JP2004067758A - 分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体 - Google Patents

分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体 Download PDF

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Toshitsugu Maniwa
真庭 俊嗣
Junya Sato
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Abstract

【課題】血液処理過程における親水性成分の溶出が少なく、かつ、血液適合性に優れる分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体、及び該共重合体からなる血液適合性材料を提供すること、更には該血液適合性材料を用いた中空糸状分離膜を提供すること。
【解決手段】重量平均分子量がポリスチレン換算2000以上5000未満のポリスルホン系ポリマー由来のセグメントと、重量平均分子量がポリスチレン換算600以上100000以下の分岐ポリエチレンオキシド由来のセグメントとからなり、ポリスルホン系ポリマー由来のセグメントの重量分率が5%以上65%未満であり、重量平均分子量が10000以上1000000以下である分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体、該共重合体からなる血液適合性材料、該共重合体を親水性成分としてブレンドした中空糸状分離膜。
【選択図】 選択図なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体、及び該共重合体からなる血液適合性材料に関する。特に体外循環血液処理用分離膜の構造材料に好適に用いられる血液適合性材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
人工腎臓や人工肝臓など血液の体外循環による血液浄化、血液製剤製造における血液成分の分離においては、孔径を制御した中空状分離膜が広く用いられている。この分離膜を用いた分離工程においては、血液中の蛋白吸着による孔の閉塞、蛋白の変成を抑制することが重要であり、そのために血液に接する細孔をも含む膜表面の親水化は大きな技術課題となっている。特に、人工腎臓として用いられる透析用分離膜における血漿タンパクの吸着は透析効率を低下させるのみならず、血小板や白血球の活性化を促進し、透析患者の合併症の惹起、それによる社会復帰の遅延など、いわゆる、quality of life(QOL)を著しく悪化させる要因になる。
【0003】
親水化された血液処理用分離膜としては、分離膜の孔径制御、力学強度、及び耐滅菌性の視点から、構造材料として芳香族ポリスルホン(以後、PSfと略記する。)を用い、それに親水性高分子であるポリビニルピロリドン(以後、PVPと略記する。)をブレンドした中空状分離膜が広く工業的に生産されている。しかし、このPVPブレンド膜においてはPVPが親水性であるために、その湿式成形過程において多量のPVPが凝固浴に析出して失われる上に、血液処理時におけるPVPの溶出を防ぐために、長時間の洗浄が必要であり、製品の大幅なコストアップの原因になっている。
【0004】
この改良法の一つとして特表平08−505311号公報には、PSfにスルホン化芳香族ポリスルホン(以後、SPSfと略記する。)をブレンドする方法が開示されている。この方法はスルホン化度が低い場合、PSfとSPSfの親和性がPSfとPVPの場合より高いため、製造工程におけるSPSfの析出量が少なく、洗浄工程もPVPの場合に比較し簡略化できる長所を有する。しかし、スルホン酸基のような強いアニオン性基はヒト血漿と接した時にブラジキニンを直接産生、あるいはその産生を促進する働きが指摘されており、血液適合性の視点から実用上問題がある。
【0005】
上記の問題を解決する一つの方法として、PSfに親水性高分子をグラフト、あるいはブロック化したポリスルホン共重合ポリマーをPSfにブレンドする方法が考えられる。特公平6−28713号公報には、PSfの片末端あるいは両末端に親水性オリゴマー、多糖類、多糖誘導体、直鎖状親水性高分子などを、親水性成分の平均分子量M1を、M1とPSfの平均分子量M2の和で除した値(M1/(M1+M2))が0.001以上0.30以下となるような割合で共重合させたポリスルホン共重合ポリマーを用いる方法が開示されている。この方法は、PSfに血液適合性の高い親水性物質を結合させるものであり、親水性成分であるポリスルホン共重合ポリマーの凝固浴への析出を抑制できる点では大きな長所を有する。しかし、この方法においては、PSfとブレンドして成形される膜表面の親水性成分の分率はポリスルホン共重合ポリマーが全て膜表面に偏在したと仮定しても、親水性成分の分率を0.3よりあげることができない。
【0006】
特公平7−8543号公報には、このような方法で得られたポリスルホン共重合ポリマーをブレンドして得られたPSf膜を熱水等による後処理して膜表面の親水性を高める方法が記載されているが、工程が煩雑化する上に必ずしも血液適合性が充分ではなかった。
【0007】
米国特許第6172180号明細書には、重量平均分子量5〜2000kDaのPSfプレポリマーの片末端あるいは両末端に、分岐したポリエチレンオキサイドに代表される重量平均分子量5〜2000kDaの親水性高分子プレポリマーを重縮合により結合させたブロック共重合体が開示され、該明細書の実施例では、重量平均分子量が100kDaのPSfセグメントと、分岐したポリエチレンオキサイド由来のセグメントとのブロック共重合体を得ている。この実施例に記載の共重合体をPSfにブレンドした成形用ドープを用いて湿式成形して得られた中空糸状分離膜は血液適合性の指標であるLDHがPVPブレンド膜に及ばず血液適合性が十分ではなかった。
