JP3948993B2 - ポリスルホン系共重合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリスルホン系共重合体に関し、特に、人工透析などの体外循環により血液あるいは血漿を処理する分離膜に用いられるスルホン酸基を有するポリスルホン系共重合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
血液中に含まれる毒素を除去する血液浄化や血液製剤製造における血液の成分分離は、人工腎臓や人工肝臓などの体外循環血液処理膜や体外循環血液処理カラムを用いることにより行われる。
分離膜を用いた分離工程で重要な点は、血液中の蛋白吸着による孔の閉塞、蛋白の変成を抑制することであり、血液に接する孔を含む膜表面の親水化は重要な技術課題となっている。特に、人工腎臓として用いられる透析用分離膜の血液側膜表面への血漿蛋白吸着は透析効率を著しく低下させるのみならず、血小板や白血球の活性化を促進し、透析患者の合併症の惹起、それによる社会復帰の遅延など、いわゆるquality of life (QOL) を著しく悪化させる要因となっている。
【0003】
親水化された血液処理用分離膜として、易孔径制御性、高力学強度、高耐候性、高耐熱性の観点から、構造材料として疎水性高分子である芳香族ポリスルホン(PSf)と親水性高分子であるポリビニルピロリドン(PVP)をブレンドした中空状多孔質分離膜が広く工業的に生産されている。
その他、親水性付与の方法として、PSfに親水性高分子をグラフト、あるいはブロック化したポリスルホン共重合ポリマーをPSfにブレンドする方法などが提案されているが、これらは血液適合性向上、親水性成分の溶出防止等が目的である。
【0004】
透析は多孔質分離膜を用いて、血液中に存在する各種の有害物質を除去する治療方法である。したがって、その分離能は多孔質膜の孔径をいかに均一にかつ均等に分布が制御出来ているかによってその性能(分画性)が決定する。透析には、血液中に含まれる必要物質は系外に漏れないように血中に保持しつつ、有害物質のみを系外へ効率よく除去することが要求されるが、有害物質には分子量が小さいものから大きいものまで多岐に渡り、必要蛋白であるアルブミンを血液中に保持しつつ、アルブミンと同等分子量を持つ有害物質のみを除去することが要求される。したがって、分画性の向上は孔径制御のみによる分離法では極めて困難であると言わざるを得ない。
【0005】
人の正常な腎臓では、アルブミンと同等分子量を持つ有害物質のみを除去することが難なく行われており、これは糸球体基底膜(GBM)が持っている分子の大きさで分別をする膜孔径バリアー(barrier )と膜の持つ陰性荷電により分別する荷電バリアー(barrier )の2つのバリアー(barrier )によるとされている。この陰性荷電による荷電バリアー(barrier )効果で分画性向上を狙う試みとして、例えば、オルトベンズアルデヒドスルホン酸ナトリウムを用いてスルホン酸基を付加したエチレンビニルアルコール膜(例えば、透析会誌、25(12) P.1373−1375(1992)、透析会誌、26(5) P.675−677(1993))が提案されている。特開平5−131125号公報には、スルホン化したポリエーテルポリスルホンを含む芳香族ポリスルホンと芳香族ポリスルホンをブレンドして得られる血液透析膜が、β2マイクログロブリンの高い透過性と有用蛋白であるアルブミンのリークを抑制でき、血漿蛋白の高い分画特性を示すことが報告されている。
【0006】
しかしながら、上記手法は、陰性荷電を付与することにより、従来の透析膜より選択透過性が高くなるものの、血液適合性、たとえば抗血栓性が低下するという課題があり、より生体に近い透析膜を作製するまでには至っていない。すなわち、これまでの透析膜ではアルブミンリークの抑制と優れた血液適合性を示す性能を満足するまでには至っていないのが現状であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、良好な血液適合性を有しつつ、アルブミンとアルブミン同等分子量を持つ有害物質とを極めて効率よく分画することが出来る、即ち、分画性を飛躍的に向上させうる陰性荷電層を持った体外循環血液処理膜の製造を可能にするスルホン酸基を有するポリスルホン系共重合体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、各種の親水化ポリスルホンや陰性電荷ポリマーについて鋭意研究を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1] 下記式(1)の繰返し単位を有する単独重合体、または下記式(1)の繰返し単位と下記式(2)〜(4)のいずれかの繰返し単位の少なくとも一種との交互共重合体である芳香族ポリスルホンのスルホン化体であるスルホン化芳香族ポリスルホンからなるセグメントとポリアルキレンオキサイドからなるセグメントとが共有結合しているブロック共重合体であるポリスルホン系共重合体であって、スルホン化度が0.0001以上、0.5以下であることを特徴とするポリスルホン系共重合体、
【0009】
【化2】
【0010】
[2] 芳香族ポリスルホンにスルホン酸基を導入した後、該スルホン化芳香族ポリスルホンとポリアルキレンオキサイドとを共重合することを特徴とする[1]に記載のポリスルホン系共重合体の製造方法、
