JP4907453B2 - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼の連続鋳造方法に関するものであり、特にAl含有量が0.015質量%未満のSiキルド鋼の連続鋳造方法に関するものである。
鋼の連続鋳造において、鋳型内に連続鋳造用パウダーが添加される。連続鋳造用パウダーは鋳型内の溶鋼表面において溶融し、鋳型壁と凝固シェルとの間に潤滑膜を形成する。連続鋳造用パウダーはスラブおよび大断面ブルームにおいてはほとんどすべて採用されている。このパウダーは、鋳型内溶鋼表面の酸化防止、鋳型と鋳片の間の潤滑、浮上した介在物の捕捉、鋳型内溶鋼表面の保温といった役割を果たす。パウダーはその溶融速度、粘性、融点、アルミナ吸収能などの多くの管理要因があり、鋼種、鋳造速度、鋳片断面形状などによって最適パウダーは異なるため、その選択が極めて重要である。従来の連続鋳造用パウダーにおいては、塩基度(CaO/SiO2)が0.6〜1.1の範囲のものが使用されていた。
高速鋳造時あるいは中炭素鋼を鋳造する際には、鋳片表面に縦割れが発生しやすい。この縦割れの発生を防止するため、特許文献1においては、パウダーフィルムの伝熱抵抗を大きくして凝固殻を緩冷却するとき、凝固殻の厚みはより均一化され、鋳片表面が割れにくくなるとしている。そのためにパウダーの塩基度を増大し、結晶の析出量を増大させてパウダーフィルムの伝熱抵抗を大きくする主旨の発明が記載されている。しかしパウダー組成の塩基度を増大させると、凝固殻の緩冷却化が実現する一方、パウダーフィルムの流入性が低下し、鋳型と凝固殻の隙間への流入が不均一となり、特に高速鋳造の場合に拘束性ブレークアウトが発生しやすくなるという問題がある。そのため、中炭素鋼の連続鋳造のように鋳片の縦割れが問題とならない限り、連続鋳造用パウダーの塩基度としては1.3以下程度の値が採用されている。
特許文献2においては、溶融したモールドパウダーが凝固する際に鋳型近傍の雰囲気中に水蒸気が存在すると、モールドパウダー中に結晶核生成の起点が増えて結晶が析出しやすくなるとし、鋳型近傍における雰囲気中の水蒸気分圧を0.05〜0.7atmに高めて連続鋳造を行う方法が記載されている。
連続鋳造で製造される鋼は通常はキルド鋼であり、主にAlを0.015質量%以上添加することによって脱酸が行われる。これに対し、Al含有量が0.015質量%未満であり、Si含有量を0.05質量%以上としてSi脱酸を用いた鋼を連続鋳造することがある。これはAl含有量を低減することでオーステナイト結晶粒径を大きくして、高温での粒界破壊を予防することが主な目的である。以下このような鋼をSiキルド鋼ということもある。
拘束性ブレークアウトは、メニスカス近傍で凝固殻が鋳型壁に固着して破断し、凝固殻の破断部が鋳造の進行とともに下方に移動し、最終的に破断部が鋳型下端に達してブレークアウトに到るものである。鋳型壁に温度測定端を設置しておけば、凝固殻の破断部が鋳型の下方に移動するに際してこの温度測定部を通過するときに温度が非定常に上昇するので、ブレークアウトの発生を予知することができる。予知信号が発生したときに鋳造速度を急減速すれば、凝固殻の破断部を修復してブレークアウト発生を防止することができる。
特開2000−218348号公報 特開2001−225152号公報 不破祐ら「鉄と鋼53(1963)」第91頁
