JP4094266B2 - 車両のピラー構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フロントピラーの窓肩部近傍からルーフパネル側端のサイドレールにかけての、強度、生産性等に優れる車両のピラー構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フロントピラー上部は、図8(a)に示すように、サイドアウタパネル31と、フロントピラーアッパリンフォース32と、フロントピラーアッパインナパネル33の3部品で構成される。また、ルーフパネル側端のサイドレール部分は、サイドアウタパネル31と、サイドレールインナパネル34から構成されている。
【0003】
このように構成されるフロントピラーでは、衝突時、特にオフセット衝突時においては、車体の前部からの荷重がフロントピラー上部に集中的に加わるため、フロントピラー上部の変形量は大きく、衝突後のドア開扉性(乗員救出性)の観点から、フロントピラー上部の変形量を抑えることは非常に重要である。
【0004】
そして、上述の構造のフロントピラー上部では、衝突時に荷重の集中するフロントピラーとサイドレールの接合部に、リンフォース32等の端部が集中しているため、図8(b)に示すように、座屈変形が生じやすく、窓肩変形量が大きくドア開扉性上、不利であった。
【0005】
そこで、特開平6−1262号公報では、フロントピラーとサイドレールとリヤピラーとがアルミの押出し成形により同一閉断面構造で一体に形成する技術が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のアルミの押出し成形を採用する先行技術では、エネルギ吸収特性や、組み付け精度は優れたものが実現できる一方、コストが非常に高いといった問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、低コストでありながら、オフセット衝突や側面衝突の際の変形量が少なく乗員の救出性に優れ、軽量で、精度良く車体に組み付けることができる車両のピラー構造を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1記載の車両のピラー構造は、フロントピラーの窓肩部近傍からルーフパネル側端のサイドレールにかけての車両のピラー構造において、上記フロントピラーの窓肩部近傍から上記サイドレールのセンタピラー接続部近傍にかけて、ロール成形で成形した筒状の略同一閉断面のリンフォース部材を設け、上記リンフォース部材は、略車幅方向内側に延出する第一のフランジ部をロール成形時の部材の折り返しで形成し、上記第一のフランジ部の下側には、車両下方に向けて延出する第二のフランジ部をロール成形時の部材の両端面の接合で形成したことを特徴としている。
【0009】
すなわち、上記請求項1記載の車両のピラー構造では、前方からの衝突、特にオフセット衝突等の際において、車体の前部からの荷重がフロントピラー上部に集中的に加わっても、筒状の略同一閉断面のリンフォース部材により、フロントピラー上部の変形量を小さく抑えることができ、衝突後のドア開扉性(乗員救出性)を良好に保つことができる。そして、リンフォース部材は、ロール成形で成形するので、帯鋼による連続成形であるため自由な長さにでき汎用性に優れる。また、ロール成形で成形したリンフォース部材は、鋼管の成形と同様に、曲面の成形が可能であらゆる角度の曲げに安定した形状が得られ、形状が自由で汎用性に優れている。更に、ロール成形で成形したリンフォース部材は、長さに関係なく均一な断面形状が得られ、強度がばらつくことがない。また、ロール成形で成形したリンフォース部材は、帯鋼による連続成形なので大量生産によるコストダウンが可能で優れた経済性を有している。また、ロール成形で成形したリンフォース部材は、プレス成形等では成形が困難な、高張力鋼板も用いやすく、高張力鋼板を用いて成形することにより、板厚を低減でき、車体の軽量化を図ることができる。更に、リンフォース部材は、インナパネルとリンフォースとを兼用するため、部品点数の削減に伴う車体の軽量化と組み付け工数の削減、組み付け精度の向上及びコスト低減を図ることができる。また、第一のフランジ部を形成することで、第一のフランジ部を利用してフロントガラス及びルーフパネルを容易に取り付けることができる。また、第一のフランジ部は車幅方向内側に延出しロール成形時の部材の折り返しで形成しているので、前方からの衝突の際において、車体の前部からの荷重がフロントピラー上部に集中的に加わり、第一のフランジ部に引っ張り荷重が生じても、第一のフランジ部が開いてしまうことはない。一方、第二のフランジ部は、第一のフランジ部の下側で車両下方に向けて延出されるので、第二のフランジ部に引っ張り荷重が生じることなく、ロール成形時の部材の両端面の接合で形成でき、また、この第二のフランジ部をサイドドアの当接部として利用できる。
