JP4045025B2 - タイヤ補強用スチ−ルコ−ド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用タイヤの補強材として使用されるスチ−ルコ−ドに関し、特に6本〜13本の素線を撚り合わせ、そのコ−ドの横断面が略楕円形状のスチ−ルコ−ドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にこの種のスチ−ルコ−ドは、多本数が平行に引揃えられた状態でゴム材に被覆されて、自動車用タイヤの補強材として使用されている。そして、スチ−ルコ−ドに要求される条件としては、機械的強度が優れていることは勿論のこと、ゴム材との化学的、物理的な接着が良好であること、およびスチ−ルコ−ド内部へのゴム浸入性が良好であること等があげられる。すなわち、スチ−ルコ−ドがタイヤ補強材としての役割を充分に果たすためにゴム材との完全な複合体となることが必要である。
【0003】
とりわけ、トラック、バスなどの高重量の車両に用いられるタイヤにおいては、高強度でかつ柔軟性をもつスチ−ルコ−ドが求められており、その一つとして従来より1+n構成のスチ−ルコ−ドが使用されてきた。
【0004】
しかし、従来の1+n構成のスチ−ルコ−ドの横断面構造は図6に示すようにクロ−ズ撚り構造で、かつ各素線7が相互に完全に密着して隙間がないため、空洞部Sがコ−ド内部に散在している。従って、このスチ−ルコ−ドを2枚のゴムシ−トに挟んで複合体シ−トを形成した場合、ゴム材が上記空洞部Sまで浸入せず、ゴム材との完全な複合体を形成できない。
【0005】
それゆえ、このゴムシ−トをタイヤに用いた場合、釘などの異物によりゴム被覆が一部分でも破れると、外部より浸入してきた水分が上記空洞部S内に伝播し、スチ−ルコ−ドが全面にわたり酸化を起こす。こうなると、ゴムとスチ−ルコ−ドの接着力が弱くなり、両者が剥離してしまい、スチ−ルコ−ドの補強材としての効果が非常に弱くなってしまう。
【0006】
この問題を解決するため、図7に示すように芯素線8の径を太くしたものや、図8に示すように芯素線9に型付けを行ったスチ−ルコ−ドが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
図7に示すスチ−ルコ−ドは、側素線と芯素線の間に空洞部がないので、水分がスチ−ルコ−ド内部に伝播するようなことはないが、芯素線径を太くするためコ−ド径が太くなり、ゴムシ−トの厚みが大きくなってしまう。そのため、タイヤ重量が増加し、これを自動車に用いた場合に燃費が悪くなるので好ましくない。また、芯素線8と側素線8aが常に接しているため、フレッティング磨耗による疲労値が悪い。さらには芯素線径が太いため、スチ−ルコ−ドの剛性が高くなり、タイヤに用いた場合に乗り心地が悪くなる等の問題がある。
【0008】
また、図8のように芯素線9にスパイラル状のくせ付けを行った、1+n構成のスチ−ルコ−ドは、芯素線9と側素線9aが常に接しているようなことはないので疲労性は改善されるが、断面形状が略真円の形状をしているため、スチ−ルコ−ドの剛性がどの方向に対しても同じである。従って、タイヤのコ−ナ−リング性能を上げるために剛性を高くすると、乗り心地まで悪くなるという問題がある。さらに、図8のスチ−ルコ−ドは、図6のようなクロ−ズ撚りのコ−ドに比べてコ−ド径が太くなり、カレンダ−(ゴム被覆工程)後のゴムシ−トが厚くなってしまい、加えてコ−ド径が太いためにゴムシ−トに所定本数のスチ−ルコ−ドを埋め込むことができず、シ−トの強力が弱くなる。従って、このゴムシ−トをタイヤに用いる場合、シ−トの重ね枚数を増やす必要が生じ、結果としてタイヤの重量が増加するという問題がある。さらにスチ−ルコ−ドの製造上の点からも図8のようにきれいに素線を空間に配置するようなスチ−ルコ−ドは無理で撚りが非常に不安定となる。
