JP4091707B2 - タイヤ補強用スチ−ルコ−ド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用タイヤの補強材として使用されるスチ−ルコ−ドに関し、特に4本または5本の素線を撚り合わせ、そのコ−ドの横断面が略楕円形状のスチ−ルコ−ドに関するものである。
【0002】
一般にこの種のスチ−ルコ−ドは、多本数が平行に引揃えられた状態でゴム材に被覆されて、自動車用タイヤの補強材として使用されている。そして、スチ−ルコ−ドに要求される条件としては、機械的強度が優れていることは勿論のこと、ゴム材との化学的、物理的な接着が良好であること、およびスチ−ルコ−ド内部へのゴム浸入性が良好であること等があげられる。すなわち、スチ−ルコ−ドがタイヤ補強材としての役割を充分に果たすためには、機械的強度に優れゴム材との完全な複合体となることが必要である。
【0003】
【従来の技術】
従来、この種のスチ−ルコ−ドでは、ゴムとの化学的接着を良好にするため表面に真鍮メッキを施した素線を用いた例えば1×4、1×5オ−プン構造(図6、図5)のほか、1×4、1×5扁平オ−プン構造(図7)のものが用いられている。また更に最近は、3本〜4本の素線を撚らずに引き揃えてなるパラレル構造(図8)が提案されている。
【0004】
1×4、1×5オ−プン構造のスチ−ルコ−ドは、素線同士が連続して接しているようなことはほとんどないので、スチ−ルコ−ド内へのゴム浸入はよく、錆の発生は、それ以前のクロ−ズ構造のスチ−ルコ−ドに比較して非常に改善されている。しかし、その構造上このスチ−ルコ−ドはコ−ド径が大きくなり、低荷重でコ−ドが伸びやすく、コ−ドのゴム引き圧延加工時にコ−ドにかかる張力を低くして素線間の隙間を維持しながらゴム引きすることが必要となり、コ−ド張力管理が非常に難しく製造上も問題が多い。また、素線径に比べて、コ−ド径が非常に大きくなるためゴムシ−トの厚みも厚くなり、タイヤの重量が増加し、このタイヤを自動車に用いた場合乗り心地が悪く、また燃費も悪くなる。
【0005】
これに対して、1×4、1×5扁平オ−プン構造のスチ−ルコ−ドは、スチ−ルコ−ド内へのゴム浸入は良く、短径側をゴムシ−トの厚み方向にしてゴムに埋設すると、ゴムシ−トの厚みも薄くなり、タイヤの重量も減少し、このタイヤを自動車に用いた場合乗り心地が良く、また燃費も良くなる。さらに、スチ−ルコ−ドを扁平にすることにより、新たに次のことが確認された。このスチ−ルコ−ドをタイヤのベルト層において、短径側をゴムシ−トの厚み方向にしてゴムに埋設することにより、ベルト層の縦方向の曲げ剛性は小さくなり、乗り心地がソフトになる。また、長径側が全てベルト層の幅方向に配置されるので、ベルト層の横方向の曲げ剛性は大きくなり、コ−ナリング性能を高めることが出来る。
そして、さらに扁平な(扁平率の小さい)スチ−ルコ−ドが要求されるようになってきた。しかしながら、このような従来の扁平オ−プン構造のスチ−ルコ−ドの製造方法は、図5、図6に示す真円のオ−プン構造のスチ−ルコ−ドを上下方向から単に圧力を加えて扁平加工するだけの方法であり、扁平度合いにも限度があり、極端な扁平構造のスチ−ルコ−ドの製造は無理である。
【0006】
そこで、最近提案されているのが、3本〜4本の素線を撚らずに一列に引き揃えてなるパラレル構造のスチ−ルコ−ドである。このスチ−ルコ−ドはベルト層においてそれらの素線がベルト層の幅方向に並ぶように配置されると、ベルト層の縦方向の曲げ剛性は極端に小さくなり、横方向の曲げ剛性は極端に大きくなると考えられるからである。しかしながら、このスチ−ルコ−ドは素線が撚られていないためその強度に比して柔軟性が悪く、横方向の曲げ剛性はあまり極端に大きくなりすぎ、曲げに対して捻れや挫屈が発生しやすくなる。