JP4102926B2 - インクジェット記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非晶質水和珪酸または水和珪酸塩を含有する塗工液を原紙上に塗工することでインク受容層を形成したインクジェット記録媒体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は近年、急速に発展してきた記録方式であり、その特徴はフルカラー化、高速化が容易なことや印字騒音が少ない等の特徴を有し、また装置がコンパクトで低価格であることから家庭やオフィスでのカラー印刷機として普及して来ている。インクジェット記録方式は、ノズルから紙などの記録媒体に向けてインク液滴を噴射させ、画像を形成させる記録媒体とプリンタが直接接触しないノンインパクト式の印字方式である。インクジェット記録用のインクは、安定した液滴を形成させるためインク中に多量の溶媒を含んでいる。このため、良好な画質を得る記録媒体としては、ノズルより噴射されたインク液滴を速やかに吸収する必要がある。
【0003】
インクジェット記録媒体には、インクを速やかに吸収し、品質を向上させるために、インク受容層が設けられている。インク受容層は、インクを瞬時にまた大量に吸収するための顔料、この顔料を支持体上に結合させる結着剤、インクをインク受容層に固着させておくためのインク定着剤、並びに各種助剤から形成されている。このような顔料としてはインクの吸収性、発色性の観点から水和珪酸又は水和珪酸塩が最も一般に使用されている。一般的に、水和珪酸又は水和珪酸塩は、乾式製造法によって得られる乾式珪酸(無水珪酸又は無水珪酸塩)と湿式製造法によって得られる湿式珪酸(水和珪酸又は水和珪酸塩)に分類でき、さらに湿式珪酸に属する珪酸等は、製法により沈降法水和珪酸または水和珪酸塩とゲル法水和珪酸または水和珪酸塩に分類できる。これら珪酸等は製造条件により珪酸等の多孔構造、比表面積、表面状態等を様々にコントロールし、用途に応じて使用されている。
【0004】
一般に乾式法珪酸は、珪酸の一次粒子が単独で存在するため、チキソトロピー性が強く、塗工液に配合した場合、塗工液の粘性が高くなる傾向にあり、塗工適性に劣るうえ、湿式法で製造されたものと比べ、比較的高価である。
【0005】
また湿式法の中でも、ゲル法で製造された水和珪酸または水和珪酸塩は、沈降法により製造されたものに比べ、BET比表面積が高くなる傾向にある。BET比表面積の高い顔料は、スラリー状で行う湿式粉砕時に、粘度が非常に高くなる傾向があるため、ゲル法で製造された水和珪酸または水和珪酸塩は、湿式粉砕による粒径調整が難しく、乾式粉砕を行う必要がある。そのため、全てのゲルシリカは乾燥工程を経て、粉体状で製造されることになるが、これは水中に分散する際や、移送する際、飛散や汚れなどハンドリングの面や、分散に必要なコスト、労力などが大きな問題となっている。
【0006】
一方、インクジェット記録媒体のインク受容層用顔料に適した水和珪酸または水和珪酸塩の製造方法として、特許文献1には、水和珪酸を1μm以下に粉砕することが提案されている。水和珪酸または水和珪酸塩は、粉砕により粒径を小さくするに従って、吸油量が減少していくことが知られている。一方、吸油量が小さい水和珪酸または水和珪酸塩をインク受容層に用いる場合はインク吸収能力が低下し、インクのにじみが発生する。このため、平均粒子径が0.75μmより小さい水和珪酸では適切な吸油量を維持することはできず、インク受容層に用いるのに適さない。
【0007】
さらに、BET比表面積の高い(例えば200m2/g以上)水和珪酸または水和珪酸塩は、粉砕工程により粒径を小さくしていくと、粘度が極端に高くなる。特許文献1では、BET比表面積には触れていないが、気層法やゲル法で製造した珪酸等は、通常200m2/g以上の比表面積を持つ。このため、特許文献1実施例では10%以下の低濃度にて、増粘しないように粉砕処理することが記載されているが、この場合水和珪酸または水和珪酸塩を配合したインク受容層用塗工液の液濃度が極端に低下してしまう。このインク受容層用塗工液濃度の低下は、生産性悪化に直結するうえ、生産時の塗工液のハンドリング悪化にもつながる。
