JP2014156651A - 溶射皮膜と皮膜付金属部材 - Google Patents

溶射皮膜と皮膜付金属部材 Download PDF

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Abstract

【課題】 白磁に見られる優れた質感および色調を有し、しかも基材に対する密着性や硬度等の機械的特性をも同時に実現し得る溶射皮膜を提供すること。
【解決手段】
金属酸化物を主成分とする溶射粒子が金属基材上に堆積されてなる溶射皮膜であって、該溶射皮膜は、基材に隣接する領域に第1の溶射層を備え、溶射皮膜の表面を含む領域に第2の溶射層を備えており、第2の溶射層の表面の気孔率は5%以上15%以下である溶射皮膜とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、溶射皮膜と皮膜付金属部材に関する。より詳細には、溶射により形成された溶射皮膜とその溶射皮膜を表面に備える皮膜付金属部材に関する。
バルク基材に皮膜を設けることにより新たな機能性を付与する技術は、従来より様々な分野において利用されている。ドライコーティング技術の一つである溶射法は、金属やセラミック(典型的には、金属酸化物からなる酸化物系セラミック)、サーメット等の溶射粉末を燃焼炎あるいは電気エネルギー等により溶融させるとともにその溶融粒子を加速させて、バルク基材の表面に吹き付け、堆積させることで、皮膜を形成する手法である。
なかでも、プラズマ溶射法等によるセラミック粉末の溶射技術は、セラミック材料の特長である耐熱性、耐摩耗性、耐腐食性および耐絶縁性等といった優れた化学的・機械的特性を、比較的経済的にかつ高速で厚膜として基材に付与できることから、ジェットエンジン、ガスタービンエンジン、製紙用ロール、ポンプ軸等の一般工業向けの金属製部材に広く適用されている。また、近年では、かかるセラミック溶射技術が医療・半導体分野で使用される機器の金属製部材等へも適用されており、上記の付加機能がより高精度に実現されるようになっている。
セラミック溶射皮膜の機能性は、一般的に、溶融粒子間および基材と溶融粒子との間の結合力を高め、気孔率を低く抑えて緻密な皮膜を実現することで、高められると考えられている。そしてかかる溶射皮膜は、(1)溶射粉末を完全に溶融にさせ、未溶融粒子をなくすこと、(2)飛行する溶融粒子に対して大きな加速度をもたせ、基材の表面に強い衝突エネルギーで衝突させること、により実現されると考えられている(例えば、特許文献1参照)。
国際公開第2007/023976号明細書
ところで、プラズマ溶射法による上記のセラミック溶射皮膜は、これまで一般工業用途として利用されているのみであった。すなわち、一般消費者向けの電化製品等のコーティング皮膜としては全く利用されていないのが実情である。というのは、これまで一般消費者向けの電化製品等のコーティング皮膜に求められる機能は、主に意匠性と密着性であって、典型的には、各種樹脂等の有機材料からなるコーティング膜、金属めっき膜等の金属材料からなるコーティング膜あるいは樹脂と無機または金属材料との複合材料からなるコーティング膜等により実現されるもので満足されていたためである。
一方で、例えば、一般消費者向けの電化製品等においては、小型軽量化および高強度化の両立と、低コスト化等の理由から、外装材をより機械的特性が高く、より薄いコーティング皮膜により被覆することが求められている。例えば、軽量で放熱性のあるものの、機械的特性に若干劣るアルミニウム合金からなる薄板を、機械的強度の高い保護膜により被覆することが求められている。また、一般消費者向けの機器等に対するコーティング皮膜、すなわち、商業的用途でのコーティング皮膜については、人間の視覚に訴える新しい意匠性を実現することが潜在的に期待されてもいる。
しかしながら、樹脂を含むコーティング膜は、多種多様なものが提供されているものの、いずれも耐熱性および機械的強度に劣ってしまうのが現状であった。金属材料からなる被膜は、比較的機械的強度に優れるものの、意匠性が金属的(メタリック)なものに限定されてしまい、例えば、自然な風合いを得たいという要求には対応できていなかった。また、上記のセラミック溶射皮膜については、意匠性という側面での機能性を高める技術については何ら提供されていない。
特に、例えば、アルミニウム合金の薄板を基材として上記のプラズマ溶射法を適用した場合には、基材の機械的強度が比較的低くなるため、溶射粒子の衝突によるピーニングにより基材そのものに変形が生じる問題があった。また、セラミックからなる溶射皮膜とアルミニウム合金の基材とでは熱膨張係数の差が大きいことから、溶射中の熱影響により基材に反りが発生してしまうという問題が起こることが明らかとなった。なお、このような意図しない基材のへこみや反りの発生は、従来のセラミック溶射技術においては問題とされなかったレベルのものであるが、意匠性という側面からみた場合に重大な問題となり得る。すなわち、例えば、微妙な光の反射具合に影響を及ぼしたり、かかる溶射皮膜を研磨する際の研磨能を損ねたりする虞があるためである。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、意匠性と機械的特性とを兼ね備えた全く新しいセラミック溶射皮膜を提供することを目的とする。また、かかる溶射皮膜を備えた皮膜付金属部材を提供することを他の目的とする。
上記目的を実現するべく、本発明により提供される溶射皮膜は、金属酸化物を主成分とする溶射粒子が金属基材上に堆積されてなる溶射皮膜である。そしてかかる溶射皮膜は、上記金属基材に隣接する領域に第1の溶射層を備え、上記溶射皮膜の表面を含む領域に第2の溶射層を備えている。そして、上記第2の溶射層の表面の気孔率は5%以上15%以下であることを特徴としている。
すなわち、上記の通り本発明の溶射皮膜は、本質的に金属酸化物から構成されており、例えば、樹脂等の有機材料や、金属材料を含まない。したがって、金属製品のもつ冷たさや、樹脂製品のもつ人工的(プラスチック的)な素材感とは全く異なり、例えば、陶磁器等に特有の自然な風合い(素材感)および肌合い(触感)を醸し出すことができる。また、これに加え、セラミックの有する優れた化学的特性および機械的特性をも併せ持つものとなり得る。
このような意匠性および化学的・機械的特性は、溶射皮膜を構成する金属酸化物が元来有する特性に由来して実現され得るものであり、上記で特定される第2の溶射層により高い意匠性が実現され得る。具体的には、第2の溶射層は、表面を研磨した場合に、独特の深みのある艶感が付与された美麗な外観を実現し得るものとして構成され得る。このような溶射皮膜は、これまでに実現されていない全く新しいコーティング皮膜であり、本発明によってはじめて提供されるものである。
なお、本明細書において「主成分」とは、組成において当該成分が97質量%以上の割合で含まれることを意味し、典型的には当該成分が99質量%以上、好ましくは99.5質量%以上、より好ましくは99.7質量%以上(例えば、99.9質量%以上であり得る)含まれることをいう。
また、ここに開示される溶射皮膜の好ましい一態様では、上記第1の溶射層の基材表面に垂直な断面における気孔率は2%以上20%以下であることを特徴としている。
上記で特定される形態の第1の溶射層により、主として基板に対する衝撃を抑えつつ高い密着力(皮膜密着性)が実現され得る。具体的には、第1の溶射層は、溶射時の基材に対する柔軟性および密着性を実現しつつ、機械的性質に優れた溶射皮膜を実現することができる。
ここに開示される溶射皮膜の好ましい一態様において、上記第2の溶射層の上記表面に露出する溶射粒子の平均粒子径が1μm以上30μm以下であることを特徴としている。
かかる構成によると、溶射皮膜の表面は、上記の通りの平均粒子径を有する溶射粒子により形成されており、陶磁器等に特有の自然な風合いや肌合いといった意匠性がより高められた溶射皮膜が提供される。
ここに開示される溶射皮膜の好ましい一態様において、上記第1の溶射層の上記金属基材の表面に垂直な断面における平均気孔径は1μm以上15μm以下であることを特徴としている。
