JP4101460B2 - フッ素原子を有するポリスルホンを含む抗血栓性に優れた医療用材料 - Google Patents

フッ素原子を有するポリスルホンを含む抗血栓性に優れた医療用材料 Download PDF

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、フッ素原子を有するポリスルホンを含む抗血栓性に優れた医療用材料に関する。さらに詳しくはフッ素原子およびポリアルキルエーテル単位を持つポリスルホンを含む人工腎臓用中空糸膜等に好適な、血液と接触して使用するための医療用材料に関する。
【0002】
【背景技術】
近年、合成高分子材料は、人工臓器、カテーテルをはじめとする医療用材料に広く用いられている。その代表的なものは、医療用高分子材料としてはポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ポリメタクリル酸エステル及び含フッ素樹脂などの疎水性高分子や、ポリビニルアルコール、ポリエーテルウレタン(セグメント化ポリウレタン、SPU)、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)及びポリアクリルアミドなどの親水性高分子である。これら従来の材料の大部分が、主に物理的、機械的特性に着目して使用されてきた中において、SPUに関しては、比較的抗血栓性に優れることが知られている。
【0003】
一方、医療技術の進歩に伴って、生体組織や血液と材料が接触する機会はますます増加しており、材料の生体親和性が大きな問題となってきている。中でも蛋白質や血球などの生体成分が材料表面に吸着し、変性することは、血栓形成、炎症反応などの、通常では認められない悪影響を生体側に引き起こすばかりでなく、材料の劣化にもつながり、医療用材料の根本的かつ緊急に解決せねばならない重要な課題である。材料表面での血液凝固の防止に関しては、従来ヘパリンに代表される血液抗凝固剤の連続投与が行われてきたが、最近長期にわたるヘパリン投与の影響(脂質代謝異常などの肝臓障害、出血時間の延長あるいはアレルギー反応等の副作用)が問題となってきており、特に血液透析、血液濾過などの血液浄化をうける慢性腎不全患者の血液透析療法に関して、抗凝固剤を必要としない血液接触材料の開発が強く望まれるようになってきた。
【0004】
現在、日本における血液浄化法適用患者は10万人を超える。血液浄化の原理は、血液と透析液とを膜を介して接触させ、血液中の老廃物や代謝産物を透析液中に拡散除去し、更に余剰の水分を圧力差を利用して取り除くことによる。血液浄化を行う場合には血液浄化器が用いられている。これは中空糸を束ねた血液回路がハウジングに納められているもので、中空糸の内部を血液が、外側を透析液が流れる構造となっている。血液浄化器用の透析膜素材としては、従来より再生セルロース膜、とりわけ銅アンモニウム法再生セルロース膜が広く用いられており、透析装置や透析技術の進歩と共に腎不全患者の延命、社会復帰に大きな役割を果たしている。これは、再生セルロース膜が優れた透析性能や機械的強度を有すると共に、長年の実績に裏付けられた高い安全性を有しているからに他ならない。しかしその一方で、血液透析療法の進展にも拘らず、透析に伴う種々の問題が今なお未解決であるのも事実である。その主たるものは、一つにセルロースポリマーによる血液中の補体活性化に伴なう一過性白血球減少があり、そして二つ目に、抗凝固剤の長期大量投与のために生じると考えられる種々の副作用がある。先述のように、血液透析を行う場合には、血液浄化器内での血液凝固反応を抑制するためにヘパリンに代表される血液抗凝固剤の連続投与が行われてきた。しかしながら、血液浄化器の溶質除去性能が改良され、20年に及ぼうとする長期延命が可能となってきた現在、ヘパリンを使用することによる問題が次々と指摘されてきている。特に長期にわたるヘパリン投与により、脂質代謝異常などの肝臓障害、出血時間の延長あるいはアレルギー反応等の副作用を併発することが認められている。このような観点から、血液浄化療法の際に抗凝固剤の使用量を低減させるか、あるいは全く使用しなくても血液凝固を引き起こさない、すなわち、抗血栓性を備えた血液浄化器の開発が強く望まれるようになってきた。更に、抗血栓性の血液浄化器は、装置全体のポータブル化も可能にし、一週間に2〜3日間、5時間程度病院に拘束されている患者の社会復帰を促し、そのクオリティオブライフの向上にもつながることになる。
【0005】
再生セルロース膜の他の優れた性能を損なわず、補体活性化の抑制又は抗血栓性を改善する方法も幾つか提案されている。例えば補体活性化抑制に関しては、第三級アミノ基を有する高分子の表面固定、ポリエチレンオキシド鎖のような親水性高分子を表面に共有結合によりグラフトする方法等も報告され、ある程度の補体活性化抑制の効果は確認されている。しかしながら、血液凝固の抑制(抗血栓性)までは不十分であり、固定化方法の煩雑さによる高コスト化、均質な固定化表層の獲得の困難さといった面で問題も多く、実用化されていない。(例えば特開昭51−194号公報、特開昭54−77497号公報)
前記のポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸エステルといった疎水性高分子材料、ポリビニルアルコール、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)などの親水性高分子材料は、いずれも機械的強度、生体親和性等において満足できるものではない。
【0006】
更にセグメント化ポリウレタンは、剛直な芳香族ウレタン結合部位と柔軟なポリエーテル結合部位の間のミクロ相分離構造により血小板粘着が抑制されるが、その効果は必ずしも十分ではない。特にウレタン結合やウレア結合のように水素結合性の部分構造は、分子鎖の剛直性向上に寄与するものの、主鎖の極性基間の相互作用が強いため、疎水性相互作用を軽減しうる水分子の水和が阻害される。
従って血中タンパクが吸着した際にタンパクの変性を誘起、血小板粘着を促進することが報告されている。そもそも一般には水酸基、アミノ基といった極性部位は、血液接触時に補体活性化(第二経路)を誘発し、フィブリン形成促進による血栓形成の要因ともなる。
【0007】
更に、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等の合成高分子からなる膜では、再生セルロース膜に比べ補体活性化抑制等の血液適合性に優れるといった報告が近年なされているが、抗血栓性は不十分であり、抗凝固剤の使用を低減するには至っていない。
【0008】
半合成高分子であるセルローストリアセテート膜は、これらセルロースと合成高分子の長所を合せ持ち、再生セルロースに比べ補体活性抑制能が高く、同時に透水性と物質透過性のバランスに優れる。また十分な機械的強度を有するため、ピンホールの発生も少なく、現在再生セルロースに代わる透析膜素材として研究開発が進められており、治験臨床でも十分な性能が確認されている。ただしこのセルローストリアセテート膜に関しても、抗血栓性に関しては不十分であり、抗凝固剤の使用を低減しうる新規な抗血栓性膜の開発が望まれている。
【0009】
特公平4−75052号公報には、吸水率1.0%以下の縮合糸、疎水性ポリマー成分とポリオキシアルキレンとからなるブロック共重合体を溶融紡糸しドラフト又は延伸により糸の長さ方向に配向を与えてなる血液透過用選択透過性の中空糸が開示されている。上記縮合糸疎水性ポリマー成分の1つとしてポリスルホン類が開示されているが、具体的には何も開示されていない。
【0010】
特開平8−302018号公報には、下記式(I)
−(−O−E−O−Ar−SO−Ar−)−W− (I)
[ここで、Eは2価のジフェノレート基であり、ArおよびArは炭素数6〜50の、同一もしくは異なる2価の芳香族基であり、そしてWは少なくとも2つのヒドロキシル基を有しかつ平均分子量(Mn)400〜30,000を有するポリエーテル、ポリチオエーテルまたはポリアセタールを表わす、但し全ブロック共重合体中の基Wの割合が5〜99重量%に相当する,]