(なお、塗工液のハンドリングの悪化とは、具体的には、塗工液の全ボリュームが増え保存用タンク等を大きくしなければならない、塗工液供給用のポンプに負荷がかかる、塗料調成のための装置に負荷がかかる等のことをいう。)
【0008】
特許文献2には、インクジェット印刷に用いられる微粉砕シリケート(珪酸塩)およびシリカ(珪酸)の製造方法が記載されている。このなかで用いられている粉砕方法は水を含まない乾式であるが、一般的に乾式粉砕は湿式粉砕に比べ、エネルギー効率が悪く、小粒径としにくいうえ、粒度分布が広くなるという特徴がある。また、乾式粉砕を行うためには、当然のことではあるが、被粉砕物を乾燥する必要があり、この乾燥のためにも多大なエネルギーを必要とする。さらに、特許文献2によると、乾式粉砕によりストラクチャを30〜60%減少させ、DBP吸油度を減少する技術が開示されているが、具体的な粒子径にはまったく説明がなく、唯一実施例に記載してある粒度分布からは、ストラクチャ減少後の平均粒子径は、10μm以上であり、このような大きい粒子径の水和珪酸または水和珪酸塩を、インクジェット記録媒体に用いると、画像再現性が悪く、好適ではない。
【0009】
特許文献3には、個々の粒子径が5nm〜1μmのアルミノシリケートを用いたインクジェット記録シートの製造法が記載されている。ここで示されているアルミノシリケートの製造方法は、珪酸アルコキシドを用いた球状シリカ微粒子を指しており、当発明に用いている沈降法で製造された水和珪酸または水和珪酸塩とはまったく別物である。沈降法で製造された水和珪酸または水和珪酸塩は、1次粒子として、約10〜100nm程度の球状珪酸が凝集し、数μm程度の2次粒子を形成することが最大の特徴である。また、球状シリカ微粒子は製造に長時間を有し、コスト的にも高い。
【0010】
また、クロロメチルセルロースを用いた球状シリカ微粒子について、特許文献4に記載に記載されているが、これは、前駆体として球状シリカ微粒子を製造した後、マグネシウムなど周期律表第II属金属により表面修飾を行ったものであり、本発明で紹介している沈降法水和珪酸または水和珪酸塩とは、一線を画く。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−277712号公報
【特許文献2】
特開2000−502377号公報
【特許文献3】
特開平11−240242号公報
【特許文献4】
特開平9−309265号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように従来の技術では、操業性に優れ(水和珪酸または水和珪酸塩の分散液、およびインクジェット記録媒体のインク受容層塗工液のハンドリングが良い)、かつ品質に優れた(画像再現性が良い)水和珪酸または水和珪酸塩やインクジェット記録媒体を得ることは困難であった。
【0013】
従って、本発明の課題は、分散時および塗料として用いられる際のハンドリング性に優れ、同時にインクジェット記録媒体のインク受容層用顔料としても適した水和珪酸または水和珪酸塩を用いた、記録適性の良いインクジェット記録媒体の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、沈降法で製造された水和珪酸または水和珪酸塩を、記録用媒体をして支持体上に塗工するまでの、いずれの工程においても乾燥工程をもたず、さらに湿式粉砕により、特定粒径とすることで、インクジェット用記録媒体として、上記課題が解決されることを見出した。
【0017】
すなわち本発明は、沈降法で製造した非晶質の水和珪酸または水和珪酸塩を、乾燥工程を経ず
