JP3833299B2 - 血液適合性に優れた医療用材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な血液適合性に優れた医療用材料に関し、該材料の血液と接触する部分が、特定のポリエーテルエステルより構成されてなる血液適合性に優れた医療用材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、合成高分子材料は、人工臓器、カテーテルをはじめとする医療用材料に広く用いられている。その代表的なものは、医療用高分子材料としてはポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ポリメタクリル酸エステル及び含フッ素樹脂などの疎水性高分子や、ポリビニルアルコール、ポリエーテルウレタン(セグメント化ポリウレタン、SPU)、ポリ(メタクリル酸2ーヒドロキシエチル)およびポリアクリルアミドなどの親水性高分子である。これら従来の材料の中において、SPUに関しては、比較的抗血栓性に優れることが知られている。中でもBiomerR、CardiothaneRなどは人工心臓への応用が試みられている(E.Nylas,R.C.Reinbach,J.B.Caulfield,N.H.Buckley,W.G.Austen; J.Biomed.Mater.Res.Symp.,3,129(1972)、L.P.Joyce,M.C.Devries,W.S.Hastings,D.B.Olsen,R.K.Jarvik,W.J.Kolff; Trans.ASAIO, 29,81(1983))。
【0003】
オキシエチレン単位が鎖状に共有結合したポリエーテルであるポリエチレングリコールは、高い親水性と低い抗原性を有し、従来より非イオン性界面活性剤、可塑剤、医薬品基材などとして用いられてきた。また、ポリマー鎖の両末端に水酸基を有するため、ポリメタクリル酸へグラフト重合することで、表面が親水化したヒドロゲルを調製することができる(Y.Mori et.al.,Trans.Am.Soc.Artif.Intern.Organs,28,459(1982))。更に二官能性コポリマーとしてポリエーテルウレタンの親水性相へ適用したセグメント化ポリウレタンも調製された。これらのポリマーでは、表面への血小板粘着が抑制されることも報告されている(E.W.Merril,V.Sa Da Costa,E.W.Salzman,D.Brier-Russell,L.Kirchner,D.F.Wangh,G.Trudel, S.Stopper,V.Vitale; Adv.Chem.Ser.,199,95(1982))。
【0004】
一方、医療技術の進歩に伴って、生体組織や血液と材料が接触する機会はますます増加しており、材料の生体親和性が大きな問題になってきている。中でも蛋白質や血球などの生体成分が材料表面に吸着し、変性することは、血栓形成、炎症反応などの、通常では認められない悪影響を生体側に引き起こすばかりでなく、材料の劣化にもつながり、医療用材料の根本的かつ緊急に解決せねばならない重要な課題である。材料表面での血液凝固の防止に関しては、従来ヘパリンに代表される血液抗凝固剤の連続投与が行われてきたが、最近長期にわたるヘパリン投与の影響(脂質代謝異常などの肝臓障害、出血時間の延長あるいはアレルギー反応等の副作用)が問題となってきており、抗凝固剤を必要としない血液接触材料の開発が強く望まれるようになってきた。
【0005】
前記のポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸エステルといった疎水性高分子材料や、ポリビニルアルコール、ポリ(メタクリル酸2ーヒドロキシエチル)などの親水性高分子材料は、いずれも生体親和性において満足できるものではない。一方、ポリエチレングリコールそのものは水溶性であり、医療用材料として加工することはできない。また自由末端鎖としてポリエチレングリコール鎖をグラフトしたメタクリル酸コポリマーは、血小板粘着を比較的抑制するものの、ポリエチレングリコールの高い運動性や、生体内の極性基と強く相互作用する遊離水酸基により、有意な細胞膜損傷性と細胞機能低下を惹起することがin vitro 試験により示されており(宮本正樹、笹川滋、寺田良蔵、長岡昭二、森有一, Polym.Prepr.,Jpn.,33,2143(1984).)、安全性が重視される医療用材料への利用は適切ではない。更にBiomerR、CardiothaneRなどセグメント化ポリウレタンは、剛直な芳香族ウレタン結合部位と柔軟なポリエーテル結合部位の間のミクロ相分離構造により血小板粘着が抑制されるが、その効果は必ずしも十分ではない。