JP4091275B2 - 金属セラミックス積層構造部材およびその製造方法 - Google Patents

金属セラミックス積層構造部材およびその製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、室温および高温における靭性・強度、熱衝撃における強度・耐久性、および断熱性に優れた金属セラミックス積層構造部材に関し、従来の酸化物系セラミックスの適用分野である断熱材、熱処理炉の治工具部品、耐食性部品、遮熱コーティングなどの各種産業分野で広範囲に適用できる金属セラミックス積層構造部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
強度および靭性に優れるジルコニア質焼結体としては、酸化アルミニウムとジルコニアとを混合してHIP焼結してなる酸化アルミニウム添加ジルコニア質焼結体(K.Tsukuma, Am.Ceram.Soc.Bull.,64[2],310-313(1985))や、SiCウィスカーとジルコニアとを混合して加圧・成形・焼結してなるSiCウィスカー/ジルコニア質焼結体(N.Claussen, J.Am.Ceram.Soc.,69[4],(1986))などが報告されている。
【0003】
また、特開平1−188467号公報には単結晶のβ−SiC粒子を複合化したジルコニア質焼結体が、特開昭63−129066号公報には酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムおよび酸化チタン等からなる高硬度高強度セラミックスが開示されている。
【0004】
一方、ジルコニアセラミックスの持つ低い熱伝導性を生かし、断熱材や遮熱コーティング材料としての適用も従来から多く行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前出の2件の論文および特開平1−188467号公報に示されたジルコニア質焼結体は、いずれもベースのジルコニアに添加されている安定化剤はイットリアに代表される希土類元素酸化物で、微粒子の易焼結性原料粉末を用いて比較的低温で焼結したもので、ジルコニア相中にしめる正方晶の割合が約90vol%以上と高く、また焼結体粒径を微細に保ちつつ高密度とすることで、高強度・高靭性とした材料であり、800℃〜焼結温度近傍におけるような高温での使用可能性については言及していない。
【0006】
特開昭63−129066号公報には、MgOで安定化したジルコニアをベースとし、アルミナ等の第2成分と組み合わせて酸化チタン等の第3成分を存在させた材料が開示されているが、同様に高温での使用可能性については明らかにされていない。
【0007】
一方、断熱材や遮熱コーティング材料に適用されるジルコニアセラミックスについては、高温での使用可能性について、安定化剤の種類が及ぼす影響についての若干の報告があるものの、第2粒子、および/あるいは微量添加物による効果については未だ明らかになっていない。
【0008】
本発明は、Y、MgOあるいはCeOを安定化剤としたジルコニアをベースとした材料を対象として、第2粒子の分散により高温使用時の焼結・粒成長を抑制させ、さらに積層平行方向には結合力を増すことで剥離破壊を抑制し、組織変化を低減することで高温安定化を図ることを主目的としたもので、従来のジルコニアをベースとした断熱材・遮熱コーティング材料で問題であった比較的高温で使用した際の焼結・粒成長による剥離破壊の進行、熱伝導率等の特性変化等の解決を図るものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の金属セラミックス積層構造部材は、金属層およびこれに溶射により積層されたセラミックス層からなる積層構造部材であって、前記セラミックス層が、酸化イットリウム、酸化セリウムおよび酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも一種の安定化剤を含む酸化ジルコニウムを主相とし、酸化マグネシウム−アルミニウムスピネル、酸化亜鉛、酸化コバルト、ケイ酸ジルコニウム、およびこれらの複合酸化物の中から選ばれる一種以上の第2相酸化物が分散され、微細クラックまたは気孔を有するものであり、前記酸化ジルコニウムが扁平塊状であり、前記第2相酸化物が主相塊中、主相塊の表面上、前記微細クラックおよび前記気孔の中から選ばれる少なくとも1箇所以上の部位に他の部位より多く存在することを特徴とする。
【0010】
本発明の金属セラミックス積層構造部材は、酸化イットリウム、酸化セリウムおよび酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも一種の安定化剤を含む酸化ジルコニウムを主相とするセラミックス層を具備し、さらにこのセラミックス層に少なくとも微細クラックまたは気孔を具備させることで、室温のみならず、800℃〜焼結温度近傍における強度・靭性についても改善されたものである。
【0011】
