JP4092868B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真方式や静電印刷方式等を採用したプリンターや複写機に用いられる静電荷像現像用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
画像形成装置においては、定着時においてトナー画像の一部が定着部材に移行して非画像領域を汚染するオフセット現象や被転写体が定着部材に巻きつく現象が生じ易いため、それらの現象を防止するために、トナー粒子中にワックス等の離型剤を含有させることが一般的である。また、トナー粒子は、製造容易性の観点から、少なくともバインダー樹脂および着色剤ならびに離型剤等の添加剤を溶融、混練し、冷却した後、粉砕する粉砕法によって製造されるのが一般的である。また、近年のフルカラー化および高画質化の要求に応えるために、上記粉砕法によって製造されたトナー粒子をさらに瞬間的加熱処理に供して球形化することも知られている。
【0003】
しかしながら、離型剤を含むトナー粒子を球形化すべく瞬間的加熱処理すると、トナー粒子表面に離型剤が滲み出てトナーの基本性能に悪影響が及んでいた。詳しくは、そのようなトナーを比較的高温の環境下に放置するとトナー凝集が起こった(耐熱保管性の悪化)。また、帯電立ち上がり性が悪化し、初期から画像上にかぶりが発生した。また、流動性が悪化し、トナーの現像性および転写性が低下して、初期から画像上に中抜けが発生した。さらに、トナーを帯電させるための規制ブレードにトナー固着が発生した。
すなわち従来では、離型剤を含み、上記のようなトナーの基本性能に優れた円形度の高いトナー粒子を得ることはできなかった。
【0004】
一方、トナー粒子の小粒径化を効率よく達成するために、混練前のトナー組成物に、さらにいわゆる粉砕助剤(バインダー樹脂より脆い樹脂)を添加することが知られている。例えば、特開平4-257868号公報ではスチレン-ブタジエン系樹脂等の結着樹脂にC7〜C10の芳香族石油樹脂を含有させる技術が、特開平8-278658号公報ではバインダー樹脂に水素添加率が50%以上の水添石油樹脂を含有させる技術が、特開平11-65161号公報では結着樹脂にスチレン系モノマーとインデン系モノマーとを含む共重合体を含有させる技術が、特開平11-72956号公報では結着樹脂に脂肪族炭化水素と炭素数9以上の芳香族炭化水素とを含む共重合体を含有させる技術が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、長期にわたってかぶり、中抜けおよびブレード固着の発生を抑制し、耐熱保管性および製造効率に優れた、円形度が比較的高い離型剤含有トナー(静電荷像現像用)を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は少なくともバインダー樹脂(A)、重量平均分子量1000〜3000および重量平均分子量/数平均分子量2.0以下のポリスチレン又はポリ - α - メチルスチレン重合体(B)、離型剤および着色剤を含むトナー粒子を含んでなり、トナー粒子が平均円形度0.96以上および円形度標準偏差0.040以下を有し、かつ下記式(1);
D/d50≧0.40、但しD=6/(ρ・S) (1)
(式中、Dはトナーの形状を球と仮定したときの比表面積からの換算粒径(μm);d50は粒径別相対重量分布の50%相当粒径(μm);ρは密度(g/cm3);SはBET比表面積(m2/g)をそれぞれ表す)を満足することを特徴とする静電荷像現像用トナーに関する。
【0007】
本発明の発明者等は特定の重合体(B)を用いることにより、瞬間的加熱処理時の離型剤のトナー粒子表面への滲み出しが抑制され、トナーの基本性能に優れた、円形度の比較的高い離型剤含有トナー粒子が容易に得られることを見い出した。特定の重合体(B)を含有させることにより、トナー粒子表面に当該重合体(B)が露出し、離型剤がトナー粒子表面に滲み出る確率が低減されるため、トナーの基本性能の低下が防止されると考えられる。すなわち、本発明は、粒子表面への離型剤の滲み出しを抑制しながら、特定の形状および表面性状を達成する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のトナーを構成するトナー粒子は少なくともバインダー樹脂(A)、重合体(B)、離型剤および着色剤を含んでなり、かつ特定の形状および表面性状を有してなる。
【0009】
詳しくは、平均円形度は0.96以上、好ましくは0.963以上、より好ましくは0.965以上であり、円形度標準偏差は0.040以下、好ましくは0.038以下、より好ましくは0.035以下である。このような均一な粒子形状を達成することにより、トナーの帯電立ち上がり性、帯電安定性および移動性(現像性、転写性)がさらに向上するため、カブリや中抜け等のノイズのない画像を初期から長期にわたって得ることができる。また、形状の均一化と帯電量分布のシャープ化が達成されるため、選択現像(特定の形状または帯電量のトナーから先に現像に供される現象)が起こらず、耐刷時においても良好な画像を安定して提供できる。
【0010】
平均円形度が小さすぎると初期から画質性が低下し、特に耐刷時においてカブリや中抜けが発生する。また、円形度標準偏差が大きすぎると、形状の均一性が低下するために選択現像が起こり、耐刷時においてカブリや中抜けが発生する。
【0011】
本明細書中、平均円形度とは、下式;
円形度=(粒子の投影面積に等しい円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
より算出される値の平均値であり、「粒子の投影面積に等しい円の周囲長」および「粒子投影像の周囲長」から求められるため、当該値はトナー粒子の形状、すなわち粒子表面の凹凸状態を正確に反映する指標となる。すなわち、1に近いほど、真円に近いことを示している。本発明において、平均円形度は「粒子の投影面積に等しい円の周囲長」および「粒子投影像の周囲長」はフロー式粒子像分析装置(FPIA-2000;シスメックス社製)を用いて水分散系で測定を行って得られる値をもって示している。しかし、上記装置によって測定されなければならないというわけでなく、原理的に上式に基づいて求めることができる装置であれば、いかなる装置によって測定されてもよい。また、本発明において平均円形度はトナー粒子(3000個)の平均値として得られる値であるため、本発明における平均円形度の信頼性は極めて高い。
円形度の標準偏差とは円形度分布における標準偏差を指し、当該値は上記フロー式粒子像分析装置によって平均円形度と同時に得られる。当該値が小さいほどトナー粒子形状が揃っていることを意味する。
【0012】
本発明において平均円形度および円形度標準偏差は、瞬間的加熱処理直後のトナー粒子、すなわち上記処理後に添加されるべき微粒子を添加する前のトナー粒子を用いて測定された値であるが、当該微粒子の添加の前後においてこれらの値はほとんど変わらない。
【0013】
また、本発明のトナーにおけるトナー粒子は下記式(1);
D/d50≧0.40、但しD=6/(ρ・S) (1)
(式中、Dはトナーの形状を球と仮定したときの比表面積からの換算粒径(μm);d50は粒径別相対重量分布の50%相当粒径(重量平均粒径)(μm);ρは密度(g/cm3);SはBET比表面積(m2/g)をそれぞれ表す)を満足する。好ましくはD/d50は0.42〜0.80、より好ましくは0.45〜0.75である。
【0014】
D/d50はトナー粒子の表面または内部における細孔の存否を示す指標であり、1に近いほど粒子表面は滑らかで、その表面に存在する細孔は少ないことを意味する。このような表面性状を有するトナーは、細孔部を中心にトナーが割れたり、凹部に外添剤として加えられる流動化剤であるシリカ等が埋め込まれたり、また凸部が削られて微紛が発生するなどの不都合が生じないため、トナーの帯電安定性ならびに移動性(現像性および転写性)がさらに向上し、長期にわたってかぶり、中抜けおよびブレード固着の発生を抑制することができる。D/d50が小さすぎると、トナーの割れ、流動化剤の埋め込み、および微紛の発生が起こって、耐刷時にかぶり、中抜けおよびブレード固着が発生する。
【0015】
本発明においてD/d50は、瞬間的加熱処理直後のトナー粒子、すなわち上記処理後に添加されるべき微粒子を添加する前のトナー粒子を用いて測定された値である。
【0016】
ここで重量平均粒径(d50)は、「コールターマルチサイザー」(コールターカウンタ社製)により測定された値を用いているが、同様の測定原理、方法で測定されるのであれば、前記装置で測定されなければならないということを意味しない。
密度(ρ)は、「空気比較式比重計」(ベックマン社製)により測定された値を用いているが、同様の測定原理、方法で測定されるのであれば前記装置で測定されなければならないということを意味しない。
