JP4101871B2 - スルホン酸樹脂触媒を用いるセルロースエステルの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースまたはセルロース誘導体をアシル化試薬、不溶性スルホン酸樹脂触媒及びカルボキサミド希釈剤または尿素系希釈剤と接触させることにより、DS/AGUが0.1〜3.0のセルロースエステルを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースエステル(CEs)は従来、セルロースと1個または複数の所望のエステル基に対応する1個または複数の無水物とを、希釈剤及び生成物の溶媒として対応するカルボン酸を使用して反応させることによって合成されている。
【0003】
これらの方法においては、カルボン酸を含むほとんどの有機溶媒にセルロースが不溶性であるため、反応混合物は最初は不均質である。セルロース誘導体が溶解して、所望の溶液粘度に達した時に、反応は終了する。混合物が均質になった時に、セルロースは完全にまたはほとんど完全にアシル化される。
【0004】
場合によっては、大過剰のスルホン酸触媒を使用することもできるが、この場合には生成物はセルロースアルカノエートスルフェートである。硫酸基を選択的に切断すれば、部分置換セルロースアルカノエートが得られる。しかし、同時にセルロースエステルのDP(重合度)を許容されないレベルまで低下させることなく、大DS(置換度)の硫酸エステルを除去することは極めて困難である。
【0005】
従って、従来の方法においては、部分置換セルロースエステルの合成は、別の工程における鉱酸触媒アシル化によって製造されたセルローストリエステルを所望の置換レベルまで加水分解することによって行われている。代表的には、水とカルボン酸溶媒との混合物中で加水分解を行うと、置換位置が無秩序になる(アシルの移動及びそれと同時に起こるがそれより緩慢な、新たに露出したヒドロキシル基のカルボン酸溶媒による再エステル化による)ので、生成物のエステル置換基は平衡分布(equilibrium distribution)している。
【0006】
部分置換セルロースエステルは商品価値が高い。これらは、被膜中に使用され、その比較的大きい溶解度(トリエステルに比較して)とヒドロキシル基含量(架橋を促進するため)が高く評価されている。プラスチック、繊維及びフィルムに使用する場合には、これらは部分置換CEsを合成できるために、熱的性質、機械的性質、生分解性及び相溶性の管理が可能である。
【0007】
セルロースと長鎖カルボン酸とのエステルは、ピリジン、またはこれより結果は悪いが、他の溶媒中において対応する酸塩化物でアシル化することによって製造できることは公知である。この方法はセルローストリエステルの合成にのみ有用である。例えば、Malm, et al., Ind. Eng. Chm., 1951, 43巻, 684〜688頁参照。
【0008】
米国特許第2,705,710号は、セルローストリアセテート(全置換エステル−2.9DSAc及び0.10DSスルフェート)を製造するための溶媒としてDMACを且つ触媒として硫酸を開示している。この特許に開示された反応は140℃において行われるので、非常に速い。米国特許第2,705,710号の硫酸法の欠点は、部分置換セルロースエステルを得るのに加水分解工程が必要なことである。
【0009】
米国特許第2,976,277号に示されるように、溶解したセルロースのアシル化による部分置換CEsの直接合成もまた、前に教示されている。セルロースを最初に塩化リチウムとアミド溶媒(1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)またはN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC))との混合物中に溶解させると、触媒の存在下または不存在下においてセルロースはカルボン酸無水物によってアシル化されて、無水物の添加当量にのみ依存して、部分置換または完全置換CEが得られる。長鎖カルボン酸によるセルロースのエステルはこれまでこのようにして製造されている。例えば、Carbohydrate Polymers,22巻,1〜7頁(1993)には、セルロースを、アミン触媒反応を用いて種々のカルボン酸塩化物と、又はジシクロヘキシルカルボジイミド触媒反応を用いて種々のカルボン酸とDMAC/LiCl溶液中で反応させることによって、DS 0.1〜2.5の、鎖長が炭素数18(ステアリン酸エステル)以下の酸とセルロースとのエステルが得られることが開示されている。この方法は無水物の性質及び得られる生成物のDSに関して柔軟性が大きいが、その一方、セルロースの溶解が必要だということは、反応混合物は希釈されていなければならず(5%以下のセルロース)且つセルロースの溶解に時間を要するために、本プロセスの所要時間が長くなることを意味する。実際的には、高価な塩化リチウムを高い効率で再循環する方法を開発することが必要である。この方法はまだ開示されていない。
【0010】
セルロースの長鎖(炭素鎖長は4より大きい)エステル(LCCEs)は、Ind. Eng. Chem., 43巻, 684〜691頁(1951)に示されたMalmの先駆的な仕事から知られている。カルボン酸溶媒中においてセルロースと長鎖無水物とを鉱酸触媒反応により反応させることによって、LCCEsを得ようとする取り組みはうまくいっていない。これは、エステル化速度が遅すぎ、しかも鎖の切断速度と競合できないためである。
