JP4095236B2 - 基板処理装置及び基板処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示器用のガラス基板や半導体ウェハなどの基板を保持した状態で鉛直方向の軸芯周りで回転させながら洗浄処理や乾燥処理などの所要の処理を施す基板処理装置及び処理方法に係り、特に基板の周辺部の処理をムラなく行う技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の基板処理装置として、例えば、基板の端縁を当接支持するための保持ピンが複数個立設された回転台を備えたものが挙げられる。例えば、図9、図10に示すように、基板Wの外周端縁の3箇所以上を基板保持部材100で保持し、基板Wの処理時には、回転台101ごと基板Wを回転させながら、回転台101の中心P1付近に配設されたノズルから基板Wの一方側の処理面(図では下面)に向けて処理液Qを吐出させ、遠心力で中心P1側から周辺側に向けて下面を伝わった処理液Qを上面に回り込ませる。
【0003】
これによって、基板Wの処理面全面と基板Wの外周端縁、あるいは、基板Wの処理面全面と基板Wの外周端縁と基板Wの処理面と反対側の反対面(図では上面)の周辺部を含む図の点線で示す処理領域RAを処理する基板処理方法が実施されている。すなわち、基板Wの上面のうち周辺部だけが処理液によって処理されるようになっている。処理の具体例としては、上面全体に銅メッキが施された基板を処理の対象とし、下面全体と、上面のうちの周辺部だけ、例えば、周辺部の1〜7mm程度で銅メッキを除去するものが挙げられる。
【0004】
上記の基板保持部材100には、基板が遠心力により飛び出すことがないように、爪やリングなどから成る部材を用いて基板の外周端縁を保持するメカニカルチャックがある。メカニカルチャックの保持力は、バネ等から成る付勢手段を備え、この付勢手段の機械的な力を利用するものである。また、この保持力は回転台101に設けられた解除手段の駆動により解除される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。すなわち、処理の間中、基板Wはその外周端縁を複数個の基板保持部材100によって挟持されている関係上、基板Wの上面の周辺部のうちその付近に位置する部分には処理液が到達しない。そのため基板Wの上面のうちの周辺部を均一に処理することができないという問題がある。そこで、基板処理中に基板保持部材100による保持位置がずれる事が要求されるようになってきた。
【0006】
一方、基板の処理は一つの装置内で種々に処理が続けて行われるが、処理液の除去や基板の乾燥処理では基板を高速回転するため、基板は基板保持部材100により強く保持される必要がある。そこで、従来のメカニカルチャックで上記のように処理中に保持位置がずれる要求と、高速回転における安定性を同時に達成することが考えられるが、そのためには機械的に複雑な構造が必要になる。
【0007】
更に、メカニカルチャックであれば回転台に設けられた解除手段が処理中に多量の処理液を浴びることになる。このように解除手段を処理液によって濡らすと、解除手段にかかる駆動系を腐食させ、解除手段の動作不良を引き起こす。このため、処理ムラを防止できる新たなチャック方式が要望されている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、基板を回転させながら基板に処理液を供給して処理を行う基板処理装置及び処理方法に関し、特に基板をその外周端縁において基板保持部材にて保持する時に、この保持に起因する処理ムラを防止して均一な処理を施すことができる基板処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記目的を達成するために、本発明は、基板を回転させながら基板に処理液を供給し、基板の表面の液を振り切り乾燥を行う基板処理装置であって、基板を挟持することなく下方から支持することにより基板を摺動自在に保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板を鉛直方向の軸芯周りで回転させる基板回転手段と、前記基板保持手段に保持された基板に対向して配置された押圧手段と、前記押圧手段を前記基板保持手段に対して前記基板の主面に当接して前記基板保持手段との間に基板を挟持した近接位置と、離間した離間位置との間で相対的に移動させる移動手段と、基板を処理する際に、押圧手段を離間位置にした状態で基板保持手段を回転し、回転する基板に対して処理液を供給する第一処理工程と、前記移動手段により押圧部材を近接位置にした状態で基板の周縁部を挟持し、前記押圧手段と前記基板保持手段をとともに回転する第二処理工程とで前記基板回転手段と前記移動手段を制御する制御手段と、を具備し、前記第一処理工程は、前記基板保持手段に保持されつつ回転する基板に対して処理液を供給することにより前記基板保持手段上の基板を摺動させる摺動工程を含み、前記第二処理工程は、前記押圧部材と前記基板保持手段とが基板の周縁部を挟持し一体的に回転して基板表面の液成分を振り切る乾燥工程を含むことを特徴とする基板処理装置である。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の基板処理装置において、前記基板保持手段は、基板を水平姿勢で支持した状態で回転駆動する回転支持板と、前記回転支持板に立設され、基板の外周端縁に当接して前記基板の水平位置を規制するとともに基板の下面を摺動自在に保持する基板保持部材と、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、基板を回転させながら基板に処理液を供給して処理、基板の表面の液を振り切り乾燥を行う基板処理方法であって、基板を挟持することなく基板の外周端縁を下方から支持することにより基板を基板保持手段で摺動自在に保持し、基板を回転させながら基板の少なくとも一方側の面に処理液を供給して処理する第一処理工程と、前記基板保持手段に対して相対的に移動する押圧手段が、前記基板の一方側の面に当接して前記基板保持手段との間に基板を挟持した状態で、前記押圧手段と前記基板保持手段をとともに回転する第二処理工程と、を具備し、前記第一処理工程は、前記基板保持手段に保持されつつ回転する基板に対して処理液を供給することにより前記基板保持手段上の基板を摺動させる摺動工程を含み、前記第二処理工程は、前記押圧部材と前記基板保持手段とが基板の周縁部を挟持し一体的に回転して基板表面の液成分を振り切る乾燥工程を含むことを特徴とする基板処理方法である。