2 - 縦延伸不織布の製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は縦延伸された長繊維フィラメント不織布およびその製法に関するものである。本発明の方法による縦延伸不織布は、一方向に強度を必要とする不織布や直交不織布の原料ウェブの製造にあたり、強度や寸法安定性に優れた材料として使用される。
【0002】
【従来の技術】
不織布の製法として、紡糸したフィラメントを直接不織布とするスパンボンド方式、メルトブロー方式、スパンレース方式等(以下これらを「広義のスパンボンド方式」と呼ぶ)があり、これらは経済性および量産性の点から不織布の主流をなしている。
従来、これらの広義のスパンボンド不織布はランダム不織布であり、強度が小さく、寸法安定性に劣るものが多い。本発明者らはこれらの不織布が有する欠点を改善し、先発明(特公平3−36948号、特開平2−269859号、特開平2−269860号各公報等)において、不織布を延伸しあるいはそれらを直交積層することによる不織布の製法を開示した。
【0003】
また、特公昭60−25541号公報(以下「先発明V」という)にも縦延伸不織布の製法が開示されている。この方法においては、コンベアを傾斜させるときコンベア上でフィラメントが流れるという問題点を、フィラメントの自己粘着性により解決しようとしている。
しかしながら、このようにフィラメントの自己粘着性に依存する方式では、フィラメントの冷却が不十分となり、フィラメントの延伸性が低下する。またこの方式では、コンベアの傾斜のみに依存してフィラメントを配列させるため、高度に配列させようとすると、コンベアの傾斜が大きくなり、不安定になる。
また、延伸後のフィラメントの径を2μm以下にすることを特徴としているが、このような手段による紡糸では、フィラメントを細くすると、切断されるフィラメントが多くかつ延伸性も低下するので、5μmから20μm、即ち延伸後に3〜15μmとなるのに適した太さの範囲が適当であり、熱風量を過大にしてフィラメントを細くしすぎない方が大きな強度が得られることもわかった。
また、この先発明Vにおいては、延伸手段に特別の工夫はなされていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の先発明Vによる不織布は、縦延伸が可能であり、ある程度の強度を有するが、延伸倍率が低く、また強度も十分ではない。さらに、延伸した不織布が硬く、不織布として使用する上で問題を生ずる場合が多い。
本発明者らは、延伸倍率や強度が低く、延伸ウェブが硬くなる原因について鋭意検討した結果、以下の点が原因であることが判明した。
(1)紡糸したフィラメントが熱処理を受けており、延伸性が低下している。
(2)フィラメントの配列が不十分なため、延伸工程で延伸されないフィラメントが存在し、そのようなフィラメントが多いと、高い延伸倍率が得られず、強度も向上しないことがわかった。すなわち、十分に縦に配列しているフィラメントのみが延伸工程において実質的に縦延伸され、縦に配列していないフィラメントは、延伸しても未延伸フィラメントとして残る。
さらに、この延伸不織布に残る未延伸フィラメントは、延伸や熱処理工程で軟化または溶融して接着剤の役割を果たし、ウェブを硬くする原因となることも判明した。特にポリエチレンテレフタレートの場合にこの傾向が大きい。
(3)紡糸した縦配列ウェブを延伸する際に、通常の紡糸トウやフィルムを延伸する方法を用いると、延伸倍率や強度が向上しないことがわかった。これは、紡糸フィラメントが延伸間距離に渡って存在する確率が少ないことによる。
フィルムを縦延伸する場合には近接延伸法も用いられるが、その場合には通常延伸間距離を短くする方法として、小口径ロールを用いて急激にターンする方式が取られている。しかし本発明における紡糸ウェブにこの方法を用いると、小口径のロールにウェブの毛羽が巻き付き易く、操業の安定性が低い。
また、紡糸したウェブは、フィルムに比較して一体性や均一性が低いため、延伸における延伸点を固定することが困難であり、この点も延伸倍率や延伸強度を低下させる原因となる。
(4)延伸性が低くなる他の一つの原因としては、フィラメント相互またはフィラメントと金属との滑りが良好でないために、毛羽フィラメントが多く生じることが挙げられる。これらの毛羽がロール等に巻き付き、延伸性を低下させる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決するため鋭意研究を進めた結果、不織布の製造方法として、最も合理化された広義のスパンボンド方式を採用することにより、経済性および量産性に優れた本発明の不織布およびその製造方法を完成した。
【0006】
すなわち、本発明の第1は、長繊維フィラメントからなるウェブを一方向に少なくとも5倍近接縦延伸してなり、構成するフィラメント径が主として3ミクロン以上15ミクロン以下である縦延伸不織布に関するものである。
本発明の第2は、前記発明の第1において、ウェブがエンボス加工、カレンダー加工、接着剤加工等の補強加工を施されない状態における5%伸度における縦強度が1.2g/d以上であり、切断時の強度が2g/d以上である縦延伸不織布に関する。
【0007】
また本発明の第3は、溶融ポリマーを、多数の細孔ノズルを有する紡糸手段により押し出して形成したフィラメントを、高速流体の摩擦力により高ドラフト倍率で引取り、コンベア上に集積させることからなる不織布の製法において、
(1)前記ノズルから押し出されたフィラメントをドラフト可能な溶融状態に維持し、
(2)その後冷却流体でフィラメントを冷却し、
(3)冷却後のフィラメントの流れをコンベアの移送方向に傾斜させてコンベア上に導き、