[3] 芳香族ポリスルホンの原料モノマーをスルホン化して得られるスルホン化モノマーと、芳香族ポリスルホンの原料モノマーとを原料としてスルホン化芳香族ポリスルホンを得た後に、該スルホン化芳香族ポリスルホンとポリアルキレンオキサイドとを共重合することを特徴とする[1]に記載のポリスルホン系共重合体の製造方法、
[4] 芳香族ポリスルホンとポリアルキレンオキサイドとからなるポリスルホン系共重合体をスルホン化することを特徴とする[1]に記載のポリスルホン系共重合体の製造方法、
[5] [1]に記載するポリスルホン系共重合体を含有するドープ、
[6] [5]に記載のドープを用いてシート状または中空糸状に成形して得られる成形体、
である。
【0011】
本発明は、血液適合性を向上させうる親水化ポリスルホンと分画性を向上させうる陰性荷電ポリマーを混合物として用いる成形体では血液適合性および分画性を満足することはできないが、一つの分子内に親水性成分と陰性荷電をもたせること、すなわち、親水性成分であるポリアルキレンオキサイドと陰性荷電であるスルホン酸基を有するポリスルホンとから構成されるブロック共重合体を用いると、良好な血液適合性を有しつつ、アルブミンとアルブミン同等分子量を持つ有害物質を極めて効率よく分画することを本発明者らが見出したことに基くものである。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリスルホン系共重合体は、芳香族ポリスルホンにスルホン酸基を導入して得られるスルホン化芳香族ポリスルホン由来のセグメントと、親水性ポリマー由来のセグメントとからなるポリスルホン系共重合体である。該ポリスルホン系共重合体はブロック共重合体であってもグラフト共重合体であっても良い。本発明において用いられる芳香族ポリスルホンとしては、下記式(1)の繰返し単位からなる単独重合体、または下記式(1)の繰返し単位と下記式(2)〜(4)のいずれかの繰返し単位の少なくとも一種との交互共重合体が挙げられる。
【0013】
【化3】
【0014】
本発明において用いられる芳香族ポリスルホンの分子量は1000以上1000000以下の範囲であり、好ましくは1000以上200000以下の範囲であり、より好ましくは5000以上100000以下の範囲である。
本発明のポリスルホン系共重合体の製造に用いられるスルホン化芳香族ポリスルホンとは、芳香族ポリスルホンの芳香族環の一部をスルホン酸基で置換した構造であり、芳香族ポリスルホンにスルホン化剤を作用させる通常の方法、例えば、亀谷哲治・福本圭一郎著「有機合成化学I、反応編1(南江堂発行、昭和49年)」p391−392(5.8.32芳香族のスルホン化)に記載の方法、たとえば、塩化メチレン等の溶媒中で、硫酸あるいはクロロ硫酸等のスルホン化剤を作用させて製造できる。例えば、J.Polym.Sci,:Part A:Polym.Chem.,31,853−858(1993)に記載のように、芳香族ポリスルホンの原料モノマーをスルホン化して得られるスルホン化モノマーと、芳香族ポリスルホンの原料モノマーとを所望の比率で共重合してスルホン化芳香族ポリスルホンを合成する方法などで製造できる。
【0015】
本発明のポリスルホン系共重合体の製造に用いられる親水性ポリマーとは、水酸基、アクリルアミド基、エーテル基のような水素結合性非イオン性官能基やカルボキシル基、スルホン酸基、第4級アミン基のような電解基を介して水分子に親和力を示すポリマーなどを言い、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコールに代表されるポリアルキレンオキサイドなどが挙げられる。中でもポリアルキレンオキサイドが、散漫層を膜表面に形成して血液適合性を発現できることから体外循環血液処理膜の製造用として好ましい。
【0016】
該ポリアルキレンオキサイドとしては、−CH2 CH2 O−構造を繰返し単位にもつ重合体が好適である。該重合体は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。直鎖構造の場合、例えば、エチレンオキサイドを付加重合した直鎖ポリエチレンオキサイドが挙げられる。
分岐構造の場合、下記式(5)に示すように、−CH2 CH2 O−構造を繰返し単位にもつ直鎖構造の分子鎖(A)を3個以上有するする重合体である。
【0017】
【化4】
(式中、Aは−CH2 CH2 O−構造を繰返し単位にもつ直鎖構造の分子鎖を表し、Zは分子鎖(A)を結合するm個の官能基を有する化合物の残基を表す。mは3〜10の整数を表す。)
【0018】
該分子鎖(A)は、下記式(6)に示す−CH2 CH2 O−構造を繰返し単位とする分子鎖(B)、あるいは分子鎖(B)と下記式(7)に示すポリオキシアルキレン分子鎖(C)とから構成され、分子鎖(B)、分子鎖(C)をそれぞれ1個以上含むブロック構造の直鎖構造の分子鎖である。分子鎖(A)としては下記式(6)に示す−CH2 CH2 O−構造を繰返し単位とする直鎖構造の分子鎖(B)のみからなるものが好ましい。
【0019】
【化5】
(式中、Rは炭素数3〜20のアルキレンを表し、nは1〜1000の整数を表し、pは1〜1000の整数を表す。)
【0020】
