JP3836204B2 - 血液適合性に優れた医療用材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は血液適合性に優れた新規な医療用材料に関し、さらに詳しくはポリエーテルエステルの優れた血液適合性に基づいてかかるポリマーを医療用材料へ適用することに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、合成高分子材料は、人工臓器、カテーテルをはじめとする医療用材料に広く用いられている。その代表的なものは、医療用高分子材料としてはポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ポリメタクリル酸エステル及び含フッ素樹脂などの疎水性高分子や、ポリビニルアルコール、ポリエーテルウレタン(セグメント化ポリウレタン、SPU)、ポリ(メタクリル酸2―ヒドロキシエチル)及びポリアクリルアミドなどの親水性高分子である。これら従来の材料の大部分が、主に物理的、機械的特性に着目して使用されてきた中において、SPUに関しては、比較的抗血栓性に優れることが知られている。中でもBiomerR 、Cardiothane R などは人工心臓への応用が試みられているが、なお十分な効果を得るには至らなかった(B.Nylas,R.C.Reinbach,J.B.Caulfield,N.H.Buckley,W.G.Austen; J.Biomed,Mater.Res.Symp.,3,129(1972) 、L.P.Joyce,M.C.Devries,W.S.Hastings,D.B.Olsen,R.K.Jarvik,W.J.Kolff; Trans.ASAIO, 29,81(1983) )。
【0003】
オキシエチレン単位が鎖状に共有結合したポリエーテルであるポリエチレングリコールは、高い親水性と低い抗原性を有し、従来より非イオン性界面活性剤、可塑剤、医薬品基材などとして用いられてきた。また、ポリマー鎖の両末端に水酸基を有するため、ポリメタクリル酸へグラフト重合することで、表面が親水化したヒドロゲルを調製することができる(Y.Mori et.al.,Trans.Am.Soc.Artif.Intern.Organs,28,459(1982) )。更に二官能性コポリマーとしてポリエーテルウレタンの親水性相へ適用したセグメント化ポリウレタンも調製された。これらのポリマーでは、表面への血小板粘着が抑制されることも報告されている(E.W.Merril,V.Sa Da Costa,E.W.Salzman,D.Brier-Russell,L.Kirchner,D.F.Wangh,G.Trudel,S.Stopper,V.Vitale; Adv.Chem.Ser.,199,95(1982) )。
【0004】
一方、医療技術の進歩に伴って、生体組織や血液と材料が接触する機会はますます増加しており、材料の生体親和性が大きな問題となってきている。中でも蛋白質や血球などの生体成分が材料表面に吸着し、変性することは、血栓形成、炎症反応などの、通常では認められない悪影響を生体側に引き起こすばかりでなく、材料の劣化にもつながり、医療用材料の根本的かつ緊急に解決せねばならない重要な課題である。材料表面での血液凝固の防止に関しては、従来ヘパリンに代表される血液抗凝固剤の連続投与が行われてきたが、最近長期にわたるヘパリン投与の影響(脂質代謝異常などの肝臓障害、出血時間の延長あるいはアレルギー反応等の副作用)が問題となってきており、特に血液透析、血液濾過などの血液浄化をうける慢性腎不全患者の血液透析療法に関して、抗凝固剤を必要としない血液接触材料の開発が強く望まれるようになってきた。
【0005】
現在、日本における血液浄化法適用患者は10万人を超える。血液浄化の原理は、血液と透析液とを膜を介して接触させ、血液中の老廃物や代謝産物を透析液中に拡散除去し、更に余剰の水分を圧力差を利用して取り除くことによる。血液浄化を行う場合には血液浄化器が用いられている。これは中空糸を束ねた血液回路がハウジングに納められているもので、中空糸の内部を血液が、外側を透析液が流れる構造となっている。血液浄化器用の透析膜素材としては、従来より再生セルロース膜、とりわけ銅アンモニウム法再生セルロース膜が広く用いられており、透析装置や透析技術の進歩と共に腎不全患者の延命、社会復帰に大きな役割を果たしている。これは、再生セルロース膜が優れた透析性能や機械的強度を有すると共に、長年の実績に裏付けられた高い安全性を有しているからに他ならない。しかしその一方で、血液透析療法の進展にも拘らず、透析に伴う種々の問題が今なお未解決であるのも事実である。その主たるものは、一つにセルロースポリマーによる血液中の補体活性化に伴なう一過性白血球減少があり、そして二つ目に、抗凝固剤の長期大量投与のために生じると考えられる種々の副作用がある。先述のように、血液透析を行う場合には、血液浄化器内での血液凝固反応を抑制するためにヘパリンに代表される血液抗凝固剤の連続投与が行われてきた。しかしながら、血液浄化器の溶質除去性能が改良され、20年に及ぼうとする長期延命が可能となってきた現在、ヘパリンを使用することによる問題が次々と指摘されてきている。特に長期にわたるヘパリン投与により、脂質代謝異常などの肝臓障害、出血時間の延長あるいはアレルギー反応等の副作用を併発することが認められている。このような観点から、血液浄化療法の際に抗凝固剤の使用量を低減させるか、あるいは全く使用しなくても血液凝固を引き起こさない、すなわち、抗血栓性を備えた血液浄化器の開発が強く望まれるようになってきた。更に、抗血栓性の血液浄化器は、装置全体のポータブル化も可能にし、一週間に2〜3日間、5時間程度病院に拘束されている患者の社会復帰を促し、そのクオリティオブライフの向上にもつながることになる。
