JP4098152B2 - 偏心スラスト軸受及びそれを用いたサスペンション内蔵ホイール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホイール内にサスペンションを備えたサスペンション内蔵ホイール及びこのホイールに取り付けることができる偏心スラスト軸受に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車等に用いられているサスペンションは、一般的に、スプリング等の弾性部材とダンパー(ショックアブソーバー)を備えるものであり、車体を支えつつ路面からの振動を吸収する役割を果たす。このサスペンションの形式には、ストラット式やウィッシュボーン式等種々のものが知られているが、これらはいずれもホイール内部に収容されるものではなく、ホイール外に設置されていた。そのため、かかるサスペンションの設置空間が必要となり、車内の居住性を犠牲にしていた。例えば、比較的構造が単純なストラット式のサスペンションであっても、スプリングやショックアブソーバーがホイール外に存在し、タイヤハウス内で縦向きに置かれていた為、車内スペースを狭くしていた。また、特に電気自動車では、バッテリーの設置空間を大きくすることにより、バッテリーを大型化してその容量を増大させることが極めて重要であるが、かかるサスペンションの存在がバッテリ−大型化の妨げになっていた。
【0003】
かかる問題に対処すべく、サスペンションをホイールに内蔵したサスペンション内蔵ホイールが提案されている。通常のホイールでは、タイヤが装着されるリム部分と、車輪軸と連結するディスク部が一体化されているのに対し、このサスペンション内蔵ホイールでは、リム部とディスク部とが分割した構造となっている。そして、それらの間にゴム等の弾性体及び小型のダンパーを介在させた構造とすることにより、ホイール内にサスペンションを収容している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2003−34103号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、かかるサスペンション内蔵ホイールでは、回転軸に垂直な方向の荷重に耐えることはできるとしても、軸方向の荷重に耐えることができないため、実用に供し得るものとはならない。即ち、乗用車のタイヤはキャンバー角を有し、またホイールには通常オフセット(ホイールの軸方向中心面とホイール取り付け面との軸方向距離)があるため、車が静止している状態であっても、ホイールのリム部とディスク部の間には、車重により軸方向の荷重(アキシャル荷重及びモーメント荷重)が作用する。さらに、車が旋回する際には車に横加速度(横G)が作用するため、ホイールに作用する軸方向荷重は極めて大きくなる。それにもかかわらず、前述のような従来のサスペンション内蔵ホイールではこの軸方向荷重に耐えるような構造は備えていないので、実用性が無い。
【0006】
ここで、かかるサスペンション内蔵ホイールにおいて、このような軸方向荷重を支持可能とするために、偏心可能で且つ軸方向荷重を支持できる偏心スラスト軸受を用いることが考えられる。即ち、偏心スラスト軸受の対向するレースのそれぞれをリム部及びディスク部に固定することにより、軸方向荷重を支持することが考えられる。ただしこの場合、この偏心スラスト軸受は一方向のアキシャル荷重を支持するだけではその役割を果たし得ず、両方向のアキシャル荷重を支持可能とする必要がある。
【0007】
従来公然実施されている単列の偏心スラスト軸受では、2枚一対のレースと、これらのレース間に介在する転動体を有するものとなっていた。この軸受は、対向する2枚の板状レースの間に複数個の玉等の転動体を挟んだ構造とすることにより、2枚のレースは互いに径方向にずれて偏心するように動くことができ、一方向のアキシャル荷重、即ち転動体を圧縮する方向のアキシャル荷重は支持することができるが、両方向のアキシャル荷重を支持することができない。即ち、対向する2枚のレースを引き離す方向のアキシャル荷重を支持することができない。
【0008】
両方向のアキシャル荷重を支持できるようにするためには、転動体を複列(複式)とした複列スラスト軸受とする必要がある。しかし複列とした場合、軸受幅(軸受の軸方向幅)が大きくなってしまう。従来の複列構造の軸受よりも軸受の軸方向幅を小さくしつつ両方向のアキシャル荷重及びモーメント荷重を支持できる偏心スラスト軸受であれば、極めて限られたスペースであるホイール内に軸受を設ける上で非常に有利となる。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、複列構造の軸受よりも軸受幅を小さくし、且つ両方向のアキシャル荷重及びモーメント荷重が支持でき、サスペンション内蔵ホイールに取り付けることができる偏心スラスト軸受と、この軸受が装着されて軸方向荷重が支持でき且つサスペンションの設置スペースを減らすことのできるサスペンション内蔵ホイールとを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、本発明では、タイヤが装着されるリム部を含む外側ホイール部材と、車輪軸と連結するディスク部を含む内側ホイール部材と、これらホイール部材間に介装された弾性部材と、を備えるサスペンション内蔵ホイールに取り付けられ、これらのホイール部材間に作用する軸方向荷重を支持しつつ当該ホイール部材間での偏心相対移動を可能とする偏心スラスト軸受であって、第一の外側部材及びその径方向内側に位置する第一の内側部材が設けられるとともに、これらに対向して第二の外側部材及びその径方向内側に位置する第二の内側部材が設けられ、周方向に沿った3カ所以上に局在する第一位置において対向した前記第一の外側部材と前記第二の内側部材とで、前記第一位置に配置された転動体を挟持するとともに、周方向に沿った3カ所以上に局在し前記第一位置とは位相が異なる第二位置において対向した前記第二の外側部材と前記第一の内側部材とで、前記第二位置に配置された転動体を挟持し、前記第一の外側部材と前記第一の内側部材とは、相互間に隙間を設けて径方向及び周方向への相対移動を可能とし、且つ前記第二の外側部材と前記第二の内側部材とは、相互間に隙間を設けて径方向及び周方向への相対移動を可能とし、前記第一の外側部材と前記第二の外側部材とが一体的に接合されるとともに、前記第一の内側部材と前記第二の内側部材とが一体的に接合されており、前記転動体のそれぞれの所定部は同一平面上に存在することを特徴とする偏心スラスト軸受としている。
【0011】
この軸受によれば、従来複列としていた偏心スラスト軸受の各部材に対応する部材を互い違いに配置することにより、従来複列であった各列相互間の軸方向距離を近接させることができ、複列の軸受よりも軸方向幅を小さくすることができる。即ち、第一の外側部材と第二の内側部材及びこれらに挟持され周方向に沿った三カ所以上に局在した転動体が従来の複列軸受における第一列の偏心スラスト軸受部分▲1▼として機能し、第二の外側部材と第一の内側部材及びこれらに挟持され周方向に沿った三カ所以上に局在した転動体が第二列の偏心スラスト軸受部分▲2▼として機能することができる。本発明では外側部材同士、内側部材同士がそれぞれ相互に一体的に接合しているので、従来の複列偏心スラスト軸受部分▲1▼に相当する部分が一方向のアキシャル荷重を支持でき、偏心スラスト軸受部分▲2▼に相当する部分が他方向のアキシャル荷重を支持できる。また、第一位置と第二位置との位相を異ならせ、且つ外側部材と内側部材は両者間において可動平面方向で隙間があるので、前記転動体のそれぞれの所定部は同一平面上に存在する構成とすることが可能となるとともに、外側部材と内側部材とが互いに相対移動することができる。また、以上のような構成とすると、軸受の各部材が分離せず、組み立てられた軸受として供給することが可能となる。そして、この軸受はサスペンション内蔵ホイールに取り付けることができるので、外側ホイール部材と内側ホイール部材間での相対移動を可能としながらホイールに作用する軸方向荷重を支持する軸受とすることができる。
【0012】
更に、全ての前記転動体の中心は同一平面上に配置されている構成とするのが好ましい。このようにすると、軸受を単列構造とすることができ、軸受の軸方向幅を最小とすることができる。
【0013】