該ブロック構造の分子鎖(A)としては、1個以上の分子鎖(B)と1から5個、好ましくは1個の分子鎖(C)から構成され、分子鎖(B)が分子末端に位置するものが好ましい。分子鎖(B)における−CH2 CH2 O−構造の繰返し数nは、1〜1000で、好ましくは2〜250、より好ましくは2〜100である。分子鎖(C)を構成するRは炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜5のアルキレンであり、繰り返し数pは1〜1000、好ましくは1〜200である。
【0021】
Zは、分子鎖(A)を結合するm個の官能基を有する化合物の残基である。
該分岐構造のポリアルキレンオキサイド(5)を合成する方法としては、Zの原料化合物が有するm個の官能基を用いて分子鎖(A)を結合する方法や、Zの原料化合物が有するm個の官能基に分子鎖(B)あるいは分子鎖(C)を構成する繰り返し単位の原料モノマーを逐次付加する方法があるが、後者のZの原料化合物に分子鎖(B)あるいは分子鎖(C)を構成する繰り返し単位の原料モノマーであるエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等を逐次付加する方法が容易で好ましい。
【0022】
原料モノマーを逐次付加する方法としては、分子内に活性水素を有する官能基を3個以上有するZの原料化合物にアルキレンオキサイドを通常の方法で付加重合させる方法や、分子内に3個以上のリビングアニオンを有するZへのアルキレンオキサイドのリビングアニオン重合などの方法で合成できる。リビングアニオンは、ハロゲン化アルキル基やビニル基など一般的なものが使用でき、Zの原料化合物としては分子内に3個以上のハロゲン化アルキル基やビニル基を3個以上有する、例えば、メシチレントリブロマイド等が挙げられる。一つの分子内に活性水素をもつ官能基を3個以上有する化合物としては、活性水素を有する官能基として水酸基、アミノ基を有する、例えば、グリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトールに代表される多価アルコールやエチレンジアミンに代表される多価アミンが挙げられる。
【0023】
また、分岐構造のポリアルキレンオキサイドとしては、−CH2 CH2 O−構造を繰返し単位にもち、両末端がOH基である2官能親水性ポリマーもしくはオリゴマーと、分子内にOH基を3個以上有する親水性化合物と、該OH基と反応可能な官能基を2個以上もつ化合物より合成される分岐構造を有するエチレンオキサイド共重合体等も挙げられる。−CH2 CH2 O−構造を繰り返し単位にもち、両末端がOHである2官能親水性ポリマーもしくはオリゴマーとしては、ポリエチレングリコールが使用でき、繰り返し数としては、4〜1000が好ましく、より好ましくは10〜200である。分子内にOH基を3個以上有する親水性化合物としては、特に限定されないが、例えば、オキシアルキレンを繰り返し単位にもつセグメントを分子内に3個以上もつ化合物が挙げられる。
【0024】
また、グリセリン等の多価アルコールやデンプン、シクロデキストリン、セルロース等の多糖類およびその誘導体、オリゴ糖およびその誘導体、加水分解・開環して4つ以上のOH基を生じる2官能以上もつグリシジル化合物等も用いてもよい。さらに−CH2 CH2 O−構造を繰返し単位にもつ分子鎖を3個以上有するする末端基がOH基である上述の重合体(5)も使用できる。該分子内にOH基を3個以上有する親水性化合物は2種以上用いることもできる。
OH基と反応可能な官能基としては、例えば、ハロゲン、カルボキシル基、スルホニル基、酸クロライド等の酸ハロゲン基、イソシアネート基等が挙げられ、特に限定されない。OH基と反応可能な官能基を有する化合物としては、上記官能基を有する化合物が挙げられ、例えば、4,4’−ジフルオロフェニルスルホン、4,4’−ジフェニルイソシアネート、フタリルクロライド等である。分子量としては好ましくは、50以上、1000以下、より好ましくは50以上、500以下である。
【0025】
本発明のポリスルホン系共重合体の製造に用いられる親水性ポリマーとして好適に用いられる−CH2 CH2 O−構造を繰り返し単位にもつ重合体の重量平均分子量としては、200以上、100000以下の範囲が好ましく使用でき、より好ましくは400以上、50000以下である。
芳香族ポリスルホンのスルホン化体であるスルホン化芳香族ポリスルホンと親水性ポリマーから製造されるポリスルホン系共重合体は、スルホン化芳香族ポリスルホンからなるセグメントが1〜99wt%、親水性ポリマーからなるセグメントは99〜1wt%が好ましい。さらに、スルホン化芳香族ポリスルホンからなるセグメントが5〜95wt%、親水性ポリマーからなるセグメントは95〜5wt%がより好ましい。
【0026】
本発明のブロック構造のポリスルホン系共重合体を合成する方法としては、(a)芳香族ポリスルホンと親水性ポリマーとからなる芳香族ポリスルホン−親水性ポリマーブロック共重合体を合成後、該共重合体をスルホン化する方法、(b)芳香族ポリスルホンをスルホン化した後、このスルホン化芳香族ポリスルホンと親水性ポリマーとをブロック共重合する方法、(c)芳香族ポリスルホンの原料モノマーと、芳香族ポリスルホンの原料モノマーをスルホン化して得られるスルホン化モノマーとを所望の比率で重合してスルホン化芳香族ポリスルホンを製造した後に、該スルホン化芳香族ポリスルホンと親水性ポリマーとをブロック共重合する方法が挙げられるが、これらのどの方法を採用しても良く、特に限定されない。
【0027】