2相酸化物は焼結、粒成長を抑制する効果を有するものである。本発明では、このような第2相酸化物を含有させることで、高温での使用時における焼結、粒成長を抑制し、熱伝導率等の特性変化を抑制することができる。
【0012】
2相酸化物の分布は前記セラミックス層が露出する表面側より、この表面の反対側である前記金属層側が低くなっていることが好ましい。
【0013】
また、前記セラミックス層の密度は前記セラミックス層が露出する表面側より、この表面の反対側である前記金属層側が低くなっていることが好ましい。
【0014】
前記第2相酸化物は、前記セラミックス層に0.2〜20wt%含有されていることが好ましい。
【0015】
また、前記金属層と前記セラミックス層との間には、これらの層の熱膨張係数の違いによる応力を緩和するため、または前記セラミックス層を酸化から有効に保護するための中間層が形成されていることが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1に本発明の金属セラミックス積層構造部材の断面図を示す。
本発明の金属セラミックス積層構造部材1は、金属層2とこれに積層されたセラミックス層3とからなる積層構造部材である。セラミックス層3は酸化ジルコニウムを主相とし、酸化イットリウム、酸化セリウムおよび酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも一種の安定化剤を含むものである。
【0019】
このセラミックス層3は例えば扁平状の主相塊4からなり、少なくとも主相塊4どうしの間に気孔5が存在するか、あるいは主相塊4に微細クラック6が存在する構造となっている。
【0020】
少なくともセラミックス層3に気孔5または微細クラック6を有することで、例えば断熱材として用いた場合に、これらの気孔5または微細クラック6により熱を遮断し、熱により金属層2が損傷することを防ぐことができる。
【0021】
これらの気孔5や微細クラック6によるセラミックス層3における気孔率は、好ましくは5〜25vol%の範囲内とすることが好ましい。気孔率が5vol%未満の場合は、熱を遮断する効果が低く、金属層2が損傷する可能性がある。また、気孔率が25vol%を超える場合は、強度等が低下する可能性がある。
【0022】
このようなセラミックス層3には、上記した酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム以外に、これらと異なる第2相酸化物を含有させる。第2相酸化物としては、酸化マグネシウム−アルミニウムスピネル、酸化亜鉛、酸化コバルト、ケイ酸ジルコニウムから選ばれる少なくとも一種からなるもの、あるいはこれらを複合させたものが挙げられる。
【0023】
これらの第2相酸化物は高温での焼結や粒成長の進行を抑制することができ、セラミックス層3に存在する気孔5や微細クラック6が焼結や粒成長により減少したり消滅したりするのを抑制することができる。従って、高温での使用においても、断熱性等の特性が低下することを抑制することができる。
【0024】
この第2相酸化物7は例えば図2に示されるように主相塊4中の微細クラック6に存在してもよいし、図3に示されるように主相塊4の表面上に存在してもよいし、あるいは図4に示されるように主相塊4どうしの間に形成された気孔5に存在してもよい。
【0025】
図2に示されるように主相塊4中の微細クラック6に第2相酸化物7が存在する場合は、この部分の焼結等を抑制し微細クラック6が消滅することを防ぐことができる。また、図3に示されるように主相塊4の表面上に存在する場合や図4に示されるように主相塊4どうしの間に形成された気孔5に存在する場合は、主相塊4が焼結、粒成長することを抑制することで気孔5が消滅することを防ぐことができる。気孔5や微細クラック6が減少したり消滅したりすることを抑制することで、高温での使用においても、断熱性等の特性が低下することを抑制することができる。
【0026】
酸化ジルコニウムの構成結晶層の主相は正方晶または立方晶とすることが好ましい。これらは、金属セラミックス積層構造部材の使用条件に応じて適宜選択して用いることが好ましく、例えば使用温度が1300℃未満の場合には強度に優れる正方晶を主相とし、使用温度が1300℃を超える場合には、この温度でも安定に存在できる立方晶を主相とすることが好ましい。
【0027】
また、本発明の金属セラミックス積層構造部材1におけるセラミックス層3は、かさ密度が5.05〜5.70g/cm、ヤング率が20〜80GPa、3点曲げ強度が30〜220MPaであることが好ましい。
【0028】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図5は金属層2とセラミックス層3との間に、中間層8を設けたものである。金属層2の熱膨張とセラミックス層3の熱膨張とは異なるため、これらを単に積層した場合には剥離等が発生する可能性がある。このため、金属層2とセラミックス層3との間に、金属層2の熱膨張係数とセラミックス層3の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する中間層8を形成することで、剥離等が発生を抑制することができる。また、好ましくは中間層8を耐酸化性のものとすることで、金属層2が高温により酸化されることを抑制することができる。