特にウレタン結合やウレア結合のように水素結合性の部分構造は、分子鎖の剛直性向上に寄与するものの、主鎖の極性基間の相互作用が強いため、疎水性相互作用を軽減しうる水分子の水和が阻害される。従って血中タンパクが吸着した際にタンパクの変性を誘起、血小板粘着を促進することが報告されている。そもそも一般に水酸基、アミノ基といった極性部位は、血液接触時に補体活性化(第二経路)を誘発し、フィブリン形成促進による血栓形成の要因ともなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は血漿蛋白の吸着性、血小板の粘着性が低く、低抗原性であり、更に機械特性、加工性等が良好な新規な医療用材料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、共重合成分として、水素結合供与基を含まない剛直構造である芳香族ポリエステルを用い、ポリオキシアルキレングリコール鎖をポリマー主鎖中に組み込むことにより、オキシアルキレン単位の過度の運動性や遊離水酸基の単位数を減少させ、ポリオキシアルキレングリコール鎖が有する親水性と柔軟性を維持しつつも、前記の問題を改善し、更に血液適合性に優れた医療用材料へ応用可能なポリマーの検討を行った。その結果適当な鎖長から成るポリオキシアルキレングリコールとハード成分であるポリ(芳香族ジカルボン酸アルキレンエステル)との共重合体において、ポリオキシアルキレングリコール単位数、疎水性ハードメチレン鎖の鎖長、芳香族ジカルボン酸の種類、およびこれらの共重合組成の制御により、ポリオキシアルキレングリコールの特性を維持したまま、良好な機械的強度ならびに成形性を有する共重合体が得られ、前記の問題点が解決できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
即ち、本発明は、血液と接触して使用される医療用材料であって、少なくとも該材料の血液と接触する部分が、下記式(1)〜(3)
【0009】
【化2】
【0010】
(ただし、Aは2,6−ナフチレン基、Dは炭素数2〜15の2価の炭化水素基、Rは炭素数2〜3のアルキレン基、k は(RO)kで示されるポリオキシアルキレン構造の分子量が400〜20000となるような単位繰り返し数である。)で示される繰り返し単位からなり、かつ(1)、(2)及び(3)で表される繰り返し単位の合計量に基づく(3)の含有量が重量比で50〜80重量%の範囲内であるポリエーテルエステル共重合体より主として構成されていることを特徴とする血液適合性に優れた医療用材料によって達成される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳述する。
【0012】
本発明の医療用材料は、少なくとも該材料の血液と接触する部分が、下記式(1)〜(3)
【0013】
【化3】
【0014】
(ただし、Aは2,6−ナフチレン基、Dは炭素数2〜15の2価の炭化水素基、Rは炭素数2〜3のアルキレン基、kは(RO)kで示されるポリオキシアルキレン構造の分子量が400〜20000となるような単位繰り返し数である。)で示される繰り返し単位からなるポリエーテルエステル共重合体より主として構成される。
【0015】
かかるポリエーテルエステルは、言いかえると、ポリエステル成分をハードセグメントとし、数平均分子量が400〜20000のポリオキシ(炭素数2〜3)アルキレンジカルボン酸成分をソフトセグメントとするポリエーテルエステルであって、該ポリエステル成分が下記式(4)
【0016】
【化4】
【0017】
(ここで、A及びDの定義は上記式(1)、(2)と同義である)で表される繰り返し単位より構成され、かつ該ポリオキシ(炭素数2〜3)アルキレンジカルボン酸成分の含有量がポリエーテルエステル全体の30〜90重量%であるポリマーである。
【0018】
上記式(1)において、Aは2,6−ナフチレン基を示す。
【0019】
上記式(2)において、Dは炭素数2〜12の二価の炭化水素基であり、具体的にはエチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、ドデカメチレンのアルキレン等基、1,4−シクロヘキサンジメチレン等のシクロアルキレン基を例示することができる。これらのうちテトラメチレン、ヘキサメチレンが好ましい。
【0020】
上記式(3)において、Rは炭素数2〜3のアルキレン単位を示し、具体的には、エチレン、プロピレン等を例示することができる。Rとしてはこれらのうち、エチレンが好ましい。Rは単独の構造でもよいし、二種以上の構造から構成されていてもよい。
【0021】