の如き反復構造単位を有するポリスルホン/ポリエーテルブロック共重縮合物が開示されている。上記式(I)で表される反復構造単位は基Eと基Wの合計2モルに対し−Ar−SO−Ar−が1モルの割合でこれらの単位を含有する点で、本願発明で対象とするポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体と相違する。
【0011】
ところで、本発明者等は血液適合性に優れ、特に抗血栓性が良好なポリマー材料の研究をおこなってきた。そして、ポリアルキルエーテル単位を含む特定のポリスルホンおよびポリケトンが高い抗血栓性を示すことを見出している(ヨーロッパ公開公報EP781795号)。しかしながら、該ポリマーのその性能は、安定性の面で十分とはいえなかった。
【0012】
本発明の目的は、抗血栓性に優れた、血液と接触して使用するための医療用材料を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、フッ素原子を有する新規なポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体(A)を素材の一部として含有する、血液と接触して使用するための医療用材料を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、本発明の上記共重合体(A)を含むポリマー組成物で構成される医療用材料を提供することにある。
【0015】
本発明の目的は、本発明の上記医療用材料を構成するフッ素原子を有する新規なポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体(A)を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は本発明の医療用材料を製造する工業的に有利な方法を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
本発明によれば、本発明の上記目的は、
ポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体(A)とセルロース・トリアセテート
(B)とで構成されている、血液と接触して使用されるための医療用材料であって、少なくとも血液と接触して使用される表面を持つ部分の表面近傍における該共重合体(A)の濃度が少なくとも40重量%である医療用材料であり、かつ該共重合体(A)は、(a)下記式(1)〜(3)
−(−Ar−SO−Ar−O−)− (1)
−(−Ar−Y−Ar−O−)− (2)
−(−RO−)− (3)
(ここで、ArおよびArはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の2価の芳香族基であり、Ar及びArはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の2価の芳香族基であり、Yは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された炭素数1〜18のアルキレン基であり、Rは炭素数2または3のアルキレン基であるか、炭素数2または3のアルキレン基と炭素数4のアルキレン基との組み合わせであり、そしてkは−(−RO−)−で示される単位の分子量が400〜20,000の範囲にある数である)
で示される構成単位から実質的になり、上記式(1)、(2)及び(3)で表される構成単位の合計量に基づき、上記式(3)で表わされる構成単位が40〜70重量%を占め、上記式(2)で表わされる構成単位に基づき、上記式(1)で表わされる構成単位が30〜60モル%を占め、そしてフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの重量比が6/4の混合溶媒中で濃度1.2g/dl、35℃で測定した還元粘度が少なくとも0.5dl/gであるフッ素原子を有するポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体(A)であることを特徴とする抗血栓性に優れた医療用材料によって達成される。
本発明の血液と接触して使用されるための医療用材料は、ポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体(A)とセルロース・トリアセテート(B)とで構成されてなる。そして、本発明によれば、血液と接触して使用される表面を持つ部分の表面近傍における該共重合体(A)の濃度が、少なくとも40重量%とすることにより、非常に抗血栓性に優れた医療用材料が提供される。
【0018】
少なくとも血液と接触して使用される表面を持つ部分の表面は、例えば該共重合体(A)とセルロース・トリアセテート(B)との組成物で構成されていてもよく、該ポリマー(B)の上に、形成された該共重合体(A)から構成されていてもよい。形成方法は、例えば溶媒を用いたコーティング法、溶融法等を挙げることができる。
【0019】
本発明のポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体(A)は、上記式(1)、(2)および(3)で表わされる構成単位から実質的に構成される。
【0020】
式(1)におけるArおよびArは、同一もしくは異なり、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の2価の芳香族基である。これらの芳香族基としては、例えばp−フェニレン、m−フェニレン、2,6−ナフチレン、2,7−ナフチレン、1,4−ナフチレン、1,5−ナフチレン、4,4′−ビフェニレン、2,2′−ビフェニレン、4,4′−オキシレンジフェニレン、4,4′−イソプロピリデンジフェニレン、4,4′−イソプロピリデン−2,2′,6,6′−テトラメチルジフェニレン、4,4′−スルホニルジフェニレン等を例示することができる。これらのうち、p−フェニレン、m−フェニレン、2,6−ナフチレン等の炭素数6〜10の芳香族炭化水素基が好ましく、p−フェニレンがより好ましい。ArおよびArは同時にp−フェニレンであることが好ましい。
【0021】
式(2)におけるArおよびArは、同一もしくは異なり、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の2価の芳香族基である。これらの芳香族基としては、上記式(1)で挙げたものと同じものを例示することができる。
【0022】
式(2)におけるYは、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された炭素数1〜18のアルキレン基であり、例えば1,3−ジフルオロイソプロピリデン、1,1,3−トリフルオロイソプロピリデン、1,3,3−トリフルオロイソプロピリデン、1,1,3,3−テトラフルオロイソプロピリデン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロイソプロピリデン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロイソプロピリデン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピリデン、トリフルオロメチルメチレン、モノフルオロイソプロピリデンがあげられる。Yは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された炭素数2〜6のアルキレン基が好ましく、フッ素原子数は好ましくは1〜6個、より好ましくは2〜5個であり、アルキレン基の炭素数はより好ましくは2または3である。
