JP4097781B2 - 対物レンズ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、顕微鏡等の光学系に用いられる高開口数、高倍率の対物レンズに関するものであり、特に、紫外光を用いた顕微鏡等の光学系に用いられる対物レンズに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の紫外線顕微鏡用の対物レンズは、波長が300nmより短くなるとレンズとして使用し得る媒質が実質的には石英と蛍石に限定されるため、これらの媒質を用いた3枚接合レンズや2枚接合レンズを多用して色補正を行っていた。しかし、これらの媒質はその屈折率や分散値が近く、3枚接合レンズを多用しても十分な色収差補正が困難であり(特開平3−188407号参照)、また、設計はできたとしても、このような紫外の波長域では作業性や接着力の良い接合剤がなく、接合が上手くできないため、接合面が多数あると実際に性能の良い対物レンズを製作するのは困難であった。つまり、接合剤の硬化に時間がかかるものが多く、心出しをして接合しても固まるまでの間に心がずれてしまったり、また、接着の強度が弱いため、特に3枚接合レンズでは徐々に心がずれて行き、性能が劣化するという問題がある。
【0003】
これをある程度解決する手段としては、以下のような技術が開示されている。
特開平6−347700号の場合は、媒質としては石英のみを用い、少なくとも1枚の平面型の回折光学素子を用いることにより、接合レンズを用いずに色収差を補正するものである。
特開平9−243923号の場合は、3枚接合レンズは用いず、2枚接合レンズを多用することにより、色収差を補正するものである。
【0004】
ここで、回折光学素子に関して簡単に説明しておく。詳細はオプトロニクス社発行の「光学デザイナーのための小型光学エレメント」第6章及び第7章や、「SPIE,No.162,P.46〜53(1977)」、あるいは、上記特開平6−347700号等に詳しく説明されている。要は、通常のレンズは屈折作用により光線を曲げるのに対して、回折光学素子はその名の通り回折作用で光を曲げるものであり、これをレンズとして用いたものがいわゆる回折レンズである。屈折はスネルの法則に従い、波長が短い光程よく曲がるが、回折はその逆で波長が長い光程よく曲がる。これを通常の屈折レンズに用いられるアッべ数に換算すると−3.45となり、逆分散かつ非常に高分散であることが分かる。したがって、通常の屈折レンズと回折レンズを組み合わせることにより、非常に強力な色収差補正が可能となるのである。また、回折による曲がり角はそのピッチによって自由に制御できるため、非常に自由度の高い非球面特性も持たせることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平6−347700号のものは、平面基板の上に回折面を形成したいわゆる平面型回折光学素子を用いており、極端に小さなピッチのものは製作できないという製造上の理由から、そのパワーを余り強くすることができないため、色補正能力が十分に発揮できておらず、さらに、接合レンズを全く用いていないため、補正すべき波長幅が広く、高度なアポクロマティック設計を必要とする対物レンズは設計できなかった。
【0006】
また、特開平9−243923号のものは、3枚接合レンズは用いていないが、2枚接合レンズを多用しており、実際の製作時は接合時の心ズレ等が問題となり、設計性能を十分に発揮させることが難しい。また、3枚接合レンズを用いていないため、前者同様、補正すべき波長幅が広く高度なアポクロマティック設計を必要とする対物レンズは設計すら難しい。
【0007】
本発明は従来技術のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、非平面上に回折面を形成した回折光学素子を用いることにより、波長幅が広くても高度なアポクロマティック設計が可能であり、また、その設計性能を損なうことなく製作できる対物レンズを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、物体側から順に、物体側が平面の平凸レンズ又は物体側に凹面を向けたメニスカスレンズを含み、全体として正のパワーを有する第1群と、非平面上に回折面が形成された正のパワーを有する屈折回折レンズを少なくとも1枚含む第2群と、負のパワーを有する屈折回折レンズを少なくとも1枚含む第3群とからなり、
前記第2群中の非平面上に形成された回折面が瞳位置近傍に配置され、前記第3群の回折面が主光線高の高い位置に配置され、
以下の条件式(1)を満足することを特徴とするものである:
(1) 0.15≦R2 /L≦0.5
ただし、Lは対物レンズの同焦距離であり、R2 は第2群中の屈折回折レンズの回折面の基板が球面で構成されている場合の曲率半径であり、回折面の基板が非球面で構成される場合は近軸曲率半径とする。