Al含有量が0.015質量%未満のSiキルド鋼を連続鋳造するに際し、拘束性ブレークアウトの予知信号が多発するという現象が見られた。Al含有量が0.010質量%以下となるとさらに発生頻度が増大する。ブレークアウトの発生には到らないものの、予知信号が発せられる度に鋳造速度を急減速する必要があるので、鋳造の生産性が低下すると同時に、鋳造速度急減速部は非定常部位となって品質が低下する原因にもなる。連続鋳造用パウダーの選定に当たっては、パウダーフィルムの流入性を優先して塩基度の高くないパウダー(塩基度Bが1.0〜1.2程度)を選定しているが、それでもブレークアウト予知信号の発生は頻発している。
メニスカス近傍における鋳型温度を測定したところ、Al含有量が0.015質量%以上のAlキルド鋼やAl−Siキルド鋼に比較し、Al含有量が0.015質量%未満のSiキルド鋼においては鋳型温度が低くなっていることが判明した。メニスカス近傍における凝固シェルから鋳型への抜熱量において、Siキルド鋼は抜熱量が低くなっていることを意味する。また、鋳型全体の抜熱量についても、Siキルド鋼はそれ以外の品種に比較して抜熱量が低くなっていることがわかった。抜熱を緩冷却化するような高塩基度パウダーを用いていないにもかかわらず抜熱が低く、それにより拘束性ブレークアウト予知信号の多発という結果を招いている。
本発明は、Al含有量が0.015質量%未満のSiキルド鋼を連続鋳造するに際し、拘束性ブレークアウトの予知信号発生を少なくすることのできる連続鋳造方法を提供することを目的とする。
上述のとおり、Al含有量が0.015質量%未満のSiキルド鋼を連続鋳造するに際し、メニスカス近傍における凝固シェルから鋳型への抜熱量が他の品種に比較して低くなっている。それが拘束性ブレークアウト予知信号多発の原因と推定される。
そこで、鋳造後に鋳型に付着したパウダーフィルム(メニスカスから50mm下の部位)を回収し、フィルムの断面観察を行った。その結果、Al含有量が少ない鋼を鋳造した際にはフィルム断面に気泡の発生が見られ、鋳造する品種のAl含有量が少なくなるほど気泡発生量が増大することが判明した。特に鋼中のAl含有量が0.010質量%以下の場合、気泡によるパウダーフィルムの空隙率が10%を超えることもある。このことから、Al含有量が少ないSiキルド鋼においては、鋳造中のパウダーフィルムに気泡が発生して断熱性が増大し、特にメニスカス近傍で凝固殻から鋳型壁への抜熱量が減少し、拘束性ブレークアウト予知信号多発につながっているものと考えられる。
パウダーフィルム中の気泡中に含まれる気体の種類を特定したところ、水素の含有量が多く、気泡成分には水素ガスあるいは水蒸気ガスが含まれることが判明した。溶融パウダーフィルム中に溶解しているOH-の濃度が飽和溶解度以上となったときに、パウダーフィルム中で水蒸気となって気泡が生成するものと考えられる。
非特許文献1に記載のように、溶融スラグと気相との界面において、スラグ中の水酸イオンと気相中の水蒸気との間には、
2(OH-)←→H2O+(O2-) [1]
の関係がある。ここで(OH-)と(O2-)はそれぞれ溶融スラグ中の水酸イオンと酸素イオンを表す。
スラグが高温の溶融状態においては、大気中の水蒸気がスラグ中に溶け込んで上記[1]式の右辺から左辺への反応が進行し、スラグ中に水酸イオンが形成される。スラグ温度が低下すると、[1]式の左辺から右辺への反応が起こり、水蒸気が気相として生成する。非特許文献1はCaO−SiO2二元系のスラグでの知見であるが、さらにNa2O、Al23、F等を含むパウダーでも原理的に同様であると考えられる。
そこで、連続鋳造時に鋳型表面を大気と遮断し、鋳型内の溶融パウダーと接する部分のガスを置換して水蒸気分圧を低減したところ、溶融パウダーフィルム中の気泡生成量が低減し、拘束性ブレークアウト予知信号の発生頻度が減少した。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
