JP2000103965A - 抗血栓性に優れた高分子組成物およびそれよりなる医療用材料 - Google Patents

抗血栓性に優れた高分子組成物およびそれよりなる医療用材料

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JP2000103965A JP10275418A JP27541898A JP2000103965A JP 2000103965 A JP2000103965 A JP 2000103965A JP 10275418 A JP10275418 A JP 10275418A JP 27541898 A JP27541898 A JP 27541898A JP 2000103965 A JP2000103965 A JP 2000103965A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ゴム系エラストマーの抗血栓性を改善するこ
と。 【解決手段】 ポリオキシアルキレン単位の含有量が重
量比で全体の10〜90重量%の範囲内であり、溶解性
パラメーターが9.0〜10.5の範囲である特定のポ
リ(アルキルアリールエーテル)スルホン共重合体
(A)1〜50重量部、及びゴム系エラストマー(B)
99〜50重量部とから構成される高分子組成物であ
り、血液と接触して使用されるための医療用材料の素材
として有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は抗血栓性に優れた高
分子組成物及びそれよりなる医療用材料に関する。さら
に詳しくは溶解性パラメーターが9.0〜10.5の範囲にあ
る特定のポリスルホンとゴム系エラストマーとからなる
抗血栓性に優れた高分子組成物、およびそれを用いた血
液と接触して使用するための医療用材料に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、合成高分子材料は、人工臓器、カ
テーテルをはじめとする医療用材料に広く用いられてい
る。その代表的なものは、医療用高分子材料としてはポ
リエステル、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリスチ
レン、シリコーン樹脂、ポリメタクリル酸エステル、ポ
リオレフィン及び含フッ素樹脂などの疎水性高分子や、
ポリビニルアルコール、ポリエーテルウレタン(セグメ
ント化ポリウレタン、SPU)、ポリ(メタクリル酸2
ーヒドロキシエチル)およびポリアクリルアミドなどの
親水性高分子である。このうち疎水性高分子材料は生体
親和性において、また親水性高分子は機械的強度におい
て何れも満足できるものではない。これら従来の材料の
大部分が、主にその物理的、機械的特性に着目して使用
されてきた中において、SPUに関しては、比較的抗血栓
性に優れることが知られている。中でもBiomerR、Cardi
othaneRなどは人工心臓への応用が試みられたが、なお
十分な効果を得るには至らなかった(E.Nylas,R.C.Rein
bach, J.B.Caulfield,N.H.Buckley, W.G.Austen; J.Bio
med.Mater.Res.Symp.,3,129(1972)、L.P.Joyce,M.C.Dev
ries, W.S.Hastings,D.B.Olsen,R.K.Jarvik,W.J.Kolff;
Trans.ASAIO, 29,81(1983))。
【0003】これらセグメント化ポリウレタンは、剛直
な芳香族ウレタン結合部位と柔軟なポリエーテル結合部
位の間のミクロ相分離構造により血小板粘着が抑制され
るが、その効果は十分ではない。特にウレタン結合やウ
レア結合のように水素結合性の部分構造は、分子鎖の剛
直性向上に寄与するものの、主鎖の極性基間の相互作用
が強いため、疎水性相互作用を軽減しうる水分子の水和
が阻害される。従って血中タンパクが吸着した際にタン
パクの変性を誘起、血小板粘着を促進することが報告さ
れている。そもそも一般に水酸基、アミノ基といった極
性部位は、血液接触時に補体活性化(第二経路)を誘発
し、フィブリン形成促進による血栓形成の要因ともな
る。その他ポリエステル系ポリマーでは、PEO(ポリエチ
レンオキシド)/PBT(ポリブチレンテレフタレート)共重
合体が、血液適合性に優れた生体適合ポリマーとして知
られているが(特開昭60−238315号公報)、こ
れも高い加水分解性、およびそれに伴う低分子溶出物及
びオリゴマーの体内への漏洩など、化学的な安定性にか
ける欠点があり、実用上問題が大きい。
【0004】ポリマー表面を親水/疎水ミクロドメイン
構造とすることで血小板粘着を抑制して抗血栓性を発現
するという材料設計が、HEMA(2-hydroxyethylmethacryl
ate)-Styrene-HEMAブロック共重合体等で知られている
(C.Nojiri,T.Okano,D.Grainger,K.D.Park,S.Nakahama,
K.Suzuki,S.W.Kim,Trans. ASAIO,33,596(1987))が、
これも高価格であり、また脆く、溶融成型、湿式成型も
困難であるなど実用上の問題が大きい。最近では表面エ
ネルギーの小さな(疎水性の大きい)フルオロアルキル
基等をミクロドメイン構造の疎水性ドメインに適応する
ことで、表面エネルギーの大きな親水性ドメインとの相
分離状態を安定化し、より血液適合性を向上させる試み
がなされているが、なお加工性の問題は解決されてな
い。また生体膜類似表面構造を有するMPC(2-methacrylo
yloxyethylphosphoryl choline)-BMA(buthylmethacryl
ate)共重合体が抗血栓性に優れることも示されたが(K.
Ishihara, R.Aragaki,T.Ueda,A.Watanabe,N.Nakabayas
hi,J.Biomed.Mater.Res.,24,1069(1990))、これも成型
加工性、価格等に問題がある。
【0005】一方、医療技術の進歩に伴って、生体組織
や血液と材料が接触する機会は増加しており、材料の生
体親和性が大きな問題になってきた。中でも蛋白質や血
球などの生体成分が材料表面に吸着し変性することは、
血栓形成、炎症反応等の通常では認められない悪影響を
生体側に引き起こすばかりでなく、材料の劣化にもつな
がり、医療用材料の根本的かつ緊急に解決せねばならな
い重要な課題である。とりわけ、血液の体外循環に用い
る血液回路や血管内に挿入するカテーテルなどの部材
は、外科的医療において必要不可欠なものであり、これ
らの技術の進展に大きく貢献してきた。それらの素材の
機械的物性が部材としての要求特性に大きく考慮されて
きた一方で、血液適合性については全く改善されず、主
にヘパリンなどの抗凝固剤の血中投与により、かろうじ
て血液凝固などの異物反応を抑制していた。しかしなが
ら、最近ヘパリンの長期継続投与による脂質代謝異常な
どの肝臓障害、出血時間の延長あるいはアレルギー反応
等の副作用を併発することが認められている。以上の背
景から、これら血液接触型医療器材使用の際に抗凝固剤
の使用量を低減させるか、あるいは全く使用しなくても
血液凝固を引き起こさない、すなわち、抗血栓性を備え
た素材の開発が強く望まれるようになってきた。一般に
これらの部材には屈曲性、耐圧性等の機械的特性に優
れ、かつ生体適合性が比較的良いとされるセグメント化
ポリウレタン、合成ゴム等のエラストマー素材が多用さ
れている。しかしながらこれら素材も先述のように血液
適合性は十分とは言えず、その改善が検討されてきた。