第1の溶射層における気孔が上記の範囲の大きさであることで、溶射皮膜の機械的強度をより高いものとして実現することができる。
ここに開示される溶射皮膜の好ましい一態様において、上記第2の溶射層の上記金属基材の表面に平行な断面における平均気孔径は1μm以上20μm以下であることを特徴としている。
第2の溶射層における気孔が上記の範囲の大きさであることで、より高い意匠性を実現することができる。たとえば、この溶射皮膜を研磨した場合に、色調のみならず艶感や輝きにまで深みのある極めて美麗なコーティング皮膜を実現し得る。
ここに開示される溶射皮膜の好ましい一態様において、上記第1の溶射層の厚みは20
μm以上400μm以下であることを特徴としている。
第1の溶射層は厚みが薄いほど軽量化を図ることができるものの、過度に薄くすること
で皮膜密着性および機械的特性が十分に得られない。したがって、第1の溶射層の厚みを
上記の範囲とすることで、厚みをより薄く抑えながらも密着性および機械的特性が確保された溶射皮膜を実現することができる。
ここに開示される溶射皮膜の好ましい一態様において、上記第2の溶射層の厚みは10μm以上400μm以下であることを特徴としている。
第2の溶射層は厚みが薄いほど軽量化を図ることができるものの、第1の溶射層の光の透過性が高いことから、金属基材の透けを無くすためには第2の溶射層は適度な厚みが必要となる。また、後述の、溶射皮膜の表面を研磨する形態においては、研磨により除去される厚みを予め考慮して第2の溶射層を形成することが好ましい。かかる観点から、第2の溶射層を上記の範囲内で調整することで、厚みをより薄く抑えながらも基材の色の影響のない意匠性の高い溶射皮膜を簡便に実現することができる。
ここに開示される溶射皮膜の好ましい一態様において、上記第2の溶射層の表面は研磨されていることを特徴としている。
上記第2の溶射層の表面が研磨されることで、本発明の溶射皮膜の優れた意匠性がより一層顕著となるために好ましい。すなわち、表面が研磨された形態の溶射皮膜は、その風合いに暖かみがありながらも光が照射されることで輝きを放つため、あたかも美術品としての磁器に匹敵する極めて美麗な外観を実現し得る。あるいは、天然石や、いわゆる宝石、輝石などと呼ばれて鑑賞および装飾に用いられる鉱物に匹敵する壮麗な美しさを実現し得る。より具体的には、例えば、金属酸化物がアルミナである場合、ほぼ完全に純白であって、光の照射により独特の輝きを放つ、白磁器のような外観となり得る。なお、第1の溶射層は、金属酸化物からなる溶射粒子の本質的な特性に基づいて透明であるため、かかる意匠性は主として第2の溶射層の構成により実現されるものと考えられる。また、例えば白磁器はカオリンからなる純白で硬い素地の表面を、透明で光沢性のあるガラス質の釉が覆っている点で、本発明の溶射皮膜とはその構成が全く異なる。したがって、かかる構成により、深みのある色調(例えば、白色)と艶感とを併せ持つ極めて美麗で、全く新しいコーティング皮膜が提供される。
ここに開示される溶射皮膜の好ましい一態様において、上記第2の溶射層の表面粗さRaは100nm以下であることを特徴としている。
上記第2の溶射層は、溶射皮膜に特有の気孔を含んだ皮膜組織により、研磨しても適度な凹凸が形成され得る。かかる凹凸が適切に形成されていることによって、上記のとおりの優れた光沢を実現する光反射性が高められるものと考えられる。例えば光沢度で75以上の優れた輝きを実現するものとなり得る。また同時に、かかる凹凸の存在により、この溶射皮膜に人が触れた際の触感、すなわち肌合いが向上され、さらに適度な滑り止め効果もが実現され得る。
ここに開示される溶射皮膜の好ましい一態様では、上記金属酸化物が酸化アルミニウム(アルミナ)であることを特徴としている。
上記の溶射皮膜は、かかる溶射皮膜を構成する金属酸化物の組成によりその色調(色相)が様々に調整され得る。そして特に、上記金属酸化物が酸化アルミニウムである場合には、例えば、ほぼ完全な白色の溶射皮膜を実現することができる。換言すると、あたかも白磁のように純白できめ細やかな質感が実現され得る点でより好ましい。
ここに開示される溶射皮膜の好ましい一態様では、上記第1の溶射層において、第1の溶射層のX線回折分析における、α−アルミナの(113)面からの回折強度をIα、γ−アルミナの(400)面からの回折強度をIγとしたとき、次式(1):
Pα1(%)= Iα/(Iα+Iγ)×100 ・・・(1)
により定義されるα−アルミナ相率Pα1が8%以上25%以下であることを特徴としている。
酸化アルミニウムを主成分とする溶射粒子に含まれるα−アルミナ相は、溶射の際に溶射粉末が十分に溶融されなかったことを意味し得る。かかる構成の第1の溶射層は、上記の割合でα−アルミナ相が残存するように溶射の際の溶融粒子の状態が調整されたものである。すなわち、基材に衝突する際の溶融粒子の持つ衝撃エネルギーと熱とがより適切に抑えられた状態で溶射皮膜が形成されている。したがって、本発明の溶射皮膜は、基材にへこみや反りを生じさせる虞がより低減されたものとして提供され得る。
ここに開示される溶射皮膜の好ましい一態様では、上記第2の溶射層において、第2の溶射層のX線回折分析における、α−アルミナの(113)面からの回折強度をIα、γ−アルミナの(400)面からの回折強度をIγとしたとき、次式(2):
Pα2(%)= Iα/(Iα+Iγ)×100 ・・・(2)
により定義されるα−アルミナ相率Pα2が7%以下であることを特徴としている。
かかる構成の第2の溶射層は、α−アルミナ相の残存量が上記の割合となるよう溶射の際の溶融粒子の状態が調整されている。すなわち、基材に衝突する際の溶融粒子は大部分が溶融されており、溶射粒子同士の密着性がより高められた状態で溶射皮膜が形成されている。したがって、本発明の溶射皮膜は、表面を含む領域の溶射粒子同士の密着性が高められたものとして形成され得る。
また、他の側面で本発明により提供される皮膜付金属部材は、金属基材の表面に上記のいずれかの溶射皮膜が備えられていることを特徴としている。
従来のアルミナ等の金属酸化物からなる溶射皮膜を鉄鋼等の金属基材に直接溶射して形成すると、十分な密着力が得られないことが知られている。そこで、この密着力を改善するために、一般的には、金属基材と金属酸化物からなる溶射皮膜との間に金属からなる下地層を設けることが欠かせない(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、上記の溶射皮膜は、例えば、第1の溶射層を構成する粒子が、例えば扁平で比較的粒径が大きい溶射粒子により、密着性良く形成されていることから、例えば、商業的用途で求められる密着性については確保され得る。
これにより、密着性および機械的特性に加えて意匠性に優れたセラミック質の溶射皮膜を備える金属部材が提供される。例えば、陶磁器のようなきめ細やかな肌合いを醸し出す金属性部材や、さらには、深みのある色艶を備えた極めて美麗な外観を有する金属部材が提供される。
ここに開示される皮膜付金属部材の好ましい一態様において、上記金属基材はアルミニウムまたはその合金であることを特徴としている。
アルミニウムおよびその合金は、金属材料の中でも軽量であって、熱伝導性に優れることから、近年パソコンや携帯電話等の電気製品の外装材等としての使用が検討されている。しかしながら、アルミニウムまたはその合金は、その反面で傷がつきやすいといった欠点もある。しかしながら、上記の溶射皮膜は、機械的強度に優れ、たとえば高硬度であり得る。したがって、本発明の皮膜付金属部材の基材としてアルミニウムまたはその合金からなる部材を採用することで、かかるアルミニウム系の基材に優れた機械的強度を付与することが可能となり、本発明の利点がより効果的に発揮されるために好ましい。
ここに開示される皮膜付金属部材の好ましい一態様において、上記金属基材は厚みが5mm以下であることを特徴としている。
上記の溶射皮膜は、溶射原料である金属酸化物粒子の衝突エネルギーを低減させた状態で、かつ該金属酸化物の溶融粒子の温度を低く抑えた状態で、金属基材の表面に衝突させることで形成することが可能である。そのため、比較的厚みの薄い金属薄板を基材として用いた場合でも、基材を変形させることなく、好適に皮膜付金属部材を得ることができる。特に、厚みが5mm以下のアルミニウム系の基材とした場合であっても、好適に皮膜付金属部材を得ることができる。