しかもこのスチ−ールコ−ドは、3本の素線が撚り合わされていないため、ラッピング線でばらけいように固定する必要があり構造的にも不安定である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前記のような従来のスチ−ルコ−ドの様々な欠点を無くし、コ−ド内へのゴムの浸入を確保し、かつ極端な扁平構造である撚り線のスチ−ルコ−ドを提供しようとするものであり、そのスチ−ルコ−ドをタイヤに用いることにより、自動車の安全性、操縦安定性、乗り心地性、コ−ナ−リング性、燃費性能などの向上を図ろうとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のタイヤ補強用スチ−ルコ−ドは、0.15mm〜0.40mmの線径を有する4本または5本の素線を、1本をコア素線、残りの素線を側素線とし、同一方向に撚りピッチPで一度に撚り合わせたスチ−ルコ−ドであって、その横断面が長手方向に略同一向きで略楕円形状(長径W、短径T)であるタイヤ補強用スチ−ルコ−ドにおいて、コア素線が下記式(1)(2)を満足するくせピッチP1 とコ−ド短径方向のくせ外径d1 の略スパイラル状のくせを有し、また前記コア素線が前記略楕円の長径軸を挟む両側に位置する側素線の間に略ピッチP1 間隔で出現し、しかも前記略楕円形状の扁平率(T/Wの百分比)が38%〜60%であることを特徴とする。
P1 =0.1P〜0.5P ・・・(1)
T−d1 =0.05〜0.15 ・・・(2)
式中、P1 :くせピッチ(mm)
T :コ−ド短径(mm)
d1 :コ−ド短径方向のコア素線のくせ外径(mm)
なお、スチ−ルコ−ドの撚りピッチは後記する理由により5〜20mm程度が好ましい。また、コア素線と側素線の線径はすべて同じであってもよいが、コア素線の線径を少し大きくしてもよい。このとき線径dは側素線の線径を用いるものとする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は一実施の形態を示すスチ−ルコ−ドの概略横断面図で、このスチ−ルコ−ドは、略スパイラル状の小さなくせを有する1本のコア素線1と、同じ線径の3本の側素線2とから構成されている。
図2は他の実施の形態を示すスチ−ルコ−ドの概略横断面図で、このスチールコードは、略スパイラル状の小さなくせを有する1本のコア素線1と、同じ線径の4本の側素線2とから構成されている。る。
そしてこれらスチ−ルコ−ドは、その構成上ゴムの浸入性が良いのはもちろんであるが、以下の特別な効果がある。
本発明のスチ−ルコ−ドは、横断面が長手方向に略同一向きで扁平率の極端に小さい略楕円形状であるため、スチ−ルコ−ドの短径方向と長径方向で大きく剛性が異なる。また、カレンダ−後のスチ−ルコ−ドは、ゴムシ−トの中において長径部を左右にして長手方向に略平行に並ぶため、曲げ剛性が上下方向に低く左右方向に高い。従って、このゴムシ−トを用いてタイヤとなしたとき、タイヤの回転方向の剛性は低いので乗り心地がよく、タイヤ回転方向と直交する方向の剛性は高いのでコ−ナ−リング性能を高めることが出来る。
【0010】
また、本発明のスチ−ルコ−ドは横断面が長手方向に連続した略楕円形状をしているので、カレンダ−時は全てのスチ−ルコ−ドが長径部を左右にして長手方向に略一列に並び、ゴムシ−ト厚はスチ−ルコ−ド短径部分に対応する厚みとなり、シ−トを薄くできる。そして、スチ−ルコ−ドの挿入本数を少なくできる。その結果タイヤの軽量化が可能となり、タイヤのコストダウン、自動車の燃費の改善が可能となった。さらに撚りの安定性の点においても、図8に示すようなスチ−ルコ−ドと比較して、撚りが安定しておりゴムシ−トに埋設した後でもほとんど同じ形状であり、製造上、取り扱い作業上も優れている。
【0011】
さらに、本発明のスチ−ルコ−ドは、図8に示すパラレル構造のスチ−ルコ−ドと異なり、撚り線であるため素線径に比しても柔軟性に優れ、いかなる方向に対しても、捻れや挫屈の発生は問題とならない。また、撚り線であるためラッピング線で固定する必要もない。
【0012】
スチ−ルコ−ドの撚りピッチは5mm〜20mmが好ましい。というのは、5mm未満とすると、極度に曲げ加工量が多くなるため断線が発生しやすくなり、またスチ−ルコ−ドの長さ当たりの撚り回数が多くなり、生産性が落ちるからである。さらに、本発明においては、コア素線のくせピッチが撚りピッチよりさらに小さいため、撚りピッチ5mm未満は適当ではない。一方、スチ−ルコ−ドの撚りピッチが20mmを越えると、スチ−ルコ−ドの柔軟性が失われるので疲労値が低くなり、また撚りが不安定となり、コ−ド切断箇所で素線がばらけるフレア−も発生しやすくなり、実用的でない。