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の基板洗浄方法において、前記第一処理工程は、基板の下面に処理液を供給し、遠心力で基板上面の周辺部に処理液を周り込ませて基板外周端縁の処理を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明の作用は次のとおりである。請求項1に係る発明の基板処理装置においては、基板は基板保持手段に摺動自在に保持されているので、この状態で基板を回転させる第一処理工程で基板は基板保持手段に対して滑り出し、基板と基板保持手段の回転数に差が生じて基板が基板保持手段に対して相対回転を行う。したがって、基板保持手段が基板外周端縁の同じ位置に当接し続けることがない。また、第二処理工程では、押圧手段と基板保持手段により基板を挟持して処理されるので、基板は確実に回転される。このように摺動自在に保持された基板に対して押圧手段を近接位置と離間位置とに移動自在に構成することで、基板と基板保持手段との当接位置をずらしながらの第一処理と、確実に保持する第二処理を達成できる。
【0014】
請求項2に係る発明の基板処理装置においては、基板保持手段は回転支持板と基板保持部材により構成される。基板は基板保持部材にその下面を摺動自在に保持されるので、基板が滑り出しやすくなる。その結果、処理液により汚染されて基板の保持が不確実になるという問題がない。
【0015】
請求項3に係る発明の基板処理方法においては、基板は第一処理工程により、基板が基板保持手段に対して相対的に回転しながら処理される。したがって、基板保持手段が基板外周端縁の同じ位置に当接し続けることがない。また、第二処理工程により基板は押圧手段と基板保持手段により挟持されて回転しながら処理される。したがって、基板は確実に回転される。すなわち、押圧手段の移動により、基板の周辺部をむらなく処理する工程と、例えば基板を高速回転して乾燥する処理を行う工程を確実に切り換え実施できる。
【0016】
請求項4に係る発明の基板処理方法においては、基板の下面に処理液を供給し第一処理工程が行われる。したがって、処理液は基板上面の周辺部に周り込むとともに、基板保持部材が基板外周端縁の同じ位置に当接し続けることがない。その結果、基板の保持に起因する処理ムラを防止して均一な処理を基板上面の周辺部に施すことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を示す縦断面図である。この装置は、処理対象の半導体ウエハ(基板)Wに薬液や純水を用いた回転処理を施すためのものであり、薬液と廃液とを分離して排液する機能を備えている。
【0018】
基板Wは、基板保持手段としてのスピンチャック1に水平姿勢で保持される。このスピンチャック1は、回転軸2の上端に一体回転可能に取り付けられた回転支持板としてのスピンベース3を有している。スピンベース3の上面には、基板Wの外周端縁を3箇所以上で保持する3個以上の基板保持部材4が、スピンベース3の周縁に沿って等間隔で立設されている。なお、図1以下では、図面が煩雑になることを避けるために、2個の基板保持部材4のみを示している。
【0019】
各基板保持部材4は、基板Wの外周端縁を下方から支持する支持面4aと支持面4aに支持された基板Wの外周端面に当接して基板Wの移動を規制する案内立ち上がり面4bとを備えている。
【0020】
回転軸2の下端付近には、ベルト伝動機構5などによって基板回転手段としての電動モーター6が連動連結されていて、電動モーター6を駆動することによって、回転軸2、スピンチャック1とともに、スピンチャック1に保持された基板Wを鉛直方向の軸芯J周りで回転させる。
【0021】
また、回転軸2は中空を有する筒状の部材で構成され、この中空部に洗浄液供給管7が貫通され、その上端部の洗浄液供給部7aからスピンチャック1に保持された基板Wの下面の回転中心付近に洗浄液を供給できるように構成されている。洗浄液供給管7は配管8に連通接続されている。この配管8の基端部は分岐されていて、一方の分岐配管8aには薬液供給源9が連通接続され、他方の分岐配管8bには純水供給源10が連通接続されている。各分岐配管8a、8bには開閉バルブ11a、11bが設けられていて、これら開閉バルブ11a、11bの開閉を切り換えることで、洗浄液供給部7aから薬液と純水とを選択的に切り換えて供給できるようになっている。
【0022】
また、回転軸2の中空部の内壁面と洗浄液供給管7の外壁面との間の隙間は、気体供給路12となっている。この気体供給路12は、開閉バルブ13が設けられた配管14を介して気体供給源15に連通接続されていて、気体供給路12の上端部の気体供給部12aからスピンベース3と基板Wの下面との間の空間に、清浄な空気や清浄な不活性ガス(窒素ガスなど)などの清浄な気体を供給できるように構成されている。
【0023】
回転軸2やベルト伝動機構5、電動モーター6などは、ベース部材20上に設けられた円筒状のケーシング16内に収容されている。
【0024】
ベース部材20上のケーシング16の周囲には受け部材21が固定的に取り付けられている。受け部材21には、円筒状の仕切り部材22a、22b、22cが立設されていて、これら仕切り部材22a〜22cとケーシング16の外壁面とによって、排気槽23、第1の排液槽24a、第2の排液槽24bが形成されている。ケーシング16の外壁面と内側の仕切り部材22aの内壁面との間の空間が排気槽23であり、内側の仕切り部材22aの外壁面と中間の仕切り部材22bの内壁面との間の空間が第1の排液槽24aであり、中間の仕切り部材22bの外壁面と外側の仕切り部材22cの内壁面との間の空間が第2の排液槽24bである。
【0025】
排気槽23の底部には排気ダクト25に連通接続された排気口26が設けられていて、排気口26から排気槽23内の気体が吸引されるように構成されている。また、第1の排液槽24aの底部には回収ドレイン27に連通接続された第1の排液口28aが設けら、第2の排液槽24bの底部には廃棄ドレイン29に連通接続された第2の排液口28bが設けられている。