【0009】
本願発明は、前記種々の従来のスチ−ルコ−ドの様々な問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、補強材としてタイヤに用いた場合に、スチ−ルコ−ド内部へのゴム浸入性がよく、タイヤ回転方向の剛性を低くしながらタイヤ回転方向と直交する方向の剛性を高めることができ、圧縮および曲げに対する疲労性が良好で、しかも製造及び取扱作業性の優れたスチ−ルコ−ドを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のタイヤ補強用スチ−ルコ−ドは、0.15mm〜0.40mmの線径を有する6本〜13本の素線を、1本をコア素線、残りの素線を側素線とし、同一方向に撚りピッチPで一度に撚り合わせたスチ−ルコ−ドであって、その横断面が長手方向に略同一向きで略楕円形状(長径W、短径T)であるタイヤ補強用スチ−ルコ−ドにおいて、コア素線が下記式(1)(2)を満足するくせピッチP1 とコ−ド短径方向のくせ外径D1 の略スパイラル状のくせを有し、また前記コア素線が前記略楕円の長径軸を挟む両側に位置する側素線の間に略ピッチP1 間隔で出現し、しかも前記略楕円形状の偏平率(T/Wの百分比)が38%〜60%であることを特徴とする。
P1 =0.1P〜0.5P ・・(1)
(T−D1 )/2d=0.05〜0.70 ・・(2)
d :素線径(mm)(コア素線径と側素線径が異なる場合は側素線の線径)
P1 :くせピッチ(mm)
T :コ−ド短径(mm)
D1 :コ−ド短径方向のコア素線のくせ外径(mm)
なお、スチ−ルコ−ドの撚りピッチは後記する理由により6〜28mm程度が好ましい。また、コア素線と側素線の線径はすべて同じであってもよいが、コア素線の線径を少し大きくしてもよい。このとき線径dは側素線の線径を用いるものとする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のスチ−ルコ−ドは、横断面が長手方向に略同一向きで偏平率の大きい略楕円形状であるため、スチ−ルコ−ドの短径方向と長径方向で大きく剛性が異なる。また、カレンダ−後のスチ−ルコ−ドは、ゴムシ−トの中において長径部を左右にして長手方向に略平行に並ぶため、曲げ剛性が上下方向に低く左右方向に高い。従って、このゴムシ−トを用いてタイヤとなしたとき、タイヤの回転方向の剛性は低いので乗り心地がよく、タイヤ回転方向と直交する方向の剛性は高いのでコ−ナ−リング性能を高めることが出来る。
【0012】
また、本発明のスチ−ルコ−ドは横断面が略楕円形状をしているので、カレンダ−時はほとんど全てのスチ−ルコ−ドが長径部を左右にして長手方向に略平行に並ぶため、ゴムシ−ト厚はスチ−ルコ−ド短径部分に対応する厚みとなり、シ−トを薄くできる。そして、スチ−ルコ−ドの挿入本数を少なくできる。その結果タイヤの軽量化が進み、タイヤのコストダウン、自動車の燃費の改善が可能となった。さらに撚りの安定性の点においても、図8に示すようなスチ−ルコ−ドと比較して、撚りが安定しておりゴムシ−トに埋設した後でもほとんど同じ形状であり、製造上、取り扱い作業上も優れている。
【0013】