以下にスルホン化芳香族ポリスルホンと親水性ポリマーとをブロック共重合化する方法の一例を示す。
用いる溶媒としては、両者を溶解する溶媒、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等を用いる。親水性ポリマーであるアルキレンオキサイドを上記溶媒に溶解させ、炭酸カリウムや水酸化ナトリウムなどの塩基を作用させ、アルコラート化させる。該溶液にスルホン化芳香族ポリスルホンの溶液を混合し、150〜200℃の温度範囲で、反応させ、ブロック共重合体が得られる。この反応は、通常、窒素やアルゴン等の不活性雰囲気下で行なう。
【0028】
本発明のグラフト構造のポリスルホン系共重合体を合成する方法としては、(d)芳香族ポリスルホンをスルホン化した後、このスルホン化芳香族ポリスルホンに親水性ポリマーをグラフト化する方法、(e)芳香族ポリスルホンをスルホン化した後、このスルホン酸基を有する芳香族ポリスルホンに親水性ポリマーを構成するモノマーを逐次付加してグラフト体とする方法、(f)親水性ポリマーグラフト芳香族ポリスルホンをスルホン化する方法、(g)芳香族ポリスルホンをスルホン化した後、その一部のスルホン酸基に親水性ポリマーを結合させてグラフト体とする方法が挙げられるが、これらのどの方法を採用しても良く、特に限定されない。
【0029】
以下に親水性ポリマーグラフト芳香族ポリスルホンをスルホン化する方法の一例を、親水性ポリマーとしてポリエチレングリコールを用いて示す。
親水性ポリマーであるポリエチレングリコールを芳香族ポリスルホンにグラフトする方法として、芳香族ポリスルホンを塩化メチレン等の溶媒に溶解し、触媒として塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化スズ等を用い、クロロメチルメチルエーテルを室温から還流温度で作用させて、芳香族ポリスルホンの芳香環水素を置換したクロロメチル体を得る。該クロロメチル体と、前もって金属ナトリウム等を用いてアルコラート化しておいたポリエチレングリコールを室温から還流温度で作用させて、ポリエチレングリコールを芳香族ポリスルホンにグラフトする。さらに、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等に溶解させ、室温から還流温度の範囲内で、スルホン化剤、例えば、クロロ硫酸、発煙硫酸を作用させて、該エチレングリコールグラフト芳香族ポリスルホンのスルホン化体を製造することができる。
【0030】
本発明のポリスルホン系共重合体のスルホン酸基の置換度、すなわちスルホン化度は、スルホン化処理前の芳香族ポリスルホンの構成単位における置換しうる全プロトン数に対して置換されているスルホン酸基の割合と定義する。
ここで、構成単位とは、式(1)の繰返し単位からなる単独重合体の場合には、構成単位と繰返し単位は同じであるが、式(1)の繰返し単位と式(2)〜(4)の少なくともいずれか一種の繰返し単位との交互共重合体の場合には、式(1)の繰返し単位と式(2)〜(4)の少なくともいずれか一種の繰返し単位とが結合した単位を構成単位という。
【0031】
例えば、式(1)と式(2)との交互重合体の場合であれば、下記に示す下記式(8)が構成単位となる。
【化6】
【0032】
上記の式(8)が構成単位である場合、1個のスルホン酸基を含有していれば、スルホン化度は、1/16=0.0625となる。本発明においては、スルホン化度は、スルホン化芳香族ポリスルホンと親水性ポリマーからなるポリスルホン系共重合体のスルホン酸量を社団法人日本分析化学会編「分析化学便覧(改訂二版1971年度)」、p367(2・47・3定量)に示されている中和滴定法で測定し、さらに、NMRで求めたポリスルホン骨格、すなわち芳香族成分の重量割合から、計算で求めた。
【0033】
本発明のポリスルホン系共重合体は、スルホン化度は0.0001以上、0.5以下、さらに0.003以上、0.30以下が好ましい。特に、人工透析などの体外循環により血液あるいは血漿を処理する分離膜に用いる場合には、スルホン化度が0.003未満であると分画性能が不十分であり、0.15を越えるとスルホン酸基を結合したポリスルホン系重合体の親水性が増すために、製膜過程および血液処理過程において親水成分の析出、溶出が起こり、さらに、スルホン酸基が血液に接する膜表面に存在するために血液適合性たとえば抗血栓性が低下する懸念があるので、0.003以上0.15以下が好ましい。
【0034】
本発明のポリスルホン系共重合体は、シート状成形体もしくは中空糸状成形体の成形用の樹脂材料として使用できる。該シート状成形体や中空糸状成形体は体外循環血液処理膜や水処理用分離膜として好適に使用できる。
該成形用の樹脂材料としては、陰性荷電基であるスルホン酸基を有するスルホン化芳香族ポリスルホンと親水性ポリマーとからなる本発明のポリスルホン系共重合体とその他の樹脂との混合物を用いることができる。本発明のポリスルホン系共重合体を含有することで、親水性、血液適合性、高分画性、低溶出性を発現することができる。
【0035】
該ポリスルホン系共重合体と混合できるその他の樹脂としては、ジメチルアセトアミド(DMAc)やN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に溶解可能で紡糸や製膜等に使用できる樹脂であれば特に制限は無いが、良好に使用できるのは非結晶性樹脂、非結晶性樹脂が主成分のポリマーアロイ、あるいは結晶化度の低い一部の結晶性樹脂である。中でも、下記式(1)の繰返し単位を有する単独重合体、または下記式(1)の繰返し単位と下記式(2)〜(4)の少なくともいずれか一種の繰返し単位との交互重合体等の非晶性樹脂である芳香族ポリスルホンが特に良好に使用できる。