【0008】
血液処理過程において親水性成分の溶出を抑制し、かつ、血液適合性を満足する体外循環血液処理用分離膜の提供を可能とする血液適合性材料が望まれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、血液処理過程における親水性成分の溶出が少なく、かつ、血液適合性に優れる体外循環血液処理用分離膜の製造を可能とする分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体、及び該共重合体からなる血液適合性材料を提供すること、更には該血液適合性材料を用いた中空糸状分離膜を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体を構成するポリスルホン系ポリマー由来のセグメントを、重量平均分子量がポリスチレン換算で5000未満のポリスルホン系ポリマー由来のセグメントとし、かつ、該ポリスルホン系ポリマー由来のセグメントの重量分率を65%以下に限定することにより、ブロックポリマーの親水性成分である分岐ポリエチレンオキシド由来のセグメントを中空糸状分離膜の内表面により偏在させることが可能となり、少ない使用量で、本発明の課題が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、
〔1〕 重量平均分子量がポリスチレン換算2000以上5000未満のポリスルホン系ポリマー由来のセグメントと、重量平均分子量がポリスチレン換算600以上100000以下の分岐ポリエチレンオキシド由来のセグメントとからなり、ポリスルホン系ポリマー由来のセグメントの重量分率が5%以上65%以下、分岐ポリエチレンオキシド由来のセグメントの重量分率が35%以上95%以下であって、重量平均分子量が10000以上1000000以下である分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体、
【0012】
〔2〕 ポリスルホン系ポリマーが下記式(1)〜(4)に示すいずれかの繰り返し単位からなるポリスルホン系ポリマーの群から選択される少なくとも1種である上記〔1〕記載の記載の分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体、
【化5】
Figure 2004067758
【化6】
Figure 2004067758
【化7】
Figure 2004067758
【化8】
Figure 2004067758
〔3〕 上記〔1〕又は〔2〕の分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体からなる血液適合性材料、
〔4〕 血液適合性材料が体外循環血液処理膜用材料である上記〔3〕記載の血液適合性材料、
〔5〕 上記〔4〕の血液適合性材料とポリスルホン系ポリマーを含有する体外循環血液処理膜成形用ドープ、
〔6〕 上記〔5〕の体外循環血液処理膜成形用ドープを用いて湿式成形して得られる血液適合性に優れた中空糸状分離膜、
である。
【0013】
また、本発明の分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体をポリスルホン系ポリマーにブレンドして得られた中空糸状分離膜は、広く使用されている、ポリスルホン系ポリマーと親水性高分子であるPVPをブレンドして得られた中空糸状分離膜に比べ、極めて血液適合性に優れるという驚くべき効果を奏する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体は、ポリスルホン系ポリマー由来のセグメントと、分岐ポリエチレンオキシド由来のセグメントとからなる。
【0015】
本発明において用いられる、該ポリスルホン系ポリマー由来のセグメントを形成するポリスルホン系ポリマーとしては、下記式(1)〜式(4)に示すいずれかの繰り返し単位からなるポリスルホン系ポリマーが好ましい。
【0016】
【化9】
Figure 2004067758
【0017】
【化10】
Figure 2004067758
【0018】
【化11】
Figure 2004067758
【0019】
【化12】
Figure 2004067758
【0020】
該セグメントを形成するポリスルホン系ポリマーの重量平均分子量は、2000以上、5000未満であることが必要であり、好ましくは3000以上、5000未満である。
重量平均分子量が2000以上、5000未満であるポリスルホン系ポリマー由来のセグメントを構成成分とする分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体は、該共重合体をブレンドして得られる中空糸状分離膜による血液処理過程において、優れた血液適合性を示すばかりでなく、該共重合体成分の溶出が起こりにくい。ポリスルホン系ポリマーの重量平均分子量が2000未満であると、中空糸成形過程、及び血液処理過程において分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体の析出、溶出が起こりやすい理由は、バルクポリマーであるポリスルホン系ポリマーと、分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体のポリスルホンブロックとの親和性が弱いためと推測している。
【0021】
本発明においては重量平均分子量の測定は、以下に記載するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により行い、ポリスチレン換算分子量として算出した。
(重量平均分子量の測定方法)