(4)コンベアの積載面の裏側から幅方向に直線状の負圧により吸引してウェブを形成し、
(5)次いで上記ウェブをさらに縦方向に近接延伸する
ことを特徴とする縦延伸不織布の製法に関するものである。
本発明の第4は、前記発明の第3において、コンベアの積載面を、移送方向が低くなるように傾斜させたことを特徴とする縦延伸不織布の製法に関する。
本発明の第5は、前記発明の第3において、冷却流体が、霧状の水分および必要に応じて延伸性や静電特性を改善するための油剤を含む冷却エアーであることを特徴とする縦延伸不織布の製法に関する。
【0008】
本発明の第6は、前記発明の第3において、紡糸手段が、幅方向に一列に配置された多数の紡糸ノズルおよび紡糸ノズルの列の両側に設けた熱風噴出用のスリットからなるメルトブロー不織布用ダイスであることを特徴とする縦延伸不織布の製法に関する。
本発明の第7は、前記発明の第6において、高速流体が、前記熱風噴出用のスリットから噴出される熱風および前記冷却流体であることを特徴とする縦延伸不織布の製法に関する。
【0009】
本発明の第8は、前上記発明の第3または第5において、紡糸手段が、多数の紡糸ノズルおよびノズルの下側で吸引するエジェクターを備えたスパンボンド不織布用ダイスからなり、かつノズル直下に保温筒を設け、保温筒内の温度を紡糸温度よりも80℃以上高く保持し、エジェクターの下方へ前記冷却流体を噴出することを特徴とする縦延伸不織布の製法に関する。
本発明の第9は、前記発明の第8において、高速流体が、前記冷却流体であることを特徴とする請求項8に記載の縦延伸不織布の製法に関する。
【0010】
本発明の第10は、前記発明の第6におけるメルトブロー不織布用ダイスを用いる紡糸手段において、コンベアの移送方向側のスリットから噴出する熱風の量を、反対側のスリットの熱風の量よりも少なくすることにより、ダイスから紡出されるフィラメントの流れをコンベアの移送方向側へ傾斜させることを特徴とする縦延伸不織布の製法に関する。
本発明の第11は、前記発明の第3において、フィラメントの流れを、コンベアの積載面に対し傾斜させて設置した障壁板に当てることにより、フィラメントの流れをコンベアの移送方向へ導くことを特徴とする縦延伸不織布の製法に関する。
【0011】
本発明の第12は、前記発明の第3において、ウェブをコンベアから離れた直後に近接延伸した後、さらに全延伸倍率が5以上になるように縦方向に延伸して、多段延伸とすることを特徴とする縦延伸不織布の製法に関する。
本発明の第13は、前記発明の第12において、ウェブを縦方向に延伸する場合に、延伸点を固定するために、(1)ニップロールで挟圧する、(2)赤外線ラインヒータで延伸点を加熱する、および(3)断面が直線状の熱風を延伸点に当てることから選ばれる少なくとも1つの手段を用いることを特徴とする縦延伸不織布の製法に関する。
【0012】
以下本発明を詳細に説明する。
まず、本発明においては、ノズルを出た直後のフィラメント融液を積極的に加熱し、またはノズル直近の雰囲気温度を高温に維持することにより、ノズルから押し出されたフィラメントをドラフト可能な溶融状態に維持し、その間でドラフト倍率を高め、フィラメントを細径化する。この間の温度はフィラメントの融点より十分に高くするため、フィラメントが分子配向することはない。すなわち、通常の広義のスパンボンド紡糸とは異なり、できる限りフィラメントの配向を小さくする。
上記でいうノズルの「直近」とは、一般的にはフィラメントがノズルから紡出された直後の位置を意味する。通常は上から下へ押し出すが、その場合には直下と表現する。従って、下から上へ紡出した場合は直上であり、横へ紡出した場合は側方の極く近傍であり、いずれも本発明に含まれる。
【0013】
ノズル直下の雰囲気温度を上昇させる手段としては、ダイスからの熱風吹き出し、ヒータ加熱、保温筒などいずれも用いることができる。またポリマー融液フィラメントを加熱する手段としては赤外線放射やレーザ放射を用いることができる。これらの具体的な手段については実施例において詳述する。
【0014】
フィラメントにドラフト張力を与える方法として、メルトブロー(以下「MB」と略す)ダイスを使用する方式がある。熱風の温度を高くすることにより、フィラメントの分子配向を小さくすることができるので、本発明に特に好適である。しかし、通常のMB紡糸では、コンベア上でフィラメントがランダムに集積して配列せず、また熱風の影響によりフィラメントがコンベア上で熱処理を受けて延伸性の低いのものとなる。そこで本発明においては、紡出されたフィラメントに、霧状の水分を含むエアー等をコンベア面に対し傾斜させて掛け、フィラメントの冷却とフィラメントの配列を行うことを特徴とする。
【0015】
フィラメントにドラフト張力を与える別の方法として、狭義のスパンボンド(以下「SB」と略す)法がある。すなわち、多数の紡糸ノズルの下方にいわゆるエジェクターあるいはエアーサッカーを使用する方式である。この方式ではノズル直下において冷風により冷却するので、フィラメントが分子配向を生じ、フィラメントの強度が向上する。またコンベア上でのフィラメントの配置はランダムであり配列が不十分である。そこで本発明においては、ノズル直下のポリマー温度を高温に維持する手段を組み合わせることにより分子配向を小さくし、またエジェクター内に霧状の水分や冷風等を供給してフィラメントを十分に冷却することにより、延伸性の良いフィラメントとし、さらにこのフィラメントを含む流体をコンベア面に対し傾斜させて掛け、フィラメントの配列を向上させることを特徴とする。
【0016】
紡糸手段において、コンベア面に対し垂直ではなく、傾斜させて紡糸することにより、フィラメントはコンベア上で良好に配列する。