【0029】
セラミックス層3は、金属層2側の密度より、これと反対側(表面側)の密度を大きくすることが好ましい。セラミックス層3の密度を変化させる方法としては、例えば図6に示すように、セラミックス層3のうち金属層2に近い部分である金属層近傍部9の主相塊4を大きくして、気孔5が大きくなるような構造とし、金属層2と接する面と反対側の面、すなわちセラミックス層3が露出する方の面の近傍部である表面近傍部10の主相塊4を小さくして気孔5を小さくする方法が挙げられる。
【0030】
このように表面側の密度を高めることで、使用時に気体中にある微小粒子等がセラミックス層3に衝突し、このセラミックス層3を磨耗、損傷させることを抑制することができるようになる。
【0031】
また、主相塊4における微細クラック6は金属層2の面に対して垂直方向に形成されていることが好ましい。図7は微細クラック6が金属層2の面に対して垂直方向に形成された場合の構造変化について示した図である。熱が加えられる前の主相塊4の状態は同図左側に示すように微細クラック6の間隔が狭くなっている。これに熱が加えられた場合、同図右側に示すように金属層2が熱膨張することにより、主相塊4に形成された微細クラック6の間隔が広くなる。このように、微細クラック6が金属層2の面に対して垂直方向に形成された場合、主相塊4に形成された微細クラック6により金属層2の熱膨張を緩和することができる。また、微細クラック6が金属層2の面に対して垂直方向に形成されている場合、分離した各主相塊4a、4b、4cはそれぞれ金属層2との接触を維持することが可能であり、セラミックス層3から剥離することを抑制することができる。
【0032】
これに対して図8に示すように微細クラック6を金属層2の面に対して水平方向に形成した場合は、負荷がない状態では同図左側に示すように主相塊4d、4eは分離せずに存在しているが、何らかの負荷がかかってこれらが分離した場合、同図右側に示すように金属層2と接触している主相塊4dは剥離せずに残るものの、主相塊4eは剥離してセラミックス層3から剥離してしまう。仮に、主相塊4eに複数の主相塊4が積層されているされている場合には、それらも全てセラミックス層3から剥離してしまうため、セラミックス層3において比較的大規模な損傷が発生する。
【0033】
従って、主相塊4における微細クラック6を金属層2の面に対して垂直方向に形成することで、セラミックス層と金属層との熱膨張係数の差を緩和するとともに、セラミックス層3の部分的な剥離を防止し、断熱性等の特性が低下することを抑制することができる。
【0034】
次に、本発明の金属セラミックス積層構造部材の製造方法について説明する。図9は本発明の金属セラミックス積層構造部材の製造方法を示したものである。セラミックス積層構造部材におけるセラミックス層の作製に用いられるものは、主相となるジルコニア粉末と、これに添加される安定化剤とに、第2相酸化物添加されたものである。
【0035】
安定化剤としては、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化マグネシウムが挙げられ、ジルコニア粉末に1〜15wt%程度添加することが好ましい。
【0036】
また、第2相酸化物としては、酸化マグネシウム−アルミニウムスピネル、酸化亜鉛、酸化コバルト、ケイ酸ジルコニウム、およびこれらの複合酸化物から選ばれる少なくとも一種を用いる。これらは、0.2〜20wt%添加することが好ましい。
【0037】
これらの粉末は湿式または乾式混合により混合し、溶射法を用いて金属基材上に積層する。また、これらの方法に加えて、ゾル、前駆体溶液、粉末スラリーの含浸・焼成工程を加えてもよい。必要に応じて無加圧あるいは所定方向に加圧しながら熱処理等を行ってもよい。
【0038】
セラミックス層における気孔や微細クラックの形成は、溶射条件、熱処理条件等を適宜選択することにより行うことができる。微細クラックを金属面に対して垂直な方向に形成するためには、例えば熱処理後の冷却条件等を調整することにより行うことができる。また、図6に示されるようにセラミックス層3の密度を部分的に変える場合には、例えば溶射によるセラミックス層の形成の途中で溶射条件を変更する等の方法を採ることにより行うことができる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の実施の形態について実施例を参照して説明する。
【0040】
(実施例・参考例;1〜18
参考例1、2
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物として平均粒径1.0μmのAl粒子を5または10wt%添加した原料粉末を用い、大気圧プラズマ法で金属基材上に溶射皮膜を作製した。
【0041】
実施例3、4、参考例5、実施例