ここに開示される皮膜付金属部材の好ましい一態様において、上記金属基材は粗面化されており、上記金属基材と上記溶射皮膜とは機械的構造により一体化されていることを特徴としている。
予め粗面化された金属基材に対し、上記の溶射皮膜を溶射によって形成することにより、金属基材と溶射皮膜との密着性が十分に高められた皮膜付金属部材を得ることができる。例えば、例えば、金属基材に対する溶射皮膜の密着強度は、5MPa以上のものとして得ることができる。これにより、意匠性、機械的特性及びと膜密着性のいずれもが高いレベルで実現された皮膜付金属部材が実現される。
以上のとおり、本発明により提供される皮膜付金属部材は、金属酸化物(いわゆる酸化物系セラミック)からなる溶射皮膜を備えていることから、本質的に耐熱性、耐摩耗性、耐腐食性および耐絶縁性等といった優れた化学的・機械的特性に優れたものであり得る。これに加えて、本発明により提供される皮膜付金属部材は、優れた意匠性を備えたものとして実現されている。そのため、商業用途の各種の物品の部材として好ましく用いることができる。例えば、一般の消費者に提供される、高い意匠性および嗜好性が要求される物品、例えば各種の電化製品、調理器具等の生活雑貨、パネル等の建材、各種発電システム等の住宅設備に代表される物品等の外装材等として好適に使用することができる。特に、外装材としての高い強度と、放熱性および絶縁性等の性質が要求される電化製品の外装材として好ましく用いることができる。かかる電化製品としては、一例として、携帯電話、パソコンおよびその周辺機器、テレビ,ブルーレイレコーダー,カメラ等のAVC機器、ステレオ,カーナビ等のAV機器、冷蔵庫,エアコン,空気清浄機等の生活家電機器、ドライヤー等の美容・健康機器等が例示される。
一実施形態に係る皮膜付金属部材の構成を模式的に示した断面図である。 他の実施形態に係る皮膜付金属部材の構成を模式的に示した断面図である。
以下、適宜図面を参照し、本発明の溶射皮膜と皮膜付金属部材とを、好適な実施形態に基づいて説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(溶射皮膜の特徴等)以外の事項であって、本発明の実施に必要な事柄(例えば、溶射装置の構成や、かかる溶射装置の使用方法等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、おおよそ本発明の溶射皮膜および皮膜付金属部材の形態的な特徴を表わしているが、必ずしも実際の溶射皮膜および皮膜付金属部材における寸法関係を反映したものではない。
[皮膜付金属部材の構成]
図1は、一実施形態に係る皮膜付金属部材の構成を模式的に示した断面図である。ここで開示される皮膜付金属部材100は、例えば図1に例示されるように、金属基材30の表面に、溶射皮膜1が備えられている。
金属基材30を構成する材料としては特に制限されず、各種の金属材料を用いることができる。例えば、各種SUS材等に代表される鉄鋼、インコネル等に代表される耐熱合金、インバー,コバール等に代表される低膨張合金、ハステロイ等に代表される耐食合金、軽量構造材等として有用な1000シリーズ〜7000シリーズアルミニウム合金等に代表されるアルミニウム合金等が例示される。本発明の溶射皮膜1は、溶射の際の溶融粒子の金属基材30への衝突時の衝撃と熱とを低減して形成し得るものである。したがって、なかでも、金属基材30としてアルミニウムまたはアルミニウム合金を用いた場合、とりわけアルミニウム合金の薄板を用いた場合に、本発明の皮膜付金属部材1の特長が明瞭となるために好ましい。かかるアルミニウム合金の薄板は、例えば、厚みが5mm以下であってよく、例えば、3mm以下、さらに限定的には1mm以下であり得る。以下、金属基材30としてアルミニウム合金の薄板を用いた場合を例にして説明を行う。
金属基材30は、図1には示されていないが、例えば、ブラスト加工等の物理的手法や、エッチング等の化学的手法により、溶射皮膜1が備えられる表面が粗面化されていてもよい。すなわち、金属基材30の表面には微小な凹凸が設けられていても良い。このように金属基材30の表面を予め荒らしておくことで、金属基材30の表面の凹凸に溶射皮膜1が入り込み、金属基材30と溶射皮膜1とが機械的に強固に結合されることとなる。かかる粗面化処理により実現される表面形態等に特に制限はないが、例えば、金属基材30の表面粗さRaを0.2μm〜20μm程度とすることが例示される。
そして、この溶射皮膜1は、上記の金属基材30上に、金属酸化物を主成分とする溶射粒子12,22が堆積されることで構成されている。より具体的には、この溶射皮膜1は、金属基材30に隣接する領域に第1の溶射層10を備えており、また、溶射皮膜1の表面を含む領域に第2の溶射層20を備えている。本実施形態においては、第1の溶射層10と第2の溶射層20とからなる2層構造の溶射皮膜1の場合について例示している。なお、金属基材1に隣接する領域に第1の溶射層10を備え、溶射皮膜1の表面を含む領域に第2の溶射層20を備えるかぎり、第1の溶射層10と第2の溶射層20との間に他の形態の溶射層が備えられていてもよい。
ここで、溶射粒子12,22を構成する金属酸化物としては、特に限定されることなく各種の金属の酸化物とすることができる。かかる金属酸化物を構成する金属元素としては、例えば、B,Si,Ge,Sb,Bi等の半金属元素、Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Al,Ga,In,Sn,Pb等の典型元素、Sc,Y,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Ag,Au等の遷移金属元素、La,Ce,Pr,Nd,Er,Lu等のランタノイド元素から選択される1種または2種以上が挙げられる。なかでも、Mg,Y,Ti,Zr,Cr,Mn,Fe,Zn,Al,Erから選択される1種または2種以上の元素であることが好ましい。
より具体的には、金属酸化物としては、例えば、MgO,CaO,SrO,Sc,Y,La,TiO,ZrO,HfO,VO(例えばV等),Nb,Ta,CrO(例えばCr等),WO(例えばWO、WO等),MnO(例えばMnO、MnO、Mn等),FeO,CoO,NiO,CuO,AgO,ZnO,Al,MgAl,Al13Si、Ga,In,SnO,BiO,CeO,PrO,Nd,Er,Lu,ZrSiO,ZrAlO,HfSiO,HfAlO,TiSi,B,SiO,GeO,Sb等が挙げられる。
かかる金属酸化物の組成は、溶射皮膜1に付与する所望の特性を考慮して、適宜決定することができる。かかる特性とは、例えば、硬度、靭性等の機械的特性、屈折率、熱伝導度、電気伝導度等の物理的特性や、融点、耐薬品性等の化学的特性、模様、色調等の意匠性等であり得る。上記の金属酸化物は1種が単独で溶射粒子12,22を構成していても良いし、または2種以上が組み合わされて溶射粒子12,22を構成していても良い。例えば、2種以上の金属酸化物が溶射粒子12,22に含まれる場合には、これらの酸化物の一部または全部が複合酸化物を形成していても良い。さらに、上記の金属酸化物は、例えば、溶射皮膜1の色調を調整する目的や、使用する原料(天然原料)に由来するもの等として、上記に例示した以外の元素(例えば、Na,K,Rb等)が含まれていても良い。また、上記の酸化物を構成する元素は、イオン等の形態で含まれていても良い。
以下、ここに開示される溶射皮膜の好適な一態様として、金属酸化物が酸化アルミニウム(アルミナ;Al)である場合を例にして、本発明の溶射皮膜の特徴について詳細に説明する。
第1の溶射層10は、一般的な溶射皮膜に見られるように、主として扁平な溶射粒子12が堆積することで構成されている。また、第2の溶射層20は、一般的な溶射皮膜に見られるように、主として扁平な溶射粒子22が堆積することで構成されている。そして、この溶射粒子12,22の周縁には、気孔14,24が形成され得る。