【0014】
また、本発明の請求項2記載の車両のピラー構造は、請求項1記載の車両のピラー構造において、上記リンフォース部材の後端には、後方へ次第に傾斜する形状の切り欠き端部を形成し、該切り欠き端部に車体後方へ延出する上記サイドレールの前端を連設することを特徴としている。
【0015】
リンフォース部材とサイドレールとの結合部は、断面変化が急激に生じると、座屈変形を生じる可能性があるが、断面変化(強度変化)をなだらかにすることで、スムーズに衝撃等による荷重の伝達を行えるようにし、座屈等の変形を防止する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1乃至図7は本発明の実施の一形態に係わり、図1はボディーシェルの概要を説明する全体斜視図、図2は車体サイド部分の要部斜視図、図3はリンフォース部材に対する各部の接合の説明図、図4はフロントピラーの窓肩部近傍からサイドレールにかけて構造を説明する側面図、図5は図4の上面図、図6はリンフォース部材に対するセンタピラー接合部分の説明図、図7は図5のVII−VII断面図である。
【0017】
図1において、符号1は車両のボディーシェルを示し、このボディーシェル1の側面は、ルーフパネル(図示せず)を固定するサイドレール3から、車体前方のフロントピラー4と車体中央のセンタピラー5と車体後方のリアピラー6が下方に向けて延出され、車体下部のサイドシル7に連結されている。そして、これらサイドレール3、フロントピラー4、センタピラー5、リアピラー6、及び、サイドシル7は、その外側のパネルは、サイドアウタパネル8として一体に形成されている。
【0018】
また、左右のサイドレール3の間には、ルーフパネルの前端を支持するフロントレール9、左右のセンタピラー5の接合位置を結ぶセンタブレース10、最後部に設けられルーフパネルの後端を支持するリヤレール11等がそれぞれ架設され、溶接により接合されている。
【0019】
図2に示すように、フロントピラー4の窓肩部より下方のロア部分のサイドアウタパネル8内側には、フロントピラーロアリンフォース12が設けられており、更にその車内側には、フロントピラーロアインナパネル13が接合されている。
【0020】
また、サイドシル7のサイドアウタパネル8内側には、サイドシルアウタリンフォース14が設けられており、このサイドシルアウタリンフォース14の前端は、下端が後方に向けて屈曲されたフロントピラーロアリンフォース12の後端と溶接によって接合されている。また、サイドシルアウタリンフォース14の車内側には、図示しないサイドシルリンフォースが接合されており、更にその車内側にはサイドシルインナパネル15が接合されている。
【0021】
また、センタピラー5のサイドアウタパネル8内側には、サイドシルアウタリンフォース14の略中央から上方に向けてセンタピラーリンフォース16が溶接により接合されており、このセンタピラーリンフォース16の更に車内側には、センタピラーインナパネル17が接合されている。
【0022】
そして、フロントピラー4の窓肩部近傍から、サイドレール3のセンタピラー5の接続部近傍にかけては、この部分におけるインナパネルとリンフォースとを兼用する、公知のロール成形で成形した筒状の略同一閉断面のリンフォース部材18が設けられている。
【0023】
リンフォース部材18の断面形状は、図7に示すように、車内側には、略車幅方向内側に延出する内側フランジ(第一のフランジ部)18aが、ロール成形時にワークを折り返すことで形成されており、折り返し部分が開くことが防止されている。
【0024】
