JP2004330970A - 複列偏心スラスト軸受及びそれを用いたサスペンション内蔵ホイール - Google Patents
複列偏心スラスト軸受及びそれを用いたサスペンション内蔵ホイール Download PDFInfo
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Abstract
【課題】サスペンション内蔵ホイールに取り付け可能で且つこのホイール用の軸受として好適な複列の偏心スラスト軸受1と、この軸受1が装着されて軸方向荷重が支持でき且つサスペンションの設置スペースを低減できるサスペンション内蔵ホイールhとを提供する。
【解決手段】リム部h1を含む外側ホイール部材h2と、ディスク部h3を含む内側ホイール部材h4と、これらホイール部材h2,h4間に介装された弾性部材と、を備えるサスペンション内蔵ホイールh、及びこのホイールhに取り付けることができる複列偏心スラスト軸受1である。この軸受1は、内外レースが分割して且つ局所的に設けられている。この軸受1は、ホイール部材h2,h4間に作用する軸方向荷重を支持しつつホイール部材h2,h4間での偏心相対移動を可能とする。
【選択図】 図1
【解決手段】リム部h1を含む外側ホイール部材h2と、ディスク部h3を含む内側ホイール部材h4と、これらホイール部材h2,h4間に介装された弾性部材と、を備えるサスペンション内蔵ホイールh、及びこのホイールhに取り付けることができる複列偏心スラスト軸受1である。この軸受1は、内外レースが分割して且つ局所的に設けられている。この軸受1は、ホイール部材h2,h4間に作用する軸方向荷重を支持しつつホイール部材h2,h4間での偏心相対移動を可能とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホイール内にサスペンションを備えたサスペンション内蔵ホイール及びこのホイールに取り付けることができる複列の偏心スラスト軸受に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車等に用いられているサスペンションは、一般的に、スプリング等の弾性部材とダンパー(ショックアブソーバー)を備えるものであり、車体を支えつつ路面からの振動を吸収する役割を果たす。このサスペンションの形式には、ストラット式やウィッシュボーン式等種々のものが知られているが、これらはいずれもホイール内部に収容されるものではなく、ホイール外に設置されていた。そのため、ホイール外においてサスペンションの設置空間が必要となり、車内の居住性を犠牲にしていた。例えば、比較的構造が単純なストラット式のサスペンションであっても、スプリングやショックアブソーバーがホイール外に存在し、タイヤハウス内で縦向きに置かれていた為、車内スペースを狭くしていた。また、特に電気自動車では、バッテリーの設置空間を大きくすることにより、バッテリーを大型化してその容量を増大させることが極めて重要であるが、かかるサスペンションの存在がバッテリ−大型化の妨げになっていた。
【0003】
かかる問題に対処すべく、サスペンションをホイールに内蔵したサスペンション内蔵ホイールが提案されている。通常のホイールでは、タイヤが装着されるリム部分と、車輪軸と連結するディスク部とが一体化されているのに対し、このサスペンション内蔵ホイールでは、リム部とディスク部とが分割した構造となっている。そして、それらの間にゴム等の弾性体及び小型のダンパーを介在させた構造とすることにより、ホイール内にサスペンションを収容している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2003−34103号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、かかるサスペンション内蔵ホイールでは、回転軸に垂直な方向の荷重に耐えることはできるとしても、軸方向の荷重に耐えることができないため、実用に供し得るものとはならない。即ち、乗用車のタイヤはキャンバー角を有し、またホイールには通常オフセット(ホイールの軸方向中心面とホイール取り付け面との軸方向距離)があるため、車が静止している状態であっても、ホイールのリム部とディスク部の間には、車重により軸方向の荷重(アキシャル荷重及びモーメント荷重)が作用する。さらに、車が旋回する際には車に横加速度(横G)が作用するため、ホイールに作用する軸方向荷重は極めて大きくなる。それにもかかわらず、前述のような従来のサスペンション内蔵ホイールではこの軸方向荷重に耐えるような構造は備えていないので、実用性が無い。
【0006】
ここで、かかるサスペンション内蔵ホイールにおいて、このような軸方向荷重を支持可能とするために、偏心可能で且つ軸方向荷重を支持できる偏心スラスト軸受を用いることが考えられる。即ち、偏心スラスト軸受の対向するレースのそれぞれをリム部及びディスク部に固定することにより、軸方向荷重を支持することが考えられる。ただしこの場合、この偏心スラスト軸受は一方向のアキシャル荷重を支持するだけではその役割を果たし得ず、両方向のアキシャル荷重を支持可能とする必要がある。
【0007】
両方向のアキシャル荷重を支持できるようにするためには、転動体を複列(複式)とした複列スラスト軸受とする必要がある。従来、複列偏心スラスト軸受としては、一枚の内側レースと、この内側レースの両面(両外側ケース対向面)に対して対向する2枚の外側レースと、これらレース間に介在する2列の転動体からなるものが公然実施されている。この複列偏心スラスト軸受では、2枚の外側レースを備え、2列の転動体がそれぞれ互いに逆方向のアキシャル荷重を支持することにより、両方向のアキシャル荷重を支持できるようになっている。
【0008】
しかし、このような従来型の複列偏心スラスト軸受では、レース部分が大きいため、レース軌道面の平面度を確保するのが困難となる等、その加工が極めて困難となる場合があり、軸受の大型化を行うのが容易でなく、またコストが高くなっていた。さらに、軸受用鋼等の鉄系金属で作製されるレース部分が大きいため軸受が重くなり、軽量化が困難であるという問題もあった。そのため、この軸受がサスペンション内蔵ホイールに用いられると、ホイールの重量が大きくなったり、コストが高くなる等の問題があった。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、両方向のアキシャル荷重及びモーメント荷重が支持でき、サスペンション内蔵ホイールに取り付け可能で且つこのホイール用の軸受として好適な複列の偏心スラスト軸受と、この軸受が装着されて軸方向荷重が支持でき且つサスペンションの設置スペースを減らすことのできるサスペンション内蔵ホイールとを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、本発明では、タイヤが装着されるリム部を含む外側ホイール部材と、車輪軸と連結するディスク部を含む内側ホイール部材と、これらホイール部材間に介装された弾性部材と、を備えるサスペンション内蔵ホイールに取り付けられ、これらのホイール部材間に作用する軸方向荷重を支持しつつ当該ホイール部材間での偏心相対移動を可能とする偏心スラスト軸受であって、互いに軸方向に対向して配置され且つ相互に一体的に接合した二つの外側ケースと、これらの外側ケース間に介在する内側ケースとを有し、前記内側ケースの両外側ケース対向面のそれぞれには、周方向に沿って分割して配置された3個以上の内レースが局所的に設けられるとともに、前記二つの外側ケースのそれぞれには、前記各内レースに対向する位置に分割して配置された3個以上の外レースが局所的に設けられ、且つ対向した前記内レースと前記外レースとの間のそれぞれに転動体が挟持されており、前記分割して配置された各レースにおける前記各転動体の移動可能範囲は、全て互いに略等しいことを特徴とする複列偏心スラスト軸受としている。
【0011】
このようにすると、レースが分割されて局所的に配置されているので、個々のレースを小さくすることができ、個々のレースの加工が容易となる。レースは周方向に沿って3個以上設けられており、各レース間に転動体が挟持されていることから、内側ケースと外側ケースは周方向に沿った3カ所以上で支持されることとなり、アキシャル荷重とモーメント荷重が支持可能となる。また、転動体と接触するレース以外の部分である内側ケース及び外側ケースは、レースと別体であるので、軸受用鋼等の鉄系金属でなくアルミ合金等の低比重金属や樹脂等を使用でき軸受を軽量化できる。さらに、分割して局所的に配置された各レースにおける前記各転動体の移動可能範囲は、全て互いに略等しいので、任意の転動体が移動可能範囲全体亘って移動したとき、他の全ての転動体もほぼ移動可能範囲全体に移動することとなる。レースの大きさは転動体の移動可能範囲を決定する要素となるが、このように各転動体の移動可能範囲を全て互いに略等しくすることにより、複数のレースのうちの一部を不必要に大きくすることが無く、全てのレースを最小あるいは最小限とすることができる。また、以上のような構成とした場合、軸受の各部材が分離せず、組み立てられた軸受単体として供給することが可能である。
【0012】
この軸受において、前記内側ケースと前記外側ケースとの間の隙間により生ずる相対移動可能範囲が、前記転動体の移動可能範囲に略対応している構成とするのが好ましい。このようにすると、内側ケースと外側ケースの間の隙間が無くなるまで両者を相対移動させると、転動体もレース上に設けられた隙間が略無くなるまで移動することとなる。よって、余分な隙間が無くなるか又は最小限となり、結果として、軸受を小型化しながら偏心可能範囲を大きくすることができる。
【0013】
前記内側ケース及び外側ケースの各面の各内外レースは、当該各面において全て同一PCDで(同一円周上に)配置されるとともに、周方向に均等に分配されている構成としてもよい。このようにすると、軸受の支持点となる転動体が周方向及び径方向に均等に分配されるので、両方向のアキシャル荷重、及び、アキシャル荷重の作用点が径方向で相違することにより生ずるモーメント荷重を、より安定的に支持できる。また各転動体にかかる負荷も均等化できるため、軸受全体としての負荷容量も大きくできる。この場合、前記各内外レースは全て同一径の円形形状であり、且つ前記外側ケース及び内側ケースは円環状である構成とすると、周方向に均等な構成の軸受となり、可動面内の全方位に対して一定幅で相対移動可能な軸受とすることができる。また、全ての内外レースが同一径の円形であるので、レース部材を共通化することができる。
【0014】
この軸受において、前記各内外レースの周囲に設けられた保持器ガイドを有する構成とすることもできる。このようにすると、転動体の位置調整が容易となる。即ち、転動体の位置をレース上の最適位置に調整するのは容易ではないが、軸受に軽予圧をかけた状態で径方向全体(全周)に亘って最大に相対移動させることにより、位置ズレした転動体は保持器ガイドに係止されレース上を適宜滑りつつ位置調整がなされる。よって、転動体をレース上の最適な位置に配置することが容易となる。また、対向するレース間への異物の侵入、及び潤滑油やグリース等の潤滑剤の流出を抑制できるため、軸受全体のシール機能も有する。
【0015】
また、本発明のサスペンション内蔵ホイールは、前記の複列偏心スラスト軸受と前記弾性部材とが、前記外側ホイール部材と前記内側ホイール部材との間に介装されており、この軸受が、これらのホイール部材間に作用する軸方向荷重を支持しつつ当該ホイール部材間での偏心相対移動を可能としていることを特徴とする。このようなホイールとすると、ホイール内にサスペンションが収容される分、ホイール外におけるサスペンションの設置スペースを減らすことができ、さらには、ばね下重量を低下させることができる。また、軸方向荷重を支持できるホイールとなるので、実用性を有するホイールとすることができる。
【0016】
このホイールでは、前記外側ホイール部材と前記内側ホイール部材との間にダンパーが介装されている構成とするのが好ましい。このようにすると、弾性部材に加えてダンパーが装着されたサスペンションとなるので、弾性部材の伸縮を早期に減衰させることができる。
【0017】
また、前記外側ホイール部材の周方向に等間隔なPカ所(Pは2以上の整数)の外側連結位置と、前記内側ホイール部材の周方向に等間隔なPカ所(Pは2以上の整数)の内側連結位置との位相を360/(2P)度相違させ、周方向に隣り合う外側連結位置と内側連結位置とを弾性部材で連結することにより、2P個の弾性部材を同一の円周に略沿って周方向に等間隔で配置した構成としてもよい。このようにすると、2P個の弾性部材を周方向に均等に配置することができる。また、外側ホイール部材と弾性部材とが連結する外側連結位置と、内側ホイール部材と弾性部材とが連結する内側連結位置が交互に且つ周方向に等間隔で配置されるので、弾性部材から各ホイール部材に作用する力が周方向で均等化される。
【0018】
この場合更に、かかる構成をホイールの表側と裏側のそれぞれに設け、この表側と裏側とで位相が360/(2P)度相違している構成としてもよい。このようにすると、ホイールの表面及び裏面のそれぞれにおいて、複数の弾性部材が周方向に均等間隔に配置される。さらに、表裏で位相を360/(2P)度相違させているので、ホイール表側の内側連結位置とホイール裏側の外側連結位置とが同位相となり、ホイール表側の外側連結位置とホイール裏側の内側連結位置とが同位相となる。よって、弾性部材から各ホイール部材に作用する力が周方向で更に均等化される。