また、前記第一の外側部材は、局在する前記第一位置のそれぞれに分割して設けられた外レースと、これら全ての外レースが取り付けられた第一の外側ケースから成り、前記第二の外側部材は、局在する前記第二位置のそれぞれに分割して設けられた外レースと、これら全ての外レースが取り付けられた第二の外側ケースから成り、前記第一の内側部材は、局在する前記第二位置のそれぞれに分割して設けられた内レースと、これら全ての内レースが取り付けられた第一の内側ケースから成り、前記第二の内側部材は、局在する前記第一位置のそれぞれに分割して設けられた内レースと、これら全ての内レースが取り付けられた第二の内側ケースから成るとともに、前記転動体は前記外レースと前記内レースの間に挟持されている構成とするのが好ましい。
【0014】
この場合には、局在する転動体の各位置にそれぞれ別個のレースを分割して配しているので、個々のレースを小型化することができる。レースが大型化するとレース軌道面の平面度の精度を確保しにくくなるが、レースを小型化できることにより、軸受の大型化が容易となる。また、軸受用鋼等によりなるレース部分を減らし且つケース部分にはアルミ合金等の低比重金属や樹脂等を利用できるので、軸受全体の重量を軽量化できる。かかる軸受の軽量化は、ホイールの軽量化に直結するので、ホイール内に用いられる軸受として極めて有効である。
【0015】
前記隙間により生ずる外側部材と内側部材との相対移動可能範囲が、転動体の移動可能範囲に略対応している構成としてもよい。このようにすると、外側部材と内側部材との間の隙間と、転動体の移動空間を確保するためレース上に設けられた隙間のいずれについても、余分な隙間を無くすか、あるいは最小限とすることができる。従って、軸受を小型化しながらその偏心可能範囲をより広くすることができる。極めて限られたスペースのホイール内に収容される軸受にあっては、軸受の小型化が求められるため、偏心可能範囲を広くすることが困難となる。一方、偏心可能範囲が狭すぎれば、サスペンションとしてのストロークが小さくなり、その機能を十分発揮できなくなる。よって、軸受を小型化しながらその偏心可能範囲をより広くすることにより、サスペンション内蔵ホイール用の軸受として極めて好適なものとなる。
【0016】
さらに、前記偏心スラスト軸受は、次の構成としてもよい。即ち、前記第一位置及び第二位置はそれぞれNカ所(Nは3以上の整数)に等配されており、前記第一及び第二の外側ケースは同一形状であり、その形状は、軸受の外周を成す外周円環状部と、この外周円環状部から径方向内側に向かって且つ周方向に等間隔をおいて突出したN個の内向き舌片部とを有するものであり、前記第一及び第二の内側ケースは同一形状であり、その形状は、軸受の内周を成す内周円環状部と、この内周円環状部から径方向外側に向かって且つ周方向に等間隔をおいて突出したN個の外向き舌片部とを有するものであり、前記全ての外向き舌片部には前記内レースが同一円周上で取り付けられ、前記全ての内向き舌片部には前記外レースが同一円周上で取り付けられるとともに、前記内レース及び前記外レースは全て同一形状の円板状部材であり、前記第一位置と第二位置は、同一円周上に、且つ周方向に360/(2N)度ずつ位相をずらして交互に局在している構成としてもよい。
【0017】
このようにすると、転動体の第一位置と第二位置を周方向及び径方向に均等に配置できるので、周方向の均等性が求められるホイール用の軸受として極めて好適なものとなる。また、両方向のアキシャル荷重をより安定的に支持でき、さらに偏心された軸からのアキシャル荷重によって生ずるモーメント荷重もより安定的に支持できることとなり、車の旋回時に発生する横加速度(横G)等に起因する軸方向荷重を安定的に支持できる。さらに、各レースを同一とできるので、各レース部材を共通化できる。
【0018】
前記偏心スラスト軸受は、各レースの周囲を包囲する第一保持器ガイドを有する構成としてもよい。このようにすると、転動体の位置調整が容易となる。即ち、転動体の位置をレース上の最適位置に調整するのは容易ではないが、軽予圧をかけた状態で軸受を全ての径方向及び周方向について最大に相対移動させることにより、位置ズレした転動体は第一保持器ガイドに係止されレース上を適宜滑りつつ位置調整がなされる。よって、転動体をレース上の最適な位置に配置することが容易となる。また、この第一保持器ガイドにより、対向するレース間への異物の侵入や潤滑剤の流出を抑制できる。
【0019】
さらに全ての前記転動体間の相対的位置関係を維持する単一の第二保持器ガイドを有する構成としてもよい。このようにすると、転動体に偏荷重が作用した場合でも転動体が移動して位置ズレを起こすことがない。したがって、車の旋回時の横加速度(横G)により偏荷重が発生した場合でも転動体の位置ズレを防止でき、サスペンション内蔵ホイール用の軸受として好適なものとなる。
【0020】
また、本発明のサスペンション内蔵ホイールは、前記の偏心スラスト軸受を備え、前記外側ホイール部材と前記内側ホイール部材との間に弾性部材が介装されており、この軸受の前記外側部材に前記外側ホイール部材が固定されるとともに、軸受の前記内側部材に前記内側ホイール部材が固定されていることを特徴とする。このようなホイールとすると、ホイール内にサスペンションが収容される分、ホイール外におけるサスペンションの設置スペースを減らすことができ、さらには、ばね下重量を低下させることができる。また、軸方向荷重を支持できるホイールとなるので、実用性を有するホイールとすることができる。
【0021】
前記外側ホイール部材と前記内側ホイール部材との間にダンパーが介装されているサスペンション内蔵ホイールとした場合には、弾性部材に加えてダンパーが装着されたサスペンションとなるので、弾性部材の伸縮を早期に減衰させることができる。
【0022】
前記外側ホイール部材の周方向に等間隔なPカ所(Pは2以上の整数)の外側連結位置と、前記内側ホイール部材の周方向に等間隔なPカ所(Pは2以上の整数)の内側連結位置との位相を360/(2P)度相違させ、周方向に隣り合う外側連結位置と内側連結位置とを弾性部材で連結することにより、2P個の弾性部材を同一の円周に略沿って周方向に等間隔で配置した構成としてもよい。このようにすると、2P個の弾性部材を周方向に均等に配置することができる。また、外側ホイール部材と弾性部材とが連結する外側連結位置と、内側ホイール部材と弾性部材とが連結する内側連結位置が交互に且つ周方向に等間隔で配置されるので、弾性部材から各ホイール部材に作用する力が周方向で均等化される。
【0023】
この場合更に、かかる構成をホイールの表側と裏側のそれぞれに設け、この表側と裏側とで位相が360/(2P)度相違している構成としてもよい。このようにすると、ホイールの表面及び裏面のそれぞれにおいて、複数の弾性部材が周方向に均等間隔に配置される。さらに、表裏で位相を360/(2P)度相違させているので、ホイール表側の内側連結位置とホイール裏側の外側連結位置とが同位相となり、ホイール表側の外側連結位置とホイール裏側の内側連結位置とが同位相となる。よって、弾性部材から各ホイール部材に作用する力が周方向で更に均等化される。
【0024】
さらに、前記外側ホイール部材と前記内側ホイール部材とが直接接触することを防止する緩衝材を設置するホイールとするのが好ましい。このようにすると、強い衝撃がホイールに作用して、サスペンションのストロークを超える偏心が起こった場合でも、外側ホイール部材と内側ホイール部材が接触することが無くなり、衝撃を緩和することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態である偏心スラスト軸受1が取り付けられたサスペンション内蔵ホイールhの断面図であり、図2は、このサスペンション内蔵ホイールhの側面図(車両に取り付けた場合における外側から見た図)である。図1は、図2のA−A線における断面図であり、ホイールhの軸心付近の記載を適宜省略している。このホイールhは、通常のホイールと異なり、タイヤ(図示しない)が装着されるリム部h1を含む外側ホイール部材h2と、車輪軸(図示しない)と連結するためのボルト孔h20(図2参照。図1において記載省略)を有するディスク部h3を含む内側ホイール部材h4とが分割されている。そして、これら外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4との間には、両部材h2及びh4間に作用する軸方向荷重を支持しつつ、両部材h2及びh4間の偏心相対移動を可能とする偏心スラスト軸受1が取り付けられている。