スチ−ルコ−ドの撚りピッチは6mm〜28mmが好ましい。というのは、6mm未満とすると、極度に曲げ加工量が多くなるため断線が発生しやすくなり、またスチ−ルコ−ドの長さ当たりの撚り回数が多くなり、生産性が落ちるからである。さらに、本発明においては、コア素線のくせピッチが撚りピッチよりさらに小さいため、撚りピッチ6mm未満は適当ではない。一方、スチ−ルコ−ドの撚りピッチが28mmを越えると、スチ−ルコ−ドの柔軟性が失われるので疲労値が低くなり、また撚りが不安定となりフレア−も発生しやすくなり、実用的でない。
【0014】
素線の線径を0.15mm〜0.40mmとしたのは、あまり細いと充分な強力が得られないからであり、逆にあまり太いとスチ−ルコ−ド径が大きくなってしまう。また、素線を太くするとスチ−ルコ−ドの柔軟性が失われ、疲労値が低くなる。この傾向は小さいくせを有する素線の存在する本発明においては、一層顕著に現れ、素線径が0.4mmを越えると実用上の障害になる。
【0015】
このスチ−ルコ−ドの撚りピッチをPとしたとき、くせを有するコア素線のくせピッチP1 を0.1P〜0.5Pとしたのは、P1 が0.1P未満であると、素線が極度の塑性変形を受け、断線が多発するとともに生産性が悪くなり、一方、0.5Pを越えると、コア素線としての効果が果たせず、ゴムシ−ト成形時のゴムのフロ−による引張力、あるいはコ−ドに負荷されるしごき力によって素線間の隙間が減少し、ゴム浸入のための充分な隙間が素線間に生じなくなるからである。また、0.5Pを越えるとスチ−ルコ−ドの圧延が充分に出来ず、スチ−ルコ−ド横断面の短径Tが大きくなり、ゴムシ−ト厚が小さく出来ない。
【0016】
スチ−ルコ−ドの素線径をd、横断面の略楕円形の短径をTとしたとき、くせを有するコア素線の前記短径方向のくせ外径D1 を、(T−D1 )/2d=0.05〜0.70の式を満足する範囲としたのは、この式において(T−D1 )/2dが0.05より小さい加工は実際上困難であり、また素線間に充分ゴム浸入を行うためにも0.05以上の方がよい。0.70を越えると偏平の効果が少なくなり、ゴムシ−ト厚を小さくすることが出来ない。製造上、作用効果上この範囲が最も適している。
【0017】
スチ−ルコ−ドの横断面における略楕円形状の偏平率(短径Tと長径Wとの比、T/Wの百分比)を38%〜60%としたのは、38%未満とすると、撚りが不安定となると同時に各素線は長径端部での曲げ加工がきつくなり、取り扱いの作業性が悪く耐疲労性に劣る。60%を越える形状となっても撚りは不安定となり、また真円に近づくので本発明のスチ−ルコ−ドの効果は期待できなくなる。
【0018】
本発明においては、くせを有するコア素線を前記略楕円形状の両端には出現させずに、かつまたコア素線を側素線の内側に完全に配置するという構造をとらず、長径軸を挟む両側では、コア素線を側素線の間に略ピッチP1 間隔で出現させ配置するようにし、結果的には一見してほぼ単層撚りのような構造にまで、スチ−ルコ−ドを偏平加工することにより本発明のスチ−ルコ−ドを完成することが出来た。そのため従来よりも撚りが安定し、かつ素線間に適当なる隙間を保ち、大きな偏平率のスチ−ルコ−ドが得られた。
【0019】
本発明のスチ−ルコ−ドは、一本の素線にあらかじめ設定のくせを付けてコア素線とし、その周囲に側素線を撚り合わせた後、表面がフラットなロ−ラ−間を通過させ、かなり強い圧縮加工を施すことにより製造可能である。従来はこのような方法では、スチ−ルコ−ドの撚りがつぶれてしまって、コ−ドとして欠陥品ではないかと思われていたが、スチ−ルコ−ドを構成する素線それぞれに適当な張力をかけて、強い圧縮加工を施せば簡単に製造が可能であることも解った。