また、リンフォース部材18の下側には、ロール成形によるロール方向の両端面を、それぞれ閉断面側とは逆側に折り返して対設し、所定間隔毎に外側からスポット溶接して形成した下側フランジ(第二のフランジ部)18bが形成されている。
【0025】
そして、リンフォース部材18の内側フランジ18aから下側フランジ18bの間の車外側に露呈する部分には、この内側フランジ18aと下側フランジ18bを利用して、サイドアウタパネル8の長手方向端部がスポット溶接により接合されている。
【0026】
更に、リンフォース部材18の斜め前方に位置する部位には、内側フランジ18a上のサイドアウタパネル8の外側にフロントモールディング19を介しフロントガラス20の側端部が接着剤等により固定されている。また、リンフォース部材18の上方に位置する部位には、ルーフパネルの側端部がスポット溶接により接合されている。更に、リンフォース部材18の下側に位置する部位には、下側フランジ18b上のサイドアウタパネル8の外側にサイドドアとの間に介在されるウェザーストリップ(図示せず)等が設けられている。
【0027】
また、リンフォース部材18は、図2〜図5に示すように、その前端では、車外側がフロントピラーアウタブラケット21を介してフロントピラーロアリンフォース12の上端とスポット溶接により接合され、車内側がフロントピラーインナブラケット22を介してフロントピラーロアインナパネル13の上端とスポット溶接により接合されている。
【0028】
リンフォース部材18の後端は、後方へ次第に傾斜する形状の切り欠き端部18cが形成されており、このリンフォース部材18の切り欠き端部18cに、サイドレール3の内側のサイドレールインナパネル23の前端が溶接により接合されている。
【0029】
リンフォース部材18の略中央で、下方に屈曲される起点の部位には、この内側フランジ18aの上側に、フロントレール9のT字状に成形した端部が、スポット溶接にて接合されている。
【0030】
また、リンフォース部材18の後端下側には、下側フランジ18bを利用し、センタピラー5が接合されている。具体的には、図6に示すように、リンフォース部材18の外側には、このリンフォース部材18の外側に沿った形状に成形したセンタピラーリンフォース16の上端部が、CSアーク溶接にて、図6(a)中、WPcsで示す溶接箇所で溶接され接合されると共に、図6(a)中、WPsで示す溶接点でスポット溶接されている。また、リンフォース部材18の内側には、このリンフォース部材18の内側に沿った形状に成形したセンタピラーインナパネル17の上端部が、CSアーク溶接にて、図6(b)中、WPcsで示す溶接箇所で溶接され接合されると共に、図6(b)中、WPsで示す溶接点でスポット溶接されている。
【0031】
そして、以上のようにフロントピラー4からサイドレール3にかけて構成することにより、以下のような効果を得ることが可能になっている。
すなわち、従来のような複数の部品を用いることなく、一定の閉断面構造のリンフォース部材18を一体的に採用することにより、オフセット衝突のような衝突時においても、座屈変形の起点がないため、この座屈変形を抑制することができ、衝突後のドア開扉性(乗員救出性)を良好に保つことができる。
【0032】
また、リンフォース部材18は、ロール成形で成形するので、帯鋼による連続成形であるため自由な長さにでき汎用性に優れる。更に、ロール成形で成形したリンフォース部材18は、鋼管の成形と同様に、曲面の成形が可能であらゆる角度の曲げに安定した形状が得られ、形状が自由で汎用性に優れている。また、ロール成形で成形したリンフォース部材18は、長さに関係なく均一な断面形状が得られ、強度がばらつくことがない。更に、ロール成形で成形したリンフォース部材18は、帯鋼による連続成形なので大量生産によるコストダウンが可能で、優れた経済性を有している。また、ロール成形で成形したリンフォース部材18は、プレス成形等では成形が困難な、高張力鋼板も用いやすく、高張力鋼板を用いて成形することにより、板厚を低減でき、車体の軽量化を図ることができる。更に、リンフォース部材18は、従来のインナパネルとリンフォースとを兼用するため、部品点数の削減に伴う車体の軽量化と組み付け工数の削減、組み付け精度の向上及びコスト低減を図ることができる。
【0033】
