JP4765229B2 - 結像光学系 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スキャナー用光学系のように有限距離に配置された物体の像を形成する結像光学系に関し、特に可視域から赤外域に至る広い波長域にわたって良好な光学性能を有し、色収差が良好に補正されている結像光学系に関する
【0002】
【従来の技術】
スキャナー用光学系は、原画の情報を忠実に読みとることが要求されるから、単色に対する球面収差などの各収差の補正に加えて、軸上及び倍率色収差も良好に補正されていることが必要である。特にスキャナー用光学系のように、有限距離に配置された物体の像を形成する光学系においては、軸上色収差は結像倍率の2乗に比例して増大するために、より一層色収差の補正が重要となる。また、スキャナー用光学系では、可視域については当然に原画を忠実に再現する必要があるが、近年ではこれに加えて、可視域から850nm近辺の赤外域に至るまでの広い波長域にわたり、結像性能に優れた結像光学系が要求されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
倍率が大きくなると、軸上色収差は倍率の2乗に比例して発生する。このため、上述したような結像性能に優れた光学系を達成するのは容易なことではなく、特に色収差の補正が困難となっている。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、有限距離に配置された物体の像を形成し、可視域から赤外域に至る広い波長域にわたって良好な光学性能を有し、特に色収差が良好に補正されている結像光学系を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、以下に、実施形態に示した各図面を用いてその内容を説明する。本発明は、物体側から順に、少なくとも1枚のレンズを有する正屈折力の前群GFと、開口絞りSPと、少なくとも1枚のレンズを有する正屈折力の後群GRとを備え、前記前群GFの最も物体側には両凸正レンズGTを有し、前記前群GFまたは前記後群GRは前記開口絞りSPに隣接して第1の正レンズと負レンズと第2の正レンズとの3枚から成り全体で負屈折力の接合レンズGSを有し、以下の条件を満たす事を特徴とする結像光学系を提供できる。
0.3<|fs|/f<5.0 (1)
ここで、fs:前記接合レンズGSのe線(λ=546.07nm)の焦点距離,
f :前記結像光学系のe線(λ=546.07nm)の焦点距離.
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明にかかる結像光学系の代表的なレンズ構成を示す図である。同図に示すように本発明にかかる結像光学系は、複数のレンズを有する前群GFと、開口絞りSPと、複数のレンズを有する後群GRとを有し、開口絞りSPの物体側に第1の正レンズと負レンズと第2の正レンズとの3枚の接合レンズを有し、最も物体側には両凸正レンズを有する構成となっている。
【0006】
本光学系の基本構成として、開口絞りSPに対してほぼ対称的にレンズを配置する構成としている。そして、前記接合レンズは、最も開口絞りSPに近いレンズとして絞りSPが存在する側と反対側に強い曲率の面を向けたメニスカスレンズを有している。これにより、球面収差の良好な補正が可能となる。
【0007】
本願の発明者は、上記構成により諸収差のうち、特に、歪曲収差、倍率色収差が小さく、優れた結像性能が得られることを鋭意研究により見出した。また、異常分散性のガラスを組み合わせて使用することにより、赤外域を含め優れた色収差補正を達成できることをも見出したのである。
【0008】
図2は、本発明にかかる結像光学系の代表的な軸上色収差特性を示す図である。図2において、gはg線(λ=435.84nm),FはF線(λ=486.13nm),eはe線(λ=546.07nm),CはC線(λ=656.27nm),rはr線(λ=706.52nm),AはA線(λ=768.20nm),sはs線(λ=852.11nm)をそれぞれ示している。
図から明らかなように、400nm付近から700nmに至る可視域に加えて、850nm付近までの赤外域に至るまで、軸上色収差が良好に補正されていることがわかる。
【0009】
また、本発明では、上述したように以下の条件式を満足することが望ましい。
0.3<|fs|/f<5.0 (1)
ここで、fs:前記接合レンズGSのe線(λ=546.07nm)の焦点距離,
f :前記結像光学系のe線(λ=546.07nm)の焦点距離.
