JP4112133B2 - 熱電素子モジュール - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ゼーベック効果を利用する発電用素子モジュールとしても、或いはペルチェ効果を利用する冷却又は加熱用素子モジュールとしても用い得る熱電素子モジュールに関する。さらに詳しくは、基板として炭素質基板を用いた、熱効率に優れ、かつ信頼性の高い熱電素子モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、複数枚の基板が対向して配置されており、該対向する複数枚の各基板の対向面にそれぞれ金属電極が接合されており、該金属電極を介して複数のn型及びp型の半導体が交互に接続されている熱電素子モジュールは知られている。この熱電素子モジュールは、一般に、いわゆるゼーベック効果、すなわちn型半導体とp型半導体を接続し、該接続部を高温側端部として高温に保持し、該高温側端部と反対側のn型半導体及びp型半導体の各脚部を低温側端部として低温に保持して、該高温側端部と該低温側端部の間に温度差をつけたときに起電力が発生するゼーベック効果を利用して、発電用熱電素子モジュールとして利用されたり、或いは、いわゆるペルチェ効果、すなわちn型半導体とp型半導体を接続し、該接続部とは反対側のn型半導体の脚部にプラス電圧を、p型半導体の脚部にはマイナス電圧をそれぞれ掛け、n型半導体からp型半導体へ電流を流すと、n型半導体とp型半導体の接合部で熱が吸収され、n型半導体及びp型半導体の各脚部に熱が発生され、逆に、p型半導体からn型半導体へ電流を流すと、n型半導体とp型半導体の接合部に熱が発生され、n型半導体及びp型半導体の各脚部で熱が吸収されるペルチェ効果を利用して、冷却又は加熱用熱電素子モジュールとして利用される。
【0003】
上記従来の熱電素子モジュールには、1段モジュール或いは多段モジュールがあるが、対向して配置される基板が2枚である1段モジュールの場合の基本的構造は、図6に模式的断面図として示したような構造である。すなわち、熱電素子モジュールAは、対向する2枚の基板1、1´の対向面2、2´にそれぞれ金属電極4、4´が接合されており、これらの金属電極4、4´を介して複数のn型半導体5及びp型半導体6が交互に接続されて構成されている。図6において図示を省略したが、一般に、金属電極4、4´は基板1、1´に例えば接着剤層等の接合手段で接合されており、またn型半導体5及びp型半導体6は金属電極4、4´に例えば半田層等の接合手段で接合されている。また、同様に図6において図示を省略したが、基板1、1´の外面3、3´には、一般に、加熱手段、冷却手段或いは被冷却物等の部品ないし設備が接合される。すなわち、当該熱電素子モジュールがゼーベック効果を利用する発電用熱電素子モジュールとして用いられる場合であって、基板1の対向面2側がn型半導体5とp型半導体6の各脚部の低温側端部側であり、基板1´の対向面2´側がn型半導体5とp型半導体6の接合部の高温側端部側であるとすれば、基板1の外面3には、例えば放熱フィン等の上記各脚部の低温側端部を低温に保持するための冷却手段が接合され、一方基板1´の外面3´には、例えば受熱フィン等の上記接続部の高温側端部を高温に保持するための加熱手段が接合される。また、当該熱電素子モジュールがペルチェ効果を利用する例えば冷却用熱電素子モジュールとして利用される場合であって、電流がp型半導体6からn型半導体5へ流され、基板1の対向面2側がn型半導体5とp型半導体6の各脚部の吸熱側端部側であり、基板1´の対向面2´側がn型半導体5とp型半導体6の接合部の発熱側端部側であるとすれば、基板1の外面3には、上記各脚部の吸熱側端部により冷却する被冷却物が接合され、一方基板1´の外面3´には、例えば放熱フィン等の上記接続部の発熱側端部の熱を放熱するための冷却手段が接合される。
【0004】
また、対向して配置される基板が3枚である2段モジュールの場合の基本的構造は、図7に模式的断面図として示したような構造である。すなわち、熱電素子モジュールBは、第一段目のモジュールb1 と第二段目のモジュールb2 からなる。そして、第一段目のモジュールb1 は、図6の熱電素子モジュールAと同様の構成であって、対向する2枚の基板1、1´、基板1、1´の対向面2、2´にそれぞれ接合された金属電極4、4´、金属電極4、4´を介して交互に接続された複数のn型半導体5及びp型半導体6からなっている。また、第二段目のモジュールb2 も、第一段目のモジュールb1 と同様の構成であって、対向する2枚の基板1´、1´´の対向面2´´、2´´´にそれぞれ金属電極4´´、4´´´が接合されており、これらの金属電極4´´、4´´´を介して複数のn型半導体5´及びp型半導体6´が交互に接続されて構成されている。そして、第一段目のモジュールb1 の熱電素子モジュール(交互に接続された複数のn型半導体5及びp型半導体6)と第二段目のモジュールb2 の熱電素子モジュール(交互に接続された複数のn型半導体5´及びp型半導体6´)は直列に接続されている。図7において図示を省略したが、一般に、金属電極4´´、4´´´は基板1´、1´´に例えば接着剤層等の接合手段で接合されており、またn型半導体5´及びp型半導体6´は金属電極4´´、4´´´に例えば半田層等の接合手段で接合されている。しかして、同様に図7において図示を省略したが、基板1、1´´のそれぞれの外面3、3´´には、一般に、図6の熱電素子モジュールAにおける基板1、1´のそれぞれの外面3、3´の場合と同様、加熱手段、冷却手段或いは被冷却物等の部品ないし設備が接合される。また、2段モジュールは、対向して配置される基板を4枚用いて構成されることもある。すなわち、その基本的構造を図8に模式的断面図として示したように、第一段目のモジュールb1 及び第二段目のモジュールb2 をそれぞれ、図6の熱電素子モジュールAと同様の1段モジュールのような構造とし、第一段目のモジュールb1 の基板1´の外面3´と、第二段目のモジュールb2 の基板1の外面3とを、図8において図示を省略したが、例えば接着剤層等の接合手段で接合して構成されることもある。さらにまた、多段モジュールにおけるモジュール段数は、一般に6段程度までである。