【0019】
さらに、前記外側ホイール部材と前記内側ホイール部材とが直接接触することを防止する緩衝材を設置するホイールとするのが好ましい。このようにすると、強い衝撃がホイールに作用して、サスペンションのストロークを超える偏心が起こった場合でも、外側ホイール部材と内側ホイール部材が接触することが無くなり、衝撃を緩和することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態である複列偏心スラスト軸受1が取り付けられたサスペンション内蔵ホイールhの断面図であり、図2は、このサスペンション内蔵ホイールhの側面図(車両に取り付けた場合における外側から見た図)である。図1は、図2のA−A線における断面図である。このホイールhは、通常のホイールと異なり、タイヤ(図示しない)が装着されるリム部h1を含む外側ホイール部材h2と、車輪軸(図示しない)と連結するためのボルト孔h20(図2参照。図1において記載省略)を有するディスク部h3を含む内側ホイール部材h4とが分割されている。そして、これら外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4との間には、両部材h2及びh4間に作用する軸方向荷重を支持しつつ、両部材h2及びh4間の偏心相対移動を可能とする偏心スラスト軸受1が取り付けられている。
【0021】
このホイールhにサスペンションとしての機能を持たせるべく、外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4との間には、弾性部材である圧縮コイルスプリングh5が介装されている(図2参照)。圧縮コイルスプリングh5は、ホイールhの表裏に6個ずつ、合計12個使用されている。図2の側面図には、ホイールhの表側に設置された6個のスプリングが示されている。さらに、このサスペンション内蔵ホイールhでは、従来のストラット式サスペンションと同様、ダンパーh6が各圧縮コイルスプリングh5の内側に設置され、弾性部材の伸縮を早期に減衰させることができるようにされている。
【0022】
ダンパーh6は、全ての圧縮コイルスプリングh5内部に設置されているので、その数は圧縮コイルスプリングh5と同じく、ホイールhの表裏に6個ずつ、合計12個である。これら圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6は、図2に示すように、その長手方向が円周に略沿った方向で並べられつつ設置されている。なお、図2においては一部の圧縮コイルスプリングh5の記載を一部欠截してダンパーh6を見やすいようにしている。圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6のそれぞれは、従来のサスペンションに用いられているものと同様の構造で、その大きさを小型化したものである。
【0023】
これら圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6を介装するために、外側ホイール部材h2及び内側ホイール部材h4にはそれぞれ突起htが設けられ、この突起htにおいて圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6と連結している。外側ホイール部材h2には、その内周面(タイヤが装着される面と反対の面)h11から径方向内向きに突出する突起htが設けられており、ホイールhの表側(ホイールhが車両に装着された場合における軸方向外側寄り)に設けられた表側内向き突起h7と、ホイールhの裏側(ホイールhが車両に装着された場合における軸方向内側寄り)に設けられた裏側内向き突起h8とがある。
【0024】
一方、内側ホイール部材h4には、その外周面(ディスク部h3以外の部分である円筒部分の外周面)h12から径方向外向きに突出する突起htが設けられており、ホイールhの表側(ホイールhが車両に装着された場合における軸方向外側寄り)に設けられた表側外向き突起h9と、ホイールhの裏側(ホイールhが車両に装着された場合における軸方向内側寄り)に設けられた裏側外向き突起h10とがある。
【0025】
各圧縮コイルスプリングh5の両端にはバネ受け板h16が設けられている(図2参照)。このバネ受け板h16は、圧縮コイルスプリングh5の長手方向に対して垂直な向きに設置されており、圧縮コイルスプリングh5の両端はこのバネ受け板h16の一面に固定されている。そして、ダンパーh6の両端も同じくバネ受け板h16の一面に固定されている。また、バネ受け板h16の他面(圧縮コイルスプリングh5が固定された面の反対面)には、軸着用リングh17が突設されている(図1参照。図2において図示されない。)。一方、図1に示すように、各突起h7〜h10は、それぞれ軸方向中央部に隙間を有する構造となっており、この隙間に軸着用リングh17が挿入されている(図1参照)。そして、固定ねじh21が、各突起h7〜h10と軸着用リングh17とを貫通することにより、軸着用リングh17は各突起h7〜h10に軸着されている。なお、軸止用リングh17と固定ねじh21との間にはブッシュh18が介在している(図1参照)。以上のような構成により、圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6は、バネ受け板h16を介して外側ホイール部材h2及び内側ホイール部材h4と連結している。
【0026】
図2に示すように、各突起h7〜h10は、一つの突起につき二つの圧縮コイルスプリングh5(及びダンパーh6)と連結している。そのようにすることで、隣り合った表側内向き突起h7と表側外向き突起h9(及び、図示しないが、隣り合った裏側内向き突起h8と裏側外向き突起h10)とが、圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6により連結される。表側内向き突起h7と表側外向き突起h9とは、周方向に等間隔で交互に配置されているので、6個の圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6は、同一の円周に略沿って周方向に等間隔で配置されることとなる。
【0027】
ここで、外側ホイール部材h2と圧縮コイルスプリングh5とが連結する位置を、外側連結位置とする。本実施形態では、表側内向き突起h7及び裏側内向き突起h8の設置位置が外側連結位置となる。また、内側ホイール部材h4と圧縮コイルスプリングh5とが連結する位置を内側連結位置とする。本実施形態では、表側外向き突起h9と裏側外向き突起h10の設置位置が内側連結位置となる。本実施形態では、前述のように、周方向に隣り合った表側内向き突起h7と表側外向き突起h9(及び、図示しないが、周方向に隣り合った裏側内向き突起h8と裏側外向き突起h10)とが、圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6により連結されているので、周方向に隣り合う外側連結位置と内側連結位置とが弾性部材である圧縮コイルスプリングh5で連結されていることになる。
【0028】
このように、偏心スラスト軸受1を挟んだホイール1の表側と裏側の両方に各突起h7〜h10を設け、圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6をサスペンション内蔵ホイールhの表裏両面に設置しているので、圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6の設置個数を多くすることができ、サスペンションとしての性能(振動吸収性能、振動減衰性能など)をより高めることができるとともに、耐久性を向上させることができる。
【0029】
このサスペンション内蔵ホイールhは、外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4とが偏心相対移動をし、この偏心相対移動に伴って圧縮コイルスプリングh5が伸縮することにより、衝撃が緩和され、サスペンションとしての機能を果たす。更に、ダンパーh6により、圧縮コイルスプリングh5の急激な伸縮が抑制され、緩衝性が向上する。このように、外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4間との間の偏心相対移動によりサスペンション機能が発現するわけであるが、この偏心相対移動を可能としているのが、偏心スラスト軸受1である。
【0030】
図3は、この実施形態の軸受1の斜視図である。この斜視図は、軸受1が有する二つの外側ケース2のうちの一つが分解された分解斜視図となっており、さらに、軸受1の内部構造を分かりやすくするため一部の記載を適宜省略している。図4は、この軸受1の断面図(軸心から下半分は記載を省略)であり、その周方向位置は転動体である玉6の中心を通る位置としている。図5は、図2のA−A断面の位置から矢印方向に軸受を見た要部正面図(1/4周分の図)である。
【0031】
図3及び図4に示すように、この軸受1は、互いに軸方向に対向して配置された二つの円環状の外側ケース2,2と、これら二つの外側ケース2,2の間に介在する円環状の内側ケース3とを有している。内側ケース3は、円筒状の円環部3bと、この円環部3bの内周面3cから径方向内側に向かって延びる内向き舌片部3aよりなる。内向き舌片部3aは全部で8個であり、これら8個の内向き舌片部3aが周方向に等間隔をおいて(即ち45度おきに)設けられている。図4に示すように、この内向き舌片部3aの表裏両面(両外側ケース対向面)に二つの外側ケース2,2がそれぞれ対向している。
【0032】
二つの外側ケース2,2は同一形状で且つ内側ケース3に対して対称な向きに対向し、且つその内周側の縁部近傍において、周方向に等間隔をおいて設けられた複数個のねじ11(図4及び図5参照。図3において記載省略)で一体的に接合されている。外側ケース2,2と対向する内側ケース3の内向き舌片部3aの両面には、一個の内向き舌片部3aにつき表裏一枚ずつ(合計2枚)の円形形状の内レース5が装着されている(図4参照)。これらの内レース5は、内側ケース3上において同一PCDで(同一円周上に)、且つ周方向に均等に(内向き舌片部3aと同様、周方向に45度おきに)分割して局所的に配置されている。また、二つの外側ケースの内側面にはそれぞれ8枚の円形形状の外レース4が局所的に設けられている。これらの外レース4は、各外側ケース内側面において同一PCDで(同一円周上に)、且つ周方向に均等に、即ち周方向に45度おきに、分割して局所的に配置されている。また、全ての内レース5及び外レース4は同一径の円形形状とされている。図3及び図5に示すように、内向き舌片部3aの周方向幅は外レース4又は内レース5の直径と略等しくなっている。
【0033】
なお図3では、各部材の構成を見やすくするため、内側ケース3の一部を切除した図としている。また図3では、外レース4や内レース5、保持器ガイド8も適宜除外した図としている。また、外側ケース2の外側面の一部を覆うように設けられた後述のシールド10(図4参照)も除外した図としている。また図3乃至図5では、各玉6がいずれの方向にも移動していない中立の状態(以下、標準状態などという)における図である。
【0034】
そして、図4に示すように、標準状態では各内レース5と各外レース4がそれぞれ同一位置で軸方向に対向している。また、内側ケース3の内向き舌片部3aの裏表両面で内レース5の配置位置(位相)は同一としている。よって、二つの外側ケース2,2相互間における外レース4の設置位置(位相)も同一である。なお、図4に示すように、円板状の内外レース4,5は、その周縁にレース段差13を設けることにより軸方向外側面を凸状とする一方、各外側ケース2及び内側ケース3の内向き舌片部3aには、この凸部に対応する凹部を設け、これら凹凸を組み合わせることにより内外レース4,5を外側ケース2及び内側ケース3に取り付けている。
【0035】
標準状態では、円形の各内外レース5,4の中心に転動体である玉6が配置される。玉6は各内外レース対に対して1個づつ、合計16個が使用され、同一平面上に8個づつ2列に配置されているので、この軸受1は複列構造となっている。各玉6は個々に円筒形の保持器7に収容されている。また、各内レース5及び外レース4にはそれぞれリング状の保持器ガイド8が外嵌しており、かつこの保持器ガイド8は各内外レース4,5の軌道面よりも各玉6側に突出して設けられている。
【0036】
この保持器ガイド8があると、玉6を標準状態において円形の各内外レース5,4の中心に位置させることが容易となる。即ち、軸受1に予圧付加用ねじ(図示しない)等により軽予圧をかけた状態で径方向全体(全周)に亘って最大に相対移動させると、位置ズレした転動体は保持器ガイド8に係止されレース上を適宜滑りつつ位置調整がなされる。このように、保持器ガイド8により軸受1を組み立てたままの状態で、極めて簡便に各玉6の位置を調整できる。
