JP4111110B2 - 光導波路の製造方法 - Google Patents

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本発明は、光導波路の製造方法に関する。
平面光回路は、基本的に、光波を伝搬するコアと、コアよりも屈折率が低く、コア内に光波を閉じこめるクラッドからなる。石英導波路の場合、SiOからなる光導波路を石英基板上に形成する。SiOにゲルマニウム等を添加することで、屈折率を調整できる。
具体的な製造方法として、基板上にコアとなる高屈折材料を積層して、コアの形状に加工し、コアの周囲にクラッドとなる低屈折率材料を堆積する方法(以下、リッジ法という。)と、基板にコアの形状に相当する溝を形成し、その溝に高屈折率材料を埋めてコアとし、高屈折率材料の不要な部分を除去し、コア上に上部クラッドとなる低屈折率材料を積層する方法(以下、埋め込み法という。)がある。SiO等を基板上に堆積する方法として、火炎堆積法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法及びスパッタ法がある。
従来のリッジ法では、先ず基板上に高屈折材料を一様に積層し、その後に、コアの形状になるように不要部分をエッチングすることになる。エッチング性能が、コアのサイズを決定し、かつまた、2つの光導波路を近接配置する場合の導波路間隔を決定する。例えば、2つのコアを近接して配置する場合で、コア間のギャップがコア高さの2倍以上のときには、コア間のギャップにボイド(空隙)が発生し、コア間を完全に埋め込むことができない。
埋め込み法では、基板に形成可能な溝のサイズと、その溝にコア材料を埋め込む堆積法が、製造可能なコアサイズを決定する。また、基板上に隣接して形成する2つの溝の距離が、2つの光導波路を近接配置する場合の導波路間隔を決定する。コアを埋め込む2つの溝を区切る壁の厚みが、2つの光導波路間の距離を決定する。しかし、この壁の厚みを薄くするのは極めて困難である。マスクの精度にも限界がある。
このように、従来の光導波路製造方法では、微小なサイズの光導波路を形成することが難しい。また、方向性光結合器のように2つの光導波路を近接配置する光デバイスで、2つの光導波路間の距離を小さくすることが難しかった。
本発明は、このような問題を解決し、微小なサイズの光導波路を形成できる光導波路の製造方法を提示することを目的とする。
本発明はまた、2つの光導波路を近接配置できる光導波路の製造方法を提示することを目的とする。
本発明に係る光導波路の製造方法は、立ち上がった壁を有する凹みを基板に形成するステップと、堆積作用及びスパッタ効果によるエッチング作用の両方を有する堆積法により、所定屈折率の基材と、当該所定屈折率よりも高い屈折率を有する添加材であって、当該基材より当該スパッタ効果によるエッチング作用の影響を受ける添加材とを有する材料を当該凹みに堆積するステップと、当該基板上に堆積した不要堆積物を除去するステップとからなり、当該凹みの底面上に堆積した層よりも屈折率の高い、当該凹みの当該立ち上がった壁上に堆積した層を光導波路のコアとすることを特徴とする
当該凹みの当該壁上に堆積する層には、凹みの他の部分に堆積する層よりも大きなスパッタ効果によるエッチング作用が働く。基材と添加材に対するエッチング作用の大きさの相違の結果、当該凹みの当該壁上に堆積する層では、凹みの他の部分に堆積する層よりも、添加材の含有量が多くなる。この結果、当該凹みの当該壁上に堆積する層の屈折率が、当該凹みの他の部分に堆積する層の屈折率よりも高くなり、光導波路のコアとして利用可能になる。堆積に使用する材料の組成比を殊更に変更しなくても、屈折率の高い微小な断面の層を形成できるので、微細な光導波路を簡単に製造できる。
例えば、当該基板が石英基板であり、当該基材がSiOであり、当該添加材がGeを含有する。SiはGeよりもスパッタ効果によるエッチング作用で飛散しやすい。Geは屈折率を高くする。
堆積法として、誘導結合プラズマCVD法又はスパッタリング法が利用可能である。
