JP4092517B2 - イミダゾリウム系溶融塩型電解質の調製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は室温で高いイオン伝導性を示し、且つ温度安定性と力学的特性が優れた、イミダゾリウム系室温溶融塩型電解質の調製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
イミダゾリウム化合物を用いて室温溶融塩を合成する方法としては、1,3−ジアルキルイミダゾリウムハライドに、酸アニオンを含む銀塩を反応させるアニオン交換法が知られている。
この方法によれば、副生成物であるハロゲン化銀が溶媒に難溶性であるため、精製し易いという利点があるが、使用しうる銀塩の種類に制約があって所期の室温溶融塩を調製し難いものであり、また出発物質である1,3−ジアルキルイミダゾリウムハライドを合成し、精製する過程が煩雑であるため、実用化されるに至っていない。
【0003】
特開昭60−133669号、同60−133670号及び同60−136180号公報には、1,3−ジアルキルイミダゾリウムハライド及び1,2,3−トリアルキルイミダゾリウムハライドとアルミニウムハロゲン化物を使用した電解質が開示されている。
しかしながら、これらの化合物を用いた電解質は、室温で高いイオン伝導性を示すものの、アルミニウムハロゲン化物が、僅かな水分の混入によって分解したり、また溶融塩の相状態が温度変化に対して不安定であるという難点があった。本発明者等は、これらを改善する手段として既に1−ビニル−3−アルキルイミダゾリウムハライド、1−ビニル−2,3−ジアルキルイミダゾリウムハライドなどのイミダゾール誘導体に、酸または酸モノマーを反応し、重合させた溶融塩ポリマーを有効成分と溶融塩型高分子電解質を提案している。(特開平10−83821号公報)
【0004】
近年、溶媒を含まないイオン性液体である室温溶融塩が、リチウム二次電池用の電解液として期待されている。イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩のようなオニウム塩のなかには、室温で溶融塩を形成するものがあり、特に有機酸アニオンを対イオンとするイミダゾリウム塩は、室温における粘度が低いため、その研究例が増えている。
しかしながら、これらのイミダゾリウム塩の合成はかなり煩雑であり、アニオン交換法を応用しうる有機塩に制限があるため、アニオン種の効果に関する検討は未だ充分に為されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
イミダゾリウム塩を有効成分として使用する電解質において、イミダゾリウム塩に種々のアニオンを導入した化合物を簡便に合成して、多様な物性を備えた室温で高いイオン伝導性を示し、且つ温度安定性に優れた電解質の調製方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
電解質として、1位または3位のいずれか一方だけにビニル基を有するN−ビニルイミダゾール化合物に酸を中和反応させて得られるN−アルキルイミダゾリウム塩、あるいは前記N−ビニルイミダゾール化合物に酸を反応し、その反応生成物を重合させて得られるN−ビニルイミダゾリウム塩を用いることによって、所期の目的を達成しうることを見い出し本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の電解質として使用されるイミダゾリウム系の室温溶融塩は、不純物の含有量が極めて少ないことを特徴とするものである。
すなわち、従来知られているイミダゾリウム系の室温溶融塩は、無機塩などの混入によって諸物性、特にイオン伝導性の低下を引き起こすため、煩雑な精製を余儀なくされていた。単純な塩を混合する場合は、精製する無機塩の分離精度があまり向上せず、また難溶性の銀塩を生成させることによって、その効率を高められるものの、銀塩の生成が限られているため所期の精製を為し得ないものであったが、本発明によれば、電解質として1位または3位のいずれか一方だけにビニル基を有するN−ビニルイミダゾール化合物に酸を中和反応させて得られるN−アルキルイミダゾリウム塩、あるいは前記N−ビニルイミダゾール化合物に酸を反応し、その反応生成物を重合させて得られるN−ビニルイミダゾリウム塩を用いることによって、これらの問題点を一挙に解決し、純度の高い室温溶融塩を容易に調製することを可能にし、且つ種々のアニオンを導入した多様な特性を備えた溶融塩を容易に得ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に係る溶融塩型電解質は、N−ビニルイミダゾール化合物と臭化水素酸、塩酸、硝酸、弗化ホウ素酸、亜硫酸水、硫酸、メタンスルホン酸などの無機酸あるいは酢酸などの有機酸を中和反応させて得られる化合物である。
N−ビニルイミダゾール化合物と酸を反応させるには、0〜20℃の水溶液中で両者を攪拌混合し、反応溶液から余分の水を溜去し、ジエチルエーテルなどの有機溶媒を用いて抽出すれば良い。なお、酸として酢酸などの有機酸を用いる場合は、精製の過程で溜去し減圧乾燥すべきである。
本発明に係る溶融塩型電解質は、前記N−ビニルイミダゾリウム塩にアゾビスイソブチロニトリル、などの重合開始剤を加えて重合させた、N−ビニルイミダゾリウム塩のポリマーとすることも可能である。
【0009】
【実施例】
以下、実施例によってこの発明を具体的に説明する。
なお、これらの試験におけるN−ビニルイミダゾール(VyImと記す)と酸の中和反応の進行は、H−NMR及びDSCの測定によって行い、反応前後におけるイミダゾール環の2位に存在するプロトンの化学シフトを比較して確認したものであり、イオン伝導度は2端子交流インピーダンス法によって測定し、30℃におけるlogσi(S/cm)値で示したものである。