【0037】
内外レース4,5は、玉6の各配置位置に分割して局所的に配置されているので、分割しない場合と比較して個々のレースを小さくすることができる。そうすると、レースの加工がしやすくなるので、軸受の大型化が容易となるとともに、加工コストが低減する。また、玉6と接触するレース部分は軸受用鋼等の鉄系金属とする一方、内側ケース及び外側ケースはアルミ合金等の軽金属を使用できるため軸受を軽量化でき、材料コストが低減する。軸受1が軽量化されると、この軸受1がサスペンション内蔵ホイールhに用いられた場合にホイール重量を低減することができ、ホイールh用として好適な軸受となる。また、軸受の大型化が容易であるので、大型のホイールにも対応が容易な軸受となる。
【0038】
標準状態において、内外レース4,5は全て同一円周15上(図5参照)に配置されるとともに、周方向に角度α(図5参照)おきに均等に分配されている。本実施形態では角度αは45度である。このようにすると、軸受1の支持点となる玉6が周方向及び径方向に均等に分配されるので、両方向のアキシャル荷重、及びモーメント荷重をより安定的に支持でき、また、転動体である各玉6にかかる負荷を均等化することができる。よって、サスペンション内蔵ホイールh内に使用された場合、走行中旋回時の横加速度(横G)などによりサスペンション内蔵ホイールhに作用する軸方向荷重を安定的に支持することができる。
【0039】
また、標準状態において、内外レース4,5は全て同一円周15上(図5参照)に配置され、さらに、内外レース4,5は全て同一径の円形形状であるので、分割して局所的に配置された各内外レース4,5における各玉6の移動可能範囲は、全て互いに等しくなっている。即ち、任意の各玉6がその移動可能範囲全体に亘って移動したとき、他の全ての玉6もそれぞれの移動可能範囲全体に亘って移動することとなる。このように、本実施形態では、複数の内外レース4,5の全ての大きさを最小としている。
【0040】
更に、本実施形態では、外側ケース2及び内側ケース3はいずれも円環状でかつ同心に配置したので、内側ケース3の内周面3cと、外側ケース2の外周面2cとの隙間は、全周で均一な幅を有する円環状となっている。加えて、各玉6の移動可能範囲も各内外レース4,5の円形形状に応じて円形範囲とされている。従って、この軸受1は、可動面内の全方位に対して一定幅の相対移動が可能となっており、また周方向に均等な構成の軸受1となっている。したがって、周方向の均等性が求められるホイール用の軸受として好適である。また、全ての内外レース4,5が同一径の円形であるので、各内外レース4,5を同一のレース部材とすることにより、全ての内外レース4,5が共通部材とされており、コスト低減に寄与する。
【0041】
図4に示すように、内側ケース3の円環部3bの軸方向末端には、この末端から径方向内側に向かって延びる円環状のシールド10が設けられている。このシールド10は円環状の薄い板であり、その軸方向位置は、外側ケース2の外面に対してほとんど隙間が無い状態で重なるような位置となっている。このシールド10は内側ケース3の円環部3bの軸方向末端に固定されており、外側ケース2とは固定されていない。よってシールド10は、外側ケース2の外側面と僅かな層状隙間を介して重なりつつ互いに可動面内で相対移動が可能であり、軸受1内に異物が侵入するのを抑制するのに役立つ。また、円環部3bの軸方向末端位置を外側ケース2の外側面の軸方向位置と略一致させることにより、かかるシールド10を設けることが可能となっている。
【0042】
このように、内側ケース3の円環部3bの軸方向末端位置と、外側ケース2の外側面の軸方向位置が略一致しているので、内側ケース3の円環部3bの内周面3cと、外側ケース2の外周面2cとは径方向で互いに対向している部分をもつ。従って、軸受の相対移動距離が大きくなれば互いに接触しうる位置関係にある。図4に示すように、この内側ケース3の内周面3cと外側ケース2の外周面2cとの間には、標準状態において径方向に距離Lの隙間が全周に亘って存在する。また、内側ケース3の内向き舌片部3aの径方向最内端面である内側ケース最内端面3dと、外側ケース2の連結部外周面2aについても、軸受の相対移動距離が大きくなれば互いに接触しうる状態にある。図4に示すように、これらの間には標準状態で径方向に距離Mの隙間が全周に亘って存在する。この距離Mは前記距離Lと略同一であり、ねじ11用のボルト穴の誤差分だけ距離Lよりも長くしている。これらの内側ケースと外側ケースの間の隙間により、相対移動可能範囲が生じている。
【0043】
一方、図4に示すように、標準状態において、玉8を収容する保持器7の外周面と、レースに外嵌する保持器ガイド8の内周面との間には、玉8を中心とした全周に距離Rの幅の隙間が存在する。この隙間の範囲により転動体である玉6の移動可能範囲が決まる。即ち、本実施形態では、内レース5及び外レース4の直径、玉8及び保持器7の外径、保持器ガイド8の内径等が、転動体である各玉8の移動可能範囲を決める要素となっている。
【0044】
本実施形態では、前記距離Rが、前記距離Lの半分となっている。即ち、次の式が成立している。
L=2R
これは、レースの相対移動距離に対して玉の移動距離が半分となることに対応させたものである。このように、本実施形態では、分割して配置された内外レース4,5における各玉6のそれぞれの移動可能範囲は、外側ケース2と内側ケース3との間の隙間生ずる前述の相対移動可能範囲に略対応させている。この結果、軸受1の偏心可能範囲は、外側ケース2と内側ケース3との間の隙間生ずる相対移動可能範囲と一致する。このようにすると、隙間距離Lが無くなるまで外側ケース2と内側ケース3とを相対移動させると、各玉6は隙間距離Rが無くなるまで移動することとなる。したがって、外側ケース2の外周面2cと内側ケース3との間に余分な隙間が無く、且つ、玉6が移動するための内外レース4,5間にも余分な隙間が無い。その結果、軸受1を小型化することができ、極めて限られたスペースであるホイール内に設置する軸受として極めて好適なものとなる。
【0045】
また、本実施形態では、距離Lと距離Mを略同一としていることから、ある径方向において距離Lが無くなるまで内側ケース3と外側ケース2とを相対移動させると、その径方向における距離Mも略無くなることとなる。隙間距離Lと隙間距離Mとの差が大きい場合は、これらのうち隙間距離が小さい方の隙間よって軸受1の偏心可能範囲が制約されてしまうが、両者を略同一としたことにより、軸受1を小型化しながら軸受1の偏心可能範囲を最大あるいは最大限とすることができる。よって、軸受1がサスペンション内蔵ホイールに用いられた場合、サスペンションとしてのストロークを大きくしながら、狭いホイール内に収容することが容易な軸受となる。また、距離Mを小さくできるので、円環状の外側ケース3の内径を大きくすることができ、軸受1をさらに軽量化することができる。よって、軸受1がサスペンション内蔵ホイールhに用いられた場合、ホイールhの軽量化に寄与する。
【0046】
なお、本実施形態では、内側ケース3に内向き舌片部3aを設け、この内向き舌片部3aに外レース4及び内レース5を装着している。このように内向き舌片部3aを設けているので、隣り合う内向き舌片部3a間には内側ケース3が存在せず、その分内側ケース3は軽量化されている。よって、軸受1も軽量化される。更に、内向き舌片部3aの周方向幅は外レース4及び内レース5の直径と略等しくされているので、内側ケース3の重量は最小限とされており、軸受1の軽量化に寄与している。
【0047】
本実施形態において、略ドーナツ状円板のシールド10は、軸受1の偏心可能範囲を狭くしないよう工夫されている。つまり、図4に示すように、シールド10の内周面から、外側ケース2の径方向内側付近に設けられたシールド用段差12までの径方向距離Tは、前記距離Lよりも大とされている。このようにすると、軸受1の偏心可能範囲がシールド10により規制されることがない。なお、シールド用段差12は、シールド10の厚みと略同一の深さとしており、軸受1の軸方向厚みが必要以上に大きくならないようにしている。
【0048】
各玉6を図4のような位置、即ち、標準状態において内外レース部4,5の中心位置に配置するには、予圧付加用ねじ等で外側ケース2と内側ケース3との間に軽予圧を与えた状態で、軸受1を偏心可能範囲の全体に亘って限界まで相対移動させればよい。このようにすると、位置がずれている玉6は、保持器ガイド8によって滑り位置調整がなされる。その後、所定のトルクで予圧付加用ねじを締結すればよい。本発明では、各局在位置における玉6等の転動体がそれぞれPCD(ピッチ円径)を変えることなく、標準状態において内外レース4,5の中心に位置しているのが好ましい。しかし、アキシャル荷重等により転動体に偏荷重が作用して、一部の転動体がレースから浮いてしまう等により特定の玉6が位置ズレすることもありうる。この場合でも、保持器ガイド8を設けることにより、前述のように軸受1を組み立てたままの状態で各玉6の位置を修正することができる。また、標準状態における各玉6のPCDを維持するためには、予圧付加用ねじ等により内外部材間に予圧を与えて、転動体である各玉6と内外レース4,5間の滑りを抑えるようにしておくのがよい。
【0049】
以上のような複列偏心スラスト軸受1を備えた本発明のサスペンション内蔵ホイールhは、この軸受1が前記外側ホイール部材と前記内側ホイール部材との間に介装されており、この軸受1が、これらのホイール部材間に作用する軸方向荷重を支持しつつ当該ホイール部材間での偏心相対移動を可能としている。即ち、図1に示すように、この軸受1の外側ケース2の内周面2dに内側ホイール部材h4の外周面h12が当接しつつ固定されるとともに、軸受1の内側ケース3の外周面3eに外側ホイール部材h2の内周面h11が当接しつつ固定されている。
【0050】
このホイールhは、アキシャル荷重およびモーメント荷重を支持できる軸受1を、外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4との間に取り付けているので、軸方向荷重をも支持できるホイールhとなっている。乗用車のタイヤはキャンバー角を有し、またホイールhにはオフセット(ホイールhの軸方向中心面とホイール取り付け面との軸方向距離)h14があるため、車が静止している状態であっても、ホイールhの外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4との間には、車重により軸方向荷重(アキシャル荷重及びモーメント荷重)が作用する。さらに、車両が旋回する際には車に横加速度(横G)が作用するため、ホイールhに作用する軸方向荷重は極めて大きくなる。このような軸方向荷重を支持できるホイールhとしたことにより、実用性のあるサスペンション内蔵ホイールhとなっている。
【0051】
このようなホイールhとすると、サスペンションをホイールhに内蔵できるので、ホイールh外におけるサスペンションの設置スペースが減少するか又は無くなる。よって、その分の空間を、車の居住空間や、電気自動車のバッテリー設置空間等として利用することができる。また、このサスペンション内蔵ホイールhのばね下重量(ばね下荷重)は、おおよそタイヤ及び外側ホイール部材のみとなり、従来のようにホイール外にのみサスペンションが設けられている場合と比べてばね下重量を低下させることができる。したがって、路面の不整や凹凸等による外乱を吸収でき、車両の乗り心地を向上させることができる。また、軸方向荷重を支持できるホイールhとなるので、ホイールとして実用性を有するものとなる。
【0052】
このホイールhでは、弾性部材である圧縮コイルスプリングh5が、ホイールの表裏にそれぞれ6個ずつ、同一の円周にその長手方向が略沿うように並べられて設置されている。また表裏合計で12個の圧縮コイルスプリングh5は全て同一である。このようにすると、ホイールの表面及び裏面のそれぞれにおいて、複数の弾性部材が周方向に均等間隔に配置される。
さらに、この設置位置の位相が表裏間で(360/6)度、即ち60度相違している。この位相の相違について以下に詳細に説明する。
【0053】
前述の通り、図2に示す如く、ホイールhの表側において、外側ホイール部材h2に三カ所設けられた外側連結位置に三個の表側内向き突起h7があり、これらは周方向に均等間隔で(つまり120度おきに)配置されている。また、内側ホイール部材h4の三カ所の内側連結位置にも三個の表側外向き突起h9が設けられ、これらは周方向に均等間隔で(つまり120度おきに)配置されている。これら表側内向き突起h7と表側外向き突起h9とは位相が60度相違するため、突起h7と突起h9が60度おきに交互に配置される。この突起h7とh9とが圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6で連結されており、その結果、6個の圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6が、その長手方向が同一の円周に略沿うように並べられて設置されることとなる。
【0054】