過去にこの問題を解決すべく、特公昭61−57790
号公報、特公平01−60262号公報等では、セグメ
ント化ポリウレタンとシリコーンポリマーをミクロ相分
離状態で均一に分散させることにより血液適合性向上を
実現できることが示されている。また、特開平09−1
2904号公報では、セグメント化ポリウレタン(テコ
フレックス)と先のMPC血液適合性ポリマーを特殊な混
合溶媒(アミド系溶媒とハロゲン化溶媒の混合溶媒)中
で溶媒ブレンドし、キャスト製膜することにより成型体
表面にMPCが偏析したアロイを調製可能であり、このも
のがもとのセグメント化ポリウレタンに比べ血液適合性
に優れることを報告している。しかしながらこれらの手
法は、均一な相分離状態の実現のための両者の混合性の
厳密な制御が困難であり、均一に相分離させるための添
加剤、分散安定剤を添加すると、それらによる生体安全
性の問題も無視できない。またミクロ相分離表面全てが
血液適合性に優れる訳ではなく、ポリウレタンとシリコ
ンのミクロ相分離が先述のHEMA-Styrene-HEMAブロック
共重合体と同様、十分な血液適合性を示すものかは甚だ
疑問である。
【0006】更に、MPCブレンドポリウレタンは調製に
特殊な混合溶媒系を用いることが必要で汎用性に乏し
く、またMPCポリマーの熱的不安定性のため溶融成型も
不可能で、アロイ作成のための実用上の問題が解決され
ていない。その他抗血液凝固剤であるヘパリン等の生理
活性物質を化学的に表面固定する報告も数多くなされて
いるが、工程の煩雑さや、生理活性分子の化学的不安定
性による効果の持続性の問題が解決されておらず、実用
には至っていない。またポリウレタンは原料の有機アミ
ンやイソシアネートが痕跡量ポリマー中に残存するた
め、生体安全性の面からもより安全な合成ゴム系のエラ
ストマーが望ましいが、このものも血液適合性改善につ
いては実用的な提案はなされていない。
【0007】ところで、本発明者らは、血液適合性(特
に抗血栓性)、生体安全性、経済性、溶剤溶解性等を考
慮した医療用血液適合性ポリマーの検討を行ったとこ
ろ、適当な鎖長から成るポリエチレングリコールと疎水
性のモノマーから得られる共重合体、即ち、ポリエチレ
ングリコールと共重合するハード成分であるポリ(芳香
族ポリスルホン)またはポリ(芳香族ポリアリールエー
テルケトン)の各共重合体において、ポリエチレングリ
コール単位数、疎水性ハード成分の種類、およびこれら
の共重合組成の制御した共重合体が血液適合性(特に抗
血栓性)に優れることを既に見い出している。これらの
共重合体は、溶融成型のみならず、種々の有機溶媒へ可
溶であり、他の汎用高分子へブレンドしたり、表面をコ
ートすることにより、幾つかの汎用高分子の血液適合性
を改善できることも示された。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、医療
用素材として優れた特性を有する合成ゴム系エラストマ
ーを対象にして、コスト、成型性等の面で実用的であ
り、かつ合成ゴム系エラストマーの抗血栓性を改善した
医療用複合材料ならびにそれを用いた血液接触用素材を
提供することにある。そしてそのために、抗血栓性に優
れた特定のポリスルホン共重合体を合成ゴム系エラスト
マーと何らかの方法により複合化し、その機械的特性を
損なわずに抗血栓性を向上する方法を提示することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、血液適合
性(特に抗血栓性)、生体安全性、経済性、溶剤溶解性
等を考慮し、医療用材料として好適な合成ゴム系エラス
トマーの抗血栓性を付与することを検討した。その結
果、ポリマーの溶解性パラメータが9.0〜10.5の範囲に
ある特定のポリエーテル/ポリアリールエーテルスルホ
ン系共重合体を少量混合したゴム系エラストマー組成物
は、これを成型することにより得られた膜表面に該共重
合体が有効に偏析され、該合成ゴム系エラストマーに抗
血栓性を付与できることを見出した。
【0010】即ち、抗血栓性に優れる、ソフトセグメン
トであるポリオキシアルキレングリコールとハード成分
であるポリアリールエーテルスルホンとの共重合体にお
いて、ポリオキシアルキレングリコール単位数、疎水性
であるハード成分の種類、およびこれらの共重合組成の
制御等を詳細に検討した結果、適当な鎖長から成るポリ
アルキルエーテル/ポリアリールエーテルスルホン系共
重合体を合成ゴム系エラストマーに少量配合することに
より得られる、ゴム系エラストマー組成物は溶媒成膜、
または溶融成型することで合成ゴム系エラストマーの機
械的特性を維持したまま、それらの抗血栓性を大幅に向
上し、前記の問題点が解決できることを見出し、本発明
に到達したものである。
【0011】すなわち、本発明は、下記式(1)〜
(3)
【0012】
【化2】 −(−Ar1−X−Ar2−O−)− ・・・(1) −(−Ar3−Y−Ar4−O−)− ・・・(2) −(−RO−)k− ・・・(3)
【0013】(ここで、Xは−SO2−であり、Ar1
よびAr2はそれぞれ独立に、核置換されていても良い
炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基であり、Ar
3及びAr4はそれぞれ独立に、核置換されていても良い
炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基であり、Yは
置換されていてもよい炭素数1〜13の2価の炭化水素
基、フッ化炭素基、ヘテロ原子またはヘテロ原子団であ
り、Rは炭素数2〜3のアルキレン基であり、kは(R
O)kで示されるポリオキシアルキレン構造の分子量が
2000〜20000となるような単位繰り返し数であ
る。)で示される繰り返し単位から実質的になり、かつ
上記式(1)、(2)及び(3)で表される繰り返し単
位の合計量に基づく、上記式(3)で表わされる繰り返
し単位の含有量が重量比で10〜90重量%の範囲内で
あり、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタ
ン6/4(重量比)混合溶媒で濃度1.2g/dl、3
5℃で測定した還元粘度が0.5以上であり、溶解性パ
ラメーターが9.0〜10.5の範囲であるポリアルキ
ルエーテル/ポリアリールエーテルスルホン共重合体
(A)1〜50重量部、及びゴム系エラストマー(B)
99〜50重量部とから構成されていることを特徴とす
る抗血栓性に優れた高分子組成物である。
【0014】また本発明は、上記ポリアルキルエーテル
/ポリアリールエーテルスルホン共重合体(A)1〜5
0重量部、及びゴム系エラストマー(B)99〜50重
量部とから構成されている高分子組成物を、血液と接触
して使用するための医療用材料を製造するための素材と
して使用することである。
【0015】また本発明は、血液と接触して使用される
ための医療用材料であって、少なくとも血液と接触して
使用される表面を持つ部分は、上記ポリアルキルエーテ
ル/ポリアリールエーテルスルホン共重合体(A)1〜
50重量部、及びゴム系エラストマー(B)99〜50
重量部とから構成されている高分子組成物を素材として
形成されている医療用材料である。
【0016】また本発明は、上記ポリアルキルエーテル
/ポリアリールエーテルスルホン共重合体(A)1〜5
0重量部、及びゴム系エラストマー(B)99〜50重
量部とをブレンド混合後、血液と接触して使用される表
面を熱水処理することにより調製される医療用材料であ
る。
【0017】本発明に用いるポリアルキルエーテル/ポ
リアリールエーテルスルホン共重合体(A)は、上記式