【0026】
なお、図1以下では、図面が煩雑になることを避けるために、各仕切り部材22a〜22c、及び、後述する案内部材30は、断面形状のみを示している。
【0027】
第1、第2の排液槽24a、24bの上方には、スピンチャック1及びそれによって保持された基板Wの周囲を包囲するように筒状の案内部材30が昇降自在に設けられている。この案内部材30には、上方に向かうほど径が小さくなる傾斜部31a、31bが2箇所に形成されている。各傾斜部31a、31bは、互いに間隔をあけて同芯状に配備されている。また、各傾斜部31a、31bの上端部には径Rが同じに構成された気体取り込み口32a、32bが形成されている。さらに、傾斜部31aの下端部には垂直部33、34aが連なっており、傾斜部31bの下端部には垂直部34bが連なっている。各傾斜部31a、31bは、垂直部34a、34bを介して連結されており、この連結部分には円周方向に、排液案内流路を形成する多数の開口35が穿設されている。また、案内部材30には、垂直部33と垂直部34aの間に円環状の溝36が形成されていて、この溝36が中間の仕切り部材22bに嵌入されるとともに、垂直部34a、34bが、第2の廃液槽24b内に嵌入されるように、案内部材30が配置されている。
【0028】
スピンチャック1に保持された基板Wの高さ位置HWに、傾斜部31aが位置しているとき、回転される基板Wから飛散される洗浄液は傾斜部31aで受け止められ、傾斜部31a、垂直部33に沿って第1の排液槽24aに導かれ、第1の排液口28aから排液されることになる。この装置では、傾斜部31a、垂直部33、第1の排液槽24a、第1の排液口28aは薬液の回収に用いられ、第1の排液口28aから回収ドレイン27を経て図示しない回収タンクへ薬液が回収され、その回収タンクから回収された薬液が薬液供給源9に供給されて、薬液が再利用されるようになっている。
【0029】
また、スピンチャック1に保持された基板Wの高さ位置HWに、傾斜部31bが位置しているとき、回転される基板Wから飛散される洗浄液は傾斜部31bで受け止められ、傾斜部31b、垂直部34bに沿い、開口35から第2の排液槽24bに導かれ、第2の排液口28bから排液されることになる。この装置では、傾斜部31b、垂直部34b、開口35、第2の排液槽24b、第2の排液口28bは洗浄処理に使用された後の廃液(薬液が混ざった純水)の廃棄に用いられ、第2の排液口28bから廃棄ドレイン29を経て廃液が廃棄されるようになっている。
【0030】
案内部材30は、昇降機構40に連結される。案内部材30は、支持部材41を介して昇降機構40に支持されている。この昇降機構40は、図示しないモーターを駆動することにより昇降され、これに伴って案内部材30が昇降されるようになっている。
【0031】
案内部材30は、スピンチャック1に保持された基板Wの高さ位置HWに傾斜部31aが位置する第1の高さH1、基板Wの高さ位置HWに傾斜部31bが位置する第2の高さH2、上方の気体取り込み口32bが基板Wの高さ位置HWよりも下方に位置する第3の高さ位置H3の3段階の高さ位置で昇降される。案内部材30の上記第1〜第3の高さ位置H1〜H3(第6(a)〜(c)参照)に対応する昇降機構40の高さ位置には、反射型の光センサなどで構成される昇降検出用のセンサが配設され、これらセンサからの検出信号に基づき、モーターが駆動制御され案内部材30が第1〜第3の高さ位置H1〜H3に位置させるように構成されている。なお、図5に示すように、この昇降制御は、昇降制御手段として機能する制御部50によって行われるように構成されている。
【0032】
図1に戻って、スピンチャック1の上方には中心部に開口を有する雰囲気遮断部材60が配置されている。この雰囲気遮断部材60は、基板Wの径より若干大きく、かつ、案内部材30の気体取り込み口32a、32bの径Rよりも小さい径を有していて、中空を有する筒状の支持軸61の下端部に一体回転可能に取り付けられている。そして、雰囲気遮断部材60の下面には、基板Wの外周部に3箇所以上で当接する3個以上の押圧部材68が、雰囲気遮断部材60の周縁に沿って等間隔で立設されている。ここで、押圧部材68と雰囲気遮断部材60が本発明の押圧手段に相当する。なお、図1以下では、図面が煩雑になることを避けるために、2個の押圧部材68のみを示している。
【0033】
支持軸61は、支持アーム62に回転自在に支持されている。支持軸61には従動プーリ63が一体回転可能に取り付けられている。その従動プーリ63と、モーター64の駆動軸に連結された主動プーリ65との間に無端ベルト66が架け渡されていて、モーター64を駆動することにより支持軸61とともに雰囲気遮断部材60が鉛直方向の軸芯J周りに回転されるように構成されている。
【0034】
また、支持アーム62は、移動手段に相当する接離機構67によって昇降され、この支持アーム62の昇降によって、スピンチャック1に対して雰囲気遮断部材60が接離されるように構成されている。この装置では、雰囲気遮断部材60がスピンチャック1に保持された基板Wの上面に対して押圧部材68が当接し押圧する近接位置LHと、雰囲気遮断部材60がスピンチャック1に保持された基板Wの上面から上方に離れた離間位置である下方位置MHと、大きく離れた上方位置HHとの3段階の位置との間で雰囲気遮断部材60が昇降できるように構成されている。このような接離動を実現する接離機構67は、昇降機構45と同様に螺軸などを用いた機構や、あるいは、エアシリンダなどで構成されている。そして、図5に示すように、この接離制御も制御部50によって行われるように構成されている。
【0035】
図1に戻って、雰囲気遮断部材60の中心の開口及び支持軸61の中空部には、洗浄液供給管70が貫通され、その下端部の洗浄液供給部70aからスピンチャック1に保持された基板Wの上面の回転中心付近に洗浄液を供給できるように構成されている。洗浄液供給管70は配管71に連通接続されている。この配管71の基端部は分岐されていて、一方の分岐配管71aには薬液供給源9が連通接続され、他方の分岐配管71bには純水供給源10が連通接続されている。各分岐配管71a、71bには開閉バルブ72a、72bが設けられていて、これら開閉バルブ72a、72bの開閉を切り換えることで、洗浄液供給部70aから薬液と純水とを選択的に切り換えて供給できるようになっている。