図示しないが、ホイールhの裏側においても、表側と同様、三カ所の外側連結位置に設けた三個の裏側内向き突起h8と、三カ所の内側連結位置に設けた三個の裏側外向き突起h10が交互に60度おきに配置されている。ただし、表側と裏側では位相が(360/6)度、即ち60度だけ異なる。その結果、図1の断面図で分かるように、ホイール表側の外側連結位置に位置する表側内向き突起h7と、ホイール裏側の内側連結位置に位置する裏側外向き突起h10が同位相となる。また、ホイール表側の内側連結位置に位置する表側外向き突起h9と、ホイール裏側の外側連結位置に位置する裏側内向き突起h8とが同位相となる。
【0055】
つまり、ホイールの表側において内側ホイール部材h4と圧縮コイルスプリングh5とが連結している位置と同位相の位置で、ホイールの裏側では、外側ホイール部材h2と圧縮コイルスプリングh5とが連結している。また、ホイールの表側において外側ホイール部材h2と圧縮コイルスプリングh5とが連結している位置と同位相の位置で、ホイールの裏側では、内側ホイール部材h4と圧縮コイルスプリングh5とが連結している。このように、ホイールの表裏で、内外のホイール部材h2,h4と圧縮コイルスプリングh5との連結関係が互い違いになっている。よって、外側ホイール部材h2及び内側ホイール部材h4に作用する力が周方向で均等化され、周方向により均一なサスペンションとすることができる。
【0056】
さらに、図1及び図2に示すように、このホイールhでは、表側外向き突起h9及び裏側外向き突起h10の径方向外側に、合計6個の緩衝材h15を設けている。前述のように、表側外向き突起h9と裏側外向き突起h10はそれぞれ120度おきに配置され且つ位相が60度相違するから、6個の緩衝材h15は、ホイールhの表裏を合わせて考えると、60度おきに均等に設けられている。この緩衝材h15により、外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4とが直接接触することを防止される。よって、強い衝撃がホイールに作用して、サスペンションのストロークを超える偏心が起こった場合でも、外側ホイール部材と内側ホイール部材が接触することが無くなり、衝撃を緩和することができる。この緩衝材h15は、ゴム等の弾性部材からなるものが好適である。
【0057】
本発明のホイールhでは、前記の実施形態の如く、外側ホイール部材h2の周方向に等間隔なPカ所(Pは2以上の整数)の外側連結位置と、前記内側ホイール部材h4の周方向に等間隔なPカ所(Pは2以上の整数)の内側連結位置との位相を360/(2P)度相違させ、周方向に隣り合う外側連結位置と内側連結位置とを圧縮コイルスプリングh5等の弾性部材で連結することにより、2P個の圧縮コイルスプリングh5を同一の円周に略沿って周方向に等間隔で配置した構成としてもよい。この場合更に、かかる構成をホイールの表側と裏側のそれぞれに設け、この表側と裏側とで位相が360/(2P)度相違している構成としてもよい。前述の実施形態におけるサスペンション内蔵ホイールhではPを3としたが、Pは2以上の整数であればよい。Pが小であると、周方向の不均一性が過大となる。一方、Pが大であると、周方向の均一性は高まるが、個々の弾性部材が小型化し、サスペンションとしてのストロークが小さくなる。したがって、Pは3以上6以下がより好ましい。
【0058】
サスペンション内蔵ホイールhのサスペンションとしてのストロークは、前述の軸受1の偏心可能距離Lにより左右され、この距離Lより大きくすることはできない。よって、サスペンションのストロークを大きくしてサスペンションとしての性能を向上させるためには、軸受1の偏心可能距離Lを大きくすることが必要となる。したがって、軸受を小型化しつつその偏心可能範囲をより広くすることができる本発明の軸受1は、サスペンション内蔵ホイール用に使用され、極めて限られたスペースのホイール内に収容される軸受として極めて好適なものとなる。また、サスペンション内蔵ホイールhのストロークを、軸受1の偏心可能距離Lよりも小さくしておけば、軸受1はその構成部品間で干渉することがないので好ましい。
【0059】
このサスペンション内蔵ホイールhでは、サスペンションとしてのストロークを±10mmとしている。車両のサスペンションがこのサスペンション内蔵ホイールhのみであり、ホイール外のサスペンションと兼用しない場合は、ストロークを±10mm以上とするのが好ましい。±10mm程度以上のストロークが確保できれば、通常の路面を走行する車両のサスペンションとして実用性を有するものとなるからである。±10mmのストロークを確保するため、偏心スラスト軸受1における偏心可能距離Lは10mmより大きくしている。そうすると、軸受1はその構成部品間で干渉することがない。
【0060】
このように、サスペンション内蔵ホイールhのサスペンションとしての機能を高めるためには、そのストロークを一定以上確保する必要がある。このためには、軸受1の偏心可能距離Lを、前記ストローク以上とすることが求められる。一方、ホイール内部のスペースは極めて限定されたものであるため、ホイール内部に収容する偏心スラスト軸受1においてその偏心可能範囲Lを確保するのは非常に困難となる。したがって、軸受の小型化を可能としつつ偏心可能範囲を最大限とできる本発明の偏心スラスト軸受1は、サスペンション内蔵ホイールhに取り付ける軸受として極めて好適なものとなる。
【0061】
サスペンション内蔵ホイールhは、車両におけるサスペンションの全てをホイール内に収容しうるものであるが、サスペンション内蔵ホイールhと、ホイール外のサスペンションとを兼用するものであってもよい。この場合は、ホイール外のサスペンションが無い場合と比べて、サスペンションの設置空間が減少する効果は少ない。ただし、例えば、ホイール外のサスペンションには比較的振幅の大きい振動を吸収させる一方、サスペンション内蔵ホイールには比較的振幅の小さい高周波の振動を吸収させることにより、全体として広汎な領域の振動を吸収しうるという効果を得ることも可能である。
【0062】
本発明の軸受において、保持器7及び保持器ガイド8は本発明では必ずしも必要ではないが、本実施形態のように、各玉6を収容する保持器7を用いると、転動体周辺に存在する潤滑油やグリース等の潤滑剤の流出を抑制できる。前述のように、保持器ガイド8により玉6の位置調整が容易となるが、さらに、保持器7を設けることによりこの位置調整が確実となる。即ち、保持器7の外周面と保持器ガイド8の内周面とが当接することにより、位置調整の際により確実に玉6を滑らすことができる。また、保持器ガイド8により対向するレース4,5間への異物の侵入を抑制することが可能となる。
【0063】
本発明の軸受では、転動体の形状は問わないが、すべての転動体を玉6とすれば、軌道面の全方位に対して転がり抵抗の少ない軸受とすることができる点で好ましい。また、転動体の数は特に限定されず、一組の内外レース4,5あたり複数の転動体を設けてもよいし、本実施形態のように、一組の内外レース4,5あたり一個の転動体としてもよい。一組の内外レース4,5あたり一個の転動体が最低限必要である。
【0064】
本発明の軸受では、各外側ケース2の内側面および内側ケース3の両外側ケース対向面のそれぞれにおいて、内外レース4,5はそれぞれ周方向に沿って3カ所以上に分割して局所的に配置する。従って、内側ケース3の表裏で同一位置に設けた内レース5を表裏一体とすることなく、本実施形態のように、内側ケース3の両外側ケース対向面にそれぞれ別個の内レース5を設けた場合には、内レース5は合計6個以上必要である。これらの内外レース4,5相互間のそれぞれに玉6等の転動体が挟持されているので、内側ケース3及び外側ケース2はそれぞれ周方向に沿った3点以上で支持されるため、両方向のアキシャル荷重及びモーメント荷重を安定的に支持できる。
【0065】
各内外レース4,5および各玉6は周方向の全周にわたって分散しているが、本発明はこのような構成に限定されない。ただし、内外レース4,5を、各外側ケース2,2の内側面及び内側ケース3の両外側ケース対向面のそれぞれにおいて、周方向で180度(半円)よりも大きい周方向範囲に3カ所以上に分散させて設けると、アキシャル荷重及びモーメント荷重をより安定的に支持できる。特に大きなモーメント荷重を支持できるので好ましい。
【0066】
本実施形態の軸受1では、外側ケース2及び内側ケース3のそれぞれ8カ所に内外レース4,5を設けているが、特に本実施形態のように、内外レース4,5を全て同一PCDで(図5に記載の面内において同一円周15上に)配置し且つ周方向に均等に分配する場合には、内側ケース3及び外側ケース2のそれぞれにおいて、内外レース4,5を3個〜8個程度に分割して局所的に配置するのが好ましい。2個以下では外側ケース2を安定的に支持できず、多すぎると各レースの大きさが小さくなって転動体の移動可能範囲が小さくなりすぎる場合がある他、部材の点数が増加し且つ構造が複雑化する傾向となってコストが高くなる。
【0067】
本実施形態の軸受1では、距離Lを距離Rの2倍とし、且つ、距離Mも距離Rの略2倍としたが、距離Mを距離Rの略2倍としない場合でも、距離Lを距離Rの略2倍とすると、各玉6の移動可能範囲が軸受1の偏心可能範囲と略対応し、各内外レース4,5の大きさを最小限とすることができる。且つ、内側ケース3の外径を最小限とすることができる。よって、極めて限られたスペースであるホイールh内に設置する軸受として極めて好適なものとなる。
【0068】
本実施形態の軸受1では、図4に示すように、内側ケース3の両外側ケース対向面に設けられた内レース5,5は、内側ケース3の表裏において同一の位置(同一の位相)となるように設けられている。その結果、これら内レース5,5に対向する二つの外側ケース2,2に設けられた外レース4も、標準状態においては、これら内レース5,5と同一の位置(同一の位相)で揃った構成となっている。本発明はこのような構成に限定されず、内レース5の位置(位相)が内側ケース3の表裏で異なっていてもよい。
【0069】
軸受1では、内側ケース3に内向き舌片部3aを設けて、この内向き舌片部3aに内レース5を取り付けたが、本発明の軸受は内向き舌片部3aを設ける態様に限定されず、例えば、内側ケース3をドーナツ型円板状として、この円板の両面に局所的に内レース5を配置してもよい。ただし、前述のように、内向き舌片部3aを有する構成とすることにより、内側ケース3が軽量化される。
【0070】
なお、本発明の軸受は、外側ケース又は内側ケースが円形(円環状)のものに限定されず、例えば多角形であってもよい。多角形の場合、本願にいう径方向及び周方向とは、この多角形の外接円における径方向及び周方向を意味するものとする。ただし、この軸受がサスペンション内蔵ホイールhに用いられる場合には、外側ケース又は内側ケースが円形(円環状)であれば、円形のホイールhに取り付けることが容易となり、また周方向で均一性の高いホイールhとすることが可能となるので好ましい。
【0071】
【発明の効果】
以上のような本発明によれば、両方向のアキシャル荷重及びモーメント荷重が支持でき、サスペンション内蔵ホイールに取り付け可能で且つこのホイール用の軸受として好適な複列の偏心スラスト軸受と、この軸受が装着されて軸方向荷重が支持でき且つサスペンションの設置スペースを減らすことのできるサスペンション内蔵ホイールとを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるサスペンション内蔵ホイールの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態であるサスペンション内蔵ホイールの側面図である。
【図3】図1のサスペンション内蔵ホイールに取り付けられている偏心スラスト軸受の構成を示す分解斜視図である。
【図4】図1のサスペンション内蔵ホイールに取り付けられている偏心スラスト軸受の、軸方向断面の断面図である。
【図5】図4のA−A断面位置から軸受内部をみた要部正面図である。
【符号の説明】
h サスペンション内蔵ホイール
h1 リム部
h2 外側ホイール部材
h3 ディスク部
h4 内側ホイール部材
h5 圧縮コイルスプリング
h6 ダンパー
h15 緩衝材
1 軸受
2 外側ケース
3 内側ケース
4 外レース
5 内レース
6 玉
7 保持器
8 保持器ガイド
L 内側ケースの内周面と外側ケースの外周面との間の径方向隙間距離
M 内側ケース最内端面と、外側ケースの連結部外周面との径方向隙間距離
R 玉を収容する保持器の外周面と、保持器ガイドの内周面との隙間距離
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホイール内にサスペンションを備えたサスペンション内蔵ホイール及びこのホイールに取り付けることができる複列の偏心スラスト軸受に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車等に用いられているサスペンションは、一般的に、スプリング等の弾性部材とダンパー(ショックアブソーバー)を備えるものであり、車体を支えつつ路面からの振動を吸収する役割を果たす。このサスペンションの形式には、ストラット式やウィッシュボーン式等種々のものが知られているが、これらはいずれもホイール内部に収容されるものではなく、ホイール外に設置されていた。そのため、ホイール外においてサスペンションの設置空間が必要となり、車内の居住性を犠牲にしていた。例えば、比較的構造が単純なストラット式のサスペンションであっても、スプリングやショックアブソーバーがホイール外に存在し、タイヤハウス内で縦向きに置かれていた為、車内スペースを狭くしていた。また、特に電気自動車では、バッテリーの設置空間を大きくすることにより、バッテリーを大型化してその容量を増大させることが極めて重要であるが、かかるサスペンションの存在がバッテリ−大型化の妨げになっていた。