【0009】
以下、本発明において上記構成をとる理由と作用について説明する。
本発明の対物レンズは、物体側から順に、物体側が平面の平凸レンズ又は物体側に凹面を向けたメニスカスレンズを含み、全体として正の屈折力の第1群と、非平面上に回折面が形成された正のパワーを有する屈折回折レンズを少なくとも1枚含む第2群と、負のパワーを有する屈折回折レンズを少なくとも1枚含む第3群とからなり、基板でパワーを持った回折レンズを用いることにより、強力な収差、特に色収差の補正が可能となる。なお、屈折回折レンズとは、回折面を有するレンズのことである。対物レンズは全体として正のパワーを持つため、接合レンズを多用せずに屈折面で発生する正の色収差を補正するためには、回折面のパワーをかなり強くしなければならないが、基板が平面のものでは、製造上の制約からも余り強いパワーを持たせることはできない。屈折面で発生する正の色収差を補正するためには、屈折面と同程度の強い正パワーの回折面が必要となり、そのためには、正パワーの非平面の上に回折面を形成する必要があるのである。ただし、平面基板上に回折面を形成したいわゆる平面型回折レンズと異なり、非平面上に回折面を形成したいわゆる非平面型回折レンズでは、回折面に入射する軸外光束と軸上光束の回折面へ入射する角度が異なるため、軸上の色収差を補正すると、軸外で色コマ収差が発生する。非球面特性を持った色コマ収差であるから、これを球面系のレンズで補正することは困難であり、そのため、第3群にも非球面特性を持つ回折レンズが必要となるのである。
【0010】
また、上記の構成において、第2群中の非平面上に形成された回折面が瞳位置近傍に配置され、第3群の回折面が主光線高の高い位置に配置されていることが望ましい。瞳位置近傍はマージナル光線高が高いため、そこに回折面を配置することにより、軸上の色収差や球面収差がより効果的に補正可能であり、また、主光線高の高い位置に回折面を配置することにより、倍率の色収差を含む色コマ収差がより効果的に補正可能となる。
【0011】
また、第2群中の非平面上に形成された回折面の回折によるパワーが正パワーであることが望ましい。これにより、正パワーの持つ大きな逆分散特性を用いてより効果的に色収差を補正することができる。
【0012】
また、屈折回折レンズも含めた各レンズの媒質が、蛍石や石英を含む、使用紫外域の波長(250nm近傍)で厚さ10mmで透過率50%以上である物質であることが望ましい。これにより、用いる紫外域においても透過率の十分高い対物レンズを得ることができる。
【0013】
また、上記の非平面上に回折面が形成された正のパワーを有する屈折回折レンズと最も物体側のレンズとの間に、蛍石と石英からなる接合レンズを有することが望ましい。これにより、先玉により発生した大きな色収差を接合レンズでも補正することができ、全体としてより効果的に色収差の補正ができる。
【0014】
また、上記の非平面上に回折面が形成された正のパワーを有する屈折回折レンズと、負のパワーを有する屈折回折レンズとの間に蛍石と石英からなる接合レンズを有することが望ましい。これにより、非平面上の回折面だけでは補正しきれなかった色収差をこの接合レンズで補正することができ、全体としてより効果的に色収差の補正ができる。
【0015】
また、上記の非平面上に回折面が形成された正のパワーを有する屈折回折レンズと、最も物体側のレンズとの間と、その非平面上に回折面が形成された正のパワーを有する屈折回折レンズと、負のパワーを有する屈折回折レンズとの間に、蛍石と石英からなる接合レンズを有することが望ましい。これにより、先玉により発生した大きな色収差を接合レンズでも補正し、かつ、非平面上の回折面だけでは補正しきれなかった色収差も、その後ろの接合レンズで補正することができ、全体としてより効果的に色収差の補正ができる。
【0016】
また、最も像側のレンズが正の屈折力を持つ石英と負の屈折力を持つ蛍石の接合レンズからなることが望ましい。これにより、第3群中の回折面だけでは補正しきれなかった倍率の色収差をこの接合レンズで補正することができ、全体としてより効果的に色収差の補正ができる。
【0017】
また、第2群中の非平面上の回折面が主として軸上の色収差を補正し、第3群中の負のパワーを有する屈折回折レンズの回折面が主として倍率の色収差を含む色コマ収差を補正するものであることが望ましい。
【0018】