このうちYとしては、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピリデン、トリフルオロメチルメチレンが特に好ましい。
【0023】
また、式(3)においてRは炭素数2または3のアルキレン基であるか、炭素数2または3のアルキレン基と炭素数4のアルキレン基との組合せである。かかる炭素数2または3のアルキレン基としては、例えばエチレン、プロピレン、トリメチレンを例示することができる。Rとしてはこれらのうち特にエチレンが好ましい。炭素数4のアルキレン基としてはテトラメチレン基を例示することができる。Rは単独の構造でもよいし、二種以上の組み合わせの構造であってもよい。炭素数2または3のアルキレン基と炭素数4のアルキレン基との組み合わせの場合、炭素数4のアルキレン基の割合は80モル%以下、好ましくは60モル%以下である。また、kは−(−RO−)−で示されるポリオキシアルキレン構造単位の分子量が400〜20,000となるような数を示す。ポリオキシアルキレン構造の分子量は、好ましくは600〜15,000、より好ましくは800〜10,000、特に好ましくは1,000〜6,000である。
【0024】
上記共重合体(A)は、(a)下記式(11)〜(31)
−(−Ar11−SO−Ar21−O−)− (11)
−(−Ar31−Y−Ar41−O−)− (21)
−(−RO−)− (31)
(ここで、Ar11およびAr21はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基であり、Ar31及びAr41はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基であり、Yは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された炭素数2〜6のアルキレン基であり、Rはエチレン基であり、そしてkは−(−RO−)−で示される単位の分子量が1000〜6,000の範囲にある数である)
で示される構成単位から実質的になるものが好ましい。この中で、特にAr、Ar、Ar及びArはp−フェニレン基であり、Yは、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピリデンであるものが特に好ましい。
【0025】
さらに、上記共重合体(A)において、式(31)中の構造単位は−(−OR−)−を式(1)および式(21)の繰返し単位の合計重量に基づき40〜70重量%で含有する。10重量%未満では得られる共重合体の疎水性が高過ぎ、乾燥フィルムとした場合水との濡れが十分でなく、また90重量%を超えるときには、得られる共重合体の親水性が高すぎ、水中へ溶出したり、著しく膨潤したりあるいは機械的強度も十分でなくなる。構造単位−(−OR−)−は同じ基準に対し30〜80重量%が好ましく、40〜70重量%がより好ましい。
【0026】
上記共重合体(A)は、例えば、下記式(4)及び(5)
−(−Ar−SO−Ar−O−Ar−Y−Ar−O−)− (4)
−((−RO−)−Ar−Y−Ar−O−)− (5)
で表わされる繰り返し単位、あるいは下記式(4)及び(6)
−(−Ar−SO−Ar−O−Ar−Y−Ar−O−)− (4)
−((−RO−)−Ar−SO−Ar−O−)− (6)
で表わされる繰り返し単位、あるいは下記式(7)及び(6)
−(−Ar−SO−Ar−O−)− (7)
−((−RO−)−Ar−SO−Ar−O−)− (6)
で表わされる繰り返し単位からなるものが含まれる。
(ここで、Ar、Ar、Ar、Ar、Y、R、kの定義は上記と同じ)
さらに、本発明の共重合体(A)はフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの重量比が6/4の混合溶媒中1.2g/dlの濃度で、35℃で測定した還元粘度が少なくとも0.5dl/gである。0.5dl/g未満の場合には、得られる共重合体の機械的強度が不充分となる。好ましい還元粘度は少なくとも1.0dl/gであり、より好ましくは1.0〜3.0dl/gである。
【0027】
本発明の共重合体(A)は、その性質が本質的に変化しない範囲(例えばポリマーの20重量%以下、好ましくは10重量%以下)で他の成分を共重合成分として含有していてもよい。共重合させる他の成分としては、例えば、エチレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位、エチレンナフタレート単位等を主たる繰り返し単位とするポリエステル、ジフェニルスルホンを主たる繰り返し単位とするポリエーテルスルホン、ジフェニルスルホンとビスフェノールAの縮合物を主たる繰り返し単位とするポリスルホン、ビスフェノールAの炭酸エステルを生る繰り返し単位とするポリカーボネート等、これらを構成するモノマー成分等を挙げることができる。
【0028】
上記共重合体(A)は、セルロース・トリアセテート(B)と混合して用いるときは、溶解性パラメーターが特定の範囲にあると(B)との相溶性が向上し、得られるポリマー組成物で構成される医療用材料の抗血栓性、機械特性が良好である。δがこの範囲より小さすぎても大きすぎても、セルロース・トリアセテート(B)との相溶性が不十分で両者は微細に(サブミクロンオーダーで)混合分散したブレンド体を形成せずに巨視的(ミクロンオーダー以上のサイズ)で分離し、その機械的特性が損なわれるため好ましくない。
ここでδは下記式(8)で示される。
δ=ρ・ΣFi/M (8)
ただしρはポリマーの密度、Mはポリマーの繰り返し単位構造の分子量、ΣFiはモル吸引力定数の総和で各部分構造に固有の値の合計である。
【0029】
すなわち物性が既知のポリマーではこれら各変数も公知であり、δを容易に求めることができる。(例えば、書籍:「ポリマーブレンド」、秋山三郎、井上隆、西敏夫共著、株式会社シーエムシー、文献:K.L.Hoy,J.Paint
Technol,42,76(1970)) 一般のポリマーのδは分子構造、及びポリマーが共重合体の場合その共重合組成により変化する。セルロース・トリアセテート(B)に対し、そのδ値が近接した上記共重合体(A)ほど、ポリマーと相溶し易いといえる。一般に相溶性が高いポリマーブレンドほど、一方のポリマーの機械特性が変化しにくいと考えられる
【0030】
本発明の共重合体(A)は、従来公知の方法、例えば下記のようにして製造することができる。
(i)ビス(ハロアリール)スルホン、α,ω−ビス(ハロアルコキシ)ポリオキシアルキレンおよびジヒドロキシアリール化合物とを、アルカリの存在下、加熱反応せしめる。
(ii)ビス(ハロアリール)スルホン、α,ω−ビス(ヒドロキシ)ポリオキシアルキレンおよびジヒドロキシアリール化合物とを、アルカリの存在下、加熱反応せしめる。
【0031】
しかしながら製造方法は、特にこれらに限定するものではない。
かくして得られる本発明の共重合体(A)は、ヒト血漿に37℃で一時間接触した時のMicroBCA法により測定した蛋白吸着量が非常に少なく、0.7μg/cm以下であり、血漿溶液に接したときの血液中の蛋白および血小板の粘着等に対して極めて優れた吸着抑制効果を有する。この理由については、以下のように考えられる。上記共重合体は、剛直部位であるポリアリールスルホンユニット(ハード成分)及びポリマー主鎖中に固定された親水性ポリオキシアルキレンユニット(ソフト成分)を有しており、これら親水性セグメントと疎水性ポリアリールスルホンセグメント双方は熱力学的にのみならず、巨視的に相分離した表面構造を特徴とする。かかるポリマーには主鎖中に水素結合供与基が存在しないため、主鎖間の相互作用が小さく、該親水性ポリオキシアルキレンユニットのドメインには、疎水性相互作用を逓減しうる水分子の接触が容易に起こる。従ってドメインのパターンに基づく生体蛋白の表面への選択的吸着が起こり、吸着蛋白は表面で変性することがない。この結果、ポリマー表面は正常蛋白が単分子層で表面吸着した状態となり、それ以上の生体成分(赤血球、白血球および血小板)の粘着が抑制される。また補体活性化、血栓形成、細胞膜損傷等の有害な生体反応を回避できる。かかる蛋白吸着量は少ないほど望ましいが、0.3〜0.7μg/cmの範囲であれば実質的に十分効果がある。
