JP4106562B2 - 電気自動車の駆動制御装置 - Google Patents
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Description
本発明の目的は、ブレーキ力検出手段を具備しない電気自動車に対しても適用可能であり、坂道における車両のずり下がりを防止可能とする電気自動車の駆動制御装置を提供することにある。
請求項2記載の発明では、シフトポジションと加速度に応じてずり下がりが的確に判定される。すなわち、坂道は登坂路と降坂路とに大別され、一般に、登坂路での停車時のシフトポジションはDレンジであり、降坂路の停車時のシフトポジションはRレンジであるので、シフトポジションと加速度とに基づいて登坂路での車両のずり下がり(後退)および降坂路でのずり下がり(前進)の双方を的確に判定することができる。
図1に示すように、電気自動車(以下、車両という)には、左右駆動輪2に連結された走行用モータ1が搭載されている。この走行用モータ1は、駆動制御装置の主要部をなす電子制御ユニット4に電力変換装置4を介して接続されており、電子制御ユニット4の制御下でバッテリ5からの電力によって駆動され、駆動輪2を回転駆動して車両を走行させるようになっている。
電子制御ユニット4は、モータ回転数検出手段11により検出されたモータ回転数からモータ回転速度(より一般的には速度(車速))Vを算出する速度算出手段41と、速度算出手段41により算出されたモータ回転速度Vからモータ回転加速度(より一般的には、モータ回転数検出手段11により検出されたモータ回転数から加速度)Gを算出する加速度算出手段42と、シフトポジション検出手段12、速度算出手段41および加速度算出手段42によりそれぞれ検出または算出されたシフトポジション、速度Vおよび加速度Gに応じて車両のずり下がりを判定するずり下がり判定手段43とを備えている。
作動電源が投入されると、駆動制御装置の電子制御ユニット4は、図2ないし図5に示すモータ駆動制御ルーチンの実行を開始する。
先ず、図2に示す加速度算出ルーチンでは、アクセル開度検出手段13から電子制御ユニット4に読み込まれたアクセル開度データに対して所要の算出処理(フェールセーフ処理、誤検出防止処理など)が施され、これによりアクセル開度Kが求められる(ステップS1)。次に、シフトポジション検出手段12から読み込まれたシフトポジションデータに所要の算出処理が施されてシフトポジションが求められ(ステップS2)、また、モータ回転数検出手段11から読み込まれたモータ回転数データに基づき速度算出手段41により速度Vが算出される(ステップS3)。
ここで、クリープトルクTcrとは、アクセルペダルが踏まれていない場合にもモータ1により発生させるトルクを指す。図6中、クリープトルクTcrは、シフトポジションがDレンジの場合に正の値をとる一方、Rレンジの場合には負の値をとる(本実施形態では、各種パラメータは車両前進方向に正の値をとり、車両後退方向に負の値をとるものとする)。すなわち、シフトポジションを一般にDレンジとする登坂路では車両前進方向に作用する正のクリープトルクTcrを発生させて車両の後退を防止し、また、シフトポジションをRレンジとする降坂路では車両後退方向に作用する負のクリープトルクTcrを発生させて車両の前進を防止する。なお、本発明において、クリープトルクTcrを発生させることは必須ではない。
次いで、加速度算出手段42において加速度Gが求められる。このため、前回周期のステップS6で今回値として設定された速度V(i)が前回値V(i−1)として設定され(ステップS6)、今回周期のステップS2で算出された速度Vが今回値V(i)として設定される(ステップS7)。ここで、ステップS6で設定される速度値V(i)の初期値はゼロである。次に、今回値V(i)から前回値V(i−1)を減じることにより前回周期から今回周期までの速度の変化量ΔVが算出され(ステップS8)、この変化量ΔVを制御周期ΔTで除すことにより加速度Gが算出される(ステップS9)。
図8に示すように、本実施形態のずり下がり判定ルーチンでは、車両の移動方向を表す車速Vの符号および車両の加速方向を表す加速度Gの符号に基づいて車両のずり下がりを判定するようにしている。ここで、加速度Gおよび車速Vの符号に関し、車両前進方向を正とし、また、車両の後退方向を負とする。
図3のずり下がり判定ルーチンが終了すると、図4の抑止トルク算出ルーチンへ移行する。
T=F(i)×R/Gr+Tcr ・・・ (2)
ここで、F(i)は今回周期において車両に加えるべき駆動力を表し、Rはタイヤ動加重半径、Grはモータ1と駆動輪2との間に設けられる減速機における減速比、Tcrはクリープトルクである。
先ず、ずり下がり判定ルーチンのステップS17で「ずり下がり解消または解消中」と判定された場合、前回周期で算出された駆動力F(i)を前回周期の駆動力F(i−1)として設定し(ステップS31)、この駆動力F(i−1)に対して今回周期で加算すべき駆動力の加算分Fを下記の式(3)にしたがって算出する(ステップS32)。
ここで、Wは車両重量を表し、Gは図2のステップS9で算出された加速度を表す。また、(−G)は加算分Fが車両の加速度Gと反対方向に作用することを表している。
次のステップS33では、ステップS31で設定した前回周期の駆動力F(i−1)とステップS32で算出した加算分Fとの和を求め、この和(F(i−1)+F)と値0のうちの大きい方を今回周期の駆動力F(i)として求める。和と値0の大きい方を選択することによる作用については後述する。