【0011】
文献公知の他の方法は、「インペラー」試薬、例えば、クロロ酢酸無水物を使用するもの(米国特許第1,880,808号に開示)、ならびにピリジン中の、又はInd. Eng. Chem. es., 31巻, 2647〜2651頁(1991)に開示のような、長鎖酸塩化物と、長鎖酸塩化物と再生セルロースとの反応を伴うもののみである。インペラー試薬は高価で、有毒で、しかも取り扱いがむずかしい傾向がある。
【0012】
再生セルロースは高価である。酸塩化物は同様に高価である上、耐蝕性構造の反応器を必要とする。さらに、真空下でセルロースと酸塩化物を直接反応させても、均質な可溶性生成物は得られない。
【0013】
LCCEsは、加工温度が比較的低く、衝撃強さが比較的大きく、比較的極性が小さい溶媒中での溶解度が比較的高く、疎水性ポリマーとの相溶性が高いことが見込まれ、可塑剤を必要とせずに成形品または押出品の形にできる可能性があり、且つ水素塗料用の相容(associative)増粘剤として使用できる可能性があるため、商業的に重要である(セルロースの長鎖エーテル、例えば、疎水性が改質されたヒドロキシエチルセルロースでの類推によって)。
【0014】
また、米国特許第肪2,705,710号には、セルロースをN,N−ジアルキルアミドによって活性化してから従来の(鉱酸及びカルボン酸無水物)エステル化を行うことによって、過剰の切断を起こすことなく急速なエステル化を行えることが開示されている。この特許はまた、これが1.1〜1.3の範囲のインヘレント粘度(現在の多くの商業的用途に必要な値よりも小さい)を有するセルローストリアセテートの製造方法であることを開示している。
【0015】
米国特許第2,861,069号には、スルホン化ポリスチレン樹脂がセルロースをカルボン酸無水物によって対応するカルボン酸溶媒中でアシル化するための有効な触媒であることが開示されている。この方法の不利な点は、(1)大過剰量の無水物が好ましくない鎖減成を防止するのに必要であること及び(2)この方法では個々の加水分解工程を含ませなければ、完全置換エステルのみしか調製できない。
【0016】
置換が完全ではないCEsをセルロースから直接製造できる方法が当業界で必要とされていることは明らかである。この方法は、経済的、実用的で、しかも工業生産が容易でなければならない。このような方法があれば、特別な商業的用途のための充分に高い分子量を有する製品を合成することが可能であろう。長鎖エステル基を含むセルロースエステルが得られるように、この方法に長鎖無水物を使用できれば望ましい。熱によって及び/または溶解して処理されてフィルム、被膜、プラスチック及びいくつかの他の用途に有用となり得るように、製品は充分に均質であることが極めて重要である。濾過のような単純な技術によって生成物から物理的に除去でき、従って再使用のために容易に回収できる触媒を使用することが望ましい。また、作業条件に合わせた実際的且つ予測可能な調整によって製品のDS及び分子量を制御することができれば望ましい。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、不溶性スルホン酸樹脂触媒として使用して、カルボキサミド希釈剤または尿素系希釈剤(場合によっては追加の補助溶媒を含む)中のセルロースをカルボン酸無水物のようなアシル化試薬と反応させることによる、置換度(DS)が3.0未満のセルロースエステル(CEs)を製造することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、本発明は、全DS/AGUが0.1〜3.0のセルロースエステルの製造方法であって、
(i)セルロース物質、
(ii)スクシンイミド、フタルイミド及びグルタルイミドからなる群から選ばれるカルボキサミド希釈剤からなる生成セルロースエステルを可溶化する量の溶媒系、
(iii)(a)酸塩化物、及び場合によっては酸受容体、
(b)カルボン酸無水物、
(c)ジケテン、ケテン、2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン、及びアセト酢酸のエステル、
(d)カルボン酸のエステル、
及び(a)〜(d)の1種またはそれ以上の組み合わせ
からなる群から選ばれたアシル化試薬、ならびに
(iv)不溶性スルホン酸樹脂触媒
を接触させることを含んでなる製造方法に関する。この方法においては、成分(i)と(ii)とを最初に接触させ、成分(iii)及び(iv)を、任意の順序で成分(i)と(ii)との接触生成物と接触させる。
【0019】
好ましくは、本発明はセルロースエステルと長鎖カルボン酸(炭素数が4より大きい)とのエステルの製造方法に関する。
【0020】
この方法は以下の点で従来の技術より優れている:アルファ含量が比較的少ない、比較的低分子量のセルロースを使用できること、長鎖カルボン酸、場合によっては短鎖カルボン酸を用いてセルロースの部分置換または全置換エステルが合成できること、部分置換セルロースエステルを得ることができること。これらの部分置換セルロースエステルは広範囲の有機溶媒に対して優れた溶解度を有し、しかも、高分子量であることができる。本発明では、長鎖は炭素数が4より大きいことを意味し、短鎖は炭素数が4またはそれ以下であることを意味するものとする。
【0021】
【発明の効果】
本発明の方法は、プラスチック、フィルム、繊維及び被膜用のセルロースエステルの経済的な直接合成に関して広く有用である。