【0036】
【化7】
【0037】
さらに、これらの非結晶性樹脂に一部の結晶性樹脂をブレンドした樹脂、無機物や有機物の各種充填剤が配合された樹脂等も使用できる。
本発明のスルホン化芳香族ポリスルホンと親水性ポリマーとからなるポリスルホン系共重合体と、芳香族ポリスルホンとを用いて、成形用ドープを作製し、該成形用ドープを用いて、公知の方法でシート状および中空糸状の成形体を成形できる。該シート状成形体や中空糸状成形体は上記したように体外循環血液処理膜として好適に使用できる。成形用ドープ作製用の溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルオキシド等が使用できる。
【0038】
スルホン化芳香族ポリスルホンと親水性ポリマーからなるポリスルホン系共重合体は、コーティング剤としても使用でき、中空糸状成形体の内表面にコーティングしたものは、体外循環血液処理膜や水処理用分離膜として使用できる。コーティング方法は、中空糸状成形体を成形後、該ポリスルホン系共重合体を溶かした溶液で後コーティングする方法や、該ポリスルホン系共重合体を溶かした溶液を中空糸状成形体の成形の際に内液として使用して中空糸状成形体成形時に内表面にコーティングする方法などを例示できる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、実施例、比較例を用いて本発明の効果をさらに具体的に説明する。
『重量平均分子量の測定』
GPC用カラム、KD−806M、KD−803、KD−802(いずれもShowdex社製)を連結した測定装置“System−21”(Shodex社製)を用いて、展開液としてジメチルアセトアミド(以下、DMAc)、カラム温度50℃、1ml/minの流速で測定する。ポリスチレン標準サンプル(TSK STANDARD POLYSTYRENE、東ソー社製)を用いて換算分子量および分子量分布を算出する。
【0040】
『スルホン化度測定』
スルホン酸基モル数を社団法人日本分析化学会編「分析化学便覧(改訂二版1971年度)」、p367(2・47・3定量)に示されている中和滴定法で求める。さらに、NMR(Bruker社製、FT−NMR DPX−400)において、芳香族部分のとポリエチレンオキサイドのメチレン鎖部分の積分値からポリスルホン骨格の重量%が求まる。ポリスルホンの繰り返し単位あたりに換算し、先に求めたスルホン酸基量とからポリスルホンの繰り返し単位あたりのスルホン酸基数が求まり、この値を、スルホン酸に置換できる最大量で除した数、すなわち、スルホン化置換度が求まる。
【0041】
『血液適合性(血小板活性化指標であるLDH)の試験方法』
中空糸56本、有効長15cm(膜面積50mm2 )となるように両端をエポキシ接着したミニモジュールに対し、内外をそれぞれ生理食塩水(大塚製薬(株)製、大塚生食注(商品名))10mlを中空糸内側に流し洗浄する(以下、プライミングと称す。)。その後、ヘパリン加人血を7mlシリンジポンプにセットして、1.2ml/ minの流速でモジュール内に通血した後、該生理食塩水を用いて内側10ml、外側10mlで洗浄する。洗浄したモジュールから中空糸を28本、長さを14cmとし採取後、これを細断し測定用試料とする。
【0042】
燐酸緩衝溶液(PBS)(和光純薬工業(株)製)にTritonX−100(ナカライテスク社製)を溶解して得た0.5容量TritonX−100/PBS溶液をLDH測定用のスピッツ管に0.5ml添加し、超音波を60分かけて抽出液を0.1ml分取し、この抽出液にLDH反応試薬(LDHモノテスト:ベーリンガーマンハム社製)3mlを反応させ直ちに0.5mlを分取して340nmの吸光度を測定する。残液は、37℃で1時間反応させた後340nmの吸光度を測定し吸光度の減少を測定し、同様に血液と反応させていない膜についても吸光度を測定し、Δ340nm=(サンプル反応直後吸光度−サンプル60分後吸光度)−(ブランク反応直後吸光度−ブランク60分後吸光度)より評価する。よって、この減少率が大きいほどLDH活性の高い膜となる。
【0043】
『牛血清を用いた分画性能の評価方法』
分画性の指標として、アルブミン(Mw=66000)とα1マイクログロブリン(α1MG、Mw=33000)、さらにβ2マイクログロブミン(β2MG、Mw=11800)のSC(ふるい係数)を以下の手順により求める。
膜の内径を測定して、膜面積が120mm2 となるように糸を数え有効長15cmとなるよう両端をエポキシにて接着し、上記生理食塩水で充分に洗浄して試験用ミニモジュールとする。一方で、牛血清(凍結品:Valley Biomedical, Inc)を37℃で加温溶解した後、総蛋白量が6.5g/dlとなるように生理食塩水で希釈する。この血清に精製α1マイクログロブリン(8mg/l)(栄研化学(株)製 α1−Mハイグレード栄研)及びβ2マイクログロブリン(5mg/l)(栄研化学(株)製 β2−Mハイグレード栄研)を添加して試験用の血清とする。
【0044】