【0026】
このホイールhにサスペンションとしての機能を持たせるべく、外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4との間には、弾性部材である圧縮コイルスプリングh5が介装されている(図2参照)。圧縮コイルスプリングh5は、ホイールhの表裏に6個ずつ、合計12個使用されている。図2の側面図には、ホイールhの表側に設置された6個のスプリングが示されている。さらに、このサスペンション内蔵ホイールhでは、従来のストラット式サスペンションと同様、ダンパーh6が各圧縮コイルスプリングh5の内側に設置され、弾性部材の伸縮を早期に減衰させることができるようにされている。
【0027】
ダンパーh6は、全ての圧縮コイルスプリングh5内部に設置されているので、その数は圧縮コイルスプリングh5と同じく、ホイールhの表裏に6個ずつ、合計12個である。これら圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6は、図2に示すように、その長手方向が円周に略沿った方向で並べられつつ設置されている。なお、図2においては一部の圧縮コイルスプリングh5の記載を一部欠截してダンパーh6を見やすいようにしている。なお、圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6のそれぞれは、従来のサスペンションに用いられているものと同様の構造で、その大きさを小型化したものである。
【0028】
これら圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6を介装するために、外側ホイール部材h2及び内側ホイール部材h4にはそれぞれ突起htが設けられ、この突起htにおいて圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6と連結している。外側ホイール部材h2には、その内周面(タイヤが装着される面と反対の面)h11から径方向内向きに突出する突起htが設けられており、ホイールhの表側(ホイールhが車両に装着された場合における軸方向外側寄り)に設けられた表側内向き突起h7と、ホイールhの裏側(ホイールhが車両に装着された場合における軸方向内側寄り)に設けられた裏側内向き突起h8とがある。
【0029】
一方、内側ホイール部材h4には、その外周面(ディスク部h3以外の部分である円筒部分の外周面)h12から径方向外向きに突出する突起htが設けられており、ホイールhの表側(ホイールhが車両に装着された場合における軸方向外側寄り)に設けられた表側外向き突起h9と、ホイールhの裏側(ホイールhが車両に装着された場合における軸方向内側寄り)に設けられた裏側外向き突起h10とがある。
【0030】
図2に示すように、表側内向き突起h7は周方向に等間隔で、即ち120度おきに三カ所設けられ、表側外向き突起h9も同様に周方向に等間隔(120度おき)に三カ所設けられている。さらに、表側内向き突起h7と表側外向き突起h9はその位相が60度相違している。その結果、表側内向き突起h7と表側外向き突起h9は60度おきに交互に配置されている。
【0031】
各圧縮コイルスプリングh5の両端にはバネ受け板h16が設けられている(図2参照)。このバネ受け板h16は、圧縮コイルスプリングh5の長手方向に対して垂直な向きに設置されており、圧縮コイルスプリングh5の両端はこのバネ受け板h16の一面に固定されている。そして、ダンパーh6の両端も同じくバネ受け板h16の一面に固定されている。また、バネ受け板h16の他面(圧縮コイルスプリングh5が固定された面の反対面)には、軸着用リングh17が突設されている。一方、図1に示すように、各突起h7〜h10は、それぞれ軸方向中央部に隙間を有する構造となっており、この隙間に軸着用リングh17が挿入されている(図1参照)。そして、固定ねじh21が、各突起h7〜h10と軸着用リングh17とを貫通することにより、軸着用リングh17は各突起h7〜h10に軸着されている。なお、軸止用リングh17と固定ねじh21との間にはブッシュh18が介在している(図1参照)。以上のような構成により、圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6は、バネ受け板h16を介して外側ホイール部材h2及び内側ホイール部材h4と連結している。
【0032】
図2に示すように、各突起h7〜h10は、一つの突起につき二つの圧縮コイルスプリングh5(及びダンパーh6)と連結している。そのようにすることで、隣り合った表側内向き突起h7と表側外向き突起h9(及び、図示しないが、隣り合った裏側内向き突起h8と裏側外向き突起h10)とが、圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6により連結される。表側内向き突起h7と表側外向き突起h9とは、周方向に等間隔で交互に配置されているので、6個の圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6は、同一の円周に略沿って周方向に等間隔で配置されることとなる。
【0033】
ここで、外側ホイール部材h2と圧縮コイルスプリングh5とが連結する位置を、外側連結位置とする。本実施形態では、表側内向き突起h7及び裏側内向き突起h8の設置位置が外側連結位置となる。また、内側ホイール部材h4と圧縮コイルスプリングh5とが連結する位置を内側連結位置とする。本実施形態では、表側外向き突起h9と裏側外向き突起h10の設置位置が内側連結位置となる。本実施形態では、前述のように、周方向に隣り合った表側内向き突起h7と表側外向き突起h9(及び、図示しないが、周方向に隣り合った裏側内向き突起h8と裏側外向き突起h10)とが、圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6により連結されているので、周方向に隣り合う外側連結位置と内側連結位置とが弾性部材である圧縮コイルスプリングh5で連結されていることになる。
【0034】
このように、偏心スラスト軸受1を挟んだホイール1の表側と裏側の両方に各突起h7〜h10を設け、圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6をサスペンション内蔵ホイールhの表裏両面に設置しているので、圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6の設置個数を多くすることができ、サスペンションとしての性能(振動吸収性能、振動減衰性能など)をより高めることができるとともに、耐久性を向上させることができる。
【0035】
このサスペンション内蔵ホイールhは、外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4とが偏心相対移動をし、この偏心相対移動に伴って圧縮コイルスプリングh5が伸縮することにより、衝撃が緩和され、サスペンションとしての機能を果たす。更に、ダンパーh6により、圧縮コイルスプリングh5の急激な伸縮が抑制され、緩衝性が向上する。このように、外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4間との間の偏心相対移動によりサスペンション機能が発現するわけであるが、この偏心相対移動を可能としているのが、偏心スラスト軸受1である。
【0036】
次に、この偏心スラスト軸受1について説明する。図3は、図1のホイールhに取り付けられた偏心スラスト軸受1(軸受部分のみ)の構成を示す分解斜視図、図4はこの軸受1の、玉8の中心位置を通る軸方向断面(中心から外周までの半断面)の断面図である。この図4の断面の周方向位置は、第一の外側ケース2の内向き舌片部2bの中心位置としている。なお図4は玉8がいずれの方向にも移動していない状態(以下、標準状態ともいう)を示す。図3に示すように、この軸受1の外周等を構成する外側部材は、第一の外側部材と第二の外側部材により構成される。第一の外側部材は、第一の外側ケース2と、これに取り付けられた円板状の外レース6からなる。第二の外側部材は、第二の外側ケース3と、これに取り付けられた円板状の外レース6からなる。