【0022】
【発明の実施の形態】
本明細書中で使用する用語「置換度」または「DS」もしくは「DS/AGU」は、セルロースポリマーのアンヒドログルコース環当たりのアシル置換基の平均数を意味する。
【0023】
本発明は、全DS/AGUが0.1〜3.0、好ましくは2.0〜3.0、より好ましくは2.4〜2.9のセルロースエステルの製造方法であって、
(i)セルロース物質、
(ii)カルボキサミド希釈剤または尿素系希釈剤からなる生成セルロースエステルを可溶化する量の溶媒系、
(iii)(a)酸塩化物、及び場合によっては酸受容体、
(b)カルボン酸無水物、
(c)ジケテン、ケテン、2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン、及びアセト酢酸のエステル、
(d)カルボン酸のエステル、
及び(a)〜(d)の1種またはそれ以上の組み合わせ
からなる群から選ばれたアシル化試薬、ならびに
(iv)不溶性スルホン酸樹脂触媒
を接触させることを含んでなる。成分(i)と(ii)とは通常は最初に接触させ、成分(iii)及び(iv)は、任意の順序で成分(i)と(ii)との接触生成物と接触させる。
【0024】
本発明によって製造されるセルロースエステルは、一般に以下の構造を有する:
【0025】
【化3】
【0026】
[式中、R,R′及びR″は別個に水素(ただし、R,R′及びR″は同時に全てが水素ではない);アセトアセチル;R1(CO)−(式中、R1は炭素数約1〜約30のアルキルである);構造(CH2)nCO2H(式中、nは2〜6、好ましくは2〜4である)のカルボキシアルキル;構造CR2=CR3CO2H(式中、R2及びR3は独立して、水素、メチル、炭素数約1〜約30の分枝鎖アルキル、フェニル及びナフチルからなる群から選ばれる)のカルボキシアルケニル;1〜3個の二重結合を有する、炭素数約1〜約30のアニケニル;及び1〜3個の二重結合を有する、炭素数約1〜約30の分技鎖アルケニルからなる群から選ばれる]。
【0027】
カルボキシアルケニル、アルケニル及び分枝鎖アルケニルに関しては、存在する二重結合はシスまたはトランス位であることができる。
【0028】
前記セルロースエステル構造に関して、R,R′及びR″は独立して水素、アセチル、プロピオニル及びブチリルからなる群から選ばれることが好ましい。長鎖エステルも好ましい。
【0029】
前記カルボキサミド希釈剤のカルボキサミド部分は、構造:R4R5NCOCR6R7R8(式中、R4,R5,R6,R7及びR8は独立して水素、炭素数約1〜約20のアルキル、炭素数約1〜約20の分枝鎖アルキル、置換フェニル、フェニル、置換ナフチル、ナフチル、炭素数約1〜約20のアルケニル及び炭素数約1〜約20の分技鎖アルケニルからなる群から選ばれる)を有する。
【0030】
カルボキサミド希釈剤の例は、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、またはN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)である。DMACが特に好ましい。
【0031】
スクシンイミド、フタルイミドまたはグルタルイミドのようなカルボキシアミドも希釈剤として使用できる。
【0032】
前記尿素系希釈剤の尿素部分は、構造:R9R10NCONR11R12(式中、R9,R10,R11及びR12は独立して水素、炭素数約1〜約20のアルキル、炭素数約1〜約20の分枝鎖アルキル、フェニル、ナフチル、炭素数約1〜約20のアルケニル及び炭素数約1〜約20の分枝鎖アルケニルからなる群から選ばれる)を有する。
【0033】
一般的定義の範囲内にさらに含まれる本発明の希釈剤に有用な尿素化合物は、R9及びR10の一方とR11R12の一方がつながって環状尿素を形成するもの、例えば、N,N−ジメチルイミダゾリジノンである。好ましい尿素化合物は、尿素及びN,N−ジメチルイミダゾリジノンからなる群から選ばれたものである。N,N−ジメチルイミダゾリジノンは以下の構造を有する:
【0034】
【化4】
【0035】
プロリンまたはグリシンのようなアミノ酸も希釈剤として使用できる。
【0036】
使用する溶媒対セルロースの比は中程度に広い範囲内で変化できる。
【0037】
本発明では、炭素数約1〜約20のアルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ノニル、ヘキサデシル、及びアリール置換アルキル、例えば、ベンジル、シクロアルキル、例えば、シクロヘキシルなどを含むアルキルである。炭素数約1〜約20の分枝鎖アルキルの例は、イソプロピル、イソブチル、イソノニル、tert−ブチルなどである。アルケニルの例は、プロペニル、デセニル、ペンタデセニル、(Z)−ヘプタデセ−8−エニル及び(Z,Z)−ヘプタデカジ−8,11−エニルである。分枝鎖アルケニルの例はペンタデセニルである。
【0038】
他の活性化アシル誘導体、例えば、酸塩化物も有用であり;酸塩化物の場合には場合によってはピリジン、炭酸水素ナトリウムまたは酢酸ナトリウムのような酸受容体もまた使用できる。アシル化試薬としては、ジケテン、2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン(TKD)、またはアセト酢酸のエステルを挙げることができる。Tetrahedron Letters, 1990, 31巻, 1401〜1404頁においてWitzemanによって教示されているように、tert−ブチルアセトアセテート(tBAA)は、反応性中間体、アセチルケテンを高い比率で生成するので、特に適当なアセト酢酸エステルである。