このように紡糸を斜行させる手段としては、紡糸フィラメントのノズル方向をコンベアに対して傾けること、流体の補助により紡糸フィラメントを斜行させること、コンベアを紡糸フィラメントの紡出方向に対して傾斜させることなどが有効であることがわかった。また、上記斜行方法の一つのみでは、十分良好な配列を保持しながら斜行させることが困難であり、複数の手段を組み合わせて実施することが望ましいことがわかった。
上記斜行手段としては流体を使用するが、流体が紡糸ノズル近傍において使用されるときは加熱されていることが望ましい。また、ノズル近傍で流体を使用しない場合は、紡出フィラメントをノズル近傍で積極的に加熱する必要がある。これは紡出フィラメントがドラフトにより細径化される際に、できるだけ分子配向を伴わないようにするためである。この点において、本発明は、通常のSB法のように、ドラフトにより分子配向を生じさせて強度のある不織布を製造しようとする方式とは全く異なるものである。
これらのさらに具体的な例については、実施例で詳述する。
なお、本発明において、紡糸段階ではフィラメントの分子配向ができるだけ生じないようにするが、個々のフィラメントはできるだけ縦(ライン方向)に配列していることが望ましい。
【0017】
本発明において、フィラメントを斜行させるために使用する流体としては、コンベア近傍では冷流体、特に霧状の水を含んだ流体が最も望ましい。紡糸されたフィラメントを急冷することにより、熱の影響を防ぎ、結晶化を進行させないようにするためである。紡糸や加熱流体などの熱の影響が残留すると、コンベア上のフィラメントが熱処理を受け、結晶化が進み、延伸性が低下することがわかった。
延伸性においては、特にポリエステルフィラメントの場合に熱の影響が顕著であり、ポリプロピレンにおいても影響が見られる。
本発明はこのように水をスプレーしているが、これは溶融フィラメントを水で冷却することによる急冷効果により、高延伸倍率や高強度の達成等の延伸適性を向上させるが、さらに紡糸されたウェブをコンベアに貼付け、冷却スプレーで吹き飛ばされるのを防止するため冷却スプレーの勢いを強くすることができるので、紡糸の安定性およびフィラメントの配列性の向上にも効果がある。
【0018】
霧状の液体に、いわゆる紡糸延伸用油剤、すなわち延伸性や静電気除去等の性質を付与することができる油剤を添加する。これにより、延伸性が向上し、毛羽が少なくなり、延伸後の強度および伸度も向上した。
【0019】
コンベアの種類としては、図示したフラットベルトタイプのコンベア以外にもメルトブロー不織布に多用されているドラムスクリーンタイプがある。ドラムスクリーンタイプにおける傾斜とは、紡糸フィラメントのノズルからの噴出方向が垂直から巻取機方向へ傾斜していることを意味する。
コンベアの材質としては、メタルワイヤーやプラスチックワイヤー等の不織布の製造に使用されている種々の素材を使用することができ、またその網目を構成する織方等についても、平織や綾織等不織布の製造に使用される種々の方法を本発明に使用することができる。さらに本発明において特に有効なネットの織方として、縦に織目が配列した朱子織があり、縦にフィラメントが並んだ層を表面に配することによりウェブフィラメントの縦配列効果が高まり、ウェブの強度が向上する。
【0020】
コンベア積載面の裏側から負圧により吸引することにより、斜行させて不安定になったウェブを安定化させることができ、また熱を除去する効果も得られる。特公昭60−25541号公報に記載されているように、フィラメントの自己粘着性によってコンベア上の安定化を図る必要はない。この場合の負圧吸引は、コンベアの幅方向に直線状に、かつ狭い幅で行うことが重要である。通常の広義のSB不織布においても負圧吸引を行うことが多いが、その場合には広い面積で吸引を行っており、従ってフィラメント量が少ない部分の負圧を強化することによりウェブ平面内の坪量の均一性を高め、かつフィラメントの配列をできるだけランダムにすることを目的としている。それに対して本発明は、フィラメントの配列を高めることを主眼としており、さらにフィラメントがコンベア上で飛散することを防止し、コンベア上でのフィラメントの熱を除去して延伸性を高めることを目的としている。
さらに負圧吸引は、水分も除去するため、プレスシート化工程や延伸工程において、水分の影響を低下させる効果もある。ポリエステルにおいては水分が延伸性に大きく影響し、部分による水分の多少により延伸の均一性が損なわれ、延伸倍率や延伸後のウェブ強度が低くなる。
また、負圧により吸引することにより、延伸油剤や水の回収も可能となった。本発明では、上述のように通常のスパンボンド不織布やメルトブロー不織布に使用されている吸引ブロアが使用されるが、フィラメントのコンベアへの着地点を調整するばかりでなく、その後に吸引面積を増やしたり、多段に吸引することにより紡糸の安定性を向上させることができる。
【0021】
本発明の延伸において、1段目は近接延伸を行う。
近接延伸とは、隣接する2組のロールの表面速度の差によりウェブを延伸する方法において、短い延伸間距離(延伸の開始点より終了点までの距離)を保って行う方式であり、延伸間距離が100mm以下であることが望ましい。特に本発明のように、フィラメントが縦方向に直線的には配列しておらず、たとえ縦方向に配列していてもフィラメントがある程度屈曲している場合には、近接延伸においてできるだけ延伸間距離を短く保つことが、個々のフィラメントを有効に延伸する上で重要である。
通常のフィルムの近接延伸法においては、前記のように小口径ロールが使用されるが、本発明においては適当でない。小口径ロールにはウェブのフィラメントが巻き付き易く、安定した運転ができないからである。