(1)Al含有量が0.015質量%未満の鋼の連続鋳造方法であって、連続鋳造鋳型内のパウダー被覆面と接する雰囲気中の水蒸気分圧を大気中の水蒸気分圧よりも低減し、水蒸気分圧を0.02atm以下とすることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
(2)連続鋳造鋳型内のパウダー被覆面と大気との間に遮蔽板を設け、遮蔽板の内部に水蒸気分圧が0.02atm以下のガスを導入することを特徴とする上記(1)に記載の鋼の連続鋳造方法。
(3)導入するガスが乾燥空気であることを特徴とする上記(2)に記載の鋼の連続鋳造方法。
(4)鋼の連続鋳造がスラブ連続鋳造であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の鋼の連続鋳造方法。
本発明は、Al含有量が0.015質量%未満のSiキルド鋼の連続鋳造に際し、連続鋳造鋳型内のパウダー被覆面と接する雰囲気中の水蒸気分圧を大気中の水蒸気分圧よりも低減し、水蒸気分圧を0.02atm以下とすることにより、鋳型と凝固シェルとの間に流入するパウダーフィルム中の気泡の発生を低減し、拘束性ブレークアウトの予知信号発生を少なくすることができる。
本発明が対象とするのは、Al含有量が0.015質量%以下の鋼である。脱炭精錬によって溶鋼中に残存する溶存酸素を脱酸するためにSiを0.05質量%以上含有させるので、ここでは対象とする鋼をSiキルド鋼と呼ぶ。鋼の炭素濃度は特に規定しないが、0.01〜0.08質量%程度の低炭素鋼が主な対象となり、0.09〜0.40質量%程度の中炭素鋼についても鋳造される。また、鋳造する鋳片については特に限定しないが、スラブ連続鋳造が主要な対象となる。なお、本明細書において、鋼中Al含有量はトータルAlを意味する。
連続鋳造に際しては、拘束性ブレークアウト発生を防止するため、鋳型壁内に熱電対を埋め込み、ブレークアウト予知信号を発生させている。拘束性ブレークアウトの原因となる凝固殻の破断部が鋳型の下方に移動するに際し、破断部がこの熱電対設置部を通過するときに温度が非定常に上昇するので、ブレークアウトの発生を予知することができる。予知信号が発生したときに鋳造速度を急減速すれば、凝固殻の破断部を修復してブレークアウト発生を防止することができる。
ブレークアウト予知信号の発生頻度を、鋼のAl含有量レベル毎に比較してみた。いずれも鋼のSi含有量は0.05質量%以上であり、Al含有量が0.015質量%以上についてはAl−Siキルド鋼と呼ぶことができ、Al含有量が0.015質量%未満についてはSiキルド鋼と呼ぶことができる。図1は、横軸をAl含有量、縦軸をブレークアウト予知信号発生頻度とした図である。図1から明らかなように、鋼中Al含有量が少なくなるほど、ブレークアウト予知信号の発生頻度が増大しており、Al含有量0.015質量%未満で特に顕著である。
ブレークアウト予知信号発生が頻発する品種においては、ブレークアウト発生を防止する対応が間に合わずにブレークアウトが発生してしまうこともある。Al含有量が0.015質量%以上のAl−Siキルド鋼ではブレークアウトが全く発生しないのに対し、Al含有量が0.010質量%以下の品種ではブレークアウト発生率が1.7%程度となっていた。
そこで、鋳型内での凝固殻と鋳型壁との間の熱伝達状況について、鋼のAl含有量毎に調査を行った。調査は2つの観点から行った。第1は、鋳型長辺面全体の冷却水温度上昇代を測定し、これから鋳型長辺面全体における抜熱量を比較した。第2は、鋳型内の鋳造方向複数箇所に埋め込まれた熱電対の温度を測定し、鋳造方向での温度分布について比較した。鋳造を行った品種は、Al含有量0.008質量%(低Al品種)、0.017質量%(中Al品種)、0.036質量%(高Al品種)であり、Si含有量は低Al品種では0.05質量%以上、中Al品種と高Al品種では0.006〜0.01質量%である。使用した連続鋳造用パウダーの塩基度は1.1〜1.2程度であった。