【0020】
本発明のスチ−ルコ−ドはチュ−ブラタイプの撚線機でも製造できるが、バンチャ−タイプの撚線機で製造する方が、効率が良く実用的である。バンチャ−タイプの撚線機を用いた場合、素線に捻りが入るためあらかじめ付けたくせとスチ−ルコ−ドでのくせとが異なるのでその点を考慮しておく必要がある。
【0021】
上記構成のタイヤ用スチ−ルコ−ドを用いて、2枚のゴムシ−ト間に挟んで加圧加硫すると、各素線間にゴムが容易に浸入し、ゴム厚も薄くできる上、曲げ剛性も上下方向より左右方向が極端に高くなる。このときのスチ−ルコ−ド埋設方向は、シ−ト水平面に対してスチ−ルコ−ド長径部を左右方向とし、各スチ−ルコ−ドは長手方向に略平行に並んでいる。
【0022】
以下、本発明の実施を説明する。図1は、本発明のスチールコードの横断面図を示す概略図である。このスチールコードは、略スパイラル状のくせを有する1本のコア素線1と、このコア素線1の外側に、緩く撚り合わされコア素線1と同じ線径の9本の側素線2とで、いわゆる1+9構造に構成されている。そして、このスチールコードは、図1に示すように、側素線2は緩く撚り合わされているから、側素線2の間には隙間が生じる構造となる。したがって、コア素線1の周囲に9本の側素線2を撚り合わせる工程が終了した時点では、この隙間(側素線2間に形成された隙間)には、側素線2の内部に配置されているコア素線1が露出している構造、換言すると、この隙間を通じて、側素線2の内部に配置されているコア素線1を側素線2の外側から視検することができる構造となっている。
このスチールコードは、上述の通り、上記の撚り合わせ工程の後、表面がフラットなローラ間を通過させ、かなり強い圧縮加工を施すことにより製造されるのであるから、この「かなり強い圧縮加工を施す加工時」に、コア素線1がかなり強い圧縮力により側素線2の間に生じている隙間に押し込まれる、換言すればコア素線1がかなり強い圧縮力により側素線2の間に生じている隙間に強制的に割り込められて、図1に示すように、コア素線1が側素線2の間の隙間にコア素線1のくせピッチP1間隔で内側からスチールコードの外側にあらわれ出る状態となる。つまり、「コア素線が内側から割り込むように出現する」状態となる。
【0023】
図2は、同じくコア素線1本と側素線8本とから構成された本発明のスチ−ルコ−ドの概略図である。
【0024】
図3は、同じくコア素線1本と側素線12本とから構成された本発明のスチ−ルコ−ドの概略図である。
【0025】
本発明のスチ−ルコ−ドの特性を評価するために、素線本数N、撚りピッチP、コア素線のくせのピッチP1 、外径D1 、スチ−ルコ−ド横断面の楕円形状の短径T、長径Wを本発明の範囲内でそれぞれ変化させたスチ−ルコ−ドを実施例1〜4とし、それらのうちのいずれかの構成要素の数値が本発明の範囲を外れるスチ−ルコ−ドを比較例1〜3とし、図7に示すような横断面形状を有するスチ−ルコ−ドを従来例1とし、図8に示すような横断面形状を有するスチ−ルコ−ドを従来例2とし、各スチ−ルコ−ドについて、ゴム浸入率、耐疲労性、剛性比および取扱作業性について評価したところ、以下の表1に示すような結果を得た。表1に示す各項目のテスト条件、評価方法は次の通りである。
【0026】
ゴム浸入率:各スチ−ルコ−ドに5kgの引張加重をかけた状態でゴム中に埋め込み、加硫した後、スチ−ルコ−ドをゴム中から取り出し、そのスチ−ルコ−ドを分解して素線の一定長さを観察し、観察した長さに対してゴムと接触した形跡のある長さの比を%表示した。表中その値の大きい方がゴム浸入率が良いことを示している。