【0006】
再生セルロース膜の他の優れた性能を損なわず、補体活性化の抑制又は抗血栓性を改善する方法も幾つか提案されている。例えば補体活性化抑制に関しては、第三級アミノ基を有する高分子の表面固定、ポリエチレンオキシド鎖のような親水性高分子を表面に共有結合によりグラフトする方法等も報告され、ある程度の補体活性化抑制の効果は確認されているが、血液凝固の抑制(抗血栓性)までは不十分であった。抗血栓性の改善に関しては、膜表面のヘパリン化(特開昭51―194号公報)、あるいはプロスタグランジンE1―セルロース誘導体吸着層による表面修飾(特開昭54―77497号公報)による抗血栓性付与が、また抗血栓性に優れたポリマーである2―メタクリロイルオキシエチルホスホコリン(MPC)をセルロース表面にグラフト重合、固定化する方法(BIO INDUSTRY,8(6),412420(1991))あるいは化学修飾したMPCグラフトセルロース誘導体の中空糸への固定(特開平5―220218号公報及び5―345802号公報)等が報告されているが、生理活性物質の低安定性の問題等、効果が十分でなかったり、又は固定化方法の煩雑さによる高コスト化、均質な固定化表層の獲得の困難さといった面で問題も多く、実用化されていない。
【0007】
前記のポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸エステルといった疎水性高分子材料や、ポリビニルアルコール、ポリ(メタクリル酸2―ヒドロキシエチル)などの親水性高分子材料は、いずれも機械的強度、生体親和性等において満足できるものではない。一方、ポリエチレングリコールは、それ自体では水溶性であり、医療用材料として加工することはできない。また自由末端鎖としてポリエチレングリコール鎖をグラフトしたメタクリル酸コポリマーは、血小板粘着を比較的抑制するものの、ポリエチレングリコールの高い運動性や、生体内の極性基と強く相互作用する遊離水酸基により、有意な細胞膜損傷性と細胞機能低下を惹起することがin vitro試験により示されており(宮本正樹、笹川滋、寺田良蔵、長岡昭二、森有一、Polym.Prepr.,Jpn.,33,2143(1984) )、安全性が重視される医療用材料への利用は適切ではない。
【0008】
更にBiomerR、Cardiothane Rなどセグメント化ポリウレタンは、剛直な芳香族ウレタン結合部位と柔軟なポリエーテル結合部位の間のミクロ相分離構造により血小板粘着が抑制されるが、その効果は必ずしも十分ではない。特にウレタン結合やウレア結合のように水素結合性の部分構造は、分子鎖の剛直性向上に寄与するものの、主鎖の極性基間の相互作用が強いため、疎水性相互作用を軽減しうる水分子の水和が阻害される。従って血中タンパクが吸着した際にタンパクの変性を誘起、血小板粘着を促進することが報告されている。そもそも一般には水酸基、アミノ基といった極性部位は、血液接触時に補体活性化(第二経路)を誘発し、フィブリン形成促進による血栓形成の要因ともなる。
【0009】
更に、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等の合成高分子からなる膜では、再生セルロース膜に比べ補体活性化抑制等の血液適合性に優れるといった報告が近年なされているが、抗血栓性は不十分であり、抗凝固剤の使用を低減するには至っていない。
【0010】
半合成高分子であるセルローストリアセテート膜は、これらセルロースと合成高分子の長所を合せ持ち、再生セルロースに比べ補体活性抑制能が高く、同時に透水性と物質透過性のバランスに優れる。また十分な機械的強度を有するため、ピンホールの発生も少なく、現在再生セルロースに代わる透析膜素材として研究開発が進められており、治験臨床でも十分な性能が確認されている。ただしこのセルローストリアセテート膜に関しても、抗血栓性に関しては不十分であり、抗凝固剤の使用を低減しうる新規な抗血栓性膜の開発が望まれている。
【0011】
ところで、特定のポリエステル系ポリマーが抗血栓性を有することが知られている。例えば特開平5―36065号公報には、テレフタル酸80〜50モル%とそれ以外の酸20〜50モル%並びに分子量250以下のグリコールと数平均分子量約3,000〜60,000のポリアルキレングリコールとからなり、該ポリアルキレングリコールを5〜40重量%含有するポリエステル系共重合体からなる抗血栓性医療材料が開示されている。
【0012】
特公昭58―47182号公報には、数平均分子量が800〜6,000であり、炭素原子対酸素原子の比が2.5〜4.3であるポリ(アルキレンオキシド)グリコール単位を5〜85重量%で含有するポリエステル・ポリエーテルブロック共重合体からなる血液輸送管または血液容器が開示されている。
【0013】
特開昭58―183171号公報には、ポリエステル・ポリエーテルブロック共重合体とポリ塩化ビニル樹脂とが相互にミクロ相分散状態で均一に分散して存在する血液輸送管または血液取扱い用具が開示されている。
【0014】
しかしながら、かかる共重合体はポリ塩化ビニル樹脂と相溶性が小さすぎるため、ポリ塩化ビニル樹脂の抗血栓性は十分改善されているとはいえず、またポリ塩化ビニル樹脂本来の機械物性が損われるという問題がある。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は特定のポリエーテルエステルの医療用材料の素材としての使用を提供することにある。