(1)〜(3)で示される部分構造より主として構成さ
れる。
【0018】上記式(1)、(2)においてAr1、A
2、Ar3およびAr4はそれぞれ独立に、核置換され
ていても良い炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基
を示し、具体的にはp−フェニレン、m−フェニレン、
2,6−ナフチレン、2,7−ナフチレン、1,4−ナ
フチレン、1,5−ナフチレン、4,4’−ビフェニレ
ン、2,2’−ビフェニレン、4,4’−オキシジフェ
ニレン、4,4’−イソプロピリデンジフェニレン、
4,4’−イソプロピリデン−2,2’,6,6’−テ
トラメチルジフェニレン、4,4’−スルホニルジフェ
ニレン等、およびそれらのモノ、ジ、トリ、テトラ核置
換体を例示することができる。核置換基としてはメチ
ル、エチル、フェニル等の炭素数1〜8のアルキル基、
アリール基、フッ素、塩素等のハロゲン基、ニトロ基、
炭素数1〜8のアルコキシ基等があげられる。 Ar1
Ar2としては、以下に述べる溶解性パラメーターの点
より、これらのうちp−フェニレンが、 Ar3、Ar4
としてはp−フェニレン、4,4’−オキシジフェニレ
ン、4,4’−イソプロピリデンジフェニレン、4,
4’−イソプロピリデン−2,2’,6,6’−テトラ
メチルジフェニレン、4,4’−スルホニルジフェニレ
ン等が好ましい。また、上記式(1)において、Xは−
SO2−である。
【0019】上記式(2)において、Yは置換されてい
てもよい炭素数1〜13の2価の炭化水素基、フッ化炭
素基、ヘテロ原子またはヘテロ原子団である。かかる炭
化水素基としては、上記芳香族炭化水素基の他、メチレ
ン、エチレン、イソプロピリデン等の炭素数2〜6のア
ルキレン基を挙げることが出来る。フッ化炭素基として
は、炭素数2から6のフッ素化アルキル基が好ましく、
フッ素数は1〜6、好ましくは2〜5であり、アルキル
基の炭素数は好ましくは2、3である。具体的なYの構
造としては、1,3−ジフルオロイソプロピリデン、
1,1,3−トリフルオロイソプロピリデン、1,3,
3−トリフルオロイソプロピリデン、1,1,3,3−
テトラフルオロイソプロピリデン、1,1,1,3,3
−ペンタフルオロイソプロピリデン、1,1,3,3,
3−ペンタフルオロイソプロピリデン、1,1,1,
3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピリデン、トリフ
ルオロメチルメチレンなどがあげられる。このうちYと
しては、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソ
プロピリデン、トリフルオロメチルメチレンが好まし
い。
【0020】ヘテロ原子、ヘテロ原子団としては、例え
ば−S−,−O−,−SO−、−SO2−を挙げること
ができる。
【0021】また置換基としてはメチル、エチル、フェ
ニル等の炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、フッ
素、塩素等のハロゲン基、ニトロ基、炭素数1〜8のア
ルコキシ基等があげられる。
【0022】上記式(3)において、Rは炭素数2〜3
のアルキレン基を示し、具体的には、エチレン、プロピ
レン等を例示することができる。Rとしてはこれらのう
ち、エチレンが好ましい。Rは単独の構造でもよいし、
二種以上の構造から構成されていてもよい。また、kは
(RO)kで示されるポリオキシアルキレン構造の分子
量が、400〜20000となるような繰り返し単位数
を示す。ポリオキシアルキレン構造の分子量は、好まし
くは600〜15000、より好ましくは800〜10
000、特に好ましくは1000〜6000である。
【0023】上記ポリアルキルエーテル/ポリアリール
エーテルスルホン共重合体(A)は、上記式(3)で表
わされるポリオキシアルキレン構造の含有量がポリアル
キルエーテル/ポリアリールエーテルスルホン共重合体
に対し、10〜90重量%の範囲である。該ポリオキシ
アルキレン構造の含有量が重量比10%未満ではポリア
ルキルエーテル/ポリアリールエーテルスルホン共重合
体の疎水性が高すぎ、乾燥膜状態での水への濡れが充分
ではない。また90%を超えると親水性が高すぎるた
め、水中への溶出、著しい膨潤が起こり機械的強度も十
分ではない。該ポリオキシアルキレン構造の含有量は、
好ましくは30〜80重量%、より好ましくは30〜7
0重量%である。
【0024】上記ポリ(アルキルアリールエーテル)ス
ルホン共重合体(A)は、好ましくは上記式(2)で表
わされる繰り返し単位に基づく、上記式(1)で表わさ
れる繰り返し単位の割合がモル比で30〜60%の範囲
内である。かかる範囲内であることによって、良好な抗
血栓性を示す。かかる割合は、より好ましくはモル比で
40〜55%であり、さらにより好ましくは43.5〜
49.9%である。
【0025】上記ポリアルキルエーテル/ポリアリール
エーテルスルホン共重合体(A)は、該共重合体の溶解
性パラメータδが9.0〜10.5の範囲にあるものである。
ここでδは下記式(4)で示される。
【0026】
【数1】 δ=ρ・ΣFi/M (4)
【0027】ただしρはポリマーの密度、Mはポリマー
の繰り返し単位構造の分子量、ΣFiはモル吸引力定数で
各部分構造に固有の値である。
【0028】すなわち物性が既知のポリマーではこれら
各変数も公知であり、δを容易に求めることができる。
(例えば、書籍:「ポリマーブレンド」、秋山三郎、井
上隆、西敏夫 共著、株式会社シーエムシー、文献:K.
L.Hoy,J. Paint Technol,42,76(1970)) 一般のポリエ
ーテルスルホンのδは分子構造、及びポリマーが共重合
体の場合その共重合組成により変化する。すなわち物性
が既知のポリマーではこれら各変数も公知であり、δを
容易に求めることができる。一般のゴム系エラストマー
の場合、δはハード及びソフトセグメントの分子構造や
共重合組成により幅はあるが8.0〜10.0程度の範囲の値
をとる。即ちこれらの各種ゴム系エラストマーに対し、
そのδ値が近接したポリアルキルエーテル/ポリアリー
ルエーテルスルホン共重合体(A)ほど、対応する医療
用セグメント化ポリウレタンと相溶し易いといえる。一
般に相溶性が高いポリマーブレンドほど、一方のポリマ
ーの機械特性が変化しにくいが、逆に添加ポリマーの表
面偏析性は低下する。そういう点から本発明のポリアル
キルエーテル/ポリアリールエーテルスルホン共重合体
(A)におけるδは、ゴム系エラストマーとの適度な相
溶性と表面偏析性の兼ね合いという意味で、数値として
δ=9.0〜10.5の範囲が好ましい。δがこの範囲より小
さすぎても大きすぎても、ポリウレタンとの相溶性が不
十分で両者は微細に(サブミクロンオーダーで)混合分
散したブレンド体を形成せずに巨視的(ミクロンオーダ
ー以上のサイズ)で分離し、その機械的特性が損なわれ
るため好ましくない。
【0029】またδが8.0付近でゴム系エラストマーに
近すぎる場合、その表面偏析性が低下してポリマーブレ
ンドによる表面改質効果が機能しない。δの変数として
ポリマー密度が入るため、δをポリマーの構造のみから
予測するのは困難であるが、本発明におけるポリアルキ
ルエーテル/ポリアリールエーテルスルホン共重合体
(A)の場合、δをこの範囲に設定するには Ar1、A
2、Ar3、Ar4としてp−フェニレン、Y'としては
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピリ
デンが好ましく、上記式(3)におけるRはエチレンが
好ましく、kは(RO)kで示されるポリオキシアルキ