【0010】
条件式(1)は、前記接合レンズGSの焦点距離の適切な範囲を示すものである。この条件は、充分な色収差補正、特に赤外域まで含めた補正に対し有効である。前記接合レンズGSは、絞りSPの物体側と像側の、少なくともいずれかに配置すれば良い。さらに好ましくは、絞りSPの両側に配置すればより良い効果が得られる。後述する第1又は第2実施例のように、絞りSPの両側に配置する時は、fsはその屈折力の大きい方(即ち、|fs|の小さい方)を指すものとする。
【0011】
条件式(1)の上限を超えると、接合レンズの屈折力が弱くなりすぎてしまい、バックフォーカスが短くなりがちとなる不都合が生じる。また、球面収差が負側に発生しやすくなり、優れた結像性能が得られなくなる。逆に、 条件式(1)の下限を超えると、接合レンズの屈折力が強くなりすぎてしまい、ペッツバール和が、負側へ大きくなる傾向となる。この結果、像面湾曲が甚大となって収差バランスを失いやすくなる不都合が生じる。
なお、本発明の効果を十分に発揮するには、上限値を3.0、下限値を1.0とする事が望ましい。
【0012】
また、本発明では、前記接合レンズは、アッベ数νdが65以上であり、かつ部分分散比Pが0.8以上であるガラス材料から成る正レンズを有し、
前記接合レンズ中最も前記開口絞りに近いレンズは、前記開口絞りが存在する側と反対側に強い曲率の面を向けたメニスカスレンズであり、
以下の条件を満足することが望ましい。
0.1<LD /(| β |・f)<4 (2)
ここで、LD:アッベ数νdが65以上で、かつ部分分散比Pが0.8以上のガラス材料から成る前記正レンズの光軸に沿った厚さの総和,
P :部分分散比(ng−ne)/(nF−nC),
ng :g線(λ=435.84nm)における屈折率,
ne :e線(λ=546.07nm)における屈折率,
nF :F線(λ=486.13nm)における屈折率,
nC :C線(λ=656.27nm)における屈折率,
β :前記結像光学系のe線(λ=546.07nm)の結像倍率.
【0013】
条件式(2)は、光学系中に用いる異常分散性のガラス材料の軸上に沿った厚さの総和について、光学系の使用倍率に応じて適切な範囲を示すものである。これは充分な色収差補正、特に赤外域まで含めた収差補正に対し有効である。そして、絞りの近傍に前記3枚接合構造を有する接合レンズを配置することと組み合わせて、より良い結像性能が得られる。
このためには、異常分散性を有していることが必要である。これは、赤外域まで含めた十分な補正を行う際に、非常に重要である。ここに、異常分散性について簡単に説明する。
【0014】
光学ガラスの持っている2つの部分分散(2つの波長の屈折率の差)の比を部分分散比Pと言い、次式のように定義される。
P= (ng−ne)/(nF−nC)
部分分散比Pとアッベ数νdとをグラフの縦横にプロットし、標準的なガラスの座標からずれているガラスが異常分散性のガラスと呼ばれる。具体例としては、標準的なガラスは、例えばショット社のクラウンガラスK7とフリントガラスF2が代表的であり、この2つのガラスの座標を結んだ線からずれの大きいものを異常分散性のガラスと言うのである。
【0015】
本発明においては、充分な色消しのためには、前記光学系中にアッベ数が65以上でかつ部分分散比Pが0.8以上であるガラスを正レンズに用いる事が、極めて有効である事を見出した。そして、所定の厚さを有する時、色収差補正と製作コストのバランスが取れた設計解が得られることを見出したのである。
【0016】
条件式(2)の上限値を超えると、異常分散性のガラス材料を大量に用いることになってしまうので、製作コストのアップを招きやすくなる不都合が生じる。逆に、条件式(2)の下限値を超えると、色収差の補正が不足となりがちとなり不都合である。
なお、本発明の効果を十分に発揮するには、上限値を1.5 、下限値を0.2とする事が望ましい。また、本発明の効果を十分に発揮するには、部分分散比Pは0.95以上であることが望ましい。そして本発明の効果を十分に発揮し、像面の平坦性を保つようぺッツバールの和を充分に小さくするためには、前記νdが65以上、Pが0.8以上の正レンズの屈折率ndは1.58以上とすることが望ましい。
【0017】
また、本発明では、前記開口絞りより物体側と像側とには、アッベ数νdが65以上であり、かつ部分分散比Pが0.8以上のガラス材料からなる正レンズを、夫々少なくとも2枚以上含み、
以下の各条件を満足することが望ましい。
0.03<ΦR/( | β | ・|fs|)<3 (3)
−0.01<LA/f<0.01 (4)
ここで、ΦR:最も像側のレンズの有効径,
LA:前記結像光学系についてのe線(λ=546.07nm)を基準としたs線(λ=852.11nm)の光線の軸上色収差.