、湿式粉砕法により平均粒子径が0.75〜4.0μmとなるように処理し、次いで乾燥工程を経ずに、前記水和珪酸または水和珪酸塩を塗工液中に配合した後、支持体上に前記塗工液を塗工してインク受容層を形成するインクジェット記録媒体の製造方法である。特に、湿式粉砕法により処理された前記の水和珪酸または水和珪酸塩は、吸油量が200ml/100g以下であり、かつBET比表面積が200m 2 /g以下であることが好ましい。さらに、湿式粉砕法により処理された前記の水和珪酸または水和珪酸塩の平均粒子径が0.75〜2.3μmであることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明において、湿式粉砕法で処理される水和珪酸または水和珪酸塩は、一般に沈降法と呼ばれる製造方法で製造される必要がある。沈降法で製造された水和珪酸または水和珪酸塩は、上記2種の製造方法に比べ、比較的簡単な製造方法で製造されるうえ、適度なBET比表面積を持つ水和珪酸または水和珪酸塩となるため、粒径制御を目的とした湿式粉砕に適している。
【0019】
また、本発明の水和珪酸または水和珪酸塩は製造工程中に乾燥工程がないため、工場等でオンサイト製造を行う場合、スラリー上のまま移送することができ、、ハンドリングの面でも優れている。さらに先に示したような分散時の不具合も少ない。さらに、製造工程中に乾燥工程がないことは、コスト面でも有利であるといえる。
【0020】
本発明の水和珪酸または水和珪酸塩は非晶質な構造であり、1次粒子径の凝集による2次粒子径を形成する。このため、他顔料と比較して比表面積が高く、さらに1次粒子間に無数の細孔を持つため、吸油度も高くなる。この特性を生かし、インクジェット記録媒体のインク受容層用顔料としての利用は、上記特性の有効な利用方法である。発明者らの検討によると、インクジェット記録媒体に好適な水和珪酸または水和珪酸塩の物性は、平均粒子径として0.75〜4.0μm、好ましくは1.0〜2.3μmであり、吸油度として200ml/100g以下で好ましくは100〜180ml/100gであり、BET比表面積としては200m2/g以下で好ましくは30〜180m2/gである。
【0021】
前記物性を示す水和珪酸または水和珪酸塩をインクジェット記録媒体として用いた場合、最も印字濃度が向上し、インク受容層の表面強度も向上する。インクジェットを含む塗工紙の表面強度は、その顔料が持つ吸油性、BET比表面積に大きく影響される。特に吸油度と表面強度の関係は顕著であり、吸油度の高いサンプルほど、表面強度は低下していく。水和珪酸または水和珪酸塩は、その高次構造により内部にたくさんの細孔をもち、高い吸油性を示す。これはインクジェット記録での画像再現性が良い一つの要因である。一方で、この細孔は、機械的に粉砕することで比較的簡単に破壊され、吸油度は低下していくことが知られている。今回、このような水和珪酸または水和珪酸塩の性質について詳細に検討したところ、平均粒子径0.75〜4.0μm、吸油度として200ml/100g以下の水和珪酸または水和珪酸塩を用いた場合、いずれの項目にも、最も好適であることを見出した。
【0022】
水和珪酸または水和珪酸塩をインクジェト記録媒体に利用する場合、その吸油度は高いほど、インクジェット記録媒体のインク吸収性が良く、白抜け文字を印字した場合の鮮明性が高く、インクのにじみが少なく画像が鮮明であるという優れた効果を有する。この点で水和珪酸または水和珪酸塩のインクジェット記録媒体としての利用は、非常に有効である。しかし、このように優れた特性をもつ水和珪酸または水和珪酸塩ではあるが、塗工液に顔料として用いる場合、その吸油性の高さから塗料濃度低下や粘度上昇といった大きな問題を引き起こす。
【0023】
一方、塗工時の乾燥性の問題から、塗工液濃度は高い方が好ましく、塗工液のハンドリングや塗工面の仕上がりという観点からは、塗工液粘度は出きるだけ低い方が好ましい。先に述べたようインクジェット記録媒体として利用するためには、水和珪酸または水和珪酸塩には一定量の吸油度は必要である。また、水和珪酸または水和珪酸塩の粒子径が大きい場合、その個々の粒子内に、インクが拡散することで生じるにじみ、いわゆるフェザーリングが起こるため、このにじみが目立たない一定範囲の粒径にする必要もある。