本発明の他の目的は特定のポリエーテルエステルを素材の1部として含有する組成物からなる医療用材料を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は本発明の医療用材料を製造する工業的に有利な方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、生体安全性、経済性、溶剤溶解性等を考慮し、水素結合供与基を含まない剛直構造である芳香族ポリエステルの主鎖中に、ポリオキシアルキレングリコール鎖を共重合成分として組み込んだポリエーテルエステル共重合体を用いて、医療用高分子材料の血液適合性を改善すべく検討を行った。その結果、適当な鎖長からなるポリオキシアルキレングリコールと、疎水性のモノマーから得られるハード成分である芳香族ポリエステルとの共重合体において、ポリオキシアルキレングリコール単位数、疎水性ハードメチレン鎖の鎖長、芳香族ジカルボン酸の種類、及びこれらの共重合組成を制御し、該共重合体を種々の医療用高分子材料とブレンドすることにより、機械的特性を維持したまま、該医療用高分子材料に抗血栓性を付与し良好な血液適合性を示すことが見い出され、本発明に到達したものである。
【0017】
すなわち本発明は、血液と接触して使用されるための医療用材料であって、少なくとも血液と接触して使用される表面をもつ部分は、
(A)下記式(1)
【0018】
【化3】
Figure 0003836204
【0019】
(ここでAは炭素数6〜12の2価の芳香族基でありそしてGは炭素数2〜15の2価の脂肪族炭化水素基である。)
で表わされる繰返し単位、および下記式(2)
【0020】
【化4】
Figure 0003836204
【0021】
(ここでAの定義は上記に同じであり、Rは炭素数2または3のアルキレン基であるか、もしくは炭素数4のアルキレン基と炭素数2または3のアルキレン基との組み合わせであり、そしてnは(―RO―)nで示される単位の分子量が400〜20,000の範囲にある数である。)
で表わされる繰返し単位からなり、そして上記式(1)および(2)の繰返し単位の合計重量に基づき、上記式(2)中の(―RO―)nで示される単位が30〜90重量%を占めるポリエーテルエステル共重合体1〜99重量部と、
(B)ポリスルホンおよびポリアリールエーテルスルホンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマー1〜99重量部(但しポリエーテルエステル共重合体(A)とポリマー(B)の合計重量は100重量部とする)
とからなるポリマー組成物より構成され、かつ当該部分の表面近傍におけるポリエーテルエステル共重合体(A)の濃度が該部分を形成する該ポリマー組成物全体中のポリエーテルエステル共重合体(A)の濃度よりも高いことを特徴とする血液適合性に優れた医療用材料によって達成される。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエーテルエステル共重合体(A)は、上記式(1)および(2)で表わされる繰り返し単位から実質的になる。
【0023】
上記式(1)においてAは炭素数6〜12の2価の芳香族基である。かかる芳香族基としては、具体的にはp―フェニレン、m―フェニレン、2,6―ナフチレン、2,7―ナフチレン、1,4―ナフチレン、1,5―ナフチレン、4,4′―ビフェニレン、2,2′―ビフェニレン等を例示することができる。Aとしてはこれらのうちp―フェニレン、2,6―ナフチレンが好ましい。
【0024】
また、上記式(1)において、Gは炭素数2〜15の2価の炭化水素基である。かかる炭化水素基としては、具体的にはエチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、ドデカメチレンのアルキレン基、1,4―シクロヘキサンジメチレン等のシクロアルキレン基を例示することができる。これらのうちテトラメチレン、ヘキサメチレン等の炭素数2〜10のアルキレン基が好ましい。
【0025】
さらに、上記式(2)において、Rは炭素数2または3のアルキレン基であるか、もしくは炭素数2または3のアルキレン基と炭素数4のアルキレン基との組みあわせである。かかる炭素数2または3のアルキレン基の具体例としては、例えばエチレン、プロピレン、トリメチレンを例示することができる。Rとしてはこれらのうち特にエチレンが好ましい。炭素数4のアルキレン基の具体例としては、例えばテトラメチレンを例示することができる。Rは単独の構造でもよいし、2種以上の組み合わせの構造であってもよい。Rが炭素数2または3のアルキレン基と炭素数4のアルキレン基との組みあわせである場合、炭素数4のアルキレン基の割合は80モル%以下、好ましくは60モル%以下である。
【0026】
nは(−RO−)nで示されるポリオキシアルキレン構造単位の分子量が、400〜20,000となるような繰り返し単位数を示す。ポリオキシアルキレン構造単位の分子量は、好ましくは600〜15,000、より好ましくは800〜10,000、特に好ましくは1,000〜6,000である。
【0027】
上記式(1)及び(2)で表わされる繰り返し単位よりなるポリエーテルエステル共重合体としては、上記式(1)中のAがp―フェニレン又は2,6―ナフチレンであり、Gがテトラメチレン、ヘキサメチレン等の炭素数4〜6のアルキレン基であり、上記式(2)中のRがエチレンであって、かつポリオキシアルキレン単位の分子量が1000〜6000であるものが重合性、成形性及びより優れた血液適合性を示すので好ましい。