【0018】
条件式(3)は、最も像側のレンズ径を光学系の使用倍率に応じて適切な範囲に設定することにより光束を選択的に通し、充分な周辺光量の確保と良好な収差補正を実現するために重要な条件である。
条件式(3)の上限値を超えると、有効径が大きくなりすぎてしまい、不要な光束が入りやすくなる。この結果、画質を損ねる不都合を生じるばかりか、レンズ径の大型化を招きやすくなり、装置全体の大型化とコストアップを招きやすい。また、コマ収差の補正が困難となって、良好な結像性能が得られなくなる。逆に、条件式(3)の下限値を超えると、充分な画角が得られなくなるため全長が伸びる傾向となってしまう。さらには、必要な周辺光量が得られなくなる不都合が生じるばかりか、回折による解像低下が起きやすくなってしまう。
【0019】
なお、本発明の効果を十分に発揮するには、上限値を0.5、下限値を0.1とする事が望ましい。
そして、上述のように、前記絞りより物体側と像側には、アッベ数νdが65以上で、かつ部分分散比Pが0.8以上のガラス材料からなる正レンズを、夫々少なくとも2枚以上含む構成とする事により、より色消しの効果を発揮することが出来ることも見出した。なお、本発明の効果をさらに充分に発揮するにはPが0.95以上であることがより好ましい。
【0020】
条件式(4)は、ここまでに述べたような光学系の構成において、850nm近傍までの赤外域を含めた、良好な色収差バランスを実現するために重要な条件式である。
本発明においては、上記レンズ構成により、軸上色収差は、縦軸に軸上色収差、横軸に波長をプロットすると、図2の如くS字型のカーブに見られる様な良好な補正を実現する事が出来る。そして、可視域400〜700nmを越えて850nm近傍まで、良好な軸上色収差の補正が可能となる。
条件式(4)の上限値を超えると、700nmから850nmの領域で軸上色収差が補正過剰になりやすい不都合が生じる。逆に、条件式(4)の下限値を超えると、700nmから850nmの領域で軸上色収差が補正不足になりやすい不都合が生じる。
なお、本発明の効果を十分に発揮するには、上限値を0.001、下限値を−0.0015とする事が望ましい。
【0021】
また、本発明では、前述のように前記接合レンズGSは、絞りSPの物体側と像側の、少なくともいずれか一方に配置すれば良いが、両側に配置すればより一層の効果が得られる。以下、この点について説明する。
絞りの物体側と像側に夫々第1の正レンズと負レンズと第2の正レンズの3枚から成り、全体で負の屈折力を有する接合レンズGS1、GS2を有し、いずれの接合レンズも最も絞り側のレンズはメニスカス正レンズとする事が、結像性能を高めるために、非常に有効であることを見出した。さらには、その屈折力は以下の条件式を満足することが望ましい。
0.5<fs1/fs2<3.0 (5)
ここで、fs1:前記物体側の接合レンズGS1のe線(λ=546.07nm)の焦点距離,
fs2:前記像側の接合レンズGS2のe線(λ=546.07nm)の焦点距離.
【0022】
条件式(5)は、前記物体側の接合レンズGS1の焦点距離と前記像側の接合レンズGS2の焦点距離の適正な配分を定めるものである。
条件式(5)の上限値を超えると、相対的に接合レンズGS2の焦点距離が小さくなりすぎてしまい、全長が長くなりやすくなる不都合が生じる。また、像面湾曲が正側に曲がりやすくなり、主光線から上側のコマ収差の補正が困難になるため、好ましくない。逆に、条件式(5)の下限値を超えると、相対的に接合レンズGS1の焦点距離が小さくなりすぎてしまい、球面収差が正側に過大となる傾向となって不都合である。また、主光線から下側のコマ収差の補正が困難になるため、好ましくない。
なお、本発明の効果を十分に発揮するには、上限値を2.0、下限値を1.0とする事が望ましい。
【0023】
また、優れた結像性能を得るには、以下の条件の少なくともいずれかを満たすことが好ましい。
0.5<fT/f<10.0 (6)
0.3<|RF/RR|<2.0 (7)
RF >0, RR<0
Nu <1.52 (8)
ここで、RF:前記接合レンズGS1の最も像側の曲率半径,
RR:前記接合レンズGS2の最も物体側の曲率半径,
Nu :前記接合レンズGS中のs線の最も低い屈折率の値,
fT:最も物体側の正レンズの焦点距離.