【0024】
本発明においては、この相反する事項のいずれにも適応するよう、鋭意検討を行った結果、沈降法で製造した水和珪酸または水和珪酸塩を乾燥工程を経ずに湿式粉砕処理を行い平均粒径を0.75〜4.0μmとすることで、いずれの項目にもバランス良く適応する。
【0025】
高次構造をもつ水和珪酸または水和珪酸塩は、粉砕処理により粒径を小さくしていくに従い、その内部細孔の一部が壊され、吸油度は次第に低下する。しかし、過度の粉砕を行うと、インク吸収に必要な吸油度を下回ってしまい、その結果インクジェット適性は悪化する。今回の検討の中で、0.75μm以下まで水和珪酸または水和珪酸塩を粉砕した場合、インク吸収能が不足することが原因と思われるインクジェット適性の悪化が認められた。
【0026】
先に説明したよう湿式法で製造した水和珪酸または水和珪酸塩は、水中に分散したスラリーの状態で製造される。一般に、その製造過程において、このスラリー中の副生成物や不純物等は脱水工程を経て、除去されるが、いずれも水和(含水)した状態で製造される。乾式法の粉砕を行うためには、この水和(含水)珪酸等に加熱や減圧処理等などの手法を用いて、水分を除去しなければならない。市販されている多くの水和珪酸または水和珪酸塩は、スプレードライヤーなど凝集が起こりにくい乾燥方法により乾燥がおこなわれているが、いずれにせよ多大なエネルギーと作業を必要とすることは間違い無い。また、乾式粉砕法は、湿式粉砕法のように溶媒中に分散した状態で粉砕しないため、被粉砕物の凝集が起こりやすく、さらに微細粒子の粉砕には向いていない。以上のように、粉砕方法は、生産性およびハンドリングの面から、湿式粉砕が好ましい。
【0027】
このようにして乾燥工程を経ずに粒径を調節した水和珪酸または水和珪酸塩は、そのまま適当な濃度に調整して、バインダーその他の必要な薬品を配合して塗工液とすることができる。そのため、珪酸または珪酸塩の粉体を扱うときのような飛散や汚れなどの問題がなく、粉体の再分散という工程を省略でき、塗料調整が短時間で済む、水や攪拌に要するエネルギーを低減することができるなど、工業的メリットは非常に大きい。
【0028】
インク受容層の顔料は本発明の水和珪酸または水和珪酸塩を顔料の主成分とし、必要に応じて、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、サチンホワイト、二酸化チタン、モンモリロナイト、プラスチックピグメント等の顔料を単独でもしくは2種類以上併用して使用することもできる。また、前述した水和珪酸と水和珪酸塩を併用することもできる。
【0029】
本発明のインクジェット記録層に使用する接着剤としては、例えばカゼイン、大豆蛋白や合成蛋白、酸化澱粉、エステル化澱粉等の澱粉類、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロール、ヒドロキシセルロース、スチレン/ブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、ポリウレタン等の中から選択される、単独もしくは2種類以上の接着剤を使用することができる。その配合部数は、前記した顔料100重量部に対し、3〜50重量部であることが好ましく、5〜30重量部であることがさらに好ましい。更に、本発明のインクジェット記録層には、必要に応じ顔料分散剤、流動性改善剤、保水剤、染料定着剤、増粘剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤などの、各種の助剤を添加することもできる。
【0030】
本発明のインク受容層を設けるための支持体としては特に制限はないが、支持体が紙の場合は、例えば、パルプ繊維を離解してスラリーとし、必要に応じて填料やサイズ剤、他の添加剤を添加し、抄紙機で抄造し乾燥するか、または抄造後、澱粉や高分子物質の水溶液などをサイズプレスし、乾燥してマシンカレンダーをかけて得ることができる。