ここで、第1の溶射層10の基材30表面に垂直な断面における気孔率は2%以上20%以下であることが好ましい。
溶射皮膜1における気孔14,24の存在は、皮膜1の機械的特性および密着性に大きな影響を与え得る。本発明の溶射皮膜1においては、第1の溶射層10の基材30の表面に垂直な断面における気孔率を20%以下に抑えることで、第1の溶射層10と基材30との熱膨張係数の差に起因する基材30の反りを抑えつつ、基材30に対する高い密着性を確保するようにしている。基材30の反りを抑えるには、第1の溶射層10の気孔率は2%以上とすることが好ましく、典型的には5%以上、例えば、10%以上とすることができる。しかしながら、気孔率が高すぎると密着性が低下したり、皮膜硬度が低下する虞があるために好ましくない。かかる点で、第1の溶射層10の気孔率は20%以下とする。気孔率は、典型的には18%以下であり、例えば、15%以下であり得る。
ここで、第1の溶射層10に関する気孔率は、溶射皮膜1の基材30に略垂直な断面組織の観察像を画像解析することで求められる値である。具体的には、皮膜付金属部材100の厚み方向の任意の断面を切り出し、かかる断面における溶射皮膜1(例えば、第1の溶射層10)の組織を所定の倍率の顕微鏡で観察することで得られた観察像について気孔部と固相部とを分離する2値化を行い、これを画像解析ソフトを用いて解析することで、気孔率を測定することができる。なお、本明細書において、気孔率の測定は、走査型電子顕微鏡(SEM;株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S−3000N)による観察像(好適には、二次電子像、組成像あるいはX線像のいずれかであり得る。)に基づき、画像解析ソフト(株式会社日本ローパー製、Image−Pro Plus)を用いて画像解析することで行っている。
なお、溶射皮膜1に含まれる気孔14,24の形態は、溶射粒子12,22の堆積状態によるため、基材30に対して垂直な方向と、水平な方向とでその様子が異なる場合がある。第1の溶射層10に関する気孔率を基材30に垂直な断面において評価するのは、かかる断面にて評価される気孔率が第1の溶射層10の密着性と熱収縮特性とにより影響を与え得るとの知見に基づいている。
第1の溶射層10に含まれる気孔14は、大きなものが少数含まれているのでは、第1の溶射層10の強度がかかる気孔14により局所的に低下してしまうために好ましくない。したがって、第1の溶射層10に含まれる気孔14は、平均気孔径が1μm以上15μm以下であるのが好ましい。
本明細書において、第1の溶射層10に関する平均気孔径とは、基材30の表面に垂直な断面における気孔14の所定の方向について測定された直径の平均値(定方向平均径)である。かかる平均気孔径は、上記の気孔率と同様に、基材30に略垂直な第1の溶射層10の断面組織の観察像を画像解析することで求められる。例えば、上記のとおり用意した観察像について2値化した気孔部に関し、所定の方向について気孔部分の寸法を測定し、平均することで求めることができる。なお、本明細書において、平均気孔径の測定は、上記の気孔率の測定と同様に、走査型電子顕微鏡(SEM;株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S−3000N)による観察像(好適には、二次電子像、組成像あるいはX線像のいずれかであり得る。)に基づき、画像解析ソフト(株式会社日本ローパー製、Image−Pro Plus)を用いて画像解析することで行っている。
以上の第1の溶射層10は、金属基材30に対する溶融粒子の衝撃や熱影響を抑えるために、溶射粉末の周縁部のみが溶融されて中心部は溶融されないような、比較的衝突エネルギーが低くなる条件で溶射されたものであり得る。同時に、溶射粉末の周縁部は十分に溶融された状態で堆積されるため、溶射粒子12の金属基材30に対する密着性および溶融粒子12同士の密着性は確保され得る。例えば、かかる条件で溶射されてなる第1の溶射層10は、気孔率が2%以上20%以下(例えば、2%以上5%以下)の極めて緻密な組織を好適に形成し得る。
ここで、第1の溶射層10における溶射粒子12の溶融状態については、溶融されない未溶融状態の部分(以下、未溶融部分という)と一旦溶融した溶融状態の部分(以下、溶融部分という)との合計に占める未溶融部分の占める割合が、所定の割合に抑えられたものとなり得る。
かかる未溶融部分の占める割合は、例えば、第1の溶射層10の基材30に垂直な断面組織の観察像を画像解析ソフトを用いて解析することで把握することができる。すなわち、第1の溶射層10における溶射粒子12の溶融部分の面積と、未溶融部分の面積とを求め、これらから未溶融部分の占める割合を算出することができる。なお、溶射粒子12の溶融部分の面積および未溶融部分の面積は、例えば、第1の溶射層10の基材30に垂直な断面の組織を所定の倍率の顕微鏡で観察することで得られた観察像について、画像解析ソフトを用いて、溶融部分と未溶融部分とを分離する2値化を行い、それぞれの面積を算出することで得ることができる。なお、第1の溶射層10の溶射粒子12について溶融部分と未溶融部分とを分離するにあたっては、画像を目視したときに、元の溶射粉末の形状を残さずに扁平な形状を呈した部分を溶融部分と判断し、元の溶射粉末の中心部を残して粒子形状を維持した部分を未溶融部分と判断することができる。
このようにして求められる未溶融部分の占める割合は、おおよそ1%以上25%以下であるのが好ましい。
一方で、かかる溶射粒子12の溶融状態は、金属酸化物の種類にもよるが、例えば、金属酸化物を構成する結晶相の割合によっても確認することもできる。例えば、第1の溶射層10が、溶射粒子12の構成成分として酸化アルミニウム(アルミナ)を主成分として含む場合は、高温安定相であるα−アルミナと低温相であるγ−アルミナとの割合により確認することができる。溶射粉末として一般的に用いられるアルミナ粒子は、結晶構造が六方晶系のα−アルミナであり、かかるアルミナ粒子が溶融されたのちに急冷されることで、α−アルミナが立方晶系のγ−アルミナに遷移(変態)する。第1の溶射層10において、上記のとおりの割合でα−アルミナが存在することは、すなわち、溶射粒子が完全に溶融することなく、典型的にはその中心付近にα−アルミナ相が残存された状態で堆積されていることを意味し得るからである。
第1の溶射層10において、α−アルミナ相とγ−アルミナ相との合計に占めるα−アルミナ相の割合は、例えば、α−アルミナ相率(Pα1)として、次のようにして間接的に求めることができる。すなわち、Pα1は、第1の溶射層についてのX線回折(XRD)分析を行い、α−アルミナの(113)面からの回折強度をIα、γ−アルミナの(400)面からの回折強度をIγとしたとき、Pα1(%)=Iα/(Iα+Iγ)×100で求められる値である。なお、本明細書において、X線回折分析には、X線回折装置(株式会社リガク製、UltimaIV)を用いた。
なお、例えば金属酸化物がアルミナの場合、α−アルミナ(未溶融部であり得る)の占める割合は、例えば、上記のPα1が8%以上の場合を好ましいとすることができ、10%程度以上であるのがより好ましく、12%程度以上であるのがさらに好ましい。しかしながら、α−アルミナの残存率(未溶融率であり得る)が多すぎることは溶射粉末が十分に溶融されていないことに繋がるために好ましくない。かかる点から、α−アルミナの占める割合は、例えば、上記のPα1が25%以下の場合を好ましいとすることができ、より好ましくは20%以下であって、さらには18%以下とするのが好適である。