図4の抑止トルク算出ルーチンが終了すると、図5の駆動トルク指令算出ルーチンへ移行する。
上述のように、図2の加速度算出ルーチンで加速度Gを算出し、図3のずり下がり判定ルーチンでは、シフトポジション、車速Vの符号および加速度Gの符号に基づいて車両のずり下がりを判定し、図4の抑止トルク算出ルーチンでは、ずり下がり判定結果に応じた算出式にしたがって前回周期の駆動力F(i−1)および加算分Fに基づいて求めた今回周期の駆動力F(i)に基づき抑止トルクTを算出し、次いで、図5の駆動トルク指令算出ルーチンでは、シフトポジション、抑止トルクTおよびアクセルトルクTaに基づき駆動トルク指令Tcを求めるようにしている。以下、上記の制御の流れをより具体的に説明する。
登坂路での停車中、一般にシフトポジションはDレンジにあり、この停車状態で例えば発進のためにブレーキペダルの踏力を弱めると、登坂路の勾配および車重に応じた加速度Gで後退し始める。
この場合、加速度Gおよび速度Vの符号が負になるので、ずり下がり判定ルーチン(図3)のステップS18で「ずり下がり増大中」と判定され、抑止トルク算出ルーチン(図4)のステップS35において上記の式(3)にしたがって駆動力の加算分Fが算出される。ここでは、式(3)の第2の被演算項(−G)の符号が正であるので、加算分Fの符号は正となり、従って、次のステップS36で算出される今回周期の駆動力F(i)が加算分Fだけ増大する。この結果、車両前進方向に作用する駆動力が強まり、車両前進方向に作用する抑止トルクTが増大して、登坂路における車両の後退(ずり下がり)が抑制される。
降坂路での停車中、一般にシフトポジションはRレンジにあり、この停車状態で例えば発進のためにブレーキペダルの踏力を弱めると、登坂路の勾配および車重に応じた加速度Gで前進し始める。
この場合、加速度Gおよび速度Vの符号が正になるので、ずり下がり判定ルーチン(図3)のステップS18で「ずり下がり増大中」と判定され、抑止トルク算出ルーチン(図4)のステップS35において上記の式(3)にしたがって駆動力の加算分Fが算出される。ここでは、式(3)の第2の被演算項(−G)の符号が負になって、加算分Fの符号が負になるので、ステップS36で算出される今回周期の駆動力F(i)が加算分Fだけ減少する。この結果、車両後退方向に作用する駆動力が強まり、車両後退方向に作用する抑止トルクTが増大して、降坂路における車両の前進(ずり下がり)が抑制される。
以上説明したように、本実施形態に係る電気自動車の駆動制御装置によれば、シフトポジション検出手段12によって検出されたシフトポジションと速度算出手段41によって算出された速度Vと加速度算出手段42によって算出された加速度Gとに応じて、登坂路での車両のずり下がり(後退)及び降坂路でのずり下がり(前進)を的確に判定することができる。また、モータ回転数検出手段11により検出されたモータ回転数から算出された抑止トルクTまたはアクセル開度検出手段13により検出されたアクセル開度Kに応じてアクセルトルク算出手段45により算出されたアクセルトルクTaのいずれか一方を駆動トルク指令Tcとして選択するので、抑止トルク算出に関連しては電気自動車に必須のモータ回転数検出手段11を具備すれば良く、ブレーキ力検出手段を具備しない電気自動車の坂道発進時のずり下がり防止のためのモータ駆動制御を適切に行え、坂道発進時のドライバの運転上の負担を軽減でき、また、アクセルトルクTaが抑止トルクTcを越えた時点からはアクセルトルクTaに基づいてモータを駆動制御するので、坂道発進を円滑に行え、運転フィーリングが向上する。
例えば、上記実施形態では、駆動力の加算分Fの算出に用いる式(3)において第1の被演算項Wに代えて定数を用いても良い。また、算出式(3)に基づく演算に代えて、予め作成されたマップを用いるようにしても良い。
4 電子制御ユニット
11 モータ回転数検出手段
12 シフトポジション検出手段
13 アクセル開度検出手段
41 速度算出手段
42 加速度算出手段
43 ずり下がり判定手段
45 アクセルトルク算出手段
46 抑止トルク算出手段
47 駆動トルク指令算出手段
Claims (2)
- 走行用モータの回転数を検出するモータ回転数検出手段と、
前記モータ回転数検出手段により検出された走行用モータの回転数から加速度を算出する加速度算出手段と、
前記加速度算出手段によって算出された加速度に応じて電気自動車のずり下がりを抑制するための抑止トルクを算出する抑止トルク算出手段と、
アクセル開度に応じたアクセルトルクを算出するアクセルトルク算出手段と、
前記抑止トルク算出手段により算出された抑止トルクと前記アクセルトルク算出手段により算出されたアクセルトルクとを比較して大きい方のトルクに基づいて走行用モータに対する駆動トルク指令を算出する駆動トルク算出手段と
を備えることを特徴とする電気自動車の駆動制御装置。 - シフトポジションを検出するシフトポジション検出手段と、
前記シフトポジション検出手段によって検出されたシフトポジションと前記加速度算出手段によって算出された加速度とに応じて電気自動車のずり下がりを判定するずり下がり判定手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の電気自動車の駆動制御装置。
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