【0037】
この軸受1の内周等を構成する内側部材は、第一の内側部材と第二の内側部材からなる。第一の内側部材は、第一の内側ケース4と、これに取り付けられた円板状の内レース7からなる。第二の内側部材は、第二の内側ケース5と、これに取り付けられた円板状の内レース7からなる。
【0038】
そして、この軸受1が、ホイールhの外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4とを連結するように取り付けられている。即ち、第一の外側ケース2及び第二の外側ケース3の外周面2d、3dと、外側ホイール部材h2の内周面h11とが面接触しつつ相互に溶接等により一体化されている。また、第一の内側ケース4及び第二の内側ケース5の内周面4d、5dと、内側ホイール部材h4の外周面h12とが面接触しつつ相互に溶接等により一体化されている。
【0039】
したがって、ホイールhの内側ホイール部材h4と外側ホイール部材h2相互間の偏心相対移動に連動して、偏心スラスト軸受1が偏心相対移動することとなる。そして、外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4の間に作用するアキシャル荷重及びモーメント荷重は、偏心スラスト軸受1により支持されることとなる。
【0040】
この偏心スラスト軸受1について更に詳細に説明する。図3に示すように、第一の外側ケース2は、軸受1の外周を成す外周円環状部2aと、この外周円環状部2aから径方向内側に向かってかつ周方向に90度おきに等間隔をおいて突出した4個の内向き舌片部2bを有する。第二の外側ケース3は、第一の外側ケース2と同一形状であって、同じく外周円環状部3aと4個の内向き舌片部3bを有する。これら第一の外側ケース2と第二の外側ケース3は周方向に45度だけ位相をずらした状態で対向している。したがって、互いの舌片部2bと3bは対向することなく互い違いの周方向位置に45度おきに配置される。
【0041】
第一の外側ケース2の径方向内側に位置し、この軸受1の内周等を構成する第一の内側ケース4は、軸受1の内周を成す内周円環状部4aと、この内周円環状部4aから径方向外側に向かってかつ周方向に90度おきに等間隔をおいて突出した4個の外向き舌片部4bを有する。また、第二の外側ケース3の径方向内側に設けられた第二の内側ケース5は第一の内側ケース4と同一形状であって、同様に内周円環状部5aと4個の内向き舌片部5bを有する。これら第一の内側ケース4と第二の内側ケース5は周方向に45度だけ相対的に相違した状態で対向している。したがって、互いの舌片部4bと5bは対向することなく互い違いの周方向位置に45度おきに配置される。
【0042】
第一の外側ケース2の4個の内向き舌片部2bと第二の内側ケース5の4個外向き舌片部5bとは、位相が同一の第一位置21で互いに対向している。また、第二の外側ケース3の4個の内向き舌片部3bと第一の内側ケース4の4個の外向き舌片部4bとは位相が同一の第二位置22で互いに対向している。また、全ての内向き舌片部2b及び3bの各対向面には円板状の外レース6が舌片部1個につき1枚(合計8枚)設けられている。同様に、全ての外向き舌片部4b及び5bの対向面には、外レース6と同一形状の円板状の内レース7が舌片部1個につき1枚(合計8枚)設けられている。そして、外レース6と内レース7の間には転動体である玉8が各レース間に一個ずつ、合計8個介在している。これら全ての玉8はその中心が同一平面上に配置されており、本実施形態は単列の偏心スラスト軸受となっている。
【0043】
図3及び図4に示すように、各玉8はそれぞれ別個に円筒状の保持器10に挿入されている。また、外レース6及び内レース7の全てにおいて、その周囲にはリング状の第一保持器ガイド11が外嵌して、内外レース6,7を包囲している。(図4参照)。この第一保持器ガイド11は、各内外レース6,7に外嵌しつつレース軌道面よりも転動体側に突出している。よって、第一保持器ガイド11の内周面は、各内外レース6,7の周囲にレース軌道面と垂直な壁面を構成する。さらに、その中心が同一平面上に配置されたこれら全ての玉8を保持する全ての保持器10間の相対的位置関係は、略ドーナツ型の円板である一枚の第二保持器ガイド12によって維持されている。この第二保持器ガイド12には、周方向の45度おきに合計8カ所の保持器挿入孔12aが設けられており、この保持器挿入孔12aに円筒状の保持器10が内嵌している(図4参照)。これら第二保持器ガイド12及び保持器10によって、全ての玉8が等間隔に保持されている。
【0044】
ホイールhの使用時に車両が横加速度(横G)を受けた場合等、軸受1にモーメント荷重がかかる場合においては、転動体に偏荷重が作用することがあり、この偏荷重により一部の玉8がレースから浮いた場合等には、この一部の玉8が移動してしまうことが考えられる。しかしこの場合でも、第二保持器ガイド12により、一部の玉8が移動して位置ズレを起こすことがない。なお、第二保持器ガイド12の外周縁部に周方向等間隔をおいて円弧状の凹部12cがあるが、これは2つの外側ケースを連結するねじ15部分に対する逃げである。
【0045】
図5は、図4のA−A断面位置から第二保持器ガイド12を除いて矢印方向に軸受1内部をみた要部正面図(1/4周分のみ記載)である。この図5も標準状態であり、また第二保持器ガイド12は仮想線で示してある。図6は、図5のB−B位置の断面におけるこの軸受1の標準状態における断面図である。図4〜図6に示すように、第一の外側ケース2の径方向内側には第一の内側ケース4が設けられ、互いの軸方向位置は略同一である。同様に、第二の外側ケース3の径方向内側には第二の内側ケース5が設けられ、互いの軸方向位置は略同一である。また、図6に示すように、第一の外側ケース2と第二の外側ケース3は、これらの外周円環状部2a及び3aの近傍において、ねじ15により一体的に接合されている。また、第一の内側ケース4と第二の内側ケース5は、これらの内周円環状部4a及び5aの近傍において、ねじ16により一体的に接合されている。これらのねじ15及び16は、それぞれ周方向に均等な位置に複数設けられている。なお図3では、このねじ15及び16部分の記載を省略している。
【0046】
この偏心スラスト軸受1には、軸受1内部を隠蔽するためのシールドが設けられている。このシールドは、図4及び図6に示すように(図3及び図5では記載を省略)、内側ケース4,5の内周円環状部4a,5aに装着され、そこから径方向外側に向かって延在するドーナツ型円板状の内シールド13,13と、外側ケース2,3の外周円環状部2a,3aに装着され、そこから径方向内側に向かって延在するドーナツ型円板状の外シールド14,14から構成される。これら内外シールド13及び14は標準状態において同心の位置に配置されており、且つ両者は僅かな層状隙間を介して軸方向に重ねて(内シールド13の軸方向外側に外シールド14を重ねて)配置されている。
【0047】
このように、内外シールド13,14を設けることにより、外部から偏心スラスト軸受1内への異物の侵入を防止するとともに、偏心スラスト軸受1内から外部への潤滑剤の流出を抑制している。内外シールド13,14の間には層状隙間が設けられているので、両者間で相対偏心移動が可能となっている。また、この層状隙間はできるだけ狭くして、防塵性を確保している。
【0048】
図3に示すように、第一の外側ケース2の内向き舌片部2bに取り付けられた4つの外レース6と、これらに対向する4つの内レース7(第二の内側ケース5の外向き舌片部5bに取り付けられた4つの内レース7)の周方向配置位置は4カ所に局在する第一位置21である。また、第二の外側ケース3の内向き舌片部3bに取り付けられた4つの外レース6と、これらに対向する4つの内レース7(第一の内側ケース4の外向き舌片部4bに取り付けられた4つの内レース7)の周方向配置位置は4カ所に局在する第二位置22である。これら第一位置21と第二位置22及び各レースは、図5に示すように、同一円周上23に、且つ互いに周方向の相違角度αを45度として、この角度αずつ位相をずらして交互に配置されている。
【0049】