鋳型長辺面の冷却水温度上昇代に基づいて長辺面全体の面平均熱流束を求めた。鋳造速度は1.5m/min程度とした。その結果、中Al品種、高Al品種では面平均熱流束が1500kW/m2・sec程度であったのに対し、低Al品種では1100kW/m2・sec程度と低い面平均熱流束を示した。
鋳型壁中には、鋳造方向に120mmピッチで4箇所に熱電対が埋め込まれている。最上段の熱電対はメニスカスから65mmの位置にある。鋳型壁表面から熱電対先端までの距離は5mm程度である。低Al品種と中Al品種について熱電対温度を測定したところ、図2に示す結果が得られた。鋳造方向2〜4段目の熱電対温度は品種によってあまり変化しないが、メニスカス近傍に設置した熱電対温度については、中Al品種が160℃程度であるのに対して低Al品種は110℃程度と大幅に低い温度が観察された。これより、低Al品種においては、特にメニスカス近傍において凝固殻から鋳型壁への抜熱が低下していることが明らかである。
以上の結果から、同じ連続鋳造用パウダーを用いて鋳造しているにもかかわらず、低Al品種においては、中Al品種・高Al品種と対比してメニスカス近傍における凝固殻から鋳型壁への抜熱量が大幅に低下していることが判明した。品種別に、凝固殻と鋳型壁との間に存在するパウダーフィルム厚が変化している傾向は見られなかったので、抜熱量の差はパウダーフィルム厚の差ではない。また、パウダーフィルムの結晶化率についても、品種毎に結晶化率が変化する傾向は見られなかったので、抜熱量の差は結晶化率の差でもない。
そこで、鋳造が完了した鋳型の壁面に残存しているパウダーフィルムを採取し、調査を行った。メニスカス近傍の抜熱挙動に大きな影響を与えるメニスカスから50mm程度の位置からパウダーフィルムを採取した。
図3に、低Al品種を鋳造した後に回収したパウダーフィルムの断面写真を示す。写真中に見られる黒い丸は空隙である。フィルム断面の空隙は、低Al品種鋳造後のフィルムで最も激しく、中Al品種の場合はより少なく、高Al品種鋳造後のフィルムではほとんど観察されなかった。断面写真に基づいてパウダーフィルムの空隙率を算出し、鋼中Al含有量と空隙率との関係をプロットしたのが図4である。図4からも明らかなように、低Al品種では格段に空隙率が高い値を示している。鋼中のAl含有量が低くなるほど、凝固殻と鋳型壁との間に存在するパウダーフィルム中に気泡が多量に存在していることが明らかである。
以上の結果から、低Al品種の連続鋳造でメニスカス近傍の抜熱量が低下する原因は、パウダーフィルム中に気泡が多発して空隙率が高くなることが原因であると推定されるに到った。
パウダーフィルム中の気泡に含まれる気体のガス分析は、質量数別スペクトル積算強度比率によって求めた。その結果、最も多く含まれるガスは窒素あるいは一酸化炭素であるものの、いずれのサンプルにも水素ガスが7〜16%の割合で含まれていることが特徴であった。水素ガスが検出されたことから、溶融スラグと水蒸気との間の相互作用が、パウダーフィルム中の気泡の発生と関係しているものと推定される。