BET比表面積は、「フローソーブ2300型」(島津製作所製)で測定された値を用いているが、同様の測定原理、方法で測定されるのであれば前記装置で測定されなければならないということを意味しない。
【0017】
本発明において使用される重合体(B)は重量平均分子量(Mw)が1000〜3000、好ましくは1000〜2800、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が2.0以下、好ましくは1.9以下である。本発明においてはこのような重合体(B)を他のトナー材料と同時に用いることにより、離型剤を用いる場合であっても、瞬間的加熱処理時において当該離型剤のトナー粒子表面への滲み出しを有効に抑制でき、結果として、トナーの基本性能(帯電立ち上がり性、帯電安定性、現像性、転写性、耐熱保管性)に優れた、円形度の比較的高いトナー粒子を容易に得ることができる。製造過程において重合体(B)は粉砕界面を構成してトナー粒子表面に露出し、離型剤はトナー粒子表面に露出する確率が低くなるため、加熱処理時における離型剤のトナー粒子表面への滲み出しが抑制されると考えられる。重合体(B)を用いないと、瞬間的加熱処理時において離型剤がトナー粒子表面に滲み出し、トナーの基本性能が悪化する。また、重合体(B)のMwが1000未満であると、重合体(B)のガラス転移点が低くなるため、比較的高い温度でトナーを放置したときの保管性(耐熱保管性)が悪化し、実用上使用が困難となる。さらに、当該重合体中に揮発成分、例えば、アセトン、ベンゼン、モノマー等が残留し易いため、トナー製造時や画像形成時に当該成分が揮発して安全性や臭気が問題となる。すなわち、重合体(B)樹脂のトータルVOCが1000ppmを超え、実用的に使用することが困難となる。一方、Mwが3000を越えると、本材料自身の粉砕性が悪くなり、本材料を用いることによる粉砕性の向上効果が認められなくなる。本明細書中、重合体または樹脂のMwおよびMnはゲルパーミエーションクロマトグラフィ(807-IT型;日本分光工業社製)によって測定された値を用いている。
【0018】
そのような重合体(B)は粉砕性指数0.1〜1.0、好ましくは0.2〜0.6を有することが望ましい。粉砕性指数とは粉砕され易さを表すひとつの指標であり、当該値が小さいほど粉砕され易いことを意味する。
【0019】
本明細書中、粉砕性指数は以下に従って測定された値を用いている。体積平均粒径2mm程度の試料を機械式粉砕機(KTM-0型:川崎重工業社製)で処理量F(5kg/h)、KTM回転数12000(rpm)にて粉砕する際に、試料通過無し時の負荷動力値W0と試料を通過させた時の負荷動力値W1を記録する。その後、KTM粉砕で得られた粉砕物の体積平均粒径D(μm)をコールタマルチサイザーII(コールターベックマン社製)にて測定する。得られた値から下記式に基づいて粉砕性指数を算出する。
粉砕性指数=(D×(W1-W0))/F
【0020】
また、重合体(B)のガラス転移点(Tg)は50℃以上、好ましくは55〜85℃、より好ましくは60〜80℃であることが望ましい。Tgが低すぎると、耐熱保管性が悪化する。重合体(B)の軟化点は110〜150℃、好ましくは120〜145℃であることが望ましい。
【0021】
本明細書中、重合体または樹脂のガラス転移点は示差走査熱量計(DSC−200:セイコー電子社製)を用いて、リファレンスをアルミナとし、10mgの試料を昇温速度10℃/minの条件で20〜120℃の間で測定し、メイン吸熱ピークのショルダー値をガラス転移点としている。
また、軟化点はフローテスター(CFT-500:島津製作所社製)を用い、ダイスの細孔(径1mm、長さ1mm)、加圧20kg/cm2、昇温速度6℃/minの条件下で1cm3の試料を溶融流出させたときの流出開始点から流出終了点の高さの1/2に相当する温度を軟化点としている。
【0022】
重合体(B)の種類としては、重合体(B)がバインダー樹脂(A)と溶融混練されても相溶せず、かつバインダー樹脂(A)と粉砕性が異なる限り、特に制限されず、例えば、公知の芳香族モノマーおよび/または脂肪族モノマーの単独重合体または共重合体が使用できる。ここで「バインダー樹脂(A)と粉砕性が異なる」とは、重合体(B)の粉砕性指数がバインダー樹脂(A)の粉砕性指数より0.5以上、好ましくは0.7以上小さいことを意味する。
【0023】
芳香族モノマーとしては一般式(1);
【化1】
Figure 0004092868
(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基であり、好ましくは水素原子、塩素原子、臭素原子、またはメチル基である)で表されるスチレン系モノマーと、一般式(2);
【化2】
Figure 0004092868
(式中、R5、R6およびR7はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜6のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基であり、好ましくは水素原子、塩素原子、臭素原子、またはメチル基である)で表されるインデン系モノマーが挙げられる。
【0024】
スチレン系モノマーの具体例としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、イソプロペニルトルエン、β−メチルスチレン、1−プロペニルトルエン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、α−クロロスチレン、β−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、α−ブロモスチレン、β−ブロモスチレン等が挙げられ、好ましくはスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、イソプロペニルトルエン、β−メチルスチレン、1−プロペニルトルエン、より好ましくはスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、イソプロペニルトルエン、さらに好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、イソプロペニルトルエンである。
インデン系モノマーの具体例としては、例えば、インデン、メチルインデン、エチルインデン等が挙げられ、これらの中でもインデンが特に好ましい。この場合、純度の高いピュアモノマーを使用することが樹脂の着色、臭気、VOC量を低く抑える上で好ましい。
芳香族モノマーは単独でまたは組み合わせて用いてもよい。
【0025】
脂肪族モノマーの具体例としては、上記芳香族モノマーと重合可能であれば特に制限されず、例えば、イソプレン、ピペリレン、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、クロロプレン、2-ブロモ-1,3-ブタジエン等のジオレフィン系モノマー;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、2−メチル−ブテン−1、2−メチルブテン−2等のモノオレフィン系モノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸ネオペンチル、アクリル酸3−(メチル)ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル等のアクリル酸アルキルエステル系モノマー;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸3−(メチル)ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル系モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸系モノマー;アクリロニトリル、マレイン酸エステル、イタコン酸エステル、塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルメチルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルおよびビニルイソブチルエーテル等が挙げられる。好ましくはモノオレフィン系モノマーおよびジオレフィン系モノマーであり、より好ましくはイソプレン、ピペリレン、2−メチル−ブテン−1、2−メチルブテン−2、さらに好ましくはイソプレンである。