近接延伸に必要な熱量は、通常延伸するロールを加熱することにより供給され、さらに延伸点においては熱風や赤外線による加熱を補助的に使用する。また、温水、蒸気等を使用することもできる。
【0022】
一般にウェブの延伸においては延伸点を固定することが重要である。延伸点が一定していないと全体が均一に延伸されないため、延伸倍率を高めることができず、また、延伸されたウェブに延伸倍率の異なる部分が混在し、十分なウェブ強度が得られない。本発明者らは、以下の延伸方法により、縦配列ウェブの延伸性を向上することができた。
本発明による縦延伸不織布の通常の最終製品の幅は、1mから2mあるいはそれ以上である。しかし、狭い幅のダイスで紡糸し、その紡糸ウェブ製造装置において予備延伸を行うと、延伸装置が簡便であるため、近接延伸が容易である。このように予備延伸したウェブを平行に並べてさらに主延伸を行うことにより、広幅縦延伸ウェブが得られる。その際、主延伸では延伸倍率が低いため、ウェブの幅の収縮が小さく、従って予備延伸ウェブを平行に並べる際のオーバラップ部は少なくてすむため目立つことがない。また、予備延伸されたウェブはすでに縦に延伸されているために、主延伸では、近接延伸の延伸間距離は比較的長くてもよい。
【0023】
本発明の多段延伸において、2段目以降の延伸手段としては、近接延伸のみならず、通常のウェブの延伸に用いられる種々の手段を適用することができる。すなわちロール延伸、温水延伸、蒸気延伸、熱盤延伸等の各種延伸方式が挙げられる。近接延伸が必ずしも必要でないのは、1段目の延伸においてすでに個々のフィラメントが長さ方向に長く渡っているためである。
【0024】
本発明の縦延伸不織布の製法において、延伸倍率はウェブを構成するフィラメントのポリマーの種類、ウェブの紡糸手段や配列手段などによって異なる。しかし、いずれの種類や手段を用いる場合にも、ウェブの高配向度および高強度を達成し得る延伸倍率が選択される。
上記の延伸倍率は、延伸前のウェブの延伸方向に所定の間隔で付与したマークにより、以下の式で定義される。
延伸倍率=〔延伸後のマーク間の長さ〕/〔延伸前のマーク間の長さ〕
この延伸倍率は、通常の長繊維フィラメントヤーンの延伸のように、必ずしも個々のフィラメントの延伸倍率を意味しない。
【0025】
本発明に用いるフィラメントに適合する強度部材ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン、フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂およびこれらの変性樹脂などを使用することができる。また、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂等の湿式または乾式の紡糸手段を適用し得る樹脂も使用することができる。
また本発明は、本出願人の先発明である国際公開公報WO96/17121号に記載された混合紡糸、コンジュゲート紡糸等にも使用することができる。
【0026】
本発明に用いる縦ウェブは、縦方向の配列を維持しつつ、ウェブ幅を拡幅して使用することもできる。その際、フィラメントが若干斜交する。
【0027】
本発明に用いるフィラメントは長繊維フィラメントである。ここでいう長繊維フィラメントとは、実質的に長繊維であればよく、すなわち平均長さが100 mmを越えているものをいう。
また、本発明においては、フィラメントの径が50μm以上では剛直で交絡が不十分になる。望ましくは30μm以下、さらに望ましくは25μm以下である。
特に強度の強い不織布を目的とする場合は、フィラメント径が5μm以上であることが望ましい。
本発明のフィラメントの径および長さは、顕微鏡写真により測定する。
【0028】
本発明では、上述のように高強度が達成できるが、それはエンボス等によるウェブの補強加工を施したものではない状態での強度である。通常のスパンボンド不織布やメルトブロー不織布のような不織布では、エンボス、カレンダー、接着剤処理、ニードルパンチ、ステッチボンド加工等のウェブの強度を向上させる加工を施して初めて実用に耐える不織布になる。
【0029】
本発明の方法を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の縦延伸不織布の製法に用いる装置の例を示す斜視図である。MBダイス1は、構造を明瞭にするため断面を示した。ギアポンプ(図示せず)から送入された溶融樹脂2は、ダイス先端の多数のノズル3から押し出されて多数のフィラメント4を形成する。樹脂の融点以上に加熱された高圧加熱エアーが、ノズル3の両側に設けられたエアー溜5a、5bに送入され、ノズル3の両側のスリット6a、6bから噴出し、熱風の噴出による摩擦力によりフィラメント4にドラフトが付与され、フィラメント4が細径化される。上記の機構は通常の MB法と同様である。
本発明においては、高圧加熱エアーの温度をフィラメントの紡糸温度よりも 80℃以上、望ましくは120℃以上、さらに望ましくは200℃以上高くする。また本発明では、エアー溜5aおよび5bの両エアーの流量に差を設け、5aからの流量を5bからのそれより小さくすることにより、フィラメント4の流出方向を真下から角度αだけ傾斜させる。このようにフィラメントの流出方向に角度αを付与することは、MBダイス1自体を傾斜することによっても実現することができ、また両者を併用することもできる。
【0030】