kは(RO)kで示されるポリオキシアルキレン構造の分子量が、400〜20000となるような繰り返し単位数を示す。ポリオキシアルキレン成分の数平均分子量は、好ましくは600〜15000、より好ましくは800〜10000、特に好ましくは1000〜6000である。例えば、Rがエチレンの場合、kはおよそ9〜455の範囲の数となる。
【0022】
上記式(3)で表されるポリオキシアルキレンジカルボン酸成分の含有量は、上記式(1)、(2)及び(3)で表される繰り返し単位からなるポリエーテルエステルに対し、50〜80重量%の範囲内である。ソフトセグメントであるポリオキシアルキレンジカルボン酸成分の含有量がポリエーテルエステルに対し、重量比30%未満ではポリエーテルエステルの疎水性が高すぎ、蛋白吸着や血小板粘着を十分に抑制できなく、また90%を超えると親水性が高すぎるため、水中への溶出、著しい膨潤が起こり機械的強度も十分ではない。
【0023】
上記式(1)、(2)及び(3)で表される繰り返し単位より実質的になるポリエーテルエステルは、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0024】
かかるポリエーテルエステルは、上記式(1)で表される繰り返し単位の1種または2種以上を用いてもよく、上記式(2)で表される繰り返し単位の1種又は2種以上を用いてもよく、上記式(3)で表される繰り返し単位の1種又は2種以上を用いてもよい。
【0025】
本発明におけるポリエーテルエステルは、例えば、上記式(1)で表される成分であるジメチルナフタレート等の芳香族ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体、上記式(2)で表される成分である1,4−ブタンジオール等のグリコール、並びに上記式(3)で表される成分である両末端をカルボキシル化したポリ(オキシエチレン)等のポリオキシアルキレンジカルボン酸を触媒の存在下、加熱重縮合する従来公知の製造方法により得ることができる。用いる触媒としては、例えばチタン、アンチモン、ゲルマニウム、スズ、亜鉛等の金属化合物を用いることができる。
【0026】
生成するポリマーは、その目的に応じてポリオキシアルキレングリコールの分子量、共重合組成を任意に変化させることができる。
【0027】
本発明におけるポリエーテルエステルの重合度は、フェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン混合溶媒(重量比6/4)中、濃度1.2g/dl、温度35℃で測定した還元粘度で、1.0〜5.0とすることが好ましく、2.0〜3.0とすることがより好ましい。
【0028】
本発明の医療用材料は、濃度5重量%であるヒト貧血小板血漿(PPP)のリ
ン酸緩衝液に37℃、1時間接触させた時の蛋白吸着量が0.8μg/cm2以下(MicroBCA法によるアルブミン換算)であることが好ましく、0.5μg/cm2以下であることがより好ましい。血液接触時の蛋白吸着量が0.8μg/cm2以上であると、それに続く血小板粘着、活性化を十分に抑制できないため、血栓形成が進行しやすいことがある。上記式(3)で表されるポリオキシアルキレンジカルボン酸成分の含有量が全体の50〜80重量%の範囲にあるポリエーテルエステルは、この条件を満たすことができる。
【0029】
本発明の医療用材料は、該材料の血液と接触する部分が、上記のポリエーテルエステル共重合体により主として構成されている。ここで血液と接触する部分とは、血液が接触する材料の表面およびその近傍をさす。例えば、人工血管として使用する場合には、少なくとも血液が流れるその内面が上記ポリエーテルエステルから主として構成されていればよい。
【0030】
本発明の医療用材料は、上記ポリエーテルエステル共重合体から主としてなる。かかるポリエーテルエステル共重合体は、加工性、機械特性等が良好であり、人工血管等の材料全体をこれにより成形してもよいし、他の素材を組み合わせて使用することもできる。特に後者の場合には、例えば該ポリエーテルエステルが1〜50重量%となるように混合してかかる素材に血液適合性を付与して用いてもよいし、他の素材の表面を該ポリエーテルエステルでコーティングする方法も好ましく実施できる。ここで他の素材としては、ポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、セルローストリアセテート、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース等、医療用高分子として好適に用いられる素材が挙げられる。
【0031】
上記ポリエーテルエステルが優れた血液適合性を示す理由としては、次のように推定される。