なお、溶射粉末を構成する金属酸化物は、一般的に結晶性が高く、可視光に対し透明なものであり得る。したがって、以上の組織を有する第1の溶射層10は、金属酸化物粒子(例えば、アルミナ粒子)本来の特性と同様に可視光の透過性が高く、透明であり得る。すなわち、溶射粒子12間に光の散乱をもたらす程度の大きな粒界や気孔14が多くは形成されていない。そして、溶射粒子12同士が極めて密着性良く堆積している。この様に、溶射粉末の中心部を溶融させずに(例えばアルミナの場合、α−アルミナ相を残存させて)周縁部を溶融させて極めて密着性良く溶射粒子12を堆積させるには、例えば、比較的大きな溶射粉末を用いるのが好適である。溶射皮膜1の組織形態は極めて複雑であるために溶射粒子12の形状および大きさを特定するのは困難であるが、例えば、典型的には、かかる第1の溶射層10は、比較的粒径の大きな溶射粒子12が堆積して構成されたものであり得る。このような第1の溶射層10は、例えば、平均粒子径が20μm以上40μm以下の溶射粉末を用いたプラズマ溶射により好適に形成することができる。これにより、金属基材30と溶射粒子12との接触面積を広く確保することができ、密着性および膜強度等に優れた第1の溶射層10が実現される。
また、特に限定されるものではないが、第1の溶射層10の厚みは20μm以上400μm以下とするのが好ましい。第1の溶射層10は厚みが薄いほど軽量化を図ることができる。したがって、第1の溶射層10の厚みは、350μm以下とするのがより好ましく、例えば300μm以下とすることができる。しかしながら、第1の溶射層10の厚みが過度に薄くなると、皮膜密着性および機械的特性が十分に得られない。したがって、第1の溶射層10の厚みは、50μm以上とするのが好ましく、例えば100μm以上とすることができる。これにより、厚みをより薄く抑えながらも密着性および機械的特性が確保された溶射皮膜1を実現することができる。
一方、上記の第2の溶射層20の表面の気孔率は5%以上15%であることにより特徴づけられている。
溶射皮膜1における気孔14,24の存在は、皮膜1の機械的特性および密着性に大きな影響を与え得る。本発明の溶射皮膜1においては、第2の溶射層20の表面の気孔率上記の範囲に限定することで、溶射粒子22同士の固着力を確保しつつ、高い表面意匠性を実現するようにしている。溶射皮膜1に上記の通りの優れた意匠性を備えるためには、第2の溶射層20の気孔率は5%以上とすることが必須であり、典型的には6%以上であるのが好ましく、例えば8%以上であり得る。しかしながら、高すぎる気孔率は第2の溶射層20の密着強度や皮膜強度を損ねてしまう。かかる点で、第2の溶射層20の気孔率は15%以下とする。気孔率は13%以下であるのが好ましく、例えば、11%以下であり得る。
また、第2の溶射層20に関する気孔率は、溶射皮膜1の表面組織の観察像を画像解析することで求められる値である。具体的には、溶射皮膜1の表面(すなわち、第2の溶射層20の表面)の組織を所定の倍率の顕微鏡で観察することで得られた観察像について気孔部と固相部とを分離する2値化を行い、これを画像解析ソフトを用いて解析することで、気孔率を測定することができる。なお、本明細書において、第2の溶射層20に関する気孔率の測定についても、走査型電子顕微鏡(SEM;株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S−3000N)による観察像(好適には、二次電子像、組成像あるいはX線像のいずれかであり得る。)に基づき、画像解析ソフト(株式会社日本ローパー製、Image−Pro Plus)を用いて画像解析することで行っている。
なお、第2の溶射層20に関する気孔率をその表面において評価するのは、かかる表面にて評価される気孔率が溶射皮膜1の意匠性に大きな影響を与え得るとの知見に基づいている。
第2の溶射層20は、溶射皮膜1の表面に露出する溶射粒子22の平均粒子径が1μm以上30μm以下であるのがより好ましい。すなわち、第2の溶射層20は気孔24を含む多孔質な層であり、その表面形態は上記の範囲の平均粒子径を有する粒子により形成される適度な凹凸を有したものであり得る。なお、溶射粒子22は、金属酸化物粒子と同様に本質的には可視光の透過性が高く、透明であり得るものの、その表面で光が散乱することで人の目には基材が透けないように見える。
したがって、溶射粒子22の平均粒子径および第2の溶射層20の気孔率が上記の範囲にあることで、第2の溶射層20は金属酸化物の組成および光の散乱具合等に応じた色を呈し、その表面形態から陶磁器の素地等にみられる自然な風合いや肌合いを備えたものとなり得る。例えば、金属酸化物がアルミナの場合、第2の溶射層20はアルミナ粉末と同様の白色を呈し、白磁器の素地にみられる純白できめ細やかな肌合いを備えたものとなり得る。溶射粒子22の平均粒子径は、5μm以上であることが好ましく、例えば10μm以上であり得る。また溶射粒子22の平均粒子径は、25μm以下であることが好ましく、例えば20μm以下であり得る。このような第2の溶射層20は、例えば、平均粒子径が1μm以上20μm以下の溶射粉末を用いたプラズマ溶射により好適に形成することができる。
なお、平均粒子径とは、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置により測定された粒度分布における積算値50%での粒径(50%体積平均粒子径)を意味するものとする。本明細書中において、平均粒子径の測定には、株式会社堀場製作所製のレーザ回折/散乱式粒度測定器“LA−300”を使用した値を採用している。
なお、本明細書において、溶射皮膜1の表面に露出する溶射粒子22の平均粒子径とは、溶射皮膜1の表面を観察した際にみられる溶射粒子22の所定の方向について測定された直径の平均値(定方向平均径)である。かかる平均粒子径についても、溶射皮膜1の表面(すなわち、第2の溶射層20の表面)の組織を所定の倍率の顕微鏡で観察することで得られた観察像について測定すればよい。本明細書において、表面に露出する溶射粒子22の平均粒子径の測定は、走査型電子顕微鏡(SEM;株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S−3000N)による観察像(好適には、二次電子像、組成像あるいはX線像のいずれかであり得る。)に基づき、画像解析ソフト(株式会社日本ローパー製、Image−Pro Plus)を用いて画像解析することで行っている。なお、2値化に関しては、例えば、上記画像解析ソフトにおいて、上限閾値(例えば130)および下限閾値(例えば0)を設定することで適切に実施することができる。
しかしながら、ポーラスな溶射皮膜は溶射粒子22同士の結合が弱く、機械的特性に劣るものとなりがちである。したがって、第2の溶射層20においては、溶射材料である金属酸化物粒子はほぼ完全に溶融されて堆積されているのが好ましい。例えば、金属酸化物がアルミナの場合、第2の溶射層20におけるα−アルミナ(未溶融部)の占める割合Pα2として、上記第1の溶射層10の場合と同様にして求めることができる。すなわち、Pα2は、第2の溶射層についてのX線回折(XRD)分析を行い、α−アルミナの(113)面からの回折強度をIα、γ−アルミナの(400)面からの回折強度をIγとしたとき、Pα2(%)=Iα/(Iα+Iγ)×100で求められる値である。そして、溶射粒子22の構成成分としてのアルミナのうち、α−アルミナとγ−アルミナの合計に占めるα−アルミナの占める割合は、Pα2として、7%以下であるのが好ましい。すなわち、溶射材料であるアルミナ粒子はほぼ完全に溶融されて堆積されている。したがって、溶射粒子22は、ほぼ完全に溶融された状態で密着性良く第1の溶射層10に付着され、また溶射粒子22同士も密着性よく互いに結合することができる。かかるα−アルミナ(未溶融部)の占める割合は、Pα2として、5%以下であるのが好ましく、さらには、3%以下であるのが好ましい。
さらに、第2の溶射層20に含まれる気孔24についても、過度に大きなものが含まれているのでは、第2の溶射層20の強度がかかる気孔24により局所的に低下してしまうために好ましくない。したがって、第2の溶射層20に含まれる気孔24については、平均気孔径が1μm以上20μm以下であるのが好ましい。
第2の溶射層20における平均気孔径は、上記第1の溶射層10の場合と同様にして求めることができる。