GPC用カラムKD−806M、KD−803、KD−802(いずれもShowdex製)を連結した測定装置 System−21 (Shodex社製)を用いて、展開液としてジメチルアセトアミド(以下、DMAc)、カラム温度50℃、1ml/minの流速で測定する。ポリスチレン標準サンプル(TSKSTANDARD POLYSTYRENE、東ソー製)を用いて換算分子量を算出する。
【0022】
本発明の共重合体において、分岐ポリエチレンオキシド(以後、分岐PEOと略称する。)由来のセグメントを形成する分岐PEOとしては、−CHCHO−構造を繰返し単位にもつポリマーであり、下記式(5)に示すように、−CHCHO−構造を繰返し単位にもつ分子鎖(A)を3個以上有する分岐PEOが挙げられる。
【0023】
【化13】
Figure 2004067758
(式中、Aは−CHCHO−構造を繰返し単位にもつ直鎖構造の分子鎖を表し、Zは分子鎖(A)を結合するm個の官能基を有する化合物の残基を表す。mは3〜10の整数を表す。)
【0024】
上記式(5)に示す、−CHCHO−構造を繰返し単位にもつ分子鎖(A)を3個以上有する分岐PEOにおいて、分子鎖(A)は、下記式(6)に示す−CHCHO−構造を繰返し単位とする分子鎖(B)、あるいは分子鎖(B)と下記式(7)に示すポリオキシアルキレン分子鎖(C)とから構成され、分子鎖(B)および分子鎖(C)をそれぞれ1個以上含むブロック構造の分子鎖である。
【0025】
但し、後述する▲2▼の製造方法で得られる分岐PEOの場合には、ZのOH基と、分子鎖(B)もしくは分子鎖(C)の末端OH基とを結合する、これらOH基と反応可能な官能基を2個以上もつ化合物の残基を分子鎖(A)中に包含することになる。該化合物としては、例えば、ハロゲン、カルボキシル基、スルホニル基、酸クロライド等の酸ハロゲン基、イソシアネート基等のOH基と反応可能な官能基を有する化合物であり、具体例を挙げれば、‘4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、フタリルクロライド等である。OH基と反応可能な官能基を2個以上もつ化合物の分子量としては好ましくは、50以上1000以下、より好ましくは50以上500以下である。
【0026】
分子鎖(B)および分子鎖(C)をそれぞれ1個以上含むブロック構造の分子鎖(A)は、2〜1000個以上の分子鎖(B)と、1〜300個の分子鎖(C)とから構成され、分子鎖(B)が分子末端に位置することが好ましく、より好ましくは2〜1000個以上の分子鎖(B)と、1個の分子鎖(C)とから構成され、分子鎖(B)が分子末端に位置することである。分子鎖(A)中の分子鎖(B)と分子鎖(C)の含有比率は、分子鎖(B)が50重量%以上が好ましく、より好ましくは70重量%以上である。分子鎖(A)としては分子鎖(B)が100重量%であることが特に好ましい。
【0027】
【化14】
Figure 2004067758
【0028】
【化15】
Figure 2004067758
(式中、Rは炭素数3〜20のアルキレン基を表し、nは2〜1000の整数を表し、pは0〜300の整数を表す。)
【0029】
分子鎖(B)における−CHCHO−構造の繰返し数nは、2〜1000の整数が好ましく、より好ましくは2〜300の整数を表す。分子鎖(C)を構成するRは炭素数3〜20のアルキレン基を表し、好ましくは3〜5のアルキレン基であり、繰り返し数pは0〜300の整数を表し、好ましくは0〜200の整数である。
【0030】
Zは、分子鎖(A)を結合するm個の官能基を有する化合物の残基である。 Zの原料化合物であるm個の官能基を有する化合物としては、分子内に3個以上のハロゲン化アルキル基やビニル基を3個以上有する化合物、例えば、メシチレントリブロマイド等や、活性水素を有する官能基である水酸基、アミノ基等を一つの分子内に3個以上有する化合物、例えば、グリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトールに代表される多価アルコールや、エチレンジアミンに代表される多価アミン等が挙げられる。その他、式(5)で示される分岐PEO、デンプン、シクロデキストリン、セルロース等の多糖類およびその誘導体、オリゴ糖およびその誘導体、加水分解・開環して4つ以上のOH基を生じる2官能以上のグリシジル化合物も、活性水素を有する官能基としての水酸基を一つの分子内に3個以上有する化合物として用いることができる。
【0031】
本発明において、分岐PEOの重量平均分子量は600以上であり、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上である。また、該分岐PEOの重量平均分子量の上限は、100000以下であり、好ましくは50000以下、より好ましくは30000以下である。この範囲であれば、体外循環血液処理用分離膜の構造材料として好適に用いることができる。
【0032】
また、該分岐PEOは、分岐ポイントを有するモノマー単位の平均モル数が0.0001以上1以下であることが好ましく、0.0003以上0.1以下であることがより好ましい。分岐ポイントを有するモノマー単位とは、分岐PEO中の、ポリマー鎖からポリマー鎖を派生して分岐するポイントをもつモノマー単位を言う。分岐ポイントを有するモノマー単位の平均モル数とは、分岐PEO中の分岐ポイントを有するモノマー単位の総モル数を分岐PEO中に含まれるモノマー単位の総モル数で除することにより求めることができる。
【0033】
また、本発明において、ポリスルホン系ポリマー由来のセグメントの重量分率は5%以上65%以下であることが必要であり、好ましくは20%以上60%以下である。分岐PEO由来のセグメントの重量分率は35%以上95%以下であり、好ましくは40%以上80%以下である。重量分率が上記範囲内にあれば、該共重合体をブレンドして得られる中空糸状分離膜による血液処理過程において、優れた血液適合性を示す。
【0034】