【0024】
条件式(6)は、最も物体側の両凸正レンズの焦点距離を規定するものである。特に有限距離で使用する本発明の様な光学系においては、良好な結像性能を得るために重要な条件である。特に、主光線より下側のコマ収差を充分に補正するために有効である。さらには、良好な色収差補正のためには、アッベ数が60以上のガラスから成る両凸正レンズとし、アッベ数が40以上60以下のガラスから成る負レンズと接合レンズを構成しても良い。
【0025】
条件式(6)の上限値を超えると、fTが大きくなりすぎてしまい、主光線より下側の光線のコマ収差の補正が困難となる不都合が生じるばかりか、像面湾曲が正側に曲がりを発生しやすくなってしまう。逆に、条件式(6)の下限値を超えるとfTが小さくなりすぎてしまい、球面収差の大きな曲がりが発生しやすくなる不都合が生じる。さらには、バックフォーカスが取り難くなる傾向となってしまう。
【0026】
なお、本発明の効果を十分に発揮するには、上限値を3.0、下限値を0.6とする事がより望ましい。そして、同じく、本発明の効果を十分に発揮するには、前記接合レンズを構成する負レンズはアッベ数が55以上60以下のガラスで構成することが望ましい。そして、使用倍率としては、−0.5〜−1.5倍の範囲が、良好な結像性能のためには好ましい。
【0027】
条件式(7)は、絞りを挟んだ物体側のレンズ面の曲率半径RFと像側のレンズ面の曲率半径RRの適正なる範囲を示すものである。特に、像面の平坦性を十分に補正するために重要である。
条件式(7)の上限値を超えるとRFの屈折力が強くなりすぎてしまい、像面湾曲が正側に大きく発生してしまう不都合が生じる。また、全長が長くなりがちとなる不都合も生じる。逆に、条件式(7)の下限を超えると、球面収差が正側に過大となって、像のコントラストを悪化させる不都合を招きやすい。また、主光線より上側の光線にコマ収差が発生しやすくなる不都合
が生じる。
なお、本発明の効果を十分に発揮するには、上限値を1.3、下限値を0.7とする事がより望ましい。
【0028】
条件式(8)は、前記接合レンズGS1、GS2中の最も低い屈折率の値の適正な範囲を規定するものである。これは特に赤外域まで含めた像面の平坦性の確保に対し有効である。
条件式(8)の上限値を超えると、ペッツバール和が正側の大きな値となりやすい。この結果、像面湾曲が大きく発生するため、良好な結像性能が得られない。
【0029】
なお、実際に光学系を構成する時は、以下の構成とする事が望ましい。
優れた色収差補正を達成するためには、全ての光学エレメントをアッベ数が65以上、部分分散比Pが0.8以上のガラスを少なくとも1枚有する接合レンズで構成する事が望ましい。画面全体にわたり良好な性能を確保するためには、単色色収差を補正し、併せて軸上色収差を補正することに加えて、画面周辺の倍率色収差を良好に補正することが不可欠であるからである。これにより、個々の光学エレメントを光線が通過する際、色収差発生を極力押さえる事が出来る。
【0030】
特に最も像側と物体側の正レンズは、倍率色収差の十分な補正のために、アッベ数が80以上の低分散ガラスとし、いずれもその絞り側に負レンズを有する接合レンズとする事が望ましい。そして、負レンズはアッベ数が50以上とする事が好ましい。
また、その各々の絞り側にはメニスカス負レンズとメニスカス正レンズから成る接合レンズを更に配置することが望ましい。さらには、その絞り側に接合レンズGS1、GS2を配置する事が好ましい。
【0031】
接合レンズGS1、GS2の構造について更に言及すると、いずれにおいても、負レンズの屈折率は、同一接合レンズ中の正レンズのそれよりも小さい事が望ましい。
また、負レンズのアッベ数νdは40以上60以下が望ましい。さらには、負レンズのいずれかにクルツフリント系の異常分散性ガラスを用いると、更に優れた色補正が可能となる。接合レンズGS1、GS2中には、いずれの接合レンズも最も絞り側のレンズはメニスカス正レンズとする事が好ましいことを既に述べたが、さらには、そのアッベ数νdは55以下とする事が好ましい。そして、接合レンズGS1,GS2を構成する全てのレンズは曲率中心を絞り側に向けたメニスカスレンズとすることが好ましい。
【0032】
また、赤外収差を補正するには、負レンズでも同様に、アッベ数は50以上65以下のガラスを使用することが望ましい。特に、前記接合レンズGS1、GS2中に用いると有効である。
さらに、像面の平坦性を確保するため、即ち、画面周辺まで良好な結像性能を得るためには、ペッツバール和を適切な範囲に設定する事が重要である。本発明においては、絞りの近傍に屈折力の強い負レンズを配置することによりペッツバール和が負側に変位しやすいのであるが、これを防ぐためには 3枚張りレンズを構成するレンズのうちの負レンズの屈折率はいずれも1.65以下とする事が望ましい。
【0033】