基板でパワーを持った回折レンズを用いることにより、強力な収差、特に色収差の補正が可能となる。対物レンズは全体として正のパワーを持つため、接合レンズを多用せずに、屈折面で発生する正の色収差を補正するためには、回折面のパワーをかなり強くしなければならないが、基板が平面のものでは、製造上の制約からもあまりパワーを持たせることはできない。屈折面で発生する正の色収差を補正するためには、屈折面と同程度の強い正パワーの回折面が必要となり、そのためには、正パワーの非平面の上に回折面を形成する必要があるのである。そして、このような強い正パワーを持つ回折面をマージナル光線高の高い第2群中に配することにより、効果的な軸上の色収差の補正が可能となり、他方、主光線高の高い第3群中にも配することにより、倍率の色収差を含む色コマ収差を効果的に補正することができる。
【0019】
また、上記構成において、下記の条件(1)を満足することが望ましい。
(1) 0.15≦R2 /L≦0.5
ただし、R2 は第2群中の屈折回折レンズの回折面の基板が球面で構成されているときの曲率半径、Lは同焦距離である。なお、回折面の基板が非球面で構成されている場合は、前記の曲率半径は近軸曲率半径となる。また、同焦距離は、対物レンズの取り付け基準面(胴付面)から物体面までの距離である。これにより、非平面上に形成された回折面が大きな色コマ収差を発生することなく、他のレンズ群で十分補正可能な程度に収まると同時に、基板もパワーを持った回折レンズにおいてより強力な色収差補正が可能となる。ここで、条件(1)の下限の0.15を下回るときは、回折面の基板の曲率半径が小さすぎ、他のレンズ群では補正しきれない程の大きな色コマ収差が発生してしまう。逆に、上限の0.5を上回るときは、回折面の基板の曲率半径が大きすぎ、基板のパワーが小さくなることにより、十分な色補正能力が得られない。なお、上記条件(1)の上限及び下限を越えた場合に発生する現象は、曲率半径が近軸曲率半径に置き換わった場合にも同様に発生する。
【0020】
また、上記構成において、さらに下記の条件(2)から(4)を満足することが望ましい。
(2) 0.8≦R1 /t1 ≦5
(3) D2 /D≧0.8
(4) (h3 ×f)/(D×I)≧0.5
ただし、R1 は第1群中の上記平凸レンズ又はメニスカスレンズの像側の面の曲率半径、t1 はその肉厚、D2 は第2群中の正のパワーを有する屈折回折レンズの回折面でのマージナル光束径、Dは対物レンズ中の最大マージナル光束径、h3 は第3群中の負のパワーを有する屈折回折レンズの回折面での最大像高からの主光線高、fは対物レンズの焦点距離、Iは標本面での最大像高である。
【0021】
これにより、第2群中の回折面でより効果的に軸上の色収差が補正でき、第3群中の回折面で倍率の色収差を含む色コマ収差がより効果的に補正できる。ここで、条件(2)の下限の0.8を下回るときは、先玉の像側の曲率半径が小さすぎ、そこで発生する諸収差が後群で補正しきれず、逆に、上限の5を上回るときは、物体からの高NA(開口数)の光束を効果的に収斂光にして後群に導けなくなる。また、条件(3)で下限の0.8を下回るときは、第2群中の回折面での軸上色収差の補正が不十分となり、全体として補正不足となる。さらに、条件(4)の下限の0.5を下回るときは、第3群での倍率の色収差の補正が不十分となり、やはり全体としての色収差が補正不足となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の実施例で用いている回折光学素子(回折レンズ)についてさらに詳しく述べる。後に示す実施例で用いられている回折光学素子(回折レンズ)は、すべに述べた通りのものであるが、このような回折光学素子(回折レンズ)の設計法として、ウルトラ・ハイ・インデックス法(ultra−high index method)と呼ばれる方法が知られている。これは、回折光学素子(回折レンズ)を屈折率の極めて大きな仮想レンズ(ウルトラ・ハイ・インデックス・レンズ)として設計する方法である。この手法についても、上述の「SPIE,No.162,P.46〜53(1977)」に記載されているが、図7を用いて簡単に説明する。図7において、符号1はウルトラ・ハイ・インデックス・レンズ、2は法線である。このウルトラ・ハイ・インデックス・レンズ1においては、次の式(a)で表される関係が成り立つ。
【0023】
(nu −1)dz/dh=nsinθ−n’sinθ’ ・・・(a)
ただし、nu はウルトラ・ハイ・インデックス・レンズ1の屈折率、zはウルトラ・ハイ・インデックス・レンズ1の光軸方向の座標、hは光軸からの距離、n、n’はそれぞれ入射側媒質及び射出側媒質の屈折率、θ、θ’は光線の入射角及び射出角である。なお、後に示す実施例のデータでは、nu =10001、あるいは1001としている。
【0024】
一方、回折による光線の屈曲は以下の式(b)で表される。ただし、mは回折光の次数、λは波長、dはピッチである。
【0025】
nsinθ−n’sinθ’=mλ/d ・・・(b)
よって、式(a)及び(b)より、以下の式(c)が導ける。
(nu −1)dz/dh=mλ/d ・・・(c)