本発明の共重合体において、分岐PEO由来のセグメント、ポリスルホン系ポリマー由来のセグメントの重量分率および分岐ポイントを有するモノマー単位の平均モル数はHのNMRによって求めることができる。たとえば、−CHCHO−で表される繰り返し単位のメチン基の水素の積分値と、ポリスルホン系ポリマーの芳香族水素の積分値の比からそれぞれの含有率が求まる。さらに分岐ポイントに基づく特定基の水素の積分値と、繰り返し単位−CHCHO−のメチン基の水素の積分値の比から分岐ポイントを有するモノマー単位の平均モル数が求まる。
【0035】
本発明の分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体の重量平均分子量は、10000以上1000000以下であって、好ましくは20000以上300000以下である。この範囲の重量平均分子量であれば分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体は、該共重合体をブレンドして得られる中空糸状分離膜による血液処理過程において、該共重合体成分の溶出を抑制することができる。
【0036】
次に、本発明の分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体(以下、分岐PEO−PSfブロック共重合体と略称する。)の製造方法について説明する。
本発明の分岐PEO−PSfブロック共重合体は、複数個のOH基をもつ分岐PEOのプレポリマー(以下、分岐PEOプレポリマーと略称する。)と、両末端がハロゲンのポリスルホン系ポリマーのプレポリマー(以下、両末端ハロゲンPSfプレポリマーと略称する。)との重縮合により合成される。
【0037】
本発明において用いられるポリスルホン系ポリマーの両末端ハロゲンPSfプレポリマーは、通常の方法で製造できる。代表例として、繰り返し単位が前記式(2)で示されるポリスルホン系ポリマーの両末端ハロゲンプレポリマーの製造例を挙げれば、ビスフェノールAと4,4’−ジクロロジフェニルスルホンとから炭酸カリウム等のアルカリを用いてビスフェノールAのアルコラートとし、重縮合法により合成する。該製造方法においては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンをビスフェノールAに対して過剰モル仕込む。すなわち、ビスフェノールAに対する4,4’−ジクロロジフェニルスルホンのモル比を1を超えて設定することで、ポリスルホン系プレポリマーがクロロ基末端となる。また、重量平均分子量は、ビスフェノールAと4,4’−ジクロロジフェニルスルホンのモル比で任意に制御でき、目的とする重量平均分子量の範囲とすることができる。本発明の重量平均分子量の両末端クロロPSfプレポリマーを得るには、ビスフェノールAに対する4,4’−ジクロロジフェニルスルホンのモル比を、1.2〜1.8の範囲とすれば良い。
末端クロロ量は元素分析等で測定できるが、簡便法としては、原料である4,4’−ジクロロジフェニルスルホンのクロロ基のモル数から、ビスフェノールAのOH基のモル数を減じる方法で求めた値を用いることができる。
【0038】
複数個のOH基をもつ分岐PEOプレポリマーを合成する方法としては、▲1▼Zの原料化合物が有するm個の官能基に、分子鎖(B)あるいは分子鎖(C)の原料モノマーを逐次付加する方法、▲2▼前記の式(5)に示すm個のOH基を有するZの原料化合物と、分子鎖(A)の両末端がOH基である2官能親水性ポリマーもしくはオリゴマーとを、OH基と反応可能な官能基を2個以上もつ化合物を用いて結合する方法がある。
【0039】
▲1▼Zの原料化合物に原料モノマーを逐次付加する方法としては、分子内に水酸基やアミン基等の活性水素を有する官能基を3個以上有するZの原料化合物にアルキレンオキシドをアルカリ触媒あるいは金属アルコラート触媒存在下で加圧加温させる通常の方法で付加重合させる方法や、分子内に3個以上のリビングアニオンを有するZへのアルキレンオキシドのリビングアニオン重合などの方法で合成できる。リビングアニオンは、ハロゲン化アルキル基やビニル基など一般的なものが使用でき、Zの原料化合物としては、前記したように分子内に3個以上のハロゲン化アルキル基や3個以上のビニル基を有する、例えば、メシチレントリブロマイド等や、一つの分子内に水酸基、アミノ基等の活性水素をもつ官能基を3個以上有する化合物である、例えば、グリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトールに代表される多価アルコールやエチレンジアミンに代表される多価アミンが挙げられる。その他、一般式(5)で示される分岐PEO、デンプン、シクロデキストリン、セルロース等の多糖類およびその誘導体、オリゴ糖およびその誘導体、加水分解・開環して4つ以上のOH基を生じる2官能以上のグリシジル化合物も、活性水素を有する官能基として水酸基を一つの分子内に3個以上有する化合物として用いることができる。Zの原料化合物は、1種であっても2種以上混合しても用いることができる。
【0040】
▲2▼の前記のm個のOH基を有するZの原料化合物と、分子鎖(A)の両末端がOH基である2官能親水性ポリマーもしくはオリゴマーとを、OH基と反応可能な官能基を2個以上もつ化合物を用いて結合する方法を説明する。該方法において用いられる、分子鎖(A)の両末端がOH基である2官能親水性ポリマーもしくはオリゴマーとしては、ポリエチレングリコールが好適に使用でき、ポリエチレングリコールを構成する分子鎖(B)の繰り返し数として、2〜1000が好ましく、より好ましくは2〜300である。
【0041】
m個のOH基を有するZの原料化合物としては、前記のグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトールに代表される多価アルコール、式(5)で示される−CHCHO−構造を繰返し単位にもつ分子鎖(A)を3個以上有有し、末端がOH基である分岐PEO、デンプン、シクロデキストリン、セルロース等の多糖類およびその誘導体、オリゴ糖およびその誘導体、加水分解・開環して4つ以上のOH基を生じる2官能以上のグリシジル化合物等が使用できる。該分子内にOH基を3個以上有するZの原料化合物は、1種であっても2種以上混合しても用いることができる。