その後、血清を37℃で加温して、流速1ml/ minでモジュールに通液させ、膜間圧力差TMP=34mmHgとなるように圧力をかけて60分後の濾液を分取して評価用サンプルとする。得られた濾液の量から限外濾過速度UFR(ml/mmHg・m2 ・Hr)を算出し、アルブミン発色試薬を用いてアルブミンの濾過を吸光度630nmにて測定する。アルブミンSCは、SC=サンプル吸光度/血清元液吸光度、として算出する。また、α1マイクログロブリン及びβ2マイクログロブリンのSC測定は、全自動免疫化学分析装置(栄研化学(株)製、LX- 6000)を用いて測定した。
【0045】
【実施例1】
・ポリアルキレンオキサイド・スルホン化芳香族ポリスルホンブロック共重合体の合成
まず、J.Polym.Sci,:Part A: Polym.Chem.,31,853−858(1993)に記載の方法で、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンに30%発煙硫酸を80℃で作用させ、析出した固体を氷水に溶解させた後、塩化ナリトウムで塩析させ、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンスルホン酸ナトリウムを合成した。
次に、1000ml三ツ口セパラブルフラスコにビスフェノールA(東京化成工業(株)製、B0494)29.02g、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(東京化成工業(株)製、B0810)41.35g、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンスルホン酸ナトリウム3.16g、炭酸カリウム(和光純薬工業(株)製、162−03495)52.76g、トルエン(和光純薬工業(株)製、204−01866)80.8ml、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと称す。東京化成工業(株)製、M0418)194.6mlを入れ、撹拌を行いながら窒素置換を2時間行った。混合液を155℃で保持後、トルエンを3時間還流させ、その間、共沸してくる水をディーンスタックトラップで混合液から除去した。続いて混合液を190℃に昇温し、トルエンを除去後、さらに190℃で5時間保持して、下記式(9)に示す、両末端クロロ型スルホン化ポリスルホン(以下、スルホン化PSfと称す。)プレポリマーを合成した。得られたポリマーの重量平均分子量および分子量分布はそれぞれ、8.6×103 、1.58であった。
【0046】
【化8】
(式中、Dは、D1 に示す構造とD2 に示す構造を繰返し単位にもつランダム共重合体を表す。)
【0047】
さらに、1000ml三ツ口セパラブルフラスコにポリエチレングリコール#4000(東京化成工業(株)製、水酸基価;36mgKOH/g)129.84g、エチレンジアミンに酸化プロピレンと酸化エチレンを逐次付加したものから派生した4官能ブロック・コポリマー(BASF社、Tetronic304、水酸基価;68mgKOH/g)26.74g、炭酸カリウム200.03g、トルエン173.0ml、NMP340.6mlを入れ、撹拌を行いながら窒素置換を2時間行った。
【0048】
混合液を155℃で保持後、トルエンを3.5時間還流させ、その間、共沸してくる水をディーンスタックトラップで混合液から除去した。続いてNMP50gに溶解させた4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン(東京化成工業社製、D0537)9.83gを加えた。続いて混合液を190℃に昇温し、トルエンを1時間除去後、さらに190℃で5時間保持して、分岐ポリエチレンオキサイド(以下、PEOと称す。)プレポリマーを合成した。分岐PEOプレポリマーの一つの構造を下記式(10)に示す。得られたポリマーの重量平均分子量、分子量分布はそれぞれ、2.7×104 、1.77であった。
【0049】
【化9】
【0050】
両末端クロロ型スルホン化プレポリマー反応混合液に、分岐PEOプレポリマー反応混合液、さらにトルエン100mlを加え、撹拌を行いながら、窒素置換した。反応混合液を155℃で保持後、トルエンを3時間還流させ、その間、共沸してくる水をディーンスタックトラップで混合液から除去した。続いて混合液を190℃に昇温し、トルエンを1時間除去後、さらに190℃で8時間保持して、分岐PEO−スルホン化PSf共重合体を合成した。反応混合液を、撹拌下の蒸留水10000mlへゆっくりと滴下し、繊維状分岐PEO−スルホン化PSf共重合体を得た。該繊維状分岐PEO−スルホン化PSf共重合体の濾物を蒸留水5000ml中へ投入し、濾物と蒸留水混合物のpHが2となる様に濃塩酸を加え、濾別し、濾液がpH7になるまで水洗した。さらに70℃40%エタノール水溶液6000mlで3時間洗浄した後、濾別し、濾物をエタノールで洗浄後、50℃で真空乾燥して、分岐PEO−スルホン化PSf共重合体を得た。得られた分岐PEO−スルホン化PSf共重合体の重量は210gであり、重量平均分子量、分子量分布はそれぞれ、3.7×104 、3.20であり、スルホン化度は、0.005であった。得られた分岐PEO−スルホン化PSf共重合体のNMRチャート図を図3に示す。
【0051】
【実施例2】
・ポリアルキレンオキサイド・スルホン化芳香族ポリスルホンブロック共重合体の合成