【0005】
上記従来の熱電素子モジュールにおいては、一般に、基板として、セラミック板が用いられている。しかし、この基板としてセラミック板を用いた従来の熱電素子モジュールにおいては、セラミック板は熱伝導性が劣るので、熱効率が悪いという問題がある。すなわち、ゼーベック効果を利用する発電用熱電素子モジュールとして用いる場合は、高温側端部を高温保持するための加熱も、低温側端部を低温保持するための冷却も熱伝導性が劣るセラミック基板を通して行うこととなり、必然的に熱効率は低下する。また、ペルチェ効果を利用する冷却又は加熱用熱電素子モジュールとして用いる場合も、吸熱側端部による被冷却物の冷却も、発熱側端部による被加熱物の加熱も熱伝導性が劣るセラミック基板を通して行うこととなり、必然的に熱効率は低下する。
【0006】
上記の基板としてセラミック板を用いた熱電素子モジュールの熱効率が悪いという問題を改善するものとして、基板として例えばアルミニウム等の金属板を用いた熱電素子モジュールなども知られている。しかし、この基板としてアルミニウム等の金属板を用いた熱電素子モジュールにおいては、金属板は、熱伝導性は良好であるが、熱膨張率が半導体やセラミック板等と比べて非常に大きいので、基板の金属板と半導体との間などに大きな熱応力が生じ、それらの接合部の剥離、半導体の破損等の恐れがあるという信頼性に関する別の問題がある。当該熱電素子モジュールがゼーベック効果を利用する発電用として、あるいペルチェ効果を利用する冷却又は加熱用として機能するいずれの場合でも、上記のように構成部位に高温部と低温部があって、基板を金属板とした場合、大きな熱応力が発生する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来の状況に鑑み、基板の熱伝導性が優れ、熱効率が良く、かつ基板の熱膨張率が半導体のそれと類似し、有害な大きな熱応力が発生することなく信頼性が高い、高性能の熱電素子モジュールを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記本発明の目的を達成すべく鋭意研究した結果、熱電素子モジュールを構成するに当たり、基板として炭素質材料からなる炭素質基板を用いること、及び、該炭素質基板と金属電極の接合を電気絶縁性を備えてなすことにより、上記本発明の目的を達成できることを見出して本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、上記本発明の目的を達成するために、複数枚の基板が対向して配置されており、該対向する複数枚の各基板の対向面にそれぞれ金属電極が接合されており、該金属電極を介して複数のn型及びp型の半導体が交互に接続されている熱電素子モジュールにおいて、上記複数枚の基板が炭素質材料からなる炭素質基板で構成され、上記金属電極の基板への接合が電気絶縁性を備えてなされていることを特徴とする熱電素子モジュールを提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の熱電素子モジュールに用いる炭素質基板としては、一般に、炭素繊維を補強材とし、炭素をマトリックスとする炭素繊維強化炭素複合材料、或いは等方性高密度炭素材料などの炭素質材料からなる板状物が用いられる。この炭素質基板の厚さは、必要に応じて適宜設定することができるが、一般に、強度やコストの点から0.3〜5mmが適当である。
【0011】
上記炭素質基板に用いる炭素繊維強化炭素複合材料としては、従来から知られた種々の炭素繊維強化炭素複合材料を適宜選択して用いることができる。炭素繊維強化炭素複合材料には、一般に、炭素繊維の配列の仕方に種々あり、炭素繊維を一方向にそろえて配列して束にした1次配向のもの、炭素繊維を平織、綾織、朱子織等の織布にした2次配向のもの、炭素繊維をいわゆる立体織した3次配向のものなどがあり、また炭素繊維をフェルトや短繊維にして用いたもの等がある。本発明においては、種々の炭素繊維の配列の仕方のものを適宜選択して用いることができる。また、炭素繊維強化炭素複合材料は、一般に、上記各種の配向の仕方の炭素繊維集合体に、フェノール樹脂などのような熱硬化性合成樹脂、或いは石油ピッチなどのようなピッチ等のマトリックス材を含浸させてプリプレグを調製し、かかるプリプレグを、必要に応じて複数枚積層して、加圧下に加熱してマトリックス材を硬化させ、さらに不活性雰囲気中で高温焼成してマトリックス材を炭素化して製造される。また、炭素繊維が短繊維の場合は、一般に、マトリックス材に炭素繊維の短繊維を混合し、該混合物を所定形状に成形し、該成形物を加圧下に加熱してマトリックス材を硬化させ、さらに不活性雰囲気中で高温焼成してマトリックス材を炭素化して、炭素繊維強化炭素複合材料が製造される。炭素質基板に用いる炭素繊維強化炭素複合材料は、炭素質基板としての所定の厚さの板状に製造されたものでも良いし、或いはブロック状に製造された炭素繊維強化炭素複合材料から、それを炭素質基板としての所定の厚さの板状に切断して切り出されたものでも良い。また、上記各種炭素繊維強化炭素複合材料を構成する炭素繊維、炭素マトリックスは黒鉛化されていても差し支えない。
【0012】