MBダイス1とコンベア7の中間において、スプレーノズル8a、8bからコンベア7側へ向け霧状の水を噴霧する。スプレーノズルは実際には各複数個設置するが、煩雑さを避けるため各1個のみを図示した。この霧状の水の噴霧する勢いで、フィラメント4は、αよりさらに大きい角度βに傾斜して、コンベア7の上にウェブ9として集積される。コンベア7は、水平面から角度γの傾斜を設けて、フィラメント4の着地点より引取方向を低くする。なお、冷却用のスプレーは必ずしも水分を含む必要はなく、冷エアーでもよい。
上記のように、コンベアの傾斜およびエアーや霧状の水の勢いなどの効果により、コンベア上のウェブ9のフィラメント4は縦に配列する。水スプレーで冷却されたウェブ9は、自己粘着性を有していないので、そのままではエアーの流れ等によりコンベア上で飛散するが、コンベア7の裏側にコンベアの幅方向に直線状に設けた負圧吸引ノズル10で吸引することにより飛散が防止され集積される。
負圧吸引ノズル10のコンベア移送方向側を、減圧度30mm-H2O 以下、さらに望ましくは10mm-H2O 以下に保つことにより、フィラメントが効果的に配列することがわかった。
【0031】
コンベア7上のウェブ9は、延伸温度に加熱された延伸シリンダ11とコンベア積載面の裏側の押えゴムロール12によりニップされ、延伸シリンダ11上に移され、さらに押えゴムロール13でニップされて、延伸シリンダ11に密着する。
ウェブ9は、延伸シリンダ11とその後の引取ニップロール14a、14b(14bはゴムロール)との速度差により延伸され、縦延伸不織布15となる。
【0032】
図2は、不織布の紡糸方法において、狭義のSB法を用いた場合の縦断面図である。通常のSB紡糸では、多数の紡糸孔を有するSBダイス21から紡糸された多数のフィラメント22は、エジェクター23でエアー24により吸引され、エジェクター23のノズルにより加速されたエアーに伴われてコンベア7の上に集積される。
本発明においては、SBダイス21の下方に図に示すように保温壁26を設け、その中にヒータ27を設置し、紡糸したフィラメント22の流れに融点以上に加熱した加熱エアー28を随伴させて、ノズル直下でフィラメント22が冷却されないようにする。フィラメント22は、エジェクター23に入る直前で、スプレーノズル8からの霧状の水分を含むエアーにより冷却されながらエジェクター23に導かれる。スプレーノズル8がなければ、フィラメント22はエジェクター23内で相互に融着する。なお、スプレーノズル8の代わりに、エジェクター23においてエアー24に霧状水分を含ませることも可能である。
エジェクター23で加速されたフィラメント25は、コンベア7の積載面に傾斜して設置した障壁板29により方向を変えられ、さらに負圧吸引ノズル10により吸引されて、図1に示す例と同様に、傾斜したコンベア7の上に集積される。
なお、図2においては、エジェクター23は垂直に設置されているが、エジェクターの流出方向自体を傾斜させてもよい。
【0033】
図2に示すSBダイス21のノズル直下の保温壁26は、ヒータ27で加熱された加熱エアー28の導入路であり、保温筒の役目を果たす。ただし、ノズル直下を高温に保つ他の方法として、赤外線ランプ等でノズル直下を直接加熱することも可能である。いずれの場合も、ノズル直下を高温に維持することによって、ドラフトによりフィラメントが細径化されても、フィラメントの分子配向が少ない点に本発明の特徴がある。
図2に示す加熱エアー28の温度を、フィラメントの紡糸温度(ダイス温度)よりも80℃以上、さらに望ましくは120℃以上高くすることにより、フィラメントの分子配向が小さくなり、その後の延伸性が向上することがわかった。
【0034】
図3は、図1に示す製造装置における延伸工程の側面図である。延伸シリンダ11は延伸適温に加熱されている。例えば、ウェブ9の材料がポリプロピレンであれば110℃、ポリエステルであれば85℃である。押さえゴムロール13によりウェブ9は延伸シリンダ11に密着し、密着の程度が適当であれば、延伸点はウェブが延伸シリンダ11から離れる点bにおいて幅方向に一直線となり、理想的な近接延伸となる。密着が弱い場合には、延伸点が延伸シリンダ11側のa点に移行し、不安定となる。また密着が強すぎると延伸点はb点とc点との間で変動するためやはり不安定である。
この密着性は、押えゴムロール13を赤外線ヒータ等で加熱したり、延伸シリンダー11の表面の接着性を変えることにより変化させることができ、それにより延伸点をb点近傍に固定することができる。なお、ラインスピードや坪量等によりこれらの条件は変化する。そこで、延伸点をb点に固定するために、図3(a)のように熱風発生機31により、b点上に断面が直線状の熱風を吹きかけることが有効であり、また図3(b)のように赤外線ヒータによる光を線状に集光する赤外線ラインヒータ32でb線上を加熱することも効果がある。
【0035】
図4は、他の延伸装置の例の側面図である。
ウェブ41は、図1または図2に示した紡糸装置で紡糸されたウェブでもよいし、あるいは図1または図3の延伸装置で近接延伸されたものでもよい。ウェブ41はニップロール42a、42bにより延伸装置に導入され、予熱ロール43で予熱され、ウェブ44として延伸ロール45に導かれる。延伸ロール45にはニップゴムロール46が設置されており、延伸ロール45と延伸ロール48の間で縦延伸される。延伸間距離は、延伸ロール45とニップロール46とのニップ点Pと、延伸ロール48とニップロール49とのニップ点Qで決められるウェブの走行距離PQであり、その間でウェブ47は延伸される。
この装置による多段延伸が必要である場合は、延伸ロール48と延伸ロール 51との間でさらに延伸を行う。この場合の延伸間距離は、点Qと、延伸ロール51およびニップロール52のニップ点Rで定められるウェブ50の走行距離 QRである。
縦延伸の後に熱処理が必要な場合には、ウェブ53を熱処理ロール54で熱処理することができる。