【0036】
また、雰囲気遮断部材60の中心の開口の内壁面及び支持軸61の中空部の内壁面と、洗浄液供給管70の外壁面との間の隙間は、気体供給路73となっている。この気体供給路73は、開閉バルブ74が設けられた配管75を介して気体供給源15に連通接続されていて、気体供給路73の下端部の気体供給部73aから雰囲気遮断部材60と基板Wの上面との間の空間に清浄な気体を供給できるように構成されている。
【0037】
制御部50は、図5に示すように案内部材30の昇降制御と雰囲気遮断部材60の接離制御の他にも、スピンチャック1の回転制御や雰囲気遮断部材60の回転制御、洗浄液供給部7a、70aからの洗浄液の供給制御、気体供給部12a、73aからの気体の供給制御などの制御も行うように構成されている。
【0038】
図2は、雰囲気遮断部材60の底面図である。雰囲気遮断部材60の下面60Aは、基板Wの上面に対向する基板対向面をなしており、その周縁部には、周方向に沿って等間隔に6個の押圧部材68が配置されている。この押圧部材68は、ゴムやその他の弾性材料から構成されており、その基板Wに臨む表面には、図4の拡大断面図に示されているように、基板Wとほぼ平行な平坦面68aと、基板Wの中心に向かうに従って基板Wの上面から離反するように傾斜したテーパー面68bとを有している。
【0039】
図3は、スピンベース3の平面図である。スピンベース3の上面3Aは基板Wの下面に対向する基板対向面をなしており、その周縁部には、周方向に沿って等間隔に6個の基板支持部材4が配置されている。すなわち、雰囲気遮断部材60側の押圧部材68に対応するように基板支持部材4が設けられている。この基板支持部材4は、図4の拡大断面図に示されているように、基板Wの下面の周縁部を支持する支持面4aと、この支持面4aよりもスピンベース3の半径方向外方寄りの位置において立ち上がり、半径方向内方に向かうに従って下がるように傾斜した案内立ち上がり面4bとを有している。この基板支持部材4の支持面4aは基板Wの下面が滑る材質で形成されており、例えばPTFEやその他の弾性材料で構成されている。
【0040】
図示しない基板搬送ロボットからスピンベース3への基板Wの受け渡しが行われるとき、基板Wは、基板支持部材4の案内立ち上がり面4bによって支持面4aへと案内されて落とし込まれる。この時、6個の基板支持部材4上で基板Wは飛び出しは規制されるが、挟持されておらず支持面4aに摺動自在に保持されていることとなる。こうして、基板Wがスピンベース3に位置合わせされて保持された後、接離機構67が雰囲気遮断部材60を下降させる。そして、スピンベース3と雰囲気遮断部材60とが近接される過程で、雰囲気遮断部材60側の押圧部材68のテーパー面68bが基板Wの上面の周縁部に接し、基板Wを回転中心に向けて案内しながら弾性変形する。このとき、スピンベース3側の基板支持部材4の弾性変形も同時に起こる。そして、この状態では、基板支持部材4と押圧部材68はそれぞれ弾性変形して、基板Wの周縁部を挟持する。このとき、雰囲気遮断部材60の下面60Aと基板Wの上面との間には一定の間隔D1が確保され、同様に、基板Wの下面とスピンベース3の上面3Aとの間には一定の間隔D2が確保される。
【0041】
以上のような構成を有する装置の動作を図6(a)ないし図6(c)を参照して説明する。図6(a)はスピンチャック1に対する基板Wの受渡しを行う状態を示し、図6(b)は薬液処理の状態、図6(c)はリンス処理及び乾燥処理の状態を示している。なお、一例として、基板Wはその上面にメッキ処理がされており、この装置にて上面の周辺部数mm程度をエッチングして除去する処理を施すことを目的としているものとして説明する。
【0042】
処理工程の全体の流れについて以下に概説する。
まず、図6(a)に示すように、未処理の基板Wをスピンチャック1に搬入するときには、制御部50は、接離機構67を制御して、雰囲気遮蔽部材60を上昇させる。これに伴い、雰囲気遮蔽部材60これに関連して設けられている洗浄液供給管70や各種の配管71などが上昇する。そして、昇降機構40を制御して、案内部材30を第3の高さ位置H3に位置させて、スピンチャック1を案内部材30の上方から突出させるとともに、雰囲気遮断部材60を上方位置HHに位置させて、雰囲気遮断部材60とスピンチャック1との間の間隔を広げる。こうして、雰囲気遮蔽部材60とスピンベース3との間に、基板Wの搬入経路が確保される。この時、基板保持部材4と押圧部材68の夫々6個が対向する回転位置で、スピンベース3と雰囲気遮断部材60が停止されている。
【0043】
これにより、スピンチャック1の上端が受け渡し高さに達すると、この状態で、図示しない基板搬送ロボットが未処理の基板Wをスピンチャック1に引き渡す。スピンチャック1は受け取った基板Wを保持する。基板搬送ロボットの基板保持ハンドがスピンチャック1内に入り込み、基板保持部材4の上に未処理の基板Wをおき、その後、スピンチャック1外に退避する。この過程で、上述のように、基板Wは、基板支持部材4の案内立ち上がり面4bによって、支持面4aへと落とし込まれる。
【0044】
続いて、基板Wの受け取りが終わると、図6(b)に示すように、制御部50は、接離機構67を制御して、雰囲気遮断部材60を下降させる。これにより、雰囲気遮断部材60がスピンベース3に下方位置MHに導かれ、雰囲気遮断部材60の押圧部材68と、スピンベース3の基板支持部材4とが、基板Wの周縁部で所定の隙間を有して6箇所で対向することになる。
【0045】
さらに、案内部材30を第1の高さ位置H1に位置させて、スピンチャック1に保持された基板Wの高さ位置HWに案内部材30の傾斜部31aを位置させるとともに、雰囲気遮断部材60を下方位置MHに位置させて、スピンチャック1に保持された基板Wの上面と雰囲気遮断部材60との間の間隔をWBにする。これにより、傾斜部31aの上端部の気体取り込み口32aの中央部分は雰囲気遮断部材60によって塞がれることになる。上記間隔WBは、雰囲気遮断部材60が気体取り込み口32aの中央部分を塞ぐように配置される間隔である。