上記各種炭素繊維強化炭素複合材料の中でも、炭素繊維が一方向にそろえて配列された1次配向の炭素繊維強化炭素複合材料のブロックから、それを該炭素繊維の配列方向に対して直角方向に所定の厚さの板状に切断して切り出されるような、炭素マトリックス中において厚さ方向に炭素繊維が配列してなる板状物が、特に厚さ方向への熱伝導性に優れているので、炭素質基板として好ましく用いられる。上記炭素繊維強化炭素複合材料のブロックからの板状物の切り出しは、ワイヤーソー、回転ダイヤモンドソー等のそれ自体公知の切断手段により行うことができる。図1に、上記のような板状物を炭素質基板として用いた場合の本発明の熱電素子モジュールの一例における炭素質基板の金属電極が接合されている部分の断面を模式的に図示する。図1に示した例においては、炭素マトリックス11a中において厚さ方向に炭素繊維11bが配列してなる炭素質基板11の片面に、電気絶縁性を備えた接合手段12よって金属電極13が接合されている。金属電極13には、図示を省略したが、n型及びp型の半導体が接合される。この図1に示した例においては、炭素質基板11の片面のみに金属電極13が接合されているが、炭素質基板11には、それが多段モジュールにおける中間のモジュールの形成に用いられるような場合、その両面に金属電極13を接合することができる。また、図1の(a)は、金属電極13の接合、形成が、▲1▼後記の金属貼り積層板にフォトリソグラフィー技術を適用する方法で行われ、その際、金属電極パターン形成のためのエッチングが余分の金属箔と共に、余分の金属箔部分の接着剤層(接合手段12)まで除去して行われた場合、又は、▲2▼後記の所望の金属電極パターンのリードフレームを接合手段12によって炭素質基板11に接合する方法で行われ、その際、接合手段12が金属電極13を形成するリードフレームと炭素質基板11の間にのみ設けられた場合の例である。(b)は、金属電極13の接合、形成が、上記▲1▼の方法で行われ、その際、エッチングが余分の金属箔のみを除去して(接着剤層は除去されない)行われた場合、又は、上記▲2▼の方法で行われ、その際、接合手段12が炭素質基板11の表面を覆うように設けられた例である。(c)は、金属電極13の接合、形成が、上記▲2▼の方法で行われ、その際、金属電極13を形成するリードフレームを接合手段12中にめり込ませ、金属電極13を形成するリードフレームの表面と接合手段12の表面が、リードフレームの金属電極パターンの間隙において、平坦になるように設けられた例である。なお、図2の(b)及び(c)においては、炭素マトリックス11a及び炭素繊維11bを示すための炭素質基板11の部分拡大図は省略した。
【0013】
また、上記炭素質基板に用いる等方性高密度炭素材料としても、従来から知られた種々の等方性高密度炭素材料を適宜選択して用いることができる。等方性高密度炭素材料は、一般に、生コークスやメソカーボンマイクロビーズ等の焼結性を有する黒鉛前駆体の微粒子を加圧成形しつつ高温で焼成することにより、或いは黒鉛微粒子やカーボンウイスカー粉体等をピッチや合成樹脂等の炭素前駆体からなるバインダーと混合して加圧成形、焼成することにより製造される。炭素質基板に用いる等方性高密度炭素材料は、炭素質基板としての所定の厚さの板状に製造されたものでも良いし、或いはブロック状に製造された等方性高密度炭素材料から、それを炭素質基板としての所定の厚さの板状に切断して切り出されたものでも良い。また、上記各種等方性高密度炭素材料は黒鉛化されていても差し支えない。
【0014】
上記の炭素繊維強化炭素複合材料或いは等方性高密度炭素材料のいずれも、一般に、その製造過程に由来する微細孔を有していてポーラスである。そして、これらの材料の微細孔に無機コーティング剤或いは金属を含浸させ、非多孔質化することによって、当該材料の熱伝導性が一層向上される。したがって、本発明では、必要に応じて、上記各炭素質材料を、その微細孔に無機コーティング剤或いは金属を含浸させて炭素質基板として用いることができ、基板の熱伝導性の一層の向上という観点からは、そうすることが好ましい。
【0015】
上記の各炭素質材料に含浸させる無機コーティング剤としては、液状であって炭素質材料の微細孔に含浸させることができ、含浸後に硬化して炭素質材料を非多孔質化する無機質硬化物を形成する各種無機コーティング剤を適宜選択して用いることができる。その例として、常温或いは加熱下に架橋反応が進行してセラミック様の硬化物を形成する無機のケイ素含有ポリマー、アルミナセメントのようなセメント、水ガラス類等を含有する無機系バインダーが挙げられる。これらの無機コーティング剤は、その含浸性を高めるために、有機溶媒で希釈することができる。また、上記無機コーティング剤のなお一層具体的な例を挙げれば、ケイ素含有ポリマーを形成するHEATLESS GLASS GAシリーズ(商品名:ホーマーテクノロジー社製)、ポリシラザン類である東燃ポリシラザン (商品名:東燃社製)、無機バインダーであるレッドプルーフ MR−100シリーズ(商品名:熱研社製)等が挙げられる。
【0016】
炭素質材料の微細孔に無機コーティング剤を含浸させる方法としては、炭素質材料に無機コーティング剤を刷毛等により塗布する方法、炭素質材料を無機コーティング剤中に浸漬する方法、高圧にて炭素質材料に無機コーティング剤を圧入する方法、高真空にて炭素質材料に無機コーティング剤を吸入する方法等が挙げられる。炭素質材料に含浸された無機コーティング剤は硬化される。この際、無機コーティング剤の硬化条件は、用いた無機コーティング剤の種類に応じて適宜設定することができるが、例えば無機コーティング剤がHEATLESS GLASSである場合は、一般に約130℃で60分間加熱するのが適当である。
【0017】