【0028】
上記ポリエーテルエステル共重合体(A)としては、具体的にはポリエチレングリコール/ポリテトラメチレンテレフタレート共重合体、ポリエチレングリコール/ポリテトラメチレン―2,6―ナフタレート共重合体等が挙げられる。
【0029】
上記式(2)中の(―RO―)nで表されるポリオキシアルキレン単位の含有量は、上記式(1)及び(2)で表される繰り返し単位からなるポリエーテルエステル共重合体に対し、30〜90重量%の範囲内である。ソフトセグメントであるポリオキシアルキレン単位の含有量がポリエーテルエステル共重合体に対し、30重量%未満ではポリエーテルエステル共重合体の疎水性が高すぎ、タンパク吸着や血小板粘着を十分に抑制できなく、また90重量%を超えると親水性が高すぎるため、水中への溶出、著しい膨潤が起こり機械的強度も十分ではない。かかるポリオキシアルキレン単位の含有量は、好ましくは40〜85重量%、より好ましくは50〜80重量%である。
【0030】
上記式(1)及び(2)で表される繰り返し単位より実質的になるポリエーテルエステル共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0031】
かかるポリエーテルエステル共重合体は、上記式(1)で表される繰り返し単位の1種又は2種以上および、上記式(2)で表される繰り返し単位の1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0032】
本発明におけるポリエーテルエステル共重合体は、例えばポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールと、ジメチルテレフタレート等の芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体、及び1,4―ブタンジオール等を、触媒の存在下、加熱重縮合する従来公知の製造方法により得ることができる。
【0033】
この際に用いる触媒としては、例えばチタン、アンチモン、ゲルマニウム、スズ、亜鉛等の金属化合物を挙げることができる。生成するポリマーは、その目的に応じてポリオキシアルキレングリコールの分子量、含有量(共重合組成)を任意に変化させることができる。
【0034】
上記ポリエーテルエステル共重合体の重合度は、フェノール/1,1,2,2―テトラクロルエタン混合溶媒(重量比6/4)中、濃度1.2g/dl、温度35℃で測定した還元粘度で、1.0〜5.0とすることが好ましく、2.0〜3.0とすることがより好ましい。
【0035】
上記ポリエーテルエステル共重合体は、それ自体で優れた血液適合性例えば抗血栓性を示す。そして驚くべきことに、他のポリマーとブレンドすることにより、他のポリマーに良好な血液適合性を与えることが明らかとされた。
【0036】
そこで、本発明によれば、
(A)上記ポリエーテルエステル共重合体1〜99重量部および(B)ポリスルホンおよびポリアリールエーテルスルホンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマー1〜99重量部、
とからなるポリマー組成物を血液と接触して使用されるための医療用材料を製造するための素材として使用すること、但しポリエーテルエステル共重合体(A)とかかる他のポリマー(B)の合計重量は100重量部とする、が提供される。
【0037】
医療用材料を構成する素材であるポリマー(B)は、上記の如くポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホンである。これらは1種又は2種以上一緒に用いることもできる。
ポリスルホンおよびポリアリールエーテルスルホンとしては、下記式(3)
【0038】
【化5】
Figure 0003836204
【0039】
(ここで、Ar1、Ar2およびAr3は、同一もしくは異なり、核置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基である、)
で表わされる繰返し単位からなる、芳香族ポリスルホンのホモポリマー又はコポリマーが好ましく用いられる。このポリマーは、フェノール/1,1,2,2―テトラクロルエタン混合溶媒(重量比6/4)中、濃度1.2g/dl、温度35℃で測定した還元粘度が0.5〜3.0であることが好ましい。
【0040】
上記式(3)におけるAr1、Ar2およびAr3は、同一もしくは異なり、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基である。これらの芳香族炭化水素基としては、例えばp―フェニレン、m―フェニレン、2,6―ナフチレン、2,7―ナフチレン、1,4―ナフチレン、1,5―ナフチレン、4,4′―ビフェニレン、2,2′―ビフェニレン、4,4′―オキシレンジフェニレン、4,4′―イソプロピリデンジフェニレン、4,4′―イソプロピリデン―2,2′,6,6′―テトラメチルジフェニレン、4,4′―スルホニルジフェニレン等を例示することができる。これらのうち、Ar1、Ar2としてはp―フェニレンが、Ar3としては4,4′―イソプロピリデンジフェニレン、4,4′―オキシレンジフェニレン、4,4′―イソプロピリデン―2,2′,6,6′―テトラメチルジフェニレン、4,4′―スルホニルジフェニレン等が好ましい。
【0041】