【0042】
Zの原料化合物と、分子鎖(A)の両末端がOH基である2官能親水性ポリマーもしくはオリゴマーとを結合する、OH基と反応可能な官能基を2個以上もつ化合物としては、例えば、ハロゲン、カルボキシル基、スルホニル基、酸クロライド等の酸ハロゲン基、イソシアネート基等のOH基と反応可能な官能基を有する化合物が挙げられ、例えば、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、フタリルクロライド等である。OH基と反応可能な官能基を2個以上もつ化合物の分子量としては好ましくは、50以上1000以下、より好ましくは50以上500以下である。
【0043】
分岐PEOプレポリマーおよびOH基を有する化合物の末端OH基数は、KOH価測定法等一般的な方法で算出できるが、該分岐PEOを構成する両末端がOH基である2官能親水性ポリマーもしくはオリゴマーの総OH数aから該OH基と反応可能な官能基を2個以上もつ化合物の総官能基数bを減じた簡略法を用いることができる。
【0044】
▲2▼の複数個のOH基をもつ分岐PEOプレポリマーを合成する方法においては、両末端がOH基である分子鎖(A)の2官能親水性ポリマーもしくはオリゴマーと、3個以上の末端OH基を有するZの原料化合物と、OH基と反応可能な官能基を2個以上もつ化合物とから製造していることから、該製造方法においては、末端のOH基の数が重要である。分子鎖(A)の両末端がOH基である2官能親水性ポリマーもしくはオリゴマーの末端OH基のモル数をc、末端OH基を3個以上有するZの原料化合物の末端OH基のモル数をd、該OH基と反応可能な官能基を2個以上もつ化合物の末端官能基の総モル数をeとすると、 OH基と反応可能な末端官能基の総モル数eに対する、総OH基のモル数(c+d)の比(c+d)/eは、1を越えて3未満が好ましく、より好ましくは、1を越えて2未満である。分岐PEOプレポリマーは、両末端ハロゲンPSfプレポリマーと重縮合反応させるため、末端をOH基にすることが必要であり、OH基過剰にする必要がある。
【0045】
本発明において、複数個のOH基をもつ分岐PEOプレポリマーと両末端ハロゲンPSfプレポリマーとの重縮合方法としては、ハロゲン化芳香族とアルコールからエーテル結合を生成する通常の方法を用いることができる。例えば、ジメチルスルホキシド、 N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等の有機溶媒中で、炭酸カリウム等のアルカリを用いて、複数個のOH基をもつ分岐PEOプレポリマーのOH基をアルコラートとし、150〜220℃に加熱して両末端ハロゲンPSfプレポリマーと重縮合反応させる。
【0046】
本発明において、複数個のOH基をもつ分岐PEOプレポリマーと両末端ハロゲンPSfプレポリマーを重縮合する際の、 両末端ハロゲンPSfプレポリマーのハロゲン反応基のモル数fに対する、分岐PEOプレポリマーのOH反応基のモル数g(▲2▼の製造方法においては、gの値は簡便に(c+d−e)の値を使用している。)のモル数比g/fは、0.5以上3以下の範囲が好ましく、より好ましくは1以上2以下である。モル数比g/fが3を越える場合は重合度が上がらず低分子量の共重合体が生成するばかりでなく、未反応の分岐PEOプレポリマーが残り、分岐PEO−PSfブロック共重合体の精製が難しく、得られた分岐PEO−PSfブロック共重合体中に混入し、中空糸状分離膜湿式成形時に凝固浴に大量に析出する現象が起こることから好ましくない。
【0047】
また、モル数比g/fが0.5未満の場合も重合度が上がらず、低重合度の分岐PEO−PSfブロック共重合体が得られる。該低重合度の分岐PEO−PSfブロック共重合体は中空糸状分離膜の湿式成形時に凝固浴に大量に溶出する現象が起こる。
該分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体は、湿潤下で、熱水および/または熱アルコールで洗浄することにより、血液処理過程において該共重合体の溶出をさらに抑えることができる。
【0048】
本発明で得られた分岐PEO−PSfブロック共重合体と、バルクポリマーとなる前記式(1)〜(4)に示すいずれかの繰り返し単位とからなるポリスルホン系ポリマーの1種または2種以上とから体外循環血液処理膜成形用ドープを作製し、さらに、該成形用ドープを用いて、公知の湿式成形法で中空糸状分離膜を作製した。
【0049】
本発明の体外循環血液処理膜成形用ドープに用いられるポリスルホン系ポリマーは5〜50重量%、本発明で得られた分岐PEO−PSfブロック共重合体は0.01〜30重量%が一般的に好ましく使用できる。成形用ドープ作製用の溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が使用できる。
【0050】
本発明の分岐PEO−PSfブロック共重合体をブレンドしたドープを用いて成形した中空糸状分離膜は、実施例に示すように非常に優れた血液適合性を示し、溶出量も少ない。その理由は、ポリスルホン系ポリマー由来のセグメントの重量平均分子量が2000以上、5000未満の分岐PEO−PSfブロック共重合体を用いると、親水性成分である分岐ポリエチレンオキシド成分が中空糸状分離膜の内表面に高濃度で偏在することから高い血液適合性を示し、またPSf由来のセグメントのアンカー効果も充分であることから該共重合体の溶出も少ないと推測している。
【0051】
上記したように本発明の分岐PEO−PSfブロック共重合体をブレンドした中空糸状分離膜は、血小板活性化指標であるLDHが低く、優れた抗血栓性を有する。本発明において血液適合性材料とは、このように血小板活性化指標であるLDHが低く、優れた抗血栓性を有する材料をいう。