高解像を有する光学系を構成するには、接合レンズGS1,GS2以外のレンズ面も各レンズ面は、高次収差の発生を極力防ぐために、光学系はなるべく同心状の面で構成することが好ましい。特に、最も像側のレンズは絞り側に曲率中心を向けた接合メニスカスレンズとする事が好ましい。
また、ピント合せの機構は、レンズ全体を光軸上に前後させること、又は物体からレンズまでの距離若しくはレンズから撮像素子までの距離を変化させることによって行っても良い。
【0034】
本発明の光学系は、結像倍率βが−0.3〜−3.0の場合に、優れた色消し効果を発揮する。そして、より効果を発揮するのは、βが−0.5〜−1.5の場合である。β= −1 の時には、絞りに対して、完全な対称型とする事が出来る。
また、開口絞りの前後に固定の絞りを配置すれば、迷光除去に有効である。なお、本発明の光学系に、非球面、回折光学素子、屈折率分布型レンズなどを付加すれば、更に良好な性能が得られる。
【0035】
次に、添付図面に基づいて、本発明の数値実施例にかかる結像レンズを説明する。全ての実施例はスキャナー用光学系に好適なものである。
【0036】
(第1実施例)
図1は、本発明の第1実施例に係る結像レンズのレンズ構成を示す図である。
物体面O側から像面I側へ順に、正屈折力の前群GF、開口絞りSP、正屈折力の後群GR、シールドガラスSG、で構成される。前記前群GFは、正屈折力の第1レンズ成分、正屈折力の第2レンズ成分、負屈折力の第3レンズ成分で構成され、前記後群GRは、負屈折力の第4レンズ成分、正屈折力の第5レンズ成分、正屈折力の第6レンズ成分で構成される。
前記第1レンズ成分は、物体側から順に、両凸形状の正レンズGTと両凹形状の負レンズとの接合レンズで構成される。前記第2レンズ成分は物体側から順に、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズと物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズとの接合レンズで構成される。前記第3レンズ成分は物体側から順に、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズと物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズと物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズとから成り、互いに接合され全体で負の屈折力を有する第1の3枚接合レンズGS1で構成される。前記第4レンズ成分は物体側から順に、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の正レンズと物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズと物体側に凹面を向けたメニスカス形状の正レンズとから成り、互いに接合され全体で負の屈折力を有する第2の3枚接合レンズGS2で構成される。前記第5レンズ成分は物体側から順に、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の正レンズと物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズとの接合レンズで構成される。前記第6レンズ成分は物体側から順に、両凹形状の負レンズと両凸形状の正レンズとの接合レンズで構成される。
【0037】
以下の表1に第1実施例の諸元値を示す。第1欄は物体側からの各光学面の番号、第2欄Rは各光学面の曲率半径、第3欄Dは各光学面から次の光学面(又は像面)までの光軸上の距離、第4〜8欄n(e),n(g),n(C),n(F),n(s)は、それぞれ各光学面から次の光学面までに配置される光学部材(空欄は空気)のe線,g線,C線,F線,s線に対する屈折率、第9欄νdは各光学部材のd線を基準としたアッベ数、Pは部分分散比を示している。焦点距離、倍率で波長を明記していないものは、e線での値を示す。なお、以下、全ての実施例の諸元値において本実施例の諸元値と同様の符号を用いる。
また、諸元表の焦点距離、曲率半径、面間隔その他の長さの単位は一般に「mm」が使われるが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。
なおLDは諸元表中、アッベ数νdが65以上で、かつ部分分散比Pが0.8以上のガラス材料から成る正レンズ、すなわち第1実施例の場合では、物体側から第1,4,5,10,11,14番目の各レンズの光軸に沿った厚さを足し合わせた総和である。第2実施例、第3実施例も同様に、該当レンズの光軸に沿った厚さを足し合わせた総和である。
【0038】
【表1】
【0039】
図3は、本実施例の球面収差、非点収差、歪曲収差及び倍率色収差を示す図である。各収差図において、gはg線(λ=435.84nm)、eはe線(λ=546.07nm)、CはC線(λ=656.27nm)、sはs線(λ=852.11nm)を表わす。また、非点収差図において点線はメリジオナル像面を表わし、実線はサジタル像面を表わす。