ウェブ53は、ニップロール55a、55bに引き取られ、延伸されたウェブ56として得られる。
【0036】
上述のように、不織布の縦延伸には、延伸間距離のできるだけ短い装置が適当である。図4に示したように、延伸ロールに対し、ニップロール46、49および52を設置することにより、延伸点が固定し、延伸が安定するので、より高倍率の延伸が可能になる。ニップロール46等がない場合には、延伸点はP点より予熱ロール側に移動し、延伸間距離が長くなるばかりでなく、延伸点が移動して延伸切れの原因となる。
縦延伸に適するウェブとしては、上記の原理から、フィラメントができるだけ縦に配列しているものが適当である。すなわち、フィラメントが縦方向に長いため、延伸間距離が一定でも、両端が把持されるフィラメントの割合が多くなり、また、延伸後のウェブの強度が向上する。
図4に示す装置において、延伸のための熱は、基本的には加熱されたロールによって与えられるが、図3で示した熱風や赤外線も併用することができる。さらに走行距離PQまたはQRの間をカバーで覆い、その内部を蒸気加熱することもできる。
図1または図2に示す紡糸装置で得られたウェブの幅が狭い場合であっても、それらを並列させ図4に示す延伸装置を用いて延伸することにより、広幅の延伸ウェブとすることができる。
【0037】
図5は通常のフィルム等に使用されている近接延伸の方法を示す側面図であり、原反ウェブ61はシリンダ62で予熱され、小口径ロール63の表面速度はシリンダ62の表面速度と同一である。延伸は小口径ロール64と小口径ロール65の間で行われ、シリンダ66で熱処理され、冷却シリンダ67で冷却され、ニップロール68を経て延伸フィルム69として引き取られる。
このような近接延伸では、小口径ロール64と65のようにきわめて短い距離で延伸が行われるので、幅収縮も小さく、延伸点を固定することも可能であり、フィルムの延伸としては望ましい。しかしながら、本発明における不織布の延伸においては、フィラメントが小口径ロールに巻き付き易く、運転の安定性を損ねるため好ましくない場合もある。本発明では、延伸前のウェブのフィラメントの縦配列が良いため、ロールニップでも目的が達成できる場合が多い。
【0038】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を実施例により説明する。
【実施例】
<実施例1>
減成によりMFRを250g/10min としたポリプロピレンを、図1に示す装置を用い、ダイス温度300℃、熱風温度350℃として、ノズル径0.5mmのMBダイス1から紡出し、エアー溜5aから風量3リットル/分/ノズル、および5bから風量4リットル/分/ノズルで高圧加熱エアーを噴出させて、フィラメントの噴出角度αを12度とした。また、角度βが45度になるように、スプレーノズル8a、8bから霧状の水を含むエアーを、ノズル下250mmの位置に噴霧した。10m/分で走行する目開き2mmのスクリーンからなり、水平面となす角度γが32度であるコンベア7を用い、フィラメントの着地点において、ギャップが8mmでありウェブと同じ幅を有する負圧吸引ノズル10により吸引した。
コンベア7上のウェブ9を、98℃に加熱された直径500mmのシリンダで予熱した後、押えゴムロール13でニップして延伸シリンダ11に密着させ、図3(a)に示す熱風発生機31により断面が直線状の150℃の熱風を送って加熱し、縦方向に5倍延伸を行った。
次いで、図4に示す延伸装置を用いて延伸を行った。ただし、51を熱処理ロールとし、かつ54を冷却シリンダとして用いた。すなわち、予熱ロール43と延伸ロール45の温度を110℃に設定してPQ間で1.3倍に延伸し、120℃の延伸ロール48と145℃の熱処理ロール51の間で延伸倍率1.2倍に延伸し、熱処理ロール51と冷却シリンダ54との間で5%収縮させることにより縦延伸不織布を得た。その結果を表1に示す。
【0039】
<比較例1−1>
実施例1において、エアー溜5aからの風量を5bからの風量と同じ4リットル/分/ノズルとしてノズルの真下へ紡糸し、スプレーノズル8a、8bを使用せず、コンベア7は水平にして用いた。また負圧吸引ノズル10の代わりにコンベアの移送方向に沿って300mmの負圧室を設け、延伸シリンダ11と押えゴムロール13により実施例1における熱プレスのみを行った。その結果を表1に示す。
【0040】
<比較例1−2>
比較例1−1の試料について、さらに延伸シリンダ11と引取ニップロール 14aとの間で実施例1と同様に5倍延伸を行おうとしたところ、延伸切れが激しく、毛羽が延伸シリンダ11や引取ニップロール14aに巻き付いたため、延伸を3.5倍とし、その後の延伸は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0041】
<実施例2>
極限粘度〔η〕0.68dl/g のポリエチレンテレフタレート溶融樹脂を、ノズル径0.3mm、ダイス温度330℃とした図2に示すSBダイス21から多数のフィラメント22として押出し、エジェクター23のエアー24で引取り、ドラフトにより細径化されたフィラメント群25とする。その際、フィラメント22は、ノズル下の保温壁26の外側に設けたヒータ27で加熱された加熱エアー28により保温されており、冷却は生じない。その後スプレーノズル8から、紡糸延伸用油剤としてデリオン 624Rおよび同389(商品名、竹本油脂(株)製)を各0.1%添加した水をエアーと共に噴霧することにより冷却した。
フィラメント25は、コンベア7の積載面となす角度δが30度の障壁板29により方向を変えられ、さらに水平面となす角度γが15度のコンベア7上に、負圧吸引ノズル10により吸引され、ウェブとして集積される。