中でも医療用グレードの芳香族ポリスルホン、例えば(a)2,2′―ビス(4―ヒドロキシフェニル)プロパンと4,4′―ジクロロジフェニルスルホンとを加熱縮合することで得られる数平均分子量20,000〜30,000の芳香族ポリスルホン(比重1.24、ガラス転移点190℃)、(b)4,4′―ジヒドロキシジフェニルスルホンと4,4′―ジクロロジフェニルスルホンとを加熱縮合することで得られる数平均分子量20,000〜30,000のポリアリールエーテルスルホン(比重1.37〜1.60、ガラス転移点220℃)等が好ましい。
【0049】
これらのうち、本発明においては、ポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホンが好適な対象となる。
【0050】
ポリマー組成物は、本発明の上記共重合体(A)1〜99重量部とポリマー(B)1〜99重量部とからなる。但し、共重合体(A)とポリマー(B)の合計重量は100重量部である。
【0051】
共重合体(A)が1重量部より少ないと、医療用材料の表面における共重合体(A)の存在量が少なすぎるため、十分な抗血栓化効果が得られず、また99重量部を越えるとポリマー(B)の種類により本来の物理的特定および使用条件が大きく変化するようになり好ましくない。
【0052】
ポリマー組成物は、好ましくは上記共重合体(A)1〜50重量部とポリマー(B)50〜99重量部(両者の合計100重量部)からなり、より好ましくは上記共重合体(A)10〜30重量部とポリマー(B)70〜90重量部(同)からなる。
【0053】
このポリマー組成物は、例えば共重合体(A)とポリマー(B)とを上記所定の割合で有機溶媒に溶解し、しかる後有機溶媒を除去して調製したり、あるいは共重合体(A)とポリマー(B)とを上記所定の割合で溶融混合することにより調製することができる。
【0054】
有機溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,3―ジオキソラン、1,4―ジオキサンの如き環状エーテル系溶媒、N,N′―ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N′―ジメチルアセトアミド(DMAc)、N―メチル―2―ピロリドン(NMP)等のアミド系有機溶媒;およびクロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン系有機溶媒があげられる。
【0055】
上記ポリマー組成物において、共重合体(A)とポリマー(B)とは、分子レベルで均一に混合することはなく、別個の粗を形成し、相分離して存在する。
【0056】
本発明によれば、ポリマー組成物のこのような性質を利用して、血液と接触して使用されるための医療用材料であって、少なくとも血液と接触して使用される表面をもつ部分はポリエーテルエステル共重合体(A)とポリマー(B)とからなるポリマー組成物を素材として形成され、そして該部分の表面近傍におけるポリエーテルエステル共重合体(A)の濃度が該部分を形成する該ポリマー組成物全体中のポリエーテルエステル共重合体(A)の濃度よりも高い、ことを特徴とする医療用材料が提供される。
【0057】
この医療用材料において、ポリマー組成物は、好ましくはポリエーテルエステル共重合体(A)5〜20重量部とポリマー(B)80〜95重量部からなり(但し両者の合計は100重量部)そして該表面近傍におけるポリエーテルエステル(A)の割合は同じ基準に対し50〜90重量部を占める。
【0058】
表面近傍におけるポリエーテルエステル共重合体(A)の割合は、ポリマー組成物の有機溶媒溶液から医療用材料を製造する際に、ポリマー組成物全体中のポリエーテルエステル共重合体(A)の割合(温度)よりも高くなる。すなわち、溶液から有機溶媒が飛散するにつれて相分離が起り、最終的に表面近傍においてポリエーテルエステル共重合体(A)の濃度の高い医療用材料が得られる。表面近傍とは厳密ではないが表面から深さ100ナ程度までの領域である。
【0059】
本発明によれば、血液と接触して使用される部分が薄い厚みを持つ医療用材料は特に下記方法によって有利に製造される。
【0060】
すなわち、本発明によれば、さらに、ポリエーテルエステル共重合体(A)、ポリマー(B)およびこれらを溶解し得る非プロトン性極性有機溶媒(C)とからなり、そして上記(A)成分および(B)成分の合計濃度が1〜30重量%であるドーフを準備し、このドープを薄膜に形成し、この薄膜を湿式もしくは乾式成形法に付して厚さが1mm以下の、血液を接触して使用される部分を持つ医療用材料を生成せしめる、ことを特徴とする医療用材料の製造法が提供される。
【0061】
非プロトン性極性有機溶媒(C)としては、テトラヒドロフラン、1,3―ジオキソラン、1,4―ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N―メチル―2―ピロリドン、ジメチルスルホキサイド、塩化メチレンおよびクロロホルムが好適に用いられる。
【0062】
ドープを薄膜に形成するには、例えばドープを基板上にキャストにフィルム状にしたりあるいは紡糸して中空糸状にしたりすることにより行うことができる。ドープ中の(A)成分と(B)成分の合計濃度は、キャストの際には好ましくは5〜20重量%、より好ましくは10〜15重量%であり、中空糸状に紡糸する際には好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜20重量%、特に好ましくは13〜14重量%である。
【0063】
ドープは薄膜に形成されたのち、湿式もしくは乾式法により非プロトン性極性有機溶媒を除去され、自立性のある成形品としての医療用材料を与える。