【0039】
好ましい酸塩化物は、塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化ヘキサノイル、塩化ラウロイル、塩化パルミトイル及び塩化ステアロイルである。酸塩化物の場合には、ピリジン、炭酸水素ナトリウムまたは酢酸ナトリウムのような酸受容体は場合によってはアシル化試薬と組み合わせて使用できる。
【0040】
本発明において好ましいのは、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水ヘキサン酸、無水ノナン酸、無水ラウリン酸、無水パルミチン酸及び無水ステアリン酸からなる群から選ばれるカルボン酸無水物である。
【0041】
本発明において好ましいアシル化試薬は、以下の酸からなる群から選ばれるカルボン酸のエステルである:カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、安息香酸、置換安息香酸、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸。
【0042】
本発明に関連して有用な酸受容体は、ピリジン、トリエチルアミン、炭酸水素ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選ばれる。用語「酸受容体」は一般に、塩基性物質、例えば、ルイス塩基を意味する。ピリジンが好ましい酸受容体である。
【0043】
本発明の方法によって製造される好ましいセルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートヘキサノエート、セルロースアセテートノナノエート、セルロースアセテートラウレート、セルロースパルミテート、セルロースアセテートステアレート、セルロースノナノエート、セルロースヘキサノエート、セルロースヘキサノエートプロピオネート、及びセルロースノナノエートプロピオネートが挙げられる。
【0044】
種々のセルロース供給源を本発明の実施に使用できる。本発明に有用なセルロース供給源としては、広葉樹材、針葉樹材、コットンリンター、細菌セルロース及び再生セルロースが挙げられる。
【0045】
本発明の実施に当たっては、種々のセルロース出発原料、温度、濃度、不溶性スルホン酸樹脂触媒、カルボン酸無水物、非溶媒及び反応体比を考慮に入れる。選択した条件に応じて、種々のセルロースエステルを製造できる。
【0046】
本発明の全ての面に使用する温度は、約0〜約200℃、好ましくは約100〜約180℃、より好ましくは約120〜約170℃の範囲である。
【0047】
前記水不溶性スルホン酸樹脂触媒は、濾過のような公知の方法によって反応混合物から容易に分離され、従って反覆再使用することができる。
【0048】
生成物の単離は、触媒の分離後、公知の方法によって、例えば、非溶媒(水のことが多い)を反応混合物に添加してから、濾過及び洗浄によって沈澱生成物を単離することによって行う。
【0049】
本発明において、不溶性スルホン酸樹脂触媒と、カルボキサミドまたは尿素との組み合わせを使用するが、カルボキサミドまたは尿素が活性化剤、希釈剤または溶媒として作用する。
【0050】
本発明の方法において、成分(iii):成分(iv)のモル比は、選択された反応条件下で所望のDS/AGUを生成する量である。セルロースエステルの形成に適した条件は幅広く変化させることができる。セルロースは最初に、アミド系希釈剤又は尿素系希釈剤と接触させることによって、活性化させなければならない。これは、最も単純には、セルロースのアミド系希釈剤又は尿素系希釈剤中スラリーを温度100〜180℃に加熱することによって行えるが、室温で長時間接触させることによって活性化を行うことも可能である。
【0051】
アシル化試薬は代表的には、同時に添加する。使用するアシル化試薬の全量はアンヒドログルコース単位の当量に基づき3当量から10当量まで変化させることができ、4〜6当量が最も好ましい。この全量内で、生成物中の各置換基の所望のDSが達成されるように各アシル化試薬の割合を変化させることができる。
【0052】
存在するセルロース物質の量は、前記カルボキサミドの重量に基づき約1.0〜約50%、好ましくは約9.0〜約28%であり、且つ前記不溶性スルホン酸樹脂触媒の量は、前記セルロース物質の重量に基づき約0.1〜約100%、好ましくは約5.0〜約50%である。
【0053】
本発明の方法は通常、不溶化量の非溶媒の添加によってセルロースエステルを不溶化する追加工程を含む。この方法は、不溶化セルロースエステルの分離工程を含むこともできる。
【0054】
この方法によって製造されるセルロースエステルの単離に有用であるとされる非溶媒は、個々の物質に特有である。これらは、反応溶媒及び副生成物を溶解させるが、セルロースエステルに対しては非溶媒でなければならない。例としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール及び水が挙げられる。
【0055】
本発明のセルロースエステルの製造における触媒として好ましい不溶性ポリマータイプスルホン酸は一般にスルホン酸型イオン交換樹脂として知られているものである。それらには架橋ポリマー構造に化学的に結合した活性スルホン酸ラジカルを含む。一般的には次の二つのタイプのいずれかである。