脂肪族モノマーは単独でまたは組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記のようなモノマーからなる重合体(B)の中でも、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、イソプロペニルトルエンおよびインデン、好ましくはスチレン、α−メチルスチレンおよびイソプロペニルトルエンからなる芳香族モノマー、および/またはイソプレン、ピペリレン、2−メチル−ブテン−1および2−メチルブテン−2、好ましくはイソプレンからなる脂肪族モノマーの単独重合体または共重合体を用いることが好ましい。
【0027】
そのような好ましい重合体(B)として、石油類のスチームクラッキングによりエチレン、プロピレンなどを製造するプラントから副生された分解油留分に含まれるジオレフィンおよび/またはモノオレフィンを原料として合成されたものが好ましく使用され得る。
【0028】
本発明においてより好ましくは、少なくともスチレンおよび/またはα−メチルスチレンを構成単位として含む重合体(B)を用いる。そのような重合体(B)の具体例として、例えば、ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン、スチレン-α-メチルスチレン共重合体、スチレン−イソプロペニルトルエン共重合体、α-メチルスチレン−イソプロペニルトルエン共重合体、α-メチルスチレン−イソプロペニルトルエン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプロペニルトルエン−イソプレン共重合体等が挙げられ、好ましくはポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン、である。重合体(B)における重合重量比は特に制限されないが、スチレンおよび/またはα−メチルスチレンの全モノマーに対する割合は25〜100重量%、好ましくは30〜100重量%であることが望ましい。
【0029】
重合体(B)としてポリスチレンを用いる場合、その重量平均分子量は1000〜2000であることがさらに好ましい。
重合体(B)としてポリ-α-メチルスチレンを用いる場合、その重量平均分子量は2000〜2800であることがさらに好ましい。
【0030】
重合体(B)の使用量は、瞬間的加熱処理時の離型剤の滲み出し防止と帯電立ち上がり性、帯電安定性および製造効率のさらなる向上の観点から、後述のバインダー樹脂(A)100重量部に対して1.5〜25重量部、好ましくは2〜15重量部、より好ましくは3〜10重量部が望ましい。重合体(B)は2種以上組み合わせて使用されてよく、その場合はそれらの合計量が上記範囲内になればよい。
【0031】
バインダー樹脂(A)の種類としては、上記したような重合体(B)との不相溶性および粉砕性の関係を有する限り特に制限されず、静電荷像現像用トナーの分野で公知のバインダー樹脂、例えば、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、エポキシ系樹脂、COC(環状オレフィン樹脂(例えば、TOPAS-COC(Ticona社製)))等が挙げられる。高性能な透光性を必要とするフルカラートナーにおいては、ポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。また、オイル塗布タイプの定着装置を用いる場合においてはポリエステル系樹脂が、定着時のオイル塗布を必要としないあるいは微量のオイル塗布で定着するシステムにおいてはポリエステル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、エポキシ系樹脂、COC(環状オレフィン樹脂(Ticona社製:TOPAS-COC))が好ましく使用される。
【0032】
本発明においてポリエステル系樹脂としては、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分を重縮合させることにより得られたポリエステル樹脂が使用可能である。
多価アルコール成分のうち2価アルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3,3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
3価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0033】
また、多価カルボン酸成分のうち2価のカルボン酸成分としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸の無水物あるいは低級アルキルエステルが挙げられる。
【0034】
3価以上のカルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸,1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、これらの酸の無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0035】
また、本発明においてはポリエステル系樹脂として、ポリエステル樹脂の原料モノマーと、ビニル系樹脂の原料モノマーと、両方の樹脂の原料モノマーと反応するモノマーとの混合物を用い、同一容器中でポリエステル樹脂を得る縮重合反応およびビニル系樹脂を得るラジカル重合反応を並行して行わせて得られた樹脂も好適に使用可能である。なお、両方の樹脂の原料モノマーと反応するモノマーとは、換言すれば縮重合反応およびラジカル重合反応の両反応に使用し得るモノマーである。即ち縮重合反応し得るカルボキシ基とラジカル重合反応し得るビニル基を有するモノマーであり、例えばフマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0036】
ポリエステル樹脂の原料モノマーとしては上述した多価アルコール成分および多価カルボン酸成分が挙げられる。
またビニル系樹脂の原料モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−クロルスチレン等のスチレンまたはスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン系不飽和モノオレフィン類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸3−(メチル)ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸ネオペンチル、アクリル酸3−(メチル)ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル等のアクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸;アクリロニトリル、マレイン酸エステル、イタコン酸エステル、塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルメチルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルおよびビニルイソブチルエーテル等が挙げられる。ビニル系樹脂の原料モノマーを重合させる際の重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、イソプロピルパーオキシカーボネート、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
【0037】
バインダー樹脂(A)は酸価が5〜50KOHmg/g、好ましくは10〜40KOHmg/gであることが望ましい。特に、ポリエステル系樹脂を用いる場合このような酸価を有する樹脂を用いることによって、カーボンブラックや各種着色剤等の分散性を向上させるとともに、十分な帯電量を有するトナーとすることができる。
【0038】
酸価は、10mgの試料をトルエン50mlに溶解し、0.1%のブロムチモールブルーとフェノールレッドの混合指示薬を用いて、予め標定されたN/10水酸化カリウム/アルコール溶液で滴定し、N/10水酸化カリウム/アルコール溶液の消費量から算出した値である。
【0039】