【0013】
素線の線径を0.15mm〜0.40mmとしたのは、あまり細いと充分な強力が得られないからであり、逆にあまり太いとスチ−ルコ−ド径が大きくなってしまう。また、素線を太くするとスチ−ルコ−ドの柔軟性が失われ、疲労値が低くなる。この傾向は小さいくせを有する素線の存在する本発明においては、一層顕著に現れ、素線径が0.4mmを越えると実用上の障害になる。
【0014】
このスチ−ルコ−ドの撚りピッチをPとしたとき、くせを有するコア素線のくせピッチP1 を0.1P〜0.5Pとしたのは、P1 が0.1P未満であると、素線が極度の塑性変形を受け、断線が多発するとともに生産性が悪くなり、一方0.5Pを越えると、コア素線としての効果が果たせず、ゴムシ−ト成形時のゴムのフロ−による引張力、あるいはコ−ドに負荷されるしごき力によって素線間の隙間が減少し、ゴム浸入のための充分な隙間が素線間に生じなくなるからである。また、0.5Pを越えるとスチ−ルコ−ドの圧延が充分に出来ず、スチ−ルコ−ド横断面の短径(T)が大きくなり、ゴムシ−ト厚が小さく出来ない。
【0015】
横断面の略楕円形の短径をT(mm)としたとき、コ−ド短径方向のコア素線のくせ外径d1 (mm)を、T−d1 =0.05〜0.15の式を満足する範囲としたのは、この式においてT−d1 が0.05より小さい加工は実際上困難であり、また素線間に充分ゴム浸入を行うためにも0.05以上の方がよい。逆に0.15を越えると扁平の効果が少なくなり、ゴムシ−ト厚を小さくすることが出来ない。製造上、作用効果上この範囲が最も適している。
【0016】
スチ−ルコ−ドの横断面における略楕円形状の扁平率(短径Tと長径Wとの比、T/Wの百分比)を38%〜60%としたのは、38%未満とすると、撚りが不安定となると同時に各素線は長径端部での曲げ加工がきつくなり、取り扱いの作業性が悪く耐疲労性に劣る。60%を越える形状となっても撚りは不安定となり、また従来の扁平オ−プンコ−ドに近づくので本発明のスチ−ルコ−ドの効果は期待できなくなる。
【0017】
本発明においては、くせを有するコア素線を前記略楕円形状の両端には出現させずに、かつまたコア素線を側素線の内側に完全に配置するという構造をとらず、長径軸を挟む両側では、コア素線を側素線の間に略ピッチP1 間隔で出現させ配置するようにし、結果的には一見してほぼ単層撚りのような構造にまで、スチ−ルコ−ドを超扁平加工することにより本発明のスチ−ルコ−ドを完成することが出来た。そのため従来よりも撚りが安定し、かつ素線間に適当なる隙間を保ち、極端に大きな超扁平のスチ−ルコ−ドが得られた。
【0018】
本発明の図1、図2に示すスチ−ルコ−ドは、一本の素線1にあらかじめ設定された小さなくせを付けてコア素線とし、その周囲に側素線2を撚り合わせ図9、図10のような構造にした後、表面がフラットなロ−ラ−間を通過させ、かなり強い圧縮加工を上下より施すことにより製造可能である。従来はこのような方法では、スチ−ルコ−ドの撚りがつぶれてしまって、コ−ドとして欠陥品ではないかと思われていたが、本発明のように素線1本を小さなくせを有するコア素線とし、残りの3〜4本の素線を側素線とし、それぞれの素線に適宜張力をかけて同一方向に撚り合わせ、その後上下方向から強い圧縮加工を施せば簡単に製造が可能であることも解った。
【0019】
本発明のスチ−ルコ−ドはチュ−ブラタイプの撚り線機でも製造できるが、バンチャ−タイプの撚線機で製造する方が、効率が良く実用的である。
バンチャ−タイプの撚線機を用いた場合、素線に捻りが入るためあらかじめ付けたくせとスチ−ルコ−ドでのくせとが異なるのでその点を考慮しておく必要がある。
【0020】
上記構成のタイヤ用スチ−ルコ−ドを用いて、2枚のゴムシ−ト間に挟んで加圧加硫すると、各素線間にゴムが容易に浸入し、ゴム厚も薄くできる上、曲げ剛性も上下方向より左右方向が極端に高くなる。このときのスチ−ルコ−ド埋設方向は、シ−ト水平面に対してスチ−ルコ−ド長径部を左右方向とし、各スチ−ルコ−ドは長手方向に略一列に並んでいる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の実施例を、従来例と比較し具体的に説明する。