上記の各炭素質材料に含浸させる金属としては、一般に、アルミニウム、銅、或いはこの両者が好ましい。炭素質材料の微細孔に金属を含浸させる方法としては、溶融したアルミニウムや銅などの金属を高温高圧下にて含浸させる等の方法を用いることができる。アルミニウムを含浸させた炭素質材料としては、CC−MA(商品名:炭素繊維を一次配列させた先端材料社製のC/Cコンポジットベース)やC−MA(商品名:先端材料社製の等方性高密度炭素材料ベース)等が挙げられ、また、銅を含浸させた炭素質材料としては、MB−18(商品名:炭素繊維を一次配列させたメビウス・A・T社製のC/Cコンポジットベース)等が挙げられる。
【0018】
本発明の熱電素子モジュールに用いるn型半導体及びp型半導体としては、従来から知られた各種のn型半導体及びp型半導体を適宜選択して用いることができ、これらの例として、Bi−Te系、Si−Ge系等のp型或いはn型の半導体が挙げられる。
【0019】
本発明の熱電素子モジュールにおいて、n型半導体とp型半導体を接続する金属電極の金属としては、銅やニッケル等が好ましく用いられる。
【0020】
また、本発明の熱電素子モジュールにおいて、炭素質材料からなる炭素質基板と金属電極との接合には、薄くても十分に絶縁性があり、炭素質基板と金属電極とを十分強固に接着することができる手段であれば、種々の手段を適宜選択して用いることができる。この接合には、(イ)炭素質基板に設けられたポリイミド塗膜と、該ポリイミド塗膜に設けられた接着剤層とから構成されてなる接合手段、又は(ロ)炭素質基板に設けられた金属メッキ層と、該金属メッキ層に設けられた接着剤層とから構成されてなる接合手段、又は(ハ)炭素質基板に設けられたプライマー層と、該プライマー層に設けられたエラストマー系の接着剤層とから構成されてなる接合手段が、炭素質基板と金属電極の接着性に一層優れている点において好ましい。すなわち、一般に、炭素質材料は、多くの接着剤と比較的馴染み難く、上記のような、ポリイミド塗膜や、或いは金属メッキ層やプライマー層といった下地を予め設けておく場合に、一層好適に強固に炭素質材料と金属電極とを接着することができる。また、この接合手段は、一般に、熱電素子モジュールにおける厚さ方向への熱伝導性を阻害しないように薄い方が好ましい。
【0021】
上記(イ)の接合手段においては、ポリイミド塗膜は、従来から知られた種々のポリイミド塗料を炭素質基板へ塗布する等して形成することができる。なお、ポリイミド塗料は、ポリアミド酸を溶剤に溶かしたタイプと、ポリイミド樹脂を溶剤に溶かしたタイプのどちらも適用可能であるが、後者の方が、加熱による脱水イミド化の工程が不要であり、比較的低温で絶縁性に優れた塗膜が得られるため好ましい。このような例として、リカコート(商品名:新日本理化社製)が挙げられる。また、ポリイミド塗料には、絶縁性や塗膜の安定性を向上させるために各種添加剤を添加することができる。そして、上記ポリイミド塗膜には、さらに接着剤層を介して金属電極を積層し、その後加熱又は常温にて加圧接着されて、これらポリイミド塗膜及び接着剤層から構成されてなる接合手段によって金属電極が炭素質基板に接合される。上記接着の処理条件は、用いたポリイミド塗料の種類等に応じて適宜設定することができる。図2に、上記(イ)の接合手段を採用した場合の、本発明の熱電素子モジュールの一例における炭素質基板の金属電極が接合されている部分の断面を模式的に図示する。図2に示した例においては、炭素質基板21の片面に、ポリイミド塗膜22aと接着剤層22bとから構成されてなる電気絶縁性を備えた接合手段22が設けられ、該接合手段22によって金属電極23が接合されている。金属電極23には、図示を省略したが、n型及びp型の半導体が接合される。
なお、上記においては、ポリイミド塗膜及び接着剤層からなる複数の層を介して炭素質基板と金属電極とを接合する場合について述べたが、この他に、熱電素子モジュールの用途やポリイミド塗料の種類によって、1つのポリイミド層で、上記おける「ポリイミド塗膜」と「接着剤層」とを兼用することができる。
【0022】
また、上記(イ)の接合手段におけるポリイミド塗膜の好適な一形態として、ポリイミド電着塗膜が挙げられる。ポリイミド電着塗膜は、従来から知られた樹脂成分がポリイミドであって媒体がカチオン溶液である種々のポリイミド電着塗料から形成することができる。なお、ポリイミド電着塗料には、絶縁性や、塗膜の安定性を向上させるために各種添加剤を添加することができる。ポリイミド電着塗膜は、上記のようなポリイミド電着塗料を炭素質基板へ電着塗りすることにより得ることができる。電着塗りの方法は、従来から知られた方法を適宜選択、採用して行うことができる。そして、上記ポリイミド電着塗膜には、さらに接着剤層を介して金属電極を積層し、その後加熱又は常温にて加圧接着されて、これらポリイミド塗膜及び接着剤層から構成されてなる接合手段によって金属電極が炭素質基板に接合される。上記接着の処理条件は、用いたポリイミド電着塗料の種類等に応じて適宜設定することができる。図3に、上記(イ)の接合手段においてポリイミド塗膜としてポリイミド電着塗膜を採用した場合の、本発明の熱電素子モジュールの一例における炭素質基板の金属電極が接合されている部分の断面を模式的に図示する。図3に示した例においては、炭素質基板31の片面に、ポリイミド電着塗膜32aと接着剤層32bとから構成されてなる電気絶縁性を備えた接合手段32が設けられ、該接合手段32によって金属電極33が接合されている。金属電極33には、図示を省略したが、n型及びp型の半導体が接合される。
【0023】
