JP4102323B2 - 溶鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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本発明は、溶鋼の連続鋳造方法に関し、詳細には、溶鋼の表面にモールドパウダーを添加して溶鋼とシェル間の滑性を高めるようにした溶鋼の連続鋳造方法に関する。
熱間圧延鋼帯を巻き取ったホットコイルの製造用の素材である溶鋼の連続鋳造において溶鋼中の水素含有率が高い場合には、鋳片表層部に水素起因の気泡性欠陥が発生し、抜熱不良が起こりやすくなる。抜熱不良が起こると、熱間圧延後の製品に線状疵や割れ疵等が発生したり、また溶鋼中の水素分によって溶融スラグの潤滑状況が悪くなるために凝固シェルが鋳型に焼き付いたりする可能性があり、このような場合には拘束性ブレークアウトが発生しやすくなることが一般的に知られている。溶鋼中の水素含有率が原因で発生するこのような問題を解決するために、連続鋳造前の溶鋼を脱ガス処理して溶鋼中の水素含有率を低くする方法が従来から用いられてきた。また、鋳型内の溶鋼に添加するモールドパウダーへの付着水分が多い場合も同様に、溶鋼中の水素含有率が高くなり拘束性ブレークアウトが発生しやすくなることが知られており、特許文献1に係る鋼の連続鋳造方法では、鋳型近傍に配置した容器内のモールドパウダーをマイクロ波により加熱して、その付着水分を低減することでブレークアウトの発生を防止している。
特開平5−200512号公報
しかしながら、上記のような従来技術では、脱ガス処理工程を設けることにより工数及びコストが余分にかかるという問題があり、また、脱ガス処理工程を用いて溶鋼中の水素含有率を低くし、さらにマイクロ波等を用いてモールドパウダー中の付着水分を低減しても、鋳造対象となる溶鋼の寸法や鋳造速度、また溶鋼中の水素含有率及びモールドパウダー中の付着水分の含有率等の条件によっては、依然として水素起因の欠陥及びブレークアウトが発生する可能性があるという問題があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、溶鋼中の水素による欠陥及び抜熱不良を防止し、安定した操業ができる溶鋼の連続鋳造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の溶鋼の連続鋳造方法は、マンガン及びシリコン濃度が合わせて2.1%以上である溶鋼を連続鋳造する際に、6〜20wt%のアルミナを含有し、塩基度が1.3〜2.0の範囲内にあり、450ppm以上の水蒸気吸収能を有するモールドパウダーを鋳型内の溶鋼の表面に添加し、該モールドパウダーに鋳型内溶鋼に含まれる水素を水蒸気として吸収させることにより、水素起因の欠陥及び抜熱不良を防止することを特徴とする。
また、請求項2に記載の溶鋼の連続鋳造方法は、請求項1に記載の溶鋼の連続鋳造方法の構成に加えて、前記溶鋼中の水素濃度が7ppm以上であって、その水素濃度をH(ppm)、モールドパウダーの水蒸気吸収能をA(ppm)とすると、単位面積当たりの鋳片に対するモールドパウダー添加量Q(kg/m)は、下式(I)に示される範囲内となることを特徴とする。
Q≧(H−6.56)×32.5/A (I)
本発明に係る溶鋼の連続鋳造方法では、鋳型内の溶鋼の表面に水素吸収能を持つモールドパウダーを添加し、該モールドパウダーに鋳型内溶鋼に含まれる水素を水蒸気として吸収させるようにしたので、水素起因の欠陥及び抜熱不良を防止することができ、操業と品質とを安定させることができる。また、モールドパウダーを、6〜20wt%のアルミナを含有しているものとし、さらにモールドパウダーの塩基度を1.3〜2.0の範囲内とすることによって、水素分吸収能を向上させることができ、モールドパウダーの水蒸気吸収能を450ppm以上とすることによって、より確実に水素起因の欠陥及び抜熱不良を防止して操業を安定させることができる。さらに、本発明に係る溶鋼の連続鋳造方法では、特に溶鋼中のマンガン及びシリコン濃度が合わせて2.1%以上である場合において、モールドパウダーによって溶鋼中の水素を効果的に吸収することができ、加えて、溶鋼中の水素濃度が7ppm以上の場合、溶鋼中の水素を吸収するためのモールドパウダー添加量を定式化したことにより、常に安定した水素吸収を無駄なく最適なモールドパウダー量をもって行うことができる。