【0031】
本発明において、インク受容層は支持体の片面あるいは両面に1層以上の層として設けることができる。インク受容層の塗工量は0.5〜30g/m2であることが好ましく、更に好ましくは1〜20g/m2である。
本発明において、インク受容層を形成する塗工組成物を塗工または含浸する装置には、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ゲートロールコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ショートドゥエルコーター、グラビアコーター、フレキソグラビアコーター、スプレーコーター、サイズプレスなどの各種装置をオンマシンまたはオフマシンで使用することができる。
また、各層を塗工する前にまたは塗工後にマシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置で表面処理することも可能である。
【0032】
【発明の効果】
本発明に示された、沈降法で製造された非晶質水和珪酸または水和珪酸塩を、乾燥工程を経ず、湿式粉砕法により粒径を調節することで製造された水和珪酸または水和珪酸塩は、コストメリットが高く、塗料分散時のハンドリングに優れ、さらにインクジェット記録媒体用顔料として用いた場合、非常に好適な塗工適性を示す。すなわち、本発明に示されたインクジェット記録媒体は、発色性とインク吸収性が良く、白抜け文字の鮮明性が高く、優れた記録適性をもつものであった。さらにまた、水和珪酸または水和珪酸塩を、乾燥工程を経ずに湿式粉砕することにより製造した水和珪酸または水和珪酸塩を、インクジェット記録媒体のインク受容層に含有することで、インクジェット記録媒体の表面強度が向上する。
【0033】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。また、実施例において示す「部」及び「%」は、特に明示しない限り重量部及び重量%を示す。
【0034】
〈評価項目〉
(1)平均粒子径:分散剤ヘキサメタリン酸ソーダ0.2重量%を添加した純水中に試料スラリーを滴下混合して均一分散体とし、レーザー法粒度測定機(使用機器:マルバーン社製マスターサイザーS型)を使用して平均粒子径を測定した。
(2)BET比表面積:Micromeritics社製ジェミニ2360型を用い、窒素吸着量により求めた。なお、試料がスラリーである場合は、これをエタノール中に固形分10%になるよう分散し、105℃にて乾燥した後、BET比表面積を測定した。
【0035】
(3)吸油量:JIS K5101に準じた。なお、試料がスラリーである場合は、これをエタノール中に固形分10%になるよう分散し、105℃にて乾燥した後、吸油量を測定した。
【0036】
(4)水和珪酸または珪酸塩の分散性評価
実施例及び比較例で作成した水和珪酸または水和珪酸塩ケーキ及び市販粉体品を容器に取り、これを室温、薬添なしで、アジテータで緩やかに攪拌しながら水を加えて希釈した。この際、水和珪酸または水和珪酸塩の取り扱い作業性を、分散時のハンドリングとして評価した。一方、十分に攪拌された状態に達した後、B型粘度計を用い、20℃で、スラリーの粘度を測定した。本報告で調査した分散濃度とは、スラリー粘度測定値が1000cps以下となる水和珪酸または水和珪酸塩の固形分濃度として、評価をおこなった。
〇:分散時の取り扱いが容易である。
△:分散時の取り扱いにやや難がある。
×:分散時の取り扱いが難しい。
【0037】
(5)インクジェット記録媒体評価のための塗工紙作成方法
インクジェット記録画像の評価に関しては、サイテックス6240システムプリンターを用いてブラックのみを印字し、この画像について次の項目の評価を行った。各項目において、△以上の評価であれば実用することが出来る。
<発色性>
ブラックベタ画像を印字し、一日放置した後に、各画像部の印字濃度を反射濃度計(MACBETH RD914)で測定し、得られた測定値の合計により評価した。