本発明によれば、非常に簡単に微細な光導波路を製造できる。また、2つのコアが近接する光導波路構造を容易に製造できる。例えば、光結合構造を大幅に小型化でき、結合長を短くすることができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例による光導波路製造プロセスのフローチャートを示し、図2〜図7は、各段階での断面図を示す。
先ず、図2に示すように、屈折率1.445の石英基板10の上面にクロム等の金属マスク12を蒸着する(ステップS1)。金属マスク12が、光導波路のコアを埋め込む溝を規定する。
リアクティブイオンエッチング法(RIE法)により、マスク12の無い部分の基板10を6μmの深さにエッチングする(S2)。エッチング後の断面を図3に示す。これにより、基板10に、コアを埋め込む溝14が形成される。溝14は、垂直壁14aと、底面となる水平面14bを具備する。
溝14が埋まるまで、誘導結合プラズマ(ICP)CVD法により、基板10より高い屈折率の材料を堆積する(S3)。ここでは、珪酸エチル(TEOS)、テトラメトキシゲルマニウム(TMOG)及び酸素を、屈折率が1.456となる割合で混合して、ICP−CVD法の原料とした。これにより、Si0−Ge0膜又は層が溝14内に形成される。図4は、ICP−CVD法による成膜の途中の断面図を示し、図5は、ICP−CVD法による成膜後の断面図を示す。
図4に示すように、各面に対して、その面に垂直な方向に膜又は層が成長する。ICP−CVD法では、層の堆積とスパッタ効果によるエッチングとが同時に進行する。実験の結果、このように層の堆積とエッチングが同時に進行する場合、垂直壁14aに対して成長する層16と、水平面14b(底面)に対して成長する層18とでは、成長速度が大きく異なるだけでなく、屈折率が異なることが判明した。即ち、溝14の垂直壁14aに対して成長する層16の屈折率は、溝14の水平面14b上に成長する層18の屈折率よりも高くなった。また、層18は、層16よりも速く成長する。この結果、図5に示すように、垂直壁14a上に成長した、断面が三角形の層16と、層16よりも屈折率が低く、溝14内のその他の部分を埋める層18が、溝14内に形成される。ちなみに、マスク12上にも層20が成長するが、この層20は、後で除去される。
垂直壁14a上に成長する層16の屈折率が水平面14b上に成長する層18の屈折率よりも高くなる理由は、以下のように考えられる。
ICP−CVD法では、プラズマ放電によりイオン化した原料ガスからの生成物がカソードである基板10に衝突することによる層の形成と、その衝突によるスパッタ効果のエッチング作用とが、同時に進行する。Si原子と酸素(O)原子間の結合力に対し、Ge原子とO原子間の結合力が弱いので、Ge原子が優先的にスパッタされる。
水平面14b上に成長する層18では、層の堆積とスパッタ効果によるエッチングが同方向で進行する。これに対し、層16では、層16が垂直壁14aの表面に垂直な方向に堆積するのに対し、スパッタ効果は、垂直壁14aに沿った方向に作用する。即ち、層16では、層16の堆積方向とスパッタ方向が異なる。このように堆積方向とスパッタ方向が異なる場合、特に、スパッタ方向が堆積方向に垂直である場合、層16の上面16aが集中的にスパッタ効果を受けることとなる。その結果、層16の上面16aを除く領域はスパッタ効果が微少となることで、Ge原子濃度が低下しない。この結果、層16のGe原子濃度が、層18のGe原子濃度よりも高くなる。屈折率はGe濃度の増加に対し一次関数的に増加するので、層16の屈折率が層18の屈折率よりも高くなる。また、層堆積速度とエッチング速度のバランスにより、図4に示すように、層16の上面16aは傾斜する。
実際に試作した例では、最終的な層16の垂直壁14bからの最大厚みは、1.6μmである。層16の断面は、底辺が6μm、高さが1.6μmの三角形状であり、層16は、溝14の深さに比べてかなり薄い。これもまた、層16に対して、スパッタ作用が相対的に大きく作用していることを示している。試作例では、層18の屈折率が1.456で、層16の屈折率が1.469であった。