次に、パウダー中にOH-として存在する水素の定量化法について述べる。これまでスラグ中のOH-の分析は溶融Al還元法で行われていた。この方法でスラグ中のOH-をAlでH2ガスに還元し、H2ガス量をガス質量分析計で測定することでOH-を定量化する。しかしFやNa2Oを含む連鋳パウダーでは、加熱時にNaF、SiF4ガスが生成するため、この方法を用いることが出来ない。そこで、核磁気共鳴(固体NMR)を用いてOH-の分析を行った。鋳造前のパウダーおよび鋳造後採取したパウダーフィルムに対して、HのNMRスペクトルを測定した。また標準試料としてカオリナイトAl2Si25(OH)4を用いた。カオリナイトはOH-としてHを1.56質量%含むことが既知なので、パウダー試料のOH-に相当するNMRスペクトルの面積値と標準試料のOH-に相当するNMRスペクトルの面積値の比を知ることで、パウダー中にOH-として存在するHの重量を定量化した。
鋳造前のパウダーのOH-として存在するHは80ppmであった。これに対して低Al品種鋳造後のパウダーフィルムでは、120−150ppmにまで増大した。一方、中・高Al品種鋳造後のパウダーフィルムでは40−80ppmと低位であった。この結果より、中・高Al品種においては、溶鋼中のAlが溶融プールのパウダーと反応してOH-イオン濃度を低下させるので気泡が発生しないのに対して、低Al品種では溶鋼中のAlが少ないので溶融パウダープールのOHイオン濃度を低下させる程度が低く、OH-イオンが高い濃度でパウダーフィルム中に残存する。その結果、低Al品種ではパウダーフィルム中のOH-イオン濃度が冷却過程で溶解濃度を超え、水蒸気気泡がパウダーフィルム中に発生することとなる。
非特許文献1に記載のように、溶融スラグと気相との界面において、スラグ中の水酸イオンと気相中の水蒸気との間には、
2(OH-)←→H2O+(O2-) [1]
の関係がある。ここで(OH-)と(O2-)はそれぞれ溶融スラグ中の水酸イオンと酸素イオンを表す。
連続鋳造に供する鋼がAlを含有するAlキルド鋼あるいはAl−Siキルド鋼である場合は、溶融パウダーと溶鋼との間で
3(OH-)+2[Al]→(Al23)+3[H]+3e- [2]
の反応が起こる。その結果、溶融パウダー中の水酸イオンが溶鋼中のAlで還元されて溶鋼中に水素として移動する。従って、大気中の水蒸気が溶融パウダー中に水酸イオンとして取り込まれても、Alによって還元されてしまうので、溶融パウダー中水酸イオン濃度が十分に上昇せず、溶融パウダーの温度が下がっても水蒸気気泡が発生するには至らない。
連続鋳造に供する鋼がAl含有量の少ないSiキルド鋼である場合には、上記[2]式の反応による水酸イオンの減少は起こらない。Al含有量の少ないSiキルド鋼において連続鋳造パウダーフィルム中に気泡生成が多い理由は、以上のように説明することができる。
以上の解析より、低Al品種であっても溶融パウダー中のOHイオン濃度の上昇を抑制できれば、気泡の発生は防ぐことができる可能性がある。
パウダーが高温の溶融状態においては、大気中の水蒸気が溶融パウダー中に溶け込んで上記[1]式の右辺から左辺への反応が進行し、溶融パウダー中に水酸イオンが形成される。溶融パウダー温度が低下すると、[1]式の右辺から左辺への反応が起こり、水蒸気が気相として生成する。非特許文献1はCaO−SiO2二元系のスラグでの知見であるが、さらにNa2O、Al23、F等を含むパウダーでも原理的に同様であると考えられる。
即ち、溶融パウダーと接する気相中の水蒸気分圧を下げることにより、上記[1]式の右辺から左辺への反応の進行を抑え、溶融パウダー中の(OH-)濃度を低下できるはずである。
大気中の水蒸気分圧は、気温が高い夏場は0.04atm程度に上昇し、気温が低い冬場は0.005atm程度まで低下する。そこで、Siキルド鋼を鋳造した際のパウダーフィルムを、年間の各季節に採取し、パウダーフィルム中の(OH-)濃度を比較した。その結果、図5に示すように、夏場に比較して冬場はパウダーフィルム中の(OH-)濃度が減少することが分かった。