【0003】
かかる問題に対処すべく、サスペンションをホイールに内蔵したサスペンション内蔵ホイールが提案されている。通常のホイールでは、タイヤが装着されるリム部分と、車輪軸と連結するディスク部とが一体化されているのに対し、このサスペンション内蔵ホイールでは、リム部とディスク部とが分割した構造となっている。そして、それらの間にゴム等の弾性体及び小型のダンパーを介在させた構造とすることにより、ホイール内にサスペンションを収容している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2003−34103号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、かかるサスペンション内蔵ホイールでは、回転軸に垂直な方向の荷重に耐えることはできるとしても、軸方向の荷重に耐えることができないため、実用に供し得るものとはならない。即ち、乗用車のタイヤはキャンバー角を有し、またホイールには通常オフセット(ホイールの軸方向中心面とホイール取り付け面との軸方向距離)があるため、車が静止している状態であっても、ホイールのリム部とディスク部の間には、車重により軸方向の荷重(アキシャル荷重及びモーメント荷重)が作用する。さらに、車が旋回する際には車に横加速度(横G)が作用するため、ホイールに作用する軸方向荷重は極めて大きくなる。それにもかかわらず、前述のような従来のサスペンション内蔵ホイールではこの軸方向荷重に耐えるような構造は備えていないので、実用性が無い。
【0006】
ここで、かかるサスペンション内蔵ホイールにおいて、このような軸方向荷重を支持可能とするために、偏心可能で且つ軸方向荷重を支持できる偏心スラスト軸受を用いることが考えられる。即ち、偏心スラスト軸受の対向するレースのそれぞれをリム部及びディスク部に固定することにより、軸方向荷重を支持することが考えられる。ただしこの場合、この偏心スラスト軸受は一方向のアキシャル荷重を支持するだけではその役割を果たし得ず、両方向のアキシャル荷重を支持可能とする必要がある。
【0007】
両方向のアキシャル荷重を支持できるようにするためには、転動体を複列(複式)とした複列スラスト軸受とする必要がある。従来、複列偏心スラスト軸受としては、一枚の内側レースと、この内側レースの両面(両外側ケース対向面)に対して対向する2枚の外側レースと、これらレース間に介在する2列の転動体からなるものが公然実施されている。この複列偏心スラスト軸受では、2枚の外側レースを備え、2列の転動体がそれぞれ互いに逆方向のアキシャル荷重を支持することにより、両方向のアキシャル荷重を支持できるようになっている。
【0008】
しかし、このような従来型の複列偏心スラスト軸受では、レース部分が大きいため、レース軌道面の平面度を確保するのが困難となる等、その加工が極めて困難となる場合があり、軸受の大型化を行うのが容易でなく、またコストが高くなっていた。さらに、軸受用鋼等の鉄系金属で作製されるレース部分が大きいため軸受が重くなり、軽量化が困難であるという問題もあった。そのため、この軸受がサスペンション内蔵ホイールに用いられると、ホイールの重量が大きくなったり、コストが高くなる等の問題があった。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、両方向のアキシャル荷重及びモーメント荷重が支持でき、サスペンション内蔵ホイールに取り付け可能で且つこのホイール用の軸受として好適な複列の偏心スラスト軸受と、この軸受が装着されて軸方向荷重が支持でき且つサスペンションの設置スペースを減らすことのできるサスペンション内蔵ホイールとを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、本発明では、タイヤが装着されるリム部を含む外側ホイール部材と、車輪軸と連結するディスク部を含む内側ホイール部材と、これらホイール部材間に介装された弾性部材と、を備えるサスペンション内蔵ホイールに取り付けられ、これらのホイール部材間に作用する軸方向荷重を支持しつつ当該ホイール部材間での偏心相対移動を可能とする偏心スラスト軸受であって、互いに軸方向に対向して配置され且つ相互に一体的に接合した二つの外側ケースと、これらの外側ケース間に介在する内側ケースとを有し、前記内側ケースの両外側ケース対向面のそれぞれには、周方向に沿って分割して配置された3個以上の内レースが局所的に設けられるとともに、前記二つの外側ケースのそれぞれには、前記各内レースに対向する位置に分割して配置された3個以上の外レースが局所的に設けられ、且つ対向した前記内レースと前記外レースとの間のそれぞれに転動体が挟持されており、前記分割して配置された各レースにおける前記各転動体の移動可能範囲は、全て互いに略等しいことを特徴とする複列偏心スラスト軸受としている。
【0011】
このようにすると、レースが分割されて局所的に配置されているので、個々のレースを小さくすることができ、個々のレースの加工が容易となる。レースは周方向に沿って3個以上設けられており、各レース間に転動体が挟持されていることから、内側ケースと外側ケースは周方向に沿った3カ所以上で支持されることとなり、アキシャル荷重とモーメント荷重が支持可能となる。また、転動体と接触するレース以外の部分である内側ケース及び外側ケースは、レースと別体であるので、軸受用鋼等の鉄系金属でなくアルミ合金等の低比重金属や樹脂等を使用でき軸受を軽量化できる。さらに、分割して局所的に配置された各レースにおける前記各転動体の移動可能範囲は、全て互いに略等しいので、任意の転動体が移動可能範囲全体亘って移動したとき、他の全ての転動体もほぼ移動可能範囲全体に移動することとなる。レースの大きさは転動体の移動可能範囲を決定する要素となるが、このように各転動体の移動可能範囲を全て互いに略等しくすることにより、複数のレースのうちの一部を不必要に大きくすることが無く、全てのレースを最小あるいは最小限とすることができる。また、以上のような構成とした場合、軸受の各部材が分離せず、組み立てられた軸受単体として供給することが可能である。
【0012】
この軸受において、前記内側ケースと前記外側ケースとの間の隙間により生ずる相対移動可能範囲が、前記転動体の移動可能範囲に略対応している構成とするのが好ましい。このようにすると、内側ケースと外側ケースの間の隙間が無くなるまで両者を相対移動させると、転動体もレース上に設けられた隙間が略無くなるまで移動することとなる。よって、余分な隙間が無くなるか又は最小限となり、結果として、軸受を小型化しながら偏心可能範囲を大きくすることができる。
【0013】
前記内側ケース及び外側ケースの各面の各内外レースは、当該各面において全て同一PCDで(同一円周上に)配置されるとともに、周方向に均等に分配されている構成としてもよい。このようにすると、軸受の支持点となる転動体が周方向及び径方向に均等に分配されるので、両方向のアキシャル荷重、及び、アキシャル荷重の作用点が径方向で相違することにより生ずるモーメント荷重を、より安定的に支持できる。また各転動体にかかる負荷も均等化できるため、軸受全体としての負荷容量も大きくできる。この場合、前記各内外レースは全て同一径の円形形状であり、且つ前記外側ケース及び内側ケースは円環状である構成とすると、周方向に均等な構成の軸受となり、可動面内の全方位に対して一定幅で相対移動可能な軸受とすることができる。また、全ての内外レースが同一径の円形であるので、レース部材を共通化することができる。
【0014】
この軸受において、前記各内外レースの周囲に設けられた保持器ガイドを有する構成とすることもできる。このようにすると、転動体の位置調整が容易となる。即ち、転動体の位置をレース上の最適位置に調整するのは容易ではないが、軸受に軽予圧をかけた状態で径方向全体(全周)に亘って最大に相対移動させることにより、位置ズレした転動体は保持器ガイドに係止されレース上を適宜滑りつつ位置調整がなされる。よって、転動体をレース上の最適な位置に配置することが容易となる。また、対向するレース間への異物の侵入、及び潤滑油やグリース等の潤滑剤の流出を抑制できるため、軸受全体のシール機能も有する。
【0015】
また、本発明のサスペンション内蔵ホイールは、前記の複列偏心スラスト軸受と前記弾性部材とが、前記外側ホイール部材と前記内側ホイール部材との間に介装されており、この軸受が、これらのホイール部材間に作用する軸方向荷重を支持しつつ当該ホイール部材間での偏心相対移動を可能としていることを特徴とする。このようなホイールとすると、ホイール内にサスペンションが収容される分、ホイール外におけるサスペンションの設置スペースを減らすことができ、さらには、ばね下重量を低下させることができる。また、軸方向荷重を支持できるホイールとなるので、実用性を有するホイールとすることができる。
【0016】
このホイールでは、前記外側ホイール部材と前記内側ホイール部材との間にダンパーが介装されている構成とするのが好ましい。このようにすると、弾性部材に加えてダンパーが装着されたサスペンションとなるので、弾性部材の伸縮を早期に減衰させることができる。
【0017】
また、前記外側ホイール部材の周方向に等間隔なPカ所(Pは2以上の整数)の外側連結位置と、前記内側ホイール部材の周方向に等間隔なPカ所(Pは2以上の整数)の内側連結位置との位相を360/(2P)度相違させ、周方向に隣り合う外側連結位置と内側連結位置とを弾性部材で連結することにより、2P個の弾性部材を同一の円周に略沿って周方向に等間隔で配置した構成としてもよい。このようにすると、2P個の弾性部材を周方向に均等に配置することができる。また、外側ホイール部材と弾性部材とが連結する外側連結位置と、内側ホイール部材と弾性部材とが連結する内側連結位置が交互に且つ周方向に等間隔で配置されるので、弾性部材から各ホイール部材に作用する力が周方向で均等化される。
【0018】
この場合更に、かかる構成をホイールの表側と裏側のそれぞれに設け、この表側と裏側とで位相が360/(2P)度相違している構成としてもよい。このようにすると、ホイールの表面及び裏面のそれぞれにおいて、複数の弾性部材が周方向に均等間隔に配置される。さらに、表裏で位相を360/(2P)度相違させているので、ホイール表側の内側連結位置とホイール裏側の外側連結位置とが同位相となり、ホイール表側の外側連結位置とホイール裏側の内側連結位置とが同位相となる。よって、弾性部材から各ホイール部材に作用する力が周方向で更に均等化される。
【0019】
さらに、前記外側ホイール部材と前記内側ホイール部材とが直接接触することを防止する緩衝材を設置するホイールとするのが好ましい。このようにすると、強い衝撃がホイールに作用して、サスペンションのストロークを超える偏心が起こった場合でも、外側ホイール部材と内側ホイール部材が接触することが無くなり、衝撃を緩和することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態である複列偏心スラスト軸受1が取り付けられたサスペンション内蔵ホイールhの断面図であり、図2は、このサスペンション内蔵ホイールhの側面図(車両に取り付けた場合における外側から見た図)である。図1は、図2のA−A線における断面図である。このホイールhは、通常のホイールと異なり、タイヤ(図示しない)が装着されるリム部h1を含む外側ホイール部材h2と、車輪軸(図示しない)と連結するためのボルト孔h20(図2参照。図1において記載省略)を有するディスク部h3を含む内側ホイール部材h4とが分割されている。そして、これら外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4との間には、両部材h2及びh4間に作用する軸方向荷重を支持しつつ、両部材h2及びh4間の偏心相対移動を可能とする偏心スラスト軸受1が取り付けられている。
【0021】
このホイールhにサスペンションとしての機能を持たせるべく、外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4との間には、弾性部材である圧縮コイルスプリングh5が介装されている(図2参照)。圧縮コイルスプリングh5は、ホイールhの表裏に6個ずつ、合計12個使用されている。図2の側面図には、ホイールhの表側に設置された6個のスプリングが示されている。さらに、このサスペンション内蔵ホイールhでは、従来のストラット式サスペンションと同様、ダンパーh6が各圧縮コイルスプリングh5の内側に設置され、弾性部材の伸縮を早期に減衰させることができるようにされている。
【0022】