親水性成分である分岐ポリエチレンオキシド成分の表面存在量は、膜表面をX線光電子分光法(X−ray Photoelectron spectroscopy、以下、XPSと称す。)で解析することにより求まる。XPSでは、表面近傍に存在する元素の比が求まるので、分岐PEOセグメントの繰返し単位の化学式と、膜素材であるポリスルホン系ポリマーの繰返し単位の化学式から、測定される表面近傍の分岐PEOセグメントを構成する繰返し単位の濃度指数が算出できる。この濃度指数は膜表面近傍(約100nm)の値であるので、本発明において分岐ポリエチレンオキシド成分の表面存在量として定義し、具体的には、XPSで求まる硫黄原子に対する酸素原子の比率を用いる。
【0052】
本発明の中空糸状分離膜においては、該分岐ポリエチレンオキシド成分の表面存在量が、従来のPSf由来のセグメントの重量平均分子量が50000を越える共重合体を使用した中空糸状分離膜と比べ、該共重合体の使用量が少ない場合でも大きくなっていることが、本発明の実施例および比較例から分かる。
本発明の体外循環血液処理膜成形用ドープを用いて作製した中空糸状分離膜は、分岐PEO−PSfブロック共重合体の使用量が少ない場合でも、体外循環血液処理膜として血液適合性を改善する効果を有する。
【0053】
また、本発明の分岐PEO−PSfブロック共重合体は、コーティング材としても使用でき、中空糸状分離膜の内表面にコーティングしたものも、体外循環血液処理膜として使用でき、より少ない使用量で中空糸状分離膜の血液適合性を改善することができるという効果も奏する。コーティング方法は、中空糸状分離膜を成形後、該分岐PEO−PSfブロック共重合体の溶液で後コーティングする方法や、該分岐PEO−PSfブロック共重合体を溶かした溶液を中空糸状膜に成形する際の内液として使用して中空糸膜成形時に内表面にコーティングする方法が用いられる。
【0054】
【発明の実施の形態】
次に実施例によってこの発明をさらに具体的に説明する。
<重量平均分子量の測定方法>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により行った。GPC用カラムKD−806M、KD−803、KD−802(いずれもShowdex製)を連結した測定装置 System−21(Shodex社製)を用いて、展開液としてジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略称す。)、カラム温度50℃、1ml/minの流速で測定する。ポリスチレン標準サンプル(TSKSTANDARD POLYSTYRENE、東ソー製)を用いて換算分子量を算出する。
【0055】
<中空糸状分離膜中の分岐PEO−PSfブロック共重合体の含有率(重量%)>成形用ドープにおけるバルクポリマーであるポリスルホン系ポリマーの重量(h)、ブレンドした分岐PEO−PSfブロック共重合体の重量(i)の測定値を用い、式(i/(h+i))×100から計算で求める。
【0056】
<XPSの測定方法>
中空糸膜を切り開いて内側を出し、測定視野に入る程度に数本並べ、これをXPS(Physical Electronics, Inc製 PHI−5400)装置にて下記の条件で測定した。
励起源MgKα(15kV/26.7mA)、分析面積3.5mm×1mm、取込領域はSurvey Scan(定性分析用)1100〜0eV、Narrow Scan(定量分析、化学分析用)Cls、Ols、S2p、N1s、Pass EnergyはSurvey Scan:178.9eV、Narrow Scan:35.75eV。得られたNarrow Scanスペクトルの面積強度から装置のライブラリ相対感度係数を用いて相対元素濃度を求め〔O〕/〔S〕を求めた。用いた相対感度係数は、Cls:0.296、Ols:0.711、S2p:0.666、N1s:0.477である。
【0057】
<血液適合性(血小板活性化指標であるLDH)の試験方法>
LDHの測定は、特に記載のある場合を除いて、LDH測定キット「ミズホ」(ミズホメディ−社製)の試薬を用いた。
中空糸状分離膜56本、有効長15cm(膜面積50mm)となるように両端をエポキシ接着したミニモジュールに対し、内外をそれぞれ生理食塩水(大塚製薬(株)製、大塚生食)10mlを流し洗浄する(以下、プライミングと称す。)。その後、ヘパリン加人血を7mlシリンジポンプにセットして、1.2ml/minの流速でモジュール内に通血した後、該生理食塩水を用いて内側10ml、外側10mlで洗浄する。洗浄したモジュールからLDHは28本、吸着蛋白は23本、長さを14cmとし採取後、これを細断し測定用試料とする。
【0058】
LDH測定用のスピッツ管にTritonX−100(ナカライテスク社製)をリン酸緩衝液で0.5%に調整した溶液0.5ml添加し、超音波を60分かけて抽出液を50μl分取し、この抽出液にLDH反応試薬1mlを反応させ、37℃で正確に10分間反応させた後、反応停止液3mlを反応させて充分に混和する。また試薬ブランクとして、サンプル液の代わりに精製水50μlを用いてサンプル液と同様に反応させたものを用意する。反応させ充分に混和した後室温に5分間放置し、120分以内に波長570nmで吸光度を測定する。測定はテトラゾリウム塩発色法で行った。
LDH活性値は下記式から求めた。
LDH活性値(Wro.U)=(検体の吸光度/標準血清の吸光度)×標準血清の標準値
LDH活性値が大きいほどLDH活性が高く、抗血栓性の低い膜となる。
【0059】
<溶出量の測定>
中空糸状分離膜1.5gを蒸留水150mlに入れ、70℃で1時間加熱し抽出液を調製した。蒸留水を同様に加熱冷却した。空試験液を対照として、この抽出液の、波長220〜350nmの紫外吸光度を測定した。波長220〜350nmの範囲で最も高い吸光度で溶出量を表した。
【0060】
【実施例1】