また、特に限定されるものではないが、第2の溶射層20の厚みは、一実施形態として、10μm以上200μm以下とするのが好ましい例として示される。第1の溶射層10が透明であることから、金属基材30が透けて見えるのを防ぐために、第2の溶射層20の厚みは10μ以上とする。かかる厚みは20μm以上であるのがより好ましく、例えば、50μm以上とすることができる。しかしながら、第2の溶射層20が必要以上に厚いと軽量化を図るのが困難であることから、例えば、厚みは200μm以下とするのが好ましく、さらには150μ以下、例えば100μm以下とすることができる。これにより、厚みをより薄く抑えながらも意匠性が確保された溶射皮膜1を実現することができる。
図2は、一実施形態に係る表面が研磨された皮膜付金属部材100aの構成を模式的に示した断面図である。この図2に例示したように、第2の溶射層20の表面が研磨されていることも、本発明の溶射皮膜1および皮膜付金属部材100aの好適な実施態様である。かかる研磨は、鏡面研磨であることがより好ましい。第2の溶射層の表面(すなわち、溶射皮膜1の表面)が研磨されると、表面に位置する溶射粒子22が部分的に削られて研磨面が露出することとなる。ここで、研磨された溶射粒子22と、その周辺に存在する溶射粒子22は、光学的な独特の効果を発現することになる。
つまり、光は溶射粒子22の表面で反射されることなく、研磨面から透明性の溶射粒子22に入射する。そして、その光の一部は溶射粒子22の周縁に形成された粒界および気孔等により反射され、溶射粒子22の内部を透過して外部に射出される。また、粒界および気孔等によりで反射されなかった光は、次の溶射粒子22に入射し、同様に反射、透過を経て外部に射出される。そして実際の粒界では、透過、反射に加えて、散乱の現象も生じており、より複雑な光の挙動が実現され得る。
このような光の反射、透過および散乱等の現象は、この溶射皮膜1に独特の輝きを与えるものとなり得る。これは、例えば表面にのみ備えられた艶出しのコーティング皮膜による反射等とは本質的に異なるものであって、深みのある艶と輝きを実現し得る。かかる艶および輝きを備えることにより、この溶射皮膜1は深みのある独特の艶感を有する極めて美麗な外観を備えたものとなり得る。例えば、金属酸化物がイットリア(Y)やアルミナの場合、白磁のような完全な白色と深みのある艶感とを併せ持つ極めて美麗な外観を呈する。このような溶射皮膜1は、これまでに実現されていない、全く新しいコーティング皮膜であり得る。
以上のような研磨が施された第2の溶射層20の構成は、未研磨の第2の溶射層20と本質的に同様であり得る。すなわち、研磨が施された第2の溶射層の表面の気孔率も5%以上15%以下であり得る。未研磨の第2の溶射層20と同様に、溶射皮膜に特有の気孔を含んだ皮膜組織により、研磨しても適度な凹凸(典型的には凹部)が形成され得る。なお、例えば、研磨する前の第2の溶射層の表面粗さRaは10μm以下であることが一般的であり、7μm以下が好ましく、特に好ましくは4μm以下である。そこで、第2の溶射層の研磨は、例えば、第2の溶射層の表面粗さRaを100nm以下とすることを目標に行うことができる。表面粗さRaを100nm以下とすることで、上記の形態の第2の溶射層20に適切な凹凸が形成され、光反射性がより一層高められる。かかる第2の溶射層20をそなえる溶射皮膜1は、例えば光沢度で75以上の優れた輝きを備えたものとなり得る。また同時に、かかる凹凸の存在により、この溶射被膜に人が触れた際の触感、すなわち肌合いが向上され、さらに適度な滑り止め効果が実現され得る。
第2の溶射層の表面粗さRaを100nm以下にするためには、例えば、表面に研磨を施すことが好ましい。研磨方法としては、これに限定されるものではないが、例えば、研磨粒子や研磨スラリー等を含ませた研磨布や研磨パッド等を溶射層の表面で摺動させる方法が挙げられる。研磨は、所定の表面粗さになるまで、一段階の研磨工程で行っても良いし、二段階以上の多段階の研磨工程で行っても良い。特に意匠性が高く、美しい皮膜を得るためには、二段階以上の研磨工程で、予備研磨と仕上げ研磨(鏡面研磨)を行い、段階的に表面粗さを小さくするのが好ましい。
なお、ここでいう光沢度は20°グロス値であり、JIS Z8741に準拠して測定することができる。測定に用いる光沢計は特に限定されず、従来公知の光沢計を用いればよい。例えば、コニカミノルタオプティクス社製の商品名「GM−268Plus」またはその類似品を用いて測定することができる。
また、この明細書における表面粗さRaは、従来公知の表面粗さ形状測定機(例えば東京精密社製「SURFCOM 1500DX」またはその類似品)を用いて測定することができる。測定は、例えば測定長さ10mm、測定速度0.3mm/秒の条件で行うことが好ましい。
なお、特に限定されるものではないが、表面を研磨された第2の溶射層20の厚みについても、研磨を施さない第2の溶射層20について述べたのと同様の理由から、10μm以上200μm以下とするのが好ましい。一方で、研磨前の第2の溶射層20については、研磨分を見越して、例えば、200μm以上400μm以下程度の厚みとしておくのが好適な例として示される。これにより、過剰に第2の溶射層20を形成したり、研磨したりすることなく、厚みをより薄く抑えながらも意匠性が確保された溶射皮膜1を簡便に実現することができる。
以上のような溶射皮膜1および皮膜付金属部材100は、上記の通りの優れた意匠性と共に、金属酸化物(例えば、アルミナ)に由来する優れた化学的、機械的特性と皮膜密着性を併せ持つものであり得る。とりわけ、上記で特定される構成の第1の溶射層10により主として高い密着力(皮膜密着性)が、上記で特定される構成の第2の溶射層20により優れた意匠性が実現されている。なお、意匠性の面では、美術品としての磁器や、天然の大理石や御影石等は、古くから目標とされるものであり得る。換言すると、第1の溶射層10は緻密で機械的性質に優れた溶射皮膜を、第2の溶射層20は、表面を研磨した場合に、磁器(例えば、白磁)や天然石のような美麗で高級感にあふれる外観を実現し得る。
なお、上記の意匠性については、主にヒトの感覚(例えば、視覚および触覚)を使って評価され、嗜好や、日々の体調,気分,疲労等の状況に依存し得る。そこで、例えば、以下の表1に示す基準に基づき、本発明に係る意匠性をより客観的に評価(官能試験)することができる。具体的には、例えば、意匠性に関する官能試験は、ヒト(訓練の有無を問わないパネリスト)の感覚に基づき評価し得る。そして、評価対象である溶射皮膜の下記評価項目について、「良い」,「普通」,「悪い」の三段階のいずれに相当するかを分類する。そして、例えば、最も多くのヒトが分類した段階を、かかる溶射皮膜の当該項目に関する評価(判定)とすることができる。パネリストの人数については特に制限されず、一人であっても良いし、複数人であっても良い。一人の場合は、かかる評価に関する経験または訓練のあるものであることが好ましい。
なお、表1中の(*)印は、表面が研磨された形態の溶射皮膜に対してなされる評価である。また、かかる判定の基準は、評価の対象である溶射皮膜の用途や目的等に応じて、適宜変更することもできる。例えば、「色むら」や「輝きのむら」等は、意図しないむらについての判断を示しており、意匠性を高める目的で溶射皮膜に意図的に付与される「色むら」や「輝きのむら」については、かかる評価の対象に含まれない。
Figure 2014156651
また、溶射皮膜の密着性については、例えば、金属基材30に対する溶射皮膜1の密着強度を、例えば、5MPa以上にすることが可能である。これは、商業用途の金属基材に対するコーティング皮膜の密着度としては十分な強度であり得る。
この密着性は、例えば、JIS H 8667:2002 サーメット溶射皮膜試験方法の解説「3.2密着性」に記載される評価方法に基づいて好ましく測定することができる。なお、本明細書においては、上記の解説「3.2密着性」に記載される評価方法におい
て、接着剤にはエポキシ樹脂を使用し、引張り速度は1mm/minで皮膜の破断荷重(N)を計測し、下記の式で算出した値を密着強度として採用した。
密着強度(MPa)=破断荷重(N)/接着面積(mm