【0022】
本発明のスチ−ルコ−ドの特性を評価するために、以下表1に示すとおり素線本数N、撚りピッチP、コア素線のくせのピッチP1 、くせ外径d1 、スチ−ルコ−ド横断面の楕円形状の短径T、長径Wを本発明の範囲内でそれぞれ変化させた超扁平オ−プン構造の実施例1〜3、図6に示すような横断面形状を有するオ−プン構造の従来例1、図7に示すような横断面形状を有する扁平オ−プン構造の従来例2、図8に示すような横断面形状を有するパラレル構造の従来例3をそれぞれ製造した。そして、これら各スチ−ルコ−ドについて、ゴム浸入率、耐疲労性、捻れ挫屈本数、剛性比、乗り心地性および取扱作業性について評価したところ、以下の表2に示すような結果を得た。表2に示す各項目のテスト条件、評価方法は次の通りである。
【0023】
ゴム浸入率:各スチ−ルコ−ドに4kgの引張加重をかけた状態でゴム中に埋め込み、加硫した後、スチ−ルコ−ドをゴム中から取り出し、そのスチ−ルコ−ドを分解して素線の一定長さを観察し、観察した長さに対してゴムと接触した形跡のある長さの比を%表示した。表中その値の大きい方がゴム浸入率が良いことを示している。
【0024】
耐疲労性:複数本のスチ−ルコ−ドをゴムシ−トに埋め込んだ複合体シ−トを用いて3点プ−リ−曲げ疲労試験機により試験し、埋設したスチ−ルコ−ドがフレッティング磨耗、座屈等を経て破断するに至るまでの繰り返し回数を求め、従来例2の撚り構造のスチ−ルコ−ドの値を100として指数表示した。表中その値が大きい方が耐疲労性に優れている。
【0025】
捻れ・挫屈本数:一定時間繰り返し曲げ疲労性テストを行った後のスチ−ルコ−ド100本中において破断するに至ったスチ−ルコ−ドを調べ、その原因が素線の捻れや挫屈に起因している素線の本数を表示した。
【0026】
剛性比:図3(a)に示すように、「5本のスチ−ルコ−ドを、100%モジュラスが35kg/cm2 であるゴムシ−ト11に対して、スチ−ルコ−ド断面の長径が横になるように一列に埋め込んだ」テストピ−ス12と、図3(b)に示すように、「5本のスチ−ルコ−ドを、同ゴムシ−ト11に対して、スチ−ルコ−ドの断面の長径が縦になるように並列して埋め込んだ」テストピ−ス13を製作し、図4に示すように、テストピ−ス12または13を、スパンSp=20mmとした3点曲げ試験機に上架して、「テストピ−ス12を5mm押さえ込んだときの加重G」/「テストピ−ス13を5mm押さえ込んだときの加重G」の百分比を剛性比とした。
【0027】
すなわち、「スチ−ルコ−ドの短径軸方向の曲げ剛性」/スチ−ルコ−ドの長径軸方向の曲げ剛性」を剛性比とした。表中その値の小さい方が曲げ剛性に差があることを示している。なお、従来例1、2のスチ−ルコ−ドにおいては、長径、短径がないので剛性比は100とした。また、テストピ−ス12または13の厚みは4mm、幅は15mm、長さは100mmである。
【0028】
乗り心地性評価:これらのスチ−ルコ−ドを埋め込んだタイヤを試作し、10名のパネラ−によるアスファルト舗装路面での感応評価を10点満点法で行い、その平均をとった。
【0029】
取扱作業性:スチ−ルコ−ド製造およびタイヤ製造において、作業性良好なものを〇、作業性不良のものを×、その中間程度のものを△とした。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
表1、表2より以下の点が明らかである。
従来例1は、4本の素線をオ−プンに撚り合わせた図6に示すオ−プン構造のスチ−ルコ−ドで、ゴム浸入性は優れているが、取り扱い作業性では劣り、捻れ・挫屈本数も多い。また、コ−ド径が太いのでゴムシ−トも厚くなる等の問題が生じた。
【0033】
従来例2は、5本の素線をオ−プンに撚り合わせ、扁平加工した図7に示す扁平オ−プン構造のスチ−ルコ−ドで、ゴム浸入性は優れ、その他の品質においては従来例1撚りも優れているが、まだ充分ではない。
【0034】
従来例3は、3本の素線をパラレルに配置し、その周りに1本のラッピング線を巻き付けた図8に示すパラレル構造のスチ−ルコ−ドで、剛性比は大きくて優れているが、作業性、耐疲労性に劣り、その他の品質も充分ではない。
【0035】