そこで、連続鋳造鋳型内のパウダー被覆面と大気との間に図6に示すような遮蔽板を設け、遮蔽板の内部に水蒸気分圧が0.010atmである乾燥空気を導入することにより鋳型内の溶融パウダーと接する部分の水蒸気分圧を低減することを試みた。季節が夏場であり、大気中の水蒸気分圧が0.04atmと高い場合であっても、鋳型内の溶融パウダーと接する部分の水蒸気分圧を0.015atmに低減することができた。
次に、この遮蔽板とガス導入を用い、年間を通じてSiキルド鋼の鋳造を行ったところ、夏場を含め年間を通してパウダーフィルム中の(OH-)濃度が低位に保たれることが分かった。
以上の結果に基づき、連続鋳造鋳型内のパウダー被覆面と接する部分の雰囲気中水蒸気分圧を種々変更して、Al含有量が0.015質量%未満のSiキルド鋼のスラブ連続鋳造を行い、パウダーフィルム中の(OH-)濃度、鋳型断面から採取したパウダーフィルム中の空隙率、ブレークアウト予知信号発生率のそれぞれと水蒸気分圧との関係を調査した。使用した連続鋳造用パウダーの塩基度は1.0〜1.2程度である。図7、図8、図9に示すように、連続鋳造鋳型内のパウダー被覆面と接する部分の雰囲気中水蒸気分圧が低くなるほど、パウダーフィルム中の(OH-)濃度、鋳型断面から採取したパウダーフィルム中の空隙率、ブレークアウト予知信号発生率のいずれも低減し、連続鋳造鋳型内のパウダー被覆面と接する部分の雰囲気中水蒸気分圧が0.02atm以下であれば、ブレークアウト予知信号の発生頻度を十分に低減できることが明らかになった。
Al含有量が0.015質量%未満の鋼の連続鋳造方法であって、連続鋳造鋳型内のパウダー被覆面と接する雰囲気中の水蒸気分圧を大気中の水蒸気分圧よりも低減し、水蒸気分圧を0.02atm以下とするにあたり、連続鋳造鋳型内のパウダー被覆面と大気との間に遮蔽板を設け、遮蔽板の内部に水蒸気分圧が0.02atm以下のガスを導入すると好ましい。遮蔽板としては、鋳型周りの雰囲気温度に耐え得る材質であれば何でも良く、ステンレス鋼板などでも良い。望ましくは、鋳型内の湯面の状況を観察可能なように透明な材質が良いが、部分的に窓を設けても良い。また、パウダー投入機を備えた鋳型ではもちろん、遮蔽板をパウダー投入機と干渉しない位置や構造とする必要がある。
また、遮蔽板の内部に導入するガスとして乾燥空気を用いると好ましい。安価に供給できるからである。
本発明を適用する鋼の連続鋳造は、スラブ連続鋳造であると好ましい。Al含有量が0.015質量%未満のSiキルド鋼の連続鋳造に際して、パウダーフィルム中に生成する気泡に起因するブレークアウト予知信号の発生がスラブ連続鋳造に特有であり、本発明の効果が特に発揮されるからである。
なお、Al含有量が0.010質量%以下の鋼においては改善効果がより顕著となる。また、スラブ連続鋳造において効果が顕著に表れる。鋼中の炭素濃度によらず本発明の効果を得ることができるが、特にC含有量が0.08質量%以下の低炭素鋼については、従来鋳片の縦割れ発生が問題にならず常に低塩基度パウダーが用いられていた関係から、特に格別の効果を発揮するということができる。本発明は、Al含有量が低いSiキルド鋼のみ、あるいはSiキルド鋼を含む一部の品種のみに適用することとすると好ましい。
垂直曲げ型のスラブ連続鋳造装置による連続鋳造において、鋳型内の溶融パウダーと接する雰囲気中水蒸気分圧を変化させ、ブレークアウト予知信号の発生頻度を、鋼のAl含有量レベル毎に比較してみた。いずれも鋼のSi含有量は0.05質量%以上である。使用した連続鋳造パウダー成分は表1に示すとおりである。
