JP4097331B2 - 接着方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は接着方法に関し、更に詳細には金属板と多孔質材、例えばブレーキパッドの裏板(金属板)と摩擦材(多孔質材)との接着に好適な方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ブレーキパッドを製造するに際しては、ブレーキパッドの裏板に摩擦材を接着する工程が不可欠である。
【0003】
このような例としては特許第2642076号公報に記載されているものがある。これはブレーキパッドの裏板にプライマー(熱硬化性有機物)を塗布した後、硬化処理を施してプライマーを硬化させた後、この上に摩擦材を接着剤で接着するものである。この接着剤はいわゆるスプレーにより塗布し、乾燥工程を経ることで所定の強度が得られるものである。
【0004】
一方、特開平2−283924号公報には、裏板に粉体の接着剤を静電塗布し、これを加熱しつつブレーキライニングを熱プレスしたものが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記の従来の方法では下記のような問題がある。
先ず前者のものでは溶剤入りの接着剤を使用しているため人体に有害であり、スプレーにより拡散した場合作業環境の悪化を招来することとなる。またプライマーの塗布と硬化及び接着剤の乾燥に時間を要するため生産性に限界がありコスト高の原因になるとともに、接着層に溶剤が残留して気泡による内部エネルギーが増大し、接着強度の低下を招来する。
【0006】
さらに接着剤がスプレーにより周囲に拡散するため大量の接着剤が回収できないまま空気中に拡散してしまうという問題がある。
また、前者の方法では図9に示すように、金属板1の表面にプライマー20、接着剤21、摩擦材2の順で形成されている。このプライマー20は、金属板1への塗布後、硬化処理を施されて完全硬化し、プライマー上の接着剤21は乾燥のみで硬化処理が施されていないため、熱成型時そのほとんどが摩擦材2中に流入し、接着層として残るのはむしろ予めプライマーとして硬化させておいた皮膜(20)である。このため、接着層内に界面(プライマーと接着剤間)が摩擦材付近に存在することとなり、せん断による凝集破壊を起こす虞れがある。
【0007】
次に、後者のものでは溶剤によって及び/またはサンドブラストによってクリーニングされたままの支持板に粉状接着剤を静電塗布しているため、接着強度が十分でない問題がある。
【0008】
本発明はかかる従来の問題点を解決するためになされたもので、プライマーを使用することなく裏板に摩擦材を強力に接着することができ、また接着剤の無駄がない接着方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は前述した技術的課題を解決するために以下のような方法とした。
すなわち、金属板1に多孔質材2を接着するための方法であって、金属板表面にリン酸塩皮膜3を形成する工程、リン酸塩被膜上3に静電塗布により熱硬化性接着剤粒子4を付着させる工程、熱硬化性接着剤粒子4をプレキュアして、予備硬化させた状態で多孔質材を熱硬化性接着剤上に圧着加熱する工程とを含む。
【0010】
前記リン酸塩皮膜3としては、リン酸鉄皮膜、リン酸マンガン皮膜、リン酸亜鉛皮膜が例示できる。
前記熱硬化性接着剤は複合型熱硬化性接着剤が好ましく、金属表面と多孔質材料の接着力が十分なものとしては、熱可塑性樹脂変性熱硬化性接着剤又はエラストマー変性熱硬化性接着剤を示すことができる。
【0011】
熱可塑性樹脂変性熱硬化性接着剤としては、ポリビニルブチラール/フェノリック、ポリビニルホルマール/フェノリック、ナイロン/フェノリック、ポリ酢酸ビニル/フェノリック、ロジン/フェノリック、ナイロン/エポキシ、ポリアミド/エポキシ、アクリル/エポキシ、アニリン/エポキシ、ポリエステル/エポキシ等が例示できる。
【0012】
またエラストマー変性熱硬化性接着剤としては、NBR/フェノリック、クロロプレン/フェノリック、シリコーン/フェノリック、ポリウレタン/フェノリック、NBR/エポキシ、ポリウレタン/エポキシ等が例示できる。