上記(ロ)の接合手段においては、金属メッキ層は、従来から知られた無電解メッキ方法あるいは電解メッキ方法を適宜選択、採用して形成することができる。メッキする金属の例として、銅、ニッケル等が挙げられる。そして、上記金属メッキ層には、さらに接着剤層を介して金属電極を積層し、その後加熱又は常温にて加圧接着されて、これら金属メッキ層及び接着剤層から構成されてなる接合手段によって金属電極が炭素質基板に接合される。図4に、上記(ロ)の接合手段を採用した場合の、本発明の熱電素子モジュールの一例における炭素質基板の金属電極が接合されている部分の断面を模式的に図示する。図4に示した例においては、炭素質基板41の片面に、金属メッキ層42aと接着剤層42bとから構成されてなる電気絶縁性を備えた接合手段42が設けられ、該接合手段42によって金属電極43が接合されている。金属電極43には、図示を省略したが、n型及びp型の半導体が接合される。
【0024】
しかして、上記(イ)或いは(ロ)の接合手段において接着剤層に用いる接着剤としては、エポキシ樹脂系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。例えば、シリコーン系接着剤では、KE1800T(商品名:信越シリコーン社製)、TES−3260(商品名:東芝シリコーン社製)等が好適に用いられる。なお、炭素質材料に含浸させる材料として挙げた上記ヒートレスガラス等の無機コーティング剤も、上記の接着剤として用いることができる。
これらの接着剤を、上記のポリイミド塗膜、或いは金属メッキ層(以下、この段落において「下地」という)の上に塗布する等して接着剤層を形成するが、その方法は従来から知られた各種塗布方法を適宜選択、採用して行うことができる。接着剤の塗布に当たっては、(a)まず炭素質基板に設けた下地の上に接着剤を塗布し、その塗膜の上に金属電極を積層することもできるし、(b)まず金属電極の片面に接着剤を塗布し、この金属電極を、その接着剤の塗膜面が炭素質基板に設けた下地に接触するように積層することもできるし、(c)炭素質基板に設けた下地の上、及び金属電極の片面の両方に接着剤を塗布し、各接着剤の塗膜面が相互に接触するように積層することもできるし、或いは(d)炭素質基板に設けた下地の上に、半硬化状態のフィルム状に成形された接着剤及び金属電極を順次積層しても良い。なお、金属電極を積層するにあたっては、エアーの残留を無くし確実に密着させるため、ロールや平板プレス等で加圧すると良い。また、接着させるに当たっては、下地及び金属電極に対し、予め後述するような各種プライマーを刷毛塗りする等してプライマー処理を施しておくことができる。
上記接着剤の乾燥ないし加熱硬化の処理条件は、用いた接着剤の種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、接着剤として上記のTES−3260 (商品名:東芝シリコーン社製)を用いた場合には、150℃60分加熱加圧して形成すると良い。
【0025】
上記(ハ)の接合手段においては、炭素質基板のプライマー処理に用いるプライマーの例としては、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のプライマーA (商品名)、プライマーX(商品名)とプライマーY(商品名)の混合物等が挙げられる。また、プライマー層に設ける接着剤層を形成する接着剤の例としては、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSOTEFA−70(商品名:シリコーンエラストマー系接着剤)等のエラストマー系接着剤が好適に用いられる。なお、このエラストマー系の接着剤は、上記(イ)及び(ロ)の接合手段における接着剤層にも用いることができる。また、このエラストマー系の接着剤には、必要に応じて、SiN、SiC、Al2 3 等の微細粒子状の熱伝導性フィラーを適量添加することができる。なお、上記熱伝導性フィラーは、上述の(イ)及び(ロ)の接合手段における各種の接着剤層にも添加することができる。そして、上記プライマー層に設けられたエラストマー系の接着剤層は乾燥ないし加熱硬化され、これらプライマー層及び接着剤層から構成されてなる接合手段によって金属電極が炭素質基板に接合される。上記エラストマー系の接着剤層の乾燥ないし加熱硬化の処理条件は、用いたエラストマー系の接着剤の種類等に応じて適宜設定することができる。図5に、上記(ハ)の接合手段を採用した場合の、本発明の熱電素子モジュールの一例における炭素質基板の金属電極が接合されている部分の断面を模式的に図示する。図5に示した例においては、炭素質基板51の片面に、プライマー層52aとエラストマー系の接着剤層52bとから構成されてなる電気絶縁性を備えた接合手段52が設けられ、該接合手段52によって金属電極53が接合されている。金属電極53には、図示を省略したが、n型及びp型の半導体が接合される。
【0026】
また、上記(ロ)及び(ハ)の接合手段においては、必要に応じて、用いる各接着剤に微細粒子状のスペーサー機能を有するフィラーを適量添加することができる。このスペーサー機能を有するフィラーの例として、シリカ、球状アルミナ、中空バルーン等が挙げられる。
【0027】
また、本発明の熱電素子モジュールにおいて、金属電極とn型半導体及びp型半導体との接合には、半田付け或いはロウ付け等の、従来の熱電素子モジュールにおける金属電極とn型半導体及びp型半導体との接合手段として知られた各種接合手段を適宜選択して用いることができる。
【0028】
本発明の熱電素子モジュールの製造は、例えばそれが1段モジュールである場合、一般に次のように行われる。すなわち、まず、上記のような炭素質材料からなる炭素質基板上に、必要に応じてその微細孔に上記のような無機コーティング剤又は金属を含浸させた後、金属電極が接合、形成される。
【0029】