【0046】
さらに、制御部50は、共通の駆動制御信号を与え、モーター6、64を同期回転させる。ただし、モーター6、64は互いに反対方向に回転する。これにより、上下の回転筒38、58が同じ方向に回転され、これらの回転筒38、58に固定されている雰囲気遮断部材60およびスピンベース3がそれぞれの中心を通る鉛直軸芯Jまわりに一体的に同期回転することになる。したがって、スピンベース3に保持されている基板Wは、水平に保持された状態で、そのほぼ中心を通る鉛直軸芯Jまわりに回転されることになる。
【0047】
次いで、この状態で、制御部50は、洗浄液供給部7aから薬液を基板Wの下面に供給して本発明の第一処理工程としての薬液処理を開始する。すなわち、開閉バルブ11aを開成することにより、洗浄液供給管7の洗浄液供給部7aから洗浄用薬液としてのエッチング液を吐出させる。これにより、基板Wの下面の中央に向けてエッチング液が至近距離から供給される。供給されたエッチング液は、基板Wの回転に伴う遠心力によって回転半径方向外方側へと導かれるので、結果として、基板Wの下面の全域に対して隈無く薬液洗浄を行うことができる。
【0048】
また、基板Wの下面を伝わって下面周辺部に向ったエッチング液が基板Wの上面に這い上がって上面の周辺部を処理する。このとき固定系である洗浄液供給部7aからのエッチング液が、回転している基板Wの下面に触れることとにより抵抗となり、基板支持部材4上面に摺動自在に保持されている基板Wはスピンベース3に対し遅れて回転することとなる。つまり、基板Wとスピンベース3の回転数に差が生じて基板Wが基板保持部材4の基板保持部4aを滑り出す。従って、基板支持部材4が基板Wの端縁の同じ位置に当接し続けることがないので、保持に起因する処理ムラを防止することができる。なお、この薬液処理期間中、開閉バルブ11bは、閉成状態に保持される。
【0049】
この薬液処理の際に、回転される基板Wの外周部から振り切られて周囲に飛散する薬液は、傾斜部31aで受け止められ、傾斜部31a、垂直部33に沿って第1の排液槽24aに導かれ、第1の排液口28aから排液され、回収ドレイン27を経て回収タンクに回収されることになる。
【0050】
なお、薬液供給源9から基板Wに供給されるエッチング液としては、たとえば、HF、BHF(希フッ酸)、HPO、HNO、HF+H(フッ酸過水)、HPO+H(リン酸過水)、HSO+ H(硫酸過水)、HCl+ H(アンモニア過水)、HPO+CHCOOH+HNO、ヨウ素+ヨウ化アンモニウム、しゅう酸系やクエン酸系の有機酸、TMAH(テトラ・メチル・アンモニウム・ハイドロオキサイド)やコリンなどの有機アルカリを例示することができる。
【0051】
また、基板Wから飛散され傾斜部31aに当たった薬液の一部はミストとなって浮遊することになる。しかしながら、この装置では、基板Wの上面から所定間隔WB隔てて配置された雰囲気遮断部材60により、案内部材30の気体取り込み口32aの中央部分が塞がれているので、案内部材30の内壁面の内側の空間には、案内部材30の気体取り込み口32aと雰囲気遮断部材60との間の円環状の狭い隙間80から気体が流入することになり、その隙間80から流入し、基板W及びスピンベース3の周囲を流下してスピンチャック1の下方の排気口26に流れる気体の流速は比較的速くなり、スピンチャック1の下方空間で気体の対流が起き難くなる。また、基板Wの周囲を流下する気流がエアーカーテンの役目を果たすことになるので、そのエアーカーテンの外部に浮遊する薬液のミストがそのエアーカーテンの内部の基板W側に流れるのを抑制することにもなる。さらに、気流の一部が第1の排液槽24a内にも流れるので、その気流によって傾斜部31a付近に浮遊する薬液のミストは第1の処理槽24a内に押し流される。従って、薬液のミストが基板Wに再付着するのを抑制することができる。
【0052】
また、案内部材30の傾斜部31aとスピンチャック1に保持された基板Wとは十分に離されるように案内部材30が配置されているとともに、案内部材30の傾斜部31a(31b)は、上方に向かうほど径が小さくなるように形成されさらに、基板Wの上方に雰囲気遮断部材60も配置されているので、傾斜部31aからの薬液の跳ね返りが基板Wに付着するような不都合も起き難い。従って、基板Wへの薬液の再付着を好適に抑制することができる。
【0053】
所定の薬液洗浄処理時間が経過すると、洗浄液供給部7aからのエッチング液の供給を停止する。そして、図6(c)に示すように、制御部50は、接離機構67を制御して、雰囲気遮断部材60を下降する。雰囲気遮断部材60は押圧部材68が基板Wの表面に当接する近接位置LHまで下降され、スピンベース3の基板支持部材4とが、基板Wの周縁部を6箇所で挟持することになる。また、案内部材30を第2の高さ位置H2に位置させて、スピンチャック1に保持された基板Wの高さ位置HWに案内部材30の傾斜部31bを位置させる。このとき、雰囲気遮断部材60は近接位置LHに位置され、スピンチャック1に保持された基板Wの上面と雰囲気遮断部材60との間の間隔をD1とする。この状態で、傾斜部31bの上端部の気体取り込み口32bの中央部が雰囲気遮断部材60によって塞がれるように、上下の気体取り込み口32a、32bの鉛直方向の間隔ZLが決められている。
【0054】
予め定めた一定時間だけエッチング液が供給された後、制御部50は、開閉用バルブ11aを閉成して薬液処理工程を終了するとともに、開閉用バルブ11b、72bを開成する。これにより、洗浄液供給部7a、70aからは、リンス液(純水、オゾン水、電解イオン水など)が、基板Wの上下面の中央に向けて供給されることになる。この状態で、洗浄液供給部7a、70aからリンス液を基板Wの上下両面に供給して基板Wに付着している薬液を純水で洗い落とすリンス処理を行う。こうして、薬液処理工程後の基板Wの上下面に存在するエッチング液を洗い流すためのリンス工程が行われる。
【0055】
このリンス処理の際に、回転される基板Wの外周部から振り切られて周囲に飛散する廃液(薬液が混ざった純水)は、傾斜部31bで受け止められ、傾斜部31b、垂直部34bに沿い、開口35から第2の排液槽24bに導かれ、第2の排液口28bから排液され、廃棄ドレイン29を経て廃棄されることになる。