【0013】
なお、フェノール樹脂はレゾール又はヘキサミン含有のノッボラックが使用できる。
また粉体接着剤の静電塗布工程としては、外部静電方式(コロナ帯電ガン)や内部帯電方式(トリボ帯電ガン)を使用することができる。
【0014】
このような帯電によって熱硬化性接着剤粒子4を付着させることで接着剤の回収率を90%程度とすることができ、従来の溶剤型スプレーを使用した場合の回収率30%に比較して大幅な改善がみられた。
【0015】
さらに、粒子(粉)状の接着剤を使用したことで溶剤が不要となり、環境汚染の防止、接着剤の乾燥工程に伴う時間や強度の低下を防止することができる。
さらにまた、粒子状の接着剤を金属板1に塗布するに先立ち、金属板1にリン酸塩皮膜を形成しているため、表面のエネルギー、接着面積が増大し、金属板1とリン酸塩皮膜間及びリン酸塩被膜と接着剤間の分子同士の引っ張り合いにより強力な接着力が得られる。
【0016】
上記のように接着剤を熱可塑性樹脂変性、エラストマー変性のものとすることによって熱成形時に、摩擦材中への接着剤流入の規制が容易となり、最終製品としての適正接着剤厚みの確保、摩擦材との投錨効果の成立が達成される。
【0017】
またそれらの適度な粘性の維持によって接着層の確保、投錨効果の成立が容易となり、接着剤加熱条件の範囲を広げることも可能となる。
本発明は特に車両用ブレーキのブレーキパッドに応用するのが好適であるが、これらに限らず、金属と多孔質材とを接着するものには構造用非構造用を問わず広く応用が可能である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の接着方法を図1から図8に示される実施形態について更に詳細に説明する。
【0019】
以下の実施形態は車両のブレーキに使用するブレーキパッドの製法に応用したものであって裏板(プレッシャープレート)である金属板1の表面に多孔質材(多孔質の摩擦層)を接着するものである。図7はこの発明の実施形態による工程を示す図である。
【0020】
まず図1に示すように、化成処理によって金属板1の表面にリン酸鉄皮膜3を形成する。このリン酸鉄皮膜3を形成することで表面エネルギーが増大し接着面積も増大する(工程11)。
【0021】
続いて図2に示すように、ポリビニル変性フェノール樹脂である熱硬化性接着剤粒子4をリン酸鉄皮膜3上に形成する(工程12)。この形成方法としては外部帯電方式と内部帯電方式とがある。
【0022】
図6に示す装置は外部帯電方式を実施するものである。熱硬化性接着剤粒子4はコロナ帯電ガンと呼ばれる筒状体5内を高速で通過する。この筒状体5の下方には電極7が配置されている。
【0023】
前記電極7は高圧電源6のマイナス側に接続されており、高圧電源6のプラス側は金属板1に接続されている。この構造によって前記電極7近傍にはコロナ放電現象が発生し、空気中に放出された高速の電子が電極7付近の空気分子に捕捉されて、低速のマイナスイオンとなる。この領域を通過する熱硬化性接着剤粒子4はマイナスイオンと衝突してマイナス極性に帯電し、電界8に誘導されてプラスに帯電している金属板1に付着する。このため、熱硬化性接着剤粒子4は無駄なく金属板1に付着するとともに、溶剤を含まないため環境の悪化を招来することはない。
【0024】
一方、内部帯電方式では、熱硬化性接着剤粒子4を高速で通過させる筒状体を用意し、この筒状体内部に高速で空気を送給し、この際に生ずる摩擦で熱硬化性接着剤粒子4を帯電させるようにする。
【0025】
このようにして形成された熱硬化性接着剤粒子4をプレキュアして樹脂が完全硬化に至る前の段階の半硬化の状態とし(工程13)、熱硬化性接着剤粒子の表面張力を減少させる(図3)。プレキュアによって熱硬化性接着剤粒子4のガラス転移点で接着剤の表面張力が裏板の表面張力より減少し良好なぬれ特性が得られる。また、リン酸鉄皮膜3と熱硬化性接着剤粒子4間の界面エネルギーは従来のプライマーと接着剤間の界面エネルギーに比較して小さいため物理特性が安定している。
【0026】