収差図から明らかなように、広い画角にわたって諸収差が良好に補正され、しかも400〜850nmの広い波長範囲にわたり、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0040】
(第2実施例)
図4は、本発明の第2実施例に係る結像レンズのレンズ構成を示す図である。
物体面O側から像面I側へ順に、正屈折力の前群GF、開口絞りSP、正屈折力の後群GR、シールドガラスSG、で構成される。前記前群GFは、正屈折力の第1レンズ成分、正屈折力の第2レンズ成分、負屈折力の第3レンズ成分で構成され、前記後群GRは、負屈折力の第4レンズ成分、正屈折力の第5レンズ成分、正屈折力の第6レンズ成分で構成される。
前記第1レンズ成分は、物体側から順に、両凸形状の正レンズGTと両凹形状の負レンズとの接合レンズで構成される。前記第2レンズ成分は物体側から順に、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズと物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズとの接合レンズで構成される。前記第3レンズ成分は物体側から順に、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズと物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズと物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズとから成り、互いに接合され全体で負の屈折力を有する第1の3枚接合レンズGS1で構成される。前記第4レンズ成分は物体側から順に、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズと物体側に凹面を向けたメニスカス形状の正レンズとの接合レンズで構成される。前記第5レンズ成分は物体側から順に、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の正レンズと物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズとの接合レンズで構成される。前記第6レンズ成分は物体側から順に、両凹形状の負レンズと両凸形状の正レンズとの接合レンズで構成される。
以下の表2に本実施例の諸元値を示す。
【0041】
【表2】
【0042】
図5は、本実施例の球面収差、非点収差、歪曲収差及び倍率色収差を示す図である。収差図から明らかなように、広い画角にわたって諸収差が良好に補正され、しかも400〜850nmの広い波長範囲にわたり、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0043】
(第3実施例)
図6は、本発明の第3実施例に係る結像レンズのレンズ構成を示す図である。
物体面O側から像面I側へ順に、正屈折力の前群GF、開口絞りSP、正屈折力の後群GR、シールドガラスSG、で構成される。前記前群GFは、正屈折力の第1レンズ成分、正屈折力の第2レンズ成分、負屈折力の第3レンズ成分で構成され、前記後群GRは、負屈折力の第4レンズ成分、正屈折力の第5レンズ成分、正屈折力の第6レンズ成分で構成される。
前記第1レンズ成分は、物体側から順に、両凸形状の正レンズGTと両凹形状の負レンズとの接合レンズで構成される。前記第2レンズ成分は物体側から順に、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズと物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズとの接合レンズで構成される。前記第3レンズ成分は物体側から順に、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズと物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズと物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズとから成り、互いに接合され全体で負の屈折力を有する第1の3枚接合レンズGS1で構成される。前記第4レンズ成分は物体側から順に、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の正レンズと物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズと物体側に凹面を向けたメニスカス形状の正レンズとから成り、互いに接合され全体で負の屈折力を有する第2の3枚接合レンズGS2で構成される。前記第5レンズ成分は物体側から順に、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の正レンズと物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズとの接合レンズで構成される。前記第6レンズ成分は物体側から順に、両凹形状の負レンズと両凸形状の正レンズとの接合レンズで構成される。