このように、第一位置21と第二位置22の位置を相互に異ならせることにより、従来複列であった軸受の各列相互間の軸方向距離を近接させ、全ての玉8のそれぞれの所定部は同一平面上に存在する構成とすることができる。さらには単列化することも可能である。よって、複列構造の軸受よりも軸方向幅を小さくしながら両方向のアキシャル荷重を支持することが可能となる。即ちこのようにすると、従来複列としていた偏心スラスト軸受の各部材に対応する部材を周方向に互い違いに配置することとなり、全ての玉8のそれぞれの所定部は同一平面上に存在する構成を採ることができる。また、第一の外側ケース2と第二の内側ケース5及びこれらの間に介在する内外レース7,6と玉8が、従来の複列軸受における第一列の偏心スラスト軸受部分▲1▼として機能し、第二の外側ケース3と第一の内側ケース4及びこれらの間に介在する内外レース7,6と玉8が、従来の複列軸受における第二列の偏心スラスト軸受部分▲2▼として機能することができる。外側ケース2,3同士及び内側ケース4,5同士がそれぞれ相互に一体的に接合しているので、従来の複列偏心スラスト軸受部分▲1▼に相当する部分が一方向のアキシャル荷重を支持でき、偏心スラスト軸受部分▲2▼に相当する部分が他方向のアキシャル荷重を支持できる。さらに偏心スラスト軸受1に作用するモーメント荷重も支持できる。よって、前述のようにホイールhに取り付けられた場合に、ホイールhの外側ホイール部材h2及び内側ホイール部材h4の相互間に作用する軸方向荷重を支持することが可能となる。
【0050】
また、このような構造としたことにより、複列とした場合と比較して軸受幅を小さくすることができる。したがって、極めて限られたスペースのホイールh内に収容する軸受として極めて好適なものとなる。なお、本発明の偏心スラスト軸受は、その偏心可能範囲内において周方向及び径方向に移動が可能であるので、この移動可能範囲内で相対的に回転することもできるが、自由に相対回転することはできない。この軸受1は、前述のようにホイールhに取り付けられた場合、ホイールhの回転と共に軸受全体が回転する。
【0051】
この軸受1において、円板状部材の各外レース6及び各内レース7が第一位置21及び第二位置22の各局在位置にそれぞれ配置されている。図4に示すように、各レース6,7にはその周縁に段差9を設けることにより軸方向外側面を凸部とする一方、各舌片部にはこの凸部に対応する凹部を設け、これら凹凸を組み合わせることにより各レース6,7と各舌片部2b,3b,4b,5bとが組合わされている。
【0052】
図4及び図5に示すように、第二の外側ケース3の内周面3cと、第二の内側ケース5の外周面5cとの間には、隙間K1(図5においてハッチングで表示)が全周に亘って設けられている。図5に示すように、隙間K1の幅は、外向き舌片部5bの径方向最外位置では径方向で距離Lであり、内向き舌片部3bの径方向最内位置では径方向で距離Mとなっている。また、この隙間K1の幅を全体に亘って略同一とすべく、第二の外側ケース3の内周面3cの輪郭形状は、第二の内側ケース5の外周面5cの輪郭形状を略倣う形状とされている。その結果、隙間K1の幅はその全体に亘ってL以上M以下となっている。また、距離Mは内側ケース4,5の強度確保にも留意して設定する。距離Mは距離Lと略同一にするのが好ましく、同一とするとさらに好ましい。この隙間K1があるので、第二の外側ケース3と第二の内側ケース5を軸線方向同一位置に配置して玉8を単列又は単列に近い状態とすることができ、さらに、第二の内側ケース5と第二の外側ケース3は径方向全方位に略距離Lまでの相対移動が可能で且つ周方向にも互いに相対移動(相対回転)可能となる。第二の内側ケース5の外向き舌片部5bの先端部は半円形状となっているが(図3参照)、これは、内レース7の円形形状に対応させたものであり、且つ、第二の内側ケース5と第二の外側ケース3の間で、玉8の標準位置を中心とした周囲に距離略Lの相対的な移動距離を確保するためである。また、第二の外側ケース3の内向き舌片部3bの先端部も円弧状となっているが、これは外レース6の形状に対応させたものであり、且つ、第二の内側ケース5と第二の外側ケース3の間で、玉8の標準位置を中心とした周囲に距離略Lの相対的な移動距離を確保するためである。このように、隙間K1の範囲が、内側ケース5と外側ケース3との相対的移動可能範囲を決めている。
【0053】
転動体である玉8は、これを収容する保持器10の外周面10aと第一保持器ガイド11の内周面11aとの間に存在する、玉8を中心とした円環状の幅Rの隙間K2(図5参照)により移動が可能となっている。即ち、保持器10の外周面10aと第一保持器ガイド11の内周面11aとが接触するまで、玉8は移動することが可能である。本実施形態では、各レース6,7の面積(直径)、玉8及び保持器10の直径、第一保持器ガイド11の内径が玉8の移動可能範囲を決定している。このように、隙間K2の範囲が、玉8の移動可能範囲を決めている。
【0054】
本実施形態では、玉8を収容する保持器10の外周面10aと第一保持器ガイド11の内周面11aとの間の隙間距離R(標準状態における径方向の隙間距離R)は、前記隙間距離Lの半分となっている。即ち、次の数式、
L=2R
の関係が成立している。このようにしたのは、レースの相対移動距離に対して玉8の移動距離が半分であることに対応したものである。このように、距離Rが距離Lの半分となるように、内レース6及び外レース7の直径を設定している。
【0055】
このように、第二の内側ケース5と第二の外側ケース3との間の隙間K1により生ずるこれらケース間の相対的移動可能範囲と、保持器10の外周面10aと第一保持器ガイド11の内周面11aとの隙間K2により生ずる玉8の移動可能範囲とが略対応している。換言すれば、内外ケース5,3間の隙間K1により生ずる両者の相対的移動可能範囲が軸受1の偏心可能範囲に略一致している。つまり、玉8を収容する保持器10の外周面10aと第一保持器ガイド11の内周面11aとが当接するまで玉8が移動すると、同時に第二の内側ケース5と第二の外側ケース3が略当接することとなり、余分な隙間が最小限とされている。よって、軸受1を小型化しながら偏心可能範囲を最大限に広げることができる。そうすると、極めて限られたホイール内のスペースに容易に取り付けることができ、さらにサスペンションのストロークを大きくすることができる。
【0056】
玉8の周囲に余分な隙間を設けないということは、各レース6,7を余分に大きくしないことをも意味する。従って、小さいレース6,7で最大限の偏心可能範囲を確保することができる。なお、図4に示すように、第二保持器ガイド12の外周面と、2つの外側ケースの外周円環状部2a,3aの内周面との間の隙間距離Sは前記距離Rよりも若干大きくしており、軸受1の偏心可能範囲において互いに接触しないようになっている。
【0057】
また、内外シールド13,14は、軸受1の偏心可能範囲を拘束しないようにその内外径が設定されている。即ち、内シールド13の径方向最外端外周面とそれに対向する外シールド14の内周面との間の標準状態における径方向隙間距離は、前述の距離Lと同程度又はそれ以上とされており、また、外シールド14の径方向最内端内周面と、第一の内側ケース4及び第二の内側ケース5の内周面4d、5dとの間の径方向距離も、前述の距離Lと同程度又はそれ以上とされている。
【0058】
この軸受1では、全ての外レース6及び内レース7は同一径で同一形状の円板となっており、しかも、標準状態においてすべてのレースが同一円周上23(図3参照)に設けられている。そうすると、全ての局在位置、即ち全ての第一位置21及び第二位置22において、各玉8におけるそれぞれの移動可能範囲が、軸受1の偏心可能範囲と対応している。即ち、可動平面内の全方位について、軸受1を偏心可能範囲の限界まで移動させると、全ての玉8がそれぞれの移動可能範囲のほぼ限界まで移動するようになっている。即ち、全ての内外レース6,7を同一の部材で共通化でき且つそれらの大きさを最小限としている。
なお、ここでは第二の外側ケース3と第二の内側ケース5との関係を例として説明したが、第一の外側ケース2と第一の内側ケース4との関係も同様の構成である。
【0059】
軸受1において、玉8を、標準状態で図4のように外レース6及び内レース7の中心位置に配置するには、軸受1を組み立てた後、軸受1に軽予圧をかけた状態で全ての径方向及び周方向について最大に相対移動させればよい。このようにすると、位置ズレしている玉8を保持する保持器10が第一保持器ガイド11と接触して玉8がレース上で滑り、玉8の位置が標準状態で内外レース6,7の中心位置になるように調整される。このように、第一保持器ガイド11を設けることにより、玉8の位置調整が容易となり、特に軸受1が組み立てられた状態であっても玉8の位置調整を簡便に行うことが可能となっている。