また、リンフォース部材18には、略車幅方向内側に向けて延出する内側フランジ18aを形成しているので、この内側フランジ18aを利用してフロントガラス20及びルーフパネルを容易に取り付けることができる。同じく、リンフォース部材18には、下側に向けて延出する下側フランジ18bを形成しているので、この下側フランジ18bに沿ってウェザーストリップ等を設け、サイドドアの当接部として利用できる。ここで、上述のようにリンフォース部材18に内側フランジ18aと下側フランジ18bを形成すると、前方からの衝突、特にオフセット衝突時において、フロントピラーが折れ曲がろうとすると、内側フランジ18aに引っ張り荷重、下側フランジ18bには圧縮荷重が生じる。このとき、従来の図8(a)における一般的なピラー構造、すなわち、プレス成形で成形される2枚の板金のフランジ同士をスポット溶接等で接合して内側フランジと下側フランジを有する閉断面構造を形成するピラー構造においては、内側フランジに生じる引っ張り荷重により、フランジが開いてしまい、フロントピラーの折れ曲がりを促進してしまう虞がある。しかし、本発明においては、フロントピラーのリンフォース部材18をロール成形で一定の閉断面構造に形成し、さらに引っ張り荷重の生じる内側フランジ18aをロール成形時の部材(ワーク)の折り返しで、引っ張り荷重の生じない下側フランジ18bをスポット溶接で形成したので、衝突時における内側フランジ18aの開きを防止することができる。また、特に引っ張り荷重の加わる内側フランジ18aの部位には、スポット溶接して、より確実にフランジの開きを防止することもできる。
【0034】
更に、リンフォース部材18は、センタピラー5の後方まで延出し、センタピラー5を接合するようにしているので、側面衝突の際に、センタピラー5に加わる衝撃荷重が同一閉断面形状のリンフォース部材18を介してフロントピラー4側にも広く分散され、衝撃が大きく吸収される。
【0035】
また、リンフォース部材18は、その後端に後方へ次第に傾斜する形状の切り欠き端部18cが形成されており、このリンフォース部材18の切り欠き端部18cに、サイドレール3の内側のサイドレールインナパネル23の前端が溶接により接合されて、断面変化(強度変化)をなだらかにすることで、スムーズに衝撃等による荷重の伝達を行えるようにし、座屈等の変形を防止する。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、低コストでありながら、オフセット衝突や側面衝突の際の変形量が少なく乗員の救出性に優れ、軽量で、精度良く車体に組み付けることができるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ボディーシェルの概要を説明する全体斜視図
【図2】車体サイド部分の要部斜視図
【図3】リンフォース部材に対する各部の接合の説明図
【図4】フロントピラーの窓肩部近傍からサイドレールにかけて構造を説明する側面図
【図5】図4の上面図
【図6】リンフォース部材に対するセンタピラー接合部分の説明図
【図7】図5のVII−VII断面図
【図8】従来のフロントピラーからサイドレールにかけての構造を示す分解説明図
【符号の説明】
1 ボディーシェル
3 サイドレール
4 フロントピラー
5 センタピラー
8 サイドアウタパネル
18 リンフォース部材
18a 内側フランジ(第一のフランジ部)
18b 下側フランジ(第二のフランジ部)
18c 切り欠き端部
23 サイドレールインナパネル
Claims (2)
- フロントピラーの窓肩部近傍からルーフパネル側端のサイドレールにかけての車両のピラー構造において、
上記フロントピラーの窓肩部近傍から上記サイドレールのセンタピラー接続部近傍にかけて、ロール成形で成形した筒状の略同一閉断面のリンフォース部材を設け、上記リンフォース部材は、略車幅方向内側に延出する第一のフランジ部をロール成形時の部材の折り返しで形成し、上記第一のフランジ部の下側には、車両下方に向けて延出する第二のフランジ部をロール成形時の部材の両端面の接合で形成したことを特徴とする車両のピラー構造。 - 上記リンフォース部材の後端には、後方へ次第に傾斜する形状の切り欠き端部を形成し、該切り欠き端部に車体後方へ延出する上記サイドレールの前端を連設することを特徴とする請求項1記載の車両のピラー構造。
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