【0056】
また、基板Wから飛散され傾斜部31bに当たった廃液の一部はミストとなって浮遊するが、薬液処理の場合と同様の作用により、基板Wへの廃液の再付着を好適に抑制することができる。さらに、スピンベース3の周囲を流下する気流によって、仕切り部材22aの上端と気体取り込み口32aとの間の開口を塞ぐようにエアーカーテンが形成されるとともに、その一部の気流が傾斜部31aに沿って第1の排液槽24aに流入し、第1の排液槽24aに浮遊する薬液のミストが基板Wに再付着することも抑制される。
【0057】
予め定めた一定時間だけリンス液が供給された後、制御部50は、開閉用バルブ11b、72bを閉成してリンス工程を終了する。次に、モーター6、64を高速回転させるための制御信号を与える。これにより、基板Wの回転が加速され、その表面の液成分が遠心力によって振り切られる。こうして、乾燥工程が行われる。この乾燥工程の際、制御部50は、開閉用バルブ13、74を開成し、気体供給部12a、73aから基板Wの上下面に窒素ガスを供給させる。これにより、雰囲気遮断部材60とスピンベース3との間の制限された小容積の空間の空気は、すみやかに窒素ガスに置換されるので、洗浄処理後の基板Wの上下面に不所望な酸化膜が成長することはない。
【0058】
乾燥工程の終了後には、制御部59は、モーター6、64の回転を停止させ、さらに、図6(a)に示すように接離機構67によって雰囲気遮断部材60を上方位置HHに上昇させ、その後、案内部材30を、第3の高さ位置H3にまで下降させる。この状態で、基板搬送ロボットが、洗浄および乾燥処理済みの基板Wを基板支持部材4から受け取って、スピンチャック1外に搬出することになる。従って、1枚の基板Wに対する回転処理を終了する。なお、上記リンス処理と乾燥工程が本発明の第二処理工程に相当する。
【0059】
以上、上記実施例によれば、この基板処理装置は、半導体ウェハなどの基板Wを水平面内で回転させながら、基板Wの表裏面に処理を施す装置である。この基板処理装置は、スピンベース3の上面で立設されている基板Wの外周縁に当接して基板Wを支持する複数個の基板支持部材4により摺動自在に保持されているので、一定の加減速や処理液の供給により基板は複数個の基板支持部材4に対して滑り出し、基板Wとスピンベース3の回転数に差が生じて基板Wがスピンベース3に対して相対回転を行う。したがって、基板支持部材4のが基板Wの外周端縁の同じ位置に当接し続けることがないので、支持に起因する処理ムラを防止して、均一な処理を施すことができる。
【0060】
また、この実施形態によれば、乾燥処理等の高速回転が必要な処理においては、基板Wの外周周縁を雰囲気遮断部材60およびスピンベース3に設けた基板支持部材4と押圧部材68によって上下から挟持し、その状態で、雰囲気遮断部材60およびスピンベース3を回転するようにしている。そのため、基板Wがスピンチャック1より飛び出すような不具合が発生することなく回転処理が行なわれる。
【0061】
また、基板Wの上下面と雰囲気遮断部材60およびスピンベース3との間隔D1、D2は基板支持部材4と押圧部材68によって確実に規定されるから、雰囲気遮断部材60およびスピンベース3と基板Wとが衝突するおそれがない。そのため、雰囲気遮断部材60およびスピンベース3と基板Wの上下面との間隔D1、D2を小さくすることが容易である。そこで、これらの間隔D1、D2を十分に小さくしておくことによって、周囲のパーティクルが基板Wの表面に付着することを防止できる。また、基板Wの周囲の空間を効果的に制限できるので、この基板Wの周囲をすみやかに窒素ガス雰囲気とすることができる。これにより、基板Wの回転処理を良好に行うことができる。
【0062】
しかも、基板Wの上下面に極近接した雰囲気遮断部材60およびスピンベース3の中央から、洗浄液供給部7a、70aを基板Wの上下面に臨ませているので、洗浄液供給部7a、70aから基板Wの上下面に至る液経路長が極めて短い。そのため、液供給による抵抗が確実に生じるので基板Wは基板支持部材に対して容易に摺動することとなる。
【0063】
さらには、基板Wの外周端縁を上下より挟持することによって基板Wを支持する構成であるので、たとえば、スピンベース3にメカニカルチャックを立設して基板Wの端面を把持させる場合と比較すると、スピンベース3とともに回転するメカニカルチャックを動作させるための複雑な駆動機構が不要であるから、構成が極めて簡単になる。また、メカニカルチャックを用いる場合に比較して、風を切る部材が少ないので、雰囲気遮蔽部材60およびスピンベース3の周辺の気流の乱れが少ない。これにより、ミストの発生やパーティクルの巻き上げなどを効果的に防止できるから、基板Wの処理品質を向上できる。
【0064】
なお、基板Wの外周端縁を上下の部材により挟持するためには、基板保持部材4および押圧部材68の位置が整合するように雰囲気遮蔽部材60とスピンベース3との相対回転位置が調整されている必要がある。ただし、雰囲気遮蔽部材60とスピンベース3とは、どちらか一方が回転を開始した時に両方が回転し、また、その状態で回転を停止するので、両者の回転位置を一度整合させておけば、その後には、原則として再調整しなくとも、基板保持部材4と押圧部材68の位置が整合した状態が保持される。
【0065】
なお、薬液を用いた処理の際に、必要に応じて、雰囲気遮断部材60を回転させてなくてもよいし、気体供給部12a、73aから気体を供給させてもよい。この場合、制御部50は、スピンベース3の回転位置を常に監視し、基板Wの外周端縁を挟持する時に、基板保持部材4および押圧部材68の位置が整合するように雰囲気遮蔽部材60とスピンベース3との相対回転位置を調整する必要がある。
【0066】
<第二の実施例>上記の実施例においてはリンス工程時に基板Wを挟持するようにしているが、本発明は、リンス工程時の洗浄ムラにも同様に適用することができる。
【0067】
すなわち、上記実施例装置のように構成された基板処理装置においては、次にように基板処理が行われる。