溝14を埋めた後、図6に示すように、金属マスク12をウエットエッチングで溶解し、層20をリフトオフ法にて除去する(S4)。図6は、除去結果の断面図を示す。
さらに、TEOSを原料ガスとしたプラズマCVD法により、屈折率1.445、厚さ30μmの被覆層22を全面に堆積する(S5)。被覆層22は上部クラッドとなる。その結果の断面図を図7に示す。プラズマCVD法の代わりに、ICP−CVD、スパッタ法又は火炎堆積法を用いてもよい。
このようにして、層16をコア、層16の周囲の領域、即ち、層18,基板10及び上部被覆層22をクラッドとする光導波路が形成される。コアとなる層16が、溝14の垂直壁14aに張り付いた薄い層状になっている。これは、薄いコア、ひいては、微小な断面積のコアを容易に製造できることを意味している。
堆積とスパッタが同時に進行する成膜法として、ICP−CVD法以外に、スパッタリング法がある。スパッタリング法で屈折率を制御するには、ターゲット材にSi0とGe0の混合物を使用する。所望の屈折率が得られるように、Si0とGe0の混合比を調整する。
本実施例では、溝の垂直壁に対して極めて薄いコア層を形成できる。溝14の垂直壁14aとは反対側の垂直壁にも、層16と同様の形状及び屈折率の層が成長することは明らかである。従って、これを利用することで、近接して位置する2つのコアを製造することも容易である。単に、溝14の横幅を狭くすればよい。図1〜図7を参照して説明した製造手順をそのまま適用する。
図8は、本実施例により製造した、2つのコアを近接して位置する光導波路構造の断面図を示す。図2乃至図7に図示した構成要素と同じ要素には、同じ符号を付してある。ここでは、溝14の横幅を4μmとした。溝14の深さは、図2乃至図7と同じく6μmである。溝14の両方の垂直壁に層16,24が形成される。層24の断面形状は、層16の断面形状と実質的に同じである。試作例では、層16,24の最大厚みは共に1.6μmであった。溝14の横幅が4μmであるから、2つのコア(層16,24)が、0.8μmのギャップを挟んで位置することになる。このように近接して2つのコアを配置することは、従来、不可能であった。なぜならば、従来の方法では、0.8μmに相当する金属マスクを用意し、0.8μm相当の壁で挟まれた2つの溝を形成する必要があったが、これは不可能であったからである。
溝14の壁14aは垂直である必要はない。即ち、壁14aは、底面14bに対して90゜以外の角度であってもよい。図9は、溝14の壁14aが底面14bに対して80度の角度をなす場合の断面図を示す。このような、底面14bに対して90度未満の壁14aは、フッ酸を用いたウエットエッチングで形成可能である。壁14aを底面14bに対して垂直にした場合と比較して、図9に示す例では、壁14aに対して成長する堆積層16が、領域16bの分だけ増加している。
スパッタ効果は基板に対し垂直方向にのみ生じる。壁14aが屋根となり、スパッタ効果を受けない領域16bが生じる。この領域16bに堆積層16が入り込むことで、堆積層16が領域16bの分だけ大きくなる。これは、コアとなる領域が拡大できることを意味する。
本実施例により、断面が左右対称の導波路も作成可能である。屈折率が1.445の基板の上に、厚さ6μm、屈折率1.469のGe添加SiO膜を成膜し、金属マスクを用いて、4μm間隔で幅が3μmの領域を残すように、垂直にドライエッチングする。エッチング後の断面図を図10に示す。基板110上に、幅3μm,高さ6μmの直立した層領域112,114が残る。層領域112,114は、それぞれ、垂直な側壁112a,112b,114a,114bを具備する。
図10に示す材料に図1乃至図7で説明したのと同じ手順で同じ材料を堆積すると、図11に示す断面構造の光導波路構造が形成される。即ち、直立領域112,114の壁112a,112b,114a,114bに垂直な方向に、最大で約1.6μmの高さの層116a,116b,118a,118bが堆積し、その周囲は、層116a,116b,118a,118bの屈折率より低い屈折率のクラッドになる層122で埋められる。層118a,118b,120a,120bは、図1乃至図7に示す実施例の層16に相当し、層122は、図1乃至図7に示す実施例の層18に相当する。