4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを37.56g、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンスルホン酸ナトリウムを10.12gにする以外は実施例1と同様にして分岐PEO−スルホン化PSf共重合体を合成した。再沈後に得られたポリマーの重量平均分子量、分子量分布はそれぞれ、3.8×104 、3.28で、スルホン化度は0.016であった。
【0052】
【実施例3】
・ポリアルキレンオキサイドグラフト・スルホン化芳香族ポリスルホン共重合体の合成
ポリスルホン(アモコ・エンジニアリング・ポリマーズ社製:ユーデルP−1700)30.01gを塩化メチレン1200mlに溶解させ、攪拌下、クロロメチルメチルエーテル(東京化成工業製)38.87gを滴下後、四塩化スズ(無水)(関東化学社製)6.94gを添加した。反応液を5時間還流させた後、メタノール4000mlへ注ぎ、濾別、メタノール洗浄、乾燥させて、クロロメチルポリスルホン33.95gを得た。
【0053】
片末端メトキシポリエチレングリコール(ユニオックスM−1000、日本油脂社製、水酸基価;57.6mgKOH/g)24.02gをTHF200mlに溶解させ、金属ナトリウム0.58gを加え、片末端メトキシポリエチレングリコールの水酸基をナトリウムアルコラートにして該ナトリウムアルコラート体溶液とした。
クロロメチルポリスルホン30.12gをジクロロメタン1000mlに溶解させ、該ナトリウムアルコラート体溶液を滴下し、続いて、30℃で5時間反応させ、過剰のナトリウムをメタノールで失活させたのち、メタノール5000mlへ注ぎ、ポリエチレンオキサイドグラフト体を沈殿させた。濾別後、メタノール洗浄、水洗し、乾燥させて、ポリスルホン骨核を構成する芳香族水素の一部が、−CH2 O(CH2 CH2 O)n −Hに置換されたポリエチレンオキサイドグラフト体46.25g得た。
【0054】
ポリエチレンオキサイドグラフト体20.05gを1,2−ジクロロエタン600mlに溶解させ、氷冷浴下、1,2−ジクロロエタン100mlに溶解したクロロ硫酸(関東化学社製)2.95gを1時間で滴下した。氷冷浴を取り去り室温で2時間攪拌した。析出した塊状物をジメチルホルムアミドへ溶解させ、イソプロピルアルコール(以下、IPAと称す。)から再沈し、濾別、真空加熱乾燥して、スルホン化ポリエチレンオキサイドグラフト体17.80g得た。得られたポリマーの重量平均分子量、分子量分布はそれぞれ、4.9×104 、2.84で、スルホン化度は0.019であった。
【0055】
【実施例4】
・ポリアルキレンオキサイド・スルホン化芳香族ポリスルホンブロック共重合体の合成
ポリスルホン(住友化学工業(株)製:スミカエクセルPES3600P)(以下、PESと称す。)25.0gをジクロロメタン1000mlに溶解させ、氷冷浴下、ジクロロメタン100mlに溶解したクロロ硫酸(関東化学社製)11.54gを1時間で滴下した。氷冷浴を取り去り室温で2時間攪拌した。析出した塊状物をジメチルホルムアミドへ溶解させ、IPAから再沈し、濾別、真空加熱乾燥して、下記式(11)に示すスルホン化PES体22.84gを得た。
【0056】
【化10】
(式中、Eは、E1 に示す構造とE2 に示す構造を繰返し単位にもつランダム共重合体を表す。)
【0057】
ポリエチレングリコール#4000;35.32g、エチレンジアミンに酸化プロピレンと酸化エチレンを逐次付加したものから派生した4官能ブロック・コポリマー(BASF社、Tetronic304、水酸基価;68mgKOH/g)7.27g、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン(東京化成工業社製、D0537)2.67gにそれぞれ仕込み量を変えて、実施例1と同様にして、分岐ポリエチレンオキサイドプレポリマーを合成した。続いて、スルホン化PES体20.04gを該分岐ポリエチレンオキサイドプレポリマーに添加し、実施例1と同様にして、分岐PEO−スルホン化PES共重合体を合成した。得られたポリマーの重量平均分子量、分子量分布はそれぞれ、5.9×104 、2.94で、スルホン化度は0.0125であった。
【0058】
【比較例1】
・スルホン化芳香族ポリスルホンの合成
1000ml三ツ口セパラブルフラスコにビスフェノールAを113.18g、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを137.03g、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンジスルホン酸ナトリウムを35.94g、炭酸カリウムを206g、トルエンを195ml、NMPを507mlを入れ、撹拌を行いながら窒素置換を2時間行った。混合液を155℃で保持後、トルエンを3時間還流させ、その間、共沸してくる水をディーンスタックトラップで混合液から除去した。続いて混合液を190℃に昇温し、トルエンを1時間除去後、さらに190℃で5時間保持して、両末端を塩素置換したスルホン化PSfを合成した。再沈後、得られたポリマーの重量平均分子量、分子量分布はそれぞれ、2.2×104 、1.98であり、スルホン化度は0.016であった。
【0059】
【比較例2】
・ポリアルキレンオキサイド・芳香族ポリスルホンブロック共重合体の合成