上記炭素質基板上への金属電極の接合、形成は、一つの方法として、まず、炭素質基板に、金属電極と同等の金属箔を、電気絶縁性を備え、金属箔を炭素質基板に接合できる接合手段によって、好ましくは上記(イ)、(ロ)或いは(ハ)の接合手段によって接合して、金属貼り積層板を作製する。この金属貼り積層板は、必要に応じて、炭素質基板の片面のみに金属箔の積層された金属貼り積層板とすることも、また両面に金属箔の積層された金属貼り積層板とすることもできる。次いで、この得られた金属貼り積層板の金属箔面に、両面に金属箔の積層された金属貼り積層板の場合は一方の面の金属箔面に、プリント配線板製造技術として確立されているフォトリソグラフィー技術を適用して、すなわちフォトレジストを利用して電極形成に必要な金属箔部分の所望のパターンを描き、該パターンに準拠してエッチング等を行って電極形成に不要な金属箔部分の除去を行うこと等により、この炭素質基板上への金属電極の接合、形成を行うことができる。
【0030】
また、上記炭素質基板上への金属電極の接合、形成は、他の一つの方法として、炭素質基板に、金属板を金属電極の所望のパターンに打ち抜いて作製された所謂リードフレームを、電気絶縁性を備え、リードフレームを炭素質基板に接合できる接合手段によって、好ましくは上記(イ)、(ロ)或いは(ハ)の接合手段によって接合することにより、エッチング等を行う要なく直接的に行うこともできる。一般に、上記フォトリソグラフィー技術を適用する方法は、金属電極の接合、形成工程が比較的繁雑であるが、微細加工に適しており、一方、上記リードフレームを利用する方法は、微細加工には適さないが、金属電極の接合、形成工程が比較的簡便であり、相応の厚さのあるリードフレームを用いて接合、形成される金属電極を相応の厚さのあるものとすることによって、大電流に対応でき、抵抗損失の低減された金属電極を接合、形成することに適している。
【0031】
次いで、上記の如くして得られた金属電極の接合、形成された炭素質基板2枚を対向させ、それらに接合、形成されている金属電極を介して、n型半導体及びp型半導体を交互に接続して、本発明の熱電素子モジュールが製造される。この際、金属電極とn型半導体及びp型半導体との接合は、半田付け等の従来から知られた接合手段で接合することができる。また、本発明の一段の熱電素子モジュールは、基板として炭素質基板が用いられること、及び炭素質基板への金属電極の接合に電気絶縁性を有する接合手段が用いられ、好ましくは上記(イ)、(ロ)或いは(ハ)の接合手段が用いられることの二点を除けば、その基本的構造は、図6に断面を模式的に示した従来の1段の熱電素子モジュールの基本的構造と同様である。また、本発明の多段の熱電素子モジュールも、その基本的構造は、上記二点を除けば、従来の多段の熱電素子モジュールの基本的構造と同様である。
なお、上述のような、複数枚の基板の全て(例えば1段の熱電素子モジュールにおける2枚の基板)に炭素質材料からなる炭素質基板を用いる場合の他、複数枚の基板の内の一部に炭素質基板を用いる場合も本発明に包含される。したがって、例えば、受熱側の基板のみに炭素質基板を用い、放熱側の基板は従来のセラミック基板とすることもできる。
【0032】
また、本発明の熱電素子モジュールにおいては、例えばそれが1段モジュールである場合、炭素質基板の外面に、従来の一段の熱電素子モジュールと同様に、加熱手段、冷却手段或いは被冷却物等の部品ないし設備を接合することができる。この炭素質基板の外面へのこれらの部品ないし設備の接合に当たっては、その接合手段は特に電気絶縁性である必要はなく、またこれらの部品ないし設備を強固に炭素質基板に接合できる手段であれば適宜選択して用いることができるが、当該接合に際しても、上記(イ)、(ロ)或いは(ハ)の接合手段が好ましく用いられる。また、本発明の熱電素子モジュールにおいては、例えばそれが1段モジュールである場合、炭素質基板の外面に例えば受熱あるいは放熱用フィンを一体成形することもできる。具体例として、炭素質基板にディスクカッターや鋸刃等でスリットを形成することにより、炭素質基板自体をフィン形状に加工する場合が挙げられる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0034】
実施例1 炭素マトリックス中において厚さ方向に炭素繊維が配列してなる、厚さ1mmの板状の炭素繊維強化炭素複合材料(以下「C/Cコンポジット」という)であるCC(商品名:先端材料社製)を炭素質基板として用いた。この板状のC/Cコンポジットの片面に、ポリイミド電着塗料を、30Vで2.5分、常温にて電着塗りし、80℃で10分乾燥させ、さらに250℃で30分焼付することによりポリイミド電着塗膜を形成した。そして、上記のポリイミド電着塗膜上に、シリコーン系接着剤・KE1800T(商品名:信越シリコーン社製)を塗布した厚さ70μmの銅箔を、接着剤塗布面が上記ポリイミド電着塗膜上に接触するように積層させた。なお、積層に当たっては、ポリイミド電着塗膜、及び接着剤を塗布する前の銅箔に対して、予めプライマーA(商品名:東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)を刷毛塗りすることによりプライマー処理を施しておいた。続いて、120℃で3分間ヒートプレスにて294N/cm2 の押圧状態としてエアーや余剰の接着剤を排除し、その後押圧状態から開放して120℃で60分間加熱処理することにより接着剤を硬化させ、銅貼り積層板(40×40mm)を作製した。なお、このときの銅貼り積層板におけるポリイミド電着塗膜の厚さは20μmであり、接着剤層の厚さは100μmであった。
【0035】