一方で、特に図には示さないものの、本発明の溶射皮膜1および皮膜付金属部材100においては、第1の溶射層10と第2の溶射層20との間に、上記で特定されるのとは異なる形態の中間溶射層が備えらえていることも好適な実施態様でありうる。かかる中間溶射層は、金属酸化物を主成分とする溶射粒子が堆積されてなるものであればその形態等は特に制限されない。かかる中間溶射層としては、例えば、第1の溶射層10側から第2の溶射層20側へと移るにつれて、中間溶射層の形態が第1の溶射層10と同じあるいは類似のものから、第2の溶射層と同じあるいは類似のものへと、変化されているものであってよい。かかる変化は、段階的であっても良いし、無段階に変化されていてもよい。このような傾斜構造を備えた溶射皮膜1および皮膜付金属部材10とすることで、皮膜組織をより安定したものとすることができる。
以上の本発明の溶射皮膜1および皮膜付金属部材100は、溶融粒子の溶融状態を制御しつつ、溶融粒子が基材に衝突する際の衝撃を低く抑え得る溶射法により好適に作製することができる。許容される衝撃については、金属基材30の材質や形態等によっても異なるために一概には言えないが、特に第1の溶射層10の形成時に、溶融粒子の表面温度ともに、飛行距離、飛行速度等の条件を適切に制御することで、好適に溶射皮膜1および皮膜付金属部材100を作製することができる。かかる溶射法としては、必ずしも限定されるものではないが、例えば、一例として、プラズマを発生させる際の出力を比較的低く抑えた低出力プラズマ溶射法等のプラズマ溶射法等が好ましいものとして挙げられる。
例えば、具体的には、第2の溶射層20のための溶射粉末として平均粒子径が1μm〜30μm程度のα−アルミナ粉末を用い、第1の溶射層10のための溶射粉末として前記の第2の溶射層20のための溶射粉末よりも平均粒子径が大きく、かつ、平均粒子径が15μm〜50μm程度のα−アルミナ粉末を用いて、低出力プラズマ溶射法等により溶射することが例示される。この場合、溶射ガンの移動速度を速く(例えば、700mm/秒以上)したり、金属基材30に対する溶射角度を低角度(例えば、50°)とすること等も考慮される。金属基材30が、厚みが5mm以下のアルミニウム合金の薄板である場合には、かかる基材を被溶射面とは反対側の面から冷却することが好ましい。かかる冷却は、水冷の他、適切な冷媒による冷却とすることができる。
なお、上記の実施形態において、溶射皮膜1に含まれる気孔14,24は表面に開口した状態のものが例示されているが、かかる開口(気孔14,24)は、例えば、封孔剤による封孔処理が施されていても良い。使用できる封孔剤の種類は特に制限されないものの、いわゆる無機系の封孔剤を用いるのがより好ましい。かかる無機系の封孔剤としては、例えば、オルガノシラン系の封孔剤等が例示される。溶射皮膜1の表面を研磨する場合、かかる封孔処理は研磨の前に行っても良いし、研磨の後に行っても良い。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
[皮膜付金属部材]
本実施形態では、アルミニウム合金製の薄板基板上に、(1)アルミナ(Al)粉末、(2)イットリア(Y)粉末、(3)ムライト(Al13Si)粉末をそれぞれプラズマ溶射法により溶射することで化粧塗装を行い、皮膜付金属部材を作製した。
金属基材としては、寸法が50mm×50mmで厚さが5mmのアルミニウム合金(A6061)の板材を用いた。溶射皮膜は、第1の溶射層と第2の溶射層とから構成される2層構造とし、第1の溶射層を形成するための溶射粉末として平均粒子径が25μmの(1)α−アルミナ粉末、(2)イットリア粉末、(3)ムライト粉末を、第2の溶射層を形成するための溶射粉末として平均粒子径が10μmの(1)α−アルミナ粉末、(2)イットリア粉末、(3)ムライト粉末をそれぞれ用いた。
プラズマ溶射は、市販の溶射機(Praxair社製、SG−100)を用いて行った。この溶射機に、大気圧にて、プラズマ作動ガスとして0.34MPaのアルゴンガスを、二次ガスとして0.34MPaのヘリウムガスを供給し、陰極と陽極との間に電圧を印加することでプラズマを発生させた。溶射時のプラズマ発生条件は、プラズマ発生電圧35.6V、電流900Aとした。このプラズマ中に、粉末供給機(Praxair社製、Model1264)を用いて溶射粉末を約15g/分の供給量で供給し、溶射ガンを800mm/秒の速度で移動させながら、溶射距離150mm、基材に対するプラズマ照射角度を60°として溶射皮膜を形成した。これにより、本発明の(1)アルミナ、(2)イットリア、(3)ムライトからなる溶射皮膜を備えた皮膜付金属部材1〜3を得た。
第1の溶射層は、アルミニウム合金基材上に、上記の第1の溶射層用の溶射粉末を用いたプラズマ溶射を約200μmの厚さに形成した。また、第2の溶射層は、得られた第1の溶射層の表面に、上記の第2の溶射層用の溶射粉末を用いたプラズマ溶射を行うことで、約100μmの厚さに形成した。なお、溶射中は、プラズマ熱源によるアルミニウム合金製の薄板基板の変形と軟化を防止するために、基材を裏面から冷却した。
なお、比較のために、従来の一般的な溶射条件で溶射皮膜を形成した。すなわち、上記の第1の溶射層用のα−アルミナ粉末のみを用い、溶射距離90mm、基材に対するプラズマ照射角度を90°とし、その他の条件は上記と同様にして、プラズマ溶射を行うことで、アルミニウム合金基材上に約200μmの厚さの溶射皮膜を形成した。これを比較の皮膜付金属部材とする。
[評価]
上記のようにして得られた本発明の皮膜付金属部材1および2については、溶射皮膜が、アルミナまたはイットリアに由来した純白できめ細やかな肌合いを有しており、自然の温かみのある外観を呈していた。皮膜付金属部材3については、溶射皮膜がムライトに由来した薄茶色を呈しており、自然の温かみのある外観を実現していた。このムライトについては、原料に金属などの不純物を微量に含むものを用いたため、溶射皮膜は粉末材料の見た目の色(白色)にはならなかった。なお、具体的な例は示さないが、溶射粉末としてムライトを用いる場合、不純物の種類や量によって、溶射皮膜の色調を例えば灰色〜茶色等に調整して形成できることを確認している。また、アルミニウム合金基材に変形等は見られず、高品位な化粧塗装がなされていると判断された。すなわち、皮膜付金属部材1〜3の溶射皮膜のいずれもが、10人の評価者により、肌合い、外観、色の点で、「良い」と評価することができた。
一方の、比較の皮膜付金属部材は、アルミナに由来した白色の溶射皮膜が得られたものの、溶射の際の溶融粒子が基材に衝突する衝撃と熱とでアルミニウム合金基材が湾曲しているのが確認できた。また、溶射皮膜の表面には基材の凹みによるものと思われる凹凸が確認された。かかる凹凸は、大型の部材に対するコーティング膜や、工業用部材の保護膜等の用途としては問題にならないレベルであったが、例えば、商用の小型電化製品等の化粧塗装としては目立つものであった。比較の溶射皮膜については、温もりのある綺麗な白色であったが、きめの点では本発明の溶射皮膜に劣るものであった。すなわち、比較の皮膜付金属部材の溶射皮膜は、色については「良い」と評価することができたが、肌合いと外観とは「普通」または「悪い」と評価された。
上記の皮膜付金属部材1の溶射皮膜部分について、下記の項目(1)〜(3)の試験を行い、その特性を調べた。その結果を、下記の表2に示した。なお、比較の皮膜付金属部材については、基材の変形により正確な評価ができなかった。
(1)第1の溶射層について、金属基材に垂直な断面における平均気孔径および気孔率を調べた。
(2)第2の溶射層について、表面の平均気孔径および気孔率を調べた。
(3)第1の溶射層および第2の溶射層について、α−アルミナ相とγ−アルミナ相との合計に占めるα−アルミナ相の割合を調べた。かかる割合Pαは、第1の溶射層および第2の溶射層についてのX線回折分析(XRD)の結果から、α−アルミナの(113)面に帰属される回折ピーク(2θ=43°付近)の強度をIα、γ−アルミナの(400)面に帰属されるピーク(2θ=45°付近)の強度をIγとして、上記の式(1)および(2)により求めた。