すなわち、ウルトラ・ハイ・インデックス・レンズ1の面形状と回折光学素子(回折レンズ)のピッチとの間には、式(c)で与えられる等価関係が成立し、この式を通じてウルトラ・ハイ・インデックス法で設計したデータから回折光学素子(回折レンズ)のピッチを求めることができるのである。また、ウルトラ・ハイ・インデックス・レンズ1を非球面レンズとして設計することにより、非球面特性を有する回折光学素子(回折レンズ)として設計できることは言うまでもない。
【0026】
なお、詳細は前記文献に譲るが、ウルトラ・ハイ・インデックス法で回折レンズを設計する際は、以下に示す式(d)で表されるように、波長に対する屈折率を定める。
nu (λ)=(λ/λ0 )×nu (λ0 )+1 ・・・(d)
ここで、nu (λ)はある波長λでの屈折率、λ0 は基準波長であり、後記の実施例のように、λ0 を254nm、nu (λ0 )を10001又は1001とすると、波長257nm、260nmの屈折率は後記のようになる。
【0027】
なお、以下の実施例では、非球面項として10次までを用いているが、12次、14次、・・・という高次の非球面項を使用してもよい。
【0028】
実施例1
実施例1の対物レンズの光軸及び軸上・軸外光線を含む断面図を図1に示す。逆光線追跡の順の面番号1、2、・・をr1 、r2 、・・で、面間隔1、2、・・をd1 、d2 、・・で示してある。そして、光線として、軸上下側光線をa、軸上上側光線をb、最大像高の軸外主光線をc、最大像高の軸外上側光線をd、最大像高の軸外下側光線をeで示してある(他の実施例も同様)。
【0029】
この実施例は、接合レンズは用いず、石英及び蛍石の単レンズと非平面屈折回折レンズを用いたものである。この対物レンズは、物体側から、第1群G1、第2群G2、第3群G3の3群からなり、第1群G1は、3枚の物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズからなり、第2群G2は、両凸レンズの像側の面に回折面を設けた屈折回折レンズと、両凹レンズと、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズと、両凸レンズとの4枚からなり、第3群G3は、両凸レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズと、両凹レンズと、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズの像側の面に回折面を設けた屈折回折レンズと、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズとの5枚からなる。
【0030】
実施例2
実施例2の対物レンズの光軸及び軸上・軸外光線を含む断面図を図2に示す。この実施例は、第2群G2中の非平面型回折レンズの前後に接合レンズを配置して、さらに収差、特に軸上色収差をより良く補正したものである。また、接合レンズを用いたことにより、倍率の色収差も若干補正されているため、第3群G3の回折レンズは平面型回折レンズでも収差補正可能であった。
【0031】
この対物レンズは、物体側から、第1群G1、第2群G2、第3群G3の3群からなり、第1群G1は、2枚の物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズと、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズと両凸レンズとの接合レンズとの3群4枚からなり、第2群G2は、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズの像側の面に回折面を設けた屈折回折レンズと、両凸レンズと両凹レンズとの接合レンズとの2群3枚からなり、第3群G3は、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズと、両凸レンズと、2枚の物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズと、両凹レンズと、物体側に凹面を向けた凹平レンズの像側の面に回折面を設けた屈折回折レンズと、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズとの7枚からなる。
【0032】
実施例3
実施例3の対物レンズの光軸及び軸上・軸外光線を含む断面図を図3に示す。この実施例は、第2群G2中の非平面型回折レンズの前後に接合レンズを配置して、さらに収差、特に軸上の色収差をより良く補正すると共に、最も像側のレンズも接合レンズとすることにより、倍率の色収差もより良く補正したものである。実施例2と同様、接合レンズを用いたことにより、接合レンズで倍率の色収差も補正されているため、第3群G3の回折レンズは平面型回折レンズでも収差補正可能であった。