【0032】
本発明の上記共重合体(A)は、蛋白濾過膜、浸透膜の支持膜、医療用血液透析膜、医療用高分子の高血栓性付与剤などとして好適に使用しうるだけでなく、限外濾過膜、精密濾過膜等としても有用である。
【0033】
それ故、本発明によれば、本発明の上記ポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体は血液と接触して使用するための医療用材料を製造するために好適に使用されることが明らかにされた。
【0034】
本発明によれば、本発明の上記共重合体(A)を血液と接触して使用するための医療用材料を製造するために使用することが提供される。
【0035】
この使用には、本発明の共重合体を医療用材料の素材として用いることはもちろん、他の素材としての熱可塑性ポリマーと組み合わせてポリマー組成物の一成分として、あるいは他の素材で調製した医療用材料を被覆するための被覆材として用いることも包含される。ここで、他の素材としては、例えばポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ジアセチルセルロース、セルローストリアセテート、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートの如き芳香族ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ポリアクリルメタクリレート、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、ポリアクリルアミド、ゴム系エラストマー、ポリアミド、ポリジメチルシロキサン等の熱可塑性ポリマーを挙げることができる。これらは1種又は2種以上一緒に用いることもできる。
【0036】
医療用材料を構成する素材である熱可塑性ポリマー(B)は、セルローストリアセテート好ましい。
【0037】
セルローストリアセテートとしては、例えば数平均分子量30,000〜150,000および酢化度2.8以上のものが好ましく用いられる
【0038】
本発明の好ましい態様としては、上記ポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体(A)を、セルローストリアセテート(B)と組み合わせてポリマー組成物として用いることにより、セルローストリアセテート(B)の性質を維持しながら、セルローストリアセテート(B)に抗血栓性を付与し、血液と接触して使用するための医療用材料を与えることができる。
【0039】
本発明によれば、該共重合体(A)とセルローストリアセテート(B)とのポリマー組成物で構成されていると、該共重合体(A)とセルローストリアセテート(B)とは、分子レベルで均一に混合することはなく、別個の相を形成し、相分離して存在する。そして、ポリマー組成物で構成された材料の表面部分における該共重合体(A)の濃度が、該ポリマー組成物全体中の上記共重合体(A)の平均濃度よりも高くなる。本発明はこの性質を利用したものである。
【0040】
本発明のこの医療用材料において、血液と接触して使用される表面近傍は、好ましくは共重合体(A)1〜50重量%とセルローストリアセテート(B)99〜50重量%とからなる。共重合体(A)が1重量部より少ないと、医療用材料の表面における共重合体(A)の存在量が少なすぎるため十分な抗血栓化効果が得られず、また99重量部を越えるとセルローストリアセテート(B)の種類により本来の物理的特定および使用条件が大きく変化するようになり好ましくない。より好ましくは、共重合体(A)5〜30重量%とセルローストリアセテート(B)70〜95重量%からなり、さらにより好ましくは、共重合体(A)5〜20重量%とセルローストリアセテート(B)80〜95重量%からなるポリマー組成物から構成される。そして血液と接触する表面近傍における共重合体(A)の濃度は少なくとも40重量%、好ましくは50〜90重量%である。
【0041】
表面近傍における共重合体(A)の割合は、例えばポリマー組成物の有機溶媒溶液から医療用材料を製造する際に、ポリマー組成物全体中の共重合体(A)の割合(濃度)よりも高くなる。すなわち、溶液から有機溶媒が飛散するにつれて相分離が起り、最終的に表面近傍において共重合体(A)の濃度の高い医療用材料が得られる。表面近傍とは厳密ではないが表面から深さ100Å程度までの領域である。
【0042】
表面近傍における共重合体(A)の濃度は、ESCAによる表面組成の測定によって決定することができる。測定方法については実施例の部分で述べる。
【0043】
このポリマー組成物は、例えば共重合体(A)とセルローストリアセテート(B)とを所定の割合で溶解する共通の溶媒に溶解し、しかる後溶媒を除去して調製したり、あるいは共重合体(A)とセルローストリアセテート(B)とを上記所定の割合で溶融混合することにより調製することができる。
【0044】
この溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキソランの如き環状エーテル系有機溶媒;N,N′−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N′−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド系有機溶媒;およびクロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン系有機溶媒を挙げることができる。
【0045】
なお、本発明によれば、上記共重合体(A)及び(B)を溶解する溶媒の選択性や取扱い性の面を考慮すると、(B)としては、セルロース・トリアセテートを好ましく挙げることができる
【0046】
本発明によれば、さらに、ポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体(A)、セルローストリアセテート(B)およびこれらを溶解し得る非プロトン性極性有機溶媒(C)とからなり、そして上記(A)成分および(B)成分の合計濃度が1〜30重量%であるドープを準備し、このドープを薄膜に形成し、この薄膜を湿式もしくは乾式成形法に付して厚さが1mm以下の、血液や接触して使用される部分を持つ医療用材料を生成せしめる、ことを特徴とする医療用材料の製造法が提供される。
【0047】
非プロトン性極性有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキサイド、塩化メチレン、およびクロロホルムが好適に用いられる。
【0048】
ドープを薄膜に形成するには、例えばドープを基板上にキャストしてフィルム状にしたりあるいは紡糸して中空糸状にしたりすることにより行うことができる。ドープ中の(A)成分と(B)成分の合計濃度は、キャストの際には好ましくは5〜20重量%、より好ましくは10〜15重量%であり、中空糸状に紡糸する際には好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜20重量%、特に好ましくは13〜14重量%である。
【0049】
ドープは薄膜に形成されたのち、湿式もしくは乾式法により非プロトン性極性有機溶媒を除去され、自立性のある成形品としての医療用材料を与える。
【0050】
湿式法はドープの薄膜を水/非プロトン性有機溶媒および次いで水中で処理することにより、ドープ中の非プロトン性有機溶媒を除去する方法であり、乾式法はドープの薄膜を常温、常圧下あるいは40〜50℃で1〜30mmHg程度の減圧下で処理することにより、ドープ中の非プロトン性有機溶媒を同様に除去する方法である。
【0051】