ダンパーh6は、全ての圧縮コイルスプリングh5内部に設置されているので、その数は圧縮コイルスプリングh5と同じく、ホイールhの表裏に6個ずつ、合計12個である。これら圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6は、図2に示すように、その長手方向が円周に略沿った方向で並べられつつ設置されている。なお、図2においては一部の圧縮コイルスプリングh5の記載を一部欠截してダンパーh6を見やすいようにしている。圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6のそれぞれは、従来のサスペンションに用いられているものと同様の構造で、その大きさを小型化したものである。
【0023】
これら圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6を介装するために、外側ホイール部材h2及び内側ホイール部材h4にはそれぞれ突起htが設けられ、この突起htにおいて圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6と連結している。外側ホイール部材h2には、その内周面(タイヤが装着される面と反対の面)h11から径方向内向きに突出する突起htが設けられており、ホイールhの表側(ホイールhが車両に装着された場合における軸方向外側寄り)に設けられた表側内向き突起h7と、ホイールhの裏側(ホイールhが車両に装着された場合における軸方向内側寄り)に設けられた裏側内向き突起h8とがある。
【0024】
一方、内側ホイール部材h4には、その外周面(ディスク部h3以外の部分である円筒部分の外周面)h12から径方向外向きに突出する突起htが設けられており、ホイールhの表側(ホイールhが車両に装着された場合における軸方向外側寄り)に設けられた表側外向き突起h9と、ホイールhの裏側(ホイールhが車両に装着された場合における軸方向内側寄り)に設けられた裏側外向き突起h10とがある。
【0025】
各圧縮コイルスプリングh5の両端にはバネ受け板h16が設けられている(図2参照)。このバネ受け板h16は、圧縮コイルスプリングh5の長手方向に対して垂直な向きに設置されており、圧縮コイルスプリングh5の両端はこのバネ受け板h16の一面に固定されている。そして、ダンパーh6の両端も同じくバネ受け板h16の一面に固定されている。また、バネ受け板h16の他面(圧縮コイルスプリングh5が固定された面の反対面)には、軸着用リングh17が突設されている(図1参照。図2において図示されない。)。一方、図1に示すように、各突起h7〜h10は、それぞれ軸方向中央部に隙間を有する構造となっており、この隙間に軸着用リングh17が挿入されている(図1参照)。そして、固定ねじh21が、各突起h7〜h10と軸着用リングh17とを貫通することにより、軸着用リングh17は各突起h7〜h10に軸着されている。なお、軸止用リングh17と固定ねじh21との間にはブッシュh18が介在している(図1参照)。以上のような構成により、圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6は、バネ受け板h16を介して外側ホイール部材h2及び内側ホイール部材h4と連結している。
【0026】
図2に示すように、各突起h7〜h10は、一つの突起につき二つの圧縮コイルスプリングh5(及びダンパーh6)と連結している。そのようにすることで、隣り合った表側内向き突起h7と表側外向き突起h9(及び、図示しないが、隣り合った裏側内向き突起h8と裏側外向き突起h10)とが、圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6により連結される。表側内向き突起h7と表側外向き突起h9とは、周方向に等間隔で交互に配置されているので、6個の圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6は、同一の円周に略沿って周方向に等間隔で配置されることとなる。
【0027】
ここで、外側ホイール部材h2と圧縮コイルスプリングh5とが連結する位置を、外側連結位置とする。本実施形態では、表側内向き突起h7及び裏側内向き突起h8の設置位置が外側連結位置となる。また、内側ホイール部材h4と圧縮コイルスプリングh5とが連結する位置を内側連結位置とする。本実施形態では、表側外向き突起h9と裏側外向き突起h10の設置位置が内側連結位置となる。本実施形態では、前述のように、周方向に隣り合った表側内向き突起h7と表側外向き突起h9(及び、図示しないが、周方向に隣り合った裏側内向き突起h8と裏側外向き突起h10)とが、圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6により連結されているので、周方向に隣り合う外側連結位置と内側連結位置とが弾性部材である圧縮コイルスプリングh5で連結されていることになる。
【0028】
このように、偏心スラスト軸受1を挟んだホイール1の表側と裏側の両方に各突起h7〜h10を設け、圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6をサスペンション内蔵ホイールhの表裏両面に設置しているので、圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6の設置個数を多くすることができ、サスペンションとしての性能(振動吸収性能、振動減衰性能など)をより高めることができるとともに、耐久性を向上させることができる。
【0029】
このサスペンション内蔵ホイールhは、外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4とが偏心相対移動をし、この偏心相対移動に伴って圧縮コイルスプリングh5が伸縮することにより、衝撃が緩和され、サスペンションとしての機能を果たす。更に、ダンパーh6により、圧縮コイルスプリングh5の急激な伸縮が抑制され、緩衝性が向上する。このように、外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4間との間の偏心相対移動によりサスペンション機能が発現するわけであるが、この偏心相対移動を可能としているのが、偏心スラスト軸受1である。
【0030】
図3は、この実施形態の軸受1の斜視図である。この斜視図は、軸受1が有する二つの外側ケース2のうちの一つが分解された分解斜視図となっており、さらに、軸受1の内部構造を分かりやすくするため一部の記載を適宜省略している。図4は、この軸受1の断面図(軸心から下半分は記載を省略)であり、その周方向位置は転動体である玉6の中心を通る位置としている。図5は、図2のA−A断面の位置から矢印方向に軸受を見た要部正面図(1/4周分の図)である。
【0031】
図3及び図4に示すように、この軸受1は、互いに軸方向に対向して配置された二つの円環状の外側ケース2,2と、これら二つの外側ケース2,2の間に介在する円環状の内側ケース3とを有している。内側ケース3は、円筒状の円環部3bと、この円環部3bの内周面3cから径方向内側に向かって延びる内向き舌片部3aよりなる。内向き舌片部3aは全部で8個であり、これら8個の内向き舌片部3aが周方向に等間隔をおいて(即ち45度おきに)設けられている。図4に示すように、この内向き舌片部3aの表裏両面(両外側ケース対向面)に二つの外側ケース2,2がそれぞれ対向している。
【0032】
二つの外側ケース2,2は同一形状で且つ内側ケース3に対して対称な向きに対向し、且つその内周側の縁部近傍において、周方向に等間隔をおいて設けられた複数個のねじ11(図4及び図5参照。図3において記載省略)で一体的に接合されている。外側ケース2,2と対向する内側ケース3の内向き舌片部3aの両面には、一個の内向き舌片部3aにつき表裏一枚ずつ(合計2枚)の円形形状の内レース5が装着されている(図4参照)。これらの内レース5は、内側ケース3上において同一PCDで(同一円周上に)、且つ周方向に均等に(内向き舌片部3aと同様、周方向に45度おきに)分割して局所的に配置されている。また、二つの外側ケースの内側面にはそれぞれ8枚の円形形状の外レース4が局所的に設けられている。これらの外レース4は、各外側ケース内側面において同一PCDで(同一円周上に)、且つ周方向に均等に、即ち周方向に45度おきに、分割して局所的に配置されている。また、全ての内レース5及び外レース4は同一径の円形形状とされている。図3及び図5に示すように、内向き舌片部3aの周方向幅は外レース4又は内レース5の直径と略等しくなっている。
【0033】
なお図3では、各部材の構成を見やすくするため、内側ケース3の一部を切除した図としている。また図3では、外レース4や内レース5、保持器ガイド8も適宜除外した図としている。また、外側ケース2の外側面の一部を覆うように設けられた後述のシールド10(図4参照)も除外した図としている。また図3乃至図5では、各玉6がいずれの方向にも移動していない中立の状態(以下、標準状態などという)における図である。
【0034】
そして、図4に示すように、標準状態では各内レース5と各外レース4がそれぞれ同一位置で軸方向に対向している。また、内側ケース3の内向き舌片部3aの裏表両面で内レース5の配置位置(位相)は同一としている。よって、二つの外側ケース2,2相互間における外レース4の設置位置(位相)も同一である。なお、図4に示すように、円板状の内外レース4,5は、その周縁にレース段差13を設けることにより軸方向外側面を凸状とする一方、各外側ケース2及び内側ケース3の内向き舌片部3aには、この凸部に対応する凹部を設け、これら凹凸を組み合わせることにより内外レース4,5を外側ケース2及び内側ケース3に取り付けている。
【0035】
標準状態では、円形の各内外レース5,4の中心に転動体である玉6が配置される。玉6は各内外レース対に対して1個づつ、合計16個が使用され、同一平面上に8個づつ2列に配置されているので、この軸受1は複列構造となっている。各玉6は個々に円筒形の保持器7に収容されている。また、各内レース5及び外レース4にはそれぞれリング状の保持器ガイド8が外嵌しており、かつこの保持器ガイド8は各内外レース4,5の軌道面よりも各玉6側に突出して設けられている。
【0036】
この保持器ガイド8があると、玉6を標準状態において円形の各内外レース5,4の中心に位置させることが容易となる。即ち、軸受1に予圧付加用ねじ(図示しない)等により軽予圧をかけた状態で径方向全体(全周)に亘って最大に相対移動させると、位置ズレした転動体は保持器ガイド8に係止されレース上を適宜滑りつつ位置調整がなされる。このように、保持器ガイド8により軸受1を組み立てたままの状態で、極めて簡便に各玉6の位置を調整できる。
【0037】
内外レース4,5は、玉6の各配置位置に分割して局所的に配置されているので、分割しない場合と比較して個々のレースを小さくすることができる。そうすると、レースの加工がしやすくなるので、軸受の大型化が容易となるとともに、加工コストが低減する。また、玉6と接触するレース部分は軸受用鋼等の鉄系金属とする一方、内側ケース及び外側ケースはアルミ合金等の軽金属を使用できるため軸受を軽量化でき、材料コストが低減する。軸受1が軽量化されると、この軸受1がサスペンション内蔵ホイールhに用いられた場合にホイール重量を低減することができ、ホイールh用として好適な軸受となる。また、軸受の大型化が容易であるので、大型のホイールにも対応が容易な軸受となる。
【0038】
標準状態において、内外レース4,5は全て同一円周15上(図5参照)に配置されるとともに、周方向に角度α(図5参照)おきに均等に分配されている。本実施形態では角度αは45度である。このようにすると、軸受1の支持点となる玉6が周方向及び径方向に均等に分配されるので、両方向のアキシャル荷重、及びモーメント荷重をより安定的に支持でき、また、転動体である各玉6にかかる負荷を均等化することができる。よって、サスペンション内蔵ホイールh内に使用された場合、走行中旋回時の横加速度(横G)などによりサスペンション内蔵ホイールhに作用する軸方向荷重を安定的に支持することができる。
【0039】
また、標準状態において、内外レース4,5は全て同一円周15上(図5参照)に配置され、さらに、内外レース4,5は全て同一径の円形形状であるので、分割して局所的に配置された各内外レース4,5における各玉6の移動可能範囲は、全て互いに等しくなっている。即ち、任意の各玉6がその移動可能範囲全体に亘って移動したとき、他の全ての玉6もそれぞれの移動可能範囲全体に亘って移動することとなる。このように、本実施形態では、複数の内外レース4,5の全ての大きさを最小としている。
【0040】
更に、本実施形態では、外側ケース2及び内側ケース3はいずれも円環状でかつ同心に配置したので、内側ケース3の内周面3cと、外側ケース2の外周面2cとの隙間は、全周で均一な幅を有する円環状となっている。加えて、各玉6の移動可能範囲も各内外レース4,5の円形形状に応じて円形範囲とされている。従って、この軸受1は、可動面内の全方位に対して一定幅の相対移動が可能となっており、また周方向に均等な構成の軸受1となっている。したがって、周方向の均等性が求められるホイール用の軸受として好適である。また、全ての内外レース4,5が同一径の円形であるので、各内外レース4,5を同一のレース部材とすることにより、全ての内外レース4,5が共通部材とされており、コスト低減に寄与する。