【0027】
耐疲労性:複数本のスチ−ルコ−ドをゴムシ−トに埋め込んだ複合体シ−トを用いて3点プ−リ−曲げ疲労試験機により試験し、埋設したスチ−ルコ−ドがフレッティング磨耗、座屈等を経て破断するに至るまでの繰り返し回数を求め、従来例2の撚り構造のスチ−ルコ−ドの値を100として指数表示した。表中その値が大きい方が耐疲労性に優れている。
【0028】
剛性比:図4(a)に示すように、「5本のスチ−ルコ−ド3を、100%モジュラスが35kg/cm2であるゴムシ−ト4に対して、スチ−ルコ−ドの横断面長径方向が横になるように一列に埋め込んだ」テストピ−ス5と、図4(b)に示すように、「5本のスチ−ルコ−ド3を、同ゴムシ−ト4に対して、スチ−ルコ−ドの横断面長径方向が縦になるように並列して埋め込んだ」テストピ−ス6を製作し、図5に示すように、テストピ−ス5または6を、スパンSp=20mmとした3点曲げ試験機に上架して、「テストピ−ス5を5mm押さえ込んだときの加重G」/「テストピ−ス6を5mm押さえ込んだときの加重G」を剛性比とした。
【0029】
すなわち、「スチ−ルコ−ドの短径軸方向の曲げ剛性」/スチ−ルコ−ドの長径軸方向の曲げ剛性」を剛性比とした。表中その値の小さい方が曲げ剛性に差があることを示している。なお、テストピ−ス5または6の厚みは4mm、幅は15mm、長さは100mmである。
【0030】
取扱作業性:作業性良好なものを〇、作業性不良のものを×、その中間程度のものを△とした。
【0031】
【表1】
【0032】
表1より以下の点が明らかである。
比較例1は、コア素線のP1 が本発明の上限より大きく、(T−D1 )/2dが本発明の上限より大きく、コ−ド横断面の略楕円形状の偏平率が本発明の上限より大きい場合である。すなわち、コア素線のくせピッチが大きく、偏平率は本発明の上限より大きいスチ−ルコ−ドである。このスチ−ルコ−ドは、素線間の隙間が小さく、ゴム浸入に劣り、剛性比が少し劣る。
【0033】
比較例2は、コア素線のP1は本発明の範囲に入っているが、(T−D1 )/2dの値は比較例1よりもさらに大きく本発明の上限を外れており、偏平率も上限よりさらに大きい場合である。このスチ−ルコ−ドは、比較例1よりさらにゴム浸入に劣り、耐疲労性、剛性比、取扱作業性全て良くない。
【0034】
比較例3は、コア素線のP1 、D1 ともに本発明の範囲を大きく外れており、偏平率も比較例2と同程度である。このスチ−ルコ−ドは、比較例2よりさらに良くない結果であった。
【0035】
従来例1のスチ−ルコ−ドは、ゴム浸入率が充分でなく、芯素線が太いので柔軟性に欠け、耐疲労性も劣り、コ−ド径が太いのでゴムシ−トも厚くなる等の問題が生じた。
【0036】
従来例2のスチ−ルコ−ドは、横断面が楕円形状ではなくほぼ真円形状である。このためゴムシ−トでスチ−ルコ−ドを挟んだときゴムシ−トの厚みを薄くすることが出来ない。また実施例1〜4のスチ−ルコ−ドに比べて、ゴム浸入、耐疲労性、剛性比、取扱作業性において劣っている。
【0037】
実施例1〜4のスチ−ルコ−ドは、上記のような欠点がなく、剛性比も小さくなっており、タイヤに用いた場合、路面からの力に対応して変形し乗り心地がよく、しかもコ−ナリング時には変形しにくくなる。
【0038】
【発明の効果】
本発明のタイヤ補強用スチ−ルコ−ドは、上記のとおり構成されているので、次の効果を奏する。