本発明においては、特にオイルレス定着用トナーとしての定着性および耐オフセット性を向上させるため、あるいは、透光性を必要とするフルカラートナーにおいて画像の光沢性を制御するために、ポリエステル系樹脂として軟化点の異なる2種類のポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。定着性を向上させるために軟化点が95〜120℃の第1ポリエステル系樹脂を使用し、耐オフセット性を向上させるために軟化点が130〜160℃の第2ポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。この場合に第1ポリエステル系樹脂の軟化点が95℃より低くなると耐オフセット性が低下したりドットの再現性が低下し、120℃より高いと定着性向上の効果が不十分となる。また第2ポリエステル系樹脂の軟化点が130℃より低いと耐オフセット性向上の効果が不十分となり、160℃より高くなると定着性が低下する。このような観点からより好ましい第1ポリエステル系樹脂の軟化点は100〜115℃で、第2ポリエステル系樹脂の軟化点は135〜155℃である。また、トナーの耐熱性および製造効率のさらなる向上の観点からは第1および第2ポリエステル系樹脂のガラス転移点は50〜75℃、好ましくは55〜70℃とすることが望ましい。このようにバインダー樹脂として2種類の樹脂を使用する場合においては、それらの混合樹脂の酸価が上記範囲内であればよい。
【0040】
第1ポリエステル系樹脂としては、上述した多価アルコール成分と多価カルボン酸成分を重縮合させて得られたポリエステル樹脂、特に多価アルコール成分としてビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物を主成分とし、多価カルボン酸成分としてテレフタル酸、フマル酸、ドデセニルコハク酸、ベンゼントリカルボン酸のみからなる群より選択される少なくとも1種を主成分として得られたポリエステル樹脂が好ましい。第1ポリエステル系樹脂はMnが1800〜7300、好ましくは2000〜5000、Mw/Mnが1.7〜4.6、好ましくは2〜4であることが望ましい。
【0041】
第2ポリエステル系樹脂としては、少なくとも上述した3価以上のアルコール成分または3価以上のカルボン酸成分を含む多価アルコール成分と多価カルボン酸とを重縮合させて得られたポリエステル樹脂、特に2価アルコール成分としてビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物を主成分とし、3価以上のカルボン酸成分としてトリメリット酸を用い、2価カルボン酸成分としてテレフタル酸、フマル酸、ドデセニルコハク酸、ベンゼントリカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種を主成分として得られたポリエステル樹脂が好ましい。
【0042】
また、第2ポリエステル系樹脂としては、ポリエステル樹脂の原料モノマーと、ビニル系樹脂の原料モノマーと、両方の樹脂の原料モノマーと反応する両反応性モノマーとの混合物を用い、同一容器中でポリエステル樹脂を得る縮重合反応およびビニル系樹脂を得るラジカル重合反応を並行して行わせて得られたポリエステル系樹脂を用いても良い。このような樹脂は、ワックスの分散性、トナーの強靭性、定着性、耐オフセット性を向上させる観点から好ましい。この場合、第2ポリエステル系樹脂中のビニル系樹脂の含有量は5〜40重量%、好ましくは10〜35重量%が望ましい。
【0043】
第2ポリエステル系樹脂はMnが2000〜8500、好ましくは2500〜6000、Mw/Mnが8〜40、好ましくは15〜40であることが望ましい。
【0044】
第1ポリエステル系樹脂と第2ポリエステル系樹脂との重量比は100:0〜10:90、好ましくは80:20〜15:85とすることが好ましい。第1ポリエステル系樹脂と第2ポリエステル系樹脂とをこのような範囲で使用することにより、トナーとして定着時のつぶれによる広がりが小さくドット再現性に優れており、さらに低温定着性に優れ低速および高速の画像形成装置においても優れた定着性を確保することができる。また、両面画像形成時(定着機を2度通過時)にも優れたドット再現性を維持することができる。第1ポリエステル系樹脂の割合が上記範囲より少ない場合は、低温定着性が不十分となり幅広い定着性を確保できなくなる。また、第2ポリエステル系樹脂の割合が上記範囲より少ない場合は、耐オフセット性が低下するとともに定着時のトナーのつぶれが大きくなりドット再現性が低下する傾向がある。
【0045】
その他、本発明においては、バインダー樹脂(A)の一部あるいは全部としてエポキシ系樹脂を使用することもできる。本発明で使用されるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの重縮合物などが好適に使用できる。例えば、エポミックR362、R364、R365、R367、R369(以上 三井石油化学工業社製)、エポトートYD-011、YD-012、YD-014、YD-904、YD-017(以上 東都化成社製)、エピコート1002、1004、1007(以上 シェル化学社製)等、市販のものも使用できる。
【0046】
離型剤としてはワックスを使用する。本発明においては、ワックスを含有させるため、オイル塗布量が低減された定着方式、好ましくはオイルレス定着方式においても、長期にわたってかぶり、中抜けおよびブレード固着の発生を防止しながら、トナー画像の一部が定着部材に移行して非画像領域を汚染するオフセット現象や被転写体が定着部材に巻きつく現象を防止することができる。このようなワックスとしては静電荷像現像用トナーの分野で公知のワックスが使用可能であり、例えば、ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックス等のポリオレフィン系ワックス、カルナバワックスおよびライスワックス等の天然ワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィン系ワックス等を挙げることができる。
【0047】
ポリエチレンワックスとしては、酸化型ポリエチレンとして市販されているものが使用でき、例えば、三洋化成工業社製のサンワックスE300(軟化点103.5℃,酸価22),サンワックスE250P(軟化点103.5℃,酸価19.5),サンワックスE310(酸価15),三井石油化学工業社製のハイワックス4053E(軟化点145℃,酸価25),405MP(軟化点128℃,酸価1.0),310MP(軟化点122℃,酸価1.0),320MP(軟化点114℃,酸価1.0),210MP(軟化点118℃,酸価1.0),220MP(軟化点113℃,酸価1.0),220MP(軟化点113℃,酸価1.0),4051E(軟化点120℃,酸価12),4052E(軟化点115℃,酸価20),4202E(軟化点107℃,酸価17),2203A(軟化点111℃,酸価30)等が使用できる。
【0048】
ポリプロピレンワックスとしては定着における耐オフセット性の観点から低分子量のポリプロピレンが好ましく用いられるが、低分子量のポリプロピレンは硬度が小さい為、トナーの流動性を低下させる欠点を持っており、この欠点を改良する為に、カルボン酸または酸無水物で変性したものが好ましい。特に、低分子量ポリプロピレン系樹脂を(メタ)アクリル酸、マレイン酸および無水マレイン酸からなる群から選ばれる1種以上の酸モノマーで変性した変性ポリプロピレン樹脂が好適に使用できる。該変性ポリプロピレンは、例えばポリプロピレン系樹脂に(メタ)アクリル酸、マレイン酸および無水マレイン酸からなる群より選ばれる1種以上の酸モノマーを過酸化物触媒存在下もしくは無触媒下でグラフトあるいは付加反応することにより得られる。変性ポリプロピレンを使用する場合には、酸価が0.5〜30KOHmg/g好ましくは1〜20KOHmg/gであることが望ましい。上記酸化型ポリプロピレンワックスとしては、市販されているものでは、三洋化成工業社製のビスコール200TS(軟化点140℃,酸化3.5),ビスコール100TS(軟化点140℃,酸価3.5),ビスコール110TS(軟化点140℃,酸価3.5)等が使用できる。
【0049】
カルナバワックスとしては、微結晶のものが良く、酸価が0.5〜10KOHmg/g、好ましくは1〜6KOHmg/gであることが望ましい。
モンタンワツクスは、一般的に鉱物より精製されたモンタン系エステルワックスを指し、カルナバワックスと同様に微結晶のものが良く、酸価が1〜20KOHmg/g、好ましくは3〜15KOHmg/gであることが望ましい。
ライスワックスは米ぬかワックスを空気酸化したものであり、酸価が5〜30KOHmg/gであることが好ましい。
【0050】
フィッシャー・トロプシュワックスは、石炭より合成石油を炭化水素合成法により製造する際、副生するワックスであり、例えばサゾール社製の商品名「サゾールワックス」として市販されているものである。またこれとは別に天然ガスを出発原料とするフィッシャー・トロプシュワックスも低分子量成分が少なくトナーに用いた場合の耐熱性に優れる為、好適に使用できる。
フィッシャー・トロプシュワックスの酸価としては、0.5〜30KOHmg/gの物が使用でき、サゾールワックスの中では、特に酸価が3〜30KOHmg/gを有する酸化タイプのもの(商品名、サゾールワックスA1,A2等)が好適に使用できる。
【0051】