レン構造の分子量が、2000〜4000が好ましく、
上記式(3)で表わされるポリオキシアルキレン構造の
含有量がポリアルキルエーテル/ポリフルオロアリール
エーテルスルホン共重合体に対し、50〜70重量%の
範囲であることが好ましい。
【0030】本発明のポリアルキルエーテル/ポリアリ
ールエーテルスルホン共重合体(A)は、例えばビス
(ハロアリール)スルホン 、ジヒドロキシアリール化
合物およびα,ω−ビス(2−ハロアルコキシ)ポリオ
キシアルキレン化合物を、アルカリの存在下、加熱反応
させることによって効率よく製造することができる。
【0031】ビス(ハロアリール)スルホン化合物とし
ては、例えばビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビ
ス(4−フルオロフェニル)スルホン、ビス(3−クロ
ロフェニル)スルホン、ビス(3−フルオロフェニル)
スルホン、ビス(3,4−クロロフェニル)スルホン、
ビス(3,4−フルオロフェニル)スルホン、ビス(4
−クロロビフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロビ
フェニル)スルホン等を挙げることができる。
【0032】ジヒドロキシアリール化合物としては、例
えば4,4’−(1,3-イソプロピリデン)ジフェノー
ル、4,4’−(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロ
ピリデン)ジフェノール、4,4’−オキシジフェノー
ル等を挙げることができる。
【0033】α,ω−ビス(2−ハロアルコキシ)ポリ
オキシアルキレン化合物としては、例えばα,ω−ビス
(2−ブロモエトキシ)ポリオキシエチレン、α,ω−
ビス(2−クロロエトキシ)ポリオキシエチレン、α,
ω−ビス(2−ブロモ−1メチルエトキシ)ポリオキシ
イソプロピレン、α,ω−ビス(2−クロロ−1メチル
エトキシ)ポリオキシイソプロピレン、及びポリオキシ
エチレンとポリオキシイソプロピレンのブロック共重合
体のα,ω−ビスブロモ及び/またはクロロ体を挙げる
ことができる。
【0034】本発明で使用する上記α,ω−ビス(2−
ハロアルコキシ)ポリオキシアルキレンは種々の方法で
合成することができるが、具体的には以下の方法が代表
的である。 (i)ポリオキシアルキレングリコールとハロゲン化リ
ンとを塩基存在下で反応させる。 (ii)ポリオキシアルキレングリコールとハロゲン化
チオニルとを塩基存在下で反応させる。
【0035】上記(i)の方法においては、相当するポ
リオキシアルキレングリコールと塩基とを任意の溶媒の
存在下、ハロゲン化リンを滴下混合し、その後加熱撹拌
することによって合成することができる。ここでポリオ
キシアルキレングリコールのモル数を(A)、ハロゲン
化リンのモル数を(B)とするとき、下記式(5)
【0036】
【数2】 0.75≦(B)/(A)≦2 (5)
【0037】を満たすようにする。ここで(B)/
(A)の値が大きすぎるとハロゲン化リンの量が多すぎ
て無駄になり、小さい場合は収率よく所定の物質が得ら
れない。またこの方法で用いるハロゲン化リンは、反応
性の点から三臭化リンが好ましい。
【0038】溶媒としては、これらの反応成分が溶解混
合し、かつハロゲン化リンと反応する官能基、例えばヒ
ドロキシル基、一級、二級アミノ基等を含有しないもの
であればよく、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭
素、1、2ージクロロエタン、テトラヒドロフラン、二
硫化炭素等を例示できるが、溶解性、反応操作の簡便性
の点から、塩化メチレンを用いることが好ましい。
【0039】かかる溶媒の量としては、反応基質の総重
量に対する重量比で1.0〜10.0倍、さらには2.0〜5.0倍
であることが好ましい。これより溶媒の量が少ないと、
反応基質が析出してしまい、これより溶媒量が多いと生
成物の精製操作が煩雑になったり、反応効率が低下する
恐れがある。
【0040】塩基としては、公知の有機塩基を用いるこ
とができ、例えばピリジン、トリエチルアミン、N,
N’−テトラメチルエチレンジアミン、HMPA(ヘキ
サメチルリン酸トリアミド)、DBU(1、8−ジアザ
ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7)などを例示で
きるが、ピリジンを使用することが好ましい。
【0041】かかる塩基はハロゲン化リンに対して1.
5〜3.0等量程度用いるが、最適量は塩基の種類、お
よび前記(5)式の(B)/(A)の値などの反応条件
によっても異なる。例えば塩基としてピリジンを用い、
溶媒として塩化メチレンを使用し、(B)/(A)=
0.75となるようにして反応する場合には、ピリジン
はハロゲン化リンに対して3.0等量程度用いるのが好
ましい。
【0042】反応温度は、溶媒から原料成分が晶析しな
ければ室温以下でもかまわず、また100℃以下の沸点
を有する溶媒を用いる場合、溶媒環留温度で反応させて
もかまわない。ただし反応初期にハロゲン化リンを塩基
とポリオキシアルキレングリコールの混合溶液に滴下す
る際は、急激に発熱し、操作上突沸等の危険を伴う可能
性があるので、滴下時は氷冷下0〜5℃に保つのが好ま
しい。また反応温度が100℃を超える場合、副反応を
起こし目的物質の収量が減少し、温度が低すぎると反応
速度が低下する。ハロゲン化リンとして三臭化リンを用
いる場合、反応温度は30〜50℃が好適である。
【0043】上記(ii)の方法においては、相当する
ポリオキシアルキレングリコールと塩基とを任意の溶媒
の存在下、まず第一段階のハロゲン化チオニルを滴下混
合して反応させ、その後さらに第二段階として等量のハ
ロゲン化チオニルを加え加熱撹拌することによって合成
することができる。第一、第二段階の反応はそれぞれ下
記式(6)、(7)で表される。
【0044】
【数3】 nHO-(-RO-)k-OH + nSOX2 → -[O-(RO-)k-OS(O)]n- +2nHX (6) -[O-(RO-)k-OS(O)]n- + nSOX2 → nX-(-RO-)k-X + 2SO2 (7)
【0045】従って、ポリオキシアルキレングリコール
のモル数を(A)、ハロゲン化チオニルのモル数を(B
1、第一段階でのモル数)、(B2、第二段階でのモル
数)とするとき、下記数式(8)、(9)
【0046】
【数4】 (B1)/(A)=1 (8) (B2)/(A)=1 (9)
【0047】を満たすように反応条件を設定する。すな
わち全体として塩化チオニルはポリオキシアルキレング
リコールの二倍モル等量用いればよい。ここで(B)/
(A)の値が大きすぎるとハロゲン化チオニルの量が多
すぎて無駄になり、小さい場合は収率よく所定の物質が
得られない。また、この方法で用いるハロゲン化チオニ
ルは、反応性の点から塩化チオニルであることが好まし
い。
【0048】溶媒としては、前記(i)の方法同様、こ
れらの反応成分が溶解混合し、かつハロゲン化チオニル
と反応する官能基、例えばヒドロキシル基、一級、二級
アミノ基等を含有しないものであればよく、塩化メチレ
ン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタ
ン、テトラヒドロフラン、二硫化炭素等を例示できる
が、溶解性、反応操作の簡便性の点から、塩化メチレン
を用いることが好ましい。
【0049】溶媒の量、反応温度についても、前記
(i)の方法に準ずる。
【0050】用いる塩基の種類も前記(i)の方法に準
ずるが、ピリジンを使用することが好ましい。塩基は第