【0064】
湿式法はドープの薄膜を水/プロトン性有機溶媒および次いで水中で処理することにより、ドープ中の非プロトン性有機溶媒を除去する方法であり、乾式法はドープの薄膜を常温、常圧下あるいは40〜50℃で1〜30mmHg程度の減圧下で処理することにより、ドープ中の非プロトン性有機溶媒を同様に除去する方法である。
【0065】
得られる医療用材料の血液と接触して使用される部分である薄膜は好ましくは1μm〜1mmの厚みを有し、とりわけ中空糸では10〜50μmの薄膜を持つのが有利である。
【0066】
上記ポリエーテルエステル共重合体(A)を用いた本発明のいずれの医療用材料も、濃度5重量%であるヒト貧血小板血漿(PPP)のリン酸緩衝液に37℃、1時間接触させたときの蛋白吸着量が0.8μg/cm2以下(Micro BCA法によるアルブミン換算)であると、蛋白質や血球などの生体成分の吸着が少なく、また吸着した蛋白質の変性や接触した血小板の粘着、活性化を抑制するといった、抗血栓性がより良好であり好ましい。血液接触時の蛋白吸着量が0.8μg/cm2を超えると、蛋白吸着に続く血小板の粘着や活性化を十分に抑制できず、血栓形成が進行することがある。蛋白吸着量はより好ましくは0.3〜0.5μg/cm2である。
【0067】
本発明における医療用材料としては、例えば人工腎臓用中空糸、人工肺用中空糸、カテーテル、人工血管、採血管、血液回路用のチューブ、血液容器、血液透析膜、血漿分離膜および医療用縫合糸を挙げることができる。
【0068】
本発明の医療用材料は、該材料の少なくとも血液と接触する部分が、上記ポリマー組成物からなり、例えば該ポリマー組成物からなる薄膜により被覆されている。ここで血液と接触する部分とは、血液が接触する材料の表面およびその近傍をさす。例えば、人工腎臓用透析膜として使用する場合には、少なくとも血液が流れるその内面が上記ポリマー組成物で構成されていればよい。
【0069】
本発明におけるポリエーテルエステル共重合体及びこれを含むポリマー組成物が優れた血液適合性を示す理由としては、次のように推定される。
【0070】
上記ポリエーテルエステル共重合体は、剛直部位であるハード成分及びポリマー主鎖中に固定された親水性ポリオキシアルキレングリコール鎖を有しており、これら親水性セグメントと疎水性ポリエステルセグメント双方は熱力学的にのみならず、巨視的に相分離した表面構造を特徴とする。かかるポリマーは、主鎖中の大部分にわたって水素結合供与基が存在しないため、主鎖間の相互作用が小さく、疎水性相互作用を低減しうる水分子の接触が容易におこる。従って水(血液)の存在下、水接触界面において水和したハイドロゲル層が形成される。このため、蛋白質や血球などの生体成分の吸着が少なく、また吸着した蛋白質の変性や接触した血小板の粘着、活性化を抑制することができる。更にポリオキシアルキレン自由末端鎖、遊離水酸基末端数等が大幅に減少するため、補体活性化、細胞膜損傷を回避できるものと考えられる。
【0071】
この、優れた抗血栓性を示す上記ポリエーテルエステル共重合体を含む本発明のポリマー組成物は、もう一つのポリマー組成物成分であり医療用高分子素材である他のポリマーと巨視的に相分離した状態にある。更にポリマー組成物調製の際、例えば湿式ブレンドにおける溶媒除去の際に、上記ポリエーテルエステル共重合体のポリオキシアルキレンユニットは、ポリマー組成物内の界面自由エネルギーを安定化させるべく、ポリマー組成物内部より、むしろポリマー組成物とバルクとの界面(空気/ポリマー組成物界面、水/ポリマー組成物界面など)に配向する。従って水(血液)の存在下、水接触界面の大部分にわたって上記ポリエーテルエステル共重合体が配向し、水和したこの共重合体のハイドロゲル層が形成される。このため、蛋白質や血球などの生体成分の吸着が少なく、また吸着した蛋白質の変性や接触した血小板の粘着、活性化を抑制することができる。更にポリオキシアルキレン自由末端鎖、遊離水酸基末端数難度が大幅に減少するため、補体活性化、細胞膜損傷を回避できると推定される。
【0072】
【実施例】
以下、参考例および実施例によって本発明を更に詳しく説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定するものではない。また、例中の「部」は特にこだわらない限り「重量部」を表す。
【0073】
ポリエーテルエステル共重合体の還元粘度(ηsp/c)は、フェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン混合溶媒(重量比6/4)10mlに120mgを溶解させて35℃で測定した。
【0074】
ポリマーBとして、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを加熱反応して得られるポリスルホン(PS)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンと4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを加熱反応して得られるポリアリールエーテルスルホン(PES)をそれぞれ用いた。
【0075】
吸着した蛋白の定量評価は、MicroBCA法により行った。これは銅イオンおよび下記構造で示される BCA蛋白検出試薬を用いたMicroBCAキット(Micro BCA Assay Reagent Kit;Pierce Co.Ltd.製)による蛋白定量法である。試料中に存在する蛋白により一価に還元された銅イオンのみが、この試薬とキレート反応を行い発色(570nm)するため、サンプルの吸光度測定より蛋白濃度(アルブミン換算)を定量することができる。