【0056】
I.ポリビニルアリール化合物及びモノビニルアリール化合物、例えば、市販のアンバーリスト(Amberlyst)XN−1010(Rohm & Haas)やダウエックス(Dowex)50−X20−200(Dow Chemical Company)のようなスチレンとジビニムベンゼンのスルホン化共重合体
II.フェノール及びホルムアルデヒドのスルホン化縮合ポリマー
【0057】
【化5】
【0058】
スルホン酸型イオン交換樹脂は水性及び非水性媒体に不溶性の高分子量ポリ酸として記述することができる。これらのイオン交換樹脂は不溶性の架橋主鎖ポリマー構造に水素イオンを存在させるスルホン酸基が固定されている。イオン交換樹脂中に存在するスルホン酸基の数は不溶性樹脂のサイズと共に触媒としての有効性を決定する。これらの二つの因子は比較的広範囲で変動することができ、かつ樹脂は触媒的性質を依然として示すが、更に詳しくはD’Alelloの米国特許第2,366,007号に記載されており、そしてKunin及びMeyersの“Ion Exchamge Resins”(John Wiley and Sons, 1950)の第5章に記載のスルホン酸イオン交換樹脂である。
【0059】
本発明の方法の生成物は、種々の目的で、例えば、プラスチック、フィルム、繊維及び被膜用として有用である。
【0060】
本発明のセルロースエステルに関しては、DSまたはDS/AGUは公知の任意の方法、例えば、プロトンNMRによって測定できる。
【0061】
【実施例】
本発明はさらに、その好ましい実施例に関する以下の例によって説明できるが、これらの実施例は説明のためにのみ記載するものであり、特に断らない限り、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。出発原料は特に説明のない限り、市販されているものである。特に説明のない限り、全ての百分率は重量に基づく。
【0062】
以下の例において、機械的撹拌機、温度計、窒素入り口及び蒸留ヘッドを装着した3つ口丸底フラスコに、セルロース及びカルボキサミド又は尿素系溶媒を添加した。スラリーを窒素下で撹拌しながら、100℃に加熱した。次いで、無水物及び触媒(アンバーリストXN−1010、セルロース4重量部当り1重量部)を活性化セルロースに添加し、混合物を反応温度に加熱した。以下の「equiv」は、セルロースのアンヒドログルコース単位当たりの試薬の当量を意味することを留意されたい。各例において、ポリマー触媒の存在を除けば、混合物は透明且つ滑らかになるまで反応温度において撹拌した。次いで、溶液を20〜80℃に冷却した。触媒を濾過によって除去した(場合によっては、反応混合物を最初にアセトンまたはアミド又は尿素希釈剤で希釈して粘度を低下させた)。強く撹拌しながら水又は水中メタノールに濾液を滴加することによって生成物を沈澱させた。生成物を濾過によって単離し、再び水又は水中メタノール中でスラリーとした。必要に応じてこのプロセスを2〜5回繰り返して、生成物から不純物全てを除去した。生成物を窒素下で40〜80℃において真空オーブン中で乾燥させた。例中に示した収率は、単離された、充分に特性決定された生成物の収率てある。DSは、数滴のトリフルオロ酢酸(全てのヒドロキシルプロトンをダウンフィールドにシフトさせるため)を含むd−6 DMSO中1H NMRによって、またはセルロースエステルのサンプルを加水分解してから、遊離カルボン酸をガスクロマトグラフィーによって定量化することによって測定した。ゲル透過クロマトグラフィーは、溶媒としてNMPを使用した(ポリスチレン対照)。極限粘度数をフェノール/テトラクロロエタン(60/40)溶液中で測定した。示差走査熱量法(20℃/分、二次走査、最大温度240℃)を用いて、Tgを測定した。硫黄含量は、X線フルオレッセンスによって測定した。各群の物質の代表的要素を赤外線分光法によって調べ、生成物の同一性を確認した。全ての温度は℃で表した。
【0063】
例1
以下に列挙した試薬を、以下に記載した以外は標準反応条件下で前記標準法に供した。目的セルロースエステルの同一性に関する結果と生成物のキー分析も以下に示す。
セルロース Natchez HVX(Mississippi, NatchezのInternational Paperから入手できる広葉樹材パルプ)
カルボン酸無水物 無水酢酸
当量 6
反応温度 120℃
アミド希釈剤 DMAC
gアミド/gセルロース 10
反応時間 5.3時間
キー分析 DS(アセチル)=2.88, I.V.=2.48, GPC Mn=125,000, DMSO及びNMP中に可溶、硫黄含量=224ppm。
この例は、有機溶媒中において優れた溶解度を有する部分置換高分子量セルロースアセテートの、セルロースからの直接合成を説明する。
【0064】
例2
以下に列挙した試薬を、以下に記載した以外は標準反応条件下で前記標準法に供した。目的セルロースエステルの同一性に関する結果と生成物のキー分析も以下に示す。
セルロース Natchez HVX
カルボン酸無水物 無水プロピオン酸
当量 6
反応温度 150℃
アミド希釈剤 DMAC
gアミド/gセルロース 10
反応時間 1.6時間
キー分析 DS(プロピオニル)=2.58, I.V.=1.42, GPC Mn=52,300, Tg=101℃, DMSO及びNMP中に可溶、硫黄含量=285ppm。