以下、本発明を具体化した溶鋼の連続鋳造方法の一実施形態について図を参照して説明する。図1に示すように、連続鋳造中の鋳型1内の溶鋼5にモールドパウダーを添加すると、該パウダーは溶鋼5の表面に配置され、溶鋼5の直上には溶融パウダー7が、該溶融パウダー7の上側には粉末状の粉パウダー8がそれぞれ位置することになる。また、溶鋼5の外周部には凝固シェル6が形成されており、この凝固シェル6と鋳型1の内壁11との間には間隙(溶融パウダー層厚)dが形成されている。
本発明のモールドパウダーは、鋳型1内部の溶鋼5表面の保温機能、鋳型1と凝固シェル6間の潤滑機能等に加え、さらに溶鋼中の水素を以下の化1の反応により水蒸気として吸収する能力(以下、「水蒸気吸収能」という。)を有している。ここで、化1中のHは鋼中の水素、(O)はモールドパウダー中の酸素を表しており、またHOはモールドパウダー中の水蒸気を表している。溶鋼5中において、そのマンガン及びシリコン濃度が合わせて2.1%以上である場合、また溶鋼が目標温度より高くなったときの吹錬終了後の鉄鉱石投入量が1.0t以上になった場合等は溶鋼5中の水素濃度が高くなるために、従来は溶鋼の脱ガス処理を行って水素値を下げる必要があったが、本発明では、モールドパウダーに水蒸気吸収能を持たせて、鋳型内の鋼から放出される水素を水蒸気として吸収して水素ガスの発生を防止して、脱ガス処理を不要にした。尚、ここでいう水素濃度とは平衡濃度であり、5mm径の石英管を溶鋼に浸漬し、その先端から溶鋼を吸引後15秒以内に1分間水冷した後、1分間窒素により冷却したサンプルを5分以内に分析した場合の分析値は、平衡濃度の約1/2になることを事前に検討している。
Figure 0004102323
ここで、モールドパウダーの水蒸気吸収能は、アルミナ分及び塩基度がある一定の範囲内で増加するのに比例して向上するということが分かっている。詳しくは、図2及び図3に示すように、モールドパウダーに含まれるアルミナ分が5〜10wt%の範囲内ではアルミナ分の増加に伴って水蒸気吸収能が向上しており、特に、アルミナ(Al)分が6〜20wt%の領域では485ppm〜550ppmという高い水蒸気吸収能が得られることが確認できる。また、モールドパウダーの塩基度(CaOとSiOとの重量濃度比、CaO/SiO)が1〜2の範囲内では塩基度の増加に伴って水蒸気吸収能が向上しており、特に、塩基度が1.3〜2.0の領域では、450ppm以上という高い水蒸気吸収能が得られることが確認できる。これにより、モールドパウダーのアルミナ分を6〜20wt%の範囲内とし、塩基度を1.3〜2.0の範囲内とすることにより、高い水蒸気吸収能を得ることができると考えられる。
以下に、それぞれアルミナ分及び塩基度の異なる種々のパウダーを用いて実際に溶鋼の連続鋳造を行ったときの水蒸気吸収能について説明する。表1に、6種類のモールドパウダーA〜Fのアルミナ分、塩基度、BP(ブレークポイント、即ち溶融パウダーを一定冷速で冷却後、結晶析出により粘度が急に増大する温度)及びどれだけの水蒸気吸収能が得られたかの結果を示す。
Figure 0004102323
表1に示す水蒸気吸収能は、275t/チャージの転炉から出鋼され、脱ガス工程を経ず二次精錬されたアルミシリコンキルド鋼(マンガン濃度1.50%、シリコン濃度0.70%)を、幅1200mm、厚み250mmの鋳型内にて鋳造速度1.5m/minという条件で連続鋳造したときの各パウダーの水蒸気吸収能である。具体的には、鋳造終了後に鋳型表面に付着残存していたパウダーフィルム(溶融後に冷却されて鋳型に凝固したモールドパウダー)を採取し、パウダー中水素ガスの濃度測定を次の通り実施した。即ち、予め破砕して粉末にしたパウダーフィルムを、一端が水素分析装置、他端がキャリアガスと連結した石英管内に挿入後、石英管を加熱炉に入れ室温から1700℃まで2℃/秒で加熱した。そして、発生した水素ガスをキャリアガスのNにより水素分析装置に送り、ガスの熱伝導度から発生した水素ガスの濃度を分析した。尚、Nガス中のCO、CO、HOは浄化装置によって予め除去した。表1に示すように、上述のアルミナ分及び塩基度の条件を満たすモールドパウダーC、Dには450ppmを超える水蒸気が含まれていることが確認できた。また、その他のモールドパウダーでは十分な水蒸気吸収能が得られず、操業に適していないことが確認できる。尚、パウダーEは、凝固温度が高く流れ込み不良となるために操業には適さなかった。
また、上記のパウダーA及びパウダーDを用いて、275t/チャージの転炉から出鋼され、脱ガス工程を経ず二次精錬された鋼(炭素濃度0.08%)を、幅1200mm、厚み250mmの鋳型内にて鋳造速度1.4〜1.5m/minという条件で連続鋳造したときの鋳片の表面欠陥について見ると、図4に示すように、パウダーA使用時に発生していた水素による気泡が、より水蒸気吸収能の高いパウダーD使用時には減少し、鋳片の表面欠陥が減少したことが確認できた。ここで、表面欠陥とは焼き付きの跡であり、鋳片表面を目視で確認した。