〇:印字濃度が1.5以上である。
△:印字濃度が1.4以上、1.5未満である。
×:印字濃度が1.4未満である。
【0038】
<画像再現性>
ブラックと非画線部の、境界部滲み具合で評価した。
〇:滲みが無く、各色の境界部が鮮明。
△:若干滲みが認められ、境界部がやや不鮮明。
×:滲みによる黒色線が明らかで、本来の各色の境界部が不鮮明。
【0039】
<表面強度>
幅18mm、長さ10mmの透明粘着テープ (ニチバン製 商品名セロテープ)をインク受容層(塗工層)表面に貼り、その上から2kgのゴムローラーを10往復し、接着した。この試料をテンシロン万能試験機(RTC−1210A、オリエンテック社製)を用いて300mm/分の速度で180度剥離強度を行い、剥がれ具合を目視評価した。
〇:塗工層と原紙層の接着が強く、塗工層は剥がれない。
△:塗工層と原紙層との接着がやや弱く、塗工層の一部がセロテープと共に剥がれ落ちる。
×:塗工層と原紙層の接着が弱く、塗工層のほとんどがセロテープと共に剥がれ落ちる。
【0040】
[実施例1]
第1工程;反応容器(200l)中で市販の3号珪酸ソーダ(SiO2:20.0% 、Na2O:9.5%)を水で希釈し、SiO2 として6.7重量%の希釈珪酸ソーダ溶液200lを調製した。この珪酸ソーダ溶液を85℃に加熱したのち、中和当量の20%に相当する量の硫酸アルミニウム(Al2O3分として濃度8重量% 以下バンドと表示)を200g/分の滴下速度で、粗大ゲルが発生しない十分な強撹拌下で添加し、その後、中和当量の20%に相当する量の硫酸 (濃度98重量%) を同様に添加した。添加終了後、得られた部分中和液を攪拌下で熟成処理を行うと同時に、縦形サンドグラインダー(容量2ガロン、直径1mmガラスビーズ充填率70%)により粒径7μmを目標に循環粉砕処理した。この熟成、粉砕処理を3時間行った。 (2)第2工程;次いで、スラリー温度を90℃に昇温し、第1工程と同濃度の硫酸を第1工程同様の条件で、中和当量の80%まで添加し、攪拌下で32分間熟成した。(3)第3工程;引き続き、熟成後のスラリーに同濃度の硫酸を76g/分の添加速度で同様に添加し、スラリーpHを6に調節した。(4)湿式粉砕による粉砕;第3工程終了後のスラリーを濾過、水洗し、純水にリパルプして水和珪酸スラリーを回収した。得られたスラリーを、液状を示す濃度まで希釈し、ビーズ径0.6〜0.8mmのガラスビーズ(東洋バロティーニ社製)を充填率80%となるように、横型サンドグラインダーを用いて湿式粉砕を行い、最終的な平均粒径を2.3μmとした。
【0041】
上記の様に作製された水和珪酸スラリーを、2000rpmで20分間分散した。さらに、水和珪酸固形分100部に対し、ポリビニルアルコール30部(PVA117、クラレ社製)を加え、B型粘度で500cps程度になるように濃度を調節し、手塗りバーを用いて坪量86g/m2の上質紙に、乾燥塗布量が4.0g/m2前後となるように均一に塗工した。これを乾燥後、カレンダー処理を行い、インクジェット記録用紙を得た。
【0042】
[実施例2]
実施例1において、湿式粉砕による最終的な平均粒径を1.3μmとした以外は実施例1と同様に水和珪酸スラリーおよびインクジェット記録用紙を得た。
[実施例3]
実施例1において、第一工程において硫酸バンドのかわりに硫酸を用いた以外は実施例1と同様に水和珪酸スラリーおよびインクジェット記録用紙を得た。
【0043】
[実施例4]
反応容器(200リットル)中で市販の3号珪酸ソーダ(SiO2:20.0% 、Na2O:9.5%)を水で希釈し、SiO2 として5重量%の希釈珪酸ソーダ水溶液200リットルを調製した。この珪酸ソーダ水溶液を85℃に加熱したのち、濃度30重量%に希釈した希硫酸を90g/分の滴下速度で、粗大ゲルが発生しない十分な強撹拌下で添加した。この希硫酸を中和当量の40重量%まで添加した時点から、横型サンドグラインダーにより循環粉砕処理を開始し、粒径7〜10μmを目標に粉砕処理を90分間、中和当量80重量%まで行った。粉砕処理後も、引き続き反応液に同濃度の硫酸を6.75g/分の添加速度で同様に添加し、反応液のpHを6に調節し、非晶質シリカ分散体を得た。その後、湿式粉砕を施し、最終平均粒径を2.2μmとした以外は、実施例1と同様に水和珪酸およびインクジェット記録用紙を得た。