4,4’−ジクロロジフェニルスルホンスルホン酸ナトリウムを使用せず、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを43.09g使用する以外は実施例1と同様な方法で分岐PEO−PSf共重合体を合成・再沈・回収を実施した。得られた分岐PEO−PSf共重合体の重量は150gであり、重量平均分子量、分子量分布はそれぞれ、3.7×104 、3.23であった。
【0060】
【実施例5】
実施例1に示した分岐PEO−スルホン化PSf共重合体を10重量%、ポリスルホン(アモコ・エンジニアリング・ポリマーズ社製:ユーデルP−1700)を18重量%、NMPを72重量%混合し、60℃で12時間加熱撹拌した後、50℃で加熱脱泡し、均一透明なドープを調製した。内部凝固液は、NMP50重量%、純水50重量%で調整された混合溶液を用い、45℃に保たれた外径0.36mm、内径0.15mmの環状ノズルより、線速度40m/minで同時に吐出した。吐出部のエアギャップ距離は600mmであり、内部の空気は相対湿度80%RH、雰囲気温度45℃に保たれていた。吐出後の成形体は60℃の水中で凝固され、引き続き50m/minで巻き取られ、中空糸膜を得た。最後に、該中空糸膜は90℃の熱水で洗浄後、20重量%のグリセリン水溶液中で1時間、60℃にて浸漬処理を行うことにより評価用中空糸膜を得た。
【0061】
【実施例6】
内部凝固液として、NMP50重量%、純水50重量%で調整された均一透明溶液に、実施例2に示した、分岐PEO−スルホン化PSf共重合体を共重合体濃度が0.1重量%となるように溶解した透明溶液を用いる以外は実施例5と同様に紡糸、グリセリン浸漬処理を行い、評価用中空糸膜を得た。
【比較例3】
分岐PEO−スルホン化PSf共重合体の代わりに、比較例1で示した、スルホン化PSfを用いる以外は実施例5と同様に紡糸、グリセリン浸漬処理をして、評価用中空糸膜を得た。
【0062】
【比較例4】
分岐PEO−スルホン化PSf共重合体の代わりに、比較例2で示した、分岐PEO−PSf共重合体を用いる以外は実施例5と同様に紡糸、グリセリン浸漬処理をして、評価用中空糸膜を得た。
【比較例5】
ポリスルホンを15重量%、比較例1で得られたスルホン化PSfを7重量%、比較例2で得られた分岐PEO−PSf共重合体を8重量%およびNMPを70重量%用いる以外は実施例5と同様に紡糸、グリセリン浸漬処理をして、評価用中空糸膜を得た。
【0063】
<血液適合性評価&分画性評価>
以上の実施例、比較例で得られた中空糸膜を用い、LDH活性値とアルブミンリーク値を測定した。これらの値を体外循環血液処理膜(旭化成(株)製、APS−150E)のLDH活性値とアルブミンリーク値で除したLDH活性相対値およびアルブミンリーク相対値をそれぞれ図1、2に示す。
スルホン化PSf(比較例3)では、アルブミンリークは抑制されているが血液適合性が悪い。PSfと分岐ポリエチレンオキサイドからなる共重合体(比較例4)では、血液適合性は良好であるが、アルブミンリークが抑制できない。スルホン化PSfとPSfと分岐ポリエチレンオキサイドからなる共重合体ブレンド(比較例5)では、血液適合性、アルブミンリークともに悪い。
一方、スルホン酸基を結合した分岐PEO−スルホン化PSf共重合体を用いた中空糸膜では、良好な血液適合性とアルブミンリーク阻止性能を同時にバランスよく満足できる。
【0064】
【発明の効果】
本発明のスルホン酸基を結合した芳香族ポリスルホンと親水性ポリマーから成るポリスルホン系共重合体を体外循環血液処理用親水化剤として使うことにより、血液処理時における良好な血液適合性とアルブミンリーク阻止性能を同時に満足させうる体外循環血液処理装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】対外循環血液処理膜APS−150E(旭メディカル(株)製)のLDH活性値を100とした場合の、実施例および比較例に示した評価用中空糸のLDH活性値を示すグラフ図である。
【図2】対外循環血液処理膜APS−150E(旭メディカル(株)製)のアルブミンリーク量を1とした場合の、実施例および比較例に示した評価用中空糸のアルブミンリーク量を示すグラフ図である。
【図3】実施例1で得られた分岐PEO−スルホン化PSf共重合体のNMRチャート図である。
Claims (6)
- 芳香族ポリスルホンにスルホン酸基を導入した後、該スルホン化芳香族ポリスルホンとポリアルキレンオキサイドとを共重合することを特徴とする請求項1に記載のポリスルホン系共重合体の製造方法。
- 芳香族ポリスルホンの原料モノマーをスルホン化して得られるスルホン化モノマーと、芳香族ポリスルホンの原料モノマーとを原料としてスルホン化芳香族ポリスルホンを得た後に、該スルホン化芳香族ポリスルホンとポリアルキレンオキサイドとを共重合することを特徴とする請求項1に記載のポリスルホン系共重合体の製造方法。
- 芳香族ポリスルホンとポリアルキレンオキサイドとからなるポリスルホン系共重合体をスルホン化することを特徴とする請求項1に記載のポリスルホン系共重合体の製造方法。
- 請求項1に記載するポリスルホン系共重合体を含有するドープ。
- 請求項5に記載のドープを用いてシート状または中空糸状に成形して得られる成形体。
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