【0033】
この対物レンズは、物体側から、第1群G1、第2群G2、第3群G3の3群からなり、第1群G1は、2枚の物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズと、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズと両凸レンズとの接合レンズとの3群4枚からなり、第2群G2は、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズの像側の面に回折面を設けた屈折回折レンズと、両凸レンズと両凹レンズとの接合レンズとの2群3枚からなり、第3群G3は、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズと、両凸レンズと、2枚の物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズと、両凹レンズと、物体側に凹面を向けた凹平レンズの像側の面に回折面を設けた屈折回折レンズと、物体側に凹面を向けた凹平レンズと像側に凸面を向けた平凸レンズとの接合レンズとの7群8枚からなる。
【0034】
次に、上記実施例1〜3の数値データを示す。これらは全て無限設計の対物レンズであり、そのため追跡データは逆光線追跡(対物レンズの胴付から標本面に向かっての追跡)データとなっている。各実施例の対物レンズの焦点距離は1.8mmであり、実視野はφ0.2mmである。これは焦点距離180mmの結像レンズを用いたとき、視野数φ20mmの100×対物レンズとなる。その他の仕様も全て同じであり、下記の通りである。
【0035】
開口数 :0.9
作動距離 :0.3mm
焦点距離 :1.8mm
補正波長域:254nm〜260nm
同焦距離 :45mm
実視野 :φ0.2mm
なお、非球面は、光軸方向をZ軸、光軸と垂直な方向をY軸とすると、以下の式にて表せられる。
ただし、Cは面頂における曲率(=1/r、rは曲率半径)、Kは円錐係数、A4 、A6 、A8 、A10はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数である。
【0036】
また、レンズ材料については、石英は“SILICA”と、蛍石は“CAFL”と、回折面は“‘doe’”と表記してある。なお、SILICA、CAFLの屈折率は次の通りである。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
以上の実施例1〜3の収差図をそれぞれ図4〜図6に示す。各図中、(a)は球面収差、(b)は非点収差、(c)は歪曲収差、(d)はコマ収差をそれぞれ示す。
【0041】
上記何れの実施例も、これらの構成に限定されるものではなく、様々な組み合せ、群構成で構成できることは言うまでもなく、特に屈折回折レンズに関しては、その製作性(回折面の裏面は平面の方が作りやすい等)を考慮して、片面を平面として2枚のレンズ(片方は片面が平面の屈折回折レンズ、他方は単なる屈折レンズ)に分割して構成できることは言うまでもない。例えば、実施例1の第3群G3中の屈折回折レンズを平面で2分割して、片方を平凸形状の屈折回折レンズ、片方を単なる平凹レンズとし、これらを接合してもよいし、その間に空気間隔を設けてもよい。さらに、また、第2群G2と第3群G3に少なくとも1枚配置された回折レンズは、非平面型回折レンズと平行平面型回折レンズを組み合せたものとしてもよい。
【0042】
以上の本発明の対物レンズは例えば次のように構成することができる。
〔1〕 物体側から順に、物体側が平面の平凸レンズ又は物体側に凹面を向けたメニスカスレンズを含み、全体として正の屈折力の第1群と、非平面上に回折面が形成された正のパワーを有する屈折回折レンズを少なくとも1枚含む第2群と、負のパワーを有する屈折回折レンズを少なくとも1枚含む第3群とからなることを特徴とする対物レンズ。
【0043】
〔2〕 第2群中の非平面上に形成された回折面が瞳位置近傍に配置され、第3群の回折面が主光線高の高い位置に配置されていることを特徴とする上記1記載の対物レンズ。
【0044】
〔3〕 第2群中の非平面上に形成された回折面の回折によるパワーが正パワーであることを特徴とする上記1又は2記載の対物レンズ。
【0045】
〔4〕 屈折回折レンズも含めた各レンズの媒質が、蛍石や石英を含む、使用紫外域の波長(250nm近傍)で厚さ10mmで透過率50%以上である物質であることを特徴とする上記1から3の何れか1項記載の対物レンズ。
【0046】
〔5〕 前記非平面上に回折面が形成された正のパワーを有する屈折回折レンズと、最も物体側のレンズとの間に、蛍石と石英からなる接合レンズを有することを特徴とする上記1から4の何れか1項記載の対物レンズ。