コンベア上のウェブを85℃に加熱された直径500mmのシリンダで予熱した後、押えゴムロール13でニップして延伸シリンダ11に密着させ、図3(b)に示す赤外線ラインヒータ32で直線状に延伸点を加熱し、縦方向に3倍延伸した。次いで、図4に示す延伸装置を用いて延伸を行った。ただし、実施例1の場合と同様に、51を熱処理ロールとし、かつ54を冷却シリンダとして用いた。すなわち、予熱ロール43と延伸ロール45の温度を85℃に設定してPQ間で2.1倍に延伸し、120℃の延伸ロール48と165℃の熱処理ロール51との間で3%収縮させ、さらに熱処理ロール51と冷却シリンダ54と間で2%収縮させることにより縦延伸不織布を得た。その結果を表1に示す。
【0042】
<比較例2−1>
実施例2において、保温壁26およびスプレーノズル8を使用せず、また障壁板29も使用せず、コンベア7は水平にして使用した。また負圧吸引ノズル10の代わりにコンベアの移送方向に沿って300mmの負圧室を設け、延伸シリンダ11と押えゴムロール13により実施例2における熱プレスのみを行った。その結果を表1に示す。
【0043】
<比較例2−2>
比較例2−1の試料について、さらに延伸シリンダ11と引取ニップロール 14aとの間で実施例2と同様に3倍延伸を行おうとしてが、延伸切れが激しく、毛羽が延伸シリンダ11や引取ニップロール14aに巻き付いたため、延伸を2倍とし、その後の延伸は実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0044】
<実施例3>
〔η〕0.63dl/g のPET(ポリエチレンテレフタレート)溶融樹脂を、ノズル径0.3mm、ダイス温度300℃、熱風温度350℃として、図1に示すMBダイス1から紡出し、エアー溜5aから風量4リットル/分/ノズル、および5bから風量5リットル/分/ノズルで高圧加熱エアーを噴出させて、フィラメントの噴出角度αを12度とした。また、角度βが45度になるように、スプレーノズル8a、8bから冷却エアーを、ノズル下250mmの位置に噴霧した。10m/分で走行する目開き2mmのスクリーンからなり、水平面となす角度γが25度であるコンベア7を用い、フィラメントの着地点においてギャップが8 mmでありウェブと同じ幅を有する負圧吸引ノズル10により吸引した。コンベア7上のウェブ9を、85℃に加熱された直径500mmのシリンダで予熱した後、押えゴムロール13でニップして延伸シリンダー11に密着させ、図3(b)に示す赤外線ラインヒータ32で直線状に延伸点を加熱し、縦方向に2.5倍延伸した。
次いで、図4に示す延伸装置を用いて延伸を行った。ただし、前記と同様に、51を熱処理ロールとし、かつ54を冷却シリンダとして用いた。すなわち、予熱ロール43と延伸ロール45の温度を85℃に設定してPQ間で2倍に延伸し、120℃の延伸ロール48と165℃の熱処理ロール51との間をカバーで覆い、内部を蒸気室とすることにより、その間で1.2倍に延伸し、熱処理ロール51と冷却シリンダ54と間で3%収縮させることにより縦延伸不織布を得た。その結果を表1に示す。
【0045】
<比較例3−1>
実施例3において、エアー溜5aからの風量を5bからの風量と同じ5リットル/分/ノズルとしてノズルの真下へ紡糸し、スプレーノズル8a、8bを使用せず、コンベア7は水平にして用いた。また負圧吸引ノズル10の代わりに、コンベアの移送方向に沿って300mmの負圧室を設け、延伸シリンダ11と押えゴムロール13により実施例3における熱プレスのみを行った。その結果を表1に示す。
【0046】
<比較例3−2>
比較例3−1に試料について、さらに延伸シリンダ11と引取ニップロール 14aとの間で実施例3と同様に2.5倍延伸を行おうとしたが、延伸切れが激しく、毛羽が延伸シリンダ11や引取ニップロール14aに巻き付いたため、延伸を2倍とし、その後の延伸は実施例3と同様に行った。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
Figure 0004113271
【0048】
表1の不織布の性能における強度は、長繊維フィラメント不織布試験法(JIS L1096)による縦方向のみの試験結果を示した。JISにおいては、切断強度を5cm当たりの切断荷重で表示しているが、試験を行った不織布の坪量が異なるため、不織布の重量からデニール値を求めて、デニール当たりの強度 (g/d)で表示した。また、表中の全延伸倍率は、延伸後の熱収縮率を含めてロール速度比より計算して示した。
なお、5%伸度における強度はJISでは規定されていないが、本発明による不織布の寸法安定性を比較するために示した。
また、比較のため、表1には市販のSB不織布(比較例4)およびMB不織布(比較例5)も示した。比較例1−1、2−1および3−1の不織布は市販の SB不織布に比較しても強度が弱いが、これは市販のSB不織布には熱エンボスが施されているためと思われる。
【0049】
【発明の効果】
本発明の不織布は、フィラメントの縦配列が良好であり、縦方向の強度や寸法安定性に優れた不織布であり、またそのような不織布を本発明の方法により製造することができる。
本発明の不織布の高強度や寸法安定性は、エンボス等のウェブの補強加工を施したものではない状態での物性である点に特徴がある。通常のスパンボンド不織布やメルトブロー不織布のような不織布では、エンボス、カレンダー、接着剤処理、ニードルパンチ、ステッチボンド加工等のウェブの強度を向上させる加工を施して初めて実用に耐える不織布になる点に比較して本発明の強度等の物性は画期的である。