図10の○は、連続鋳造鋳型内のパウダー被覆面と接する雰囲気を大気雰囲気とし、夏場に鋳造した結果である。溶融パウダーと接する雰囲気中の水蒸気分圧は0.04atm程度であった。また、図6に示すような遮蔽板2を鋳型1の上部に設けた。遮蔽板2はステンレス鋼製であり、鋳型1の上面、両側面および背面を大気から遮断している。前面側はパウダー投入機5から湯面6にパウダーを投入する必要があるため、開口している。遮蔽板2の上面については、浸漬ノズル3を挿入する位置に切り欠き部を設けている。乾燥空気供給管4を通して遮蔽板2の内部に水蒸気分圧が0.010atmである乾燥空気を導入することにより、鋳型内の溶融パウダーと接する部分の水蒸気分圧を0.02atm以下とすることができた。遮蔽板2を設けて鋳造した場合について、図10の◎で示す。図10から明らかなように、Al含有量が0.015質量%未満のSiキルド鋼において、水蒸気分圧0.04atmではブレークアウト予知信号発生頻度が極めて高頻度であるのに対し、水蒸気分圧0.02atml以下の場合はブレークアウト予知信号発生頻度が激減していることがわかる。特に、Al含有量が0.010質量%以下の品種において効果が顕著である。
ブレークアウト発生頻度についても、Al含有量が0.010質量%以下の鋼を大気雰囲気で鋳造した場合には1.7%程度のブレークアウト発生頻度であったのに対し、溶融パウダーと接する雰囲気の水蒸気分圧を0.02atm以下とした場合には、どのAl含有量レベルであってもブレークアウトは一切発生しなかった。
鋼中Al含有量とブレークアウト予知信号発生率の関係を示す図である。 鋼中Al含有量と鋳造方向別鋳型内熱電対温度との関係を示す図である。 低Al品種鋳造後のパウダーフィルムの断面写真を示す図である。 鋼中Al含有量とパウダーフィルム中空隙率との関係を示す図である。 年間を通じた鋳造時期とパウダーフィルム中の(OH-)イオン濃度との関係を示す図である。 連続鋳造鋳型内のパウダー被覆面の水蒸気分圧を低減するための遮蔽板を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は横断面図である。 水蒸気分圧とパウダーフィルム中の(OH-)濃度の関係を示す図である。 水蒸気分圧とパウダーフィルム中の空隙率の関係を示す図である。 水蒸気分圧とブレークアウト予知信号発生率の関係を示す図である。 鋼中Al含有量とブレークアウト予知信号発生率の関係を示す図である。
符号の説明
1 鋳型
2 遮蔽板
3 浸漬ノズル
4 乾燥空気供給管
5 パウダー投入機
6 湯面(パウダー面)

Claims (4)

  1. Al含有量が0.015質量%未満の鋼の連続鋳造方法であって、連続鋳造鋳型内のパウダー被覆面と接する雰囲気中の水蒸気分圧を大気中の水蒸気分圧よりも低減し、水蒸気分圧を0.02atm以下とすることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
  2. 連続鋳造鋳型内のパウダー被覆面と大気との間に遮蔽板を設け、遮蔽板の内部に水蒸気分圧が0.02atm以下のガスを導入することを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造方法。
  3. 導入するガスが乾燥空気であることを特徴とする請求項2に記載の鋼の連続鋳造方法。
  4. 鋼の連続鋳造がスラブ連続鋳造であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の鋼の連続鋳造方法。
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