本発明においては上記離型剤の中でも、耐オフセット性の向上の観点からは、ポリプロピレンワックスを用いることが好ましく、またスミア性(自動原稿送り時あるいは両面複写時に片面に既に画像が形成された用紙の紙送りの際にローラで画像が擦られて画像ににじみや汚れ等の画質低下を起こす現象)を防止する観点からは、ポリエチレンワックスを用いることが好ましい。
【0052】
上述した観点から特に好ましいポリプロピレンワックスは160℃における溶融粘度が50〜300cps、軟化点が130〜160℃および酸価が1〜20KOHmg/gであるポリプロピレンワックスである。
また、上述した観点から特に好ましいポリエチレンワックスは160℃における溶融粘度が1000〜8000cpsおよび軟化点が130〜150℃であるポリエチレンワックスである。
【0053】
上記溶融粘度、軟化点および酸価を有するポリプロピレンワックスは上記バインダ樹脂(A)に対する分散性が特に優れており、遊離ワックスによる問題を有効に防止しながら耐オフセット性の向上を有効に達成できる。特にポリエステル樹脂をバインダ樹脂として使用する場合には、酸化型ポリプロピレンワックスを使用することが好ましい。
また、上記溶融粘度および軟化点を有するポリエチレンワックスもバインダー樹脂に対する分散性が優れており、遊離ワックスによる問題を有効に防止しながら定着画像表面の摩擦係数を低減させてスミア性の向上を有効に達成できる。
【0054】
ワックスの溶融粘度はブルックフィールド型粘度計により測定された値である。
ワックスの軟化点は上述した重合体または樹脂の軟化点の測定方法と同様の方法により測定された値を用いている。
ワックスの酸価は後述する樹脂の酸価の測定方法と同様の方法により測定された値を用いている。
【0055】
離型剤の添加量はバインダ樹脂(A)100重量部に対して2〜15重量部、好ましくは3〜10重量部が好適である。本発明においては離型剤を比較的多く添加しても離型剤の滲み出しを有効に防止する観点からは、バインダ樹脂(A)100重量部に対して4〜10重量部がより好ましい。離型剤として2種以上のワックスを使用する場合は、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0056】
本発明で使用される着色剤としては、従来からフルカラートナー用の着色剤として使用されている公知の顔料及び染料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、銅フタロシアニン、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド184、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ソルベント・イエロー162、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー185、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を挙げることができる。着色剤の含有量としてはバインダー樹脂(A)100重量部に対し2〜15重量部の範囲が好ましい。
【0057】
本発明のトナーには帯電制御剤や磁性粉等の添加剤を含有させてもよい。
帯電制御剤としては、従来から静電荷像現像用トナーの分野で帯電性を制御するために添加されている公知の帯電制御剤が使用可能である。例えば、フッ素系界面活性剤、サリチル酸金属錯体、アゾ系金属化合物のような含金属染料、マレイン酸を単量体成分として含む共重合体の如き高分子酸、第4アンモニウム塩、ニグロシン等のアジン系染料、カーボンブラック等を使用することができる。
【0058】
以上のような材料からなる本発明のトナーは以下の方法によって有効に製造され得る。まず、少なくともバインダー樹脂(A)、重合体(B)、離型剤および着色剤ならびにその他の添加剤、例えば帯電制御剤および磁性粉等をヘンシェルミキサー等の公知の混合装置によって混合した後、公知の混練装置によって溶融混練し、冷却して、混練物を得る。混練装置としては、1または2以上の回転軸(スクリュー、ロータ、ロール等)を有するものが使用されるが、連続生産性、長期耐久性等の点からスクリュー押出機が主に使用できる。
【0059】
次いで、上記のようにして得られた混練物を、粉砕し、所望により分級する。粉砕工程においては、通常、混練物を粗粉砕した後、微粉砕する。好ましくは、混練物をフェザーミル等により粗粉砕した後、クリプトロンシステム(KTM:川崎重工業社製)等の高速気流中衝撃法を応用した機械式粉砕装置ならびに/またはジェット粉砕機(IDS;日本ニューマチック社製)等のジェットミルにより微粉砕する。本発明においては、最終的に粒子の体積平均粒径が4〜8μm、好ましくは5〜7μmになるように粉砕されることが望ましい。分級工程で使用される分級装置としては、粉砕物を所望粒径に分級できれば公知の分級装置が使用可能であり、例えば、ティープレックス型分級機(ホソカワミクロン社製)等を用いることができる。
【0060】
本発明においては混練物中に重合体(B)が分散されているため、粉砕工程において、上記混練物は重合体(B)の分散粒子を結ぶように粉砕面が形成されながら粉砕されて、表面に重合体(B)が露出したトナー粒子が生産性よく得られる。このため、その後の瞬間的加熱処理工程でのトナー粒子表面への離型剤の滲み出しが抑制され、離型剤がトナー粒子表面に現れる確率を有効に低減できると考えられる。混練物中における重合体(B)粒子が存在するところでは、粉砕はバインダー樹脂(A)と重合体(B)粒子との接触面(界面)ではなく、重合体(B)粒子の内部を通って起こるため、当該粉砕面は重合体(B)によって構成され、粉砕工程で得られるトナー粒子は表面に重合体(B)が露出した構成を有すると考えられる。
【0061】
表面に重合体(B)がより露出したトナー粒子を得る観点からは、混練物中、重合体(B)が均一に分散され、かつその平均分散粒径は0.05〜2μm、好ましくは0.1〜1.5μm、より好ましくは0.3〜1.2μmに制御さていることが好ましい。より好ましくは分散粒子の95%以上が粒径2μm以下で分散している。混練物中における重合体(B)の分散状態をそのように制御すると、重合体(B)がトナー粒子表面に露出する確率が高くなり、瞬間的加熱処理時の離型剤の滲み出しをより有効に防止することができる。
【0062】
溶融混練後、冷却して得られる混練物中の重合体(B)の分散状態は、使用される重合体(B)の体積平均粒径、混練前の混合条件、および混練条件等を適宜変更することによって制御され得る。すなわち、使用される重合体(B)の粒径を小さくすると、混練物中における重合体(B)の分散粒径は小さくなる。また、混合条件および混練条件を強めると、混練物中における重合体(B)の平均分散粒径は小さくなる。具体的には、例えば、体積平均粒径1〜5mmの重合体(B)を他のトナー材料とともにヘンシェルミキサーで混合し、2軸押し出し混練機(PCM-30:池貝鉄工社製)で溶融混練する場合、通常、ヘンシェルミキサーの混合速度を周速20〜50m/sに、混合時間を2〜10分間に、混練機の混練温度を120〜200℃に、混練機における被処理物の通過時間を1〜5分間に設定することによって、重合体(B)が上記分散粒径で均一に分散された混練物が得られる。
【0063】
混練物中の重合体(B)の分散粒径は測定し難いことから、後述の粉砕工程において体積平均粒径約2mmに粉砕されたトナー粗粉砕物の粒子中における重合体(B)の分散粒径が上記範囲内であればよい。なお、混練物中の重合体(B)の分散粒径と体積平均粒径約2mmに粉砕されたトナー粗粉砕物の粒子中における重合体(B)の分散粒径は変わらない。体積平均粒径約2mmに粉砕されたトナー粗粉砕物の粒子中における重合体(B)の分散粒径は粒子をミクロトームでスライスした後、オスニウム染色し、TEM(透過型電子顕微鏡)にて10000倍の写真を撮影することにより測定することができる。
【0064】
次いで、上記のようにして得られたトナー粒子を瞬間的加熱処理する。本発明において粉砕工程で得られたトナー粒子は表面に重合体(B)が露出した構成を有するため、瞬間的加熱処理されても離型剤が表面に滲み出ることはほとんどなく、トナー粒子の均一な球形化と表面の平滑化を容易に達成できる。
【0065】
瞬間的加熱処理するための装置としては、トナー粒子に瞬間的に熱を付与してトナー粒子の表面を溶融させ、トナー粒子の球形化と平滑化を瞬時に行う装置であれば特に制限されない。そのような装置として、例えば、熱風中にトナー粒子を圧縮空気により分散噴霧することにより、トナー粒子に瞬間的に熱を付与するサフュージングシステム(日本ニューマチック工業社製)が挙げられる。
【0066】