【0060】
本発明のサスペンション内蔵ホイールhは、偏心スラスト軸受1を備え、外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4との間に圧縮コイルスプリングh5が介装されており、この軸受1の外側部材を構成する第一の外側ケース2及び第二の外側ケース3に外側ホイール部材h2が固定されるとともに、軸受1の内側部材を構成する第一の内側ケース4及び第二の内側ケース5に内側ホイール部材h4部材が固定されている。
【0061】
このようなホイールhとすると、ホイールh外におけるサスペンションの設置スペースが減少するか又は無くなるため、その分の空間を、車の居住空間や、電気自動車のバッテリー設置空間等として利用することができる。また、このサスペンション内蔵ホイールhのばね下重量(ばね下荷重)は、おおよそタイヤ及び外側ホイール部材のみとなり、従来のようにホイール外にのみサスペンションが設けられている場合と比べてばね下重量を低下させることができる。したがって、路面の不整や凹凸等による外乱を吸収でき、車両の乗り心地を向上させることができる。また、軸方向荷重を支持できるホイールhとなるので、ホイールとして実用性を有するものとなる。
【0062】
また、このホイールhは、アキシャル荷重およびモーメント荷重を支持できる軸受1を、外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4との間に取り付けているので、軸方向荷重をも支持できるホイールhとなっている。乗用車のタイヤはキャンバー角を有し、またホイールhにはオフセット(ホイールhの軸方向中心面とホイール取り付け面との軸方向距離)h14があるため、車が静止している状態であっても、ホイールhの外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4との間には、車重により軸方向荷重(アキシャル荷重及びモーメント荷重)が作用する。さらに、車両が旋回する際には車に横加速度(横G)が作用するため、ホイールhに作用する軸方向荷重は極めて大きくなる。このような軸方向荷重を支持できるホイールhとしたことにより、実用性のあるサスペンション内蔵ホイールhとなっている。
【0063】
このホイールhでは、弾性部材である圧縮コイルスプリングh5が、ホイールの表裏にそれぞれ6個ずつ、同一の円周にその長手方向が略沿うように並べられて設置されている。また表裏合計で12個の圧縮コイルスプリングh5は全て同一である。このようにすると、ホイールの表面及び裏面のそれぞれにおいて、複数の弾性部材が周方向に均等間隔に配置される。
さらに、この設置位置の位相が表裏間で(360/6)度、即ち60度相違している。この位相の相違について以下に詳細に説明する。
【0064】
前述の通り、図2に示す如く、ホイールhの表側において、外側ホイール部材h2に三カ所設けられた外側連結位置に三個の表側内向き突起h7があり、これらは周方向に均等間隔で(つまり120度おきに)配置されている。また、内側ホイール部材h4の三カ所の内側連結位置にも三個の表側外向き突起h9が設けられ、これらは周方向に均等間隔で(つまり120度おきに)配置されている。これら表側内向き突起h7と表側外向き突起h9とは位相が60度相違するため、突起h7と突起h9が60度おきに交互に配置される。この突起h7とh9とが圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6で連結されており、その結果、6個の圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6が、その長手方向が同一の円周に略沿うように並べられて設置されることとなる。
【0065】
図示しないが、ホイールhの裏側においても、表側と同様、三カ所の外側連結位置に設けた三個の裏側内向き突起h8と、三カ所の内側連結位置に設けた三個の裏側外向き突起h10が交互に60度おきに配置されている。ただし、表側と裏側では位相が(360/6)度、即ち60度だけ異なる。その結果、図1の断面図で分かるように、ホイール表側の外側連結位置に位置する表側内向き突起h7と、ホイール裏側の内側連結位置に位置する裏側外向き突起h10が同位相となる。また、ホイール表側の内側連結位置に位置する表側外向き突起h9と、ホイール裏側の外側連結位置に位置する裏側内向き突起h8とが同位相となる。
【0066】
つまり、ホイールの表側において内側ホイール部材h4と圧縮コイルスプリングh5とが連結している位置と同位相の位置で、ホイールの裏側では、外側ホイール部材h2と圧縮コイルスプリングh5とが連結している。また、ホイールの表側において外側ホイール部材h2と圧縮コイルスプリングh5とが連結している位置と同位相の位置で、ホイールの裏側では、内側ホイール部材h4と圧縮コイルスプリングh5とが連結している。このように、ホイールの表裏で、内外のホイール部材h2,h4と圧縮コイルスプリングh5との連結関係が互い違いになっている。よって、外側ホイール部材h2及び内側ホイール部材h4に作用する力が周方向で均等化され、周方向により均一なサスペンションとすることができる。
【0067】
さらに、図1及び図2に示すように、このホイールhでは、表側外向き突起h9及び裏側外向き突起h10の径方向外側に、合計6個の緩衝材h15を設けている。前述のように、表側外向き突起h9と裏側外向き突起h10はそれぞれ120度おきに配置され且つ位相が60度相違するから、6個の緩衝材h15は、ホイールhの表裏を合わせて考えると、60度おきに均等に設けられている。この緩衝材h15により、外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4とが直接接触することを防止される。よって、強い衝撃がホイールに作用して、サスペンションのストロークを超える偏心が起こった場合でも、外側ホイール部材と内側ホイール部材が接触することが無くなり、衝撃を緩和することができる。この緩衝材h15は、ゴム等の弾性部材からなるものが好適である。
【0068】
サスペンション内蔵ホイールhのサスペンションとしてのストロークは、前述の軸受1の偏心可能距離Lにより左右され、この距離Lより大きくすることはできない。よって、サスペンションのストロークを大きくしてサスペンションとしての性能を向上させるためには、軸受1の偏心可能距離Lを大きくすることが必要となる。したがって、軸受を小型化しつつその偏心可能範囲をより広くすることができる本発明の軸受1は、サスペンション内蔵ホイール用に使用され、極めて限られたスペースのホイール内に収容される軸受として極めて好適なものとなる。また、サスペンション内蔵ホイールhのストロークを、軸受1の偏心可能距離Lよりも小さくしておけば、軸受1はその構成部品間で干渉することがないので好ましい。
【0069】
このサスペンション内蔵ホイールhでは、サスペンションとしてのストロークを±25mmとしている。車両のサスペンションがこのサスペンション内蔵ホイールhのみであり、ホイール外のサスペンションと兼用しない場合は、ストロークを±10mm以上とするのが好ましい。±10mm程度以上のストロークが確保できれば、通常の路面を走行する車両のサスペンションとして実用性を有するものとなるからである。本実施形態では、±25mmのストロークを確保するため、偏心スラスト軸受1における偏心可能距離Lは25mmより大きくしている。そうすると、軸受1はその構成部品間で干渉することがない。
【0070】
このように、サスペンション内蔵ホイールhのサスペンションとしての機能を高めるためには、そのストロークを一定以上確保する必要がある。このためには、軸受1の偏心可能距離Lを、前記ストローク以上とすることが求められる。一方、ホイール内部のスペースは極めて限定されたものであるため、ホイール内部に収容する偏心スラスト軸受1においてその偏心可能範囲Lを確保するのは非常に困難となる。したがって、軸受の小型化を可能としつつ偏心可能範囲を最大限とできる本発明の偏心スラスト軸受1は、サスペンション内蔵ホイールhに取り付ける軸受として極めて好適なものとなる。