1000ml三つ口セパラブルフラスコに、ビスフェノールA(東京化成工業(株)製、B0494)14.51g、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(東京化成工業(株)製、B0810)25.56g、炭酸カリウム(和光純薬工業(株)製、162−03495)25.0g、トルエン(和光純薬工業(株)製、204−01866)50ml、N−メチルピロリドン(以下、NMPと略称する。東京化成工業(株)製、M0418)130mlを入れ、攪拌下、窒素置換した。反応混合液を155℃に保持し、トルエンを3時間還流させ、その間、共沸してくる水をディーンスタックトラップで反応混合液から除去した。続いて、反応混合液を190℃に昇温し、トルエンを留去、さらに190℃で4時間保持し、両末端クロロ型の式(2)の繰り返し単位で表されるポリスルホン系プレポリマーを合成した。反応液からサンプルを抜出し、ポリマーの重量平均分子量を測定した。重量平均分子量は4.2×10であった。残りの反応液はそのまま、分岐PEOプレポリマーとの反応に供した。
【0061】
1000ml三つ口セパラブルフラスコに、ポリエチレングリコール#4000(東邦化学工業(株)製、水酸基価32mgKOH/g)144.14g、エチレンジアミンに酸化プロピレンと酸化エチレンを逐次付加したものから派生した4官能ブロック・コポリマー (BASF社製、 Tetronic304 水酸基価139mgKOH/g)29.66g、炭酸カリウム222.03g、トルエン165ml、NMP390mlを入れ、攪拌下、窒素置換した。反応混合液を155℃保持しトルエンを3.5時間還流させ、その間、共沸してくる水をディーンスタックトラップで反応混合液から除去した。さらに190℃に昇温して、トルエンを留去後、4,4′−ジフルオロジフェニルスルホン(東京化成工業(株)製、D0537)10.90gを加えた後、さらに190℃で6時間保持して、分岐PEOプレポリマーを合成した。反応液からサンプルを抜出し重量平均分子量を測定した。重量平均分子量は2.7×10であった。残りの反応液はそのまま後の反応に供した。
【0062】
両末端クロロ型のPSfプレポリマー反応液に、分岐PEOプレポリマー反応液を加え、そのまま、190℃で8時間保持して、分岐PEO−PSfブロック共重合体を合成した。
【0063】
反応混合液を、攪拌下の水8000mlへ滴下し、繊維状ポリマーを得た。濾物を水4000mlへ入れた後、濃塩酸でpH2とし、濾過した。濾液がpH7になるまで水洗し、水膨潤した分岐PEO−PSfブロック共重合体とした。この水膨潤した分岐PEO−PSfブロック共重合体をさらに95℃熱水6000mlで3時間洗浄した後、濾別し、50℃で真空乾燥した。
分岐PEO−PSfブロック共重合体中の重量平均分子量は7.1×10、PEO重量分率は75.4%であった。また、分岐PEOの分岐ポイントを有するモノマー単位の平均モル数は、0.0092であった。
【0064】
該分岐PEO−PSfブロック共重合体を5重量%、ポリスルホン(アモコ・エンジニアリング・ポリマーズ社製、ユーデルP1700)18重量%、N−メチル−2−ピロリドン(東京化成工業(株)製、M0418)77重量%を混合し、60℃で加熱攪拌して均一透明なドープを調製した。
このドープを60℃にて脱泡した後、外径0.36mm、内径0.15mmの環状ノズルより、内液として、NMP30重量%、水70重量%で構成される混合溶液と同時に60℃で吐出し、相対湿度88%、雰囲気温度55℃に調整されたエアギャップ距離500mmの空気中に押し出した。その後60℃の水中で凝固させ、引き続き50m/minの速度で巻き取り中空糸状分離膜を得た。次に、該中空糸状分離膜を90℃の熱水で洗浄後、20重量%のグリセリン(片山化学工業(株)製)水溶液中で1時間、60℃にて浸漬処理を行うことにより中空糸状分離膜を得た。得られた中空糸状分離膜を先に記述した方法にて評価した結果を表1に示す。
【0065】
【比較例1】
ビスフェノールAを58.00g、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを73.70g、炭酸カリウムを105.40g、トルエンを126ml、NMPを260mlに変えて、実施例1と同様の操作をして、両末端クロロ型の式(2)の繰り返し単位で表されるポリスルホン系プレポリマーを合成した。得られたポリマーの重量平均分子量は7.5×10であった。
【0066】
ポリエチレングリコール#4000(東京化成工業(株)製、水酸基価36mgKOH/g)を62.20g、Tetronic304を12.80g、炭酸カリウムを100.10g、トルエンを100ml、NMPを175ml、4,4′−ジフルオロジフェニルスルホンを4.70gに変えて実施例1と同様の操作をして、分岐PEOプレポリマーを合成した。得られたポリマーの重量平均分子量は2.7×10であった。
両末端クロロ型のポリスルホンプレポリマーと分岐PEOプレポリマーを用いて、実施例1と同様の操作をして、分岐PEO−PSfブロック共重合体を得た。
【0067】
また、分岐PEO−PSfブロック共重合体中の重量平均分子量は6.1×10、PEO重量分率は35.2%、分岐PEOの分岐ポイントを有するモノマー単位の平均モル数は、0.0098であった。さらに、該分岐PEO−PSfブロック共重合体を10重量%、ポリスルホン15重量%、N−メチル−2−ピロリドン75重量%を混合し、60℃で加熱攪拌して均一透明な原液を調製した。実施例1に示した方法で中空糸状分離膜とした。得られた中空糸状分離膜を先に記述した方法にて評価した結果を表1に示す。
【0068】
【比較例2】
ビスフェノールAを14.51g、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを34.68g、炭酸カリウムを25.0g、トルエンを50ml、NMPを130mlに変えて、実施例1と同様の操作をして、両末端クロロ型の式(2)の繰り返し単位で示されるポリスルホン系プレポリマーを合成した。得られたプレポリマーの重量平均分子量は1.5×10であった。