本発明における瞬間的加熱処理を、サフュージングシステムの概略構成図を示す図1および図1の装置における試料噴射室の概略水平断面図を示す図2を用いて説明する。図1に示す如く、熱風発生装置101にて調製された高温高圧エアー(熱風)は導入管102を経て熱風噴射ノズル106より噴射される。一方、トナー粒子105は定量供給器104から所定量の加圧エアーによって導入管102’を経て搬送され、前記熱風噴射ノズル106の周囲に設けられた試料噴射室107へ送り込まれる。試料噴射室107は、図2に示す如く、中空のドーナツ形状をしており、その内壁には複数の試料噴射ノズル103が等間隔に配置されている。試料噴射室107へ送り込まれたトナー粒子は、噴射室107で拡散して均等に分散した状態となり、引き続き送り込まれてくるエアーの圧力によって複数の試料噴射ノズル103から熱風気流中へ噴射される。
【0067】
また、試料噴射ノズル103の噴出流が熱風気流を横切ることがないように試料噴射ノズル103に所要の傾きを設けておくことが好ましい。具体的には、トナー噴出流が熱風気流にある程度沿うように噴射することが好ましく、トナー噴出流の流れ方向と熱風気流の中心領域の流れ方向とのなす角度が20〜40°、好ましくは25〜35°が好ましい。40°よりも広いとトナー噴出流が熱風気流を横切るように噴射されることにより、他のノズルから噴射されたトナー粒子と衝突してトナー粒子の凝集が発生し、一方、20°よりも狭い熱風中に取り込まれないトナー粒子が発生し、トナー粒子の形状が不均一となる。
【0068】
また、試料噴射ノズル103は複数本必要であり、少なくとも3本以上、4本以上が好ましい。複数本の試料噴射ノズルを使用することによって熱風気流中へのトナー粒子の均一な分散が可能となり、トナー粒子1つ1つの加熱処理を確実に行うことができる。試料噴射ノズルから噴出された状態としては、噴出時点で広く拡散し、他のトナー粒子と衝突することなく熱風気流全体へ分散されることが望ましい。
【0069】
このようにして噴射されたトナー粒子は高温の熱風と瞬間的に接触して均質に加熱処理される。ここでは瞬間的とは、処理温度ならびにトナー粒子の熱風気流中での濃度により異なるが、必要なトナー粒子の改質(加熱処理)が達成され、かつトナー粒子同士の凝集が発生しない時間であり、通常2秒以下、好ましくは1秒以下がよい。この瞬間的時間は、トナー粒子が試料噴射ノズルから噴射され、導入管102”に導入されるまでのトナー粒子の滞留時間として表される。この滞留時間が2秒を越えると合一粒子が発生しやすくなる。
【0070】
次いで、瞬間加熱されたトナー粒子は直ちに冷却風導入部108から導入される冷風によって冷却され、装置器壁へ付着したり粒子同士凝集したりすることなく、導入管102”を経てサイクロン109により捕集され、製品タンク111に貯まる。トナー粒子が捕集された後の搬送エアーはさらにバグフィルター112を通過して微紛が除去された後、ブロアー113を経て大気中へ放出される。なお、サイクロン109は冷却水が流れている冷却ジャケットを設け、トナー粒子の凝集を防止することが好ましい。
【0071】
その他、瞬間的加熱処理を行うに重要な条件としては、熱風風量、分散風量、分散濃度、処理温度、冷却風温度、吸引風量、冷却水温度である。
熱風風量とは、熱風発生装置101により供給される熱風の風量である。この熱風風量は、多くする方が熱処理の均一性、処理能力を向上させる意味で好ましい。
分散風量とは、加圧エアーによって、導入管102’に送り込まれる風量のことである。その他の条件にもよるが、この分散風量は、押さえて熱処理したほうが、トナー粒子の分散状態が向上、安定するため好ましい。
分散濃度とは、熱処理領域(具体的にはノズル吐出領域)でのトナー粒子の分散濃度をいう。好適な分散濃度はトナー粒子の比重によって異なり、分散濃度を各トナー粒子の比重で割った値が、50〜300g/m3、好ましくは50〜200g/m3で処理することが好ましい。
【0072】
処理温度とは、熱処理領域での温度をいう。本発明において瞬間的加熱処理に供されるトナー粒子は表面に重合体(B)が露出した構成を有するため、当該温度を比較的低く設定しても、十分なトナー粒子の球形化および平滑化効果が得られる。熱処理領域では中心から外側向け温度勾配が実状存在するが、この温度分布を低減して処理することが好ましい。装置面からは、スタビライザー等により風を安定化層流状態で供給することが好ましい。分子量分布のシャープなバインダー樹脂、例えば重量平均分子量/数平均分子量が2〜20を有するバインダー樹脂を使用してなる非磁性トナーにおいては、バインダー樹脂のガラス転移点+100℃以上〜ガラス転移点+200℃のピーク温度範囲で処理することが好ましい。より好ましくはバインダー樹脂のガラス転移点+120℃以上〜ガラス転移点+180℃のピーク温度範囲で処理する。なお、ピーク温度範囲とはトナーが熱風と接触する領域での最高温度をいう。
【0073】
分子量分布の比較的広いタイプのバインダー樹脂、例えば重量平均分子量/数平均分子量が30〜100を有するバインダー樹脂を使用してなる非磁性トナーにおいては、バインダー樹脂のガラス転移温度+100℃以上〜ガラス転移温度+250℃のピーク温度範囲で処理することが好ましい。さらに好ましくはバインダー樹脂のガラス転移温度+150℃以上〜ガラス転移温度+200℃のピーク温度範囲で処理する。これは、トナーの形状ならびに表面の均一性を向上させるためには、バインダー樹脂の高分子量領域の改質をも達成できるよう高めの処理温度に設定する必要が生じるためである。しかしながら、処理温度を高めに設定すると逆に合一粒子が発生しやすくなるため、熱処理前の流動化処理を多めに設定する、処理時の分散濃度を低めに設定する等のチューニングが必要となる。
【0074】
冷却風温度とは、冷却風導入部108から導入される冷風の温度である。トナー粒子は瞬間的加熱処理後、トナー粒子の凝集あるいは合一が発生しない温度領域まで瞬時に冷却すべく、冷却風によりガラス転移温度以下の雰囲気下に戻すことが好ましい。このため、冷却風の温度は、25℃以下、好ましくは15℃以下、さらに好ましくは、10℃以下で冷却する。しかしながら、必要以上に温度を下げると条件によっては結露が発生する可能性があり、逆に副作用が生じるので注意が必要である。かかる瞬間的加熱処理では、次に示す装置内の冷却水による冷却と併せて、バインダー樹脂が溶融状態にある時間が非常に短いため、粒子相互および熱処理装置の器壁への粒子付着がなくなる。この結果、連続生産時の安定性に優れ、製造装置の清掃頻度も極端に少なくでき、また、収率を高く安定的に制御できる。
【0075】
吸引風量はブロアー113により処理されたトナー粒子をサイクロンに搬送するためのエアーをいう。この吸引風量は、多くする方が、トナー粒子の凝集性を低減させる意味で好ましい。
冷却水温度とは、サイクロン109、114ならびに導入管102”に設けられている冷却ジャケット内の冷却水の温度をいう。冷却水温度は、25℃以下、好ましくは15℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。
【0076】
トナー粒子の球形度(円形度)をより高くし、形状のバラツキをより小さく抑え、かつ表面をより平滑にするために、さらに以下の工夫を施すことが好ましい。
▲1▼熱風気流中に供給するトナー粒子量を一定に制御し、脈動等を発生させないこと。このためには;
(i)図1中115で使用されるテーブルフィーダーおよび振動フィーダー等を複数種組み合わせて使用し、定量供給性を高める。テーブルフィーダーおよび振動フィーダーを使用して、精度の高い定量供給を行うことができれば、微粉砕あるいは分級工程を連結し、そのままオンラインで熱処理工程にトナー粒子を供給することも可能となる。
(ii)トナー粒子を圧縮空気で供給後、熱風中に供給する前に、トナー粒子を試料供給室107内で再分散させ、均一性を高める。例えば、二次エアーにより再分散させる、バッファ部を設けてトナー粒子の分散状態を均一化する、または同軸二重管ノズル等で再分散させる等の手段を採用する。
【0077】
▲2▼熱風気流中に噴霧供給した際のトナー粒子の分散濃度を最適化かつ均一に制御すること。このためには;
(i)熱風気流中への供給は、全周方向から均一に、かつ、高分散状態で投入する。より具体的には分散ノズルから供給する場合には、スタビライザ等を有するノズルを使用し、個々のノズルから分散されるトナー粒子の分散均一性を向上させる;
(ii)熱風気流中のトナー粒子の分散濃度を均一化するため、ノズル本数は、前記したように少なくとも3本以上、好ましくは4本以上とできる限り多くし、かつ、全周方向に対して、対称形で配置する。360度全周領域に設けられたスリット部から均一にトナー粒子を供給してもよい;
【0078】
▲3▼すべての粒子に対して、均一な熱エネルギーがかかるよう、トナー粒子が処理される領域での熱風の温度分布がなきよう制御され、かつ、熱風が層流状態に制御されていること。このためには;