一段階の反応で加えたハロゲン化チオニルに対して、
2.0等量程度か若干過剰量(2.1等量)用いるが、第
二段階の反応においては塩基を追加する必要はない。第
一段階の反応における塩基添加量の最適量は塩基の種類
によるが、原理的に複製する塩酸を中和できる理論量で
あればよい。例えば塩基としてピリジンを用い、塩化チ
オニルでポリオキシアルキレングリコールを塩素化する
場合には、ピリジンは第一段階で加えたハロゲン化チオ
ニルに対して2.0等量程度用いるのが好ましい。
【0051】本発明によれば、このようにして得られる
α,ω−ビス(2−ハロアルコキシ)ポリオキシアルキ
レンを用いて、これとビス(ハロアリール)スルホンお
よびジヒドロキシフルオロアリール化合物をアルカリの
存在下、加熱反応させることによって目的のポリアルキ
ルエーテル/ポリアリールエーテルスルホン共重合体を
製造することができる。
【0052】反応は、上記ビス(ハロアリール)スルホ
ンとα,ω−ビス(2−ハロアルコキシ)ポリオキシア
ルキレンのモル数の和が、上記ジヒドロキシアリール化
合物のモル数と等量となるように仕込んで混合し、適当
な溶媒の存在下、アルカリと共に反応せしめる。ビス
(ハロアリール)スルホンとα,ω−ビス(2−ハロア
ルコキシ)ポリオキシアルキレンのモル比を変えること
で、種々の組成のポリアルキルエーテル/ポリアリール
エーテルスルホン共重合体を得ることができる。加熱反
応温度は120〜300℃が好ましく、より好ましくは
130〜250℃である。反応温度が400℃より高い
と副反応が起こったり、原料の分解が起こりやすく、ま
た120℃より低いと反応が遅くなる。
【0053】反応に用いるアルカリとしては、アルカリ
金属炭酸塩または水酸化物が好ましく、例えば炭酸リチ
ウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化リチウ
ム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素リチ
ウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等をあげ
ることができる。中でも炭酸塩、特に炭酸カリウムが好
ましい。アルカリの量は、反応中に発生するハロゲン化
水素を実質的に中和する量であることが必要であるが、
実際は理論量よりも5%程度多くても、少なくても、反
応させることができる。反応には適当な可塑剤、溶媒を
用いることもできる。適当な溶媒を例示すれば、ジフェ
ニルスルフォン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメ
チルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド等を用いる
ことができるが、中でもN,N−ジメチルアセトアミ
ド、ジフェニルスルフォンが好ましい。
【0054】反応に際してその促進のために添加剤を加
えることができる。かかる添加剤の例として金属または
その塩、包接化合物、キレート剤、有機金属化合物など
をあげることができる。
【0055】本発明におけるポリアルキルエーテル/ポ
リアリールエーテルスルホン共重合体(A)は、還元粘
度が0.5以上、好ましくは1.0〜5.0である。還元
粘度が0.5未満の場合には、ポリマーの機械的強度が
不充分となり好ましくない。なお、ここでいう還元粘度
は、フェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン
混合溶媒(重量比6/4)中、ポリマー濃度1.2g/
dl、温度35℃で測定される値をいう。
【0056】本発明のポリアルキルエーテル/ポリアリ
ールエーテルスルホン共重合体は、その目的に応じてポ
リオキシアルキレン構造の分子量、共重合組成を任意に
変化させることができる。
【0057】なお本発明において、上記ポリアルキルエ
ーテル/ポリアリールエーテルスルホン共重合体は、そ
の性質が本質的に変化しない範囲(例えばポリマーの2
0重量%以下、好ましくは10重量%以下)で他の成分
を共重合成分として含有していてもよい。共重合させる
他の成分としては、例えば、エチレンテレフタレート単
位を主たる繰り返し単位として含有するポリエステル、
ブチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とし
て含有するポリエステル、ジフェニルスルホンを主たる
繰り返し単位として含有するポリエーテルスルホン、ジ
フェニルスルホンとビスフェノールAの縮合物を主たる
繰り返し単位として含有するポリスルホン、ビスフェノ
ールAの炭酸エステルを主たるくり返し単位として含有
するポリカーボネート等を挙げることができる。
【0058】本発明のポリアルキルエーテル/ポリアリ
ールエーテルスルホン共重合体(A)は、ヒト血漿に3
7℃で一時間接触した時のMicroBCA法により測
定した蛋白吸着量が非常に少なく、0.7μg/cm2
以下であり、血漿溶液に接したときの血液中の蛋白およ
び血小板の粘着等に対して優れた吸着抑制効果を有す
る。この理由については、以下のように考えられる。上
記ポリアルキルエーテル/ポリアリールエーテルスルホ
ン共重合体は、剛直部位で疎水性の大きなポリアリール
スルホン(ハード成分)及びポリマー主鎖中に固定され
た親水性ポリオキシアルキレンユニット(ソフト成分)
を有しており、これら親水性セグメントと疎水性のポリ
アリールスルホンセグメント双方は熱力学的にのみなら
ず、巨視的に相分離した表面構造を特徴とする。かかる
ポリマーには主鎖中に水素結合供与基が存在しないた
め、主鎖間の相互作用が小さく、該親水性ポリオキシア
ルキレンユニットのドメインには、疎水性相互作用を逓
減しうる水分子の接触が容易に起こる。従ってドメイン
のパターンに基づく生体蛋白の表面への選択的吸着が起
こり、吸着蛋白は表面で変性することがない。この結
果、ポリマー表面は正常蛋白が単分子層で表面吸着した
状態となり、それ以上の生体成分(赤血球、白血球およ
び血小板)の粘着が抑制される。また補体活性化、血栓
形成、細胞膜損傷等の有害な生体反応を回避できる。か
かる蛋白吸着量は少ないほど望ましいが、0.3〜0.
7μg/cm2の範囲にあれば実際的に十分効果があ
る。
【0059】こうして調製したポリアルキルエーテル/
ポリアリールエーテルスルホン共重合体(A)は、種々
の方法によりゴム系エラストマー(B)と混合されて本
発明の抗血栓性に優れた高分子組成物が提供される。
【0060】上記共重合体(A)を混合するゴム系エラ
ストマー(B)としては、数平均分子量10,000〜
1,000,000の素材であれば良く、特に医用材料と
して広く用いられている医療グレードのゴム系エラスト
マーが好ましい。そのような医療用ゴム系エラストマー
を例示すると、イソプレノイド骨格からなる天然ゴムを
架橋したものや、天然ゴム類似骨格をハロゲン化したク
ロロプレンゴム、スチレン骨格をハードセグメントと
し、エチレン、イソプレン、ブタジエン、水素化エチレ
ンブタジエン等の脂肪族ソフトセグメントとのABAブロ
ック共重合体であるSES( Kraton G )、SIS(VECTO
R)、SBS(KR-10、Styrolux)、SEBS(タフテック)等
のスチレン型ゴム系エラストマー、結晶性エチレン骨格
をハードセグメントとし、非晶性プロピレン等をソフト
セグメントとするエチレン/プロピレンゴム等が挙げら
れる。もちろんこれらのゴム系エラストマー(B)は上
記共重合体(A)と分子レベルでは均一には混合せず、
以下に説明するように、ポリアルキルエーテル/ポリア