得られる医療用材料の血液と接触して使用される部分である薄膜は好ましくは1μm〜1mmの厚みを有し、とりわけ中空糸膜では10〜50μmの膜厚を持つのが有利である。
【0052】
上記した本発明のいずれの医療用材料も、濃度5重量%であるヒト貧血小板血漿(PPP)のリン酸緩衝液に37℃、一時間接触させた時、その表面への蛋白吸着量が0.8μg/cm以下(MicroBCA法によるアルブミン換算)であることが好ましく、0.6μg/cm以下であることがより好ましい。血漿接触時の蛋白吸着量が0.8μg/cmより大きいと、それに続く血小板粘着、活性化を十分に抑制できないため、血栓形成が進行し易くなる。かかる蛋白吸着量は少ないほど望ましいが、0.3〜0.7μg/cm、好ましくは0.3〜0.5μg/cmの範囲にあれば実際的に十分効果がある。
【0053】
本発明の医療用材料は、例えば中空糸膜の場合、この中空糸膜を40本束ねたバンドルを、ヒト上腕部より採取したノンヘパリン血に浸し、常温で4時間放置し、ついで洗浄したとき、表面に血栓が生じた中空糸膜の数が好ましくは4本(10%)以下、より好ましくは2本(5%)以下である。
【0054】
本発明における医療用材料としては、例えば人工腎臓用中空糸、人工肺用中空糸、カテーテル、人工血管、採血管、血液回路用のチューブ、血液容器、血液透析膜、血漿分離膜および医療用縫合系を挙げることができる。
【0055】
本発明の医療用材料は、該材料の少なくとも血液と接触する部分が、上記ポリマー組成物で構成されており、例えば該ポリマー組成物からなる薄膜により被覆されている。ここで血液と接触する部分とは、血液が接触する材料の表面およびその近傍をさす。例えば、人工腎臓用透析膜として使用する場合には、少なくとも血液が流れるその内面が上記ポリマー組成物で構成されていればよい。
【0056】
本発明におけるポリ(アルキルアリールエーテルスルホン)共重合体(A)およびこれとセルロース・トリアセテート(B)とからなるポリマー組成物が優れた血液適合性を示す理由としては、次のように推定される。
【0057】
上記で述べたように、本発明の共重合体(A)は優れた抗血栓性を示し、これを含む本発明のポリマー組成物は、もう一つのポリマー組成物成分であり医療用高分子素材であるセルローストリアセテート(B)と巨視的に相分離した状態にある。更にポリマー組成物調製の際、例えば湿式ブレンドにおける溶媒除去の際に、上記共重合体のポリオキシアルキレンユニットは、ポリマー組成物内の界面自由エネルギーを安定化させるべく、ポリマー組成物内部より、むしろポリマー組成物とバルクとの界面(空気/ポリマー組成物界面、水/ポリマー組成物界面など)に配向する。従って水(血液)の存在下、水接触界面の大部分にわたって上記共重合体(A)が配向し、水和したこの共重合体のハイドロゲル層が形成される。このため、蛋白質や血球などの生体成分の吸着が少なく、また吸着した蛋白質の変性や接触した血小板の粘着、活性化を抑制することができる。更にポリオキシアルキレン自由末端鎖、遊離水酸基末端数等が大幅に減少するため、補体活性化、細胞膜損傷を回避できると推定される。
【0058】
【発明の効果】
本発明の(ポリアルキルアリールエーテル)スルホン共重合体は、それ自体で抗血栓性に非常に優れており、蛋白質や血球などの生体成分の吸着が少なく、さらに長時間にわたって蛋白の吸着を抑え、時間安定性も極めて高い医療用材料を提供できる。また吸着した蛋白質の変性や接触した血小板の粘着、活性化を抑制することができる。更に他の医療用ポリマーと配合することにより該医療用ポリマーに坑血栓性を付与することができる。これらは、上記共重合体中のオキシエチレン自由末端鎖、遊離水酸基末端数等が少ないため、補体活性化、細胞膜損傷を回避できることによると推定される。それ故、本発明の共重合体およびポリマー組成物は直接血液成分と接触して用いることが主たる目的となる医療用材料として有用であり、例えば、人工腎臓、人工血管、人工心肺、血液透析膜、血液バッグ、カテーテル、血漿分離膜等に用いることができる。そして、このような材料として用いる場合、該共重合体、ポリマー組成物自体を材料として用い中空糸、シート、フィルム、チューブとして成形するのみならず、これらを溶剤に溶解し、この溶液をこれら各種材料表面に塗布し、血液接触表面のみを改質することも可能である。
【0059】
【実施例】
以下、参考例および実施例によって本発明を更に詳しく説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定するものではない。また、例中の「部」は特にらない限り「重量部」を表す。
【0060】
ポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体(A)の還元粘度(ηsp/c)は、フェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン混合溶媒(重量比6/4)10mlに120mgを溶解させて35℃で測定した。ポリマー(B)は酢化度2.8のセルローストリアセテート(TAC)を用いた。
数平均分子量は、GPC測定(展開溶媒クロロホルム、ポリスチレン換算)によって求めた。
【0061】
吸着した蛋白の定量評価は、MicroBCA法により行った。これは銅イオンおよび下記構造で示されるBCA蛋白検出試薬を用いたMicroBCAキット(Micro BCA Assay Reagent Kit;PierceCo.Ltd.製)による蛋白定量法である。試料中に存在する蛋白により一価に還元された銅イオンのみが、この試薬とキレート反応を行い発色(570nm)するため、サンプルの吸光度測定より蛋白濃度(アルブミン換算)を定量することができる。
【0062】
【化1】
Figure 0004101460
【0063】
粘着血小板の形態指数とは、粘着血小板の活性化に伴う変形の度合を定量化した値である。血小板の変形状態を、未変形を第1段階として4段階に分類し各状態の血小板の個数にその段階の数を乗じ、総和を粘着血小板総数で割り、形態指数とする。従って粘着血小板全てが未変形であれば形態指数は1となり、全てが第4段階の変形を起こしていれば指数は4となる。
【0064】
ESCAによる表面組成の測定には、フィルムを直径1cmの円盤上に切り出し、測定試料とした。装置はVG社ESCALAB−200を用い、MgKα線を光電子取り出し角45°となるよう照射し、スキャンした。測定はキャスト時、空気界面と接触した表面(表側)について行った。
【0065】
SEM写真は、金蒸着したサンプルを5×5mmに切り出し、銅製サンプルプレート上に固定して観察試料とした。この試料を用いて、SEM(日立製作所製、S−510)により表面観察を行った。
【0066】
[参考例1(α,ω−ビス(2−クロロエトキシ)ポリオキシエチレンの合成)]
ポリオキシエチレングリコール(#2000)30部、ピリジン3.2部、脱水クロロホルム150部をスリ付き三角フラスコ中に仕込み、撹拌して均一溶液とした。これに塩化チオニル2.4部、脱水クロロホルム15部の混合溶液を氷冷下30分かけて滴下、その後氷冷をはずして液温が室温に上昇した後、更にもう8時間撹拌を続けた。クロロホルムを減圧留去後、更にもう15部の新鮮な塩化チオニルを加え、24時間、加熱乾留した。その後減圧下で余剰の塩化チオニルを留去し、残査を新鮮なクロロホルム300部に溶解し、飽和食塩水200部で三回洗浄、ついで純水200部で一回洗浄し、クロロホルム層を分取、無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥した。クロロホルムを留去し得られた油状物は室温で直ちに固化した。これをアセトン40部に加熱溶解し、ジエチルエーテル200部より再沈殿を行うことで白色粉状晶28.8部を得た。生成物の融点は、50.5℃〜53.5℃であり、IR(赤外分光)のチャートより、この化合物はα,ω−ビス(2−クロロエトキシ)ポリオキシエチレン(数平均分子量2000)であることが確認された。