この状態で予備成型された摩擦材2を、Bステージレベルまで予備硬化した熱硬化性接着剤上に圧着加熱する(工程14、16)。このときプレキュアによって熱硬化性接着剤の溶融粘度の増大及びある程度の高分子化が図られていることから、多孔質である摩擦材2への熱硬化性接着剤の流入が抑制され強固な接着剤層が形成される(図8)。熱成形後の加熱により熱硬化性接着剤は完全硬化し、摩擦材2と熱硬化性接着剤粒子4との投錨効果の発生、接着剤凝集力の形成、各界面張力の極小安定化が生じるため、摩擦材2は裏板上に完全に接着される(工程15)。
【0027】
従来の方法では、接着層内に界面(プライマーと接着剤間)が摩擦材付近に存在することとなり、せん断による凝集破壊を起こす虞れがあったが、本発明では界面が生じないため強度低下を起こすことはない。
【0028】
本発明の方法によって形成される接着層は、図8に示すように、図9の従来例における有機皮膜と接着層との厚みを足したものと同等になる。このためボス穴9から侵入する水分に対しては従来と同等の防錆効果が期待できる。また、金属板1にはリン酸鉄皮膜3が形成されているため製造中における防錆効果も期待できる。
【0029】
以上述べたように、本発明ではプライマー(有機皮膜)を使用しないため、プライマー自体のコストは勿論、プライマー焼き付けのエネルギーコストもかからない。
【0030】
また、帯電によって熱硬化性接着剤粒子4を付着させることで接着剤の回収率を90%程度にすることができ、従来の溶剤型スプレーを使用した場合の回収率30%に比較して大幅に改善された。
【0031】
さらに、粒子(粉)状の接着剤(4)を使用したことで溶剤が不要となり、環境汚染の防止、接着剤の乾燥工程に伴う時間や強度の低下を防止することができた。
【0032】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、プライマーを使用することなく裏板に摩擦材を強力に接着することができる。
【0033】
また接着剤として溶剤を用いないため、環境の悪化や乾燥中の強度低下がなく、さらに生産性が良好で生産エネルギーも僅かで済むため低コストで実施できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である接着方法の第1段階を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態である接着方法の第2段階を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態である接着方法の第3段階を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態である接着方法の第4段階を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態である接着方法の第5段階を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態である接着方法の熱硬化性接着剤粒子の付着装置の概略を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態である接着方法の工程を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態である接着方法における接着層及び接着状態を示す図である。
【図9】従来の接着方法を示す断面図である。
【符号の説明】
1 金属板
2 摩擦材
3 リン酸鉄皮膜
4 熱硬化性接着剤粒子
Claims (3)
- 金属板に多孔質材を接着するための方法であって、金属板表面にリン酸塩皮膜を形成する工程、リン酸塩皮膜上に静電塗布により熱硬化性接着剤粒子を付着させる工程、熱硬化性接着剤粒子をプレキュアして予備硬化させた状態で、多孔質材を熱硬化性接着剤上に圧着加熱する工程、とを含み、
前記熱硬化性接着剤粒子を付着させる工程は、前記リン酸塩皮膜上にプライマーを塗布することなく、前記熱硬化性接着剤粒子を付着させることを特徴とする接着方法。 - 前記熱硬化性接着剤は、熱可塑性樹脂変性熱硬化性接着剤である請求項1に記載の接着方法。
- 前記熱硬化性接着剤は、エラストマー変性熱硬化性接着剤である請求項1に記載の接着方法。
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