(4)第1の溶射層および第2の溶射層について、基材に垂直な断面におけるビッカース硬さを微小硬さ試験機(株式会社島津製作所製、マイクロビッカース硬度計HMV−1)を用いて硬さ記号HV0.2(試験力1.961N)にて測定した。測定点は10カ所とした。
Figure 2014156651
本発明の溶射皮膜は、アルミニウム合金基材に近い第1の溶射層の気孔率が低く、また形成されている気孔も小さく、従来の溶射皮膜に比べて極めて緻密な皮膜が形成されていることが確認できた。また皮膜の硬度も、従来の工業用途の溶射皮膜に比べると劣るものの、商業用途では十分に高い値を示すことが確認できた。第2の溶射層については気孔率が高く、また形成されている気孔も大きいため、その硬度が低下することが見て取れる。これは、溶射粉末がより微細であったことによると考えられる。しかしながら、押し込み荷重が0.2(1.961N)のときのビッカース硬さHV300が得られており、商業用途の部材のコーティング膜としては十分適用可能なことが確認できた。
[表面研磨]
次に、上記で得られた本発明の皮膜付金属部材1〜3と比較の皮膜付金属部材の表面を研磨した。表面の研磨には、研磨粒子として平均粒子径1.3μmのアルミナ粒子を含む研磨スラリーを用いて表面粗さRaが300nm程度となるまで予備研磨を行ったのち、粒径が100nmのコロイダルシリカを含む研磨スラリーを用いて表面粗さRaを100nm以下とする鏡面研磨を行った。鏡面研磨の研磨条件は以下のとおりである。
[鏡面研磨条件]
研磨機:株式会社岡本工作機械製作所製、枚葉研磨機(PNX−322)
研磨荷重:15kPa
定盤回転数:30rpm
ヘッド回転数:30rpm
研磨時間:約20分
研磨スラリーの温度:20℃
研磨スラリーの供給速度:0.5リットル/分(掛け流し使用)
本発明の鏡面研磨後の皮膜付金属部材1〜3は、いずれもその表面に艶やかな輝きが生まれ、極めて美麗で高級感あふれる外観となった。また、皮膜付金属部材1および2の表面は、白色ながらも深みのある透明感を備えていた。皮膜付金属部材3については、溶射材料として用いたムライトの組成(金属不純物の種類や量)によって、灰色や茶色の溶射皮膜になる場合がある。このような質感は、例えば、樹脂成分を含むコーティング皮膜においては見られない独特のものである。かかる本発明の皮膜付金属部材1について、表面粗さおよび光沢度を測定したところ、Ra50nm、光沢度は70〜100であることが確認された。表面粗さ(Ra)が同程度の研磨を施した場合、屈折率の高い材料の方が表面の光沢に優れた溶射皮膜を得ることができ、意匠性に優れる。各溶射材料の波長550nmの光の屈折率は、イットリアが1.87、アルミナは1.76、ムライトは1.64であり、皮膜付金属部材1〜3の溶射皮膜も概ねこの屈折率に応じた光沢度が得られた。このように、研磨後の皮膜付金属部材1〜3の溶射皮膜についても、10人の評価者により、肌合い、外観、色およびつやの点で「良い」と評価することができた。鏡面研磨後の皮膜付金属部材1〜3について第2の溶射層の厚みを確認したところ、いずれも約20μmであった。
なお、本実施例には具体的には示していないが、第1の溶射層のみからなる溶射皮膜に対して鏡面研磨を施したところ、表面に艶が得られたものの、溶射皮膜そのものが透明であって、アルミニウム合金基材が透けて見えてしまうのが確認されている。すなわち、上記のとおりの透けの無い美麗な白色は、第2の溶射層の溶射粒子間の粒界や、この粒界に形成される適度な大きさの気孔による光の散乱効果によって得られると考えられる。
一方の比較の皮膜付金属部材は、鏡面研磨によっても、本発明の皮膜付金属部材のような艶は得られなかった。その理由は定かではないが、溶射によって基材の表面に凹みが形成されてつやが出ないことや、溶射皮膜組織における粒界や気孔の形成状態が適切でないことが考えられる。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、種々の改変が可能であることはいうまでもない。
1 溶射皮膜
10 第1の溶射層
12 溶射粒子
14 気孔
20 第2の溶射層
22 溶射粒子
24 気孔
30 金属基材
100,100a 皮膜付金属部材

Claims (20)

  1. 金属酸化物を主成分とする溶射粒子が金属基材上に堆積されてなる溶射皮膜であって、
    該溶射皮膜は、前記基材に隣接する領域に第1の溶射層を備え、前記溶射皮膜の表面を含む領域に第2の溶射層を備えており、
    前記第2の溶射層の表面の気孔率は5%以上15%以下である、溶射皮膜。
  2. 前記第1の溶射層の基材表面に垂直な断面における気孔率は2%以上20%以下である、請求項1に記載の溶射皮膜。
  3. 前記第2の溶射層の前記表面に露出する溶射粒子の平均粒子径が1μm以上30μm以下である、請求項1または2に記載の溶射皮膜。
  4. 前記第1の溶射層の前記金属基材の表面に垂直な断面における平均気孔径は1μm以上15μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶射皮膜。
  5. 前記第2の溶射層の前記金属基材の表面に平行な断面における平均気孔径は1μm以上20μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶射皮膜。
  6. 前記第1の溶射層の厚みは20μm以上400μm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶射皮膜。
  7. 前記第2の溶射層の厚みは10μm以上400μm以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶射皮膜。
  8. 前記第2の溶射層の表面は研磨されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の溶射皮膜。
  9. 前記第2の溶射層の表面粗さRaは100nm以下である、請求項8に記載の溶射皮膜。
  10. 前記表面の光沢度は75以上である、請求項8または9に記載の溶射皮膜。
  11. 前記金属酸化物が酸化アルミニウムである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の溶射皮膜。
  12. 前記第1の溶射層において、
    第1の溶射層のX線回折分析における、α−アルミナの(113)面からの回折強度をIα、γ−アルミナの(400)面からの回折強度をIγとしたとき、次式(1):
    Pα1(%)= Iα/(Iα+Iγ)×100 ・・・(1)
    により定義されるα−アルミナ相率Pα1が8%以上25%以下である、請求項11に記載の溶射皮膜。
  13. 前記第2の溶射層において、
    第2の溶射層のX線回折分析における、α−アルミナの(113)面からの回折強度をIα、γ−アルミナの(400)面からの回折強度をIγとしたとき、次式(2):
    Pα2(%)= Iα/(Iα+Iγ)×100 ・・・(2)
    により定義されるα−アルミナ相率Pα2が7%以下である、請求項11または12に記載の溶射皮膜。
  14. 金属基材の表面に請求項1〜13のいずれか1項に記載の溶射皮膜が備えられている、皮膜付金属部材。
  15. 前記金属基材はアルミニウムまたはその合金である、請求項14に記載の皮膜付金属部材。
  16. 前記金属基材は厚みが5mm以下である、請求項14または15に記載の皮膜付金属部材。
  17. 前記金属基材は粗面化されており、前記金属基材と前記溶射皮膜とは機械的構造により一体化されている、請求項14〜16のいずれか1項に記載の皮膜付金属部材。
  18. 前記金属基材に対する前記溶射皮膜の密着強度は、5MPa以上である、請求項14〜17のいずれか1項に記載の皮膜付金属部材。
  19. 電化製品の外装材である、請求項14〜18のいずれか1項に記載の皮膜付金属部材。
  20. 請求項14〜19のいずれか1項に記載の皮膜付金属部材を少なくとも外装材の一部として備える、物品。
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