【0067】
[合成例1(ポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体の製造1)]
4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェノール16.80部、ビス(4−クロロフェニル)スルホン11.90部、及び予めトルエンとの共沸により共存する水分を除去したα,ω−ビス(2−クロロエトキシ)ポリオキシエチレン(数平均分子量3035)25.95部、トルエン200ml、N,N−ジメチルアセトアミド100ml、炭酸カリウム8.625部を、窒素導入口と排出口を持った3つ口フラスコに入れ、これをティーン・スタークス・トラップに誘導し窒素置換を行い、115〜125℃で16時間加熱環流を行った。反応に伴う水の流出が終了したのを確認後、トルエンを8時間かけて留去しながら、新たにN,N−ジメチルアセトアミドをトルエンの減少分を補う形で計200ml加え、フラスコ内を窒素置換後、165〜180℃で20時間加熱撹拌し、反応せしめた。反応後、全体をイオン交換水3000mlに撹袢しながら開け洗浄後、更に新たなイオン交換水3000mlで2時間撹拌洗浄するという操作を3回繰り返した。ついでポリマーを0.1wt%塩酸水溶液3000mlで8時間撹拌洗浄、残存するアルカリ触媒を完全に失活させ水中に溶出した。これを更に新たなイオン交換水3000mlで2時間撹拌洗浄、脱塩酸するという操作を3回繰り返した。得られたポリマーを80℃、24時間かけて減圧乾燥後クロロホルムで抽出し濾過、乾燥した。最終的に理論収率の92%程度(約48g)の乾燥ポリマーを得た。
【0068】
最終的に得られたポリマーについて、還元粘度、数平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
[合成例2〜9、11(ポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体の製造2)]
上記合成例1と同様の方法で、種々の共重合体を合成した。また、フッ素原子を含まないポリスルホン共重合体も併せて合成した。これらの結果を表1に併記した。
【0070】
[合成例10(ポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体の製造3)]
4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェノール12.848部(セントラル硝子)、ビス(4−クロロフェニル)スルホン14.358部(ランカスター製)、及び予めトルエンとの共沸により共存する水分を除去したα,ω−ビス(2−ヒドロキシ)ポリオキシエチレン#3000(ポリエチレングリコール、数平均分子量3000、日本油脂製)35.37部、トルエン15部、N,N−ジメチルアセトアミド20部、炭酸カリウム8.28部(関東化学)を用いた以外は上記合成例1に準じて合成を行い、約56gのポリマーを得た。
【0071】
【表1】
Figure 0004101460
【0072】
【化2】
Figure 0004101460
【0073】
合成例1で得られたポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体をクロロホルムに溶解し、10wt%ドープ溶液とした。このドープ溶液10mlを5cm×5cmのテフロンシート型枠にキャストし、常温常圧下、24時間かけてクロロホルムを揮発せしめ、更に20℃で12時間、1mmHg下にて乾燥を行い、均質なフィルムを得た。またこれとは別に、かかる共重合体をN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、10wt%ドープ溶液とした。このドープ溶液10mlを5cm×5cmのテフロンシート型枠にキャストし、30℃の温水に浸漬することでN−メチル−2−ピロリドンを抽出除去せしめ、更に20℃で12時間、1mmHg下にて乾燥を行い、均質な多孔質フィルムを得た。これらのフィルムはいずれも自己支持性で、エラストマー的な弾性を有しており、手で折り曲げたり、引っ張ったりすることで崩壊することはなかった。また水と接触させると自然に濡れるほどの親水性を示した。
【0074】
さらに、上記と同様の操作により、種々のポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体を製造し、還元粘度、数平均分子量を測定した(実施例2〜4)。これらの結果を上記表1に併記した。また、上記実施例1と同様に該共重合体からフィルムを成形したところ、それぞれ自己支持性の均質なフィルムを得ることができた。
【0075】
[実施例1〜5(ポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体の抗血栓性の評価)]
(1)評価用サンプルの作成
上記合成例で得たポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体をクロロホルムにそれぞれ溶解させ、濃度1.0重量%ドープ溶液を調製した。このドープ溶液10mlに、滅菌処理したポリエチレンテレフタレート(PET)円板(直径15mm、厚さ0.5mm)を浸漬させた。1分後PET円板を取り出し、溶媒雰囲気下で一晩放置することにより溶媒を揮散させ、該共重合体をPETに被覆したサンプルを作成した。
(2)蛋白吸着量の評価
上記(1)で作成したサンプルをヒト貧血小板血漿(PPP)溶液に接触したときに、上記共重合体に吸着する蛋白の吸着量を分光的に定量した。評価に際しては、PPPをリン酸緩衝液で所定濃度(5重量%リン酸緩衝液溶液)に調製したものを37℃、1時間上記サンプルへ接触させ、吸着した蛋白を1重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液で抽出する。ついでMicroBCA法により、蛋白吸着量を見積った。サンプル数は実施例1つにつき4個である。
(3)SEM観察による血小板粘着量の評価
一般に、重篤な血栓形成の前段階である血小板の粘着、凝集には、材料表面へ吸着するタンパク質の種類及びその表面における配向が大きく関与することが知られている.そして粘着した血小板の活性化(変形、顆粒放出)がその後の凝集、血小板血栓形成、凝固因子系の反応促進に影響する。従って血液(全面又は成分血)と接触した後の材料表面における血小板の粘着状態を観察することで、その材料の血液適合性の程度を大まかに見積もることができる。ここではヒト多血小板血漿(PRP)を用い、共重合体表面をPRPに接触させた後の該共重合体表面への血小板の粘着状態をSEMにより観察した.PRPはヒト上腕部静脈より採取した新鮮血に3.5重量%クエン酸三ナトリウム水溶液を1/9容加え、1000r.p.m.で10分遠心分離した上澄み液を用いた。
【0076】
上記共重合体が被覆されたサンプルは、培養シャーレ(Falcon,24well)中、0.7mlのPRPと37℃、3時間接触された。ついでこのサンプルを蒸留水でよく洗浄し、2.5重量%グルタルアルデヒド水溶液中にて室温下2時間かけて固定し、凍結乾燥後、金蒸着して観察試料とした。(室温下二時間放置後さらに凍結乾燥させる。これを金蒸着して観察試料とした。)この試料を用いて、SEMにより表面に吸着した血小板の粘着数を数えた。サンプル数は実施例1つにつき2個である。
【0077】
表2に、蛋白吸着量及び血小板粘着数を示す。従来の芳香族ポリスルホンの場合を比較例1として示した。
【0078】
【表2】
Figure 0004101460
【0079】
以上の結果より、本発明のポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体は、従来の芳香族ポリスルホンに比べ、タンパク吸着量が少なく、血小板の粘着数もわずかであり、抗血栓性に非常に優れることが明らかとなった.