さらに、上記のパウダーA及びパウダーDを用いた連続鋳造において、鋳型振動や鋳造速度を変えて、それに伴いパウダーの消費量を変えて鋳造を行ったところ、溶鋼中の水素濃度と、その水素濃度に対して抜熱不良なく鋳造可能とするパウダー消費量との関係を導出することができた。尚、この関係は溶鋼中の水素濃度が7ppm以上の場合に成り立つものである。図5に示すように、溶鋼中水素濃度とパウダーの消費量との間には、溶鋼中水素濃度が高いほど多くのパウダーを投入(消費)しなければならないという関係があり、水蒸気吸収能が高いパウダーほどその投入量が少なくてよいことが確認できる。図5には、水蒸気吸収能が200ppmから100ppm刻みで600ppmまでの5種類のパウダーの溶鋼中水素濃度に対する消費量を直線で示すが、最も水蒸気吸収能の小さいパウダー(200ppm)の直線が、最も傾きが大きくなっていることが分かる。また、表2及び図5に、パウダーA及びパウダーDの消費量と溶鋼中水素濃度との関係と、それぞれの量を消費したときの抜熱状態とを示す。
Figure 0004102323
表2からも明らかなように、同じ水素濃度の溶鋼中にパウダーを添加する際、抜熱状態を良好にできるだけのパウダー消費量は、水蒸気吸収能が低いものより高いものの方が少なくてよい。そしてこれらの関係は、溶鋼中の水素濃度をH(ppm、7ppm以上)、モールドパウダーの水蒸気吸収能をA(ppm)、抜熱不良なく鋳造可能とするための単位面積当たりの鋳片に対するモールドパウダー添加量をQ(kg/m)とすると、下記の数1で表すことができる。尚、パウダーの消費量Qは、図1に示す溶融パウダー層厚dと比例しており、Qが大きいほどdが厚く、水素を吸収できるパウダー体積が大きくなり、抜熱不良の発生なく鋳造できることになる。
Figure 0004102323
従って、数1を満たすようなパウダー消費量をもって溶鋼中の水蒸気を吸収するようにすれば、無駄に多くのパウダーを消費することなく、かつ確実に抜熱不良の発生しない状態で安定した溶鋼の連続鋳造を行うことができる。
以上説明したように、本実施形態の溶鋼の連続鋳造方法では、鋳型1内の溶鋼5に水蒸気吸収能を持つモールドパウダーを添加し、該モールドパウダーに鋳型内溶鋼中の水蒸気を吸収させるようにしたので、水素起因の欠陥及び抜熱不良を防止することができ、操業を安定させることができる。また、モールドパウダーに含まれるアルミナとパウダーの塩基度とを所定の範囲内とすることによって、水蒸気吸収能を向上させることができ、より確実に水素起因の抜熱不良を防止して操業を安定させることができる。また、溶鋼中の水素濃度に対し、抜熱不良なく鋳造可能とするためのモールドパウダー添加量を定式化して算出可能としたことにより、常に安定した水素吸収を無駄のない最適なパウダー投入量をもって行うことができる。加えて、脱ガス工程等を設ける必要がないので、工数及びコストを削減することができる。
本発明方法を示す要部側面図である。 モールドパウダーに含まれるアルミナと水蒸気吸収能との関係を示すグラフである。 モールドパウダーの塩基度と水蒸気吸収能との関係を示すグラフである。 水蒸気吸収能の異なる2つのモールドパウダーA、Dを使用して連続鋳造を行ったときの鋳片の表面欠陥発生率をそれぞれ示すグラフである。 溶鋼中水素濃度とそれに対するモールドパウダーの消費量との関係を、パウダーの水蒸気吸収能毎に示すグラフである。
符号の説明
1 鋳型
5 溶鋼
6 凝固シェル
7 溶融パウダー
8 粉パウダー

Claims (2)

  1. マンガン及びシリコン濃度が合わせて2.1%以上である溶鋼を連続鋳造する際に、6〜20wt%のアルミナを含有し、塩基度が1.3〜2.0の範囲内にあり、450ppm以上の水蒸気吸収能を有するモールドパウダーを鋳型内の溶鋼の表面に添加し、該モールドパウダーに鋳型内溶鋼に含まれる水素を水蒸気として吸収させることにより、水素起因の欠陥及び抜熱不良を防止することを特徴とする溶鋼の連続鋳造方法。
  2. 前記溶鋼中の水素濃度が7ppm以上であって、その水素濃度をH(ppm)、モールドパウダーの水蒸気吸収能をA(ppm)とすると、単位面積当たりの鋳片に対するモールドパウダー添加量Q(kg/m )は、下式(I)に示される範囲内となることを特徴とする請求項1に記載の溶鋼の連続鋳造方法。
    Q≧(H−6.56)×32.5/A (I)
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