【0076】
【化6】
Figure 0003836204
【0077】
ESCAによる表面組成の測定には、フィルムを直径1cmの円盤上に切り出し、測定試料とした。装置はVG社ESCALAB−200を用い、MgKα線を光電子取り出し角45゜となるよう照射し、スキャンした。測定はキャスト時、空気界面と接触した表面(表側)について行った。
【0078】
SEM写真は、金蒸着したサンプルを5×5mmに切り出し、銅製サンプルプレート上に固定して観察試料とした。この試料を用いて、SEM(日立製作所製、S−510)により表面観察を行った。
【0079】
[参考例1〜5(ポリエーテルエステル共重合体の製造)]
100ml三口丸底フラスコ内にてジメチルナフタレート17.1g(0.070mol)、ポリオキシエチレングリコール#2000(平均分子量2000)44.96g(0.020mol)、1,4−ブタンジオール10.7g(0.120mol)、テトラブトキシチタン0.02g(10ppmトルエン溶液として2ml)を混合し、十分に窒素置換した。ついで、これを常圧下、215〜230℃で5時間反応させ、留出するメタノールを除去しながらエステル交換反応を行った。その後、235℃で2時間かけ、余剰の1,4−ブタンジオールを留去し、更に76cmHgで2時間、0.3〜0.2mmHgで6時間反応させて無色半透明のポリマーを得た。かかるポリマー中のポリオキシエチレングリコール成分の共重合組成は70重量%であった。また、フェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン混合溶媒(重量比6/4)10mlに120mgを溶解させて35℃で測定した還元粘度(ηsp/c)は、2.7であった。このポリマーをPEO2000(70)−co−PBN(30)と略記する。
【0080】
同様に、種々のポリエーテルエステル共重合体を合成した。得られた一連のポリマーに関して、ポリオキシエチレングリコール成分の組成及び還元粘度の値を表1にまとめた。
【0081】
【表1】
Figure 0003836204
【0082】
1)PBT:ポリテトラメチレンテレフタレート
2)PTMG:ポリテトラメチレングリコール
【0083】
[実施例1〜
(1)ESCAによる表面解析
上記参考例3のポリエーテルエステル共重合体(PEO2000(70)−co−PBN(30))と、下記表2に示す各種ポリマーB(PES、PS)とを所定の混合割合でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に加熱溶解することにより数種のドープ溶液を製造した(濃度10重量%)。ついで、この溶液をテフロン(登録商標)支持基板上にキャストし、溶媒を水により抽出することにより厚さ約0.5mmの膜が得られた。この膜の表面近傍における上記共重合体の濃度を、ESCAにより解析した。
【0084】
(2)抗血栓性の評価
(ア)評価用サンプルの作成
PESまたはPSとの混合物については、上記(1)で得られたものを用いた。
【0085】
(イ)蛋白吸着量の評価
サンプルをヒト貧血小板血漿(PPP)溶液に接触したときに、上記ポリマー組成物に吸着する蛋白の吸着量を分光的に定量した。評価に際しては、PPPをリン酸緩衝液で所定濃度(5重量%リン酸緩衝液溶液)に調製したものを37℃、1時間上記サンプルへ接触させ、吸着した蛋白を1重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液で抽出する。ついでMicroBCA法により、蛋白吸着量を見積った。サンプル数は実施例1つにつき4個である。
【0086】
(ウ)SEM観察による血小板粘着量の評価
一般に、重篤な血栓形成の前段階である血小板の粘着、凝集には、材料表面へ吸着するタンパク質の種類及びその表面における配向が大きく関与することが知られている.そして粘着した血小板の活性化(変形、顆粒放出)がその後の凝集、血小板血栓形成、凝固因子系の反応促進に影響する。従って血液(全血又は成分血)と接触した後の材料表面における血小板の粘着状態を観察することで、その材料の血液適合性の程度を大まかに見積もることができる。ここではヒト又はウサギ多血小板血漿(PRP)を用い、ポリマー表面をPRPに接触させた後のポリマー表面への血小板の粘着状態をSEMにより観察した.PRPはヒト上腕部静脈またはウサギ頚動脈より採取した新鮮血に3.5重量%クエン酸三ナトリウム水溶液を1/9容加え、1000r.p.m.で10分遠心分離した上澄み液を用いた。
【0087】
上記ポリマー組成物が被覆されたサンプルは、培養シャーレ(Falcon,24well)中、0.7mlのPRPと37℃、3時間接触された。ついでこのサンプルを蒸留水でよく洗浄し、2.5重量%グルタルアルデヒド水溶液中にて室温下2時間かけて固定し、凍結乾燥後、金蒸着して観察試料とした。(室温下二時間放置後さらに凍結乾燥させる。これを金蒸着して観察試料とした。)この試料を用いて、SEMにより表面に吸着した血小板の粘着数を数えた。サンプル数は実施例1つにつき2個である。
【0088】
表2に、(1)及び(2)の結果を示す。また、図1及び図2に、実施例3及び4におけるSEM写真を示す。
【0089】
【表2】
Figure 0003836204
【0090】
[比較例1〜4]
PES、PS、TAC及び参考例5の共重合体のみの抗血栓性を上記実施例1〜5の(イ)、(ウ)と同様にして調べた。結果を表3に示す。