【0071】
軸受1の外レース6及び内レース7の形状は特に限定されないが、本実施形態では、これらのレース6,7は第一位置21及び第二位置22の各局在位置に分割して設けるレース分割構造としている。このようにすると、玉8が転がり接触する部分であって通常軸受用鋼等の鉄系材料で作製されるレース部分を少なくすることができるので、コストを低減することができる。また、これらのレース6,7を保持して各レースを一体的に連結する内側ケース4,5及び外側ケース2,3は、玉8と接触しないので、アルミ合金等の軽金属を用いることができる。したがって、このようなレース分割構造とした場合には、個々のレース6,7の大きさを小さくでき、軸受1の軽量化が可能となるので好ましい。また、一般に軸受が大型化されると、レース6,7も大型化される傾向にあるが、レースが大型化されるとレース軌道面の平面度を確保するための加工が極めて困難となる。本実施形態のようにレースを分割すると、個々のレースの大きさは小型化しつつ軸受全体の大型化が容易となる。よって、大型のホイールにも対応が容易である。
【0072】
ここで、前記第一位置21及び第二位置22はそれぞれ4カ所、つまり3カ所以上に局在しており、さらにこれら3カ所以上の位置は一直線上になく、周方向に沿っているので、玉8を介して対向する2組の内側ケース4,5と外側ケース2,3は、それぞれ3点以上で支持されることになる。したがって両方向のアキシャル荷重が支持可能になるとともに、モーメント荷重も支持可能となる。したがって、この第一位置21及び第二位置22は、本実施形態のようにそれぞれ4カ所に局在する場合に限られず、3カ所以上であればよい。好ましくは本実施形態のように、第一位置21及び第二位置22共に、これら3カ所以上の局在位置を周方向180度(半円)の範囲にすべて設けることのないように、周方向で180度を超える範囲に配置するのがよい。このようにすると対向する面の支持点が周方向により分散するので、大きなモーメント荷重を支持できるとともに、アキシャル荷重を面内により均等分散でき、各玉8にかかる負荷がより均等になるので、特にサスペンション内蔵ホイールhに作用する軸方向荷重を支持する軸受として好ましい。
【0073】
そして、本実施形態では、第一位置21と第二位置22の局在位置の数はそれぞれ同数のNカ所(Nは3以上の整数)とし、さらに、第一位置21と第二位置22は、同一円周23(図5参照)上に、且つ周方向に360/(2N)度ずつ位相をずらして交互に配置している。このようにすると、第一位置21と第二位置22が周方向及び径方向に均等に分散して局在することになるので、両方向のアキシャル荷重及びモーメント荷重を効率よく支持することができる。
【0074】
さらにこの場合、それぞれの玉8の移動範囲は同一となる。そうすると、全てのレース6,7の大きさを最小限とした同一形状のものにすることができ、軸受1をさらに軽量化することができる。なお、Nは3以上の整数であるのが良いが、多すぎると偏心可能範囲を確保するための部材間の隙間距離が狭くなると共に、部品点数が多くなり構造が複雑となる傾向となるので、通常はNを4〜6とするのが好ましい。モーメント負荷能力と偏心可能範囲のバランスからはNを5とするのがさらに好ましい。
【0075】
保持器10は本発明では必ずしも必要ではない。しかし、本実施形態のように、各玉8を収容する保持器10を用いると、玉8周辺に供給される潤滑油やグリース等の潤滑剤の流出を抑制できる。また、第一保持器ガイド11は、前述のように玉8の位置調整を容易にするが、保持器10と第一保持器ガイド11とを組み合わせて使用することによりこの位置調整がより確実となる。即ち、保持器10の外周面と第一保持器ガイド11の内周面とが当接することにより、位置調整の際により確実に玉8を滑らすことができる。また、第一保持器ガイド11により、各レース6,7の周囲にレース間への異物の侵入を抑制することが可能となり、軸受全体のシール部材としての機能も有する。
【0076】
さらに、保持器10と第二保持器ガイド12の組み合わせにより、第二保持器ガイド12の厚みが比較的薄くても各玉8間の相対的位置関係を維持できる。即ち、保持器10が第二保持器ガイド12の保持器挿入孔12aに収容されているので、第二保持器ガイド12の厚みを玉8の直径程度まで厚くしなくても玉8を確実に保持できる。なお、保持器10はフェノール樹脂等の樹脂により作製することができ、第二保持器ガイド12はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂により作製することができる。また、第一保持器ガイド11は樹脂製等でもよいが、前述のように玉8の位置調整に第一保持器ガイド11を使用をする場合には、玉8の押圧力に耐えて玉8を滑らせる必要がある。よってその材質はある程度剛性の高いもののほうが好ましく、例えばアルミ合金などが好適である。
【0077】
転動体の形状は問わないが、実施形態のようにすべての転動体を玉8とすれば、軌道面内の全方位に対して転がり抵抗が少ない軸受とすることができる点で好ましい。また、転動体の数は特に限定されず、前記第一位置及び第二位置の各局在位置1カ所当たり複数の転動体を設けてもよいし、本実施形態のように、各局在位置1カ所あたり1個の転動体としてもよい。各局在位置1カ所あたり1個の転動体が最低限必要である。
【0078】
軸受1の軸方向側面に設けた内シールド13や外シールド14等のシールドは必ずしも必要ではないが、特に軸受1がサスペンション内蔵ホイールhに用いられる場合には、車両の走行中に路面上の異物等が軸受1内に多く侵入してくるため、この侵入を防止すべくシールドを設けるのが好ましい。なお、軸受1において、前述の標準状態における部材相互の相対的位置関係を保持するためには、予圧付加用ねじ等により内外部材間に予圧を与えて、転動体とレース間の滑りを抑えるようにしておくのがよい。
【0079】
本発明の軸受は、外側部材又は内側部材が円形(円環状)のものに限定されず、例えば多角形であってもよい。多角形の場合、本願にいう径方向及び周方向とは、この多角形の外接円における径方向及び周方向を意味するものとする。ただし、サスペンション内蔵ホイールhにおいて、外側ホイール部材h2の内周面h11及び内側ホイール部材h4の外周面h12は通常円筒状であるので、このホイールhに取り付けることのできる軸受の外側部材又は内側部材は、円形(円環状)のものが好ましい。
【0080】
前記の実施形態の軸受では、全ての玉8の中心が同一平面上に配置されている単列の軸受としたが、本発明はこのような単列構造に限定されないことは言うまでもない。即ち、転動体のそれぞれの所定部は同一平面上に存在していればよく、その限りにおいて転動体相互間で軸方向位置がずれていても良い。従来の複列構造では、転動体の各列の軸方向隙間に少なくともレースが存在する必要があるので、軸受の軸方向厚みが大きくなっていた。
【0081】
本発明のホイールhでは、前記の実施形態の如く、外側ホイール部材h2の周方向に等間隔なPカ所(Pは2以上の整数)の外側連結位置と、前記内側ホイール部材h4の周方向に等間隔なPカ所(Pは2以上の整数)の内側連結位置との位相を360/(2P)度相違させ、周方向に隣り合う外側連結位置と内側連結位置とを圧縮コイルスプリングh5等の弾性部材で連結することにより、2P個の圧縮コイルスプリングh5を同一の円周に略沿って周方向に等間隔で配置した構成としてもよい。この場合更に、かかる構成をホイールの表側と裏側のそれぞれに設け、この表側と裏側とで位相が360/(2P)度相違している構成としてもよい。前述の実施形態におけるサスペンション内蔵ホイールhではPを3としたが、Pは2以上の整数であればよい。Pが小であると、周方向の不均一性が過大となる。一方、Pが大であると、周方向の均一性は高まるが、個々の弾性部材が小型化し、サスペンションとしてのストロークが小さくなる。したがって、Pは3以上6以下がより好ましい。
【0082】
本発明のサスペンション内蔵ホイールhは、車両におけるサスペンションの全てをホイール内に収容しうるものであるが、サスペンション内蔵ホイールhと、ホイール外のサスペンションとを兼用するものであってもよい。この場合は、ホイール外のサスペンションが無い場合と比べて、サスペンションの設置空間が減少する効果は少ない。ただし、例えば、ホイール外のサスペンションには比較的振幅の大きい振動を吸収させる一方、サスペンション内蔵ホイールには比較的振幅の小さい高周波の振動を吸収させることにより、全体として広汎な領域の振動を吸収しうるという効果を得ることも可能である。