【0069】
ポリエチレングリコール#4000(東邦化学工業、水酸基価32mgKOH/g)を187.38g、Tetronic304を38.56g、炭酸カリウムを250.3g、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンを6.11g、トルエンを200ml、NMPを450mlをに変えて、実施例1と同様の操作をして、分岐PEOプレポリマーを合成した。得られたプレポリマーの重量平均分子量は2.7×10であった。
【0070】
両末端クロロ型のポリスルホン系プレポリマー190℃反応液に、分岐PEOプレポリマー190℃反応液を混合し、そのまま、190℃で8時間保持して、分岐PEO−PSfブロック共重合体を合成した。以後、実施例1に示す方法で、分岐PEO−PSfブロック共重合体の乾燥体とした。また、分岐PEO−PSfブロック共重合体中の重量平均分子量は7.3×10、PEO重量分率は80.3%であった。また、分岐PEOの分岐ポイントを有するモノマー単位の平均モル数は、0.0093であった。
【0071】
さらに、該分岐PEO−PSfブロック共重合体を5重量%、ポリスルホン18重量%、N−メチル−2−ピロリドン77重量%を混合し、60℃で加熱攪拌して均一透明な原液を調製した。実施例1に示した方法で中空糸状分離膜とした。得られた中空糸状分離膜を先に記述した方法にて評価した結果を表1に示す。
【0072】
【実施例2】
実施例1においてビスフェノールAの代わりに4,4’−ジフェノール(東京化成工業(株)製 B0464)を11.84g用いて、実施例1と同様の操作をして、両末端クロロ型の式(3)で表されるポリスルホン系プレポリマーを合成した。得られたポリマーの重量平均分子量は4.0×10であった。
実施例1と同様にして分岐PEOプレポリマーを合成した。得られたポリマーの重量平均分子量は2.7×10であった。
両末端クロロ型のポリスルホン系プレポリマーと分岐PEOプレポリマーを用いて、実施例1と同様の操作をして、分岐PEO−PSfブロック共重合体を得た。また、分岐PEO−PSfブロック共重合体の重量平均分子量は6.3×10、PEO重量分率は69.7%、分岐PEOの分岐ポイントを有するモノマー単位の平均モル数は、0.0094であった。
さらに、該分岐PEO−PSfブロック共重合体を10重量%、ポリスルホン15重量%、N−メチル−2−ピロリドン75重量%を混合し、60℃で加熱攪拌して均一透明なドープを調製した。このドープを用いて実施例1に示した方法で中空糸状分離膜とした。得られた中空糸状分離膜を先に記述した方法にて評価した結果、血液適合性の指標であるLDH活性値は、0.01Wro.U/m、溶出量は0.025(ABS)であった。
【0073】
【比較例3】
ポリビニルピロリドン(インターナショナル・スペシャリティ・プロダクツ社製、プラスドンK−90)を7重量%、ポリスルホン17重量%、N−メチル−2−ピロリドン76重量%を混合し、60℃で加熱攪拌して均一透明なドープを調製した。実施例1に示した方法で中空糸状分離膜を得た。得られた中空糸状分離膜を先に記述した方法にて評価した結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
Figure 2004067758
本発明の分岐PEO−PSfブロック共重合体は、従来の分岐PEO−PSfブロック共重合体に比べて、分岐PEOの表面偏在指標である、XPSで求まる硫黄原子に対する酸素原子の比率〔O〕/〔S〕が高く、血液適合性の指標であるLDH活性値もポリビニルピロリドンを用いた中空糸状分離膜よりも良好である。
【0075】
【発明の効果】
本発明の分岐PEO−PSfブロック共重合体は優れた血液適合性を示し、該共重合体をブレンドした体外循環血液処理用分離膜においては、該共重合体の溶出が抑制されるばかりでなく、優れた血液適合性を示し、体外循環血液処理用分離膜を提供することを可能とすることから産業上、大いに有用である。

Claims (6)

  1. 重量平均分子量がポリスチレン換算2000以上5000未満のポリスルホン系ポリマー由来のセグメントと、重量平均分子量がポリスチレン換算600以上100000以下の分岐ポリエチレンオキシド由来のセグメントとからなり、ポリスルホン系ポリマー由来のセグメントの重量分率が5%以上65%以下、分岐ポリエチレンオキシド由来のセグメントの重量分率が35%以上95%以下であって、重量平均分子量が10000以上1000000以下である分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体。
  2. ポリスルホン系ポリマーが下記式(1)〜式(4)に示すいずれかの繰り返し単位からなるポリスルホン系ポリマーの群から選択される少なくとも1種である請求項1記載の分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体。
    Figure 2004067758
    Figure 2004067758
    Figure 2004067758
    Figure 2004067758
  3. 請求項1又は2記載の分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体からなる血液適合性材料。
  4. 血液適合性材料が体外循環血液処理膜用材料である請求項3記載の血液適合性材料。
  5. 請求項1又は2記載の分岐ポリエチレンオキシド−ポリスルホンブロック共重合体とポリスルホン系ポリマーを含有する体外循環血液処理膜成形用ドープ。
  6. 請求項5記載の体外循環血液処理膜成形用ドープを用いて湿式成形して得られる血液適合性に優れた中空糸状分離膜。
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