図6(a)及び図6(b)に示すように、所定の薬液洗浄処理時間が経過すると、洗浄液供給部7aからの薬液の供給を停止する。そして、図6(b)に示すように、案内部材30を第2の高さ位置H2に位置させて、雰囲気遮断部材60は下方位置MHに位置させたまま、この状態で、開閉用バルブ11b、72bを開成する。これにより、洗浄液供給部7a、70aからは、リンス液(純水、オゾン水、電解イオン水など)が、基板Wの上下面の中央に向けて供給されることになる。この状態で、洗浄液供給部7a、70aからリンス液を基板Wの上下両面に供給して基板Wに付着している薬液を純水で洗い落とすリンス処理を行う。
【0068】
この基板Wのリンス処理中における基板保持部材4と基板Wの外周端縁との洗浄状態の関係について説明する。回転処理中の基板保持部材4による基板Wの外周端縁付近は気流の乱れなどによって、洗浄液の流れが基板保持部材4付近では乱れて、その結果、未洗浄部分が形成される。そこで、雰囲気遮断部材60は下方位置MHに位置させたまま、すなわち、スピンチャック1に保持された基板Wの上面と雰囲気遮断部材60との間の間隔をWBに維持することで、このリンス処理中においても、基板Wとスピンベース3の回転数に差が生じて基板Wが基板保持部材4の支持面4aを滑り出す。従って、基板支持部材4が基板Wの端縁の同じ位置に当接し続けることがないので、保持に起因する処理ムラを防止することができる。
【0069】
予め定めた一定時間だけリンス液が供給された後、制御部50は、開閉用バルブ11b、72bを閉成してリンス工程を終了する。その後、制御部50は、接離機構67を制御して、雰囲気遮断部材60を図6(c)に示すと同様に下降する。雰囲気遮断部材60は押圧部材68が基板Wの表面に当接するまで下降され、スピンベース3の基板支持部材4とが、基板Wの周縁部を6箇所で挟持することになる。次に、モーター6、64を高速回転させるための制御信号を与える。これにより、基板Wの回転が加速され、その表面の液成分が遠心力によって振り切られる。こうして、乾燥工程が行われる。
【0070】
以上、上記実施例によれば、リンス処理工程においても、基板支持部材4が基板Wの外周端縁の同じ位置に当接し続けることがないので、支持に起因する処理ムラを防止して、均一な処理を施すことができる。
【0071】
以上、上記実施例によれば、この基板処理装置は、基板Wを水平面内で回転させながら、基板Wの表裏面に薬液処理、洗浄処理、乾燥処理をその順に施す装置である。この基板処理装置において、薬液処理から乾燥処理までの間、基板Wの支持に起因する処理ムラを防止して処理される。なお、上記第一の実施例においては薬液処理が第一処理工程に、洗浄処理と乾燥処理が第二処理工程に相当する。また、上記第二の実施例においては薬液処理と洗浄処理が第一処理工程に、乾燥処理が第二処理工程に相当する。
【0072】
<第三の実施例>図7は、この発明の第三の実施形態の構成を説明するための図解的な断面図である。この図7において、上述の図1ないし図4に示された各部と同等の部分には、同一の参照符号を付して示す。この実施形態では、スピンベース3の外周端縁には、基板保持部材110が、たとえば、図8に示すように、スピンベース3の上面3Aに、周方向に沿って等間隔に6個配置されている。この基板保持部材110は、スピンベース3の上面3Aに平行な平坦面を有する支持面111と、この支持面111よりもスピンベース3の回転半径方向外方側において立ち上がった案内立ち上がり面112とを有している。案内立ち上がり面112は、上記回転半径方向外方側に向かうに従って高くなるように形成された案内面112aを有している。そして、支持面111には、弾性材料からなる半球状の支持突起113が上向きに固定されている。
【0073】
一方、雰囲気遮断部材60の下面60Aの外周端縁には、押圧部材120が、基板保持部材110に対応するように、たとえば、周方向に沿って等間隔に6個配置されている。この押圧部材120には、弾性材料からなる半球状の押圧突起121が下向きに固定されている。そして、押圧部材120の、雰囲気遮断部材60の回転半径方向外方側には、この半径方向外方側に向かうに従って高くなる下向きのテーパー面120aが形成されている。このテーパー面120aの傾斜は、基板保持部材110側の案内面112aの傾斜と整合している。
【0074】
この構成により、基板Wをスピンベース3に受け渡す際、基板保持部材110の案内面112aによって、基板Wを所定の位置に案内して落とし込むことができる。雰囲気遮断部材60をスピンベース3に近接させて支持突起113と押圧突起121によって基板Wの外周端縁を挟持するときには、基板保持部材110の案内立ち上がり面112は、押圧部材120のテーパー面120aの下方の空間に納められるので、案内立ち上がり面112が押圧部材120と干渉するおそれはない。この構成によっても、上述の第1の実施形態の場合と同様な作用効果を達成できる。
【0075】
なお、本発明は、上述した実施例および変形例に限定されるものではなく、以下のように他の形態でも実施することができる。
【0076】
(1)上記の実施例においてはエッチング処理を施すことを目的としているが、本発明は、その他の処理液を基板Wに供給して所定の処理を基板Wに施す各種の基板処理装置にも同様に適用することができる。
【0077】
(2)実施例装置では、基板保持部材と押圧部材を6個備えた例を説明したが、本発明は3個以上であればこの個数に限定されるものではない。
【0078】
(3)上述の実施形態では、雰囲気遮断部材60とスピンベース3との回転駆動のためにモーター6、64をそれぞれ設けているが、基板支持部材4と押圧部材68によって基板Wを挟持した状態においては、雰囲気遮断部材60とスピンベース3とは互いにトルクを伝達し合うことができる。したがって、モーター6、64のうちの一方は設けられなくてもよい。
【0079】
(4)また、上述の各実施形態では、基板支持部材4と押圧部材68を弾性材料で構成する場合について説明したが、これらの部材は必ずしも弾性材料で構成する必要はない。ただし、回転中における基板Wの保持を確実にするためには、弾性材料で構成しておくことが好ましい。
【0080】
(5)また、上述の実施形態では、雰囲気遮断部材60が昇降駆動される例を挙げたが、雰囲気遮断部材60を固定しておいてスピンベース3を昇降可能に構成してもよいし、雰囲気遮断部材60およびスピンベース3の両方が昇降可能な構成であってもよい。少なくともいずれか一方が昇降可能であれば、雰囲気遮断部材60とスピンベース3との間に基板Wを保持でき、また、この保持を解除できる。