【0080】
[実施例6〜8、比較例2〜4(ポリマー組成物の抗血栓性の評価1)]
(1)ESCAによる表面解析
上記合成例1,2で製造したポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体(A)とセルロース・トリアセテート(CTA)とを所定の混合割合でN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に加熱溶解することにより数種のドープ溶液を製造した(濃度10重量%)。この溶液をテフロン支持基板上にキャストし、ついで溶媒を水により抽出することにより厚さ約0.5mmのポリマー組成物からなる膜が得られた。この膜の表面近傍における上記共重合体(A)の濃度を、ESCAにより解析した。
(2)抗血栓性の評価
上記実施例1〜5と同様の方法により蛋白吸着量及び血小板粘着数を求めた。また、下記の方法により、上記組成物からなる中空糸膜を作成し、血栓形成抑止能を評価した。
(3)中空糸膜の作成
上記(1)のセルロース・トリアセテート組成物のドープ溶液(濃度13重量%)をノズルより吐出し、NMPを含む水溶液からなる凝固浴へ導くことで乾湿式紡糸を行い均質な多孔中空糸膜を得た。
【0081】
得られた均質な中空糸膜を40本束ねたバンドルを、ヒト上腕部より採取したノンヘパリン血に浸し、常温で15分及び4時間放置した。ついでこの中空糸膜を取り出し、リン酸バッファー水溶液でよく洗浄後、中空糸膜表面での血栓形成状態を観察し表面に血栓が生じた中空糸膜の数をカウントすることにより評価した。オリジナルのトリアセテート(比較例4)では、中空糸膜の全体が完全に血栓で覆われたが、ポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体(A)をセルロース・トリアセテート(B)に全体の10重量%ブレンド紡糸してなる中空糸は、ほぼ完全に血栓形成を抑制することが確認された(実施例7)。
【0082】
ヨーロッパ公開公報EP 781795号に記載されているフッ素を含まないポリスルホンからなる中空糸は、接触時間15分で血栓が形成し、4時間ではすべての中空糸で血栓が生じた(比較例2,3)。
【0083】
しかしながら、実施例7では血液への接触時間が4時間でも血栓は形成されず、高い安定性を示した。
表3に、(1)〜(3)の結果を示した。
【0084】
【表3】
Figure 0004101460
【0085】
以上の結果より、本発明のフッ素原子を含むポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体を含有するポリマー組成物は、該共重合体が表面に高濃度の存在しており、タンパク吸着抑制能に極めて優れ、血小板の粘着をも有意に抑制することが明らかとなった。
【0086】
[実施例19、比較例12(中空糸膜の血液透析膜としての評価)]
上記実施例6〜8で製造したポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体と、セルロース・トリアセテートとからなる組成物から構成される中空糸膜を、10000本束ねた後、血液透析器ケースに収め、末端部をウレタンで封止し、血液透析モジュールを得た。これを用いて、透水性(UFR)、分子量1万のデキストランのクリアランス(DA1万)等の種々の測定を行い、透析性能として評価した。具体的な測定条件を以下に示す。
(1)UFR:抗凝固剤としてクエン酸を加えた牛血漿を用い透析器内の中空糸束の片側端面から200ml/分の流速で通液し、毎分中空糸膜を通して15ml/分の濾過した際の膜内外の差圧を測定することにより算出した。
(2)DA1万:分子量1万のデキストランの0.02重量%の水溶液を透析器内の中空糸束の片側端面から他方の端面に200ml/分の流速で通液した際の、入り口と出口でのデキストラン(分子量1万)水溶液の濃度差から求めた。
(3)DA燐:NaHPOを0.576g/l、NaHPOを0.12g/l、NaClを9g/l溶解した水溶液を透析器内の中空糸束の片側端面から他方の端面に200ml/分の流速で通液した際の、入り口と出口での燐酸イオンの濃度差から求めた。
(4)SC7万:分子量7万のデキストランの0.01重量%の水溶液を透析器内の中空糸束の片側端面から200ml/分の流速で通液し、毎分中空糸膜を通して15ml/分の濾過した液のデキストラン(分子量7万)濃度を測定することにより算出した。
(5)SCALB:抗凝固剤としてクエン酸を加えた牛血漿を用い透析器内の中空糸束の片側端面から200ml/分の流速で通液し、毎分中空糸膜を通して15ml/分の濾過した液のデキストラン(分子量7万)濃度を測定することにより算出した。
【0087】
下記表9に血液透析膜としての性能評価結果を示す。従来のトリアセテートを紡糸してなる中空糸(比較例12、13)、フッ素原子を含まないスルホン共重合体をセルロース・トリアセテートに全体の10重量%含有した中空糸(比較例14)、およびフッ素原子を含むポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体(A)をセルロース・トリアセテート(B)に全体の10重量%ブレンド紡糸してなる中空糸(実施例19、20)の性能は、実用レベルの範囲で大きな差はなかった。
【0088】
【表9】
Figure 0004101460
【0089】
これにより、本発明のフッ素原子を有するポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体(A)とセルロース・トリアセテートからなる組成物を湿式紡糸することにより、セルロース・トリアセテートが本来有する優れた膜特性を維持し、なおかつ血液適合性に優れた医療用中空糸膜を提供できることが明らかになった。

Claims (18)

  1. ポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体(A)とセルロース・トリアセテート(B)とで構成されている、血液と接触して使用されるための医療用材料であって、少なくとも血液と接触して使用される表面を持つ部分の表面近傍における該共重合体(A)の濃度が少なくとも40重量%である医療用材料であり、かつ該共重合体(A)は、
    (a)下記式(1)〜(3)
    −(−Ar−SO−Ar−O−)− (1)
    −(−Ar−Y−Ar−O−)− (2)
    −(−RO−)− (3)
    (ここで、ArおよびArはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の2価の芳香族基であり、Ar及びArはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の2価の芳香族基であり、Yは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された炭素数1〜18のアルキレン基であり、Rは炭素数2または3のアルキレン基であるか、炭素数2または3のアルキレン基と炭素数4のアルキレン基との組み合わせであり、そしてkは−(−RO−)−で示される単位の分子量が400〜20,000の範囲にある数である)で示される構成単位から実質的になり、上記式(1)、(2)及び(3)で表される構成単位の合計量に基づき、上記式(3)で表わされる構成単位が40〜70重量%を占め、上記式(2)で表わされる構成単位に基づき、上記式(1)で表わされる構成単位が30〜60モル%を占め、そしてフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの重量比が6/4の混合溶媒中で濃度1.2g/dl、35℃で測定した還元粘度が少なくとも0.5dl/gであるフッ素原子を有するポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体(A)であることを特徴とする抗血栓性に優れた医療用材料。
  2. 上記式(2)において、Yは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された炭素数2〜6のアルキレン基である請求項1記載の医療用材料。
  3. 上記式(1)〜(3)において、Ar、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基であり、Rはエチレン基である請求項1記載の医療用材料。
  4. 上記医療用材料が、共重合体(A)1〜50重量%とポリマー(B)99〜50重量%とからなるポリマー組成物で構成されている請求項1記載の医療用材料。
  5. 上記医療用材料が、共重合体(A)5〜20重量%とポリマー(B)95〜80重量%とからなるポリマー組成物で構成され、かつ該表面近傍における共重合体(A)の濃度は50〜90重量%である、請求項1記載の医療用材料。