【0083】
【発明の効果】
以上のような本発明によれば、複列構造の軸受と比較して軸受幅を小さくし且つ両方向のアキシャル荷重及びモーメント荷重が支持でき、サスペンション内蔵ホイールに取り付けることができる偏心スラスト軸受を提供できる。また、この軸受が装着されて軸方向荷重が支持でき、サスペンションの設置スペースを減らすことのできるサスペンション内蔵ホイールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるサスペンション内蔵ホイールの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態であるサスペンション内蔵ホイールの側面図である。
【図3】図1のサスペンション内蔵ホイールに取り付けられている偏心スラスト軸受の構成を示す分解斜視図である。
【図4】図1のサスペンション内蔵ホイールに取り付けられている偏心スラスト軸受の、軸方向断面の断面図である。
【図5】図4のA−A断面位置から第二保持器ガイドを除いて軸受内部をみた要部正面図である。
【図6】図1のサスペンション内蔵ホイールに取り付けられている偏心スラスト軸受の、図3のB−B位置の断面における断面図である
【符号の説明】
h サスペンション内蔵ホイール
h1 リム部
h2 外側ホイール部材
h3 ディスク部
h4 内側ホイール部材
h5 圧縮コイルスプリング
h6 ダンパー
h15 緩衝材
1 偏心スラスト軸受
2 第一の外側ケース
2a 外周円環状部
2b 内向き舌片部
3 第二の外側ケース
3a 外周円環状部
3b 内向き舌片部
4 第一の内側ケース
4a 内周円環状部
4b 外向き舌片部
5 第二の内側ケース
5a 内周円環状部
5b 外向き舌片部
6 外レース
7 内レース
8 玉
10 保持器
11 第一保持器ガイド
12 第二保持器ガイド
21 第一位置
22 第二位置
L 外側ケースと内側ケースとの隙間距離
R 保持器と保持器ガイドとの間の隙間距離

Claims (12)

  1. タイヤが装着されるリム部を含む外側ホイール部材と、車輪軸と連結するディスク部を含む内側ホイール部材と、これらホイール部材間に介装された弾性部材と、を備えるサスペンション内蔵ホイールに取り付けられ、これらのホイール部材間に作用する軸方向荷重を支持しつつ当該ホイール部材間での偏心相対移動を可能とする偏心スラスト軸受であって、
    第一の外側部材及びその径方向内側に位置する第一の内側部材が設けられるとともに、これらに対向して第二の外側部材及びその径方向内側に位置する第二の内側部材が設けられ、
    周方向に沿った3カ所以上に局在する第一位置において対向した前記第一の外側部材と前記第二の内側部材とで、前記第一位置に配置された転動体を挟持するとともに、周方向に沿った3カ所以上に局在し前記第一位置とは位相が異なる第二位置において対向した前記第二の外側部材と前記第一の内側部材とで、前記第二位置に配置された転動体を挟持し、
    前記第一の外側部材と前記第一の内側部材とは、相互間に隙間を設けて径方向及び周方向への相対移動を可能とし、且つ前記第二の外側部材と前記第二の内側部材とは、相互間に隙間を設けて径方向及び周方向への相対移動を可能とし、
    前記第一の外側部材と前記第二の外側部材とが一体的に接合されるとともに、前記第一の内側部材と前記第二の内側部材とが一体的に接合されており、
    前記転動体のそれぞれの所定部は同一平面上に存在することを特徴とする偏心スラスト軸受。
  2. 全ての前記転動体の中心は同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の偏心スラスト軸受。
  3. 前記第一の外側部材は、局在する前記第一位置のそれぞれに分割して設けられた外レースと、これら全ての外レースが取り付けられた第一の外側ケースから成り、
    前記第二の外側部材は、局在する前記第二位置のそれぞれに分割して設けられた外レースと、これら全ての外レースが取り付けられた第二の外側ケースから成り、
    前記第一の内側部材は、局在する前記第二位置のそれぞれに分割して設けられた内レースと、これら全ての内レースが取り付けられた第一の内側ケースから成り、
    前記第二の内側部材は、局在する前記第一位置のそれぞれに分割して設けられた内レースと、これら全ての内レースが取り付けられた第二の内側ケースから成るとともに、
    前記転動体は前記外レースと前記内レースの間に挟持されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の偏心スラスト軸受。
  4. 前記隙間により生ずる外側部材と内側部材との相対移動可能範囲が、転動体の移動可能範囲に略対応していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の偏心スラスト軸受。
  5. 前記第一位置及び第二位置はそれぞれNカ所(Nは3以上の整数)に等配されており、
    前記第一及び第二の外側ケースは同一形状であり、その形状は、軸受の外周を成す外周円環状部と、この外周円環状部から径方向内側に向かって且つ周方向に等間隔をおいて突出したN個の内向き舌片部とを有するものであり、
    前記第一及び第二の内側ケースは同一形状であり、その形状は、軸受の内周を成す内周円環状部と、この内周円環状部から径方向外側に向かって且つ周方向に等間隔をおいて突出したN個の外向き舌片部とを有するものであり、
    前記全ての外向き舌片部には前記内レースが同一円周上で取り付けられ、前記全ての内向き舌片部には前記外レースが同一円周上で取り付けられるとともに、前記内レース及び前記外レースは全て同一形状の円板状部材であり、
    前記第一位置と第二位置は、同一円周上に、且つ周方向に360/(2N)度ずつ位相をずらして交互に局在していること特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の偏心スラスト軸受。
  6. 前記各レースの周囲を包囲する第一保持器ガイドを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の偏心スラスト軸受。
  7. 全ての前記転動体間の相対的位置関係を維持する単一の第二保持器ガイドを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の偏心スラスト軸受。
  8. 請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の偏心スラスト軸受を備え、前記外側ホイール部材と前記内側ホイール部材との間に弾性部材が介装されており、
    この軸受の前記外側部材に前記外側ホイール部材が固定されるとともに、軸受の前記内側部材に前記内側ホイール部材が固定されていることを特徴とするサスペンション内蔵ホイール。
  9. 前記外側ホイール部材と前記内側ホイール部材との間にダンパーが介装されていることを特徴とする請求項8に記載のサスペンション内蔵ホイール。
  10. 前記外側ホイール部材の周方向に等間隔なPカ所(Pは2以上の整数)の外側連結位置と、前記内側ホイール部材の周方向に等間隔なPカ所(Pは2以上の整数)の内側連結位置との位相を360/(2P)度相違させ、周方向に隣り合う外側連結位置と内側連結位置とを弾性部材で連結することにより、2P個の弾性部材を同一の円周に略沿って周方向に等間隔で配置したことを特徴とする請求項8又は9のいずれかに記載のサスペンション内蔵ホイール。
  11. ホイールの表側と裏側のそれぞれに請求項10に記載の構成を有し、この構成の位相が、表側と裏側とで360/(2P)度相違していることを特徴とするサスペンション内蔵ホイール。
  12. 前記外側ホイール部材と前記内側ホイール部材とが直接接触することを防止する緩衝材が設置されていることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のサスペンション内蔵ホイール。
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