【0032】
本発明のポリエーテルエステルは、剛直部位である疎水性ポリエステルからなるハードセグメント成分及びポリマー主鎖中に固定された親水性ソフトセグメントであるポリオキシアルキレングリコール鎖を有しており、これら親水性ソフトセグメントとハードセグメント双方は熱力学的にのみならず、巨視的に相分離した表面構造を特徴とする。かかるポリマーは、主鎖中の大部分にわたって水素結合供与基が存在しないため、主鎖間の相互作用が小さく、疎水性相互作用を低減しうる水分子の接触が容易におこる。従って水をその主要構成成分とする血液と接触した場合、接触界面において水和したハイドロゲル層が形成される。このため、蛋白質や血球などの生体成分の吸着が少なく、また吸着した蛋白質の変性や接触した血小板の粘着、活性化を抑制することができる。更にオキシエチレン自由末端鎖、遊離水酸基末端数等が大幅に減少するため、細胞膜損傷、補体活性化を回避できるものと考えられる。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリエーテルエステルからなる医療用材料は血液と接触した際、蛋白の吸着量が少なく、血小板の粘着、活性化も認められず、良好な抗血栓性を示す。
【0034】
それ故、直接血液成分と接触して用いることが主たる目的となる医療用材料素材として有用であり、例えば、人工血管、人工腎臓、人工心肺、血液バッグ、血液透析膜、カテーテル、血漿分離膜等に用いることができる。
【0035】
そして、かかるポリエーテルエステルをこのような材料として用いる場合、ポリマー自体をシート、フィルム、チューブ、中空糸等として成形するのみならず、例えばポリマーを溶剤に溶解し、この溶液をこれら各種材料表面に塗布し、血液接触表面のみを改質することも可能である。
【0036】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
[参考例1〜3(ポリエーテルエステルの製造例)]
100ml三口丸底フラスコ内にて2,6−ジメチルナフタレート19.90g(81.48mmol)、1,4−ブタンジオール15.00g(166.40mmol)、テトラブトキシチタン0.002g(10ppmトルエン溶液として2ml)を混合し、十分に窒素置換した。これを常圧下、215〜230℃で5時間反応し、留出するメタノールを除去、エステル交換反応を行った。その後、両末端カルボキシル化ポリ(オキシエチレン)#2000(数平均分子量2000)35.78g(17.89mmol)を混合、235℃で2時間かけ、余剰のジオールを留去、更に76cmHgで2時間、0.3〜0.2mmHgで6時間重合反応を行い無色半透明のポリエーテルエステルを得た(PEGCOOH#2000/PBNコポリマーと記す)。このポリマーの重合度は、フェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン混合溶媒(重量比6/4)中、濃度1.2g/dl、温度35℃で測定した還元粘度で、2.2であった。同様にして、他の一連のポリマーを重合した。これら3種のポリマーについて、表1にまとめた。
【0038】
【表1】
【0039】
PBTa1):ポリブチレンテレフタレート
PBNa2):ポリブチレンナフタレート
還元粘度b:フェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン混合溶媒(重量比6/4)中、濃度1.2g/dl、温度35℃で測定した。
【0040】
[参考例1’、実施例2、3、比較例1〜3]
(蛋白質吸着量の評価)
参考例で重合した各種ポリマーへのタンパク質吸着の定性、定量をMicroBCA法により行った。MicroBCA法は銅イオンおよび下記構造で示されるBCA蛋白検出試薬を用いたキットによる蛋白定量法である。試料中に存在する蛋白により一価に還元された銅イオンのみが、この試薬とキレート反応を行い発色(570nm)するため、サンプルの吸光度測定より蛋白濃度(アルブミン換算)を定量することができる。
【0041】
【化5】
【0042】
【化6】
【0043】
評価にあたっては、コントロールポリマーとして抗血栓性のないPET(ポリエチレンテレフタレート、直径15mm、厚さ0.5mm、和光純薬)、PBN(ポリブチレンナフタレート、直径15mm、厚さ0.5mm、帝人製)、ポリスルホン(PS直径15mm、厚さ0.5mm、帝人アモコ製)を比較実験として用いた。
【0044】
各種参考例で製造したポリエーテルエステル共重合体の1.0wt%クロロホルム溶液を調整し、これに滅菌処理したPET円板(直径15mm、厚さ0.5mm、和光純薬)を浸漬した。一分間放置後、PET円板を取り出し、溶媒雰囲気下で一晩放置することにより溶媒を揮散させ、ポリマーを被覆した。