この例は、有機溶媒中において優れた溶解度を有する非晶質で比較的高分子量の部分置換セルロースプロピオネートの、セルロースからの直接合成を説明する。
【0065】
例3
以下に列挙した試薬を、以下に記載した以外は標準反応条件下で前記標準法に供した。目的セルロースエステルの同一性に関する結果と生成物のキー分析も以下に示す。
セルロース Natchez HVX
カルボン酸無水物 無水プロピオン酸
当量 4.22
反応温度 135℃
アミド希釈剤 DMAC
gアミド/gセルロース 5
反応時間 4.4時間
キー分析 DS(プロピオニル)=2.67, I.V.;0.82, GPC Mn=36,500, Tg=127℃, Tm=233℃、DMSO及びNMP中に可溶。
この例は、無水物の量を操作することによる分子量の制御、極く僅か過剰の無水物を使用することの潜在性、部分的に結晶性プロピオン酸セルロースを合成する能力、より少ない量のアミド希釈剤の使用を説明する。
【0066】
例4(比較例)
以下に列挙した試薬を、以下に記載した以外は標準反応条件下で前記標準法に供した。目的セルロースエステルの同一性に関する結果と生成物のキー分析も以下に示す。
セルロース Natchez HVX
カルボン酸無水物 無水酢酸
当量 3.97
カルボン酸 酢酸
g/gセルロース 15.7
反応温度 118℃
アミド希釈剤 なし
gアミド/gセルロース 0
反応時間 0.5時間
キー分析 DS(アセチル)=3.02, I.V.=0.26, GPC Mn=18,000, DMSO及びNMP中に可溶、硫黄含量=117ppm。
この例は、アミド希釈剤の不存在下に、低分子量で全置換の酢酸セルロース生成物が得られ、この生成物は有機溶媒に対して非常に限られた溶解度を有するものであることを説明する。
【0067】
例5(比較例)
以下に列挙した試薬を、以下に記載した以外は標準反応条件下で前記標準法に供した。目的セルロースエステルの同一性に関する結果と生成物のキー分析も以下に示す。
セルロース Natchez HVX
カルボン酸無水物 無水プロピオン酸
当量 4.22
カルボン酸 プロピオン酸
g/gセルロース 9.93
反応温度 100℃
アミド希釈剤 なし
gアミド/gセルロース 0
反応時間 3.1時間
キー分析 DS(プロピオニル)=3.04, I.V.=0.16, GPC Mn=5,900, Tg=76℃, Tn=206℃、アセトン、酢酸、THF、DMSO及びNMP中に可溶。
この例は、アミド希釈剤の不存在下に、低分子量で全置換のプロピオン酸セルロースが得られることを説明する。
【0068】
例6(参考例)
以下に列挙した試薬を、以下に記載した以外は標準反応条件下で前記標準法に供した。目的セルロースエステルの同一性に関する結果と生成物のキー分析も以下に示す。
セルロース Natchez HVX
カルボン酸無水物 無水プロピオン酸
当量 6.00
反応温度 150℃
アミド希釈剤 NMP
gアミド/gセルロース 10.33
反応時間 8.6時間
キー分析 DS(プロピオニル)=3.09, I.V.=0.80, GPC Mn=43,500, Tg=109℃, Tm=237℃、アセトン、酢酸、THF、クロロホルム、DMSO及びNMP中に可溶。
この例は、NMP希釈剤を用いて、結晶性で、全置換の高可溶性の中程度の分子量を有するセルロースプロピオネート製品が得られることを説明する。
【0069】
例7
以下に列挙した試薬を、以下に記載した以外は標準反応条件下で前記標準法に供した。目的セルロースエステルの同一性に関する結果と生成物のキー分析も以下に示す。
セルロース Natchez HVX
カルボン酸無水物 無水プロピオン酸
当量 4.00
アセトアセチル化試薬 ジケテン
当量 1.0
反応温度 120℃
アミド希釈剤 DMAC
gアミド/gセルロース 9.37
反応時間 11.9時間
キー分析 DS(プロピオニル)=2.54, DS(アセトアセチル)=0.79、(高い合計DSは或る量のエノールプロピオネートによるものと思れる)I.V.=1.22, GPC Mn=44,400, Tg=122℃、THF、酢酸、アセトン、CHCl3、DMSO及びNMP中に可溶。
この例は、アミド希釈剤を用いることによってアセトアセチル基を含む混合エステルを合成できることを説明する。
【0070】
例8
以下に列挙した試薬を、以下に記載した以外は標準反応条件下で前記標準法に供した。目的セルロースエステルの同一性に関する結果と生成物のキー分析も以下に示す。
セルロース Natchez HVX
カルボン酸無水物1 無水酢酸
当量 2.0
カルボン酸無水物2 無水ヘキサン酸
当量 2.0
反応温度 150℃
アミド希釈剤 DMAC
gアミド/gセルロース 9.37
反応時間 2.6時間
キー分析 DS(アセチル)=1.70, DS(ヘキサノイル)=0.80, I.V.=1.18, GPC Mn=45,100、アセトン、酢酸、THF、CHCl3, DMSO及びNMP中に可溶、Tg=91℃、Tm=196℃。
この例は、セルロースから一つが長鎖エステル基を含むものである部分置換混合セルロースエステルの直接合成を説明する。
【0071】
例9
以下に列挙した試薬を、以下に記載した以外は標準反応条件下で前記標準法に供した。目的セルロースエステルの同一性に関する結果と生成物のキー分析も以下に示す。
セルロース Natchez HVX
カルボン酸無水物1 無水酢酸
当量 2.0