【0010】
[実施例1]N−ビニルイミダゾール10gに47%臭化水素酸水溶液12mlを加え、これを温度0℃に維持しながら3時間攪拌したのち、減圧乾燥して余分な水を除去しジエチルエーテル中に滴下して、析出した結晶を回収し乾燥してN−ビニルイミダゾリウムブロミド(VyImBrと記す)18.4g(収率98%)を得た。
本品のH−NMR測定及びDSC測定を行った結果は表1に示したとおりであり、反応前後におけるイミダゾールの2位に存在するプロトンの化学シフトが、反応後低磁場にシフトしていることから反応の進行が確認された。本品は融点22℃であり、無機塩などの不純物は皆無であって、そのイオン伝導度は−4.66であった。
【0011】
[実施例2]N−ビニルイミダゾール10gに36%塩酸水溶液10mlを加え、これを温度0℃に維持しながら3時間攪拌したのち、減圧乾燥して余分な水を除去しジエチルエーテル中に滴下して、析出した結晶を回収し乾燥しN−ビニルイミダゾリウムクロライド(VyImClと記す)13.3g(収率96%)を得た。
本品のH−NMR測定及びDSC測定を行った結果は表1に示したとおりであり、前記実施例と同様に反応の進行が確認された。本品の融点−12℃を示し、無機塩などの不純物は皆無であって、そのイオン伝導度は−2.84であった。
【0012】
[実施例3]N−ビニルイミダゾール10gに61%硝酸水溶液8mlを加え、これを温度0℃に維持しながら3時間攪拌したのち、減圧乾燥して余分な水を除去し、ジエチルエーテル中に滴下して、析出した結晶を回収し乾燥しN−ビニルイミダゾリウム硝酸塩(VyImNO3と記す)15.7g(収率94%)を得た。
本品のH−NMR測定及びDSC測定を行った結果は、表1に示したとおりであり前記実施例と同様に反応の進行が確認され、無機塩などの不純物の含有量は皆無であり、その融点は42℃であり、また本品のイオン伝導度は−7.59であった。
【0013】
[実施例4]N−ビニルイミダゾール10gに42%弗化ホウ素酸水溶液18mlを加え、これを温度0℃に維持しながら3時間攪拌したのち、減圧乾燥して余分な水を除去し、ジエチルエーテル中に滴下して、析出した結晶を回収し乾燥しN−ビニルイミダゾリウム弗化ホウ素酸塩(VyImBF4と記す)18.6g(収率96%)を得た。
本品のH−NMR測定及びDSC測定を行った結果は、表1に示したとおりであり前記実施例と同様に反応の進行が確認され、無機塩などの不純物の含有量は皆無であり、その融点は20℃、またイオン伝導度は−4.66であった。
【0014】
[実施例5]N−ビニルイミダゾール10gにメタンスルホン酸7mlを加え、これを温度0℃に維持しながら3時間攪拌したのち、ジエチルエーテル中に滴下し、析出した結晶を回収し乾燥して、N−ビニルイミダゾリウムメタンスルホン酸塩(VyImCH3SO3と記す)19.2g(収率95%)を得た。
本品のH−NMR測定及びDSC測定を行った結果は、表1に示したとおりであり前記実施例と同様に反応の進行が確認され、無機塩などの不純物の含有量は皆無であり、その融点は5℃、また本品のイオン伝導度は−3.02であった。
【0015】
[実施例6]N−ビニルイミダゾール10gに5%亜硫酸水172mlを加え、これを温度0℃に維持しながら3時間攪拌したのちジエチルエーテル中に滴下し、ジエチルエーテル中に滴下し、析出した結晶を回収し乾燥して、N−ビニルイミダゾリウム亜硫酸塩(VyImHSO3と記す)17.9g(収率96%)を得た。
本品のH−NMR測定及びDSC測定を行った結果は表1に示したとおりであり、前記実施例と同様に反応の進行が確認され、無機塩などの不純物の含有量は皆無であり、その融点は32℃また本品のイオン伝導度は−3.41であった。
【0016】
【表1】
【0017】
[実施例7〜12]前記実施例1〜6において合成された、N−ビニルイミダゾリウムブロミド(VyImBr)、N−ビニルイミダゾリウムクロライド(VyImCl)、N−ビニルイミダゾリウム硝酸塩(VyImNO3)、N−ビニルイミダゾリウム弗化ホウ素酸塩(VyImBF4)、N−ビニルイミダゾリウムメタンスルホン酸塩(VyImCH3SO3)及びN−ビニルイミダゾリウム亜硫酸塩(VyImHSO3)の各々1.0gをそれぞれメタノール10ml中に溶解し、これらに重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを、ビニル基に対して1%の割合で加え、65℃の温度で3時間ラジカル重合させて、N−ビニルイミダゾリウム溶融塩ポリマーを得た。
【0018】
これらの溶融塩ポリマーは、いずれも白色のガラス状固体であり、その物性は表2に示したとおりであった。
【0019】
【表2】
【0020】
【発明の効果】
この発明によれば、不純物を含まないイミダゾール系室温溶融塩を提供しうるものであり、またイミダゾリウム塩の合成と同時に種々の対アニオンを導入しうるので、量産に適しており且つ多岐に亘る物性を備えたイミダゾリウム塩を得ることができる。
本発明に係る溶融塩は室温で高いイオン伝導性を示し、且つ温度安定性並びに力学的特性が優れているので、固体電解質材料として有用なものである。
Claims (2)
- 1位または3位のいずれか一方だけにビニル基を有するN−ビニルイミダゾール化合物と酸を中和反応させることを特徴とするN−アルキルイミダゾリウム塩を有効成分とするイミダゾリウム系溶融塩型電解質の調製方法。
- 1位または3位のいずれか一方だけにビニル基を有するN−ビニルイミダゾール化合物と酸を中和反応させ、その反応生成物を重合させることを特徴とするN−ビニルイミダゾリウム塩を有効成分とするイミダゾリウム系溶融塩型電解質の調製方法。
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