【0045】
ヒト貧血小板血漿(PPP)をこれらポリエーテルエステル被覆サンプル板、コントロールポリマーサンプル板にそれぞれ接触したときの蛋白吸着量を分光定量した。評価に際しては、PPPをリン酸緩衝液で所定濃度に調製したものを37℃、一時間ポリマーへ接触させ、吸着蛋白を1wt%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液で抽出、MicroBCAキットを用い、常法により発色させ、吸光度から吸着量を見積った。測定は8回行い、得られた値の上限と下限を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
本発明の医療用素材は、コントロールである既存ポリマーに比べ、有意な蛋白吸着抑制を示した。
【0048】
[参考例4’、実施例5、6、比較例4〜6]
(ウサギPRPを用いたポリマー表面への血小板粘着のSEM観察)
一般に、重篤な血栓形成の前段階である血小板の粘着、凝集には,材料表面へ吸着するタンパク質の種類及びその表面における配向が大きく関与することが知られている。そして粘着した血小板の活性化(変形、顆粒放出)がその後の凝集、血小板血栓形成、凝固因子系の反応促進に影響する。従って血液(全血又は成分血)と接触した後の材料表面における血小板の粘着状態を観察することで、そのポリマーの血液適合性の程度を大まかに見積もることができる。ここではウサギ多血小板血漿(PRP)を用い、PRP接触後のポリマー表面の血小板粘着挙動をSEMにより観察した。PRPはウサギ頚動脈より採取した新鮮血に3.5wt%クエン酸三ナトリウム水溶液を1/9容加え、1000r.p.m.で10分遠心分離した上澄みを調製した。サンプルは先述のポリエーテル/ポリエステルコポリマー被覆PET円盤(径15mm)およびコントロールの汎用ポリマー平膜を用いた。これらを培養シャーレ(Falcon,24well))中、0.7mlのPRPと37℃、3時間接触した。接触後のポリマーサンプルは蒸留水でよく洗浄し、2.5wt%グルタルアルデヒド水溶液で室温下2時間かけて固定し、凍結乾燥後、金蒸着して観察試料とした。
【0049】
図1〜6にPRP接触後の各種ポリマー表面のSEM観察結果(顕微鏡写真)を示した。先の検討により、タンパク吸着抑制が低い疎水性ポリマーであるコントロールポリマー(PET、PBN、PS)では、多くの血小板が表面に粘着、著しい変形、活性化が認められた。一方、タンパク吸着抑制能の高いPEGCOOH/PBTおよびPEGCOOH/PBN系コポリマーではごく少数の正常血小板が認められた他はそのような粘着、活性化は認められなかった。
【0050】
以上の結果より、タンパク吸着抑制能に優れた本発明に用いるPEGCOOH/PBTコポリマー、PEGCOOH/PBN系コポリマーは血小板の粘着を有意に抑制することが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 PEGCOOH#2000/PBTコポリマー(PEG含量70wt%)を被覆したPET 円板(直径15mm、厚さ0.5mm、和光純薬)に37℃、3時間ウサギ多血小板血漿に浸漬した後の試料表面の顕微鏡写真(SEM写真)を示す。(写真番号0012)
【図2】 PEGCOOH#2000/PBNコポリマー(PEG含量70wt%)を被覆したPET 円板(直径15mm、厚さ0.5mm、和光純薬)に37℃、3時間ウサギ多血小板血漿に浸漬した後の試料表面のSEM写真を示す。(写真番号0048)
【図3】 PEGCOOH#3000/PBNコポリマー(PEG含量70wt%)を被覆したPET 円板(直径15mm、厚さ0.5mm、和光純薬)に37℃、3時間ウサギ多血小板血漿に浸漬した後の試料表面のSEM写真を示す。(写真番号0050)
【図4】 PET円板(直径15mm、厚さ0.5mm、和光純薬)を37℃、3時間ウサギ多血小板血漿に浸漬した後の試料表面のSEM写真を示す。(写真番号0054)
【図5】PS平膜円板(直径15mm、厚さ0.5mm、帝人アモコ製)に37℃、3時間ウサギ多血小板血漿に浸漬した後の試料表面のSEM写真を示す。(写真番号0009)
【図6】 PBN(ポリブチレンナフタレート、直径15mm、厚さ0.5mm、帝人製)を被覆したPET円板(直径15mm、厚さ0.5mm、和光純薬)に37℃、3時間ウサギ多血小板血漿に浸漬した後の試料表面のSEM写真を示す。(写真番号0037)
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