【0047】
〔6〕 前記非平面上に回折面が形成された正のパワーを有する屈折回折レンズと、負のパワーを有する屈折回折レンズとの間に、蛍石と石英からなる接合レンズを有することを特徴とする上記1から4の何れか1項記載の対物レンズ。
【0048】
〔7〕 前記非平面上に回折面が形成された正のパワーを有する屈折回折レンズと、最も物体側のレンズとの間と、前記非平面上に回折面が形成された正のパワーを有する屈折回折レンズと、負のパワーを有する屈折回折レンズとの間に、蛍石と石英からなる接合レンズを有することを特徴とする上記1から4の何れか1項記載の対物レンズ。
【0049】
〔8〕 最も像側のレンズが正の屈折力を持つ石英と負の屈折力を持つ蛍石の接合レンズからなることを特徴とする上記1から7の何れか1項記載の対物レンズ。
【0050】
〔9〕 前記第2群中の非平面上の回折面が主として軸上の色収差を補正し、前記第3群中の負のパワーを有する屈折回折レンズの回折面が主として倍率の色収差を含む色コマ収差を補正することを特徴とする上記から8の何れか1項記載の対物レンズ。
【0051】
〔10〕 下記の条件(1)を満足することを特徴とする上記1から9の何れか1項記載の対物レンズ。
(1) 0.15≦R2 /L≦0.5
ただし、R2 は第2群中の屈折回折レンズの回折面の基板が球面で構成されているときの曲率半径、Lは全系の同焦距離である。
【0052】
〔11〕 下記の条件(2)から(4)を満足することを特徴とする上記1から10の何れか1項記載の対物レンズ。
(2) 0.8≦R1 /t1 ≦5
(3) D2 /D≧0.8
(4) (h3 ×f)/(D×I)≧0.5
ただし、R1 は第1群中の前記平凸レンズ又はメニスカスレンズの像側の面の曲率半径、t1 はその肉厚、D2 は第2群中の正のパワーを有する屈折回折レンズの回折面でのマージナル光束径、Dは対物レンズ中の最大マージナル光束径、h3 は第3群中の負のパワーを有する屈折回折レンズの回折面での最大像高からの主光線高、fは対物レンズの焦点距離、Iは標本面での最大像高である。
【0053】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、使用媒質が限定される紫外域で用いられる対物レンズにおいても、接合レンズを多用することなく、軸上の色収差、倍率の色収差を始めとする諸収差が良好に補正された高倍・高NA対物レンズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の対物レンズの光軸及び軸上・軸外光線を含む断面図である。
【図2】本発明の実施例2の対物レンズの光軸及び軸上・軸外光線を含む断面図である。
【図3】本発明の実施例3の対物レンズの光軸及び軸上・軸外光線を含む断面図である。
【図4】実施例1の収差図である。
【図5】実施例2の収差図である。
【図6】実施例3の収差図である。
【図7】ウルトラ・ハイ・インデックス法を説明するための図である。
【符号の説明】
G1…第1群
G2…第2群
G3…第3群
1…ウルトラ・ハイ・インデックス・レンズ
2…法線
Claims (2)
- 物体側から順に、物体側が平面の平凸レンズ又は物体側に凹面を向けたメニスカスレンズを含み、全体として正のパワーを有する第1群と、非平面上に回折面が形成された正のパワーを有する屈折回折レンズを少なくとも1枚含む第2群と、負のパワーを有する屈折回折レンズを少なくとも1枚含む第3群とからなり、
前記第2群中の非平面上に形成された回折面が瞳位置近傍に配置され、前記第3群の回折面が主光線高の高い位置に配置され、
以下の条件式(1)を満足することを特徴とする対物レンズ:
(1) 0.15≦R 2 /L≦0.5
ただし、Lは対物レンズの同焦距離であり、R 2 は第2群中の屈折回折レンズの回折面の基板が球面で構成されている場合の曲率半径であり、回折面の基板が非球面で構成される場合は近軸曲率半径とする。 - 以下の条件式(2)〜(4)をさらに満足することを特徴とする請求項1記載の対物レンズ:
(2) 0.8≦R 1 /t 1 ≦5
(3) D 2 /D≧0.8
(4) (h 3 ×f)/(D×I)≧0.5
ただし、R 1 は第1群中の前記平凸レンズ又はメニスカスレンズの像側面の曲率半径、t 1 はそれの肉厚、D 2 は第2群中の正のパワーを有する屈折回折レンズの回折面でのマージナル光束径、Dは対物レンズ中の最大マージナル光束径、h 3 は第3群中の負のパワーを有する屈折回折レンズの回折面での最大像高からの主光線高、fは対物レンズの焦点距離、Iは標本面での最大像高である。
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-
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