【0041】
図4に示すように、内側ケース3の円環部3bの軸方向末端には、この末端から径方向内側に向かって延びる円環状のシールド10が設けられている。このシールド10は円環状の薄い板であり、その軸方向位置は、外側ケース2の外面に対してほとんど隙間が無い状態で重なるような位置となっている。このシールド10は内側ケース3の円環部3bの軸方向末端に固定されており、外側ケース2とは固定されていない。よってシールド10は、外側ケース2の外側面と僅かな層状隙間を介して重なりつつ互いに可動面内で相対移動が可能であり、軸受1内に異物が侵入するのを抑制するのに役立つ。また、円環部3bの軸方向末端位置を外側ケース2の外側面の軸方向位置と略一致させることにより、かかるシールド10を設けることが可能となっている。
【0042】
このように、内側ケース3の円環部3bの軸方向末端位置と、外側ケース2の外側面の軸方向位置が略一致しているので、内側ケース3の円環部3bの内周面3cと、外側ケース2の外周面2cとは径方向で互いに対向している部分をもつ。従って、軸受の相対移動距離が大きくなれば互いに接触しうる位置関係にある。図4に示すように、この内側ケース3の内周面3cと外側ケース2の外周面2cとの間には、標準状態において径方向に距離Lの隙間が全周に亘って存在する。また、内側ケース3の内向き舌片部3aの径方向最内端面である内側ケース最内端面3dと、外側ケース2の連結部外周面2aについても、軸受の相対移動距離が大きくなれば互いに接触しうる状態にある。図4に示すように、これらの間には標準状態で径方向に距離Mの隙間が全周に亘って存在する。この距離Mは前記距離Lと略同一であり、ねじ11用のボルト穴の誤差分だけ距離Lよりも長くしている。これらの内側ケースと外側ケースの間の隙間により、相対移動可能範囲が生じている。
【0043】
一方、図4に示すように、標準状態において、玉8を収容する保持器7の外周面と、レースに外嵌する保持器ガイド8の内周面との間には、玉8を中心とした全周に距離Rの幅の隙間が存在する。この隙間の範囲により転動体である玉6の移動可能範囲が決まる。即ち、本実施形態では、内レース5及び外レース4の直径、玉8及び保持器7の外径、保持器ガイド8の内径等が、転動体である各玉8の移動可能範囲を決める要素となっている。
【0044】
本実施形態では、前記距離Rが、前記距離Lの半分となっている。即ち、次の式が成立している。
L=2R
これは、レースの相対移動距離に対して玉の移動距離が半分となることに対応させたものである。このように、本実施形態では、分割して配置された内外レース4,5における各玉6のそれぞれの移動可能範囲は、外側ケース2と内側ケース3との間の隙間生ずる前述の相対移動可能範囲に略対応させている。この結果、軸受1の偏心可能範囲は、外側ケース2と内側ケース3との間の隙間生ずる相対移動可能範囲と一致する。このようにすると、隙間距離Lが無くなるまで外側ケース2と内側ケース3とを相対移動させると、各玉6は隙間距離Rが無くなるまで移動することとなる。したがって、外側ケース2の外周面2cと内側ケース3との間に余分な隙間が無く、且つ、玉6が移動するための内外レース4,5間にも余分な隙間が無い。その結果、軸受1を小型化することができ、極めて限られたスペースであるホイール内に設置する軸受として極めて好適なものとなる。
【0045】
また、本実施形態では、距離Lと距離Mを略同一としていることから、ある径方向において距離Lが無くなるまで内側ケース3と外側ケース2とを相対移動させると、その径方向における距離Mも略無くなることとなる。隙間距離Lと隙間距離Mとの差が大きい場合は、これらのうち隙間距離が小さい方の隙間よって軸受1の偏心可能範囲が制約されてしまうが、両者を略同一としたことにより、軸受1を小型化しながら軸受1の偏心可能範囲を最大あるいは最大限とすることができる。よって、軸受1がサスペンション内蔵ホイールに用いられた場合、サスペンションとしてのストロークを大きくしながら、狭いホイール内に収容することが容易な軸受となる。また、距離Mを小さくできるので、円環状の外側ケース3の内径を大きくすることができ、軸受1をさらに軽量化することができる。よって、軸受1がサスペンション内蔵ホイールhに用いられた場合、ホイールhの軽量化に寄与する。
【0046】
なお、本実施形態では、内側ケース3に内向き舌片部3aを設け、この内向き舌片部3aに外レース4及び内レース5を装着している。このように内向き舌片部3aを設けているので、隣り合う内向き舌片部3a間には内側ケース3が存在せず、その分内側ケース3は軽量化されている。よって、軸受1も軽量化される。更に、内向き舌片部3aの周方向幅は外レース4及び内レース5の直径と略等しくされているので、内側ケース3の重量は最小限とされており、軸受1の軽量化に寄与している。
【0047】
本実施形態において、略ドーナツ状円板のシールド10は、軸受1の偏心可能範囲を狭くしないよう工夫されている。つまり、図4に示すように、シールド10の内周面から、外側ケース2の径方向内側付近に設けられたシールド用段差12までの径方向距離Tは、前記距離Lよりも大とされている。このようにすると、軸受1の偏心可能範囲がシールド10により規制されることがない。なお、シールド用段差12は、シールド10の厚みと略同一の深さとしており、軸受1の軸方向厚みが必要以上に大きくならないようにしている。
【0048】
各玉6を図4のような位置、即ち、標準状態において内外レース部4,5の中心位置に配置するには、予圧付加用ねじ等で外側ケース2と内側ケース3との間に軽予圧を与えた状態で、軸受1を偏心可能範囲の全体に亘って限界まで相対移動させればよい。このようにすると、位置がずれている玉6は、保持器ガイド8によって滑り位置調整がなされる。その後、所定のトルクで予圧付加用ねじを締結すればよい。本発明では、各局在位置における玉6等の転動体がそれぞれPCD(ピッチ円径)を変えることなく、標準状態において内外レース4,5の中心に位置しているのが好ましい。しかし、アキシャル荷重等により転動体に偏荷重が作用して、一部の転動体がレースから浮いてしまう等により特定の玉6が位置ズレすることもありうる。この場合でも、保持器ガイド8を設けることにより、前述のように軸受1を組み立てたままの状態で各玉6の位置を修正することができる。また、標準状態における各玉6のPCDを維持するためには、予圧付加用ねじ等により内外部材間に予圧を与えて、転動体である各玉6と内外レース4,5間の滑りを抑えるようにしておくのがよい。
【0049】
以上のような複列偏心スラスト軸受1を備えた本発明のサスペンション内蔵ホイールhは、この軸受1が前記外側ホイール部材と前記内側ホイール部材との間に介装されており、この軸受1が、これらのホイール部材間に作用する軸方向荷重を支持しつつ当該ホイール部材間での偏心相対移動を可能としている。即ち、図1に示すように、この軸受1の外側ケース2の内周面2dに内側ホイール部材h4の外周面h12が当接しつつ固定されるとともに、軸受1の内側ケース3の外周面3eに外側ホイール部材h2の内周面h11が当接しつつ固定されている。
【0050】
このホイールhは、アキシャル荷重およびモーメント荷重を支持できる軸受1を、外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4との間に取り付けているので、軸方向荷重をも支持できるホイールhとなっている。乗用車のタイヤはキャンバー角を有し、またホイールhにはオフセット(ホイールhの軸方向中心面とホイール取り付け面との軸方向距離)h14があるため、車が静止している状態であっても、ホイールhの外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4との間には、車重により軸方向荷重(アキシャル荷重及びモーメント荷重)が作用する。さらに、車両が旋回する際には車に横加速度(横G)が作用するため、ホイールhに作用する軸方向荷重は極めて大きくなる。このような軸方向荷重を支持できるホイールhとしたことにより、実用性のあるサスペンション内蔵ホイールhとなっている。
【0051】
このようなホイールhとすると、サスペンションをホイールhに内蔵できるので、ホイールh外におけるサスペンションの設置スペースが減少するか又は無くなる。よって、その分の空間を、車の居住空間や、電気自動車のバッテリー設置空間等として利用することができる。また、このサスペンション内蔵ホイールhのばね下重量(ばね下荷重)は、おおよそタイヤ及び外側ホイール部材のみとなり、従来のようにホイール外にのみサスペンションが設けられている場合と比べてばね下重量を低下させることができる。したがって、路面の不整や凹凸等による外乱を吸収でき、車両の乗り心地を向上させることができる。また、軸方向荷重を支持できるホイールhとなるので、ホイールとして実用性を有するものとなる。
【0052】
このホイールhでは、弾性部材である圧縮コイルスプリングh5が、ホイールの表裏にそれぞれ6個ずつ、同一の円周にその長手方向が略沿うように並べられて設置されている。また表裏合計で12個の圧縮コイルスプリングh5は全て同一である。このようにすると、ホイールの表面及び裏面のそれぞれにおいて、複数の弾性部材が周方向に均等間隔に配置される。
さらに、この設置位置の位相が表裏間で(360/6)度、即ち60度相違している。この位相の相違について以下に詳細に説明する。
【0053】
前述の通り、図2に示す如く、ホイールhの表側において、外側ホイール部材h2に三カ所設けられた外側連結位置に三個の表側内向き突起h7があり、これらは周方向に均等間隔で(つまり120度おきに)配置されている。また、内側ホイール部材h4の三カ所の内側連結位置にも三個の表側外向き突起h9が設けられ、これらは周方向に均等間隔で(つまり120度おきに)配置されている。これら表側内向き突起h7と表側外向き突起h9とは位相が60度相違するため、突起h7と突起h9が60度おきに交互に配置される。この突起h7とh9とが圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6で連結されており、その結果、6個の圧縮コイルスプリングh5及びダンパーh6が、その長手方向が同一の円周に略沿うように並べられて設置されることとなる。
【0054】
図示しないが、ホイールhの裏側においても、表側と同様、三カ所の外側連結位置に設けた三個の裏側内向き突起h8と、三カ所の内側連結位置に設けた三個の裏側外向き突起h10が交互に60度おきに配置されている。ただし、表側と裏側では位相が(360/6)度、即ち60度だけ異なる。その結果、図1の断面図で分かるように、ホイール表側の外側連結位置に位置する表側内向き突起h7と、ホイール裏側の内側連結位置に位置する裏側外向き突起h10が同位相となる。また、ホイール表側の内側連結位置に位置する表側外向き突起h9と、ホイール裏側の外側連結位置に位置する裏側内向き突起h8とが同位相となる。
【0055】
つまり、ホイールの表側において内側ホイール部材h4と圧縮コイルスプリングh5とが連結している位置と同位相の位置で、ホイールの裏側では、外側ホイール部材h2と圧縮コイルスプリングh5とが連結している。また、ホイールの表側において外側ホイール部材h2と圧縮コイルスプリングh5とが連結している位置と同位相の位置で、ホイールの裏側では、内側ホイール部材h4と圧縮コイルスプリングh5とが連結している。このように、ホイールの表裏で、内外のホイール部材h2,h4と圧縮コイルスプリングh5との連結関係が互い違いになっている。よって、外側ホイール部材h2及び内側ホイール部材h4に作用する力が周方向で均等化され、周方向により均一なサスペンションとすることができる。
【0056】
さらに、図1及び図2に示すように、このホイールhでは、表側外向き突起h9及び裏側外向き突起h10の径方向外側に、合計6個の緩衝材h15を設けている。前述のように、表側外向き突起h9と裏側外向き突起h10はそれぞれ120度おきに配置され且つ位相が60度相違するから、6個の緩衝材h15は、ホイールhの表裏を合わせて考えると、60度おきに均等に設けられている。この緩衝材h15により、外側ホイール部材h2と内側ホイール部材h4とが直接接触することを防止される。よって、強い衝撃がホイールに作用して、サスペンションのストロークを超える偏心が起こった場合でも、外側ホイール部材と内側ホイール部材が接触することが無くなり、衝撃を緩和することができる。この緩衝材h15は、ゴム等の弾性部材からなるものが好適である。
【0057】
本発明のホイールhでは、前記の実施形態の如く、外側ホイール部材h2の周方向に等間隔なPカ所(Pは2以上の整数)の外側連結位置と、前記内側ホイール部材h4の周方向に等間隔なPカ所(Pは2以上の整数)の内側連結位置との位相を360/(2P)度相違させ、周方向に隣り合う外側連結位置と内側連結位置とを圧縮コイルスプリングh5等の弾性部材で連結することにより、2P個の圧縮コイルスプリングh5を同一の円周に略沿って周方向に等間隔で配置した構成としてもよい。この場合更に、かかる構成をホイールの表側と裏側のそれぞれに設け、この表側と裏側とで位相が360/(2P)度相違している構成としてもよい。前述の実施形態におけるサスペンション内蔵ホイールhではPを3としたが、Pは2以上の整数であればよい。Pが小であると、周方向の不均一性が過大となる。一方、Pが大であると、周方向の均一性は高まるが、個々の弾性部材が小型化し、サスペンションとしてのストロークが小さくなる。したがって、Pは3以上6以下がより好ましい。