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物として平均粒径1.0μmのMgAl、ZnO、NiOまたはCoO粒子を5または10wt%添加した原料粉末を用い、大気圧プラズマ法で金属基材上に溶射皮膜を作製した。
【0042】
参考例7、8
安定化剤として18wt%CeOまたは10wt%MgOを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物として平均粒径1.0μmのAl粒子を10wt%添加した原料粉末を用い、大気圧プラズマ法で金属基材上に溶射皮膜を作製した。
【0043】
参考例9
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物として平均粒径1.0μmのAl粒子を10wt%添加した原料粉末を用い、CVD法で金属基材上に皮膜を作製した。
【0044】
参考例10
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物として平均粒径1.0μmのAl粒子を10wt%添加した原料粉末を用い、大気圧プラズマ法で金属基材上に溶射皮膜を作製し、その後アルミナゾルの含浸・焼成を行うことにより金属基材上に皮膜を作製した。
【0045】
参考例11
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物として平均粒径1.0μmのAl粒子を10wt%添加した原料粉末を用い、大気圧プラズマ法で金属基材上に溶射皮膜を作製し、その後40kg/cmの加圧力を付与しながら、1200℃×5時間の熱処理を行うことにより金属基材上に皮膜を作製した。
【0046】
参考例12
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物として平均粒径1.0μmのAl粒子を10wt%添加した原料粉末を用い、大気圧プラズマ法で金属基材上に溶射皮膜を作製した。なお、その溶射工程において、皮膜を150μmの厚さで形成した毎に、約1〜2μmの厚さになるようにGd粒子を溶射し多層状に積層した。
【0047】
参考例13
8Yの安定化剤を含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物を添加しない原料粉末を用いた他は、参考例1と同一の条件で作製した。
【0048】
参考例14
8Yの安定化剤を含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物としてAlを20wt%添加した原料粉末を用いた他は、参考例1と同一の条件で作製した。
【0049】
実施例15
8Yの安定化剤を含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物としてMgAlを20wt%添加した原料粉末を用いた他は、参考例11と同一の条件で作製した。
【0050】
実施例16
8Yの安定化剤を含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物としてZnOを20wt%添加した原料粉末を用いた他は、参考例11と同一の条件で作製した。
【0051】
参考例17
8Yの安定化剤を含有するZrO2粉末に対し、第2相酸化物としてNiOを20wt%添加した原料粉末を用いた他は、参考例11と同一の条件で作製した。
【0052】
実施例18
8Yの安定化剤を含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物としてCoOを20wt%添加した原料粉末を用いた他は、参考例11と同一の条件で作製した。
【0053】
なお、実施例および参考例の金属セラミックス積層構造部材は、そのセラミックス層に微細クラックおよび気孔の少なくとも一方を含むものとする。
【0054】
次に、これら実施例および参考例の金属セラミックス積層構造部材について、強度、弾性率、寸法変化および剥離寿命を測定した。なお、強度および弾性率は、セラミックス層から3×4×40mmの試験片を切り出し加工して、室温での3点曲げ試験から評価した。寸法変化は、大気中、1300℃、100時間の条件で熱処理した後の体積収縮量の結果である。また、剥離寿命はバーナー加熱試験機において、室温←→1200℃の熱サイクルを与え、10回毎に皮膜の剥離状態を調べた結果である。結果を表1および表2に、各実施例の安定化剤の種類および量、第2相酸化物の種類および量、プロセス条件等とともに示す。
【表1】
Figure 0004091275
【表2】
Figure 0004091275
【0055】
(実施例・参考例;19〜36)
参考例19
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末について2種類の溶射原料粉末を使用し、大気圧プラズマ法で金属基材上に溶射皮膜(セラミックス溶射層)を作製した。溶射皮膜は、金属基材側に造粒粉タイプの原料粉末を用いた気孔率約20vol%、厚さ250μmのポーラス層と、表面層側に粉砕粉タイプの原料粉末を用いた気孔率約10vol%、厚さ50μmの緻密層からなる2層構造のものとした。