(i)熱風を供給する熱源の温度バラツキを低減する;
(ii)熱風供給前の直管部分をできる限り長くしたりする。または、熱風供給口付近に熱風を安定化させるためのスタビライザを設けることも好ましい。さらに、図1に例示した装置構成は、開放系であり、そのため外気と接する方向に熱風が拡散する傾向にあるため、熱風の供給口を必要に応じて絞ってもよい;
【0079】
▲4▼トナー粒子が熱処理中に均一分散状態が保持できるだけの流動化処理がなされていること。このためには;
(i)トナー粒子の分散・流動性を確保するため、BET比表面積が100〜350m2/g、好ましくは130〜300m2/gの無機微粒子(第1無機微粒子)を用いる。この無機微粒子は公知の疎水化剤によって疎水化処理されていることが好ましい。第1無機微粒子の添加量はトナー粒子100重量部に対して0.1〜6重量部、好ましくは0.3〜3重量部が望ましい。
(ii)分散・流動性を向上させるための混合処理は、トナー粒子表面に均一かつ強く固定化されない付着した状態で存在することが好ましい;
【0080】
▲5▼トナー粒子表面が熱を受けた時点でもトナー粒子表面に各トナー粒子のスペーサ効果が保持でき、軟化しない粒子がトナー粒子表面に存在させること。このためには;
(i)上記▲4▼で示した無機微粒子と比較して大き目の粒径を有し、かつ、処理温度で軟化しない微粒子を添加することが好ましい。トナー粒子表面の本粒子の存在により、熱を受け始めた後においても、トナー粒子表面が完全な樹脂成分のみの表面とはならず、トナー粒子間においてスペーサ効果をもたらし、トナー粒子同士の凝集・合一を防止する;
(ii)このような効果を達成するためには、BET比表面積が10〜100m2/g、好ましくは20〜90m2/g、より好ましくは20〜80m2/gの無機微粒子(第2無機微粒子)を用いる。第2無機微粒子の添加量はトナー粒子100重量部に対して0.05〜5重量部、好ましくは0.3〜3重量部が望ましい。なお、上述した第1無機微粒子と第2無機微粒子とを併用する場合には、両者のBET比表面積の差が30m2/g以上、好ましくは50m2/g以上となるようにすることが好ましい。
【0081】
▲6▼熱処理品の捕収は、熱を発生させないよう制御されてなること。このためには;
(i)熱処理ならびに冷却されてなる粒子は、配管系(特にアール部分)ならびに通常トナー粒子の捕収で使用されているサイクロンで発生する熱を押さえるため、チラーでの冷却をすることが好ましい。
▲7▼熱の処理に寄与できる樹脂成分が少なく、また比較的比重の大きい磁性トナーの処理においては、熱処理される空間を円筒状に囲い、実質的に処理される時間を増加させたり、複数回の処理を行うことが好ましい。
【0082】
以上のような方法で有効に製造され得るトナー粒子には流動性調整剤として微粒子(無機微粒子(第3無機微粒子)および/または有機微粒子)を添加することが好ましい。
瞬間的加熱処理後に添加される無機微粒子(第3無機微粒子)および瞬間的加熱処理前に添加される無機微粒子(第1無機微粒子および第2無機微粒子)としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブテン、炭化カルシウム、ダイヤモンドカーボンラクタム等の各種炭化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム等の各種窒化物、ホウ化ジルコニウム等の各種ホウ化物、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム、シリカ、コロイダルシリカ等の各種酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等の各種チタン酸化合物、二硫化モリブデン等の硫化物、フッ化マグネシウム、フッ化炭素等の各種フッ化物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の各種金属石鹸、滑石、ベントナイト等の各種非磁性無機微粒子を単独あるいは組み合わせて用いることができる。第1〜第3無機微粒子は独立して選択されてよい。
【0083】
有機微粒子としては、クリーニング助剤等の目的で乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、非水分散重合法等の湿式重合法、気相法等により造粒した、スチレン系、(メタ)アクリル系、ベンゾグアナミン、メラミン、テフロン、シリコン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の微粒子を用いることができる。
【0084】
無機微粒子、特にシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛等は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、シリコーンワニス等の従来から使用されている疎水化処理剤、さらにはフッ素系シランカップリング剤、またはフッ素系シリコーンオイル、さらにアミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤、変性シリコーンオイル等の処理剤を用いて公知の方法で表面処理されていることが好ましい。チタン酸金属塩等の比較的大径の無機微粒子ならびに各種有機微粒子は、疎水化処理してもしなくても良い。
【0085】
瞬間的加熱処理後に添加される微粒子はトナー粒子100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは、0.5〜3重量部添加される。上記微粒子は2種以上組み合わせて使用されてよく、その場合にはそれらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0086】
本発明のトナーは上述したように比較的多量の離型剤を含有しても瞬間的加熱処理時の離型剤のトナー粒子表面への滲み出しを抑制できる。このため、本発明のトナーは、定着部材への離型性オイル塗布量が4mg/cm2以下に低減された定着装置、好ましくはオイルレス定着装置を有する画像形成装置にも有効に適用され得る。すなわち、そのような定着装置を有する画像形成装置に本発明のトナーを適用しても、長期にわたってかぶり、中抜けおよびブレード固着の発生を抑制することができる。
【0087】
【実施例】
(バインダー樹脂(A)の製造)
・ポリエステル樹脂1〜5
温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー、および窒素導入管を取り付けたガラス製4つ口フラスコに、表1に示すモル比でアルコール成分および酸成分を重合開始剤(ジブチル錫オキシド)とともに入れた。これをマントルヒーター中において窒素気流下にて、撹拌加熱しながら加熱することにより反応させた。そして、この反応の進行は、酸価を測定することにより追跡した。所定の酸価に達した時点でそれぞれ反応を終了させて室温まで冷却し、ポリエステル樹脂1〜5を得た。得られた各ポリエステル樹脂は1mm以下に粗砕して以下のトナーの製造で用いた。なお、表中、BPA-POはポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを、BPA-EOはポリオキシエチレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを、TPAはテレフタル酸を、TMAはトリメリット酸を、DSAはドデセニルコハク酸を、FAはフマル酸を表す。
【0088】
【表1】
Figure 0004092868
【0089】
(重合体(B)の製造)
・樹脂B1〜B3
スチレン(純度99.9%)500gおよびトルエン500gを三つ口フラスコに入れ、撹拌下に三フッ素ホウ素フェノール錯体を少量づつ添加し、ドライアイス・アセトン浴で冷却しながら20℃で3時間反応させた。次いで、アルカリを添加して触媒を失活させて除去し、溶媒と未反応モノマーとを追い出すために濃縮し、残渣としてポリスチレンを得た。当該ポリマーを樹脂B1とし、物性を表2に示した。
反応時間を変更したこと以外、樹脂B1と同様の方法で樹脂B2およびB3を得た。
・樹脂B4〜B6
α−メチルスチレン(純度99.8%)500gおよびトルエン500gを三つ口フラスコに入れ、撹拌下に三フッ素ホウ素フェノール錯体を少量づつ添加し、ドライアイス・アセトン浴で冷却しながら20℃で3時間反応させた。次いで、アルカリを添加して触媒を失活させて除去し、溶媒と未反応モノマーとを追い出すために濃縮し、残渣としてポリ−α−メチルスチレンを得た。当該ポリマーを樹脂B4とし、物性を表2に示した。
反応時間を変更したこと以外、樹脂B4と同様の方法で樹脂B5およびB6を得た。
【0092】