上記の如くして得られた銅貼り積層板の一方の面に、ドライフィルム系のネガ型ホトレジストを被覆し、所定の銅電極パターンを露光し、エッチングして、上記板状のC/Cコンポジットの一方の面に所定の電極パターンで127個の銅電極が接合、形成された基板を作製した。この得られた基板を2枚用い、それらの一方の面に形成されている銅電極を介して、寸法1.5mm×1.5mm×1.5mmのSi系のn型半導体素子とGe系のp型半導体素子を交互に127個半田付けして直列接続となるよう熱電素子モジュールを作製した。そして、この得られた熱電素子モジュールの片面に前記シリコーン系接着剤を用いてアルミニウム製の放熱フィンを接合した。
【0036】
実施例2 上記厚さ1mmの板状C/Cコンポジットの片面に、実施例1のポリイミド電着塗膜に代えて、ポリイミド塗料であるリカコートPN−20(商品名:新日本理化社製)を刷毛塗りし、200℃で30分焼付してポリイミド塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様に操作して、片面にアルミニウム製の放熱フィンを接合した熱電素子モジュールを作製した。なお、このときの銅貼り積層板におけるポリイミドの塗膜厚さは30〜60μmと部位によりバラツキがあった。
【0037】
実施例3 上記厚さ1mmの板状C/Cコンポジットの片面に、実施例1のポリイミド電着塗膜に代えて、無電解メッキにてニッケルメッキを施し、そのニッケルメッキ層に対して銅箔を接着しようとしたこと以外は、実施例1と同様に操作して、片面にアルミニウム製の放熱フィンを接合した熱電素子モジュールを作製した。なお、このときの銅貼り積層板におけるニッケルメッキ層の厚さは50μmであり、接着剤層の厚さは絶縁性を十分確保する上で150μmとした。
【0038】
実施例4 上記厚さ1mmの板状C/Cコンポジットの片面に、実施例1のポリイミド電着塗膜に代えて、プライマーX(商品名:東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)を刷毛塗りし、このプライマー層にフィルム状のシリコーンエラストマー系接着剤・SOTEFA−70(商品名:東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)を用いて銅箔を接着したこと以外は、実施例1と同様に操作して、片面にアルミニウム製の放熱フィンを接合した熱電素子モジュールを作製した。なお、このときの銅貼り積層板におけるプライマー層の厚さは1μmであり、シリコーンエラストマー系の接着剤層の厚さは100μmであった。
【0039】
実施例5 30〜50μmにふるい分けした球状アルミナをポリイミド塗料の塗布面へ均一に散布したことと、銅泊を貼り付ける際の温度を230℃としたこと以外は、実施例2と同様に操作して、片面にアルミニウム製の放熱フィンを接合した熱電素子モジュールを作製した。なお、このときの銅貼り積層板におけるポリイミド塗膜層の厚さは50μmとほぼ均一になった。
【0040】
実施例6 上記厚さ1mmの板状C/Cコンポジットを、ヒートレスガラスGA−4(N)(商品名:ホーマーテクノロジー社製の常温硬化型シリカ溶液)中に9.31kPa減圧下にてディッピングし、該板状C/Cコンポジットの微細孔にヒートレスガラスを含浸させ、その後常温で50分放置し、続いて120℃で60分加熱することによりヒートレスガラスを硬化させ、ヒートレスガラスの含浸された板状C/Cコンポジットを得た。このヒートレスガラスの含浸された板状C/Cコンポジットを炭素質基板として用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して、片面にアルミニウム製の放熱フィンを接合した熱電素子モジュールを作製した。
【0041】
実施例7 実施例1で用いた板状C/Cコンポジットに代えて、銅を高温高圧下で含浸させた厚さ1mmのMB−18(商品名:炭素繊維を一次配列させたメビウス・A・T社製のC/Cコンポジットベース)を炭素質基板として用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して、片面にアルミニウム製の放熱フィンを接合した熱電素子モジュールを作製した。
【0042】
実施例8 銅箔の代わりに、厚さ300μmの銅板を打ち抜いて127個の銅電極を点在形成したリードフレームを、予めプライマーA(商品名:東レ・ダウ・コーニングシリコーン社製)を刷毛塗りして接着したこと以外は、実施例7と同様に操作して、片面にアルミニウム製の放熱フィンを接合した熱電素子モジュールを作製した。
【0043】
比較例 実施例1と同一寸法の外径(40×40mm)、及び同一材料、同一寸法、同一個数の半導体材料で製作された市販の熱電素子モジュールを用い、実施例1と同様に操作して、片面にアルミニウム製の熱交換フィンを接合して比較例とした。なお、この熱電素子モジュールは、セラミック基板であり、最大電流値8.5A、最大電圧値17.5Vの特性を有するとカタログ表示されているものである。
【0044】
そこで、これら実施例の熱電素子モジュールが比較例の熱電素子モジュールに比べて、効熱率が向上したかどうかの確認実験を行った。この実験は、室温25℃下において、熱電素子モジュールの放熱フィンを接合しない方の基板面を、ガスライターの炎先端から3cm上方に位置させて60秒間の加熱するもので、ゼーベック効果による起電力の電圧カーブを観察するものである。なお、この際に熱電素子モジュールにおける他方の基板面への強制冷却は行わず、ほぼ無風下での放熱フィンによる自然冷却とした。このため、この実験条件下では、何れの実施例でも、放熱能力が加熱に追いついてゆけず、電圧カーブは、開始後、10数秒から数10秒間後にピークを迎え、その後、次第に低下する山形カーブを示した。
【0045】