層領域112とその両側の層116a,116bの屈折率は共に、1.469になり、その周囲の層120の屈折率がこれより低いので、層領域112とその両側の層118a,118bとからなる部分が第1の光導波路のコアとなりうる。層領域114とその両側の層118a,118bの屈折率は共に、1.469になり、その周囲の層120の屈折率がこれより低いので、領域114とその両側の層118a,118bとからなる部分が第2の光導波路のコアとなりうる。
層領域112,114及び層116a,116b,118a,118b,120を埋めるように、層122を堆積する。層122は、図1乃至図7に示す実施例の層22に対応し、層22と同じ材料を使って層22と同様に堆積される。
図11に示す光導波路構造では、2つのコア間の最短距離が0.8μmになる。即ち、2つの光導波路が非常に近接して配置された光導波路構造を実現できる。
特定の説明用の実施例を参照して本発明を説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の技術的範囲を逸脱しないで、上述の実施例に種々の変更・修整を施しうることは、本発明の属する分野の技術者にとって自明であり、このような変更・修整も本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の一実施例の製造手順のフローチャートである。 本実施例の第1手順での断面図である。 本実施例の第2手順での断面図である。 本実施例の第3手順での断面図である。 本実施例の第4手順での断面図である。 本実施例の第5手順での断面図である。 本実施例の第6手順での断面図である。 本実施例により製造した、2つのつのコアが近接配置する光導波路構造の断面図である。 溝14の壁14aを垂直にしなかった場合の断面構造例を示す図である。 本実施例により2つの光導波路を近接配置する光導波路構造を製造する途中の断面図である。 本実施例により製造した、2つの光導波路を近接配置する光導波路構造の断面図である。
符号の説明
10:基板
12:金属マスク
14:溝
14a:垂直壁
14b:水平面(底面)
16,16b,18,20:堆積層
22:被覆層
24:堆積層
110:基板
112,114:領域
112a,112b,114a,114b:垂直壁
116a,116b,118a,118b:垂直壁に成長した層
120,122:堆積層

Claims (6)

  1. 立ち上がった壁を有する凹みを基板に形成するステップと、
    堆積作用及びスパッタ効果によるエッチング作用の両方を有する堆積法により、所定屈折率の基材と、当該所定屈折率よりも高い屈折率を有する添加材であって、当該基材より当該スパッタ効果によるエッチング作用の影響を受ける添加材とを有する材料を当該凹みに堆積するステップと、
    当該基板上に堆積した不要堆積物を除去するステップ
    とからなり、当該凹みの底面上に堆積した層よりも屈折率の高い、当該凹みの当該立ち上がった壁上に堆積した層を光導波路のコアとすることを特徴とする光導波路の製造方法。
  2. 当該基板が石英基板であり、当該基材がSiO2であり、当該添加材がGeを含有する請求項1に記載の光導波路の製造方法。
  3. 更に、当該基板上に堆積した不要堆積物を除去した後に、上部クラッド層を堆積する請求項1に記載の光導波路の製造方法。
  4. 当該堆積法が誘導結合プラズマCVD法である請求項1に記載の光導波路の製造方法。
  5. 当該堆積法がスパッタリング法である請求項1に記載の光導波路の製造方法。
  6. 当該凹みが、当該壁に対面する、立ち上がった第2の壁を有する溝であり、
    当該凹みの底面上に堆積した層よりも屈折率の高い、当該第2の壁上に堆積した層を第2の光導波路のコアとすることを特徴とする請求項1に記載の光導波路の製造方法。
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