上記の特長は、紡糸されたフィラメントの分子配向を少なくするように急冷を行い、かつフィラメントの配列を良好にして延伸性を向上させたことによる。また、フィラメントの冷却時に噴霧する水分に紡糸延伸用油剤を使用したり、コンベアや負圧吸引ノズルに特別の配慮を行い、延伸においても種々の工夫を加えた結果である。
本発明による不織布は、通常の不織布よりも高倍率に延伸して製造されるため、フィラメント径が細い、いわゆるファインデニールの不織布であり、風合いやフィルター性能等に優れたものである。
また、本発明による不織布は、縦方向強度が要求される、電線押巻テープ用不織布、包装用テープリボン用不織布、粘着剤含浸不織布等に使用され、さらに通常の不織布や紙等の縦補強を風合い良く実現する際にも使用することができる。なお、本発明の縦延伸ウェブ層は、本発明者らの先願発明である直交積層不織布、斜交積層不織布(特公平3−36948号、特開平2−269859号、特開平2−269860号、WO96/17121号等)の原料ウェブとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いる製造装置の例を示す斜視図である。
【図2】本発明で用いる製造装置の他の例を示す一部縦断面図である。
【図3】図3(a)および(b)は本発明で用いる延伸工程の例を示す側面図である。
【図4】本発明で用いる延伸工程の他の例を示す側面図である。
【図5】フィルムの近接延伸装置の例を示す側面図である。
【符号の説明】
1 メルトブロー(MB)ダイス
2 溶融樹脂
3 ノズル
4、22、25 フィラメント
5a、5b エアー溜
6a、6b スリット
7 コンベア
8、8a、8b スプレーノズル
9、41、44、47、50、53、56 ウェブ
10 負圧吸引ノズル
11 延伸シリンダ
12、13 押えゴムロール
14a、14b 引取ニップロール
15 縦延伸不織布
21 スパンボンド(SB)ダイス
23 エジェクター
24 エアー
26 保温壁
27 ヒータ
28 加熱エアー
29 障壁板
31 熱風発生機
32 赤外線ラインヒータ
42a、42b、46、49、52、55a、55b、68 ニップロール
43 予熱ロール
45、48、51 延伸ロール
54 熱処理ロール
61 原反ウェブ
62、66、67 シリンダ
63、64、65 小口径ロール
69 延伸フィルム
P、Q、R ニップ点
a、b、c 延伸点

Claims (11)

  1. 溶融ポリマーを、多数の細孔ノズルを有する紡糸手段により押し出して形成したフィラメントを、高速流体の摩擦力により高ドラフト倍率で引取り、コンベア上に集積させることからなる不織布の製法において、
    (1)前記ノズルから押し出されたフィラメントをドラフト可能な溶融状態に維持し、
    (2)その後冷却流体でフィラメントを冷却し、
    (3)該冷却後のフィラメントの流れをコンベアの移送方向に傾斜させてコンベア上に導き、
    (4)コンベアの積載面の裏側から、コンベアの幅方向に直線状に、かつ狭い幅の負圧により吸引してウェブを形成し、
    (5)次いで上記ウェブをさらに縦方向に近接延伸する
    ことを特徴とする縦延伸不織布の製法。
  2. 前記コンベアの積載面を、移送方向が低くなるように傾斜させたことを特徴とする請求項1に記載の縦延伸不織布の製法。
  3. 前記冷却流体が、霧状の水分および/または延伸性や静電特性を改善するための油剤を含む冷却エアーであることを特徴とする請求項1に記載の縦延伸不織布の製法。
  4. 前記紡糸手段が、幅方向に一列に配置された多数の紡糸ノズルおよび該紡糸ノズルの列の両側に設けた熱風噴出用のスリットからなるメルトブロー不織布用ダイスであることを特徴とする請求項1に記載の縦延伸不織布の製法。
  5. 前記高速流体が、前記熱風噴出用のスリットから噴出される熱風および前記冷却流体であることを特徴とする請求項4に記載の縦延伸不織布の製法。
  6. 前記紡糸手段が、多数の紡糸ノズルおよび該ノズルの下側で吸引するエジェクターを備えたスパンボンド不織布用ダイスからなり、かつノズル直下に保温筒を設け、該保温筒内の温度を紡糸温度よりも80℃以上高く保持し、エジェクターの下方へ前記冷却流体を噴出することを特徴とする請求項1または3に記載の縦延伸不織布の製法。
  7. 前記高速流体が、前記冷却流体であることを特徴とする請求項6に記載の縦延伸不織布の製法。
  8. 前記メルトブロー不織布用ダイスを用いる紡糸手段において、コンベアの移送方向側のスリットから噴出する熱風の量を、反対側のスリットの熱風の量よりも少なくすることにより、ダイスから紡出されるフィラメントの流れをコンベアの移送方向側へ傾斜させることを特徴とする請求項4に記載の縦延伸不織布の製法。
  9. 前記フィラメントの流れを、コンベアの積載面に対し傾斜させて設置した障壁板に当てることにより、フィラメントの流れをコンベアの移送方向へ導くことを特徴とする請求項1に記載の縦延伸不織布の製法。
  10. 前記ウェブをコンベアから離れた直後に近接延伸した後、さらに全延伸倍率が5以上になるように縦方向に延伸して、多段延伸とすることを特徴とする請求項1に記載の縦延伸不織布の製法。
  11. 前記ウェブを縦方向に延伸する場合において、延伸点を固定するために、(1)ニップロールで挟圧する、(2)赤外線ラインヒータで延伸点を加熱する、および(3)断面が直線状の熱風を延伸点に当てることから選ばれる少なくとも1つの手段を用いることを特徴とする請求項10に記載の縦延伸不織布の製法。
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