カルボン酸無水物2 無水ラウリン酸
当量 2.0
反応温度 160℃
アミド希釈剤 DMAC
gアミド/gセルロース 9.37
反応時間 1.1時間
キー分析 DS(アセチル)=1.95, DS(ラウロイル)=0.61, I.V.=1.03, GPC Mn=39,900、アセトン、THF、CHCl3及びNMP中に可溶、Tg=104℃, Tm=215℃。
この例は、有機溶媒への溶解度が良好な、エステル基の1つが長鎖エステルである部分置換混合セルロースエステルの、セルロースからの直接合成を説明する。
【0072】
本発明を、特にその好ましい実施態様に関して詳述したが、発明の精神及び範囲内で変更及び修正が可能なことを理解されたい。さらに、前述の全ての特許、特許出願(公告または未公告、外国または国内)、参考文献または他の刊行物は、本発明の実施に関連した開示のために参照することによって本明細書中に取り入れる。
Claims (51)
- (i)セルロース物質、
(ii)スクシンイミド、フタルイミド及びグルタルイミドからなる群から選ばれるカルボキサミド希釈剤からなる生成セルロースエステルを可溶化する量の溶媒系、
(iii)(a)酸塩化物、及び場合によっては酸受容体、
(b)カルボン酸無水物、
(c)ジケテン、ケテン、2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン、及びアセト酢酸のエステル、
(d)カルボン酸のエステル、
並びに(a)〜(d)の1種またはそれ以上の組み合わせ
からなる群から選ばれるアシル化試薬、ならびに
(iv)不溶性スルホン酸樹脂触媒
を接触させることを含んでなる、全DS/AGUが0.1〜3.0のセルロースエステルの製造方法であって、成分(i)と(ii)とを最初に接触させ、成分(iii)及び(iv)を、任意の順序で成分(i)と(ii)との接触生成物と接触させる製造方法。 - 前記セルロースエステルが構造
を有する請求項1に記載の方法。 - 前記カルボキシアルキルのmが2〜4である請求項2に記載の方法。
- R,R′及びR″が独立して水素、アセチル、プロピオニル及びブチリルから選ばれる請求項2に記載の方法。
- セルロース物質の量がカルボキサミドの重量に基づき1.0〜50%であり、且つ不溶性スルホン酸樹脂触媒の量がセルロース物質の重量に基づき0.1〜100%である請求項1に記載の方法。
- セルロース物質の量がカルボキサミドの重量に基づき9〜28%であり、且つ不溶性スルホン酸樹脂触媒の量がセルロース物質の重量に基づき5.0〜50%である請求項1に記載の方法。
- セルロースエステルの全DS/AGUが2.0〜3.0である請求項1に記載の方法。
- セルロースエステルの全DS/AGUが2.4〜2.9である請求項1に記載の方法。
- 前記アセト酢酸エステルがアセト酢酸tert−ブチルである請求項1に記載の方法。
- 前記カルボン酸無水物が、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水ヘキサン酸、無水ノナン酸、無水ラウリン酸、無水パルミチン酸及び無水ステアリン酸からなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
- 前記カルボン酸エステルが、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、安息香酸、置換安息香酸、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸からなる群から選ばれた酸から形成されたエステルである請求項1に記載の方法。
- 前記酸塩化物が、塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化ヘキサノイル、塩化ラウロイル、塩化ステアロイルからなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
- 前記酸受容体が、ピリジン、トリエチルアミン、炭酸水素ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
- 前記酸受容体がピリジンである請求項1に記載の方法。
- 前記不溶性スルホン酸樹脂触媒が、ポリビニルアリール化合物及びモノビニルアリール化合物からなる混合物のスルホン化ポリマーである請求項1に記載の方法。
- 前記不溶性スルホン酸樹脂触媒がスチレン及びジビニルベンゼンのスルホン化コポリマーである請求項1に記載の方法。
- 前記不溶性スルホン酸樹脂触媒がフェノール及びアルデヒドのスルホン化縮合ポリマーである請求項1に記載の方法。
- 前記不溶性スルホン酸樹脂触媒がフェノール及びホルムアルデヒドの縮合ポリマーである請求項1に記載の方法。
- 前記セルロース物質が、広葉樹材パルプ、針葉樹材パルプ、コットンリンター、細菌セルロース及び再生セルロースからなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
- 0〜200℃の温度で実施する請求項1に記載の方法。
- 100〜180℃の温度で実施する請求項1に記載の方法。
- 回収及び再使用のために、濾過によって不溶性スルホン酸樹脂触媒を分離する追加の工程を含む請求項1に記載の方法。
- 不溶化量の非溶媒を添加することによってセルロースエステルを不溶化させる追加の工程を含む請求項1に記載の方法。
- 不溶化セルロースエステルを分離する工程をさらに含んでなる請求項23に記載の方法。