この実験では、電圧ピークを示すまで急上昇カーブを、熱電素子モジュールとしての熱効率の良さとし、これを良いものから順に並べてみると、実施例7=実施例8>実施例6>実施例1>実施例2=実施例5>実施例3>実施例4>>比較例の順となった。
したがって、炭素質基板で作製された実施例の各熱電素子モジュールでは、セラミック基板で作製された比較例のものと比べて、電圧上昇が素早く、効率良く温度差を生じ得ることが分かる。
なお、実施例の中でも、実施例6、実施例7、実施例8が多少とも優れた理由としては、炭素質基板の微細孔に金属や無機コーティング剤が含浸されているために熱伝導率がより向上したからであり、実施例4が劣った理由としては、シリコーンエラストマー系接着剤の熱伝導率およびその厚みが影響したものと考えられる。
【0046】
その後、これら実施例の各熱電素子モジュールを用い、受熱側と放熱側との温度差が所定となるよう加熱と冷却の調節を行った上で長時間の発電を行わせてみたが、炭素質基板、銅電極、半導体素子との熱膨張率の差などによる不具合は一切観察されなかった。
また、具体的な温度の上昇あるいは降下カーブなどは測定しなかったが、これら実施例の各熱電素子モジュールにおけるn型半導体素子とp型半導体素子へと通電することにより、ペルチェ効果を奏することも確認された。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、基板の熱伝導性が優れ、熱効率が良く、かつ基板の熱膨張率が半導体のそれと類似し、有害な大きな熱応力が発生することなく信頼性が高い、高性能の熱電素子モジュールが提供される。本発明の熱電素子モジュールは、熱効率が良く、かつ信頼性が高くて、ゼーベック効果を利用する発電用としても、或いはペルチェ効果を利用する冷却又は加熱用としても機能することができ、種々の分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の熱電素子モジュールの一例における炭素質基板の金属が接合されている部分の実施態様の模式的断面図である。
【図2】 本発明の熱電素子モジュールの一例における炭素質基板の金属が接合されている部分の他の実施態様の模式的断面図である。
【図3】 本発明の熱電素子モジュールの一例における炭素質基板の金属が接合されている部分のさらに他の実施態様の模式的断面図である。
【図4】 本発明の熱電素子モジュールの一例における炭素質基板の金属が接合されている部分のなおさらに他の実施態様の模式的断面図である。
【図5】 本発明の熱電素子モジュールの一例における炭素質基板の金属が接合されている部分のなお一層さらに他の実施態様の模式的断面図である。
【図6】 1段の熱電素子モジュールの基本的構造を示す模式的断面図である。
【図7】 2段の熱電素子モジュールの一つの基本的構造を示す模式的断面図である。
【図8】 2段の熱電素子モジュールの他の一つの基本的構造を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1 :基板
1´ :基板
1´´ :基板
2 :基板の対向面
2´ :基板の対向面
2´´ :基板の対向面
2´´´:基板の対向面
3 :基板の外面
3´ :基板の外面
3´´ :基板の外面
4 :金属電極
4´ :金属電極
4´´ :金属電極
4´´´:金属電極
5 :n型半導体
5´ :n型半導体
6 :p型半導体
6´ :p型半導体
11 :炭素質基板
11a :炭素マトリックス
11b :炭素繊維
12 :接合手段
13 :金属電極
21 :炭素質基板
22 :接合手段
22a :ポリイミド塗膜
22b :接着剤層
23 :金属電極
31 :炭素質基板
32 :接合手段
32a :ポリイミド電着塗膜
32b :接着剤層
33 :金属電極
41 :炭素質基板
42 :接合手段
42a :金属メッキ層
42b :接着剤層
43 :金属電極
51 :炭素質基板
52 :接合手段
52a :プライマー層
52b :エラストマー系の接着剤層
53 :金属電極
A :熱電素子モジュール
B :熱電素子モジュール
1 :第一段目のモジュール
2 :第二段目のモジュール

Claims (7)

  1. 複数枚の基板が対向して配置されており、該対向する複数枚の各基板の対向面にそれぞれ金属電極が接合されており、該金属電極を介して複数のn型及びp型の半導体が交互に接続されている熱電素子モジュールにおいて、上記複数枚の基板が炭素質材料からなる炭素質基板で構成され、上記金属電極の基板への接合が電気絶縁性を備えてなされていることを特徴とする熱電素子モジュール。
  2. 前記金属電極の基板への接合が、炭素質基板に設けられたポリイミド塗膜と、該ポリイミド塗膜に設けられた接着剤層とから構成されてなる請求項1に記載の熱電素子モジュール。
  3. 前記ポリイミド塗膜が、ポリイミド電着塗膜である請求項2に記載の熱電素子モジュール。
  4. 前記金属電極の基板への接合が、炭素質基板に設けられた金属メッキ層と、該金属メッキ層に設けられた接着剤層とから構成されてなる請求項1に記載の熱電素子モジュール。
  5. 前記金属電極の基板への接合が、炭素質基板に設けられたプライマー層と、該プライマー層に設けられたエラストマー系の接着剤層とから構成されてなる請求項1に記載の熱電素子モジュール。
  6. 前記接着剤層に、スペーサー機能を有するフィラーが含有されてなる請求項4又は5に記載の熱電素子モジュール。
  7. 前記炭素質基板の炭素質材料の微細孔に、無機コーティング剤又は金属が含浸されてなる請求項1〜6の何れか一つに記載の熱電素子モジュール。
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