【0091】
【表3】
Figure 0003836204
【0092】
[実施例6〜8]
ポリマーBとしてポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン又はポリメチルメタクリレートの各ポリマーと、参考例3のポリエーテルエステル共重合体とからなる3つのポリマー組成物を用いて、上記実施例1〜5と同様の方法により膜を作成し、蛋白吸着量及び血小板粘着数を測定したところ、いずれも少なかった。
【0093】
以上の結果より、本発明におけるポリマー組成物は、ポリエーテルエステル共重合体が表面に高濃度に存在しており、タンパク吸着量が少なく、血小板の粘着数もわずかであり、抗血栓性に優れることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3のポリマー組成物に、ヒト多血小板血漿(PRP)を接触させた後の血小板の粘着状態のSEM写真である。(写真番号111163)
【図2】実施例4のポリマー組成物に、ヒト多血小板血漿(PRP)を接触させた後の血小板の粘着状態のSEM写真である。(写真番号950735)

Claims (9)

  1. 血液と接触して使用されるための医療用材料であって、少なくとも血液と接触して使用される表面をもつ部分は、
    (A)下記式(1)
    Figure 0003836204
    (ここでAは炭素数6〜12の2価の芳香族基であり、そしてGは炭素数2〜15の2価の脂肪族炭化水素基である。)
    で表わされる繰返し単位および下記式(2)
    Figure 0003836204
    (ここでAの定義は上記に同じであり、Rは炭素数2または3のアルキレン基であるか、もしくは炭素数4のアルキレン基と炭素数2または3のアルキレン基との組み合わせであり、そしてnは(―RO―)nで示される単位の分子量が400〜20,000の範囲にある数である。)
    で表わされる繰返し単位からなり、そして上記式(1)および(2)の繰返し単位の合計重量に基づき、上記式(2)中の(―RO―)nで示される単位が30〜90重量%を占めるポリエーテルエステル共重合体1〜99重量部と、
    (B)ポリスルホンおよびポリアリールエーテルスルホンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマー1〜99重量部(但しポリエーテルエステル共重合体(A)とポリマー(B)の合計重量は100重量部とする)
    とからなるポリマー組成物より構成され、かつ当該部分の表面近傍におけるポリエーテルエステル共重合体(A)の濃度が該部分を形成する該ポリマー組成物全体中のポリエーテルエステル共重合体(A)の濃度よりも高いことを特徴とする血液適合性に優れた医療用材料。
  2. ポリマー組成物がポリエーテルエステル共重合体(A)5〜20重量部とポリマー(B)80〜95重量部からなり(但し両者の合計は100重量部)そして該表面近傍におけるポリエーテルエステル(A)の割合は同じ基準に対し50〜90重量部を占める、請求項1記載の医療用材料。
  3. 医療用材料が人工腎臓用中空糸、人工肺用中空糸、カテーテル、人工血管、採血管、血液回路用のチューブ、血液容器、血液透析膜、血漿分離膜あるいは医療用縫合糸である請求項1〜のいずれかに記載の医療用材料。
  4. 上記式(1)におけるAが2,6―ナフチレンであり、かつ上記式(2)におけるGが炭素数2〜10のアルキレンである請求項1〜のいずれかに記載の医療用材料。
  5. ポリマー(B)がポリスルホン及びポリアリールエーテルスルホンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜のいずれかに記載の医療用材料。
  6. 濃度5重量%であるヒト貧血小板血漿(PPP)のリン酸緩衝液に上記医療用材料を37℃、1時間接触させたときその表面への蛋白吸着量が0.8μg/cm2以下(Micro BCA法によるアルブミン換算)である請求項1〜のいずれかに記載の医療用材料。
  7. ポリエーテルエステル共重合体(A)、ポリマー(B)およびこれらを溶解し得る非プロトン性極性有機溶媒(C)とからなり、そして上記(A)成分および(B)成分の合計濃度が1〜30重量%であるドープを準備し、このドープを薄膜に形成し、この薄膜を湿式もしくは乾式成形法に付して厚さが1mm以下の、血液を接触して使用される部分をもつ医療用材料を生成せしめる、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の医療用材料の製造法。
  8. 非プロトン性極性有機溶媒がテトラヒドロフラン、1,3―ジオキソラン、1,4―ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N―メチル―2―ピロリドン、ジメチルスルホキサイド、塩化メチレン、およびクロロホルムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項記載の医療用材料の製造方法。
  9. 血液と接触して使用されるための医療用材料を製造するための素材としての、請求項1記載のポリエーテルエステル共重合体(A)1〜99重量部と請求項1記載のポリマー(B)99〜1重量部からなるポリマー組成物の使用(ただし両者の合計は100重量部とする)。
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