【0081】
(6)さらに、上述の実施形態では、押圧部材68は雰囲気遮断部材60の下面に立設するように形成しているが、雰囲気遮断部材60の下面を一体的に突出させて押圧部材68を形成するようにしてもよい。すなわち、雰囲気遮断部材60の下面に突起部を形成し、その突起部の先端で基板Wの表面に当接させることで基板Wをスピンベース3の基板保持部材4とで挟持する。
【0082】
(7)さらに、上述の実施形態では、半導体ウエハを洗浄する装置を例にとったが、この発明は、洗浄以外の処理を行う装置にも適用でき、また、ウエハ以外にも液晶表示装置用ガラス基板やフォトマスク用のガラス基板、光ディスク用の基板などの各種の基板に対して処理する装置にも同様に適用することができる。
【0083】
その他、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0084】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、基板は基板保持手段に摺動自在に保持されているので、この状態で基板を回転させる第一処理工程で基板は基板保持手段に対して滑り出し、基板と基板保持手段の回転数に差が生じて基板が基板保持手段に対して相対回転を行う。したがって、基板保持部材が基板外周端縁の同じ位置に当接し続けることがない。また、第二処理工程では、押圧手段と基板保持手段により基板を挟持して処理されるので、基板は確実に回転される。したがって、基板の支持に起因する処理ムラを防止して、均一な処理を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】上記基板処理装置の雰囲気遮断部材の底面図である。
【図3】上記基板処理装置のスピンベースの平面図である。
【図4】支持部材と押圧部材による基板の挟持状態を示す拡大断面図である。
【図5】実施形態に係る装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】実施形態に係る装置の動作を説明するための図であって、(a)はスピンチャックに対する基板の受渡しを行う状態を示す縦断面図、(b)は薬液処理の状態を示す縦断面図、(c)はリンス処理及び乾燥処理の状態を示す縦断面図である。
【図7】この発明の第三の実施形態の構成を説明するための図解的な断面図である。
【図8】上記第三の実施形態におけるスピンベースの平面図である。
【図9】従来方法による問題点を示す図である。
【図10】従来方法による問題点を示す側面図である。
【符号の説明】
W 基板
Q 処理液
1 スピンチャック
3 スピンベース
4、100、110 基板保持部材
4a、111 支持面
4b、112 案内立ち上がり面
6 電動モーター
64 モーター
9 薬液供給源
10 純水供給源
50 制御部
60 雰囲気遮断部材
67 接離機構
68、120 押圧部材
68a 平坦面
68b、120a テーパー面
H1 第1の高さ位置
H2 第2の高さ位置
H3 第3の高さ位置
HH 上方位置
MH 下方位置
LH 近接位置

Claims (4)

  1. 基板を回転させながら基板に処理液を供給し、基板の表面の液を振り切り乾燥を行う基板処理装置であって、
    基板を挟持することなく下方から支持することにより基板を摺動自在に保持する基板保持手段と、
    前記基板保持手段に保持された基板を鉛直方向の軸芯周りで回転させる基板回転手段と、
    前記基板保持手段に保持された基板に対向して配置された押圧手段と、
    前記押圧手段を前記基板保持手段に対して前記基板の主面に当接して前記基板保持手段との間に基板を挟持した近接位置と、離間した離間位置との間で相対的に移動させる移動手段と、
    基板を処理する際に、押圧手段を離間位置にした状態で基板保持手段を回転し、回転する基板に対して処理液を供給する第一処理工程と、前記移動手段により押圧部材を近接位置にした状態で基板の周縁部を挟持し、前記押圧手段と前記基板保持手段をとともに回転する第二処理工程とで前記基板回転手段と前記移動手段を制御する制御手段と、
    を具備し、
    前記第一処理工程は、前記基板保持手段に保持されつつ回転する基板に対して処理液を供給することにより前記基板保持手段上の基板を摺動させる摺動工程を含み、
    前記第二処理工程は、前記押圧部材と前記基板保持手段とが基板の周縁部を挟持し一体的に回転して基板表面の液成分を振り切る乾燥工程を含むことを特徴とする基板処理装置。
  2. 請求項1に記載の基板処理装置において、
    前記基板保持手段は、基板を水平姿勢で支持した状態で回転駆動する回転支持板と、前記回転支持板に立設され、基板の外周端縁に当接して前記基板の水平位置を規制するとともに基板の下面を摺動自在に保持する基板保持部材と、を有することを特徴とする基板処理装置。
  3. 基板を回転させながら基板に処理液を供給して処理し、基板の表面の液を振り切り乾燥を行う基板処理方法であって、
    基板を挟持することなく基板の外周端縁を下方から支持することにより基板を基板保持手段で摺動自在に保持し、基板を回転させながら基板の少なくとも一方側の面に処理液を供給して処理する第一処理工程と、
    前記基板保持手段に対して相対的に移動する押圧手段が、前記基板の一方側の面に当接して前記基板保持手段との間に基板を挟持した状態で、前記押圧手段と前記基板保持手段をとともに回転する第二処理工程と、
    を具備し、
    前記第一処理工程は、前記基板保持手段に保持されつつ回転する基板に対して処理液を供給することにより前記基板保持手段上の基板を摺動させる摺動工程を含み、
    前記第二処理工程は、前記押圧部材と前記基板保持手段とが基板の周縁部を挟持し一体的に回転して基板表面の液成分を振り切る乾燥工程を含むことを特徴とする基板処理方法。
  4. 請求項3に記載の基板処理方法において、
    前記第一処理工程は、基板の下面に処理液を供給し、遠心力で基板上面の周辺部に処理液を周り込ませて基板外周端縁の処理を行うことを特徴とする基板処理方法。
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