実施例1〜3のスチ−ルコ−ドは、上記のような欠点がなく、剛性比も小さくなっており、タイヤに用いた場合、路面からの力に対応して変形し乗り心地がよく、しかもコ−ナリング時には変形しにくくなる。
【0036】
【発明の効果】
本発明のタイヤ補強用スチ−ルコ−ドは、上記のとおり構成されているので、つぎの効果を奏する。
▲1▼スチ−ルコ−ド長手方向のほぼ全域にわたってコ−ド内部に密閉された空洞部を有しなく、かつ横断面形状の短径が極めて小さいため(いわゆる薄いため)スチ−ルコ−ド内部へのゴム浸入がよい。
▲2▼ゴムに埋め込んでシ−トにした際のゴムシ−ト厚を極端に薄くできるので、タイヤ重量を小さく抑えることができ、タイヤのコストダウン、自動車の燃費向上が可能となる。
▲3▼タイヤ回転方向の剛性を低くできるので、乗り心地を向上でき、一方、タイヤの回転方向と直交する方向の剛性を高くできるので、コ−ナ−リング性能を高めることができる。
▲4▼小さいくせを有するコア素線が、横断面の略楕円形状の長径両端部に出現せず、ほぼ中央部近辺に位置し、かつ長径軸を挟む両側に位置する側素線の間に略ピッチP1 間隔で出現しているので、極端な扁平構造であるにもかかわらず、スチ−ルコ−ドとしての形状が非常に安定しており、かつ内部へのゴム浸入が非常によくなる。その結果、捻れ・挫屈にたいしても優れている。
▲5▼芯素線というような状態での素線が存在せず、全ての素線で単層撚りのような構造でしかも超扁平となるため、耐疲労性が良くなる。
▲6▼従来のチュ−ブラ−型、バンチャ−型のいずれの撚線機でも製造でき、撚り不良等のトラブルもないため、取扱作業性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタイヤ補強用スチ−ルコ−ドの一実施の形態を示す、1+3超扁平オ−プン構造の概略横断面図である。
【図2】本発明のタイヤ補強用スチ−ルコ−ドの他の実施の形態を示し、1+4超扁平オ−プン構造の概略横断面図である。
【図3】3点曲げ試験に用いたテストピ−スを示す図で、図3(a)は短径方向の曲げ剛性測定用のテストピ−スの概略図、図3(b)は長径方向の曲げ剛性測定用のテストピ−スの概略図である。
【図4】3点曲げ試験方法を示す説明図である。
【図5】従来の1×5オ−プン撚り構造のスチ−ルコ−ドの横断面図である。
【図6】従来の1×4オ−プン撚り構造のスチ−ルコ−ドの横断面図である。
【図7】従来の1×5扁平オ−プン構造のスチ−ルコ−ドの横断面図である。
【図8】従来の3+1パラレル構造のスチ−ルコ−ドの外観概略図である。
【図9】本発明1+3超扁平オ−プン構造のスチ−ルコ−ド製造工程における圧縮加工を施す前のスチ−ルコ−ドの横断面図である。
【図10】本発明1+4超扁平オ−プン構造のスチ−ルコ−ド製造工程における圧縮加工を施す前のスチ−ルコ−ドの横断面図である。
【符号の説明】
1・・・コア素線
2・・・側素線
3・・・スチ−ルコ−ド
11・・・ゴムシ−ト
12、13・・・テストピ−ス
d・・・素線径(mm)
d1 ・・・コ−ド短径方向のコア素線のくせ外径(mm)
W・・・スチ−ルコ−ド横断面の長径(mm)
T・・・スチ−ルコ−ド横断面の短径(mm)
Claims (1)
- 0.15mm〜0.40mmの線径を有する4本または5本の素線を、1本をコア素線、残りの素線を側素線とし、同一方向に撚りピッチPで一度に撚り合わせたスチ−ルコ−ドであって、その横断面が長手方向に略同一向きで略楕円形状(長径W、短径T)であるタイヤ補強用スチ−ルコ−ドにおいて、コア素線が下記式(1)(2)を満足するくせピッチP1 とコ−ド短径方向のくせ外径d1 の略スパイラル状のくせを有し、また前記コア素線が前記略楕円の長径軸を挟む両側に位置する側素線の間に略ピッチP1 間隔で出現し、しかも前記略楕円形状の扁平率(T/Wの百分比)が38%〜60%であることを特徴とするタイヤ補強用スチ−ルコ−ド
P1 =0.1P〜0.5P ・・・(1)
T−d1 =0.05〜0.15 ・・・(2)
式中、P1 :くせピッチ(mm)
T :コ−ド短径(mm)
d1 :コ−ド短径方向のコア素線のくせ外径(mm)
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