以下の表3に本実施例の諸元値を示す。
【0044】
【表3】
【0045】
図7は、本実施例の球面収差、非点収差、歪曲収差及び倍率色収差を示す図である。収差図から明らかなように、広い画角にわたって諸収差が良好に補正され、しかも400〜850nmの広い波長範囲にわたり、優れた結像性能を有していることがわかる。
また、上記各実施例における条件式対応値を表4に掲げる。
【0046】
【表4】
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、有限距離に配置された物体の像を形成し、可視域から850nm近傍の赤外域に至る広い波長域にわたって良好な光学性能を有し、特に軸上色収差,倍率色収差が良好に補正されている結像光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例にかかる結像光学系のレンズ構成を示す断面図である。
【図2】本発明にかかる結像光学系の代表的な軸上色収差特性を示す図である。
【図3】第1実施例にかかる結像光学系の諸収差を示す図である。
【図4】第2実施例にかかる結像光学系のレンズ構成を示す断面図である。
【図5】第2実施例にかかる結像光学系の諸収差を示す図である。
【図6】第3実施例にかかる結像光学系のレンズ構成を示す断面図である。
【図7】第3実施例にかかる結像光学系の諸収差を示す図である。
【符号の説明】
GF 前群
GR 後群
SP 開口絞り
GS 接合レンズ
O 物体面
I 像面
SG シールドガラス
GS1 物体側の第1の接合レンズ
GS2 像側の第2の接合レンズ
GT 両凸正レンズ
Claims (4)
- 物体側から順に、少なくとも1枚のレンズを有する正屈折力の前群と、開口絞りと、少なくとも1枚のレンズを有する正屈折力の後群とを備え、
前記前群は、最も物体側には両凸正レンズを有し、更に、前記前群または前記後群は前記開口絞りに隣接して第1の正レンズと負レンズと第2の正レンズとの3枚から成り全体で負屈折力の接合レンズを有し、
以下の条件を満たす事を特徴とする結像光学系。
0.3 < |fs|/f < 5.0 (1)
ここで、fs:前記接合レンズのe線(λ=546.07nm)の焦点距離,
f :前記結像光学系のe線(λ=546.07nm)の焦点距離. - 前記接合レンズは、アッベ数νdが65以上であり、かつ部分分散比Pが0.8以上であるガラス材料から成る正レンズを有し、
前記接合レンズ中最も前記開口絞りに近いレンズは、前記開口絞りが存在する側と反対側に強い曲率の面を向けたメニスカスレンズであり、
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の結像光学系。
0.1<LD /(| β |・f)<4 (2)
ここで、 LD: アッベ数νdが65以上で、かつ部分分散比Pが0.8以上のガラス材料から成る前記正レンズの光軸に沿った厚さの総和,
P :部分分散比(ng−ne)/(nF−nC),
ng :g線(λ=435.84nm)における屈折率,
ne :e線(λ=546.07nm)における屈折率,
nF :F線(λ=486.13nm)における屈折率,
nC :C線(λ=656.27nm)における屈折率,
β :前記結像光学系のe線(λ=546.07nm)の結像倍率. - 前記開口絞りより物体側と像側とには、アッベ数νdが65以上であり、かつ部分分散比Pが0.8以上のガラス材料からなる正レンズを、夫々少なくとも2枚以上含み、
以下の各条件を満足する事を特徴とする請求項1又は2に記載の結像光学系。
0.03<ΦR/( | β | ・|fs|)<3 (3)
−0.01<LA/f<0.01 (4)
ここで、ΦR:最も像側のレンズの有効径,
LA:前記結像光学系についてのe線(λ=546.07nm)を基準としたs線(λ=852.11nm)の光線の軸上色収差. - 前記開口絞りに隣接して、その物体側と像側に各々全体で負の屈折力を有する第1の接合レンズと第2の接合レンズを有し、前記第1および第2の接合レンズは各々第1の正レンズと負レンズと第2の正レンズとの3枚から成り、更に最も前記開口絞り側のレンズはメニスカス正レンズであって、
以下の条件式を満足する事を特徴とする請求項1、2又は3に記載の結像光学系。
0.5 <fs1/fs2<3.0 (5)
ここで、fs1:前記物体側の第1の接合レンズのe線(λ=546.07nm)の焦点距離,
fs2:前記像側の第2の接合レンズのe線(λ=546.07nm)の焦点距離.
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