【0044】
[比較例1]
実施例3において、第一工程、および第三工程以後のいずれの工程においても粉砕を行わず、最終的な平均粒径を16.3μmとした以外は実施例1と同様に水和珪酸スラリーおよびインクジェット記録用紙を得た。
[比較例2]
実施例1において、第3工程以後の湿式粉砕を行わず、最終的な平均粒径を5.1μmとした以外は実施例1と同様に水和珪酸スラリーおよびインクジェット記録用紙を得た。
【0045】
[比較例3]
実施例1において、湿式粉砕による最終的な平均粒径を0.5μmとした以外は実施例1と同様に水和珪酸塩およびインクジェット記録用紙を得た。
[比較例4]
水和珪酸として、市販されている日本シリカ製CX200(製造方法:ゲル法、粉砕方法:乾式粉砕、平均粒子径2.1μm)に水を加え、2000rpmで20分間分散して得た固形分21%の水和珪酸スラリーを用いた以外は、実施例1と同様にインクジェット記録用紙を得た。
【0046】
上記実施例1〜3、比較例1〜5の水和珪酸または水和珪酸塩の粒径測定結果及びインクジェト記録シートの記録画像評価を表1に纏めて示した。
【0047】
【表1】
【0048】
表1において、実施例1〜実施例4は、インクジェット記録用紙とし、発色性、画像再現性、表面強度いずれの項目おいても、高い評価を得た。なお、実施例4においては、BET比表面積がやや高い沈降法珪酸を用いて水和珪酸を作製したが、分散後に得られた水和珪酸のBET比表面積、吸油度は若干高めであったため、湿式粉砕中のスラリー粘度が高くなり、粉砕機出口で流れが悪くなるなど粉砕時のハンドリングで若干劣った。
【0049】
一方、すべての工程において粉砕処理を行わなかった比較例1、実施例1の第三工程以降に粉砕を行わなかった比較例2については、粒子径が大きく、吸油量が高いため、顔料分散濃度が低く、表面強度も弱かった。また、比較例2については発色性も劣った。次に、強い粉砕処理を行った比較例3では、表面強度は強いものの、発色性および画像再現性に劣り、インクジェット紙として不向きである。さらに、乾式粉砕が施され、高いBET比表面積を有する市販のゲル法シリカを用いた比較例4においては、インクジェット記録媒体の発色性、画像再現性が悪かった。この原因は、ゲル法で製造された水和珪酸は、比表面積が非常に高いためインクの浸透が遅く、画像再現性に劣るためと考えられ、今回の実験でも鮮明な画像が得られていない。さらに、乾式粉砕を施し、粉体状であるため、顔料分散時に粉体の飛散や静電気発生による付着など、ハンドリングが著しく悪かった。
【0050】
以上の結果から、沈降法で製造された水和珪酸または水和珪酸塩を、その製造過程で乾燥工程を用いず、湿式粉砕で微粒化することで、インクジェット記録媒体製造時のハンドリングばかりか、インクジェット記録媒体としても優れた性能を示すことがわかった。
Claims (3)
- 沈降法で製造した非晶質の水和珪酸または水和珪酸塩を、乾燥工程を経ず、湿式粉砕法により平均粒子径が0.75〜4.0μmとなるように処理し、次いで乾燥工程を経ずに、前記水和珪酸または水和珪酸塩を塗工液中に配合した後、支持体上に前記塗工液を塗工してインク受容層を形成するインクジェット記録媒体の製造方法。
- 湿式粉砕法により処理された前記水和珪酸または水和珪酸塩の吸油量が200ml/100g以下であり、かつBET比表面積が200m2/g以下である請求項1に記載されたインクジェット記録媒体の製造方法。
- 湿式粉砕法により処理された前記水和珪酸または水和珪酸塩の平均粒子径が0.75〜2.3μmである請求項1または請求項2に記載されたインクジェット記録媒体の製造方法。
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