▲1▼ スチ−ルコ−ド長手方向のほぼ全域にわたってコ−ド内部に密閉された空洞部を有しなく、かつ横断面形状の短径が極めて小さいため(いわゆる薄いため)スチ−ルコ−ド内部へのゴム浸入がよい。
▲2▼ ゴムに埋め込んでシ−トにした際のゴムシ−ト厚を極端に薄くできるので、タイヤ重量を小さく抑えることができ、タイヤのコストダウン、自動車の燃費向上が可能となる。
▲3▼ タイヤ回転方向の剛性を低くできるので、乗り心地を向上でき、一方、タイヤの回転方向と直交する方向の剛性を高くできるので、コ−ナ−リング性能を高めることができる。
▲4▼ 小さいくせを有するコア素線が、横断面の略楕円形状の長径両端部に出現せず、ほぼ中央部に位置し、かつ長径軸を挟む両側に位置する側素線の間に略ピッチP1 間隔で出現しているので、スチ−ルコ−ドとしての形状が非常に安定しており、かつ内部へのゴム浸入が非常によくなる。
▲5▼ 芯素線というような状態での素線が存在せず、全ての素線で単層撚りのような構造となるため、耐疲労性が良くなる。
▲6▼ 従来のチュ−ブラ−型、バンチャ−型のいずれの撚線機でも製造でき、撚り不良等のトラブルもないため、取扱作業性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタイヤ補強用スチ−ルコ−ドの一実施例を示す。1+9構造の横断面を示す概略図である。
【図2】本発明のタイヤ補強用スチ−ルコ−ドの一実施例を示す。1+8構造の横断面を示す概略図である。
【図3】本発明のタイヤ補強用スチ−ルコ−ドの一実施例を示す。1+12構造の横断面を示す概略図である。
【図4】3点曲げ試験に用いたテストピ−スを示す図で、図2(a)は短径方向の曲げ剛性測定用のテストピ−スの概略図、図2(b)は長径方向の曲げ剛性測定用のテストピ−スの概略図である。
【図5】3点曲げ試験方法を示す説明図である。
【図6】従来のクロ−ズ撚りの1+6構造のスチ−ルコ−ドの断面図である。
【図7】芯素線径を太くした従来のクロ−ズ撚りの1+6構造のスチ−ルコ−ドの断面図である。
【図8】芯(コア)素線に略スパイラル状の小さいくせを付けた従来の1+6構造のスチ−ルコ−ドの断面図である。
【符号の説明】
1…コア素線
2…側素線
3…スチ−ルコ−ド
4…ゴムシ−ト
5、6…テストピ−ス
d…素線径
D1 …コア素線のくせ外径
W…スチ−ルコ−ド横断面の長径
T…スチ−ルコ−ド横断面の短径
S…空洞部
Claims (1)
- 0.15mm〜0.40mmの線径を有する6本〜13本の素線を、1本をコア素線、残りの素線を側素線とし、同一方向に撚りピッチPで一度に撚り合わせたスチ−ルコ−ドであって、その横断面が長手方向に略同一向きで略楕円形状(長径W、短径T)であるタイヤ補強用スチ−ルコ−ドにおいて、コア素線が下記式(1)(2)を満足するくせピッチP1 とコ−ド短径方向のくせ外径D1 の略スパイラル状のくせを有し、また前記コア素線が前記略楕円の長径軸を挟む両側に位置する側素線の間に略ピッチP1 間隔で出現し、しかも前記略楕円形状の偏平率(T/Wの百分比)が38%〜60%であることを特徴とするタイヤ補強用スチ−ルコ−ド
P1 =0.1P〜0.5P ・・(1)
(T−D1 )/2d=0.05〜0.70 ・・(2)
d :素線径(mm)(コア素線径と側素線径が異なる場合は側素線の線径)
P1 :くせピッチ(mm)
T :コ−ド短径(mm)
D1 :コ−ド短径方向のコア素線のくせ外径(mm)
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