【表2】
Figure 0004092868
【0093】
(顔料マスターバッチの製造)
フルカラートナーの製造に使用する顔料は以下の方法によって得られる顔料マスターバッチとして用いた。各実施例または比較例で使用するバインダー樹脂と顔料を重量比(樹脂:顔料)7:3の割合で加圧ニーダーに仕込み、120℃で1時間混練した。冷却後、ハンマーミルで粗粉砕し、顔料含有率30重量%顔料マスターバッチを得た。顔料としてはC.I.Pigment Red184(大日本インキ社製)を用いた。
【0094】
(トナー製造)
実施例1
バインダー樹脂(A)(樹脂1(60重量%)と樹脂2(40重量%)との混合樹脂)100重量部、カーボンブラック(モーガルL;キャボット社製)5重量部、樹脂B1を10重量部、ポリエチレンワックス(800P;三井化学社製、軟化点120℃)0.5重量部、酸化型低分子量ポリプロピレンワックス(ビスコール110TS;三洋化成工業社製、軟化点140℃、酸価3.5KOHmg/g)3.5重量部、およびサリチル酸の亜鉛錯体(E-84;オリエント化学工業社製)2.0重量部を、ヘンシェルミキサーで周速40m/sにて材料温度が45℃以上にならないように制御しながら5分間混合した後、2軸押し出し混練機(PCM-30:池貝鉄工社製)の排出部を取り出したものを使用して、溶融混練した。混練温度は170℃であり、被処理物の通過時間は約1分間であった。得られた混練物を冷却プレスローラーで2mm厚に圧延し、冷却ベルトで冷却した後、フェザーミルで粗粉砕した。その後、機械式粉砕機(KTM:川崎重工業社製)で平均粒径10〜12μmまで粉砕し、さらに、ジェット粉砕機(IDS:日本ニューマチック社製)で平均粒径6.8μmまで粉砕粗粉分級した後、微紛分級をロータ型分級機(ティープレックス型分級機タイプ:100ATP:ホソカワミクロン社製)を使用して体積平均粒径7.4μm、のトナー粒子を得た。このトナー粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(TS-500:キャボジル社製)0.5重量部と、疎水性シリカ(AEROSIL 90G;日本アエロジル社製)のヘキサメチレンジシラザン処理品;BET 65m2/g、pH6.0、疎水化度65%以上)1.0重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで(周速40m/sec、60秒間)混合処理した後、図1に示す装置により、以下の条件で熱による表面改質を行い、ブラックトナーを得た。
【0095】
表面改質処理の条件
現像剤供給部;テーブルフィーダー+振動フィーダー
分散ノズル;4本(全周に対して、各90度の対称形配置)
噴出角度 ;30度
熱風風量 ;800L/min
分散風量 ;55L/min
吸引風量 ;-1200L/min
分散濃度 ;100g/m3
処理温度 ;180℃
滞留時間 ;0.5秒
冷却風温度;15℃
冷却水温度;10℃
【0096】
実施例2 よび5ならびに比較例1および4〜7
バインダー樹脂(A)として樹脂1〜5を表3に示した割合で使用したこと、および重合体(B)として表3に示した樹脂を表記した量で使用したこと以外、実施例1の製法と同様にしてブラックトナーを得た。
【0097】
実施例3 4および比較例2および3ならびに8 10
バインダー樹脂(A)として樹脂1〜5を表3に示した割合で使用したこと、重合体(B)として表3に示した樹脂を表記した量で使用したこと、カーボンブラックの代わりに顔料マスターバッチを用いたこと、およびバインダー樹脂(A)と顔料マスターバッチを、バインダー樹脂(A);100重量部およびC.I.Pigment Red184;4重量部となるように用いたこと以外、実施例1の製法と同様にしてマゼンタトナーを得た。なお、比較例8 10においては、処理温度をそれぞれ160℃、170℃および150℃とした。
【0098】
上記で得られたトナーの製造条件、形状および表面性状ならびにトナー組成物の粉砕性指数を以下の表に示す。
【表3】
Figure 0004092868
【0099】
各トナー100重量部に対して疎水性シリカ(TS-500;キャボジル社製)0.5重量部およびBET比表面積9m2/gのチタン酸ストロンチウム粒子1.2部を添加し、ヘンシェルミキサーで(周速40m/sec、60秒間)混合処理して得られたトナーを以下の評価に供した。
【0100】
(耐熱保管性)
トナー10gを50℃の高温下に24hr放置後、そのトナーを目視で確認することにより耐熱保管性を評価した。
○:凝集物は全く見られなかった;
△:凝集物が10個未満であった;
×:凝集物が10個以上であった。
【0101】
以下の評価ではプリンタ(Intercolor LP 3000C;セイコーエプソン社製)を用いた。最大付着量;10g/m2
(かぶり)
B/W6%の文字画像を5000枚印字し、初期と耐刷後において得られた画像を目視により評価した。
○:カブリが発生しなかった;
△:カブリが若干発生しているものの実用上問題なかった;
×:カブリが多く発生し、実用上問題あった。
【0102】
(ブレード固着)
ベタ画像を5000枚印字した後、プリンターの規制ブレードを観察し、下記ランク付けを行った。
○:ブレード固着がなかった;
△:若干ブレード固着があるが、画像不具合が発生しなかった;
×:ブレード固着があり、かつ画像不具合が発生した。
【0103】
(文字中抜け)
B/W6%の文字画像を5000枚印字し、初期と耐刷後において下記ランク付けを行った。
○:文字中抜けが発生しなかった;
△:文字中抜けが発生したが、実用上問題なかった;
×:文字中抜けが発生し、実用上問題があった。
【0104】
【表4】
Figure 0004092868
【0105】
・粉砕性指数の測定方法
試料(体積平均粒径を約2mmに調整されたバインダー樹脂、重合体(B)、またはトナー組成物(混練冷却後フェザーミル(目開き2mmメッシュ)で粗粉砕したもの))を機械式粉砕機(KTM-0型:川崎重工業社製)で処理量F(5kg/h)、KTM回転数12000(rpm)にて粉砕する際に、試料通過無し時の負荷動力値W0と試料を通過させた時の負荷動力値W1を記録する。その後、KTM粉砕で得られた粉砕物の体積平均粒径D(μm)をコールタマルチサイザーII(コールターベックマン社製)にて測定する。
本発明で用いた粉砕性指数は、下記式により算出される。
粉砕性指数=(D×(W1-W0))/F
【0106】
【発明の効果】
本発明のトナーは、長期にわたってかぶり、中抜けおよびブレード固着の発生を抑制でき、耐熱保管性および製造効率に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 瞬間的加熱処理を行うための装置の概略構成図を示す。
【図2】 図1の装置における試料噴射室の概略水平断面図を示す。

Claims (5)

  1. 少なくともバインダー樹脂(A)、重量平均分子量1000〜3000および重量平均分子量/数平均分子量2.0以下のポリスチレン又はポリ - α - メチルスチレン重合体(B)、離型剤および着色剤を含むトナー粒子を含んでなり、トナー粒子が平均円形度0.96以上および円形度標準偏差0.040以下を有し、かつ下記式(1);
    D/d50≧0.40、但しD=6/(ρ・S) (1)
    (式中、Dはトナーの形状を球と仮定したときの比表面積からの換算粒径(μm);d50は粒径別相対重量分布の50%相当粒径(μm);ρは密度(g/cm3);SはBET比表面積(m2/g)をそれぞれ表す)を満足することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
  2. トナー粒子が、少なくともバインダー樹脂(A)、重合体(B)、離型剤および着色剤を溶融、混練し、冷却した後、粉砕および瞬間的加熱処理して製造されたことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
  3. トナー粒子が離型剤を、バインダー樹脂(A)100重量部に対して2〜15重量部の割合で含む請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナー。
  4. 重合体(B)が重量平均分子量1000〜2000のポリスチレンである請求項1〜3いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
  5. 重合体(B)が重量平均分子量2000〜2800のポリ-α-メチルスチレンである請求項1〜3いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
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