  6. 医療用材料が人工腎臓用中空糸、人工肺用中空糸、カテーテル、人工血管、採血管、血液回路用のチューブ、血液容器、血液透析膜、血漿分離膜あるいは医療用縫合糸である請求項1記載の医療用材料。
  7. ヒト血漿に37℃で一時間接触した時のMicroBCA法により測定した蛋白吸着量が0.8μg/cm以下である請求項1記載の医療用材料。
  8. 医療用材料が中空糸膜であって、複数の中空糸膜を、常温で4時間ヒト上腕部より採取したノンヘパリン血に浸し、ついで洗浄したとき、表面に血栓が生じた中空糸膜の本数が全体の10%以下である、請求項1記載の医療用材料。
  9. ポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体(A)5〜20重量%とそれ以外の熱可塑性ポリマー(B)95〜80重量%とからなるポリマー組成物で構成される、血液と接触して使用されるための医療用材料であって、少なくとも血液と接触して使用される表面を持つ部分の表面近傍における該共重合体(A)の濃度は50〜90重量%である医療用材料であり、かつ該ポリマー(A)は、
    (a)下記式(11)〜(31)
    −(−Ar11−SO−Ar21−O−)− (11)
    −(−Ar31−Y−Ar41−O−)− (21)
    −(−RO−)− (31)
    (ここで、Ar11およびAr21はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基であり、Ar31及びAr41はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基であり、Yは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された炭素数2〜6のアルキレン基であり、Rはエチレン基であり、そしてkは−(−RO−)−で示される単位の分子量が1000〜6,000の範囲にある数である)で示される構成単位から実質的になり、上記式(11)、(21)及び(31)で表される構成単位の合計量に基づき、上記式(31)で表わされる構成単位が40〜70重量%を占め、上記式(21)で表わされる構成単位に基づき、上記式(1)で表わされる構成単位が30〜60モル%を占め、そしてフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの重量比が6/4の混合溶媒中で濃度1.2g/dl、35℃で測定した還元粘度が少なくとも0.5dl/gであるフッ素原子を有するポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体であり、該熱可塑性ポリマー(B)は、(b)セルロース・トリアセテートであることを特徴とする抗血栓性に優れた医療用材料。
  10. ヒト血漿に37℃で一時間接触した時のMicroBCA法により測定した蛋白吸着量が0.7μg/cm以下である請求項記載の医療用材料。
  11. 医療用材料が中空糸膜であって、複数の中空糸膜を、常温で4時間ヒト上腕部より採取したノンヘパリン血に浸し、ついで洗浄したとき、表面に血栓が生じた中空糸膜の本数が全体の10%以下である、請求項記載の医療用材料。
  12. (a)下記式(1)〜(3)
    −(−Ar−SO−Ar−O−)− (1)
    −(−Ar−Y−Ar−O−)− (2)
    −(−RO−)− (3)
    (ここで、ArおよびArはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の2価の芳香族基であり、Ar及びArはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の2価の芳香族基であり、Yは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された炭素数1〜18のアルキレン基であり、Rは炭素数2または3のアルキレン基であるか、炭素数2または3のアルキレン基と炭素数4のアルキレン基との組み合わせであり、そしてkは−(−RO−)−で示される単位の分子量が400〜20,000の範囲にある数である)
    で示される構成単位から実質的になり、上記式(1)、(2)及び(3)で表される構成単位の合計量に基づき、上記式(3)で表わされる構成単位が40〜70重量%を占め、上記式(2)で表わされる構成単位に基づき、上記式(1)で表わされる構成単位が30〜60モル%を占め、そしてフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの重量比が6/4の混合溶媒中で濃度1.2g/dl、35℃で測定した還元粘度が少なくとも0.5dl/gである、血液と接触して使用されるための医療用材料として好適なフッ素原子を有するポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体。
  13. 請求項12記載の式(2)においてYは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された炭素数2〜6のアルキレン基である請求項12記載のフッ素原子を有するポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体。
  14. 請求項12記載の式(1)〜(3)において、Ar、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基であり、Rはエチレン基である請求項12記載のフッ素原子を有するポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体。
  15. ヒト血漿に37℃で1時間接触した時のMicroBCA法により測定した蛋白吸着量が0.7μg/cm以下である請求項12記載のフッ素原子を有するポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体。
  16. (a)下記式(1)〜(3)
    −(−Ar−SO−Ar−O−)− (1)
    −(−Ar−Y−Ar−O−)− (2)
    −(−RO−)− (3)
    (ここで、ArおよびArはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の2価の芳香族基であり、Ar及びArはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の2価の芳香族基であり、Yは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された炭素数1〜18のアルキレン基であり、Rは炭素数2または3のアルキレン基であるか、炭素数2または3のアルキレン基と炭素数4のアルキレン基との組み合わせであり、そしてkは−(−RO−)−で示される単位の分子量が400〜20,000の範囲にある数である)
    で示される構成単位から実質的になり、上記式(1)、(2)及び(3)で表される構成単位の合計量に基づき、上記式(3)で表わされる構成単位が40〜70重量%を占め、上記式(2)で表わされる構成単位に基づき、上記式(1)で表わされる構成単位が30〜60モル%を占め、そしてフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの重量比が6/4の混合溶媒中で濃度1.2g/dl、35℃で測定した還元粘度が少なくとも0.5dl/gであるフッ素原子を有するポリ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体(A)、セルロース・トリアセテート(B)およびこれらを溶解し得る非プロトン性極性有機溶媒(C)とからなり、そして上記(A)成分および(B)成分の合計濃度が1〜30重量%であるドープを準備し、このドープを薄膜に形成し、この薄膜を湿式もしくは乾式成形法に付して厚さが1mm以下の、血液と接触して使用される部分を持つ医療用材料を生成せしめる、ことを特徴とする医療用材料の製造法。
  17. 医療用材料が中空糸膜である、請求項16記載の医療用材料の製造法。
  18. 非プロトン性極性有機溶媒がテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキサイド、塩化メチレン、およびクロロホルムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項16記載の医療用材料の製造法。
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