【0058】
サスペンション内蔵ホイールhのサスペンションとしてのストロークは、前述の軸受1の偏心可能距離Lにより左右され、この距離Lより大きくすることはできない。よって、サスペンションのストロークを大きくしてサスペンションとしての性能を向上させるためには、軸受1の偏心可能距離Lを大きくすることが必要となる。したがって、軸受を小型化しつつその偏心可能範囲をより広くすることができる本発明の軸受1は、サスペンション内蔵ホイール用に使用され、極めて限られたスペースのホイール内に収容される軸受として極めて好適なものとなる。また、サスペンション内蔵ホイールhのストロークを、軸受1の偏心可能距離Lよりも小さくしておけば、軸受1はその構成部品間で干渉することがないので好ましい。
【0059】
このサスペンション内蔵ホイールhでは、サスペンションとしてのストロークを±10mmとしている。車両のサスペンションがこのサスペンション内蔵ホイールhのみであり、ホイール外のサスペンションと兼用しない場合は、ストロークを±10mm以上とするのが好ましい。±10mm程度以上のストロークが確保できれば、通常の路面を走行する車両のサスペンションとして実用性を有するものとなるからである。±10mmのストロークを確保するため、偏心スラスト軸受1における偏心可能距離Lは10mmより大きくしている。そうすると、軸受1はその構成部品間で干渉することがない。
【0060】
このように、サスペンション内蔵ホイールhのサスペンションとしての機能を高めるためには、そのストロークを一定以上確保する必要がある。このためには、軸受1の偏心可能距離Lを、前記ストローク以上とすることが求められる。一方、ホイール内部のスペースは極めて限定されたものであるため、ホイール内部に収容する偏心スラスト軸受1においてその偏心可能範囲Lを確保するのは非常に困難となる。したがって、軸受の小型化を可能としつつ偏心可能範囲を最大限とできる本発明の偏心スラスト軸受1は、サスペンション内蔵ホイールhに取り付ける軸受として極めて好適なものとなる。
【0061】
サスペンション内蔵ホイールhは、車両におけるサスペンションの全てをホイール内に収容しうるものであるが、サスペンション内蔵ホイールhと、ホイール外のサスペンションとを兼用するものであってもよい。この場合は、ホイール外のサスペンションが無い場合と比べて、サスペンションの設置空間が減少する効果は少ない。ただし、例えば、ホイール外のサスペンションには比較的振幅の大きい振動を吸収させる一方、サスペンション内蔵ホイールには比較的振幅の小さい高周波の振動を吸収させることにより、全体として広汎な領域の振動を吸収しうるという効果を得ることも可能である。
【0062】
本発明の軸受において、保持器7及び保持器ガイド8は本発明では必ずしも必要ではないが、本実施形態のように、各玉6を収容する保持器7を用いると、転動体周辺に存在する潤滑油やグリース等の潤滑剤の流出を抑制できる。前述のように、保持器ガイド8により玉6の位置調整が容易となるが、さらに、保持器7を設けることによりこの位置調整が確実となる。即ち、保持器7の外周面と保持器ガイド8の内周面とが当接することにより、位置調整の際により確実に玉6を滑らすことができる。また、保持器ガイド8により対向するレース4,5間への異物の侵入を抑制することが可能となる。
【0063】
本発明の軸受では、転動体の形状は問わないが、すべての転動体を玉6とすれば、軌道面の全方位に対して転がり抵抗の少ない軸受とすることができる点で好ましい。また、転動体の数は特に限定されず、一組の内外レース4,5あたり複数の転動体を設けてもよいし、本実施形態のように、一組の内外レース4,5あたり一個の転動体としてもよい。一組の内外レース4,5あたり一個の転動体が最低限必要である。
【0064】
本発明の軸受では、各外側ケース2の内側面および内側ケース3の両外側ケース対向面のそれぞれにおいて、内外レース4,5はそれぞれ周方向に沿って3カ所以上に分割して局所的に配置する。従って、内側ケース3の表裏で同一位置に設けた内レース5を表裏一体とすることなく、本実施形態のように、内側ケース3の両外側ケース対向面にそれぞれ別個の内レース5を設けた場合には、内レース5は合計6個以上必要である。これらの内外レース4,5相互間のそれぞれに玉6等の転動体が挟持されているので、内側ケース3及び外側ケース2はそれぞれ周方向に沿った3点以上で支持されるため、両方向のアキシャル荷重及びモーメント荷重を安定的に支持できる。
【0065】
各内外レース4,5および各玉6は周方向の全周にわたって分散しているが、本発明はこのような構成に限定されない。ただし、内外レース4,5を、各外側ケース2,2の内側面及び内側ケース3の両外側ケース対向面のそれぞれにおいて、周方向で180度(半円)よりも大きい周方向範囲に3カ所以上に分散させて設けると、アキシャル荷重及びモーメント荷重をより安定的に支持できる。特に大きなモーメント荷重を支持できるので好ましい。
【0066】
本実施形態の軸受1では、外側ケース2及び内側ケース3のそれぞれ8カ所に内外レース4,5を設けているが、特に本実施形態のように、内外レース4,5を全て同一PCDで(図5に記載の面内において同一円周15上に)配置し且つ周方向に均等に分配する場合には、内側ケース3及び外側ケース2のそれぞれにおいて、内外レース4,5を3個〜8個程度に分割して局所的に配置するのが好ましい。2個以下では外側ケース2を安定的に支持できず、多すぎると各レースの大きさが小さくなって転動体の移動可能範囲が小さくなりすぎる場合がある他、部材の点数が増加し且つ構造が複雑化する傾向となってコストが高くなる。
【0067】
本実施形態の軸受1では、距離Lを距離Rの2倍とし、且つ、距離Mも距離Rの略2倍としたが、距離Mを距離Rの略2倍としない場合でも、距離Lを距離Rの略2倍とすると、各玉6の移動可能範囲が軸受1の偏心可能範囲と略対応し、各内外レース4,5の大きさを最小限とすることができる。且つ、内側ケース3の外径を最小限とすることができる。よって、極めて限られたスペースであるホイールh内に設置する軸受として極めて好適なものとなる。
【0068】
本実施形態の軸受1では、図4に示すように、内側ケース3の両外側ケース対向面に設けられた内レース5,5は、内側ケース3の表裏において同一の位置(同一の位相)となるように設けられている。その結果、これら内レース5,5に対向する二つの外側ケース2,2に設けられた外レース4も、標準状態においては、これら内レース5,5と同一の位置(同一の位相)で揃った構成となっている。本発明はこのような構成に限定されず、内レース5の位置(位相)が内側ケース3の表裏で異なっていてもよい。
【0069】
軸受1では、内側ケース3に内向き舌片部3aを設けて、この内向き舌片部3aに内レース5を取り付けたが、本発明の軸受は内向き舌片部3aを設ける態様に限定されず、例えば、内側ケース3をドーナツ型円板状として、この円板の両面に局所的に内レース5を配置してもよい。ただし、前述のように、内向き舌片部3aを有する構成とすることにより、内側ケース3が軽量化される。
【0070】
なお、本発明の軸受は、外側ケース又は内側ケースが円形(円環状)のものに限定されず、例えば多角形であってもよい。多角形の場合、本願にいう径方向及び周方向とは、この多角形の外接円における径方向及び周方向を意味するものとする。ただし、この軸受がサスペンション内蔵ホイールhに用いられる場合には、外側ケース又は内側ケースが円形(円環状)であれば、円形のホイールhに取り付けることが容易となり、また周方向で均一性の高いホイールhとすることが可能となるので好ましい。
【0071】
【発明の効果】
以上のような本発明によれば、両方向のアキシャル荷重及びモーメント荷重が支持でき、サスペンション内蔵ホイールに取り付け可能で且つこのホイール用の軸受として好適な複列の偏心スラスト軸受と、この軸受が装着されて軸方向荷重が支持でき且つサスペンションの設置スペースを減らすことのできるサスペンション内蔵ホイールとを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるサスペンション内蔵ホイールの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態であるサスペンション内蔵ホイールの側面図である。
【図3】図1のサスペンション内蔵ホイールに取り付けられている偏心スラスト軸受の構成を示す分解斜視図である。
【図4】図1のサスペンション内蔵ホイールに取り付けられている偏心スラスト軸受の、軸方向断面の断面図である。
【図5】図4のA−A断面位置から軸受内部をみた要部正面図である。
【符号の説明】
h サスペンション内蔵ホイール
h1 リム部
h2 外側ホイール部材
h3 ディスク部
h4 内側ホイール部材
h5 圧縮コイルスプリング
h6 ダンパー
h15 緩衝材
1 軸受
2 外側ケース
3 内側ケース
4 外レース
5 内レース
6 玉
7 保持器
8 保持器ガイド
L 内側ケースの内周面と外側ケースの外周面との間の径方向隙間距離
M 内側ケース最内端面と、外側ケースの連結部外周面との径方向隙間距離
R 玉を収容する保持器の外周面と、保持器ガイドの内周面との隙間距離
Claims (10)
- タイヤが装着されるリム部を含む外側ホイール部材と、車輪軸と連結するディスク部を含む内側ホイール部材と、これらホイール部材間に介装された弾性部材と、を備えるサスペンション内蔵ホイールに取り付けられ、これらのホイール部材間に作用する軸方向荷重を支持しつつ当該ホイール部材間での偏心相対移動を可能とする偏心スラスト軸受であって、
互いに軸方向に対向して配置され且つ相互に一体的に接合した二つの外側ケースと、これらの外側ケース間に介在する内側ケースとを有し、
前記内側ケースの両外側ケース対向面のそれぞれには、周方向に沿って分割して配置された3個以上の内レースが局所的に設けられるとともに、前記二つの外側ケースのそれぞれには、前記各内レースに対向する位置に分割して配置された3個以上の外レースが局所的に設けられ、且つ対向した前記内レースと前記外レースとの間のそれぞれに転動体が挟持されており、
前記分割して配置された各レースにおける前記各転動体の移動可能範囲は、全て互いに略等しいことを特徴とする複列偏心スラスト軸受。 - 前記内側ケースと前記外側ケースとの間の隙間により生ずる相対移動可能範囲が、前記転動体の移動可能範囲に略対応していることを特徴とする請求項1に記載の複列偏心スラスト軸受。
- 前記各内外レースは、全て同一PCDで配置されるとともに、周方向に均等に分配されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の複列偏心スラスト軸受。
- 前記各内外レースは全て同一径の円形形状であり、且つ前記外側ケース及び内側ケースは円環状であることを特徴とする請求項3に記載の複列偏心スラスト軸受。
- 前記各内外レースの周囲に設けられた保持器ガイドを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の複列偏心スラスト軸受。
- 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の複列偏心スラスト軸受と前記弾性部材とが、前記外側ホイール部材と前記内側ホイール部材との間に介装されており、この軸受が、これらのホイール部材間に作用する軸方向荷重を支持しつつ当該ホイール部材間での偏心相対移動を可能としていることを特徴とするサスペンション内蔵ホイール。
- 前記外側ホイール部材と前記内側ホイール部材との間にダンパーが介装されていることを特徴とする請求項6に記載のサスペンション内蔵ホイール。
- 前記外側ホイール部材の周方向に等間隔なPカ所(Pは2以上の整数)の外側連結位置と、前記内側ホイール部材の周方向に等間隔なPカ所(Pは2以上の整数)の内側連結位置との位相を360/(2P)度相違させ、周方向に隣り合う外側連結位置と内側連結位置とを弾性部材で連結することにより、2P個の弾性部材を同一の円周に略沿って周方向に等間隔で配置したことを特徴とする請求項6又は7のいずれかに記載のサスペンション内蔵ホイール。
- ホイールの表側と裏側のそれぞれに請求項8に記載の構成を有し、この構成の位相が、表側と裏側とで360/(2P)度相違していることを特徴とするサスペンション内蔵ホイール。
- 前記外側ホイール部材と前記内側ホイール部材とが直接接触することを防止する緩衝材が設置されていることを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載のサスペンション内蔵ホイール。
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