リールエーテルスルホン共重合体(A)が大量のゴム系
エラストマーの海の中にサブミクロンオーダーの島状に
分散し、更にこの島が凝集しブレンド体の表面に偏析し
た組成物を形成すると考えられる。
【0061】ゴム系エラストマー(B)への上記ポリア
ルキルエーテル/ポリアリールエーテルスルホン共重合
体(A)のブレンド比率に関しては、上記共重合体
(A)が少なくとも重量比1%以上であるべきであり、
1〜50重量%とすることが好ましく、10〜30重量
%とすることがより好ましい。上記共重合体(A)のブ
レンド率が1重量%未満であると、該共重合体(A)の
表面偏析絶対量が少なすぎるため、十分な抗血栓化の効
果が得られず、また50重量%を超えると、素材の形状
によっては本来の物理的特性、使用条件が大きく変化す
る恐れがある。
【0062】ブレンド方法に際しては、ポリマーの物性
により様々の方法が考えられるが、この高分子組成物
は、例えば共重合体(A)とゴム系エラストマー(B)
とを上記所定の割合で有機溶媒に溶解し、しかる後有機
溶媒を除去して調製したり、あるいは共重合体(A)と
ゴム系エラストマー(B)とを上記所定の割合で溶融混
合することにより調製することができる。
【0063】先述の通り、上記高分子組成物において、
共重合体(A)とゴム系エラストマー(B)とは、分子
レベルで均一に混合することはなく、別個の相(ゴム系
エラストマー(B)の海/共重合体(A)の島)をサブ
ミクロンオーダーで形成し、相分離して存在する。
【0064】ポリアルキルエーテル/ポリアリールエー
テルスルホン共重合体(A)は、親水性のポリオキシエ
チレン鎖を有しており、基本的に従来の疎水性高分子材
料と分子レベルで均一混合することはない。従って得ら
れる高分子組成物(以降ブレンド体を呼ぶことがある)
は両ブレンド成分、すなわちポリアルキルエーテル/ポ
リアリールエーテルスルホン共重合体(A)とゴム系エ
ラストマー(B)とはサブミクロンオーダーで相分離し
た構造を有する。この相分離状態において、上記共重合
体(A)はブレンド体の表面(厳密にはキャストフィル
ム成膜時の空気界面のようなポリマー近傍のバルク界
面)に優先して偏析する。偏析の駆動力としては、ポリ
アリールエーテルスルホンユニット自体のゴム系エラス
トマーとの低い相溶性が寄与するほかに、界面が水との
接触面であれば、該共重合体の親水性ユニットであるポ
リオキシエチレン鎖の親水性が、また空気との界面であ
れば表面自由エネルギーの小さなポリアリールエーテル
スルホンユニットの疎水性、疎油性が主として働く。得
られたブレンド体は共重合体(A)が表面に偏析してい
るので、先述の機構により、血液接触時に血液適合性を
示すものと推定される。抗血栓性発現にはブレンド体の
表面組成について上記共重合体が30重量%以上となる
よう高濃度に偏析して存在することが好ましいが、40
重量%以上となることがより好ましく、50重量%とな
るよう偏析することがさらに好ましい。ここで言う表面
組成とは、あくまでポリマーの表面近傍、具体的には表
面から深さ100Å程度までの領域でのポリマーの分率
を指しており、両者のポリマー全体でのブレンド組成の
ことではない。
【0065】本発明によれば、高分子組成物のこのよう
な性質を利用して、血液と接触して使用されるための医
療用材料であって、少なくとも血液と接触して使用され
る表面を持つ部分はポリアルキルエーテル/ポリアリー
ルエーテルスルホン共重合体(A)とゴム系エラストマ
ー(B)とからなる高分子組成物を素材として形成さ
れ、そして該部分の表面近傍における上記共重合体
(A)の濃度が該部分を形成する該ポリマー組成物全体
中の上記共重合体(A)の濃度よりも高いことを特徴と
する医療用材料が提供される。
【0066】表面近傍における共重合体(A)の割合
は、ポリマー組成物の有機溶媒溶液から医療用材料を製
造する際に、ポリマー組成物全体中の共重合体(A)の
割合(濃度)よりも高くなる。すなわち、ドープ溶液か
らブレンド体を成型する場合、有機溶媒が飛散するにつ
れて、また溶融してブレンド後に射出成型する場合、金
型との界面でブレンド体が冷却、固化する過程で相分離
が起り、最終的に表面近傍において共重合体(A)の濃
度の高い医療用材料が得られる。表面近傍とは厳密では
ないが表面から深さ100Å程度までの領域である。
【0067】また、これらの医療用材料は、成型後に表
面を熱水処理することにより、表面に濃縮された共重合
体のコンフォメーションを安定化して、共重合体が更に
均質に表面偏積した材料となる。用いるブレンド系と成
型条件によっては、熱水処理を行うことなくそのような
均質な偏積表面を与える場合もあるが、熱水処理するこ
とでそうでない表面も均質化することができる。処理熱
水の温度としては、共重合体のポリエチレンオキシド鎖
の融解温度であれば良く、50〜80℃であることが好まし
い。
【0068】本発明によれば、血液と接触して使用され
る部分が薄い厚みを持つ医療用材料は特に下記方法によ
って有利に製造される。
【0069】すなわち、本発明によれば、さらに、ポリ
アルキルエーテル/ポリアリールエーテルスルホン共重
合体(A)、ゴム系エラストマー(B)およびこれらを
溶解し得る非プロトン性極性有機溶媒(C)とからな
り、そして上記(A)成分および(B)成分の合計濃度
が1〜30重量%であるドープを準備し、このドープを
薄膜に形成し、この薄膜を湿式もしくは乾式成形法に付
して厚さが1mm以下の、血液や接触して使用される部
分を持つ医療用材料を生成せしめることを特徴とする医
療用材料の製造法が提供される。
【0070】非プロトン性極性有機溶媒としては、これ
ら双方の高分子(A)及び(B)が溶解する溶媒、例え
ばテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン等の脂肪族環
状エーテルおよびこれらと各種有機溶媒との混合溶媒が
好適に用いられる。
【0071】ドープを薄膜に形成するには、例えばドー
プを基材上にキャストしてフィルム状にしたりあるいは
管状にしたりすることにより行うことができる。ドープ
中の(A)成分と(B)成分の合計濃度は、キャストの
際には好ましくは5〜20重量%、より好ましくは10
〜15重量%であり、中空糸状に紡糸する際には好まし
くは5〜30重量%、より好ましくは10〜20重量
%、特に好ましくは13〜14重量%である。
【0072】ドープは薄膜に形成されたのち、湿式もし
くは乾式法により非プロトン性極性有機溶媒を除去さ
れ、多孔膜やフィルム等の自立性のある成形品としての
医療用材料を与える。
【0073】ここで湿式法とはドープの薄膜を水/非プ
ロトン性有機溶媒および次いで水中で処理することによ
り、ドープ中の非プロトン性有機溶媒を除去する方法で
あり、乾式法はドープの薄膜を常温、常圧下あるいは4
0〜50℃で1〜30mmHg程度の減圧下で処理する
ことにより、ドープ中の非プロトン性有機溶媒を同様に
除去する方法である。
【0074】得られる医療用材料の血液と接触して使用
される部分である薄膜は好ましくは1μm〜1mmの厚
みを有し、とりわけ中空糸では10〜50μmの膜厚を
持つのが有利である。
【0075】こうして得られる高分子組成物は、濃度5
重量%であるヒト貧血小板血漿(PPP)のリン酸緩衝
液に37℃、一時間接触させた時の上記共重合体表面へ
の蛋白吸着量が0.8μg/cm2以下(MicroBCA法によ
るアルブミン換算)であることが好ましく、0.6μg
/cm2以下であることがより好ましい。血液接触時の
蛋白吸着量が0.8μg/cm2以上であると、それに続
く血小板粘着、活性化を十分に抑制できないため、血栓