【0056】
参考例20
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物として平均粒径1.0μmのAl粒子を1および5wt%添加した造粒粉タイプの原料粉末を用い、大気圧プラズマ法で金属基材上に溶射皮膜を作製した。溶射皮膜は、気孔率が約17vol%で、金属基材側にAl粒子を1wt%添加した層を250μm、表面層側にAl粒子を5wt%添加した層を形成した。
【0057】
参考例21
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物として平均粒径1.0μmのAl粒子を1および5wt%添加した造粒粉タイプおよび粉砕粉タイプの原料粉末を用い、大気圧プラズマ法で金属基材上に溶射皮膜を作製した。溶射皮膜は、金属基材側にAl粒子を1wt%添加した気孔率約17vol%のポーラス層を250μm、表面層側にAl粒子を5wt%添加した気孔率10vol%の緻密層を形成した。
【0058】
実施例22、23、参考例24、実施例26
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物として平均粒径1.0μmのMgAl、ZnO、NiO、CoOまたはZrSiO粒子を1および5wt%添加した造粒粉タイプおよび粉砕粉タイプの原料粉末を用い、大気圧プラズマ法で金属基材上に溶射皮膜を作製した。溶射皮膜は、金属基材側に第2相酸化物を1wt%添加した気孔率15から21vol%のポーラス層を250μm、表面層側に第2相酸化物を5wt%添加した気孔率10から12vol%の緻密層を形成した。
【0059】
参考例27、28
安定化剤として18wt%CeOまたは10wt%MgOを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物として平均粒径1.0μmのAl粒子を1および5wt%添加した造粒粉タイプおよび粉砕粉タイプの原料粉末を用い、大気圧プラズマ法で金属基材上に溶射皮膜を作製した。溶射皮膜は、金属基材側にAl粒子を1wt%添加した気孔率約19vol%のポーラス層を250μm、表面層側にAl粒子を5wt%添加した気孔率11vol%の緻密層を形成した。
【0060】
参考例29
安定化剤として8wt%Yを含有するZrOインゴット、およびAlインゴットを用い、PVD法で金属基材上に皮膜を作製した。皮膜は、金属基材側にAl分散相を1wt%添加した気孔率約18vol%のポーラス層を250μm、表面層側にAl分散相を5wt%添加した気孔率9vol%の緻密層を形成した。
【0061】
参考例30
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物として平均粒径1.0μmのAl粒子を1および5wt%添加した造粒粉タイプの原料粉末を用い、大気圧プラズマ法で金属基材上に溶射皮膜を作製した。溶射皮膜は、気孔率が約17vol%で、金属基材側にAl粒子を1wt%添加した層を250μm、表面層側にAl粒子を5wt%添加した層形成し、その後アルミナゾルの含浸・焼成を行ったものである。
【0062】
参考例31
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物として平均粒径1.0μmのAl粒子を1および5wt%添加した造粒粉タイプの原料粉末を用い、大気圧プラズマ法で金属基材上に溶射皮膜を作製した。溶射皮膜は、気孔率が約17vol%で、金属基材側にAl粒子を1wt%添加した層を250μm、表面層側にAl粒子を5wt%添加した層を形成し、その後板状βアルミナスラリーの含浸を積層方向に垂直方向に高磁場下で行い、乾燥・焼成を行ったものである。
【0063】
参考例32
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物として平均粒径4μmのAl粉末を用いた他は、参考例21と同一の条件で作製したものである。
【0064】
実施例33
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物としてMgAlを10および20wt%添加した原料粉末を用いた他は、参考例21と同一の条件で作製したものである。
【0065】
実施例34
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物としてZnOを10および20wt%添加した原料粉末を用いた他は、参考例21と同一の条件で作製したものである。
【0066】
参考例35
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物としてNiOを10および20wt%添加した原料粉末を用いた他は、参考例21と同一の条件で作製したものである。
【0067】
実施例36