- 前記非溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、水またはそれらの混合物である請求項23に記載の方法。
- (i)セルロース物質、
(ii)尿素系希釈剤の尿素系化合物が構造:R9R10NCONR11R12(式中、R9,R10,R11及びR12は独立して水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20の分枝鎖アルキル、フェニル、ナフチル、炭素数1〜20のアルケニル及び炭素数1〜20の分枝鎖アルケニルからなる群から選ばれるか、又はR9及びR10の一つ及びR11及びR12の一つが結合して環状炭素を形成する)を有する尿素系希釈剤からなる生成セルロースエステルを可溶化する量の溶媒系、
(iii)(a)酸塩化物、及び場合によっては酸受容体、
(b)カルボン酸無水物、
(c)ジケテン、ケテン、2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン、及びアセト酢酸のエステル、
(d)カルボン酸のエステル(ここでカルボン酸のエステルはカプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、安息香酸、置換安息香酸、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸からなる群から選ばれた酸から形成されたエステルである)
並びに(a)〜(d)の1種またはそれ以上の組み合わせ
からなる群から選ばれたアシル化試薬、ならびに
(iv)不溶性スルホン酸樹脂触媒
を接触させることを含んでなる、全DS/AGUが0.1〜3.0のセルロースエステルの製造方法であって、成分(i)と(ii)とを最初に接触させ、成分(iii)及び(iv)を、任意の順序で成分(i)と(ii)との接触生成物と接触させる方法。 - 前記セルロースエステルが構造
を有する請求項26に記載の方法。 - 前記カルボキシアルキルのmが2〜4である請求項27に記載の方法。
- R9及びR10の一方とR11及びR12の一方をつなげて環状尿素を形成する請求項26に記載の方法。
- R,R′及びR″が独立して水素、アセチル、プロピオニル及びブチリルから選ばれる請求項27に記載の方法。
- セルロース物質の量が尿素系化合物の重量に基づき1.0〜50%であり、且つ不溶性スルホン酸樹脂触媒の量がセルロース物質の重量に基づき0.1〜100%である請求項27に記載の方法。
- セルロース物質の量が尿素系化合物の重量に基づき9〜28%であり、且つ不溶性スルホン酸樹脂触媒の量がセルロース物質の重量に基づき5.0〜50%である請求項31に記載の方法。
- セルロースエステルの全DS/AGUが2.0〜3.0である請求項26に記載の方法。
- セルロースエステルの全DS/AGUが2.4〜2.9である請求項33に記載の方法。
- 前記尿素系化合物がN,N−ジメチルイミダゾリジノンである請求項27に記載の方法。
- 前記アセト酢酸エステルがアセト酢酸tert−ブチルである請求項26に記載の方法。
- 前記酸塩化物が、塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化ヘキサノイル、塩化ラウロイル、塩化ステアロイルからなる群から選ばれる請求項26に記載の方法。
- 前記酸受容体が、ピリジン、トリエチルアミン、炭酸水素ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選ばれる請求項26に記載の方法。
- 前記不溶性スルホン酸樹脂触媒が、スチレン及びジビニルベンゼンのスルホン化コポリマーである請求項26に記載の方法。
- 前記不溶性スルホン酸樹脂触媒がフェノール及びアルデヒドのスルホン化縮合ポリマーである請求項26に記載の方法。
- 前記不溶性スルホン酸樹脂触媒が、ポリビニルアリール化合物及びモノビニルアリール化合物からなる混合物のスルホン化ポリマーである請求項26に記載の方法。
- 前記不溶性スルホン酸樹脂触媒がフェノール及びホルムアルデヒドの縮合ポリマーである請求項40に記載の方法。
- 前記セルロース物質が、広葉樹材パルプ、針葉樹材パルプ、コットンリンター、細菌セルロース及び再生セルロースからなる群から選ばれる請求項26に記載の方法。
- 0〜200℃の温度で実施する請求項26に記載の方法。
- 100〜180℃の温度で実施する請求項26に記載の方法。
- 回収及び再使用のために、濾過によってスルホン酸触媒を分離する追加工程を含む請求項26に記載の方法。
- 前記酸受容体がピリジンである請求項26に記載の方法。
- 不溶化量の非溶媒を添加することによってセルロースエステルを不溶化させる追加の工程を含む請求項26に記載の方法。
- 不溶化セルロースエステルを分離する工程をさらに含んでなる請求項48に記載の方法。
- 前記非溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、水またはそれらの混合物である請求項48に記載の方法。
- 前記接触の後の、生成エステル化セルロースが全DS/AGU 3.0未満であり、そしてこの部分エステル化セルロースを当該接触又はそれに続く工程で加水分解しない請求項1又は26に記載の方法。
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