形成が進行する。
【0076】(作用)本発明の抗血栓性に優れる高分子
組成物は、該材料の血液と接触する部分に、上記のポリ
アルキルエーテル/ポリアリールエーテルスルホン共重
合体(A)がゴム系エラストマー(B)にブレンド混在
していることを特徴とする。ここで血液と接触する部分
とは、血液が接触する材料の表面およびその近傍をさ
す。先述のように、該材料中において上記ポリアルキル
エーテル/ポリアリールエーテルスルホン共重合体
(A)は、もう一つのブレンド体の成分であるゴム系エ
ラストマー(B)と巨視的に相分離した状態にある。上
記共重合体のポリオキシエチレンユニットは、溶媒除去
の際に、ブレンド体における界面自由エネルギーを安定
化させるべく、ブレンド体内部より、むしろブレンド体
とバルクとの界面(血液/ブレンド体界面)に配向す
る。従って水(これは血液の主成分である)の存在下、
血液との接触界面の大部分にわたって上記共重合体
(A)が配向し、血漿蛋白の吸着および血小板粘着を抑
制できるものと考える。例えば、実際に人工透析用中空
糸として使用する場合には、少なくとも血液が流れるそ
の多孔膜表面に上記共重合体(A)が混在されていれば
よい。従って材料全体を本発明のブレンド体自体によっ
て成形してもよいし、他の素材と複合する方法も好まし
く実施できる。
【0077】
【発明の効果】本発明の抗血栓性に優れる高分子組成物
は、蛋白質や血球などの生体成分の吸着が少なく、また
吸着した蛋白質の変性や接触した血小板の粘着、活性化
を抑制することができる。更にブレンド体中のオキシエ
チレン自由末端鎖、遊離水酸基末端数等が少ないため、
補体活性化、細胞膜損傷を回避できる。それ故、本発明
の高分子組成物の利用分野としては、直接血液成分と接
触して用いることが主たる目的となる医療用材料として
有用であり、例えば、人工腎臓、人工血管、人工心肺、
血液透析膜用の血液チューブ、ブラッドアクセス、また
は血液バッグ、カテーテル、血漿分離膜等に用いること
ができる。そして、このような材料として本発明の高分
子組成物を用いる場合、ブレンド体自体を材料として用
い中空糸、シート、フィルム、チューブとして成形する
のみならず、ブレンド体を溶媒に溶解し、この溶液をこ
れら各種材料表面に塗布し、血液接触表面のみを改質す
ることも可能である。
【0078】
【実施例】以下、参考例および実施例によって本発明を
更に詳しく説明する。ただし、以下の実施例は本発明を
限定するものではない。 1.例中の「部」は特にことわらない限り「重量部」を
表す。
【0079】2.高分子組成物の作成とESCAによる
表面組成解析 ゴム系エラストマーを、上記共重合体(A)と乾式ブレ
ンドすることにより、高分子組成物を作成し、その表面
組成をESCAにより解析した。高分子組成物の作成
は、次のように行った。参考例で製造した該共重合体
(A)を代表的なスチレン系ゴム系エラストマーである
タフテックH-1501( 数平均分子量80000、旭化成製、溶
解性パラメータδ=8.2)と共に窒素気流下240℃で溶融
ブレンドすることで抗血栓性医療用高分子組成物のブレ
ンドペレットを得た。ついで選られたペレットを加圧プ
レス機により160℃、40Kg/cm2の条件でフィルム状に製
膜した。最後にこのフィルムを70℃の水中で2時間処理
することで試料フィルムを作成した。また比較試料とし
て、血液適合性ポリマーを添加していない未ブレンドエ
ラストマーについても同様の手法で溶融成型することで
フィルムを作成した。
【0080】ESCAの測定には、試料膜を直径1cmの
円盤上に切り出し、測定試料とした。装置はVG社ES
CALAB−200を用い、MgKα線を光電子取り出
し角45゜となるよう照射、スキャンした。測定は、キ
ャスト時空気界面と接触していた表面(表)と、テフロ
ン支持基板と接していた表面(裏)について各々行っ
た。
【0081】3.蛋白質吸着量の評価 膜に吸着したタンパク質の定量評価は、MicroBCA法によ
り行った。これは銅イオンおよび下記構造で示される B
CA蛋白検出試薬を用いたキットによる蛋白定量法であ
る。試料中に存在する蛋白により一価に還元された銅イ
オンのみが、この試薬とキレート反応を行い発色(57
0nm)するため、サンプルの吸光度測定より蛋白濃度
(アルブミン換算)を定量することができる。
【0082】
【化3】
【0083】評価にあたっては、比較例としてオリジナ
ルのタフテックH-1501を用いた。
【0084】サンプルの作成については、実施例1と同
様に調整した共重合体(A)とタフテックH-1501(B)
とのブレンド膜を直径15mmに切り出して評価試料とし
た。測定ではこれらの膜をヒト貧血小板血漿(PPP)
を用い、この血漿溶液に接触させたときの蛋白吸着量を
分光定量した。評価に際しては、PPPをリン酸緩衝液
で所定濃度(5重量%リン酸緩衝液溶液)に調製したも
のを37℃、一時間ポリマー膜へ接触させ、吸着蛋白を
1wt%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液で抽出、MicroBCA
キットを用い、常法により発色させ、吸光度から吸着
量を見積った。
【0085】4.SEM観察による膜表面に吸着した血
小板粘着の評価 一般に、重篤な血栓形成の前段階である血小板の粘着、
凝集には,材料表面へ吸着するタンパク質の種類及びそ
の表面における配向が大きく関与することが知られてい
る。そして粘着した血小板の活性化(変形、顆粒放出)
がその後の凝集、血小板血栓形成、凝固因子系の反応促
進に影響する。従って血液(全血又は成分血)と接触し
た後の材料表面における血小板の粘着状態を観察するこ
とで、そのポリマーの血液適合性の程度を大まかに見積
もることができる。
【0086】ここではヒト多血小板血漿(PRP)を用
い、PRP接触後の膜表面の血小板粘着挙動をSEMに
より観察した。PRPはヒト上腕部静脈より採取した新
鮮血に3.5wt%クエン酸三ナトリウム水溶液を1/
9容加え、1000r.p.m.で10分遠心分離した
上澄みを調製した。サンプルは先述のポリエーテル/ポ
リアリールエーテルスルホン共重合体(A)とタフテッ
クH-1501(B)とのブレンド膜、比較例のタフテックH-
1501単独の平膜を用いた。これらを培養シャーレ(Fa
lcon,24well)中、0.7mlのPRPと3
7℃、3時間接触した.接触後のポリマーサンプルは蒸
留水でよく洗浄し、2.5wt%グルタルアルデヒド水
溶液で室温下二時間かけて固定し、凍結乾燥後、金蒸着
して観察試料とした。
【0087】[参考例1] (α,ω−ビス(2−クロロエトキシ)ポリオキシエチ
レン(数平均分子量3000)の合成) ポリエチレングリコール(#3000)30部、ピリジ
ン2.4部、脱水クロロホルム150部をスリ付き三角
フラスコ中に仕込み、撹拌して均一溶液とした。これに
塩化チオニル1.8部、脱水クロロホルム15部の混合
溶液を氷冷下30分かけて滴下、その後氷冷をはずして
液温が室温に上昇した後、更にもう8時間撹拌を続け
た。クロロホルムを減圧留去後、更にもう15部の新鮮
な塩化チオニルを加え、24時間加熱乾留した。その後
減圧下で余剰の塩化チオニルを留去し、残査を新鮮なク
ロロホルム300部に溶解し、飽和食塩水200部で三
回洗浄、ついで純水200部で一回洗浄し、クロロホル
ム層を分取、無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥した。クロ
ロホルムを留去し得られた油状物は室温で直ちに固化し
た。これをアセトン40部に加熱溶解し、ジエチルエー
テル200部より再沈殿を行うことで白色粉状晶28.