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物としてCoOを10および20wt%添加した原料粉末を用いた他は、参考例21と同一の条件で作製したものである。
【0068】
実施例37
安定化剤として8wt%Yを含有するZrO粉末に対し、第2相酸化物としてZrSiOを10および20wt%添加した原料粉末を用いた他は、参考例21と同一の条件で作製したものである。
【0069】
次に、これら実施例、参考例の金属セラミックス積層構造部材について、ブラスト損耗量、寸法変化および剥離寿命を測定した。
【0070】
なお、ブラスト損耗量はアルミナ粒子による一定条件のブラスト加工における減肉量(深さ)を実施例19を基準として相対値で表した。寸法変化は、大気中、1300℃、100時間の条件で熱処理した後の体積収縮量の結果である。
【0071】
また、剥離寿命はバーナー加熱試験機において、室温←→1200℃の熱サイクルを与え、10回毎に皮膜の剥離状態を調べた結果である。結果を表3および表4に、各実施例安定化剤の種類および量、第2相酸化物の種類および量、プロセス条件等とともに示す。
【表3】
Figure 0004091275
【表4】
Figure 0004091275
【0072】
【発明の効果】
本発明は、Y、MgOあるいはCeOを安定化剤としたジルコニアをベースとしたセラミックス層において気孔または微細クラックを形成することで、断熱性等を向上させるとともに、熱膨張等による剥離を防止することができる。
また、セラミックス層に第2粒子を分散させることにより、高温使用時の焼結・粒成長を抑制させることにより組織変化を低減し、高温での安定化を図ることができる。
【0073】
本発明では以上のような構成により、従来のジルコニアをベースとした断熱材・遮熱コーティング材料で問題であった、比較的高温で使用した際の、焼結・粒成長による、剥離破壊の進行、熱伝導率等の特性変化等の解決を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属セラミックス積層構造部材の一例を示した断面図。
【図2】第2相酸化物が主相塊の微細クラック周辺に存在する場合を示した断面図。
【図3】第2相酸化物が主相塊の周辺部分に存在する場合を示した断面図。
【図4】第2相酸化物が主相塊により形成された気孔部周辺に存在する場合を示した断面図。
【図5】本発明の金属セラミックス積層構造部材において、金属層とセラミックス層との間に中間層を形成した場合の一例を示した断面図。
【図6】セラミックス層の密度を表面近傍部で高くし、金属層近傍部で低くした場合を示した断面図。
【図7】主相塊に金属層に対して垂直な微細クラックを形成した場合の効果を示した断面図。
【図8】主相塊に金属層と平行な微細クラックを形成した場合の影響を示した断面図。
【図9】本発明の金属セラミックス積層構造部材の作製工程を示した図。
【符号の説明】
1……金属セラミックス積層構造部材
2……金属層
3……セラミックス層
4……主相塊
5……気孔部
6……微細クラック
7……第2相酸化物
8……中間層
9……金属層近傍部
10……表面近傍部

Claims (5)

  1. 金属層およびこれに溶射により積層されたセラミックス層からなる積層構造部材であって、
    前記セラミックス層が、酸化イットリウム、酸化セリウムおよび酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも一種の安定化剤を含む酸化ジルコニウムを主相とし、酸化マグネシウム−アルミニウムスピネル、酸化亜鉛、酸化コバルト、ケイ酸ジルコニウム、およびこれらの複合酸化物の中から選ばれる一種以上の第2相酸化物が分散され、微細クラックまたは気孔を有するものであり、前記酸化ジルコニウムが扁平塊状であり、前記第2相酸化物が主相塊中、主相塊の表面上、前記微細クラックおよび前記気孔の中から選ばれる少なくとも1箇所以上の部位に他の部位より多く存在することを特徴とする金属セラミックス積層構造部材。
  2. 前記セラミックス層の密度は、前記セラミックス層が露出する表面側より、この表面の反対側である前記金属層側が低くなっていることを特徴とする請求項記載の金属セラミックス積層構造部材。
  3. 前記第2相酸化物の分布は、前記セラミックス層が露出する表面側より、この表面の反対側である前記金属層側が低くなっていることを特徴とする請求項1または2記載の金属セラミックス積層構造部材。
  4. 前記第2相酸化物は、前記セラミックス層における含有量が0.2〜20wt%であることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項記載の金属セラミックス積層構造部材。
  5. 前記金属層と前記セラミックス層との間に中間層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の金属セラミックス積層構造部材。
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