8部を得た。生成物の融点は、50.5℃〜53.5℃で
あった。IR(赤外分光)測定よりこの化合物はα,ω−
ビス(2−クロロエトキシ)ポリオキシエチレン(数平
均分子量3000)であることが確認された。
【0088】[実施例1〜3、比較例1〜2(ポリマー
の製造)]4,4-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェ
ノール16.81部、ビス(4−クロロフェニル)スルホン1
0.79部、及び予めトルエンとの共沸により共存する水分
を除去したα,ω−ビス(2−クロロエトキシ)ポリオ
キシエチレン(数平均分子量3035)30.70部、トルエン5
0ml、N,N-ジメチルアセトアミド50ml、炭酸カリウム8.9
7部を、窒素導入口と排出口を持った3つ口フラスコに
入れ、これをディーン・スタークス・トラップに誘導し
窒素置換を行い、115〜125℃で16時間加熱環流
を行った。反応に伴う水の流出が終了したのを確認後、
トルエンを8時間かけて留去しながら、新たにN,N−
ジメチルアセトアミドをトルエンの減少分を補う形で計
100ml加え、フラスコ内を窒素置換後、135〜150
℃で30時間加熱撹拌し、反応せしめた。反応後、全体を
イオン交換水3000mlに撹袢しながら開け洗浄後、更に新
たなイオン交換水3000mlで2時間撹袢洗浄するという操
作を3回繰り返した。ついでポリマーを0.1wt%塩酸水溶
液3000mlで8時間撹袢洗浄、残存するアルカリ触媒を完
全に失活させ水中に溶出した。これを更に新たなイオン
交換水3000mlで2時間撹袢洗浄、脱塩酸するという操作
を3回繰り返した。得られたポリマーを80℃、24時
間かけて減圧乾燥後クロロホルムで抽出し濾過、乾燥し
た。最終的に理論収率の92%程度(約48g)の乾燥
ポリマーを得た。このポリマーはポリオキシエチレン成
分60重量%とポリスルホン成分40重量%とからなる
共重合体であり、これをPEO3000(60)−co
−PFS(40)と略す。
【0089】このポリマー120mgをフェノール/
1,1,2,2−テトラクロルエタン混合溶媒(重量比
6/4)10mlに溶解させ、還元粘度を測定したとこ
ろ1.15であった。また、このポリマーの数平均分子
量は約31000(ポリスチレン換算)であった。結果
を表1に示す。
【0090】同様な方法で、共重合体組成の異なるPE
O3000(60)−co−PS(40)及びPEO3
000(50)−co−PFS(50)を合成した。こ
れらのポリマーの分子量、粘度を表1に併記した。ま
た、用いたポリマーの構造も示す。
【0091】また比較例として、PEO3000(6
0)−co−PPES(40)及びPEO3000(6
0)−co−PES(40)についても記した。
【0092】
【表1】
【0093】1)略号はそれぞれ下記構造式に対応する。 2)フェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン混
合溶媒(重量比6/4)10mlに120mgを溶解させ
て35℃で測定した還元粘度。
【0094】
【化4】
【0095】[実施例4〜6、比較例3(高分子組成
物、それからなる膜の製造及びESCAによる表面組成
解析)]各種ポリアルキルエーテル/ポリアリールエー
テルスルホン共重合体(A)とタフテックH-1501(B)
とのブレンド体より成る高分子組成物の膜のESCAに
よる表面組成解析結果を表2に示す。
【0096】(A)と(B)のブレンド比は90/10
(重量比)であった。ここで比較例1、2の血液適合性
を有する他の共重合体を用いた場合、これらの溶解性パ
ラメータδは何れも10.5より大きいため、比較例2
及び3の共重合体(PEO3000(60)−co−P
PES(40)及びPEO3000(60)−co−P
ES(40))についてはNMPドープにおいて肉眼でも
巨視的に相分離してしまい、均一なブレンド体を調整す
ることができなかった。一方実施例1〜3の血液適合性
ポリマー(A)のδは10.5以下であり、ゴム系エラ
ストマーと肉眼でも均質なブレンド体を調製できた。何
れのブレンド体も、表面より深さ100Å内の表面組成
において、該共重合体(A)の分率は均一混合を仮定し
た値を上回り、該共重合体が有効に膜の表面偏析してい
ることを確認した。
【0097】
【表2】
【0098】[実施例7〜9、比較例4(蛋白質吸着量
の評価及びヒトPRPを用いたポリマー表面への血小板
粘着のSEM観察)]上記の方法に従って膜表面の蛋白
質吸着量を測定した。膜を構成する共重合体(A)のブ
レンド率は10重量%である。表3に示すように、本発
明のポリアルキルエーテル/ポリアリールエーテルスル
ホン共重合体とゴム系エラストマーとの高分子組成物
は、従来のゴム系エラストマーに比べ、有意な蛋白吸着
抑制を示した。また、表3にはPRP接触後の各種ポリ
マーの膜表面の血小板粘着数を併記した。
【0099】先の検討により、タンパク吸着抑制能が低
いゴム系エラストマーでは、多くの血小板が表面に粘着
が認められた.一方、タンパク吸着抑制能の高いポリア
ルキルエーテル/ポリアリールエーテルスルホン共重合
体(A)とゴム系エラストマー(B)とのブレンドマー
膜は、オリジナルのゴム系エラストマーと比較して明ら
かな血小板粘着抑制が見られた。
【0100】以上の結果より、タンパク吸着抑制能に優
れた本発明の高分子組成物は、既存のゴム系エラストマ
ーに比べ、血小板の粘着を有意に抑制することが示され
た。
【0101】
【表3】
【0102】1)アルブミン換算した値 2)粘着血小板の活性化に伴う変形の度合を定量化した
値。血小板の変形状態を、未変形を第1段階として4段
階に分類し各状態の血小板の個数にその段階の数を乗
じ、総和を粘着血小板総数で割り、形態指数とする。従
って粘着血小板全てが未変形であれば形態指数は1とな
り、全てが第4段階の変形を起こしていれば指数は4と
なる。
【0103】これにより、本発明の高分子組成物を医用
素材として用いることで、ゴム系エラストマーが本来有
する優れた機械特性を維持し、なおかつ血液適合性に優
れた医療用材料を提供できることが明らかになった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C081 AB13 AB35 AC08 AC12 AC15 BA04 BB04 CA032 CA042 CA122 CA181 CA281 CB052 CC02 CC08 DA02 DA03 DA04 DC12 EA02 EA12 4J002 AC011 AC091 BB151 BP011 BP021 CN032 GB01 4J030 BA09 BA42 BA48 BA49 BB46 BB52 BB61 BC02 BD21 BE04 BF01 BF03 BF16 BF19 BG11 BG32

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(1)〜(3) 【化1】 −(−Ar1−X−Ar2−O−)− ・・・(1) −(−Ar3−Y−Ar4−O−)− ・・・(2) −(−RO−)k− ・・・(3) (ここで、Xは−SO2−であり、Ar1およびAr2
    それぞれ独立に、核置換されていても良い炭素数6〜3
    0の2価の芳香族炭化水素基であり、Ar3及びAr4
    それぞれ独立に、核置換されていても良い炭素数6〜3
    0の2価の芳香族炭化水素基であり、Yは置換されてい
    てもよい炭素数1〜13の2価の炭化水素基、フッ化炭
    素基、ヘテロ原子またはヘテロ原子団であり、Rは炭素
    数2〜3のアルキレン基であり、kは(RO)kで示さ
    れるポリオキシアルキレン構造の分子量が2000〜2
    0000となるような単位繰り返し数である。)で示さ
    れる繰り返し単位から実質的になり、かつ上記式
    (1)、(2)及び(3)で表される繰り返し単位の合
    計量に基づく、上記式(3)で表わされる繰り返し単位
    の含有量が重量比で10〜90重量%の範囲内であり、
    フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン6/
    4(重量比)混合溶媒で濃度1.2g/dl、35℃で
    測定した還元粘度が0.5以上であり、溶解性パラメー
    ターが9.0〜10.5の範囲であるポリアルキルエー
    テル/ポリアリールエーテルスルホン共重合体(A)1
    〜50重量部、及びゴム系エラストマー(B)99〜5
    0重量部とから構成されていることを特徴とする抗血栓
    性に優れた高分子組成物。
  2. 【請求項2】 上記ポリアルキルエーテル/ポリアリー
    ルエーテルスルホン共重合体(A)1〜50重量部、及
    びゴム系エラストマー(B)99〜50重量部とから構
    成されている高分子組成物を、血液と接触して使用する
    ための医療用材料を製造するための素材として使用する
    こと。
  3. 【請求項3】 血液と接触して使用されるための医療用
    材料であって、少なくとも血液と接触して使用される表
    面を持つ部分は、上記ポリアルキルエーテル/ポリアリ
    ールエーテルスルホン共重合体(A)1〜50重量部、
    及びゴム系エラストマー(B)99〜50重量部とから
    構成されている高分子組成物を素材として形成されてい
    る医療用材料。
  4. 【請求項4】 血液と接触して使用される表面を持つ部
    分の表面近傍における上記ポリアルキルエーテル/ポリ
    アリールエーテルスルホン共重合体(A)の濃度が、該
    部分を形成する該高分子組成物全体中の上記共重合体
    (A)の濃度よりも高い請求項3記載の医療用材料。
  5. 【請求項5】 上記ポリアルキルエーテル/ポリアリー
    ルエーテルスルホン共重合体(A)1〜50重量部、及
    びゴム系エラストマー(B)99〜50重量部とをブレ
    ンド混合後、血液と接触して使用される表面を熱水処理
    することを特徴とする医療用材料の製造方法。
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